以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両右方を示し、矢印Lは車両左方を示し、矢印Uは車両上方を示すものとする。
本実施形態のパネル構造は、自動車1の車体を構成するパネルに適用可能であり、特に、車室を画成するパネル部材(例えばフロアパネル、ダッシュパネル、ルーフパネル、ドアパネルなど)に適用可能である。また、本実施形態のパネル構造は、電気自動車1に備えたパネル部材に適用したものであり、該パネル構造の説明に先立って電気自動車1の車体構造について説明する。
図1に示すように、自動車1の車体構造は、前部に走行用モータ2(図6、図7)や、該走行用モータ2を駆動制御するPCU3(パワーコントロールユニット)(同図参照)等が収容されるモータルームAが設けられている。PCU3と走行用モータ2とは共にモータルームAの車幅方向の中央に配設されるとともに夫々上下各側に配設されている。
モータルームAの左側および及び右側にはフロントサイドフレーム8が設けられている。図1、図2に示すように、モータルームAの後方には車室Bが設けられており、モータルームAと車室Bとはダッシュパネル40により仕切られている。車室Bには、乗員空間Bfと荷室空間Brとを前後各側に備えている。
なお、本実施形態のパネル構造を、ガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車に備えたパネル部材に適用する場合には、モータルームAの代わりに不図示のエンジンや変速機等が収容されるエンジンルームが設けられる。
図1、図2に示すように、車室Bの下方には、該車室Bの下方側の壁部(すなわち床部)を構成するフロアパネル10が配設され、フロアパネル10は、乗員空間Bfの下方側の壁部を構成するフロントフロアパネル10fと、荷室空間Brの下方側の壁部を構成するリヤフロアパネル10rとを、車幅方向に延びる後側クロスメンバ5(キックアップ部)を介して車室Bの前後各側に連接して構成される。
本実施形態では図3に示すように、フロアパネル10のうち、少なくともフロントフロアパネル10fに対して本実施形態のパネル構造を適用しており、フロントフロアパネル10fは、車体下部において左右一対備え、夫々車幅方向外側に備えたサイドシル20と車幅方向の中央部に備えたトンネル部30によって支持されている。
<サイドシル20の構造>
サイドシル20は、車体下部の左右両端を構成する骨格部材であり、アルミニウム又はアルミニウム合金などの軽金属の押出し成形部材により、車両前後方向に延びる中空状であるとともに左右対称形状に構成されている。
図3に示すように、このサイドシル20は、多重壁構造から成るフロントフロアパネル10fを、その車幅方向外端側から支持するように構成されている。
サイドシル20は、共に車幅方向に延びる上壁21および下壁22と、これら上下各壁21,22の車幅方向内側端部および車幅方向外側端部を上下に連結する内側壁23および外側壁24と、サイドシル20の内部において車幅方向に延びる複数の節部25,26とを備えており、上記内側壁23は、下方程車幅方向内側に位置する傾斜状に形成されている。
当例ではサイドシル20内に備えた複数の節部25,26は、これら節部25,26によって、サイドシル20内を、車両前後方向に延びる閉断面が上下方向に3つ並ぶように上下各側に2つ設けられている。これら2つの節部25,26と上壁21および下壁22とは、夫々水平かつ互いに平行に車幅方向および車両前後方向に延びている。
<トンネル部30の構造>
図3に示すように、トンネル部30は、アルミニウム又はアルミニウム合金などの軽金属の押出し成形部材により、車体下部の車幅方向の中央にて、車両前後方向に延びるとともに(図1参照)、車両前後方向の直交断面形状が、上方に膨出(隆起)する中空の略台形状に構成されている。
トンネル部30は、本体部31に対して、該本体部31の下部左右両側から車幅方向外側に向けて突出するとともにトンネルサイドフレームに相当する外側突出部32が一体形成されており、該外側突出部32は、フロントフロアパネル10fの車幅方向内端を支持するものである。
同図に示すように、外側突出部32は、共に車幅方向に延びる上壁33および下壁34と、これら上下各壁33,34の車幅方向外側端部を上下に連結する側壁35と、車幅方向に延びる複数の節部36,37とを備えており、上記側壁35は、下方程車幅方向外側に位置する傾斜状に形成されている。
当例では外側突出部32内に備えた複数の節部36,37は、これら節部36,37によって、外側突出部32内を、車両前後方向に延びる閉断面が上下方向に3つ並ぶように上下各側に2つ設けられている。これら2つの節部36,37と上壁33および下壁34とは、夫々水平になるように互いに平行に車幅方向に延びている。
なお、当例では、本実施形態のパネル構造を適用するフロントフロアパネル10fを備えた自動車1が電気自動車であるため、図3に示すように、トンネル部30の下方へ開口する内部空間30aには、ハーネス91等(例えば、モータルームAに備えたPCU3へバッテリ側から電力を供給する電力供給用のハーネスや、バッテリと車体前端の充電ポート(図示略)とを接続する充電用ハーネス)が配設される。また、トンネル部30の下方開口側は、トンネルカバー部材38で覆われている。
