JP2021014634A - 表面処理銅粉 - Google Patents
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(1)
表面に酸化層を有する表面処理銅粉であって、
FE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)における酸素のオージェ電子ピーク強度から求められる前記酸化層の厚みが10〜40nmであり、
表面処理銅粉のかさ密度が3m2g-1以下である、表面処理銅粉。
本発明による表面処理銅粉は、表面に酸化層を有する表面処理銅粉であって、FE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)で求められる前記酸化層の厚みが10〜40nmであり、表面処理銅粉のかさ密度が3m2g-1以下である。
本発明による表面処理銅粉は、表面に酸化層を有している。好適な実施の態様において、この酸化層は、金属銅の酸化物の層であり、好適な酸化物として、亜酸化銅をあげることができる。
酸化層の厚みは、実施例において後述する手段によって、測定して算出することができる。すなわち、実施例において後述した手段に基づいて、FE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)による測定から求めることができる。好適な実施の態様において、この手段によって測定した酸化層の厚みは、例えば10〜40nm、好ましくは20〜35nmとすることができ、あるいは25〜35nmとすることができ、あるいは13〜39nm、あるいは26〜33nmとすることができる。
好適な実施の態様において、本発明に係る銅粉は、タップ密度(固めかさ密度)を、例えば3g/cm3以下、好ましくは2.9g/cm3以下、好ましくは2.8g/cm3以下とすることができる。上記の上限よりもタップ密度(固めかさ密度)を小さくすることによって、ペースト中における銅粉の分散性を良好なものとすることができる。好適な実施の態様において、このタップ密度(固めかさ密度)は、例えば1.0g/cm3以上、好ましくは1.7g/cm3以上とすることができる。上記のように低減された固めかさ密度を備えたことを指して、本発明では低充填性と表現することがある。
好適な実施の態様において、本発明に係る表面処理銅粉は、BET比表面積を、例えば1.5m2g-1以上、好ましくは1.9m2g-1以上50m2g-1以下、さらに好ましくは1.9m2g-1以上20m2g-1以下、さらに好ましくは1.9m2g-1以上5.0m2g-1以下とすることができる。BET比表面積は、公知の手段によって測定することができ、具体的には、実施例において後述する手段と条件によって、測定することができる。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉は、その製造方法に依存して、酸化層の表面に、さらに、多糖類、天然ゴム類、高分子タンパクの中から選ばれる1種以上の高分子が付着していてもよく、その層が形成されていてもよい。好適な天然ゴム類として、例えばアラビアゴムをあげることができる。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉は、実施例において後述する方法によって製造することができる。しかし、本発明の表面処理銅粉の製造方法は、実施例において後述する方法に限られるものではない。「表面処理銅粉」とは、表面処理された状態に至った銅粉であり、具体的には、処理されることによって本発明に係る特定事項を備えるに至った銅粉である。
好適な実施の態様において、pH処理工程は、上記pHのアルカリ水溶液と接触させることによって行われる。好適な実施の態様において、接触としては、例えば、湿式法によって製造された銅粉を、上記水溶液中で撹拌することによって行うことができる。撹拌は、例えば、公知の手段によって行うことができ、例えばホモジナイザー、回転羽根、超音波照射、ミキサー、及び撹拌子を用いて撹拌することができる撹拌の時間は、例えば5分以上48時間以内、好ましくは20分以上36時間以内、さらに好ましくは60分以上24時間以内とすることができる。好適な実施の態様において、攪拌する間に維持する温度としては、例えば10〜50℃、好ましくは10〜35℃とすることができる。好適な実施の態様において、接触としては、例えば、湿式法によって製造された銅粉に対して、上記水溶液を通液することによって行うことができる。アルカリ水溶液との接触は、例えばバッチ式で1回行ってもよく、あるいは複数回行うこともできる。アルカリ水溶液と接触させた後の銅粉は、公知の手段によって固液分離して、ケーキとして得ることができる。好適な実施の態様において、アルカリ水溶液と接触させた後の銅粉を、純水で洗浄することができる。
