以下、本発明に係る多重袋1の一態様について説明する。
(A)多重袋1の構成(第1実施形態(第1発明)、第2実施形態(第2発明)共通):
以下、本発明に係る多重袋1について説明する。図1は、本発明に係る多重袋1を示した斜視図、図2は、本発明に係る多重袋1を示した正面図、図3は、多重フィルム2(チューブ状フィルム21)を筒状に湾曲し、重ね合わせて合掌部5を形成した状態を示した概略図、図4は、チューブ状フィルム21を用いた場合の背シール部6の拡大図、をそれぞれ示す。図中、1は多重袋、2は多重フィルム、3は外側フィルム、4は内側フィルム、5は合掌部、51は引裂開始部、52は合掌部の外縁、6は背シール部、61は合掌部の外縁52側に形成された背シール部、7は横シール部、をそれぞれ示す。
図1及び図2に示される多重袋1は、外側フィルム3と内側フィルム4からなる多重フィル2により構成される。なお、外側フィルム3及び内側フィルム4については、多重袋1として製袋化した場合に、多重袋1の外側に現れる(図示しない段ボール箱等と接する)フィルムを外側フィルム3、多重袋1の内側に現れる(図示しない内容物と接する)フィルムを内側フィルム4とする。
図3に示すように、多重袋1を構成する合掌部5は、多重フィルム2を筒状に湾曲させ、多重フィルム2の両端を内側フィルム4同士が対向するように重ね合わせることにより形成される。
多重袋1は、使用する際に所定の内容物が充填されるとともに、背シール部6と横シール部7が形成されることにより、内容物が充填密封される。図1や図2に示すように、背シール部6は、合掌部5に対して所定の幅(概ね、2〜20mm程度。以下同じ。)で帯状に溶着(ヒートシール、熱融着のこと。以下同じ。)することにより形成される。また、横シール部7は、かかる背シール部6と直交する側の両端縁付近を所定の幅(概ね2〜20mm程度。以下同じ。)で帯状に溶着することにより形成される。なお、横シール部7は、細幅線状の複数のシール部からなるようにしてもよい。
背シール部6、横シール部7とも、多重フィルム2の内側フィルム4同士を平坦状に接した状態とした上で、外部から図示しない所定の幅のシールバー等で挟み込むことにより形成される。図4は背シール部6の拡大図を示しているが、接している内側フィルム4同士のほか、外側フィルム3も含め、重ね合わされる全てのフィルム(外側フィルム2枚、内側フィルム2枚の計4枚。)が溶着されて一体化している。また、これは、横シール部7についても同様である。
なお、図3及び図4は、多重フィルム2の構成として、後記する(B)(1)や(C)(1)で説明するチューブ状フィルム21を用いた態様を示している。チューブ状フィルム21は、外側フィルム3と内側フィルム4が一体化されており、外側フィルム3と内側フィルム4の両側端縁が互いに連続している。
一方、多重フィルム2の構成として、後記する(B)(2)や(C)(2)で説明するブロッキング接着フィルム22を用いた場合にあっては、次のようになる。図5は、多重フィルム2(ブロッキング接着フィルム22)を筒状に湾曲させ、重ね合わせて合掌部5を形成した状態を示した概略図であり、図6は、ブロッキング接着フィルム22を用いた場合における背シール部6の拡大図である。このように、ブロッキング接着フィルム22は、チューブ状フィルム21と異なり、外側フィルム3と内側フィルム4が一体化されておらず、外側フィルム3と内側フィルム4の両側端縁も互いに連続していない。
(B)第1実施形態に係る多重袋1:
以下、第1実施形態に係る多重袋1の構成を説明する。本発明の第1実施形態に係る多重袋1は、図1及び図2に示すように、多重フィルム2の両端を内側フィルム4同士が対向するように重ね合わせた合掌部5に対して、引裂開始部51が形成されている。引裂開始部51は、横シール部7に対して略平行に開封するために形成され、例えば、横シール部7に対して略平行となるように形成すれば、使用者が横シール部7に対して略平行に開封しやすくなる。
合掌部5に形成される引裂開始部51は、初期の引き裂き強度を弱め、易開封性を向上させる。引裂開始部51は、スリット(切れ目)、Vノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔の集合体等の任意の形状とすることができる。
引裂開始部51は、図1及び図2に示すように、合掌部の外縁52から少なくとも背シール部6まで達するように形成されている。引裂開始部51が背シール部6まで達しているため、開封時の引き裂きの繰り出しをスムースに行うことができ、4枚のフィルム(2枚の多重フィルム2)が集まった背シール部6を容易に引き裂くことができる、易開封性に優れた多重袋1となる。また、引裂開始部51の長さとしては、前記のように背シール部6まで達していれば特に制限はないが、概ね5〜20mmであればよい。
図7は、多重袋1の他の態様を示した正面図である。図7にあっては、背シール部6が合掌部5に対して細幅線状に2本形成されている態様を示している。このように、細幅線状の背シール部6を複数形成した場合にあっては、引裂開始部51は複数の細幅線状の背シール部6のうち少なくとも合掌部の外縁52側に形成された背シール部61に達するように形成されている。なお、本発明にあって、細幅線状の背シール部6,61は、ヒートシール(溶着)により、概ね2〜10mm程度の幅からなる略直線状に形成された背シール部6を指す。また、複数の背シール部6,61の数は、概ね2〜5とすればよい。
(1)多重フィルム2の構成(チューブ状フィルム21):
次に、多重袋1を構成する多重フィルム2について説明する。多重フィルム2については、外側フィルム3と内側フィルム4を2枚重ねとしたものであるが、例えば、筒状のフィルムを扁平状にして2枚重ねにした両端が袋状に閉じた対面する2枚のフィルム(チューブ状フィルム21)とすることができる。多重フィルム2であるチューブ状フィルム21は、図3及び図4からもわかるように、外側フィルム3と内側フィルム4の両側端縁が互いに連続しているものであり、外側フィルム3と内側フィルム4が一体化されている。よって、外側フィルム3と内側フィルム4は、共通する樹脂で構成されることになる。
チューブ状フィルム21は、多層構成とすることが好ましい。以下、外側フィルム3及び内側フィルム4を共通する3層構成としたチューブ状フィルム21を例に挙げて説明する。
図8は、チューブ状フィルム21において、外側フィルム3及び内側フィルム4を3層とした場合の層構成を示した断面図である。図8中、3は外側フィルム、4は内側フィルム、31,41は内層、32,42は中間層、33,43は外層、Cは隙間、をそれぞれ示す。
