以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図中、同一又は相当部分には同一符号を用いることとする。また、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、図1を用いて、実施形態に係るハイブリッド車両のパワーユニット1の構成について説明する。図1は、ハイブリッド車両のパワーユニット1の構成を示すスケルトン図、及び、その制御システムの構成を示すブロック図である。
ハイブリッド車両は、車両の駆動力源として、エンジン10と、第1モータ・ジェネレータ21と、第2モータ・ジェネレータ22とを備えている。エンジン10は、どのような形式のものでもよいが、例えば、高膨張比サイクルによって圧縮比を高めることにより、熱効率の向上を図ったエンジンなどが好適に用いられる。エンジン10は、エンジン・コントロールユニット(以下「ECU」という)81によって制御される。
ECU81には、クランクシャフトの回転位置(エンジン回転数)を検出するクランク角センサ96等の各種センサが接続されている。ECU81は、取得したこれらの各種情報、及び後述するハイブリッド車・コントロールユニット(以下「HEV−CU」という)80からの制御情報に基づいて、燃料噴射量や点火時期、並びに電子制御式スロットルバルブ等の各種デバイスを制御することによりエンジン10を制御する。また、ECU81は、CAN(Controller Area Network)100を介して、エンジン回転数などの各種情報をHEV−CU80に送信する。
エンジン10のクランクシャフト10a(特許請求の範囲に記載の出力軸に相当)には、エンジン10の回転変動を吸収するフライホイールダンパ11を介して、出力軸12が接続されている。出力軸12には、その端部の外周面に第1スプライン31が形成されている。すなわち、エンジン10のクランクシャフト10aは、フライホイールダンパ11及び出力軸12を介して第1スプライン31とトルク伝達可能に接続されている。
第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22は、供給された電力を機械的動力に変換するモータとしての機能と、入力された機械的動力を電力に変換するジェネレータとしての機能とを兼ね備えた同期発電電動機として構成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22それぞれは、車両駆動時には駆動トルクを発生するモータとして動作し、回生時にはジェネレータとして動作する。なお、第1モータ・ジェネレータ21は、主にジェネレータとして動作し、第2モータ・ジェネレータ22は、主にモータとして動作する。
第1モータ・ジェネレータ21の回転軸(入出力軸)21aは、一対のギヤ23(ドライブギヤ23a及びドリブンギヤ23b)を介して、出力軸24に接続されている。出力軸24には、その端部の外周面に第2スプライン32が形成されている。すなわち、第1モータ・ジェネレータ21の回転軸21aは、ギヤ23及び出力軸24を介して第2スプライン32とトルク伝達可能に接続されている。
第1スプライン31、第2スプライン32と同軸上に並べて、第3スプライン33が配設されている。第3スプライン33は、回転自在に支持された出力軸27の一方の端部の外周面に形成されている。出力軸27は、中空に形成され、他方の端部の外周部には第5スプライン35が形成されている。すなわち、第3スプライン33と第5スプライン35とは出力軸27を介して接続されている。なお、出力軸27の中空部(内部空間)には、上述した出力軸24が回転可能に配設されている。
第2モータ・ジェネレータ22の回転軸(入出力軸)22aは、一対のギヤ25(ドライブギヤ25a及びドリブンギヤ25b)を介して、フロントドライブシャフト(前輪出力軸)40に接続されている。フロントドライブシャフト40には、一対のギヤからなる第1ギヤ対26、及び第2ギヤ対29が並列に接続されている。
より具体的には、第1ギヤ対26(歯車列)を構成するドリブンギヤ26bが、フロントドライブシャフト40に取り付けられており、該ドリブンギヤ26bと歯合するドライブギヤ26a(ギヤコーン)に第4スプライン34が設けられている。同様に、第2ギヤ対29(歯車列)を構成するドリブンギヤ29bが、フロントドライブシャフト40に取り付けられており、該ドリブンギヤ29bと歯合するドライブギヤ29a(ギヤコーン)に第6スプライン36が設けられている。第1ギヤ対26のギヤ比と、第2ギヤ対29のギヤ比とは互いに異なるように設定されている。本実施形態では、エンジン10側(第1モータ・ジェネレータ21側)から見て、第1ギヤ対26のギヤ比(第4スプライン34からフロントドライブシャフト40へのギヤ比)を、第2ギヤ対29のギヤ比(第6スプライン36からフロントドライブシャフト40へのギヤ比)よりもハイギヤ(小さいギヤ比)に設定した。
