JP6969647B1 - コーティング層を有する構造物、その製造方法及びコーティング用樹脂組成物セット - Google Patents
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Abstract
Description
前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物。
イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、
前記イソシアナト基を有するプレポリマー(a)が、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する、前記7に記載のコーティング層を有する構造物。
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物の製造方法。
前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セット。
コーティング層を有する構造物は、セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層とを備えるコーティング層を有する構造物であって、
前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物である。
接着層を形成する樹脂組成物(以下、接着層用樹脂組成物ということもある)を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と、
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物(以下、機能層用樹脂組成物ということもある)を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有する。
また、必要に応じて、前記機能層上にトップコート層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによってトップコート層40を形成する工程を有する。
セメント硬化体とは、少なくともセメント原料と、水及び/又は薬剤等との化学反応によって得られた硬化体を示す。ここでのセメント原料としては、ポルトランドセメント、混合セメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントおよびジオポリマーが好適に挙げられる。さらに、これらセメント原料に骨材やポリマーなどを混合することにより、例えば、モルタル、コンクリート、ポリマーセメントモルタル等が製造される。本発明のセメント硬化体を含む構造体は、これらモルタル、コンクリート、ポリマーセメントモルタルを含む構造体が好ましく、モルタル及び/又はコンクリートを含む構造体がより好ましい。また、セメント硬化体を含む構造体には、セメント硬化体中やその表面に、例えばタイルやセラミックなどの無機材料、鉄筋、鉄線、繊維などの金属材料、微粒子、繊維、塗膜、シート、カバーなどの樹脂材料などが含まれていても良い。セメント硬化体がコンクリートである場合、図1のセメント硬化体を含む構造体10は、例えば、トンネルの内壁、高速道路橋脚、鉄道橋脚、及び橋梁等であってよい。また、セメント硬化体がモルタルである場合、図1のセメント硬化体を含む構造体10は、例えば、断面修復材、グラウト材やタイル接着用モルタルであってよい。
コーティング層は、接着層及び機能層を有する。さらに、トップコート層を有していてもよい。また、接着層、機能層、及びトップコート層の間に別の層が設けられていてもよい。
接着層20は機能層30を、セメント硬化体を含む構造体10の表面に接着すると共に、セメント硬化体の劣化因子遮断性能、コーティング層を有する構造物におけるはく落防止性能を向上させる層であってもよい。
接着層は、前記接着層を形成する樹脂組成物より得られる層であり、接着層中には樹脂硬化物のほかに非反応性成分、その他添加剤等の不揮発成分を含む。
また、主剤となる樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であり、エポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、主剤となる樹脂がエポキシ樹脂である組成物を、エポキシ樹脂組成物という。また、硬化剤は、これらの樹脂と反応する化合物であってよく、外部刺激で反応活性化する潜在性硬化剤であってもよい。
(1)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である。
(2)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下である。
(3−1)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点は、180℃以上である。
(3−2)非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点180℃未満がである。
(4)接着層を形成する樹脂組成物は、23℃における粘度が50〜2000mPa・secである。
また、前記23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
非反応性成分は、接着層用樹脂組成物の浸透性を向上できることから、セメント硬化体を含む構造体の表層にある微細な凹凸に含浸し、アンカリング効果によって接着力を発揮でき、さらに前記の(1)の条件を満たすことで、高温多湿環境、更にはコーティング層を有する構造物が湿潤状態となった場合でも、十分な耐久性を有し、前記の(1)かつ(2)を満たすことで、前記耐久性をさらに向上させることができる。
なお、接着層用樹脂組成物中に非反応性有機化合物全体の合計量は少なくとも1質量%以上含まれるものとし、そのうち最も沸点が高い化合物は、接着層用樹脂組成物中に少なくとも1質量%以上含まれるものとする。最も沸点が高い化合物とは、接着層用樹脂組成物中に含まれる非反応性有機化合物が1種類の場合、その非反応性有機化合物を示し、接着層用樹脂組成物中に含まれる非反応性有機化合物が2種類以上の場合、2種類以上の中で最も沸点が高い非反応性有機化合物を示す。
また、前記オクタノール/水分配係数とは、化合物が水とオクタノールの二相に溶解したときの平衡溶解度比を実測した値である。この分配係数の値が大きいほど脂溶性が高いことを示す。