なお、本実施形態のパネル構造を適用するフロントフロアパネル10fを備えた自動車1がガソリンエンジン車やディーゼルエンジン車である場合には、トンネル部30の下方へ開口する内部空間30aには、排気管(プロペラシャフト)が配設される。
<フロントフロアパネル10fについて>
図1〜図3に示すように、本実施形態のパネル構造を適用したフロントフロアパネル10f(以下、「フロアパネル10f」と略記する)は、少なくとも内壁11と外壁12(図2、図3参照)とで構成された多重壁構造により構成される。
上下方向に対向する内壁11と外壁12とは、互いに所定間隔を隔てて対応し、これら内壁11と外壁12との間には、空気が大気圧の状態、又は大気圧から極力減圧された状態で充填された空気層から成る密閉中間層18s,19sが構成されている。
なお、当例では、内壁11と外壁12との間は、密閉中間層18s,19sとして空気層のみで構成したが、これに限定せず、例えば、SF6(六フッ化硫黄)ガスなどの簡易圧縮性に優れた気体、又はキセノンガスやクリプトンガスなどの各種ガスを用いてもよい。さらにまた、内壁11と外壁12との間には、防音性および断熱性の少なくとも一方の性能を有する不図示のコア材を封入して密閉中間層18s,19sを固体相と気相とが混在した構成としてもよい。その場合、コア材は、例えば、不織布等の繊維質又は連続気泡構造を有する材質で形成することができる。
内壁11および外壁12は、フロアパネル10fの面全体に配設されており、該フロアパネル10fは、平面視全体を多重壁構造により構成している。
図1〜図4に示すように、多重壁構造のフロアパネル10fは、その車幅方向の中央部側部位を内壁11と外壁12とによる二重壁構造から成る二重壁パネル部18により構成し、二重壁構造よりも車幅方向外側部位を、これら内壁11および外壁12とこれら壁部11,12の間に配設される中間壁13とによる三重壁構造から成る三重壁パネル部19から構成している。
これら内壁11および外壁12と中間壁13は、共に、アルミニウム、マグネシウム、鉄その他の金属や、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFPRやGFRP等の繊維強化プラスチック、その他の樹脂で形成される。
内壁11は車室B側(上方)に位置するとともに、外壁12は車両外側(下方)に位置し、共に水平かつ互いに略平行に形成している。
フロアパネル10fは、密閉中間層18s,19sの車幅方向外端部、車幅方向内端部、後端部および前端部の夫々において、内壁11と外壁12とを上下方向に連結して該密閉中間層18s,19sを覆う外側壁14(図1、図3、図4参照)、内側壁15(図1、図3参照)、後側壁16(図1、図2参照)、前側壁17(同図参照)を設けて閉断面形状に構成している。
これら側壁14〜17のうち、内側壁15は図3に示すように、下側程車幅方向外側に位置するように傾斜状に形成されており、外側壁14は図3、図4に示すように、下側程車幅方向内側に位置するように傾斜状に形成されている。
そして図3に示すように、トンネル部30側の側壁35の傾斜角度と、フロアパネル10f側の内側壁15の傾斜角度とを同一又は略同一に設定するとともに、サイドシル20側の内側壁23の傾斜角度と、フロアパネル10f側の外側壁14の傾斜角度とを同一又は略同一に設定している。これにより、フロアパネル10fは、その内側壁15がトンネル部30側の側壁35に、外側壁14がサイドシル20側の内側壁23に、夫々上方から面接触状態に載置するように支持されている。
すなわち、多重壁パネル構造から成るフロアパネル10fは、トンネル部30側の側壁35とサイドシル20の内側壁23との間に楔構造にて上方から嵌合固定されている。
なお、当例では、トンネル部30側の側壁35とサイドシル20側の内側壁23との開き角度と、フロアパネル10f側の内側壁15と外側壁14との開き角度とは、夫々同一又は略同一に設定したが、これに限らず、トンネル部30側の側壁35とサイドシル20側の内側壁23との開き角度に対して、フロアパネル10f側の内側壁15と外側壁14との開き角度を大きく設定してもよい。
また当例では図2に示すように、フロアパネル10fの前側壁17および後側壁16は、水平な内壁11および外壁12を略垂直に連結する縦壁状に形成し、夫々車幅方向に延びる前後各側のクロスメンバ4,5に隣接配置している。
但し、これに限らず図示省略するが、前後各側のクロスメンバ4,5は、車両側面視でこれら4,5の間にフロアパネル10fを嵌合可能に上方に向けて口開きする傾斜形状に形成するとともに、これに対応してフロアパネル10fの前側壁17および後側壁16は、前後各側のクロスメンバ4,5間に嵌合可能に傾斜形状に形成してもよい。
また図3に示すように、床下を流れる走行風の整流性の観点で、フロアパネル10f下面と、トンネル部30側における外側突出部32の下面と、サイドシル20の下壁22の下面とが、共に面一になるように形成される一方、側突荷重の車幅方向内側(左右一対のサイドシル20の一方から他方の側)への伝達・分散性の観点でフロアパネル10fの内壁11は、上側の各節部25,36と同一の高さ位置になるように形成されている。