第4スプライン34と第6スプライン36との間には、上述した第5スプライン35が同軸上に設けられている。
フロントドライブシャフト40(車軸に相当)は、前輪(駆動輪に相当)と接続されるフロントデファレンシャル(フロントデフ)42との間でトルクを伝達する。すなわち、前輪は、フロントドライブシャフト40、及びギヤ25を介して第2モータ・ジェネレータ22とトルク伝達可能に接続されるとともに、フロントドライブシャフト40、第1ギヤ対26/第2ギヤ対29、及び出力軸27を介して第3スプライン33とトルク伝達可能に接続されている。
よって、フロントドライブシャフト40に伝達された第2モータ・ジェネレータ22などのトルクは、フロントデファレンシャル(フロントデフ)42に伝達される。フロントデフ42は、例えば、ベベルギヤ式の差動装置である。フロントデフ42からのトルクは、左前輪ドライブシャフトを介して左前輪(図示省略)に伝達されるとともに、右前輪ドライブシャフトを介して右前輪(図示省略)に伝達される。
また、フロントドライブシャフト40には、一対のギヤ28(ドライブギヤ28a及びドリブンギヤ28b)を介して、プロペラシャフト(後輪出力軸)60が接続されている。プロペラシャフト60は、後輪(駆動輪に相当)と接続されるリヤデファレンシャル(リヤデフ)62との間でトルクを伝達する。
プロペラシャフト60には、後輪側に伝達されるトルクを調節するトランスファクラッチ61が介装されている。トランスファクラッチ61は、4輪の駆動状態(例えば前輪のスリップ状態等)や駆動トルクなどに応じて締結力(すなわち後輪へのトルク分配率)を制御する。よって、プロペラシャフト60に伝達された第2モータ・ジェネレータ22などのトルクは、トランスファクラッチ61の締結力に応じて分配され、後輪側にも伝達される。
プロペラシャフト60に伝達され、トランスファクラッチ61によって調節(分配)されたトルクは、リヤデファレンシャル(リヤデフ)62に伝達される。リヤデフ62には左後輪ドライブシャフト及び右後輪ドライブシャフト(図示省略)が接続されている。リヤデフ62からの駆動力は、左後輪ドライブシャフトを介して左後輪(図示省略)に伝達されるとともに、右後輪ドライブシャフトを介して右後輪(図示省略)に伝達される。
上述したように、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33それぞれは、互いに相対回転可能な軸(出力軸12、出力軸24、出力軸27)(又は、軸に取り付けられたハブ)の外周に形成された外スプラインである。第1スプライン31(出力軸12)、第2スプライン32(出力軸24)、第3スプライン33(出力軸27)は、同軸上に並べて配設されている。
同様に、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36それぞれは、互いに相対回転可能なギヤ26a,29a(ギヤコーン)や出力軸27(ハブ)の外周に形成された外スプラインである。第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36は、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33と同軸上に並べて配設されている。
そして、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33の外周上(外側)には、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33と嵌合可能に形成されたスプライン371aを有し、当該スプライン371aの位置に応じて、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33の接続状態を切替える第1スリーブ371が設けられている。すなわち、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33、及び第1スリーブ371により第1ドグクラッチ301が構成される。
ここで、第1スリーブ371は、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33に外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプライン371aが形成されている。すなわち、第1スリーブ371は、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33の外周上を、軸方向に摺動自在(移動可能)に設けられている。
