JP6973128B2 - コンクリート用フライアッシュの製造方法、及びセメント組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、石炭灰に水を加えてスラリーとし、そのスラリーに捕集剤を添加した後、スラリー及び捕集剤に剪断力を付与し、スラリーに気泡を発生させ、その気泡に石炭灰の未燃炭素分を付着させて浮上させる方法が開示されている。
また、特許文献3には、微粉炭ボイラ灰の処理方法として、微粉炭ボイラ灰に対して浮上分離処理及び湿式分級処理し、浮上分離処理による浮上物を燃料として用い、湿式分級処理により分級された粗粒分をセメント原料として用い、湿式分級処理により分級された細粒分をセメント混和材として用いることが開示されている。
また、特許文献2に開示されているように、浮遊選別工程の前に、分級工程により粗大粒子が除去されると、分級後の石炭灰は未燃炭素分の含有量が相対的に増加して、浮遊選別工程で未燃炭素分を十分に除去することが困難となることがあった。さらに、分級工程により粗大粒子が除去されると、石炭灰の粗大粒子に付着していた石炭灰の微粒子が、浮遊選別工程で未燃炭素分と共に回収され易くなるため、浮遊選別後の石炭灰は活性度が低下することがあった。
また、特許文献3に記載されているように、浮遊選別工程で生成した沈降物を湿式分級する方法は、湿式分級によって分級された粗粒分と細粒分とをそれぞれ乾燥することが必要となるため、作業が複雑化し、乾燥のためのコストが高くなるという問題があった。
この場合、未燃炭素分含有石炭灰は、粒子径が45μm以上の粗大な粒子の含有率が上記の範囲とされているので、その粗大粒子に石炭灰の微粒子を付着させた状態で、浮遊選別工程を実施することができ、浮遊選別工程で得られる含水石炭灰は、石炭灰の微粒子の含有量が多くなる。このため、その後の脱水乾燥工程及び分級工程により、活性が高い石炭灰を得ることができる。また、未燃炭素分含有石炭灰の未燃炭素分含有量を指標するハンターLab表色系におけるL値が40以上とされているので、浮遊選別工程において、沈降物の石炭灰に含まれる未燃炭素分の含有量を、コンクリート用フライアッシュとして利用するのに実用上問題がない程度に低減させることができる。
この場合、スラリーが、未燃炭素分の捕集剤と水と未燃炭素分含有石炭灰を上記の範囲で含むので、浮遊選別工程において、未燃炭素分含有石炭灰に含まれる未燃炭素分を効率よく浮上物として回収することができる。また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、前記分級工程において、前記乾燥石炭灰を、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級するので、分級工程によって得られる石炭灰は、粒子径が45μm未満で活性が高い石炭灰の微粒子を90質量%以上含むので、コンクリート用フライアッシュとして有利に使用することができる。
この場合、検査工程でL値が45以上と高いことが確認された乾燥石炭灰に対して分級工程を行うことができるので、未燃炭素分の含有量が少なく、コンクリート用の混和材として利用可能なフライアッシュをより確実に得ることが可能となる。
このような構成とされた本発明のセメント組成物の製造方法によれば、上述の製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュを用いるので、この製造方法によって得られたセメント組成物は、未燃炭素分の含有量が少なくなり、空気連行剤(AE剤)の使用量を少なくすることができ、強度発現性も良好である。
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法を示すフロー図である。
図1に示すように、本実施形態であるコンクリート用フライアッシュの製造方法は、浮遊選別工程S01と、脱水乾燥工程S02と、検査工程S03と、分級工程S04とを含む。
浮遊選別工程S01では、先ず、未燃炭素分を含有する未燃炭素分含有石炭灰と水とを含むスラリーを調製する。
未燃炭素分含有石炭灰としては、例えば、微粉炭焚きボイラ等から発生する石炭灰を用いることができる。未燃炭素分含有石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上であることが好ましい。
脱水乾燥工程S02では、浮遊選別工程S01で沈降物として回収された石炭灰(含水石炭灰)を脱水し、ケーキ状にした後、乾燥して乾燥石炭灰を得る。
