JP6969647B1 - コーティング層を有する構造物、その製造方法及びコーティング用樹脂組成物セット - Google Patents

コーティング層を有する構造物、その製造方法及びコーティング用樹脂組成物セット Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の課題は、低温でも施工が容易であり、高温多湿環境下、及びコーティング層を有する構造物が湿潤状態となる環境下において、十分な耐久性を有し、セメント硬化体の表面保護性能、及び/又ははく落防止性能をもつコーティング層を有する構造物を提供することである。【解決手段】 セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層を有する構造物であって、前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物。【選択図】 図1

Description

本発明は、コーティング層を有する構造物、その製造方法及びコーティング用樹脂組成物セットに関する。
近年、コンクリート構造物の老朽化が進み、トンネルの内壁、高速道路橋脚、鉄道橋脚、及び橋梁等のコンクリート構造体からのコンクリート片の落下が問題となっている。また、コンクリート構造物の補修に用いるモルタルや、タイルをモルタルで貼り付けた建築等においても、経年劣化等によってモルタル片やタイル片が落下する問題も生じている。
これらのコンクリートやモルタルを含む構造体のはく落を防止するため、上記構造体の表面にウレタン樹脂等の樹脂硬化層からなる機能層を設ける方法が種々検討されている。一般的には、機能層を設ける前に、これら構造体の表面に、粘度が低く、上記構造体の表層にある微細な凹凸に含浸し、アンカリング効果によって接着力を発揮するようなエポキシ樹脂等で接着層を設ける方法が採用されている。
特許文献1では、コンクリート躯体の表面側に網状のはく落防止材を接着させてコンクリート片のはく落を防止するコンクリート片のはく落防止工法であって、上記コンクリート躯体の表面に、プライマーを層状に塗布する工程と、この塗付されたプライマー層の表面に、網状のはく落防止材を層状に配置する工程と、この配置されたはく落防止材の表面に、硬化反応により所定のウレア結合を形成する、少なくとも2液混合型の樹脂組成物からなる含浸材を層状に塗布する工程と、を含むことを特徴とするコンクリート片の剥落防止工法が提案されている。ここでは、プライマーとして、例えば、エポキシ樹脂系の従来公知の1液又は2液型の組成物から成るものが提案されている。
また、特許文献2では塗布時にコンクリート表面が湿潤状態であっても、その後の養生中に透明ウレタン樹脂層に膨れを生じさせることが無い透明性下塗材及びコンクリート片剥落防止工法が提案されている。ここでは、下塗材として、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂とアルキルフェノール型液状エポキシ樹脂と反応性希釈剤とポリアミドアミンと脂肪族変性ポリアミンとから成ることを特徴とする透明性下塗材が提案されている。
特開2011−052457号公報 特開2018−135257号公報
本発明は、低温でも施工が容易であり、高温多湿環境下、及びコーティング層を有する構造物が湿潤状態となる環境下において、十分な耐久性を有し、セメント硬化体の表面保護性能、及び/又ははく落防止性能をもつコーティング層を有する構造物を提供することを目的とする。また、上述のコーティング層を有する構造物の製造方法を提供することを目的とする。さらに、セメント硬化体を含む構造体上に、コーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セットを提供することを目的とする。
本発明は、具体的には以下のとおりである。
1.セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層を有する構造物であって、
前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物。
2.非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下である、1に記載のコーティング層を有する構造物。
3.非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、前記1又は2に記載のコーティング層を有する構造物。
4.非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃未満であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜40質量%である、前記1又は2に記載のコーティング層を有する構造物。
5.接着層を形成する樹脂組成物の23℃における粘度が50〜2000mPa・secである、前記1〜4のいずれか一つに記載のコーティング層を有する構造物。
6.接着層を形成する樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物である、前記1〜5のいずれか一つに記載のコーティング層を有する構造物。
7.機能層を形成する樹脂組成物がウレタン樹脂組成物である、前記1〜6のいずれか一つに記載のコーティング層を有する構造物。
8.機能層を形成するウレタン樹脂組成物は、
イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、
前記イソシアナト基を有するプレポリマー(a)が、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する、前記7に記載のコーティング層を有する構造物。
9.前記硬化剤(b)が、芳香族ポリアミンである前記8に記載のコーティング層を有する構造物。
10.前記機能層は、50℃における貯蔵弾性率に対する−30℃における貯蔵弾性率の比が1〜20である、前記7〜9のいずれか一つに記載のコーティング層を有する構造物。