図8に一例を示すように、外側フィルム3及び内側フィルム4を多層とする場合は、外側フィルム3と内側フィルム4は、外側フィルム3と内側フィルム4の間に形成されている隙間Cからみて対称の関係となり、多重袋1の外側から多重袋1の内側までは、多重袋1の外側/外層33/中間層32/内層31(以上が外側フィルム3の層。)/隙間C/内層41/中間層42/外層43(以上が内側フィルム4の層。)/多重袋1の内側、となる。そして、外層33,43に該当する層が、背シール部6や横シール部7を形成する際に、重ね合わされて、直接接して溶着されることになる。
前記した層のうち、背シール部6や横シール部7を形成する際に直接接して溶着される外層33,43は、その層自体にヒートシール性があることが好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、また、エチレンと共重合可能なビニル化合物との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン−アクリル酸またはエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンメタアクリル酸またはメタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他の不飽和カルボン酸で変成した酸変性ポレオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
これらの樹脂のうち、ヒートシール性等が優れた、低密度ポリエチレン(LDPE)を使用することが好ましく、低密度ポリエチレンの中でも、耐ピンホール性を有し、タフで丈夫なため機械的強度等にも優れた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用することが特に好ましい。
なお、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた場合の物性、機械的強度やヒートシール強度等は、共重合させるα−オレフィンの炭素数により調整される。一般に、炭素数3〜13個、好ましくは炭素数4〜8個のα−オレフィン、例えばブテン−1、オクテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、へプテン−1等が好ましく用いられる。
低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む。)の密度は、0.870〜0.935g/cm3であることが好ましい。密度がかかる範囲の低密度ポリエチレンを用いることにより、ヒートシール性等の諸特性が維持される。低密度ポリエチレンの密度は、0.880〜0.920g/cm3であることが特に好ましい。なお、190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g/10分とすることが好ましく、0.5〜4.0g/10分とすることが特に好ましい。
図8における外側フィルム3及び内側フィルム4を構成する内層31,41や中間層32,42は、多重フィルム2に耐ピンホール性や機械的特性を付与すべく、前記したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT)、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を使用することができる。
なお、中間層32,42として、易引裂樹脂からなる易引裂樹脂層とするようにしてもよい。易引裂樹脂を中間層32,42として介することにより、多重フィルム2にさらなる易開封性を付与することができる。また、外側フィルム3や内側フィルム4を図8に示した3層の構成とする場合、外側フィルム3は、多重袋1の外側から順に、直鎖状低密度ポリエチレンからなる層(直鎖状低密度ポリエチレン層)/易引裂樹脂層/ポリオレフィン系樹脂からなる層(ポリオレフィン系樹脂層)、内側フィルム4は、多重袋1の外側(前記した隙間C)から順に、ポリオレフィン系樹脂層/易引裂樹脂層/直鎖状低密度ポリエチレン層とすることが好ましい。外側フィルム3及び内側フィルム4をかかる構成とすることにより、ヒートシール性、耐ピンホール性等を維持した状態で、易開封性(易引裂性)を付与することができる。
易引裂樹脂層を構成する樹脂としては、例えば、環状ポリオレフィン樹脂を含有する混合樹脂を用いるようにしてもよい。かかる環状ポリオレフィン樹脂を含有する層を中間層32,42として介在させることにより、多重フィルム2の易開封性(易引裂性)が向上する。
環状ポリオレフィン樹脂は、一般に、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている。本発明にあっては、環状オレフィンをメタセシス開環重合反応によって重合した開環メタセシス重合体(シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo−Olefin Polymer)とも呼ばれる。)はもちろんのこと、環状オレフィンとα−オレフィン(鎖状オレフィン)等との共重合体である、いわゆる環状オレフィンコポリマー(シクロオレフィンコポリマー(COC:Cyclo−Olefin Copolymer)とも呼ばれる。)や、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体、並びに、それらの水素化物等を含むものとする。
環状オレフィンとしては、エチレン系不飽和結合及びビシクロ環を有する任意の環状炭化水素を使用することができ、ノルボルネン系モノマー等が広く知られており、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(ノルボルネン)骨格を有するものが好ましい。
具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン及びその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12.5]−3−デセン及びその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12.5]−3−ウンデセン及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12.5.17.10]−3−ドデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]−4−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12.5.19.12.08.13]−3−ペンタデセン及びその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13.6.02.7.09.13]−4,10−ペンタデカジエン及びその誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12.5.19.12.08.13]−3−ヘキサデセン及びその誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。