非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の物性(沸点、オクタノール/水分配係数、23℃での水100gに対する溶解度)は、得られた非反応成分あるいは非反応成分と同じ純物質を用い、公知の方法にて求めても良い。また、得られた非反応成分の化合物が特定できる場合には、物性データベースや文献記載の物性値を用いても良い。また、物性値が未知の化合物については、公知の物性予測計算より求めても良い。
このような非反応性成分を含む接着層用樹脂組成物は特に限定されるわけではないが、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、無溶剤型エポキシ樹脂組成物であることがより好ましく、(1)、(2)、及び(3−1)の条件を満たすことで、特に低温(例えば5℃)での施工性を両立することができる。
なお、無溶剤型エポキシ樹脂組成物とは、特に限定されるわけではないが、実質的に低沸点の揮発性溶剤を含まないエポキシ樹脂組成物であり、沸点が200℃未満、より好ましくは180℃未満、さらに好ましくは160℃未満の非反応性有機化合物が、エポキシ樹脂組成物全量に対して10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
なお、ハイソリッド型エポキシ樹脂組成物とは、特に限定されるわけではないが、従来の溶剤型エポキシ樹脂組成物に比べ、溶剤の含有率を少なくし、VOCを低減したエポキシ樹脂組成物であり、沸点が180℃未満、より好ましくは150℃以下の非反応性有機化合物の含有率が40質量%以下、好ましくは35質量%以下であるエポキシ樹脂組成物である。
一方、溶剤型エポキシ樹脂組成物とは、沸点が180℃未満、より好ましくは150℃以下の非反応性有機化合物の含有率が40質量%を超え、50質量%を超え、60質量%を超えるエポキシ樹脂組成物である。
炭素数6〜12の芳香族炭化水素としては、ソルベントナフサ、石油ナフサなどに含まれる芳香族炭化水素等が挙げられ、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、インデンなどが挙げられる。
炭素数6〜12の直鎖、分岐鎖、脂環構造若しくは不飽和結合を有する脂肪族炭化水素としては、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、ナフテン、ガソリン、灯油、軽油に含まれる脂肪族炭化水素等が挙げられ、例えば、ヘプタン、ジメチルペンタン、メチルヘキサン、オクタン、ノナン、ジメチルヘプタン、メチルオクタン、デカン、メチルノナン、エチルオクタン、ジメチルオクタン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロペンタン、トリメチルシクロヘキサン及びこれらの構造の一部に不飽和結合を有する脂肪族炭化水素などが挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の場合、硬化剤の主成分となるエポキシ樹脂と反応する成分としては、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物、又はエポキシ基と反応し得る活性水素を生じ得る化合物などを用いることができる。このような硬化剤としては、例えば、アミン、二塩基酸、及び酸無水物等が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤は、常温での硬化性に優れることから、アミンを含むことが好ましい。アミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミンは、またポリアミンであってもよい。
さらに、接着層の耐湿性をより高めると共に、接着層のガラス転移温度を上げ、押抜き試験の最大耐荷重を向上させる観点から、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含むことが好ましく、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含むことがより好ましく、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含み且つ脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその誘導体(B−2)を含まないことがさらにより好ましい。
機能層30はコーティング層を有する構造物60において、特に限定されるわけではないが、セメント硬化体を含む構造体10から発生するコンクリート片等のはく落を防止し、コンクリートの劣化因子遮断性能を有する機能層である。
機能層を形成する樹脂組成物は、主剤となる樹脂、これと対応する硬化剤を含む。
機能層は、主剤となる樹脂と硬化剤より得られる硬化物を含む。
また、機能層に含まれる硬化物は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂より選択される少なくとも一種であり、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂であることが好ましい。ここでは、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリウレタンウレア樹脂を総称してウレタン樹脂といい、ウレタン樹脂を得るために使用する樹脂組成物を、ウレタン樹脂組成物という。また、ウレタン樹脂組成物に含まれる主剤及び硬化剤を、ウレタン樹脂組成物の主剤及び硬化剤ということもある。
本発明のコーティング層には、特に限定されるわけではないが、接着層30のセメント硬化体を含む構造体10側とは反対側に設けられたトップコート層40とを有していてもよい。トップコート層として、アクリル樹脂層、アクリルウレタン樹脂層、ウレタン樹脂層、フッ素樹脂層のいずれかを有することができ、耐候性に優れることから、フッ素樹脂層、アクリル樹脂層、アクリルウレタン樹脂層のいずれかであることが好ましい。
トップコート層は、主剤となる樹脂と硬化剤より得られる硬化物を含む。
ここで、例えば、アクリルウレタン樹脂層を得るために使用する樹脂組成物を、アクリルウレタン樹脂組成物という。
また、アクリルウレタン樹脂組成物は、主剤及び硬化剤の他に、例えば、溶剤及びその他添加剤等を更に含んでもよい。
主剤としては、アクリルポリオール等のポリオールが挙げられる。