同様に、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36の外周上(外側)には、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36と嵌合可能に形成されたスプライン372aを有し、当該スプライン372aの位置に応じて、第5スプライン35の接続先を、第4スプライン34と、第6スプライン36との間で切替える第2スリーブ372が設けられている。すなわち、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36、及び第2スリーブ372により第2ドグクラッチ302が構成される。なお、第1ドグクラッチ301と第2ドグクラッチ302とでドグクラッチ30が構成される。
ここで、第2スリーブ372は、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36に外嵌可能な円筒状に形成され、内周面に沿って軸方向に延びる内スプライン372aが形成されている。第2スリーブ372は、第5スプライン35と常に嵌合しつつ、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36の外周上を、軸方向に摺動自在(移動可能)に設けられている。
第1スリーブ371及び第2スリーブ372は、アクチュエータ75によって摺動される。アクチュエータ75は、第1スリーブ371を動かして、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33の接続状態を切替えることにより、シリーズHEV走行モードと、パラレルHEV走行モードと、EV走行モードとを切替える。アクチュエータ75は、第1スリーブ371を動かして、シリーズHEV走行モードのときには第1スプライン31と第2スプライン32とを接続し、パラレルHEV走行モードのときには第1スプライン31と第2スプライン32と第3スプライン33とを接続し、EV走行モードのときには第2スプライン32と第3スプライン33とを接続する。
同時に、アクチュエータ75は、第1スプライン31と第2スプライン32と第3スプライン33とが接続されている状態(パラレルHEV走行モード)において、第2スリーブ372を動かして、第5スプライン35の接続先を、第4スプライン34と第6スプライン36との間で切替える。すなわち、第3スプライン33(第5スプライン35)と車軸(フロントドライブシャフト40)との間のトルク伝達経路を、第1ギヤ対26(ハイギヤ)と第2ギヤ対29(ローギヤ)との間で択一的に切替える。
より詳細には、第1スリーブ371及び第2スリーブ372は、それぞれの外周に形成された環状溝に、軸方向の断面がコの字状に形成された単一のシフトフォーク39が係合されており(把持されており)、シフトフォーク39の移動に伴って一体的に(連動して)軸方向に移動する。このシフトフォーク39に上記アクチュエータ75が連結されており、アクチュエータ75によってシフトフォーク39(すなわち第1スリーブ371及び第2スリーブ372)が軸方向に動かされ、上述したように走行モード及びパラレルHEV走行モード時のギヤ比が切替えられる。なお、アクチュエータ75としては、例えば電動モータなどが好適に用いられる。アクチュエータ75は、後述するHEV−CU80によって駆動制御される。
ここで、第2モータ・ジェネレータ22から車軸(フロントドライブシャフト40)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比は、第1スプライン31、第1スリーブ371、第3スプライン33、第5スプライン35、第2スリーブ372、及び、第4スプライン34/第6スプライン36を介して、エンジン10から車軸(フロントドライブシャフト40)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されている。
また、アクチュエータ75に電力を供給する電源系は、2重系とされている。より具体的には、上記電源系は、第1モータ・ジェネレータ21及び第2モータ・ジェネレータ22に電力を供給する数百V程度の高電圧バッテリ70からDC/DCコンバータ71を介して12Vに降圧された電力を供給する第1電力供給経路73と、高電圧バッテリ70よりも出力端子電圧が低い(例えば12V)低電圧バッテリ72から電力を供給する第2電力供給経路74とを有する2重系とされている。そして、第1電力供給経路73及び第2電力供給経路74のうちいずれか一方の電力供給経路(例えば第2電力供給経路74)に異常(フェイル)が発生した場合(例えば断線などが生じた場合)に、他方の電力供給経路(例えば第1電力供給経路73)から電力が供給されるように(すなわち、電力供給経路が切替えられるように)構成されている。
車両の駆動力源であるエンジン10、第2モータ・ジェネレータ22、及び第1モータ・ジェネレータ21は、HEV−CU80によって総合的に制御される。また、HEV−CU80は、アクチュエータ75(第1スリーブ371及び第2スリーブ372)の駆動も制御する。