また、環状オレフィンは、置換基として、例えば、カルボキシル基、カルボン酸無水物等の酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基等の極性基を有していてもよい。また、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(例えば、炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(例えば、炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができ、好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基、スルホ基、ホスホノ基、ホスフィノ基等の極性基を有する不飽和化合物を有していてもよい。
例えば、環状オレフィンコポリマーとして、環状オレフィンと共重合するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィンを使用することができ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、エチレン等が広く用いられる。
環状ポリオレフィン樹脂と組み合わせられる樹脂(後記)としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、ポリエチレンに対する分散性が良好となるという等の理由で、環状オレフィンコポリマー(COC)を用いることが好ましく、共重合するα−オレフィンをエチレンとした、エチレン−環状オレフィン共重合体とすることが特に好ましい。
本発明において、開環メタセシス重合体の製造は、公知の開環メタセシス重合反応であれば特に限定されず、前記した環状オレフィンを、重合触媒を用いて開環重合させることによって製造することができる。
また、環状オレフィンコポリマーの製造は、例えば、所定のモル比としたα−オレフィンと環状オレフィンとを、メタロセン触媒等のシングルサイト系触媒やマルチサイト系触媒を用いてランダム重合させることによりなされる。
また、環状オレフィンモノマーの開環重合体等の水素添加物は、開環重合体を公知の水素化触媒により水素化することにより得ることができる。
環状ポリオレフィン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)(例えば、JIS K7121等。)が60℃以上のものを使用することが好ましい。ガラス転移温度がかかる範囲の環状ポリオレフィン樹脂を用いることにより、優れた耐熱性を維持することができる。環状ポリオレフィン樹脂は、ガラス転移温度(Tg)は、70℃以上とすることが特に好ましい。
また、環状ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、3.0〜30.0g/10分とすることが好ましい。MFRがかかる範囲の環状ポリオレフィン樹脂を用いることにより、優れた耐熱性を維持することができる。環状ポリオレフィン樹脂のMFRは、ISO 1133やASTM D−1238(例えば、280℃。21.18N)に準拠して測定した値を用いればよい。環状ポリオレフィン樹脂のMFRは、5.0〜20.0g/10分とすることが特に好ましい。
中間層32,42を前記の混合樹脂とする場合、環状ポリオレフィン樹脂と組み合わせて用いることができる樹脂としては、前記したポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。この中でも、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
易引裂樹脂層を構成する混合樹脂における環状ポリオレフィン樹脂の含有量は、混合樹脂全体(環状ポリオレフィン樹脂及び当該環状ポリオレフィン樹脂と組み合わせて用いられる樹脂との合計を指す。)に対して3〜99質量%とすることが好ましい。環状ポリオレフィン樹脂の含有量をかかる範囲とすることにより、易引裂性が良好に実施されることになる。環状ポリオレフィン樹脂の含有量は、混合樹脂全体に対して60〜90質量%とすることがさらに好ましく、60〜80質量%とすることが特に好ましい。
なお、前記した混合樹脂で構成されるような、環状ポリオレフィン樹脂を含有する層は、多層の外側フィルム3及び内側フィルム4において、中間層32,42とすることが好ましいが、外側フィルム3や内側フィルム4を多層とする場合に、中間層32,42以外の層としても問題はない。
多重フィルム2であるチューブ状フィルム21を製造するには、例えば、インフレーションフィルム法で得るのが好ましい。インフレーションフィルムは、あらかじめチューブ状(筒状)となっており、製造されたままの状態で使用でき、後工程でフィルムを筒状にする必要がなく継ぎ目も生じないというメリットもある。加えて、インフレーションフィルムは厚さが薄いフィルムはもちろんのこと、厚さが比較的厚いフィルムを容易に製造可能である。
一般的なインフレーションフィルム法としては、例えば、押出機からダイを経てチューブ状に押し出された溶融樹脂を垂直方向に引き上げ、かかる溶融樹脂を垂直方向に引き上げられる過程で供給される空気により膨らませてチューブ状とし、空冷しながらフラットなフィルムにして巻取装置に巻き取ることで、チューブ状フィルム21を扁平状に巻いたロールを得ることができる。
なお、多重フィルム2をチューブ状フィルム21とした場合にあっては、外側フィルム3及び内側フィルム4における外側に現れず接触する層(前記した図8における内層31,41)については、相互にブロッキング接着していることが好ましい。ここで、「相互にブロッキング接着している」とは、接触しているフィルム同士が接着剤等の他の媒体や熱融着により接着されて完全に一体化されているものではなく、接触しているフィルム同士が疑似接着して柔軟な状態であることを指す。ブロッキング接着は、フィルムの全面にわたって発生していてもよいし、フィルムの一部に部分的に発生していてもよい。ブロッキング接着させることにより、製袋等の際に外側フィルム3と内側フィルム4が一体化し、取り扱い性が良好となる。
チューブ状フィルム21をブロッキング接着させるためには、例えば、前記したインフレーションフィルム法によって製膜されたポリオレフィン系のチューブ状フィルムを折畳みニップロール等で加圧して重ね合わせたフィルム間の空気を押出しながら1つ折りの扁平な2層フィルムとして巻き取ることによって、簡便に製造することができる。
(2)多重フィルム2の構成(ブロッキング接着フィルム22):