硬化剤としては、前記脂肪族ポリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
本発明のコーティング層50は、特に限定されるわけではないが、可視光の光透過性を有することが好ましい。ここでの光透過性とは、コーティング層50を、セメント硬化体を含む構造物に施した際、セメント硬化体表面が目視可能であることを示し、セメント硬化体表面に発生した幅1mmのひび割れが目視可能であることが好ましく、セメント硬化体表面に発生した幅0.5mmのひび割れが目視可能であることがより好ましく、セメント硬化体表面に発生した幅0.2mmのひび割れが目視可能であることがさらに好ましい。
また、コーティング50は、全光線透過率の最小値は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であってよい。コーティング層50の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層の透明性が高く、コーティング層を有する構造物60におけるセメント硬化体を含む構造体10の表面を視認し易く、上記構造体のひび割れ等の劣化の発生を目視にて確認することが容易となる。
上述のコーティング層を有する構造物60は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
コーティング層を有する構造物の製造方法の一実施形態は、セメント硬化体を含む構造体上に、接着層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有する製造方法である。
また、トップコート層を設ける場合は、前記、機能層上にトップコート層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによってトップコート層を形成する工程を有する。
各樹脂組成物の組成、硬化条件等は、前述の通りである。
本発明のコーティング用樹脂組成物セットは、エポキシ樹脂組成物及びウレタン樹脂組成物を含む。
さらに、前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物が、オクタノール/水分配係数が3以上であり、コーティング用樹脂組成物セットは、セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための組成物セットである。
エポキシ樹脂組成物、非反応性成分及びウレタン樹脂組成物の規定は前述と同義である。
各組成物は別々の容器に充填されていてもよく、さらに、エポキシ樹脂組成物中の主剤と硬化剤はそれぞれ別の容器に充填されていてもよく、ウレタン樹脂組成物中の主剤と硬化剤もそれぞれ別の容器に充填されていてもよい。
前記容器の形状や材質は、各組成物が保管及び輸送される際に安定であれば、特に限定されない。
<エポキシ樹脂組成物の調製>
密閉容器に主剤として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と、硬化剤として、アミノ基を有する化合物を主成分とするアミン系硬化剤を混合し、エポキシ樹脂組成物R1〜R7を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物R1〜R7は以下の通り分析した。
(エポキシ樹脂組成物の粘度測定)
エポキシ樹脂組成物の粘度はE型粘度計(東機産業社製TVE−25)を用いて、JIS K 7117−2:1999(プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−回転粘度計による定せん断速度での粘度の測定方法)に準拠した粘度を測定した。特に記載のない場合は、測定温度 23℃、せん断速度 19.15s−1で測定した。
調整したエポキシ樹脂組成物を密閉容器に入れ、室温で48時間硬化させて得られたエポキシ樹脂(硬化物)に、水または有機溶剤を加え、24時間静置し、非反応成分となった助剤および溶剤を抽出した。その抽出液をガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、核磁気共鳴装置(1H−NMR)を用い、公知の方法で、定性及び定量分析(含有率の測定)を行なった。得られた結果より、エポキシ樹脂組成物全量に対して1質量%以上含まれる最も沸点高い非反応性有機化合物について、文献値より物性(沸点、分配係数、23℃での水100gに対する溶解度)を求めた。その結果を表1に示す。
「−」は未施工を示す。
含有率はエポキシ樹脂組成物全量に対する含有率(質量%)を示す。
分配係数は、オクタノール/水分配係数を示す。
溶解度は23℃での水100gに対する溶解度(g/100H2O)を示す。
<ウレタン樹脂組成物の主剤の調製>
末端がイソシアナト基であるプレポリマーを次のとおり合成した。窒素ガスを流しながら、379.1質量部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート(H12−MDI)と、173.3質量部の石油ナフサ(ソルベント#100)と、396.5質量部のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000 水酸基価:115mgKOH/g)とを混合した。ここに、ジブチル錫ラウレート(DBTDL)を、H12−MDI及びPTMG1000の合計質量を基準として、10ppmとなるように更に加えた。得られた混合物を70〜80℃で39分撹拌した。さらに396.6質量部のPTMG1000を加え、70〜80℃で60分撹拌した。その後、十分に脱水した52.5質量部のアエロジル200PEを加え、十分に分散した。得られたウレタン樹脂組成物用の主剤は、滴定によって決定されるイソシアナト基の含有量が、ウレタン樹脂組成物の主剤の全量基準で3.65質量%であった。得られたウレタン樹脂組成物の主剤は、常温で透明の液体であり、23℃における粘度が53,600mPa・sであった。
なお、前記イソシアナト基の含有量は、JIS K 1603−1:2007「イソシアネート基含有率の求め方」の手順に従った中和滴定によって決定した。
容器に、硬化剤として72.6質量部のジエチルトルエンジアミン(DETDA)及び158.7質量部の石油ナフサ(ソルベント#100)とを測り取り、均一になるまで混練した。さらに耐候性付与剤、揺変性付与剤、及びその他添加剤を加え、更に撹拌混合することによって、ウレタン樹脂硬化剤を調製した。
容器に、上記主剤及び上記硬化剤を4:1(質量比)を加えて均一になるまで撹拌混合することによって、ウレタン樹脂組成物U1を調製した。