好適な実施の態様において、湿式法によって製造された銅粉と接触させるアルカリ水溶液のpHは、例えばpH8〜14、あるいはpH8〜12、pH10〜13.5とすることができる。上記pHへと調整されたアルカリ水溶液としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、分子末端にアミノ基を含む有機物の水溶液、あるいはこれらの混合水溶液を使用することができる。
好適な実施の態様において、pH処理された銅粉は、その後に乾燥される。乾燥は、公知の手段によって行うことができ、例えば60〜300℃、好ましくは60〜150℃で、窒素雰囲気あるいは真空雰囲気で乾燥することができる。このようにして得られた銅粉は、しばしば乾燥ケーキの形態として得られる。
好適な実施の態様において、pH処理されて次に乾燥された銅粉は、その後に解砕される。解砕は、公知の手段で行うことができ、例えば乳棒、乳鉢、ミキサーを使用することができる。本発明によれば、このような簡易な手段による粗解砕によって十分に解砕されて、二次粒子が十分に低減されたものとなっている。ただし、解砕手段としては、さらに強力な解砕手段を採用することを除外するものではなく、例えばヘンシェルミキサーのような機械的な解砕や、ジェットミル解砕を行ってもよい。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉は、この銅粉を含む銅粉ペーストの態様として好適に使用することができる。銅粉ペーストは、例えば表面処理銅粉を、バインダー樹脂、有機溶剤と混練して調製することができる。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉を含む銅粉ペーストを印刷した後に、乾燥した塗膜の表面粗さRaは、例えば0.01〜0.4μmの範囲、好ましくは0.01〜0.3μmの範囲、好ましくは0.04〜0.2μmの範囲、好ましくは0.04〜0.15μmの範囲、好ましくは0.04〜0.10μmの範囲とすることができる。乾燥塗膜の表面粗さRaは、公知の手段によって測定することができ、具体的には、実施例において後述する手段と条件によって、測定することができる。このような塗膜を焼結して形成された焼結体は、電子回路や電子部品において、電極層、及び導電層等として、好適に使用できるものとなっている。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉を含む銅粉ペーストは、これを印刷あるいは塗工した後に、焼結して、焼結体とすることができる。好適な実施の態様において、得られた焼結体は、その表面が滑らかなものとなっていると同時に、優れた比抵抗を備えたものとなっている。表面が滑らかになることは塗膜内で銅粉が均一に充填(分散)されていることを示唆していると考えられ、これにより粉体間の焼結が促進され、低比抵抗が実現したと発明者は考えている。
好適な実施の態様において、本発明の表面処理銅粉を含む銅粉ペーストの塗膜の焼結体は、優れた比抵抗を備えたものとなっている。比抵抗の測定は、実施例において後述する手段によって測定することができる。好適な実施の態様において、比抵抗の値は、例えば15μΩcm以下、好ましくは14μΩcm以下、例えば2〜12μΩcmの範囲、好ましくは5〜14μΩcmの範囲とすることができる。
好適な実施の態様において、pH処理工程に供される銅粉は、湿式法によって製造された銅粉である。湿式法には、例えば、いわゆる不均化法といわゆる化学還元法が含まれる。
Cu2O+H2SO4 → Cu↓+CuSO4+H2O
本発明は次の(1)以下の実施態様を含む。
(1)
表面に酸化層を有する表面処理銅粉であって、
FE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)における酸素のオージェ電子ピーク強度から求められる前記酸化層の厚みが10〜40nmであり、