ここで、側突荷重等に対して、フロアパネル10fのトンネル部30およびサイドシル20に対する浮き上がり防止の観点で、トンネル部30の側壁35と、フロアパネル10fの内側壁15との間(図3参照)、並びにサイドシル20側の内側壁23と、フロアパネル10f側の外側壁14との間(同図参照)には、接着材(図示略)を介設し、フロアパネル10fを骨格部材としてのトンネル部30およびサイドシル20に嵌合接着固定してもよい。
なお、当例では、フロアパネル10fを、トンネル部30およびサイドシル20に対して嵌合接着固定したが、これに限らず、接着材を用いた接着固定と併せて締結部材を用いて締結固定する、或いは、接着材を用いずに締結のみで固定してもよい。その場合、押出し成形部材から成るサイドシル20、トンネル部30に対しては、ウェルドナットを用いた溶接が困難であるからボルト締結部位に、タッピングネジやターンナットを用いることが有効である。
また図2、図3に示すように、フロアパネル10fの内壁11の上面には、カーペット6が敷設されている。なお、図1においてはカーペット6の図示を省略している。
ところで、図5は、パネル構造を構成する1枚から5枚のパネル枚数に応じた、遮音量(透過損失)(TL)と騒音周波数(frequency)との関係を示すグラフである。なお、図5中の波形L1〜L5は夫々一重壁、二重壁、三重壁、四重壁、五重壁のパネル構造の場合を示す。
図5に示すように、騒音周波数が約450Hz程度以下のノイズであれば1枚もののパネルの方が多重壁パネル(例えば、2枚〜5枚のうち、いずれかから成るパネル)と比して遮音量が最も高いことが分かる。
これに対して騒音周波数が約450Hzより大きくなると、1枚もののパネルよりも二重壁パネルの方が、遮音量が大幅に高くなり、多重壁パネルは、パネル枚数が増えるに従って、段階的に高い騒音高周波数領域において最も優れた遮音量を示すことが分かる。
例えば、図5から明らかなとおり、騒音周波数領域が約450Hz〜約1000Hzにおいては、多重壁パネルの中でも二重壁パネルが最も優れた遮音性能を示し(波形L2参照)、同じく約1000Hz〜約1800Hzにおいては、三重壁パネルが最も優れた遮音性能を示す(波形L3参照)。
ここで、例えば、ロードノイズの中でも荒れた路面を車両が走行時に発生するロードノイズは、一般に約80Hz〜約400Hz程度の騒音周波数領域となる。このようなロードノイズ等、500Hz以下の低い騒音周波数領域のノイズは、通常、車体の骨格部材等の振動エネルギに起因して乗員空間Bf(車室B)に伝播されるため、このような低い騒音周波数領域のノイズに対しては、車両の骨格部材を補強する等によって車室Bへの遮音性能を確保している。
これに対して例えば、ロードノイズの中でも、平坦な路面を車両が高速走行時に発生するロードノイズは、500Hz以上の騒音周波数領域を示す。このようなロードノイズ等、500Hz以上の騒音周波数領域のノイズに対しては、1枚もののパネルの場合には、多重壁パネル構造と比して遮音量が低く不利であり(図5参照)、また、500Hz以上の騒音周波数領域のノイズは、一般に車両の骨格部材を介してというよりも空気を介して乗員空間Bf(車室B)に伝播され易い。
そこで本実施形態のフロアパネル10fは、その車両平面視で全体を多重壁パネル構造とし、特に車幅方向内側に上記二重壁パネル部18を設けることで、例えば、上述したように車両が高速走行時に発せられるロードノイズのような500Hz以上(1000Hz以下)の騒音周波数領域のノイズに対しての遮音性能を高めている。
また、車体周辺に音源を有するノイズの中でもタイヤノイズは、図5の横軸下欄に示すように、一般に約500Hz〜約1600Hzの騒音周波数を示すとされている。但し、タイヤの溝パターン等によっては、車両走行時に1000Hz〜約1600Hzの高周波領域のタイヤノイズを発するタイヤが一般に存在し、当例の自動車1には、このような車両走行時に高周波領域のタイヤノイズを発するタイヤ7が左右各側の前輪および後輪に標準装備されているものとする。
このため、当例の自動車1に備えたフロアパネル10fも、このような高周波音源としてのタイヤ7から車両走行中に発せられるノイズ(高周波タイヤノイズ)の遮音に適した高周波音源対応のパネル構造を採用したものである。
具体的には図1に示すように、フロアパネル10fの平面視における少なくとも、車両走行時に高周波音源となるタイヤ7の周辺部位Cf,Cr(すなわち図1に示すように、左右各側のフロアパネル10fの前輪の直後に位置する前側コーナー部位Cfと、左右両サイドの後輪の直前に位置する後側コーナー部位Cr)には、車両走行中に該タイヤ7から発せられる騒音周波数(1000Hz〜約1600Hz)において最も優れた遮音性能を示す三重パネル構造を適用したものである(図5中の波形L3参照)。
さらに当例の左右両側のフロアパネル10fは、該フロアパネル10fの生産性(成形性)向上の観点から平面視で前後各側のコーナー部Cf,Crに加えて該前後各側のコーナー部Cf,Crの間部分についても三重パネル構造により構成している(図1、図2参照)。
すなわち図1〜図3に示すように、当例の左右両側のフロアパネル10fは、その車幅方向外側において、三重壁パネル部19を車両前後方向全長に亘って形成している。