上述のとおり調製したウレタン樹脂組成物U1を基材上に塗布し、温度:23℃、及び湿度:50%の環境下で7日間養生させた後、基材から剥がし、厚さ:1.6mmのウレタン樹脂U1(硬化膜)を得た。ウレタン樹脂U1の評価結果は表2に記す。
上記で得られた硬化膜を短冊状に切り取って試験片とし、TA Instruments社製の固体粘弾性アナライザー RSA−G2を用いて、動的粘弾性測定を行い、各温度における貯蔵弾性率E’を求めた。動的粘弾性測定の条件は以下に示すものとした。結果を表2に示す。
測定モード:引っ張りモード 動的測定
sweep TYPE:温度ステップ3℃/分
Soak時間:0.5分
周波数:1Hz(6.28rad/秒)
ひずみ:0.2〜3%(AUTO設定)
温度範囲:−100℃〜200℃
雰囲気:窒素気流中
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用いて、JIS K 7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠したヘーズを測定した。結果を表2に示す。
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に準拠して全光線透過率を測定した。結果を表2に示す。
<アクリルウレタン樹脂組成物の調製>
密閉容器に、アクリルポリオール、微粉シリカ、キシレンを主な成分とする主剤(粘度200mPa・s、加熱残分 22%)と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とトルエンを主成分とする硬化剤(粘度:80mPa・s、イソシアネート含有量 3.4質量%)を混合し、アクリルウレタン樹脂組成物T1を得た。
以下に示す方法により、コーティング層を有する構造物の作成と評価を行った。
(エポキシ樹脂組成物の施工性評価)
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量0.2kg/m2で塗布した。表3には、すべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好である場合をA23℃および35℃の環境で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好である場合をB、いずれの環境でも作業性が悪く、硬化後の塗膜で塗り斑やレベリング不良などの異常が発生した場合をCと示した。
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量1.0kg/m2で塗布した。実施例1〜5においてすべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好であった。
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量0.1kg/m2で塗布した。施工を行った全ての実施例及び比較例において、すべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好であった。
(耐熱水試験)
コーティング層を有する構造物を、コーティング面を上にし、密閉容器に入れ、水を基材の底面より高さ1cm(基材の厚さの半分)となるまで加えた。容器を密閉し、水温を50℃に保ち、10日間静置した。3日、7日、10日間のコーティング面の外観を確認した。表3には、異常なしの場合をA、1mm以下の微小な異常が発生した場合をB、1mmを超える膨れが発生した場合をCと示した。
コーティング層を有する構造物を、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社「構造物施工管理要領(令和元年7月)」のコンクリート表面被覆工の性能照査の耐湿試験に従って、7日、10日後のコーティング面の外観を評価した。表3には、異常なしの場合をA、1mm以下の微小な異常が発生した場合をB、1mmを超える膨れが発生した場合をCと示した。
離型フィルム上に表3に示したコーティング層の材料構成に従い、コーティング層を作成した。その後、離型フィルムを剥がすことでコーティング層のフリーフィルムを得た。このフリーフィルムを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に準拠して全光線透過率を測定した。実施例1〜5において、全光線透過率が70%以上であった。
耐候性試験では、前記のコーティング層のフリーフィルムを超促進耐候性試験機(岩崎電機製アイスーパーUVテスター:紫外線照度150W/cm2、光→結露サイクル、試験時間72時間)で試験した。このフリーフィルムの耐候性試験前後の色差ΔEを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 5600−4−6:1999(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第6節:測色(色差の計算))に準拠して測定した。表3には、色差ΔEが3以下の場合をA、3を超え5以下の場合をB、5を超える場合をCと示した。
耐熱性試験では、前記のコーティング層のフリーフィルムを温度70℃、湿度95%Rhの槽内で72時間を静置した。このフリーフィルムの耐熱試験前後の色差ΔEを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 5600−4−6:1999(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第6節:測色(色差の計算))に準拠して測定した。表3には、色差ΔEが3以下の場合をA、3を超え5以下の場合をB、5を超える場合をCと示した。
後述のとおり製造されたコーティング層を対象として、硬化膜の外観、コンクリートとの付着性、劣化因子遮断性(遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、中性化阻止性)、及びひびわれ追従性を評価した。これらの性能評価は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のコンクリート表面保護の性能照査に従って行った。