表面処理銅粉のかさ密度が3m2g-1以下である、表面処理銅粉。
(2)
酸化層が、亜酸化銅を含む層である、(1)に記載の表面処理銅粉。
(3)
亜酸化銅の層によって金属銅の表面が被覆されてなる、(1)〜(2)のいずれかに記載の表面処理銅粉。
(4)
比表面積が1.5m2g-1以上である、(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理銅粉。
[銅粉ケーキの調整]
30Lの容器に硫酸銅五水和物を3.9kg、純水を8.8L入れて、ウォーターバスで70℃に加温しながら回転羽根で200rpmで撹拌し、硫酸銅水溶液を調整した。ここに28%アンモニア水を水溶液のpHが8.5に達するまでに添加した。さらに撹拌しながら、80gL-1のアラビアゴム水溶液を100g添加した後、25%ヒドラジン水溶液を6Lを1Lmin-1の速度で添加し、滴下終了後1時間撹拌した。静置して生じた上澄み液を捨て、そこに純水を10L加え、300rpmで10分撹拌した。同じように静置して生じた上澄み液を捨て、そこに純水を10L加え、pHが7.0±0.2になるように希硫酸を添加し、300rpmで10分撹拌した。このスラリーを吸引濾過で固液分離し、ろ紙上に残ったケーキの上にさらに純水を10Lかけて吸引濾過を行った。
回収された銅粉ケーキ1100g(湿質量)を、pH8へ調製したアンモニア水2L中に投入して、攪拌した。攪拌は、30℃で1時間行った。その後、吸引ろ過によって固液分離して、pH処理された銅粉のケーキを得た。得られたケーキを、ろ過後の純水のpHが8を下回ることを目安として純水によって洗浄した。
洗浄後の銅粉のケーキを、100℃で窒素雰囲気下で乾燥して、pH処理された銅粉の乾燥ケーキを得た。
得られた乾燥ケーキを、乳棒と乳鉢によって解砕し、目開き37μmの篩に通して、後述するペーストに供される銅粉を得た。
実施例2〜5、比較例1、4として、pHの値、及び処理時間を変更して、実施例1と同様に銅粉ケーキを調整した。得られた銅粉ケーキを、各所定pHへと調整されたアンモニア水中へ投入して、30℃で各所定時間の攪拌を行って、実施例1と同様に、pH処理された銅粉の乾燥ケーキを得た。その後、実施例1と同様にして、後述するペーストに供される銅粉を得た。ただし、各実施例及び比較例において、調整したアンモニアの各pH値と、30℃での各攪拌時間は、実施例1からそれぞれ表1の値へと変更して、処理を行った。各実施例及び比較例におけるpHの値、及び処理時間を、表1にまとめて示す。
実施例1の製粉に関する手順において、アラビアゴム水溶液の濃度を20gL-1、ヒドラジンの添加速度を0.5Lmin-1とした以外は実施例1と同じ操作を行った。
実施例1の手順において、製粉後の水洗、酸洗、水洗を経て吸引濾過後に回収された銅粉ケーキを、100℃で窒素雰囲気下で乾燥して、乾燥ケーキを得た。
この乾燥ケーキを乳棒と乳鉢によって解砕し、目開き37μmの篩に通して、銅粉を得た。
得られた銅粉を、特許文献2(特開2003−105402号公報)に記載の条件に従い、ホットプレート上で大気中、200℃、2時間で加熱処理した。これによって表面に酸化膜が形成された銅粉を得た。
得られた銅粉を乳棒と乳鉢によって解砕し、目開き37μmの篩を通らなかったため、目開き88μmの篩を通し、後述するペーストに供される銅粉を得た。
実施例1の手順において、製粉後の水洗、酸洗、水洗を経て吸引濾過後に回収された銅粉ケーキを、苛性ソーダでpH8に調整したアルカリ水溶液5Lに分散させ、回転羽根で撹拌した。ここにオレイン酸を5g添加し、1時間撹拌した。吸引濾過でケーキを回収し、回収ケーキを赤外水分計で含水率が1%を下回るまで室温25℃下で大気乾燥して乾燥ケーキを得た。
得られた乾燥ケーキを乳棒と乳鉢によって解砕し、目開き37μmの篩を通らなかったため、目開き105μmの篩を通し、後述するペーストに供される銅粉を得た。
実施例1〜6及び比較例1〜4によって得られたペーストに供される銅粉を、導電性テープ上にまぶし、エアーダスターで余剰の銅粉を吹き飛ばした後に、日本電子株式会社製JAMP−9510FでAES分析を行った。この手法によれば、入射される電子ビーム径に対して銅粉が十分に大きいため、粒子一つに対して深さ方向分析が可能である。この結果を後述するように解析して、乾燥銅粉の表面に存在する酸化層の厚みを、それぞれ求めた。
到達真空度:7.5×10-7Pa