また、三重壁パネル部19の内部の密閉中間層19s(19su,19sd)には、該密閉中間層19sを上下各側に区分けする中間壁13が配設されている。中間壁13は図2に示すように、フロアパネル10fの前側壁17と後側壁16とを連結するように車両前後方向に延びるとともに、図1、図3、図4に示すように、該中間壁13の車幅方向の外端がフロアパネル10fの外側壁14に車両前後方向の全長に亘って一体に形成されている。中間壁13は、上下各側の密閉中間層19s(19su,19sd)の上下幅が同じ位置となるように水平かつ、内壁11および外壁12に対して平行に配設されている(図3、図4参照)。
このように、フロアパネル10fは少なくとも、車両走行時に高周波音源となるタイヤ7の周辺部位Cf,Crを、三重壁パネル部19として構成することで、該部位Cf,Crを例えば、1枚もののパネル或いは二重壁パネル部18で構成するよりも高周波タイヤノイズの遮音性能において有利な構成とすることができる。
また、二重壁パネル部18と三重壁パネル部19との間部分には、これら18,19を車幅方向に仕切る仕切壁29(図4中の仮想線参照)を設けてもよいが、当例のフロアパネル10fは、二重壁パネル部18と三重壁パネル部19との間部分に、仕切壁29を設けずに、三重壁パネル部19の上下各側の密閉中間層19su,19sdと、二重壁パネル部18の密閉中間層18sとは車幅方向に互いに連通している。
この構成により、フロアパネル10fにおける、二重壁パネル部18と三重壁パネル部19との間部分においては、二重壁パネル部18が示す遮音特性(図5中の波形L2の特性)と、三重壁パネル部19が示す遮音特性(図5中の波形L3の特性)との中間的な遮音特性を示すことができる。
具体的には図示省略するが、二重壁パネル部18と三重壁パネル部19との間部分は、二重壁パネル部18にとって遮音量が高い周波数領域(450Hz〜約1000Hz)と、三重壁パネル部19にとって遮音量が高い周波数領域(約1000Hz〜約1800Hz)との間の周波数領域において優れた遮音性能を発揮する。
また本実施形態においては、図4に示すように、三重壁パネル部19の上下各側の密閉中間層19su,19sdのうち、少なくとも一方の密閉中間層19s(当例では、上側の密閉中間層19su)を、例えば、ハーネス、空調ダクト、或いは配管類の配索部材90を格納する格納空間としても兼用している。
配索部材90は、バッテリと電装部品(「補機」とも称する)とを電気的・物理的に接続するハーネスや、例えば、走行用モータ2に電力を供給する電力変換装置に備えた各種素子を冷却する冷却水路用の配管等を挙げることができる。
電装装置は、バッテリの電力により駆動される例えば、スタータ、ホーン、パワーウインドウ、ワイパー、オーディオシステム、ウインカー、ヘッドライト等の機器である。
図4に示すように、三重壁パネル部19の内壁11の車両前後方向の少なくとも一部には、開口27が貫通形成されており、該開口27を通じて配索部材90が、例えば、車両前後方向に沿って配索した状態で上側の密閉中間層19suに格納される。さらに、開口27の縁部には、該開口27を開閉可能とする蓋部28を備え、蓋部28によって開口27を閉塞することで密閉中間層18s,19sを略密閉状態に保っている。また、配索部材90は、その車両前後方向の少なくとも一部が例えば、ブラケット9を介して中間壁13に取り付けられる(図4参照)。
このように配索部材90を、フロアパネル10f内の密閉中間層19suに格納することで、フロアパネル10fの上面(内壁11の上面)或いは下面(外壁12の下面)に配索するよりも車室Bや床下における、配索部材90の配索スペースを削減できる。
なお、当例は、三重壁パネル部19の上側の密閉中間層19suを配索部材90の格納空間として兼用する構成を採用したが、これに限らず、上下両側の密閉中間層19su,19sdのうち少なくとも一方を配索部材90の格納空間として兼用してもよい。
また言うまでもなく、二重壁パネル部18の密閉中間層18sを配索部材90の格納空間として兼用することも排除しないが、配索部材90を三重壁パネル部19内の中間壁13によって区分けされた密閉中間層19su,19sdに格納することで、空調ダクトやハーネス等を二重壁パネル部18の密閉中間層18sにまとめて格納するよりも上下各側の密閉中間層19su,19sdごとに整理して格納することができる。
さらに、配索部材90を、フロアパネル10fに取り付けるに際して、該フロアパネル10fの内壁11や外壁12に対して配索部材取付け用のボルト締結穴を形成せずとも、中間壁13に形成したボルト締結穴等を利用して取り付けることができるため、フロアパネル10f内の気密性を確保し易くなるというメリットも有する。
また図1、図2に示すように、三重壁パネル部19をフロアパネル10fの車幅方向外側の車両前後方向の全長に亘って形成することで、ハーネスや配管等の配索部材90を車両前後方向に沿った配索状態で密閉中間層19su,19sdに格納することができる。