次に、多重フィルム2の他の構成について説明する。多重フィルム2としては、別途独立した外側フィルム3と内側フィルム4がブロッキング接着している構成のもの(ブロッキング接着フィルム22)を使用することができる。
ここで、「ブロッキング接着」については、前記した通りであり、接触しているフィルム同士が接着剤等の他の媒体や熱融着により接着されて完全に一体化されているものではなく、フィルム接触しているフィルム同士が疑似接着して柔軟な状態であることを指す。ブロッキング接着は、フィルムの全面にわたって発生していてもよいし、フィルムの一部に部分的に発生していてもよい。ブロッキング接着させることにより、製袋等の際に外側フィルム3と内側フィルム4が一体化し、取り扱い性が良好となる。
多重フィルム2となるブロッキング接着フィルム22は、ブロッキング接着している外側フィルム3及び内側フィルム4からなる層(以下、「ブロッキング接着層」とする場合もある。)からなるフィルムのほか、かかるブロッキング接着層に外側フィルム3としてさらに他の層を積層したフィルムも含む。
図9は、ブロッキング接着フィルム22において、外側フィルム3を3層とした場合の層構成を示した断面図である。図9中、3は外側フィルム、4は内側フィルム、31は内層、32は中間層、33は外層、Bはブロッキング接着されている面、をそれぞれ示す。図9に示すように、ブロッキング接着フィルム22にあっては、内側フィルム4における外側フィルム3に接する面と、外側フィルム3を構成する層で内側フィルム4と接する面(内層31の面)がブロッキング接着することになる。また、ブロッキング接着フィルム22にあっては、内側フィルム4が、背シール部6や横シール部7を構成する際に、重ね合わされて、直接接して溶着されることになる。
ブロッキング接着フィルム22におけるブロッキング接着層を構成する樹脂(内側フィルム4と、外側フィルム3における内層31)としては、ヒートシール性を有することが好ましく、例えば、前記した(1)で挙げたポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を使用することができる。また、かかるポリオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、この中でも、ヒートシール性等に優れた、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが特に好ましい。
また、外側フィルム3における外層33や中間層32を構成する樹脂としては、多重フィルム2に耐ピンホール性や機械的特性を付与すべく、例えば、前記した(1)で挙げたポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂のほか、例えば、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT)、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を使用することができる。
また、前記したチューブ状フィルム21と同様、外側フィルム3の中間層32として易引裂樹脂からなる易引裂樹脂層を形成することが好ましい。易引裂樹脂層としては、例えば、環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層を用いるようにしてもよい。かかる環状ポリオレフィン樹脂を含有する層を中間層32として介在させることにより、多重フィルム2の易開封性(易引裂性)が向上する。使用可能な環状ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン系樹脂や環状ポリオレフィン樹脂の含有量等については、前記した(1)で説明した環状ポリオレフィン樹脂を含んだ混合樹脂等と共通するので、説明を省略する。
ブロッキング接着フィルム22を用いるにあたり、外側フィルム3を図9に示した3層の構成とする場合、外側フィルム3は、多重袋1の外側から順に、ポリオレフィン系樹脂からなる層(ポリオレフィン系樹脂層)/環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層(混合樹脂層)/直鎖状低密度ポリエチレンからなる層(直鎖状低密度ポリエチレン層)、内側フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン層とすることが好ましい。外側フィルム3及び内側フィルム4をかかる構成とすることにより、ヒートシール性、耐ピンホール性等を維持した状態で、易開封性(易引裂性)を付与することができる。
また、環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層は、多層の外側フィルム3において、中間層32以外の層としても問題はなく、チューブ状フィルムと21同様である。
ブロッキング接着されるブロッキング接着層の形成方法は、特に制限はなく、従来公知の技術を用いることができるが、例えば、単層押出インフレーション法によりインフレーションフィルムを製造するときに押し出したチューブ状フィルムを折り畳んで重ね、引取り用ニップロールまたは引取り用ニップロールの後に新たに設けた圧着ロールで、オンラインで圧接してフィルムの内面同士をブロッキングさせてロール状に捲き取る方法等により製造することができる。また、別の方法としては、ブロッキングさせることなく別々に巻き取ったフィルムをオフラインで捲出してブロッキングさせる層同士を重ね合わせて引揃え、加熱した加圧ロール間を通して熱圧着してブロッキングさせる方法等があるが、操作の簡便性、コスト等の点から、前記したインフレーション成形と同時に圧着させてブロッキンクさせる方法を用いることが好ましい。
ここで、ブロッキング接着のし易さは、使用される樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)の種類や密度、滑剤やアンチブロッキング剤等の添加剤の種類や量等によって適宜変更される。一般に、樹脂の密度が高く、添加剤の量が多くなるほどブロッキングし難くなる。また、インフレーション法により製膜して折畳んだフィルムのブロッキング接着強度を調整するために、折畳んだチューブ状フィルムがニップロールや圧着ロール、エンボスロール、加熱ロール等のロールを通過する前に、フィルムを遠赤外線ランプやニクロム線ヒーターなどの加熱手段を用いて加熱してもよい。
なお、ブロッキング接着する2層の接着強度は、少なくともフィルム積層工程やスリット工程、製袋あるいは自動充填製袋工程でブロッキングの意図しない剥離が生じて機械適性を損なわない程度の強さであればよい。これについては前記(1)チューブ状フィルムで内層31,41同士をブロッキング接着させる場合も同様である。