HEV−CU80は、演算を行うマイクロプロセッサ、該マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM、その記憶内容が保持されるバックアップRAM、及び入出力I/F等を有して構成されている。
HEV−CU80には、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ91、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度センサ92、車両の前後・左右の加速度を検出するGセンサ(加速度センサ)93、車輪の速度を検出する車速センサ94、及び、フロントドライブシャフト40の回転数を検出する回転数センサ95、第1モータ・ジェネレータ21の回転位置(回転数)を検出するレゾルバ97、第2モータ・ジェネレータ22の回転位置(回転数)を検出するレゾルバ98などを含む各種センサが接続されている。また、HEV−CU80は、CAN100を介して、エンジン10を制御するECU81や、車両の横滑りなどを抑制して走行安定性を向上させるビークルダイナミック・コントロールユニット(以下「VDCU」という)85等と相互に通信可能に接続されている。HEV−CU80は、CAN100を介して、ECU81やVDCU85から、例えば、エンジン回転数やブレーキ操作量等の各種情報を受信する。
HEV−CU80は、取得したこれらの各種情報に基づいて、エンジン10、第2モータ・ジェネレータ22、及び第1モータ・ジェネレータ21の駆動を総合的に制御するとともに、アクチュエータ75(第1スリーブ371)を駆動して、走行モードを、シリーズHEV走行モード、パラレルHEV走行モード(ローギヤ又はハイギヤ)、EV走行モードの間で切替える。HEV−CU80は、例えば、アクセルペダル開度(運転者の要求駆動力)、車両の運転状態、高電圧バッテリ70の充電状態(SOC)、及びエンジン10のBSFCなどに基づいて、エンジン10の要求出力、及び第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21のトルク指令値を求めて出力するとともに、アクチュエータ75の駆動指令値(制御目標値)を出力する。
ECU81は、上記要求出力に基づいて、例えば、電子制御式スロットルバルブの開度を調節する。また、パワーコントロールユニット(以下「PCU」という)82は、上記トルク指令値に基づいて、インバータ82aを介して、第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21を駆動する。ここで、インバータ82aは、高電圧バッテリ70の直流電力を三相交流の電力に変換して第2モータ・ジェネレータ22、第1モータ・ジェネレータ21に供給する。一方、インバータ82aは、回生時などに、第2モータ・ジェネレータ22(及び/又は第1モータ・ジェネレータ21)で発電した交流電圧を直流電圧に変換して高電圧バッテリ70を充電する。
HEV−CU80は、アクチュエータ75(第1スリーブ371及び第2スリーブ372)を駆動して、走行モードを、シリーズHEV走行モード、パラレルHEV走行モード、EV走行モードの間で切替えるとともに、シリーズHEV走行モード時の変速段(ローギヤ/ハイギヤ)を切替えるために、切替制御部80aを機能的に有している。HEV−CU80では、ROMなどに記憶されているプログラムがマイクロプロセッサによって実行されることにより、切替制御部80aの機能が実現される。切替制御部80aは、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
切替制御部80aは、主として要求駆動力及び車速に基づいて、走行モードの切替え制御を行う。より具体的には、切替制御部80aは、例えば、発進時などでは、エンジンを停止して第1モータ・ジェネレータ21及び/又は第2モータ・ジェネレータ22の駆動力で走行するEV走行モードを選択する。また、切替制御部80aは、低速走行時(低負荷走行時)や高電圧バッテリ70のSOCが低下している場合などでは、第1モータ・ジェネレータ21で発電した電力を用いて第2モータ・ジェネレータ22を駆動して走行するシリーズHEV走行モードを選択する。さらに、切替制御部80aは、要求駆動力や車速などに応じて、第1モータ・ジェネレータ21及び/又は第2モータ・ジェネレータ22の駆動力とエンジン10の駆動力とにより走行するパラレルHEV走行モードを選択する。
切替制御部80aは、シリーズHEV走行モードを選択するときには、第1スプライン31と第2スプライン32とを接続するようにアクチュエータ75(第1スリーブ371)を制御(駆動)する。また、切替制御部80aは、パラレルHEV走行モードを選択するときには、第1スプライン31、第2スプライン32、及び第3スプライン33を接続するようにアクチュエータ75(第1スリーブ371)を制御(駆動)する。さらに、切替制御部80aは、EV走行モードを選択するときには、第2スプライン32と第3スプライン33とを接続するようにアクチュエータ75(第1スリーブ371)を制御(駆動)する。