図1〜図4に示すように、上述した本実施形態の自動車1のパネル構造は、車室B(特に乗員空間Bf)の壁面を形成するフロアパネル10f(パネル)を、上下方向に対向する内壁11と外壁12との間に密閉中間層18s,19sが構成された多重壁構造により構成した自動車のパネル構造であって(図3参照)、上記多重壁構造は、内壁11と外壁12との二重壁から成る二重壁パネル構造(低周波音源対応パネル構造)、又は内壁11と外壁12と、これら壁部11,12に対して密閉中間層18s,19sにおいて対向して配置される中間壁13とを備えた、三重壁から成る三重壁パネル構造(多重壁パネル構造、高周波音源対応パネル構造)から構成し、乗員空間Bf周辺における、車両が高速走行時に相対的に低周波領域(約500Hz以上〜約1000Hz)のノイズを発する路面(低周波音源)に近い(換言すると、走行時に相対的に高周波音源となるタイヤ7から遠い)、フロアパネル10fの車幅方向中央部(少なくとも一部)を、二重壁パネル構造から成る二重壁パネル部18により構成するとともに、車両走行時に相対的に高周波領域(約1000Hz以上〜約1600Hz)のノイズを発する高周波音源となるタイヤ7に近いフロアパネル10fの車幅方向外側部(少なくとも一部)を、三重壁パネル構造から成る三重壁パネル部19により構成したものである。
上記構成によれば、乗員空間Bf周辺に有する、車両が高速走行時に相対的に路面から発せられる低周波領域のノイズを二重壁パネル部18の透過損失によって、同じく乗員空間Bf周辺に有する、車両走行時に相対的に高周波音源となるタイヤ7から発せられる高周波領域のノイズを、三重壁パネル部19の透過損失によって、夫々効率よく吸収できる。
この発明の態様として、フロアパネル10fに、二重壁パネル部18と、三重壁パネル部19とが設けられ、三重壁パネル部19の上下方向(厚み方向)に有する2つ(複数)の密閉中間層19s(19su,19sd)と、二重壁パネル部18に有する密閉中間層18sとを、これら18s,19sの間において仕切らずに、車幅方向に連通させて構成したものである(図3、図4参照)。
上記構成によれば、二重壁パネル部18と三重壁パネル部19との各密閉中間層18s,19sの間部分(境界部分)に、仕切壁29(図4参照)を設けないことで、この間部分において、二重壁パネル部18により得られる透過損失性能と三重壁パネル部19によって得られる透過損失性能との中間的な透過損失性能を得ることができる。
この発明の態様として、フロアパネル10fの車両底面視における、タイヤ7の周辺部位Cf,Crに、三重壁パネル部19を設けるとともに、該タイヤ7の周辺部位Cf,Cr以外の少なくとも一部位、詳しくは三重壁パネル部19以外の少なくとも一部位に、二重壁パネル部18を設けたものである(図1、図3、図4参照)。
上記構成によれば、フロアパネル10fの車両底面視における、タイヤ7(車輪)周辺部位Cf,Cr以外の少なくとも一部位に位置する車幅方向の内側部位に設けた二重壁パネル部18によって、低周波領域のノイズ(例えば、車両が高速走行時に路面から発生するロードノイズ)を効率的に吸収することができる。
一方、例えば、車体に標準装着される、メーカー推奨のタイヤが、車両走行中に高周波ノイズを主に発生するタイヤ7である場合には、車両底面視における少なくともタイヤ7の周辺部位Cf,Crに、三重壁パネル部19を設けることにより、このような高周波タイヤノイズを効率的に吸収することができる。
この発明の態様として、三重壁パネル部19に有する複数の密閉中間層19s(19su,19sd)のうち少なくとも1つの密閉中間層19s(当例では上側の密閉中間層19su)を、配管やハーネス等の配索部材90を格納する格納空間として兼用させたものである(図4参照)。
上記構成によれば、配索部材90を密閉中間層19sに格納することで、密閉中間層19sを、配索部材90を格納する格納スペースとして有効利用してフロアパネル10fに対して外側への配索スペースを省略することができる。
<ダッシュパネル40への適用例>
本実施形態の多重壁構造は、上述したようにフロアパネル10fに適用する限らず、ダッシュパネル40に適用してもよい。
以下、少なくとも内壁41と外壁42とで構成された多重壁構造を適用したダッシュパネル40実施形態について主に図6、図7を用いて説明する。但し、当該ダッシュパネル40は、上述した電気自動車1に備えたものであるため、前提となる車体構造については同一の符号を付してその説明を省略する。
多重壁構造のダッシュパネル40は、図6、図7に示すように、車室B(乗員空間Bf)の前方側の壁部を形成し、左右一対のヒンジピラー80(図1参照)間に車幅方向および上下方向に縦壁状に延びており、図2、図6に示すように、下端部が、車幅方向に延びる前側クロスメンバ4に下側から支持されている。
多重壁構造のダッシュパネル40は、車両前後方向に対向する内壁41と外壁42とが、所定間隔を隔てて対応し、これら内壁41と外壁42との間には、空気が大気圧の状態、又は大気圧から極力減圧した負圧状態で充填された空気層から成る密閉中間層48s,49sが構成されている。
ダッシュパネル40は、内壁41および外壁42が正面視全体に配設された多重壁構造により構成されている。内壁41は、車室B側(後方)に位置するとともに外壁42は、モータルームA側(前方)に位置し、共に水平かつ互いに略平行に形成している。
ダッシュパネル40は、密閉中間層48s,49sの右端部、左端部、上端部および下端部において、夫々内壁41と外壁42とを車両前後方向に連結して該密閉中間層48s,49sを覆う右側壁43(図7参照)、左側壁44(同図参照)、上側壁45(図6参照)、下側壁46(同図参照)を設けて閉断面形状に構成している。