プローブ電圧:10kV
プローブ電流:1.0×10-8A
スパッタ条件:
イオン種:Ar+
加速電圧:1kV
レート:0.7nm/min(SiO2換算)
BET比表面積から求まる粒子サイズ0.2μmに対して分析エリアは150nm2なので、粉体一つに対する深さ方向の酸素のオージェ電子ピーク強度が得られていると思われる。係る場合、酸化層を経て純金属銅層に到達すると、理想的には酸素が検出されなくなり、酸素のオージェ電子ピーク強度は一定となる。そのため、この2次曲線の傾きが0となる深さ位置、即ち、酸素のオージェ電子ピーク強度の変化がなくなる深さ位置を、酸化層の厚みと定義する。この計算を異なる3つの銅粉に対して行い、平均値を酸化層の厚みとした。
図1の例では、Oのオージェ電子ピーク強度をy、銅粉の表層からの深さ位置(即ちスパッタ深さ)をx(nm)とすると、y=0.644x^2−30.858x+497.92となる。この曲線の傾きが0になるのはx=24nmの位置である。
実施例1〜6及び比較例1〜4によって得られた乾燥銅粉に対して、次の条件でタップ密度を測定した。
ホソカワミクロン(株)パウダテスタPT−Xを使って測定した。10ccのカップにガイドを取り付けて粉体を入れ、1000回タップさせて、ガイドを外して、10ccの容積を上回っている部分を摺り切り、容器に入っている粉体の重量を測定し、タップ密度(固めかさ密度)を求めた。
実施例1〜6及び比較例1〜4によって得られた乾燥銅粉のBET比表面積を、BELSORP−miniII(マイクロトラックベル社)を用いて、JIS Z8830:2013に準拠して測定した。より具体的には、銅粉を真空中で200℃、5時間脱気した後、比表面積を測定した。
実施例1〜6及び比較例1〜4によって得られた乾燥銅粉の安息角を、ホソカワミクロン(株)パウダテスタPT−Xを用いて、JIS R9301−2−2:1999に準拠して測定した。より具体的には、710μmの篩に銅粉を通した後、100gの銅粉を落とした。これにより形成された山を側面から撮影し、山の底辺の内角を安息角として求めた。
ジヒドロターピネオールとアクリル樹脂ビークル(固形分35%、残部ジヒドロターピネオール、互応化学KFA−2000)をジヒドロターピネオール:アクリル樹脂(固形分)が14:1の比率となるように秤量し、自転公転ミキサーで5分撹拌した。実施例1〜6及び比較例1〜4によって得られた乾燥銅粉と上記撹拌物との比率が85:1(重量比)となるように混合し、さらに自転公転ミキサーで5分撹拌した。得られた混合物を、ロール径80mmのロール間ギャップを5μmとした3本ロールに5パス通し、ペーストを得た。ロール材質は3本ともアルミナロールである。得られたペーストを25μmギャップのアプリケーターを使って5cm/秒の移動速度でスライドガラス上に塗膜し、120℃、10分で乾燥させた。得られた塗膜の塗工方向のRaをJIS B 0601−2001に従って触針式粗さ計で計測し、5点平均で算出した。
上記表面粗さRaの測定のために調整したペーストを、スクリーン版(ステンレスメッシュ、線径18μm、紗厚38μm、オープニング33μm、開口率42%)を使って、スライドガラス上に、幅5mm、長さ20mmのラインを3本印刷した。3vol%水素(残部窒素)中で銅の融点よりもはるかに低い250℃で、30分間で焼成し、焼成体を得た。得られた焼成体の抵抗をロレスターGXで測定し、3次元測定装置で焼成体の厚みを算出し、抵抗値と焼成体断面積、焼成体長さから焼成体の比抵抗を求めた。
実施例1〜6及び比較例1〜4について、上記の測定の結果を、表1にまとめて示す。
Claims (4)
- 表面に酸化層を有する表面処理銅粉であって、
FE−AES(電界放射型オージェ電子分光分析)における酸素のオージェ電子ピーク強度から求められる前記酸化層の厚みが10〜40nmであり、
表面処理銅粉のかさ密度が3m2g-1以下である、表面処理銅粉。 - 酸化層が、亜酸化銅を含む層である、請求項1に記載の表面処理銅粉。
- 亜酸化銅の層によって金属銅の表面が被覆されてなる、請求項1〜2のいずれかに記載の表面処理銅粉。
- 比表面積が1.5m2g-1以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の表面処理銅粉。
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