ブロッキング接着層と他の層を積層するには、例えば、所定の接着剤や接着性樹脂を介して接着するドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、押出ラミネーション法等が用いられる。例えば、ドライラミネーション法による場合、1液性または2液性のポリウレタン系接着剤を用いるのが一般的であるが、これには制限されず、ラミネートする層を構成する樹脂の種類等に応じて、接着剤の種類を適宜選択するようにすればよい。接着性樹脂としては、EVA、アイオノマーPE、EAA、EMAA、各種変性樹脂等の公知の接着性樹脂を使用するようにしてもよい。
なお、ラミネートするフィルム間の貼合せ接着力を向上するために、ラミネーションに先だって(あるいはラミネーションと同時に)、ラミネートする層のいずれか一方、あるいは両方の貼合接着する面に対して、コロナ放電処理、オゾン処理、アンカーコート剤塗布等による表面処理を施すようにしてもよい。
(C)第2実施形態に係る多重袋1:
次に、第2実施形態に係る多重袋1の特徴を説明する。第2実施形態に係る多重袋1は、多重袋1を構成する外側フィルム3と内側フィルム4からなる多重フィルム2のうち、少なくとも外側フィルム3は環状オレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる中間層32,42(図8、図9参照。)を有する多層構成である。かかる混合樹脂からなる中間層32,42を形成することにより、中間層32,42が易引裂樹脂層となり、4枚のフィルム(2枚の多重フィルム2)が集まった背シール部6を容易に引き裂くことができる。以下、多重フィルム2の構成がチューブ状フィルム21の場合とブロッキング接着フィルム22の場合に分けて説明する。
(1)多重フィルム2の構成(チューブ状フィルム21):
チューブ状フィルム21は、筒状のフィルムを扁平状にして2枚重ねにした両端が袋状に閉じた対面する2枚のフィルムである。多重フィルム2であるチューブ状フィルム21は、図3及び図4からもわかるように、外側フィルム3と内側フィルム4の両側端縁が互いに連続しているものであり、外側フィルム3と内側フィルム4が一体化されており、外側フィルム3と内側フィルム4は、共通する樹脂で構成される。
図8は、チューブ状フィルム21において、外側フィルム3及び内側フィルム4を3層とした場合の層構成を示した断面図である。図8中、3は外側フィルム、4は内側フィルム、31,41は内層、32,42は中間層、33,43は外層、Cは隙間、をそれぞれ示す。
図8に示すように、本実施形態にあって、多重フィルム2をチューブ状フィルム21とした場合にあっては、外側フィルム3及び内側フィルム4の両方が、環状オレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる中間層32,42を有する多層構成となる。かかる環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層を中間層32,42として介在させることにより、中間層32,42が易引裂樹脂層となり、多重フィルムの易開封性(易引裂性)が向上する。
図8に一例を示すように、外側フィルム3及び内側フィルム4を多層とする場合は、外側フィルム3及び内側フィルム4は、外側フィルム3及び内側フィルム4の間に形成されている隙間Cからみて対称の関係となり、多重袋1の外側から多重袋1の内側までは、多重袋1の外側/外層33/中間層32/内層31(以上が外側フィルム3の層)/隙間C/内層41/中間層42/外層43(以上が内側フィルム4の層)/多重袋1の内側、となる。そして、外層33,43に該当する層が、背シール部6や横シール部7を形成する際に、重ね合わされて、直接接して溶着されることになる。
チューブ状フィルム21を構成する樹脂として、中間層32,42以外の層を構成する樹脂として、図8において外層33,43に相当する層は、その層自体にヒートシール性があることが好ましく、例えば、ポリオレフィン系樹脂が挙げられ、具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、また、エチレンと共重合可能なビニル化合物との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アイオノマー、エチレン−アクリル酸またはエチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレンメタアクリル酸またはメタアクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマール酸、その他の不飽和カルボン酸で変成した酸変性ポレオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、その1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用するようにしてもよい。
これらの樹脂のうち、ヒートシール性等が優れた、低密度ポリエチレン(LDPE)を使用することが好ましく、低密度ポリエチレンの中でも、耐ピンホール性を有し、タフで丈夫なため機械的強度等にも優れた直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を使用することが特に好ましい。
なお、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた場合の物性、機械的強度やヒートシール強度等は、共重合させるα−オレフィンの炭素数により調整される。一般に、炭素数3〜13個、好ましくは炭素数4〜8個のα−オレフィン、例えばブテン−1、オクテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、へプテン−1等が好ましく用いられる。
低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む。)の密度は、0.870〜0.935g/cm3であることが好ましい。密度がかかる範囲の低密度ポリエチレンを用いることにより、ヒートシール性等の諸特性が維持される。低密度ポリエチレンの密度は、0.880〜0.920g/cm3であることが特に好ましい。なお、190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、0.1〜30.0g/10分とすることが好ましく、0.5〜4.0g/10分とすることが特に好ましい。
また、図8において、内層31,41に相当する層を構成する樹脂としては、多重フィルム2に耐ピンホール性や機械的特性を付与すべく、前記したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT)、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を使用することができる。