多重壁構造のダッシュパネル40は、図7に示すように、車両走行時にPCU3や走行用モータ2から発せられる約1000Hz以上の高周波領域のノイズの遮音に有効な三重壁パネル部48を車幅方向中央部に設けるとともに、高速走行時に路面から発せられるロードノイズのような約500Hz〜約1000Hzの騒音周波数領域のノイズの遮音に有効な二重壁パネル部49を車幅方向外側に設けたものである。
詳述すると図6、図7に示すように、当例の電気自動は、PCU3(パワーコントロールユニット)と走行用モータ2とが、モータルームAの車幅方向の中央部にて夫々上下各側に配設されている。
そして、走行用モータ2が発生するノイズのうち、該走行用モータ2の電磁強制力による電磁ノイズは、モータ回転数に同期して高周波になり得るとともに、PCU3での昇圧時やDC/AC変換時に発生するスイッチングノイズも高周波になり得る。
このため、当例のダッシュパネル40は、車両走行中に約1000Hz以上の高周波ノイズ(高周波モータノイズ)を発し得るこれら高周波音源としての走行用モータ2やPCU3の周辺(直後)部分に相当する車幅方向の中央部を、三重壁パネル部48により構成するとともに、正面視で該三重壁パネル部48の周辺部分(車幅方向外側部分)を二重壁パネル部49により構成している。
三重壁パネル部48は、内壁41および外壁42とこれら壁部41,42の間に配設される中間壁47とによって構成され、ダッシュパネル40の車幅方向の中央部において、少なくともPCU3および走行用モータ2の車幅方向長さを有して上下方向全体に亘って形成されている(図6、図7参照)。すなわち、三重壁パネル部48に備えた中間壁47は、内壁41と外壁42に対して平行に配設され、ダッシュパネル40の上側壁45と下側壁46とを連結するように上下方向に延びている。
これにより、三重壁パネル部48は、その上部がPCU3の直後部位に位置するとともに、その下部が走行用モータ2の直後部位に位置する。
ダッシュパネル40についてもフロアパネル10fと同様に、内壁41および外壁42と中間壁47が、アルミニウム、マグネシウム、鉄その他の金属や、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFPRやGFRP等の繊維強化プラスチック、その他の樹脂で形成される。
また図6、図7に示すように、ダッシュパネル40の外壁42の前面の略全体には、シート状の吸音部材140が固着されている。この吸音部材140は、図5中の一枚もののパネル(波形L1)と同様に、約450Hz以下の騒音周波数領域のノイズに対する遮音性能に優れている。
この構成により、二重壁パネル部49と三重壁パネル部48とによって遮音するうえで不利な、約450Hz以下の低周波数領域のノイズに対してダッシュパネル40の遮音性能を担保している。
なお、図2において吸音部材140の図示を省略している。
また図7に示すように、ダッシュパネル40は、フロアパネル10fと同様に、正面視で三重壁パネル部48と、その車幅方向両外側の二重壁パネル部49との各間部分において、例えば、車両前後方向に延びる縦壁状の仕切壁29を設けずに、三重壁パネル部48の前後各側の密閉中間層48sf,48srと、二重壁パネル部49の密閉中間層49sとは、これらの間部分において車幅方向に互いに連通している。
図6、図7に示すように、上述した本実施形態の自動車1のパネル構造は、車室B(特に乗員空間Bf)の前壁を形成するダッシュパネル40(パネル)を、車両前後方向に対向する内壁41と外壁42との間に密閉中間層48s,49sが構成された多重壁構造により構成した自動車のパネル構造であって、上記多重壁構造は、内壁41と外壁42との二重壁から成る二重壁パネル構造(低周波音源対応パネル構造)、又は内壁41と外壁42と、これら壁部41,42に対して密閉中間層48sにおいて対向して配置される中間壁47とを備えた三重壁パネル構造(多重壁パネル構造、高周波音源対応パネル構造)から構成し、車両走行時に相対的に高周波音源となる走行用モータ2周辺部位に近い、ダッシュパネル40の正面視中央部を、三重壁パネル構造から成る三重壁パネル部48により構成するとともに、車両が高速走行時に相対的に低周波のロードノイズを発する低周波音源となる路面に近い部位、すなわち、相対的に走行用モータ2やPCU3から遠い、これら2,3の周辺部位以外の車幅方向外側部位を、二重壁パネル構造から成る二重壁パネル部49により構成したものである。
上記構成によれば、走行用モータ2およびPCU3の周辺部位に設けた三重壁パネル部48によって、車両走行時に走行用モータ2およびPCU3から発せられる約1000Hz以上の高周波領域のノイズ(高周波モータノイズ)を効率的に遮音することができる。
一方、ダッシュパネル40における、正面視で走行用モータ2およびPCU3の周辺部位以外の部位に設けた二重壁パネル部49によって、特に約500Hz〜約1000Hzの低周波領域のロードノイズを効率的に遮音することができる。
この発明の態様として、ダッシュパネル40の外壁42のモータルームA側の面に吸音部材140を備えたものである(図6、図7参照)。
上記構成によれば、二重壁パネル部49や三重壁パネル部48によって遮音することが不利な500Hz以下の低周波領域のノイズを吸音部材140によって効果的に遮音できるため、ダッシュパネル40は、二重壁パネル部49や三重壁パネル部48とともに広い周波波領域のノイズを遮音することができる。