含水石炭灰を脱水するための脱水機としては、例えば、フィルタープレスや遠心脱水装置を用いることができる。また、ケーキ状の含水石炭灰を乾燥するための乾燥器としては、例えば、熱風循環式乾燥器、電気炉、ロータリーキルンを用いることができる。乾燥器の熱源としては、セメント製造設備の排熱を活用することができる。
検査工程S03では、脱水乾燥工程S02で得られた乾燥石炭灰のハンターLab表色系におけるL値を測定し、測定されたL値が45以上である乾燥石炭灰を、分級工程S04に送る。すなわち、検査工程S03では、乾燥石炭灰に混入している未燃炭素分の量を、L値で判断して、L値が45以上の場合(OK)は、乾燥石炭灰に混入している未燃炭素分が少ないとして、分級工程S04に送る。
分級工程S04では、検査工程S03から送られた乾燥石炭灰を乾式分級して、粒子径が大きい粗大粒子を除去することによって、粒子径が小さく相対的に活性が高い微粒子をコンクリート用フライアッシュとして回収する。分級工程S04で除去された粗大粒子は、例えば、セメント原料として利用することができる。
本実施形態のセメント組成物の製造方法は、以上のようにして得られた分級後の乾燥石炭灰(コンクリート用フライアッシュ)とセメントとを混合する工程を含む。
フライアッシュの置換率(フライアッシュとセメントの合計量に対するフライアッシュの含有率)は、1質量%以上10質量%以下の範囲内にあることが好ましい。置換率が1質量%未満の場合は、フライアッシュを用いる効果が得られにくくなる。また、置換率が10質量%を超える場合は、セメント組成物を硬化させたときの圧縮強さが低減するおそれがある。
なお、R45は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率(質量%)を意味する。R45は、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定した粒度分布により得られた累積粒度分布曲線から求めた。
L値は、ハンターLab表色系のL値を意味する。L値は、色彩色差計(ミノルタ社製、型式:CR210)を用いて測定した。
MB吸着量は、セメント協会標準試験方法JCAS I−61:2008(フライアッシュのメチレンブルー吸着量 試験方法)に準拠して測定した。
活性度指数は、JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)とその附属書C(フライアッシュのモルタルによるフロー値比及び活性度指数の試験方法)に準拠して測定した。なお、モルタル供試体の材齢は28日とした。
具体的には、浮遊選別工程では、撹拌機を備えた浮選装置に、未燃炭素分含有石炭灰800と水5000gとを投入し、次いで捕集剤として灯油60gを投入した後、撹拌機を用いて回転数850rpmの条件で10分間撹拌して、スラリーを得た。撹拌機を停止した後、浮選装置に空気を供給量10L/分の条件で5分間に供給して、浮上物(未燃炭素分)と沈降物(含水石炭灰)とをそれぞれ回収した。
脱水乾燥工程では、含水石炭灰を、フィルタープレスを用いて脱水してケーキ状とした後、通風式乾燥器を用いて105℃で120分間加熱して、乾燥石炭灰とした。
分級工程では、強制渦式遠心方式の分級装置(日清エンジニアリング社製、ターボクラシファイア、型式TC400)を用いて、45μmふるい残分が8質量%以上10質量%未満の範囲内となるように、ローター回転数を1000〜3000rpmの範囲内で調整して分級した。
本発明例1〜5は、下記の表3に示すように未燃炭素分含有石炭灰A〜Eに対して、浮遊選別工程、脱水乾燥工程、分級工程の各工程をこの順で行った。脱水乾燥工程後と分級工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ表3に示す。ただし、本発明例4、5は、本発明の発明例ではない。
本発明例1〜2および比較例1で得られたフライアッシュと普通ポルトランドセメントとを、下記の表4に示す置換率(フライアッシュと普通ポルトランドセメントの合計量に対するフライアッシュの含有率)で混合して、セメント組成物を得た。得られたセメント組成物の凝結時間と圧縮強さと黒班の有無とを測定した。その結果を、表4に示す。
黒班の有無は、次のようにして測定した。
