JP6982552B2 - 錠剤及びその製造方法 - Google Patents
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Description
[1]キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分を含有するとともに、全固形分に占める前記粉末成分の割合が10質量%以上であり、前記粉末成分の粒度が、80メッシュの篩をパスする粒度であり、硬度が10〜30kgfであり、撹拌状態の37℃の水に投入してから、その原形を目視により観察できなくなるまでの時間が、120秒以内である錠剤(但し、賦形剤を含有するものを除く)。
[2]前記粉末成分が、脱アセチル化度が70%以上のキトサンの粉末である前記[1]に記載の錠剤。
[3]前記粉末成分が、セルロースの粉末をさらに含む前記[1]又は[2]に記載の錠剤。
[4]滑沢剤をさらに含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の錠剤。
[5]経口用錠剤である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の錠剤。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の錠剤の製造方法であって、80メッシュの篩をパスする粒度である、キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分と水を混合し、下記式(1)で表される水添加率が200〜400質量%である含水原料を得る工程と、得られた前記含水原料を加熱条件下で撹拌した後、乾燥及び分級して、含水率が15質量%以下である乾燥粉末を得る工程と、得られた前記乾燥粉末を含有する成型原料を成型して錠剤を得る工程と、を有する錠剤の製造方法。
水添加率(質量%)=(W/P)×100 ・・・(1)
P:粉末成分の量(g)
W:添加する水の量(g)
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の錠剤は、キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分を含有するとともに、全固形分に占める粉末成分の割合が10質量%以上である。以下、その詳細について説明する。
本発明の錠剤に用いる粉末成分は、キチン及びキトサンの少なくともいずれかである。キチンは、2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコース(N−アセチルグルコサミン)を構成単位とする塩基性多糖類(β−(1→4)−2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコース)である。また、キトサンはキチンの脱アセチル化物であり、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース(グルコサミン)を構成単位とする塩基性多糖類(β−(1→4)−2−アミノ−2−デオキシ−β−D−グルコース)である。また、本発明の錠剤に用いる粉末成分は、セルロースの粉末をさらに含むことが好ましい。キチン、キトサン、及びセルロースは、いずれも工業的に生産されており、種々のグレードのものをそれぞれ入手することができる。本発明においては、キチン及びキトサンの少なくともいずれかを用いることが、脂肪吸収阻害効果、降コレステロール作用、血圧低下効果、血中尿酸レベル低下効果、重金属吸着能等の種々の生理活性を錠剤に付与しうるために好ましい。
0.5質量%酢酸水溶液にキトサン純分濃度が0.5質量%となるようにキトサンを添加し、キトサンを撹拌及び溶解して100gの0.5質量%キトサン/0.5質量%酢酸水溶液を調製する。次に、この溶液10gとイオン交換水90gを撹拌混合して、0.05質量%のキトサン溶液を調製する。さらに、この0.05質量%キトサン溶液10gにイオン交換水50mL、トルイジンブルー溶液約0.2mLを添加して試料溶液を調製し、ポリビニル硫酸カリウム溶液(N/400PVSK)にて滴定する。滴定速度は2〜5ml/分とし、試料溶液が青から赤紫色に変色後、30秒間以上保持する点を終点の滴定量とする。なお、キトサン純分とは、原料キトサン試料中のキトサンの質量を意味する。具体的には、原料キトサン試料を105℃で2時間乾燥して求められる固形分質量である。
上記の滴定試験に使用した0.5質量%キトサン/0.5質量%酢酸水溶液に代えて、イオン交換水を使用し、同様の滴定試験を行う。
X=1/400×161×f×(V−B)/1000
=0.4025×f×(V−B)/1000
Y=0.5/100−X
X:キトサン中の遊離アミノ基質量(グルコサミン残基質量に相当)
Y:キトサン中の結合アミノ基質量(N−アセチルグルコサミン残基質量に相当)
f:N/400PVSKの力価
V:試料溶液の滴定量(mL)
B:空試験滴定量(mL)
脱アセチル化度(%)
=(遊離アミノ基)/{(遊離アミノ基)+(結合アミノ基)}×100
=(X/161)/(X/161+Y/203)×100
なお、「161」はグルコサミン残基の分子量、「203」はN−アセチルグルコサミン残基の分子量である。