なお他の実施形態として、ダッシュパネル40は図示省略するが、フロアパネル10fと同様に内部の密閉中間層48s,49s、特に三重壁パネル部48内部の中間壁47によって前後各側に仕切られた密閉中間層48sf,48srのうち、少なくとも一方を、車体に配索する配索部材90(図4参照)を格納する格納空間として兼用させてもよい。
また他の実施形態として、ダッシュパネル40は図示省略するが、三重壁パネル部48を、該ダッシュパネル40の車幅方向の中央の上下方向の全体に亘って設けたが、PCU3の直後部分に相当する上部と、走行用モータ2の直後部分に相当する下部とのうち、いずれか一方のみに設けた構造を採用してもよく、或いは、ロードノイズよりも高周波モータノイズの遮音を優先してダッシュパネル40の正面視全体を三重壁パネル部48により構成した構造を採用してもよい。
<ルーフパネル60への適用例>
以下、本実施形態の多重壁構造を、車室B(特に乗員空間Bf)の上方側の壁部(すなわち天井部)を構成するルーフパネル60に適用した実施例について主に図8、図9を用いて説明する。
多重壁構造を適用したルーフパネル60を備えた自動車1のルーフ部50は、図8、図9に示すように、車体上部の左右一対のルーフサイドレール51と、これら左右一対のルーフサイドレール51の前後各端において車幅方向に架設されるフロントヘッダ52およびリヤヘッダ53とを備えている。
ルーフ部50の前側には、フロントウインドウ部材としてのフロントウインドガラス55が前方程下方に位置する傾斜姿勢で配設され、該フロントウインドガラス55の左右両側には、該フロントウインドガラス55の左右各辺を支持する骨格部材であるフロントピラー56(図8参照)によって支持されている。
ルーフ部50の後側には、リヤウインドウ部材としてのリヤウインドガラス57が後方程下方に位置する傾斜姿勢で配設され、該リヤウインドガラス57の左右両側には、該リヤウインドガラス57の左右各辺を支持する骨格部材であるリヤピラー58(図8参照)によって支持されている。
フロントヘッダ52、リヤヘッダ53、ルーフサイドレール51は共に、車両前後方向に延びる中空断面が構成された骨格部材であり、このうち、ルーフサイドレール51は、前端部がフロントピラー56の上端に、後端部がリヤピラー58の上端に夫々接合されている。
ルーフパネル60は、フロントヘッダ52とリヤヘッダ53との間、および一対のルーフサイドレール51間の空間を覆うように、これら骨格部材に取り付けられる。
図9に示すように、多重壁構造のルーフパネル60は、上下方向に対向する外壁61と内壁62とが、所定間隔を隔てて対応し、これら外壁61と内壁62との間には、空気が大気圧の状態、又は大気圧から極力減圧した負圧状態で充填された空気層から成る密閉中間層67s,68sが構成されている。
ルーフパネル60は、図8、図9に示すように、密閉中間層67s,68sの右端部、左端部、前端部および後端部の夫々において、外壁61と内壁62とを上下方向に連結して該密閉中間層67s,68sを覆う右側壁63(図8参照)、左側壁64(同図参照)、前側壁65、後側壁66を設けて閉断面形状に構成している。
これにより図9に示すように、ルーフパネル60は、内壁62および外壁61が平面視全体に配設された多重壁構造により構成されている。内壁62は、車室B側(下方)に位置するとともに外壁61は、車両外側(上方)に位置し、共に水平かつ互いに略平行に形成している。
図8、図9に示すように、多重壁構造のルーフパネル60は、その前後両端部位に三重壁パネル部67(67f,67r)を構成するとともに、これら前後各側の三重壁パネル部67(前側三重壁パネル部67fと後側三重壁パネル部67r)の間の部位に二重壁パネル部68を構成している。
詳述すると、車両走行時に走行風は、ルーフ部50の前端において、フロントウインドガラス55からルーフパネル60に沿って流れる際、並びにルーフ部50の後端において、ルーフパネル60からリヤウインドガラス57に沿って流れる際に、車体表面から剥離し易い。このため、ルーフ部50の前後各端は、走行風の乱流が促進されることで風騒音(風切音)が発生し易い。
これに対して本実施形態においては、ルーフ部50の前端に位置するフロントヘッダ52の直後部分に相当するルーフパネル60の前端部位と、ルーフ部50の後端に位置するリヤヘッダ53の直後部分に相当するルーフパネル60の後端部位とに、共に車両の走行時に走行風によって発生する高周波領域(約1000Hz以上)のノイズ(風騒音)の遮音に有効な三重壁パネル部67を設けている。
三重壁パネル部67は図9に示すように、外壁61および内壁62とこれら壁部61,62の間に配設される中間壁69とによって構成されている。ルーフパネル60の前後各端の中間壁69は図8に示すように、共に右側壁63と左側壁64とを連結するようにルーフパネル60の車幅方向全長に亘って延びるとともに外壁61と内壁62とに対して平行に配設されている。さらに、前側三重壁パネル部67fの前端の中間壁69は、前縁がルーフパネル60の前側壁65に対して、後側三重壁パネル部67rの中間壁69は、後縁がルーフパネル60の後側壁66に対して、夫々車幅方向全長に亘って一体に形成されている。
このように、ルーフパネル60は、車両走行時に走行風により発せられる約1000Hz以上の高周波領域のノイズ(風打ち音)の遮音に有効な三重壁パネル部67を前後各端部に設けたものである。