上述したように構成されることにより、本実施形態に係るハイブリッド車両のパワーユニット1は、エンジンを停止して第1モータ・ジェネレータ21及び/又は第2モータ・ジェネレータ22の駆動力で走行するEV走行機能、第1モータ・ジェネレータ21で発電した電力を用いて第2モータ・ジェネレータ22を駆動して走行するシリーズHEV走行機能、第1モータ・ジェネレータ21及び/又は第2モータ・ジェネレータ22の駆動力とエンジン10の駆動力とにより走行するパラレルHEV走行機能を発揮する。
また、切替制御部80aは、パラレルHEV走行モードで走行できる範囲(エンジンを利用できる速度領域)を広げるため、第1スプライン31、第2スプライン32、及び第3スプライン33を第1スリーブ371によって接続した状態において(すなわちパラレルHEV走行モード時に)、例えば要求駆動力及び車両の速度(車速)に応じて、第5スプライン35の接続先を、第4スプライン34と、第6スプライン36との間で切替えるように、アクチュエータ75(第2スリーブ372)を制御する。より具体的には、切替制御部80aは、例えば、比較的車速が高く(高速走行領域)要求駆動力が低い場合には、第5スプライン35の接続先を第4スプライン34(ハイギヤ)に切替え、比較的車速が低く(低速走行領域)要求駆動力が高い場合には、第5スプライン35の接続先を第6スプライン36(ローギヤ)に切替える。
また、切替制御部80aは、第5スプライン35の接続先を、第4スプライン34と、第6スプライン36との間で切替える際に(すなわち、第5スプライン35と第4スプライン34とが接続された状態と、第5スプライン35と第6スプライン36とが接続された状態とを切替える際に)、第5スプライン35を一時的に中立状態(ニュートラル状態)とし、第5スプライン35が中立状態(ニュートラル状態)となっている間に、エンジン10(又は第1モータ・ジェネレータ21)の回転数を、第2スリーブ372と、第4スプライン34又は第6スプライン36とを嵌合可能な回転数に調節する(回転数を合わせる)。そして、その後(回転数を調節した後)、アクチュエータ75を駆動して、第5スプライン35の接続先を、第4スプライン34(第1ギヤ対26:ハイギヤ)又は第6スプライン36(第2ギヤ対29:ローギヤ)に切替える。
ここで、シリーズHEV走行モードにおけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を図2に示す。同様に、パラレルHEV走行モード(ハイギヤ時)におけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を図3に示す。また、パラレルHEV走行モード(ローギヤ時)におけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を図4に示す。さらに、EV走行モードにおけるドグクラッチ30を介したトルク伝達経路(太線で表示)を図5に示す。
図2に太線で示されるように、シリーズHEV走行モードでは、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が(中央の位置から)図面左側方向に摺動される。そして、第1スプライン31と第2スプライン32とが第1スリーブ371によって接続される。すなわち、第1スプライン31、第1スリーブ371、第2スプライン32を介して、エンジン10と第1モータ・ジェネレータ21が接続される。一方、第2モータ・ジェネレータ22は、車軸(フロントドライブシャフト40及びプロペラシャフト60)に接続されている。よって、エンジン10によって第1モータ・ジェネレータ21が駆動されて発電機として稼働し、その第1モータ・ジェネレータ21によって発電された電力によって第2モータ・ジェネレータ22が駆動されて、駆動輪(車両)が駆動される。なお、この場合、油圧クラッチを用いることなくエンジン10及び第1モータ・ジェネレータ21を切離しているため、クラッチの引きずりロスが発生しない。同時に、第4スプライン34と第5スプライン35とが第2スリーブ372によって接続され、第1ギヤ対26(ハイギヤ)が選択される。ただし、シリーズHEV走行モードでは、第1ギヤ対26はトルク伝達に関与しない。