前述のとおり製造されたコーティング層を有する構造物を対象として、JSCE−K 533−2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準じて、温度:50℃における押し抜き試験を行なった。荷重−変位測定における変位10mm以上、50mm以下における最大荷重を測定することで耐荷重(kN)と変位(mm)を求めた。
(実施例1)
長さ7cm、幅7cm、厚さ2cmのモルタルの基板の一表面にエポキシ樹脂組成物R1 0.15kg/m2塗布し、これを23℃で16時間硬化させた。次に、その上にウレタン樹脂組成物U1 0.5kg/m2塗布し、これを23℃で5時間硬化させることで、接着層R1と機能層U1のコーティング層を有する構造物を得た。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
なお、前記基板の一表面とは、長さと幅でなる面を示し、厚さと幅でなる面や厚さと長さでなる面ではない。また、エポキシ樹脂組成物R1より形成される接着層を接着層R1、ウレタン樹脂組成物U1より形成される機能層を機能層U1という。
表3のコーティング層の材料構成に従い、使用材料、塗布量を変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング層を有する構造物を製造した。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
長さ7cm、幅7cm、厚さ2cmのモルタルの基材の一表面(長さと幅でなる面)にエポキシ樹脂組成物R3 0.2kg/m2塗布し、これを23℃で16時間硬化させた。次に、その上にウレタン樹脂組成物U1 0.5kg/m2塗布し、これを23℃で5時間硬化させた。さらにその上にアクリルウレタン樹脂組成物T1 0.1kg/m2塗布し、これを23℃で2時間硬化させることで、接着層R3と機能層U1とトップコート層T1のコーティング層を有する構造物を得た。
このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
なお、エポキシ樹脂組成物R3より形成される接着層を接着層R3、アクリルウレタン樹脂組成物T1より形成されるトップコート層をトップコート層T1という。
表3のコーティング層の材料構成に従い、使用材料、塗布量を変更した以外は、実施例4と同様にして、コーティング層を有する構造物を製造した。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
「−」は未施工を示す。
含有率、沸点、分配係数、溶解度は、表1のエポキシ樹脂の非反応性成分の分析結果を転記したものである。
塗布量は各樹脂組成物の塗布量(kg/m2)を示す。
実施例5と同様の方法で作成したコーティング層を用い、前記の表面保護性能の評価をおこなった。その結果を表4に示す。
JIS A 5372:2010「プレキャスト鉄筋コンクリート製品」の付属書5に規定される「上ぶた式U形側溝」のうち、強度による区分「1種」かつ呼び名「300(400×600×厚み60mm)」の上ぶた式U形側溝(以下、単に「U形ぶた」という)のコンクリート板上にエポキシ樹脂組成物R4を0.2kg/m2塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、16時間硬化させることによって、接着層を形成した。上記接着層上に、上記ウレタン樹脂組成物U1を1.5kg/m2塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、5時間硬化させることによって、コーティング層を有する構造物を形成した。得られたコーティング層を有する構造物について、前述の方法の押抜き試験により、荷重−変位測定を測定した。その結果は耐荷重2.4kN、変位50mm以上(測定上限)であった。
Claims (10)
- セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層を有する構造物であって、
前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物であり、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
コーティング層を有する構造物。 - 前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下である、請求項1に記載のコーティング層を有する構造物。
- 前記接着層を形成する樹脂組成物の23℃における粘度が50〜2000mPa・secである、請求項1又は2に記載のコーティング層を有する構造物。
- 前記機能層を形成する樹脂組成物がウレタン樹脂組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
- 前記機能層を形成するウレタン樹脂組成物は、
イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、
前記イソシアナト基を有するプレポリマー(a)が、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する、請求項4に記載のコーティング層を有する構造物。 - 前記硬化剤(b)が、芳香族ポリアミンである請求項5に記載のコーティング層を有する構造物。
- 前記機能層は、50℃における貯蔵弾性率に対する−30℃における貯蔵弾性率の比が1〜20である、請求項4〜6のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
- 前記セメント硬化体が、モルタル及び/又はコンクリートである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
- セメント硬化体を含む構造体上に、接着層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と、
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物であり、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
コーティング層を有する構造物の製造方法。 - エポキシ樹脂組成物及びウレタン樹脂組成物を含む、コーティング用樹脂組成物セットであって、
前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セット。
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