一方、ルーフパネル60は、前後各端の三重壁パネル部67の間部分に、二重壁パネル部68を設けている。これにより例えば、車両が高速走行時に発せられるロードノイズのような約500Hz以上〜約1000Hz以下の低周波数領域のノイズに対しても優れた遮音性能を有する構成としている。
また、ルーフパネル60についてもフロアパネル10fやダッシュパネル40と同様に、内壁62および外壁61と中間壁69が、アルミニウム、マグネシウム、鉄その他の金属や、ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、CFPRやGFRP等の繊維強化プラスチック、その他の樹脂で形成される。
さらにまたルーフパネル60は、車両平面視で二重壁パネル部68と三重壁パネル部67との間部分において、例えば、上下方向に延びる縦壁状の仕切壁29(図9参照)を設けておらず、三重壁パネル部67の上下各側の密閉中間層67su,68sdと、二重壁パネル部68の密閉中間層68sとは、これらの間部分において車両前後方向に互いに連通している。
図8、図9に示すように、上述した本実施形態の自動車1のパネル構造は、車室B(特に乗員空間Bf)の上壁を形成するルーフパネル60(パネル)を、上下方向に対向する外壁61と内壁62との間に密閉中間層67s,68sが構成された多重壁構造により構成した自動車のパネル構造であって(図9参照)、上記多重壁構造は、外壁61と内壁62との二重壁から成る二重壁パネル構造(低周波音源対応パネル構造)、又は外壁61と内壁62と、これら壁部61,62に対して上記密閉中間層67sにおいて対向して配置される中間壁69とを備えた三重壁パネル構造(多重壁パネル構造、高周波音源対応パネル構造)から構成し、車両走行時に相対的に高周波音源(風騒音の発生源)となるルーフ部50の前後端に近い、上記ルーフパネル60の前後両端を、三重壁パネル構造から成る三重壁パネル部67により構成するとともに、車両走行時に相対的に高周波音源となるルーフ部50の前後端から遠い、上記ルーフパネル60の三重壁パネル部67以外の車両前後方向の中間部位を、二重壁パネル構造から成る二重壁パネル部68により構成したものである。
上記構成によれば、上記ルーフパネル60の前後両端に、三重壁パネル部67を設けることにより、ルーフパネル60から乗員空間Bfに伝播しようとする風騒音を効果的に遮音することができる。
さらに、ルーフパネル60の三重壁パネル部67以外の部位に、二重壁パネル部68を設けることで、約500Hz〜約1000Hz程度の低周波領域のノイズも遮音できるとともに、ルーフパネル60全体に三重壁パネル部67を設ける場合と比して該ルーフパネル60の軽量化を図ることができる。
また、ルーフパネル60は、フロアパネル10fやダッシュパネル40と同様に内部の密閉中間層67s,68s、特に三重壁パネル部67内部の上下各側の密閉中間層67s(67su,67sd)を、車体に配索する配索部材90(図4参照)を格納する格納空間として兼用させてもよい。
この場合図8、図9に示すように、例えば、ルーフパネル60の内部に構成した密閉中間層67s,68sによって、配索部材90としてのルーフランプ用ハーネス71(照明用ハーネス71)の配索経路の少なくとも一部を格納することができる。
具体的には、照明用ハーネス71は、車体側からルーフ部50に対して例えば、図8に示すように、前方かつ右方のフロントピラー56の中空状の内部を経由してルーフ部50に至るまで配索される。
さらに、ルーフ部50の前右コーナー部にてルーフパネル60の右側壁63に設けた開口(図示略)を通じて、照明用ハーネス71が、ルーフパネル60の内部に構成した密閉中間層67sに取り込まれる。
そして、照明用ハーネス71は、前側三重壁パネル部67fの内部において、該前側三重壁パネル部67の上下各側の密閉中間層67s(67su,67sd)のうち、例えば、下側の密閉中間層67sdに沿ってルーフパネル60の車幅方向の中間部まで配索され、平面視で略直角に屈曲された屈曲部71aを介してルーフパネル60の平面視略中央に設けられたランプユニット70まで二重壁パネル部68内の密閉中間層68sに格納された状態で配索される。
このように、照明用ハーネス71の少なくとも配索経路の一部を、三重壁パネル部67の中間壁69によって区分けされた密閉中間層67sに沿ってに配索することで、該照明用ハーネス71を、中間壁69等に取り付け易く、ルーフパネル60内に格納した照明用ハーネス71以外の配索部材90と混在することなく、ルーフパネル60内部において整理した状態で配索することができる。
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
本発明のパネルは、上述した実施形態のように、二重壁パネル部と三重壁パネル部とで構成するに限らず、低・中・高周波数の音源を備える場合、低周波の音源に近接する部位に二重壁部、中周波の音源に近接する部位に三重壁部、高周波の音源に近接する部位に四重壁部を備える等、二重壁〜五重壁のパネル部を組み合わせて構成してもよく、或いは相対的に高周波領域(約1000Hz以上)のノイズの遮音に有利な三重壁以上の多重壁パネル部のみで全体を構成してもよい。
また、複数の異なるパネルに応じて二重壁〜五重壁のパネルを適用してもよく、例えばフロアパネルを二重壁パネルで構成し、ダッシュパネルを三重壁パネルで構成してもよい。