本発明の錠剤は、上記の粉末成分以外の成分(その他の成分)を含有してもよい。その他の成分としては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、分散剤、防腐剤などの、一般的な錠剤を構成するために用いられる各種成分を挙げることができる。
次に、上述の錠剤の製造方法について説明する。本発明の錠剤の製造方法は、80メッシュの篩をパスする粒度である、キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分と水を混合し、下記式(1)で表される水添加率が200〜400質量%である含水原料を得る工程(工程(1))と、得られた含水原料を乾燥及び分級して、含水率が15質量%以下である乾燥粉末を得る工程(工程(2))と、得られた乾燥粉末を含有する成型原料を成型して錠剤を得る工程(工程(3))と、を有する。以下、その詳細について説明する。
水添加率(質量%)=(W/P)×100 ・・・(1)
P:粉末成分の量(g)
W:添加する水の量(g)
工程(1)では、その粒度が80メッシュパスである粉末成分と水を混合し、水添加率が200〜400質量%である含水原料を得る。粉末成分と水を混合することで、粉末成分(キトサン粒子、キチン粒子)の粒子表面を処理することができる。これにより、最終的に得られる錠剤の分散性を向上させることができる。なお、80メッシュオンの粉末成分を用いると、成型が困難になる。また、工程(1)や、後述する工程(2)を実施することなく、キチンやキトサンの粗体をカッターミルやジェットミル等によって粉砕処理して得た粉末成分をそのまま用いて錠剤成型すると、得られる錠剤が水中で分散しにくくなり、分散時間が長くなる。
工程(2)では、工程(1)で得た含水原料を乾燥及び分級して乾燥粉末を得る。乾燥粉末の含水率は15質量%以下、好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下とする。含水原料を乾燥して得られる乾燥粉末の含水率が15質量%超であると、長期保管した際に、メイラード反応等による着色及び低分子化反応が起こりやすくなる。
工程(3)では、工程(2)で得た乾燥粉末を含有する成型原料を成型する。これにより、本発明の錠剤を得ることができる。乾燥粉末のみを成型原料として用いてもよく、乾燥粉末とその他の成分を配合して成型原料を調製してもよい。その他の成分としては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、着香剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、分散剤、補助剤、防腐剤、緩衝剤などの、一般的な錠剤を構成するための前述の各種成分を用いることができる。また、錠剤は、打錠機などの錠剤成型機を用いる一般的な錠剤成型法により成型原料を打錠することによって製造することができる。
上記の製造方法によって製造される本発明の錠剤(例えば、乾燥粉末を含有する成型原料を、圧縮機を用いて2tfの圧縮圧で成型して得られる、直径8mm、200mgの円柱形状の錠剤)の硬度(錠剤硬度)は、8〜30kgfであり、好ましくは10kgf以上である。すなわち、本発明の製造方法によって製造される錠剤は硬度が十分に高いため、輸送時や保管時に包装内で割れ、欠け、摩損等の不具合が発生しにくい。本明細書における錠剤の硬度(錠剤硬度)は、錠剤硬度計(例えば、商品名「モンサント錠剤硬度計 B型」、富士理化工業社製)を使用し、錠剤を水平方向に圧縮破断する際に要した荷重(単位;kgf)である。なお、各処方につき5回測定した平均値を錠剤硬度とした。
[分散時間の測定]
100mLビーカーに37℃の水を約80mL入れ、2cmのマグネットスターラーにて400rpmの回転速度で撹拌しつつ、水面より2cmの高さから錠剤を投入する。錠剤が水と接触してから、膨潤及び分散し、錠剤の原形が目視で確認できなくなるまでの時間を5回測定し、その平均値を分散時間(単位:秒)とする。
(製造例1)
重量平均分子量100万、脱アセチル化度85%のキトサン粗体をジェットミルで粉砕し、100メッシュパス、含水率8%のキトサン粉末を得た。
重量平均分子量150万、脱アセチル化度91%のキトサン粗体をジェットミルで粉砕し、80メッシュパス、含水率7%のキトサン粉末を得た。
重量平均分子量150万、脱アセチル化度91%のキトサン粗体をジェットミルで粉砕し、60メッシュパスであるとともに、80メッシュオンである(80メッシュの篩を通過しない)、含水率12%のキトサン粉末を得た。
重量平均分子量150万、脱アセチル化度5%のキチン粗体をカッターミルで粉砕し、80メッシュパス、含水率9%のキチン粉末を得た。
重量平均分子量100万のセルロース粗体をカッターミルで粉砕し、80メッシュパスのセルロース粉末を得た。得られたセルロース粉末100部及び水150部をニーダーに入れ、水添加率150%の含水原料を得た。ニーダーの蓋をした状態で80℃に加熱して1時間撹拌した後、蓋を開けた状態とし、80℃の加熱と撹拌を継続しながら乾燥させた。その後、80メッシュの篩で分級して、含水率7%のセルロース粉末を得た。