パラレルHEV走行モード(ハイギヤ時)では、図3に太線で示されるように、第1スリーブ371が中央左側の位置に、第2スリーブ372が左側の位置に摺動されて、第1スプライン31と第2スプライン32と第3スプライン33とが第1スリーブ371によって接続される。すなわち、エンジン10、第1モータ・ジェネレータ21、及び第2モータ・ジェネレータ22と車軸(フロントドライブシャフト40及びプロペラシャフト60)とが接続される。よって、エンジン10と第2モータ・ジェネレータ22及び/又は第1モータ・ジェネレータ21によって駆動輪(車両)が駆動される。なお、この場合、油圧クラッチを用いることなく3要素(第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33)を締結しているため、油圧によるロス(オイルポンプ・ロスやシーリング・フリクションなど)が発生しない。また、同時に、第4スプライン34と第5スプライン35とが第2スリーブ372によって接続され、第1ギヤ対26(ハイギヤ)が選択される。よって、エンジン10、第1モータ・ジェネレータ21の駆動トルクは第1ギヤ対26(ハイギヤ)を介してフロントドライブシャフト40に伝達される。
一方、パラレルHEV走行モード(ローギヤ時)では、図4に太線で示されるように、第1スリーブ371が中央右側の位置に、第2スリーブ372が右側の位置に摺動される。そして、第1スプライン31と第2スプライン32と第3スプライン33とが第1スリーブ371によって接続される。すなわち、エンジン10、第1モータ・ジェネレータ21、及び第2モータ・ジェネレータ22と車軸(フロントドライブシャフト40及びプロペラシャフト60)とが接続される。よって、エンジン10と第2モータ・ジェネレータ22及び/又は第1モータ・ジェネレータ21によって駆動輪(車両)が駆動される。また、同時に、第5スプライン35と第6スプライン36とが第2スリーブ372によって接続され、第2ギヤ対29(ローギヤ)が選択される。よって、エンジン10、第1モータ・ジェネレータ21の駆動トルクは第2ギヤ対29(ローギヤ)を介してフロントドライブシャフト40に伝達される。
EV走行モードでは、図4に太線で示されるように、第1スリーブ371が(中央の位置から)図面右側方向に、第2スリーブ372が右側の位置に摺動される。そして、第2スプライン32と第3スプライン33とが第1スリーブ371によって接続される。すなわち、第1モータ・ジェネレータ21と第2モータ・ジェネレータ22と車軸(フロントドライブシャフト40及びプロペラシャフト60)が接続される。よって、第2モータ・ジェネレータ22及び/又は第1モータ・ジェネレータ21によって駆動輪(車両)が駆動される。なお、この場合、油圧クラッチを用いることなくエンジン10を遮断しているため、クラッチの引きずりロスが発生しない。また、第2モータ・ジェネレータ22に加えて、第1モータ・ジェネレータ21もEV駆動に使用することができるため、力強いEV走行が可能となる。同時に、第5スプライン35と第6スプライン36とが第2スリーブ372によって接続され、第2ギヤ対29(ローギヤ)が選択される。よって、第1モータ・ジェネレータ21の駆動トルクは第2ギヤ対29(ローギヤ)を介してフロントドライブシャフト40に伝達される。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33とにより第1ドグクラッチ301が構成され、当該第1ドグクラッチ301の締結・解放状態(すなわち、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33との嵌合状態)を切替えることにより、シリーズHEV走行モード、パラレルHEV走行モード、EV走行モードが切替えられる。そのため、エンジン10を切離して(第1スプライン31を切離して)走行するEV走行時に、例えば油圧クラッチのような引きずり損失が生じない。また、EV走行時に、第2スプライン32と第3スプライン33とが接続されるとともに、第5スプライン35と第6スプライン36とが接続されるため、第1モータ・ジェネレータ21と第2モータ・ジェネレータ22との双方を用いて車両を駆動することができる。その結果、エンジン10切離し時(クラッチ解放時)の引きずり損失を解消(すなわち燃費を向上)でき、かつ、2個(全て)のモータ・ジェネレータ21,22を駆動力源として用いてEV走行を行うこと(すなわち、第2モータ・ジェネレータ22を大型化することなく、EV走行時の駆動力増大、EV走行領域拡大、ドライバビリティ向上など)が可能となる。
また、本実施形態によれば、第1スプライン31、第2スプライン32、及び第3スプライン33が接続されたパラレルHEV走行モード時に、要求駆動力及び車速に応じて、第5スプライン35の接続先が、第4スプライン34(第1ギヤ対26)と第6スプライン36(第2ギヤ対29)との間で切替えられる。すなわち、パラレルHEV走行モード状態において、第3スプライン33(第5スプライン35)と車軸(フロントドライブシャフト40)との間のトルク伝達経路を、第4スプライン34(第1ギヤ対26)と第6スプライン36(第2ギヤ対29)との間で切替えることができる。ここで、第1ギヤ対26と第2ギヤ対29とは異なるギヤ比に設定されている。そのため、例えば、高速走行時と中・低速走行時とで用いるギヤ対を切替えることにより、パラレルHEV走行領域を拡大することができる。また、この場合、2つのギヤ対、すなわち比較的シンプルかつ低コストな構成でパラレルHEV走行領域を拡大することができる。その結果、よりシンプルかつ低コストに(またフリクションも増大させることなく)、パラレルHEV走行モードで走行できる範囲(エンジンを利用できる速度領域)を広げることが可能となる。