中間層32,42となる混合樹脂を構成する環状ポリオレフィン樹脂は、前記(B)(1)等で説明した環状ポリオレフィン樹脂と共通するので、説明を省略する。
混合樹脂において、環状ポリオレフィン樹脂と組み合わせて用いる樹脂としては、前記したポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。この中でも、ポリエチレン系樹脂が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)がさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
混合樹脂における環状ポリオレフィン樹脂の含有量は、混合樹脂全体(環状ポリオレフィン樹脂及び当該環状ポリオレフィン樹脂と組み合わせて用いられる樹脂との合計を指す。)に対して3〜99質量%とすることが好ましい。環状ポリオレフィン樹脂の含有量をかかる範囲とすることにより、易引裂性が良好に実施されることになる。環状ポリオレフィン樹脂の含有量は、混合樹脂全体に対して60〜90質量%とすることがさらに好ましく、60〜80質量%とすることが特に好ましい。
外側フィルム3や内側フィルム4を図8に示した3層の構成とする場合、外側フィルム3は、多重袋1の外側から順に、直鎖状低密度ポリエチレンからなる層(直鎖状低密度ポリエチレン層)/環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層(混合樹脂層)/ポリオレフィン系樹脂からなる層(ポリオレフィン系樹脂層)、内側フィルムは、多重袋1の外側(前記した隙間C)から順に、ポリオレフィン系樹脂層/混合樹脂層/直鎖状低密度ポリエチレン層とすることが好ましい。外側フィルム及び内側フィルムをかかる構成とすることにより、ヒートシール性、耐ピンホール性等を維持した状態で、易開封性(易引裂性)を付与することができる。
多重フィルム2であるチューブ状フィルム21を製造するには、例えば、インフレーションフィルム法で得るのが好ましい。インフレーションフィルムは、あらかじめチューブ状(筒状)となっており、製造されたままの状態で使用でき、後工程でフィルムを筒状にする必要がなく継ぎ目も生じないというメリットもある。加えて、インフレーションフィルムは厚さが薄いフィルムはもちろんのこと、厚さが比較的厚いフィルムを容易に製造可能である。
一般的なインフレーションフィルム法としては、例えば、押出機からダイを経てチューブ状に押し出された溶融樹脂を垂直方向に引き上げ、かかる溶融樹脂を垂直方向に引き上げられる過程で供給される空気により膨らませてチューブ状とし、空冷しながらフラットなフィルムにして巻取装置に巻き取ることで、チューブ状フィルム21を扁平状に巻いたロールを得ることができる。
なお、多重フィルム2をチューブ状フィルム21とした場合にあっては、外側フィルム3及び内側フィルム4における外側に現れず接触する層(前記した図8における内層31,41)については、相互にブロッキング接着していることが好ましい。ここで、「相互にブロッキング接着している」とは、接触しているフィルム同士が接着剤等の他の媒体や熱融着により接着されて完全に一体化されているものではなく、接触しているフィルム同士が疑似接着して柔軟な状態であることを指す。ブロッキング接着は、フィルムの全面にわたって発生していてもよいし、フィルムの一部に部分的に発生していてもよい。ブロッキング接着させることにより、製袋等の際に外側フィルム3と内側フィルム4が一体化し、取り扱い性が良好となる。
チューブ状フィルム21をブロッキング接着させるためには、例えば、前記したインフレーションフィルム法によって製膜されたポリオレフィン系のチューブ状フィルムを折畳みニップロール等で加圧して重ね合わせたフィルム間の空気を押出しながら1つ折りの扁平な2層フィルムとして巻き取ることによって、簡便に製造することができる。
(2)多重フィルム2の構成(ブロッキング接着フィルム22):
次に、多重フィルム2をブロッキング接着フィルム22とした場合について説明する。多重フィルム2としては、別途独立した外側フィルム3と内側フィルム4がブロッキング接着している構成のもの(ブロッキング接着フィルム)を使用することができる。
ここで、「ブロッキング接着」については、前記した通りであり、接触しているフィルム同士が接着剤等の他の媒体や熱融着により接着されて完全に一体化されているものではなく、フィルム接触しているフィルム同士が疑似接着して柔軟な状態であることを指す。ブロッキング接着は、フィルムの全面にわたって発生していてもよいし、フィルムの一部に部分的に発生していてもよい。ブロッキング接着させることにより、製袋等の際に外側フィルム3と内側フィルム4が一体化し、取り扱い性が良好となる。
多重フィルム2となるブロッキング接着フィルム22は、本実施形態にあっては、ブロッキング接着している外側フィルム3(図9の内層31)及び内側フィルム4からなる層(以下、「ブロッキング接着層」とする場合もある。)と、外側フィルム3として、さらに環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる中間層32、及び外層33を積層した構成となる。
図9は、ブロッキング接着フィルム22において、外側フィルム3を3層とした場合の層構成を示した断面図である。図9中、3は外側フィルム、4は内側フィルム、31は内層、32は中間層、33は外層、Bはブロッキング接着されている面、をそれぞれ示す。図9に示すように、ブロッキング接着フィルム22にあっては、内側フィルム4における外側フィルム3(の内層31)に接する面と、外側フィルム3を構成する内層31における内側フィルム4と接する面がブロッキング接着することになる。また、ブロッキング接着フィルム22にあっては、内側フィルム4が、背シール部6や横シール部7を構成する際に、重ね合わされて、直接接して溶着されることになる。
外側フィルム3における環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる中間層32を構成する環状ポリオレフィン樹脂やポリオレフィン系樹脂、混合樹脂における環状ポリオレフィン樹脂の含有量等については、前記した(1)チューブ状フィルムを構成する環状ポリオレフィン樹脂やポリオレフィン系樹脂、混合樹脂における環状ポリオレフィン樹脂の含有量等と共通するので(前記(B)でも説明。)、説明を省略する。
ブロッキング接着フィルム22におけるブロッキング接着層を構成する樹脂(内側フィルム4と、外側フィルム3における内層31)としては、例えば、前記した(1)で挙げたポリオレフィン系樹脂を使用することができる。また、かかるポリオレフィン系樹脂のうち、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)を用いることがさらに好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが特に好ましい。