JIS R 5201に準拠して、セメント組成物と標準砂と水とを練混ぜてモルタルを調製した。調製したモルタルを、圧縮強さ測定用の型枠(4cm×16cm)に充填して硬化させた。得られたモルタル硬化体の表面64cm2(=4cm×16cm)を目視で観察し、黒斑の有無を確認した。モルタル硬化体の表面に、1個以上の黒斑が確認された場合を「有」とした。
比較例6〜7では、下記の表5に示すように未燃炭素分含有石炭灰A〜Bについて、分級工程、浮遊選別工程、脱水乾燥工程の各工程をこの順で行った。分級工程後と脱水乾燥工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ表5に示す。
比較例6〜7で得られたフライアッシュのMB吸着量が高くなった理由としては、分級工程により、石炭灰の粗大粒子が除去されることによって、相対的に未燃炭素分の含有量が増加して、浮遊選別工程で未燃炭素分を十分に除去できなかったためであると考えられる。また、比較例6〜7で得られたフライアッシュの活性度指数が低下した理由としては、分級工程により、石炭灰の粗大粒子が除去されることによって、石炭灰の粗大粒子に付着していた石炭灰の微粒子が、浮遊選別工程で未燃炭素分と共に回収されたためであると考えられる。
本発明例6〜9では、分級工程において、強制渦式遠心方式分級装置のローター回転数を変えて、分級後のフライアッシュのR45が、下記の表7に記載の値となるように調整したこと以外は、本発明例2と同様にして、フライアッシュを製造した。
脱水乾燥工程後と分級工程後の石炭灰のR45、L値、MB吸着量、活性度を、それぞれ測定した。その結果を、本発明例2の結果と共に表7に示す。ただし、本発明例6は、本発明の発明例ではない。
本発明例10〜12では、浮遊選別工程で用いた灯油の量を下記の表8に示す量に変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてフライアッシュを製造した。得られたフライアッシュのMB吸着量を測定した。その結果を、本発明例1の結果と共に表8に示す。ただし、本発明例12は、本発明の発明例ではない。
本発明例16〜19では、浮遊選別工程で用いた水の量を下記の表9に示す量に変えたこと以外は、本発明例1と同様にしてフライアッシュを製造した。得られたフライアッシュのMB吸着量を測定した。その結果を、本発明例1の結果と共に表9に示す。ただし、本発明例19は、本発明の発明例ではない。
Claims (4)
- 未燃炭素分を含有する石炭灰と水とを含むスラリーを調製して、前記未燃炭素分と前記石炭灰とを浮遊選別することにより含水石炭灰を得る浮遊選別工程と、
前記含水石炭灰を脱水乾燥して乾燥石炭灰を得る脱水乾燥工程と、
前記乾燥石炭灰を乾式分級する分級工程と、を含み、
前記未燃炭素分を含有する石炭灰は、粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%以上45質量%以下の範囲内にあって、ハンターLab表色系におけるL値が40以上であり、
前記スラリーは未燃炭素分の捕集剤を含み、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記捕集剤の含有率が0.2質量%以上15質量%以下の範囲内にあり、前記未燃炭素分を含有する石炭灰に対する前記水の含有率が300質量%以上1500質量%以下の範囲内にあり、
前記分級工程において、強制渦式遠心方式の分級装置を用い、 前記乾燥石炭灰を粒子径が45μm以上の粒子の含有率が10質量%未満となるように分級することを特徴とするコンクリート用フライアッシュの製造方法。 - さらに、前記脱水乾燥工程と前記分級工程との間に、前記乾燥石炭灰のハンターLab表色系におけるL値を測定し、測定された前記L値が45以上である前記乾燥石炭灰を、前記分級工程に送る検査工程を含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法。
- 得られるコンクリート用フライアッシュは、活性度指数が81%以上であって、MB吸着量が0.35mg/g以下である請求項1または2に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法。
- 請求項1から3のいずれか1項に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法によって得られたコンクリート用フライアッシュとセメントとを混合する工程を含むことを特徴とするセメント組成物の製造方法。
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