本実施形態によれば、第1ギヤ対26(歯車列)の第4スプライン34からフロントドライブシャフト40へのギヤ比が、第2ギヤ対29(歯車列)の第6スプライン36からフロントドライブシャフト40へのギヤ比ギヤ比よりもハイギヤに設定されているため、例えば、高速走行時にハイギヤ側の第1ギヤ対26を用い、中・低速走行時にローギヤ側の第2ギヤ対29を用いることにより、パラレルHEV走行領域を拡大することが可能となる。
本実施形態によれば、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が、単一のシフトフォーク39で把持されており、アクチュエータ75(切替制御部80a)によって、シフトフォーク39が駆動されることにより、第1スリーブ371及び第2スリーブ372が一体的に摺動される。そのため、第1スリーブ371及び第2スリーブ372の駆動機構をよりシンプルな構成にすることができる。よって、システムの更なる軽量化、低コスト化を図ることが可能となる。
本実施形態によれば、第5スプライン35の接続先が、第4スプライン34と、第6スプライン36との間で切替えられる際に、第5スプライン35が一時的に中立状態(ニュートラル状態)とされ、第5スプライン35が中立状態(ニュートラル状態)とされている間に、エンジン10(又は第1モータ・ジェネレータ21)の回転数が、第2スリーブ372と、第4スプライン34又は第6スプライン36と嵌合可能な回転数に調節される(回転数が合わせられる)。そして、その後、アクチュエータ75が駆動されて、第5スプライン35の接続先が、第4スプライン34と第6スプライン36との間で切替えられる。そのため、切替ショックを低減しつつ、第5スプライン35の接続先(ハイギヤとローギヤと)を切替えることが可能となる。
本実施形態によれば、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33、及び第1スリーブ371が同軸上に配設されており、第1スリーブ371が、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33の外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33とにより第1のドグクラッチ301が構成され、第1スリーブ371を軸方向に動かすことにより、第1のドグクラッチ301の締結・解放状態(すなわち、第1スリーブ371に形成されたスプライン371aと、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33との嵌合状態)を切替えることにより、シリーズHEV走行モード、パラレルHEV走行モード、EV走行モードを切替えることができる。同様に、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36、及び第2スリーブ372が同軸上に配設されており、第2スリーブ372が、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36の外周上を、軸方向に摺動自在に構成されている。すなわち、第2スリーブ372に形成されたスプライン372aと、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36とにより第2のドグクラッチ302が構成され、第2スリーブ372を軸方向に動かすことにより、第2のドグクラッチ302の締結・解放状態(すなわち、第2スリーブ372に形成されたスプライン372aと、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36との嵌合状態)を切替えることにより、パラレルHEV走行モード時に、第5スプライン35の接続先を、第1ギヤ対26(第4スプライン34)と第2ギヤ対29(第6スプライン36)との間で切替えることができる(すなわち、ギヤ比を切替えることができる)。