また、外側フィルム3における外層33を構成する樹脂としては、多重フィルム2に耐ピンホール性や機械的特性を付与すべく、前記したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリアミド系樹脂(ナイロン)、ポリエステル系樹脂(PET、PBT)、エチレン−ビニルアルコール共重合体等を使用することができる。
ブロッキング接着フィルム22を用いるにあたり、外側フィルム3を図9に示した3層の構成とする場合、外側フィルム3は、多重袋1の外側から順に、ポリオレフィン系樹脂からなる層(ポリオレフィン系樹脂層)/環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層(混合樹脂層)/直鎖状低密度ポリエチレンからなる層(直鎖状低密度ポリエチレン層)、内側フィルムは、直鎖状低密度ポリエチレン層とすることが好ましい。外側フィルム3及び内側フィルム4をかかる構成とすることにより、ヒートシール性、耐ピンホール性等を維持した状態で、易開封性(易引裂性)を付与することができる。
ブロッキング接着されるブロッキング接着層は、例えば、単層押出インフレーション法によりインフレーションフィルムを製造するときに押し出したチューブ状フィルムを折畳んで重ね、引取り用ニップロールまたは引取り用ニップロールの後に新たに設けた圧着ロールで、オンラインで圧接してフィルムの内面同士をブロッキングさせてロール状に捲き取る方法等により製造することができる。また、別の方法としては、ブロッキングさせることなく別々に巻き取ったフィルムをオフラインで捲出してブロッキングさせる層同士を重ね合わせて引揃え、加熱した加圧ロール間を通して熱圧着してブロッキングさせる方法等があるが、操作の簡便性、コスト等の点から、前記したインフレーション成形と同時に圧着させてブロッキンクさせる方法を用いることが好ましい。
重ね合わせるフィルムのブロッキング接着のし易さは、使用される樹脂(ポリオレフィン系樹脂等)の種類や密度、滑剤やアンチブロッキング剤等の添加剤の種類や量等によって適宜変更される。一般に、樹脂の密度が高く、添加剤の量が多くなるほどブロッキングし難くなる。また、インフレーション法により製膜して折畳んだフィルムのブロッキング接着強度を調整するために、折畳んだチューブ状フィルムがニップロールや圧着ロール、エンボスロール、加熱ロール等のロールを通過する前に、フィルムを遠赤外線ランプやニクロム線ヒーターなどの加熱手段を用いて加熱してもよい。
なお、ブロッキング接着する2層の接着強度は、少なくともフィルム積層工程やスリット工程、製袋あるいは自動充填製袋工程でブロッキングの意図しない剥離が生じて機械適性を損なわない程度の強さであればよい。これについては前記(1)で内層31,41同士をブロッキング接着させる場合も同様である。
ブロッキング接着層と他の層を積層するには、例えば、所定の接着剤を介して接着するドライラミネーション法、無溶剤ラミネーション法、ホットメルトラミネーション法、押出ラミネーション法等が用いられる。例えば、ドライラミネーション法による場合、1液性または2液性のポリウレタン系接着剤を用いるのが一般的であるが、これには制限されず、ラミネートする層を構成する樹脂の種類等に応じて、接着剤の種類を適宜選択するようにすればよい。
なお、ラミネートするフィルム間の貼合せ接着力を向上するために、ラミネーションに先だって(あるいはラミネーションと同時に)、ラミネートする層のいずれか一方、あるいは両方の貼合接着する面に対して、コロナ放電処理、オゾン処理、アンカーコート剤塗布等による表面処理を施すようにしてもよい。
なお、環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる層は、多層の外側フィルムにおいて、中間層以外の層としても問題はなく、これについてもチューブ状フィルムと同様である。
(3)引裂開始部51について:
次に、本実施形態に係る多重袋に形成される引裂開始部51について説明する。本発明の第2実施形態に係る多重袋1は、図1及び図2に示すように、多重フィルム2の両端を内側フィルム4同士が対向するように重ね合わせた合掌部5に対して、引裂開始部51が形成されている。引裂開始部51は、横シール部7に対して略平行に開封するために形成され、例えば、横シール部7に対して略平行となるように形成すれば、使用者が横シール部7に対して略平行に開封しやすくなる。
合掌部5に形成される引裂開始部51は、初期の引き裂き強度を弱め、易開封性を向上させる。引裂開始部51は、スリット(切れ目)、Vノッチ、Iノッチ、ミシン目、微多孔の集合体、等の任意の形状とすることができる。
引裂開始部51は、図1及び図2に示すように、合掌部の外縁52から少なくとも背シール部6まで達するように形成されることが好ましい。引裂開始部51が背シール部6まで達するようにすれば、開封時の引き裂きの繰り出しをスムースに行うことができ、多重フィルム2が集まった背シール部6を容易に引き裂くことができる、易開封性に優れた多重袋1となる。また、引裂開始部51の長さとしては、特に制限はないが、概ね5〜20mmであればよい。
また、引裂開始部51は、細幅線状の背シール部6を複数形成された場合にあっては、図7のようにしてもよい。図7は、多重袋1の他の態様を示した正面図である。図7にあっては、背シール部6が合掌部5に対して細幅線状に2本形成されている態様を示している。このように、細幅線状の背シール部6を複数形成した場合にあっては、引裂開始部51は複数の細幅線状の背シール部6のうち少なくとも合掌部の外縁52側に形成された背シール部61に達するように形成されている。なお、本発明にあって、細幅線状の背シール部6,61は、ヒートシール(溶着)により、概ね2〜10mm程度の幅からなる略直線状に形成された背シール部6を指す。また、複数の背シール部6,61の数は、概ね2〜5とすればよい。
(D)多重袋1の製造方法(第1実施形態(第1発明)、第2実施形態(第2発明)共通):
多重フィルム2を用いた、図1に示した構成の本発明に係る多重袋1は、例えば、縦ピロー型製袋機等を使用して製造することができる。一例を説明すると、多重フィルム2を巻回したロールから多重フィルム2を供給し、供給された多重フィルム2を、案内ロール群を経由させた後、フォーマー等により筒状に成形し、背シールバーで背シール部6を形成してから充填物を充填した後、横シールバーで横シール部7が形成すると同時に切断することにより、図1等に示した多重袋1を簡便に得ることができる。
(E)多重袋を構成する多重フィルムの厚さ(第1実施形態(第1発明)、第2実施形態(第2発明)共通):