製造例1で得たキトサン粉末100部及び水300部をニーダーに入れ、水添加率300%の含水原料を得た。ニーダーの蓋をした状態で80℃に加熱して1時間撹拌した後、ホーロー皿に取り出してインキュベーター内に静置した。80℃に加熱して乾燥させた後、80メッシュの篩で分級して、含水率9%のキトサン粉末を得た。
製造例2で得たキトサン粉末100部及び水350部をニーダーに入れ、水添加率350%の含水原料を得た。ニーダーの蓋をした状態で80℃に加熱して1時間撹拌した後、蓋を開けた状態とし、80℃の加熱と撹拌を継続しながら乾燥させた。その後、100メッシュの篩で分級して、含水率7%のキトサン粉末を得た。
製造例2で得たキトサン粉末100部及び水250部をビニール袋に入れ、水添加率250%の含水原料を得た。ビニール袋の口を締め、上下左右に15分間振って内容物を混合した後、ホーロー皿に取り出して減圧乾燥機内に静置した。加熱することなく減圧乾燥した後、100メッシュの篩で分級して、含水率8%のキトサン粉末を得た。
製造例4で得たキチン粉末100部及び水150部をビニール袋に入れ、水添加率150%の含水原料を得た。ビニール袋の口を締め、上下左右に15分間振って内容物を混合した後、ホーロー皿に取り出してインキュベーター内に静置した。80℃に加熱して乾燥させた後、80メッシュの篩で分級して、含水率10%のキトサン粉末を得た。
製造例2で得たキトサン粉末100部及び水500部をニーダーに入れ、水添加率500%の含水原料を得た。ニーダーの蓋をした状態で撹拌したところ、キトサンペーストがニーダーの回転軸に集まってひと纏まりとなった。これにより、ハンドリング性が著しく低下し、回収困難な状態となった。
製造例3で得たキトサン粉末100部及び水350部をニーダーに入れ、水添加率350%の含水原料を得た。ニーダーの蓋をした状態で80℃に加熱して1時間撹拌した後、蓋を開けた状態とし、80℃の加熱と撹拌を継続しながら乾燥させて、含水率7%のキトサン粉末を得た。
(実施例1)
打錠機(商品名「HANDTAB−100」、市橋精機社製、杵臼の直径:8mm)を使用し、製造例6で得たキトサン粉末200mgに2tfの打錠圧をかけて打錠して、円柱型の錠剤を得た。
表1−1〜1−2に示す種類及び量のキトサン粉末、キチン粉末、セルロース粉末、結晶セルロース(商品名「Comprecel」(伏見製薬所社製)、食品添加物)、及びショ糖脂肪酸エステル(商品名「DKエステル」(第一工業製薬社製)、食品添加物)をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして円柱型の錠剤を得た。
(硬度の測定)
錠剤硬度計(商品名「モンサント錠剤硬度計 B型」、富士理化工業社製)を使用し、錠剤を水平方向に圧縮破断する際に要した荷重(単位;kgf)を測定した。各処方につき5回測定した荷重の平均値を錠剤硬度とした。結果を表1−1〜1−2に示す。
100mLビーカーに37℃の水を約80mL入れ、2cmのマグネットスターラーを用いて400rpmの回転速度で撹拌した。次いで、水面から2cmの高さから錠剤を投入し、錠剤が水と接触してから、膨潤及び分散して錠剤の原形が目視で確認できなくなるまでの時間を5回測定し、その平均値を分散時間(単位:秒)とした。結果を表1−1〜1−2に示す。
実施例1で製造した錠剤を舌に乗せ、上顎に軽く押し付けた。錠剤が口中で完全に分散するまでの時間を測定したところ、15秒であった。また、参考例5で製造した錠剤を舌に乗せ、上顎に軽く押し付けた。錠剤が口中で完全に分散するまでの時間を測定したところ、30秒であった。
Claims (6)
- キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分を含有するとともに、全固形分に占める前記粉末成分の割合が10質量%以上であり、
前記粉末成分の粒度が、80メッシュの篩をパスする粒度であり、
硬度が10〜30kgfであり、
撹拌状態の37℃の水に投入してから、その原形を目視により観察できなくなるまでの時間が、120秒以内である錠剤(但し、賦形剤を含有するものを除く)。 - 前記粉末成分が、脱アセチル化度が70%以上のキトサンの粉末である請求項1に記載の錠剤。
- 前記粉末成分が、セルロースの粉末をさらに含む請求項1又は2に記載の錠剤。
- 滑沢剤をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の錠剤。
- 経口用錠剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の錠剤。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の錠剤の製造方法であって、
80メッシュの篩をパスする粒度である、キチン及びキトサンの少なくともいずれかの粉末成分と水を混合し、下記式(1)で表される水添加率が200〜400質量%である含水原料を得る工程と、
得られた前記含水原料を加熱条件下で撹拌した後、乾燥及び分級して、含水率が15質量%以下である乾燥粉末を得る工程と、
得られた前記乾燥粉末を含有する成型原料を成型して錠剤を得る工程と、
を有する錠剤の製造方法。
水添加率(質量%)=(W/P)×100 ・・・(1)
P:粉末成分の量(g)
W:添加する水の量(g)
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