また、本実施形態によれば、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33それぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第1スリーブ371が、第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33に外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプラインが形成されている。そのため、円筒状の第1スリーブ371に形成された内スプライン371aと、外スプラインからなる第1スプライン31、第2スプライン32、第3スプライン33とによって(すなわち比較的シンプル構成によって)3要素を断続可能な第1ドグクラッチ301を構成することができる。同様に、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36それぞれが、互いに相対回転可能な外スプラインであり、第2スリーブ372が、第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36に外嵌可能な円筒状に形成され、その内周面に軸方向に延びる内スプライン372aが形成されている。そのため、円筒状の第2スリーブ372に形成された内スプライン372aと、外スプラインからなる第4スプライン34、第5スプライン35、第6スプライン36とによって(すなわち比較的シンプル構成によって)第1ギヤ対26と第2ギヤ対29とを切替え可能(選択可能)な第2ドグクラッチ302を構成することができる。
本実施形態によれば、第2モータ・ジェネレータ22から車軸(フロントドライブシャフト40)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比が、エンジン10から車軸(フロントドライブシャフト40)へ伝達されるトルクの伝達経路の総ギヤ比よりもローギヤに設定されている。そのため、エンジン10及び第2モータ・ジェネレータ22それぞれを効率よく運転することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、第1モータ・ジェネレータ21でエンジン10を始動する構成としたが、エンジン10を始動するためのスタータ(又はスタータ・ジェネレータ)を別に備える構成としてもよい。また、複数のギヤやシャフトから構成される駆動系の構成は、上記実施形態には限られない。例えば、第1ギヤ対26(ハイギヤ)と第2ギヤ対29(ローギヤ)の配置は上記実施形態に限られることなく、双方を互いに入れ替えてもよい(逆にしてもよい)。
上記実施形態では、第1スリーブ371及び第2スリーブ372を動かすアクチュエータ75として電動式のアクチュエータを用いたが、電動式のものに代えて、例えば油圧式のアクチュエータを用いてもよい。また、アクチュエータ75(第1スリーブ371、第2スリーブ372)の駆動制御を、HEV−CU80(80B)ではなく、他のECUで行う構成としてもよい。
上記実施形態では、本発明をAWD車(全輪駆動車)に適用した場合を例にして説明したが、本発明は、例えば2WD車(FF車やFR車)にも適用することもできる。
上記実施形態では、第1スプライン371と第2スプライン372とが単一のシフトフォーク39によって把持され、第1スプライン371と第2スプライン372とが連動して(一体的に)摺動する構成としたが、第1スプライン371と第2スプライン372とを別々に(独立して)駆動する構成としてもよい。なお、このような構成にすれば、EV走行モードにおいても、ハイギヤとローギヤとを切替えることが可能となる。
また、第1スプライン31と第2スプライン32との間、及び/又は、第2スプライン32と第3スプライン33との間に、第1スプライン31、及び/又は、第3スプライン33と第1スリーブ371との回転を同期させるシンクロ機構を設けてもよい。同様に、第4スプライン34と第5スプライン35との間、及び/又は、第5スプライン35と第6スプライン36との間に、第4スプライン34、及び/又は、第6スプライン36と第2スリーブ372との回転を同期させるシンクロ機構を設けてもよい。
なお、上述した構成に加えて、第1ギヤ対26を構成するドリブンギヤ26b、及び第2ギヤ対29を構成するドリブンギヤ29bに、第5スプライン35からのトルクを車軸(フロントドライブシャフト40)に伝達する一方、車軸(フロントドライブシャフト40)からのトルクを第5スプライン35(すなわちエンジン10、第1モータ・ジェネレータ21側)には伝達することなく遮断するワンウェイ・クラッチをさらに備える構成としてもよい。このようにすれば、第1モータ・ジェネレータ21の回転数を車軸の回転数よりも低い任意の回転数に調節(制御)することができる。すなわち、第1スプライン31(エンジン10)の回転数と第2スプライン32(第1モータ・ジェネレータ21)の回転数とを合わせることができる。その結果、スリーブ34を動かして第1スプライン31と第2スプライン32とを接続することにより、EV走行モード中であってもエンジン10の再始動をスムーズに行うことが可能となる。なお、第2モータ・ジェネレータ22には車軸(フロントドライブシャフト40)からのトルクが伝達されるため、回生動作は第2モータ・ジェネレータ22によって行うことができる。