本発明に係る多重袋1において、多重フィルム2における外側フィルム3、内側フィルム4の厚さは、30〜150μmとすることが好ましい。また、図8及び図9に示すような3層構成にする場合にあっては、内層31,41や外層33,43は、概ね10〜70μmとすることが好ましく、中間層32,42は、概ね7〜30μmとすることが好ましい。
(F)本発明の効果:
以上説明した本発明の第1実施形態に係る多重袋1は、外側フィルム3と内側フィルム4からなる多重フィルム2で構成される多重袋1の合掌部5に形成される引裂開始部51が合掌部の外縁52から少なくとも背シール部6まで達するように形成されているので、開封時の引き裂きの繰り出しをスムースに行うことができ、4枚のフィルムが集まった背シール部6を含め、多重フィルム2を容易に引き裂くことができる、易開封性に優れた多重袋1となる。
また、以上説明した本発明の第2実施形態に係る多重袋1は、外側フィルム3と内側フィルム4からなる多重フィルム2で構成される多重袋1の少なくとも外側フィルム3が環状オレフィン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との混合樹脂からなる中間層32,42を有するので、かかる中間層32,42が易引裂樹脂層となって合掌部5に形成された引裂開始部51からの引き裂きを容易とし、4枚のフィルムが集まった背シール部6を含め、多重フィルム2を容易に引き裂くことができる、易開封性に優れた多重袋1となる。
前記した多重袋1は、例えば、業務用や工業用等に使用される液体、半流動体、粉体、固形、ペースト体等の材料、食品等の運搬、保管、販売等に用いることができ、特に、ジュース、ミネラルウォーター、清涼飲料水、コーヒー、紅茶、緑茶、調味料、植物性油、マヨネーズ、ソース、ケチャップ、ジュース等の液体食品等の運搬等に用いられる袋や、これらを運搬等するためのバックインボックス用の多重袋1として有用である。なお、前記した製法では内容物を充填した状態で製袋化された例を示したが、未だ充填物が充填されてない状態や、シール部等が形成されていない状態で使用されても問題はない。
また、バックインボックスに用いられる場合、内容物を充填した多重袋1を、収容された段ボール箱から、所定の容器(バケツ等)に多重袋1のまま移し、かかる所定の容器に入れた状態で開封して内容物を取り出して利用されることもある。多重袋1の開封に際しては、合掌部5が形成された面だけでなくその反対面を含んだ全周を引き裂いて、多重袋1から引き裂かれた不要部を取り外した場合にあっては、不要部がゴミとなり、処理が面倒となる。よって、全周を引き裂いて取り除くことはせず、合掌部5が形成された面のみを引き裂いて開封し、引き裂かれた部分を多重袋1から取り外さずに内容物を取り出すようにすることが好ましい。
(G)実施形態の変形:
なお、以上説明した態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
例えば、前記した実施形態では、多重フィルム2の構成として、チューブ状フィルム21及びブロッキング接着フィルム22を例に挙げて説明したが、多重フィルムとしてはこれらには限定されず、外側フィルム3と内側フィルム4からなる任意の構成の多重フィルムを使用することができる。
なお、図8には、チューブ状フィルムを使用した場合において、外側フィルム3及び内側フィルム4を3層とした構成を示しているが、かかる構成には制限されず、外側フィルム3や内側フィルム4は4層以上の層構成としてもよく、例えば、中間層32,42と外層33,43、中間層32,42と内層31,41の間に他の層を形成するようにしてもよい。かかる他の層を構成する樹脂としては、チューブ状フィルム((B)(1)、(C)(1))のおける前記した内層31,41や中間層32,42を構成する樹脂等を使用することができる。
また、図9には、ブロッキング接着フィルム22を使用した場合において、外側フィルム3を3層とした構成を示しているが、かかる構成には制限されず、外側フィルム3は4層以上の層構成としてもよく、例えば、中間層32と外層33、中間層32と内層31の間に他の層を形成するようにしてもよい。かかる他の層を構成する樹脂としては、ブロッキング接着フィルム((B)(2)、(C)(2))における前記した外層33や中間層32を構成する樹脂等を使用することができる。
チューブ状フィルム21における外側フィルム3及び内側フィルム4は単層、2層としてもよい。単層とする場合は、図8に示した3層構造のチューブ状フィルム21((B)(1)、(C)(1))における前記した外層33,43を構成する樹脂を使用すればよい。また、2層とする場合は、外側に現れる層について、前記した外層33,43を構成する樹脂等を使用すればよく、内側に現れる層(隙間Cと対面する層)については、前記した内層31,41や中間層32,42を構成する樹脂等を使用することができる。
ブロッキング接着フィルム22における外側フィルム3は単層、2層としてもよい。単層とする場合は、図9に示した3層構造のブロッキング接着フィルム22((B)(2)、(C)(2))における前記した内層31を構成する樹脂等を使用すればよい。また、2層とする場合は、外側に現れる層について、前記した外層33や中間層32を構成する樹脂等を使用することができ、ブロッキング接着する層について、前記した内層31を構成する樹脂等を使用することができる。
なお、本発明において、例えば、環状ポリオレフィン樹脂とポリオレフィン系樹脂の混合樹脂からなる中間層等の「中間層」とは、フィルムにおける外層及び内層(3層の場合、前記図8や図9を参照。)以外の層を指し、3層構成の場合の文字通りの中間層のほか、4層以上の構成における最外層及び最内層以外の層についても「中間層」に含まれるものである。
本発明にあって、「横シール部7に対して略平行に開封するための引裂開始部51」とは、横方向(横シール部7の長手方向)に開封するために合掌部5に形成される引裂開始部51のことを指し、かかる引裂開始部51を合掌部5に形成した上で、例えば、横シール部7等に縦方向(背シール部6の長手方向)等に開封するための図示しない引裂開始部を別途形成してもよい。
なお、多重フィルム2を構成する前記した樹脂(樹脂材料)には、本発明の効果を損なわない範囲において、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、防曇剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、増核剤、離型剤、着色剤及び中和剤等、樹脂材料の分野で一般に使用される各種添加剤を添加するようにしてもよい。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造及び形状等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。