11.セメント硬化体が、モルタル及び/又はコンクリートである、前記1〜10のいずれか一つに記載のコーティング層を有する構造物。
12.セメント硬化体を含む構造体上に、接着層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と、
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物の製造方法。
13.エポキシ樹脂組成物及びウレタン樹脂組成物を含む、コーティング用樹脂組成物セットであって、
前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セット。
本発明によれば、低温でも施工が容易であり、高温多湿環境下、及びコーティング層を有する構造物が湿潤状態となる環境下において、十分な耐久性を有し、セメント硬化体の表面保護性能、及び/又ははく落防止性能をもつコーティング層を有する構造物を提供することができる。また、上述のコーティング層を有する構造物の製造方法を提供することができる。さらに、セメント硬化体を含む構造体上に、コーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セットを提供することができる。
コーティング層を有する構造物の一例を示す模式断面図である。
以下、場合によって図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
[コーティング層を有する構造物]
コーティング層を有する構造物は、セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層とを備えるコーティング層を有する構造物であって、
前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である、コーティング層を有する構造物である。
図1は、コーティング層を有する構造物の一例を示す模式断面図である。コーティング層を有する構造物60は、セメント硬化体を含む構造体10と、セメント硬化体を含む構造体10上に設けられたコーティング層50とを備え、前記コーティング層50は接着層20と、接着層20のセメント硬化体を含む構造体10側とは反対側に設けられた機能層30とを有している。すなわち、コーティング層を有するコーティング層を有する構造物60は、少なくともセメント硬化体を含む構造体10と、接着層20と、機能層30とをこの順に有する。接着層20と機能層30を合わせて、コーティング層50という。さらにコーティング層50はトップコート層40を有していても良い。図1は、セメント硬化体を含む構造体10及び接着層20、接着層20及び機能層30、並びに機能層30及びトップコート層40が互いに直接接触している例で示しているが、本発明の趣旨を損ねない範囲で、それぞれ間に別の層が設けられていてもよい。
上述のコーティング層を有する構造物の製造方法の一実施形態は、
接着層を形成する樹脂組成物(以下、接着層用樹脂組成物ということもある)を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と、
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物(以下、機能層用樹脂組成物ということもある)を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有する。
また、必要に応じて、前記機能層上にトップコート層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによってトップコート層40を形成する工程を有する。
(セメント硬化体を含む構造体)
セメント硬化体とは、少なくともセメント原料と、水及び/又は薬剤等との化学反応によって得られた硬化体を示す。ここでのセメント原料としては、ポルトランドセメント、混合セメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメントおよびジオポリマーが好適に挙げられる。さらに、これらセメント原料に骨材やポリマーなどを混合することにより、例えば、モルタル、コンクリート、ポリマーセメントモルタル等が製造される。本発明のセメント硬化体を含む構造体は、これらモルタル、コンクリート、ポリマーセメントモルタルを含む構造体が好ましく、モルタル及び/又はコンクリートを含む構造体がより好ましい。また、セメント硬化体を含む構造体には、セメント硬化体中やその表面に、例えばタイルやセラミックなどの無機材料、鉄筋、鉄線、繊維などの金属材料、微粒子、繊維、塗膜、シート、カバーなどの樹脂材料などが含まれていても良い。セメント硬化体がコンクリートである場合、図1のセメント硬化体を含む構造体10は、例えば、トンネルの内壁、高速道路橋脚、鉄道橋脚、及び橋梁等であってよい。また、セメント硬化体がモルタルである場合、図1のセメント硬化体を含む構造体10は、例えば、断面修復材、グラウト材やタイル接着用モルタルであってよい。
(コーティング層)
コーティング層は、接着層及び機能層を有する。さらに、トップコート層を有していてもよい。また、接着層、機能層、及びトップコート層の間に別の層が設けられていてもよい。
図1のコーティング層50は、セメント硬化体の劣化因子遮断性能を有する場合には、セメント硬化体の表面保護として用いられてもよい。
コーティング層50は、押抜き試験で耐荷重を有する場合には、コンクリートのはく落防止構造として用いられてもよい。上記はく落防止構造は、コーティング層を有する構造物のはく落防止用、コーティング層を有する構造物の保護用、又はタイルのはく落防止用に好適に用いることができる。タイルのはく落防止用とは、コーティング層を有する構造物60が更にタイルを有する場合に、タイルのはく落を防止するものである。
(接着層)
接着層20は機能層30を、セメント硬化体を含む構造体10の表面に接着すると共に、セメント硬化体の劣化因子遮断性能、コーティング層を有する構造物におけるはく落防止性能を向上させる層であってもよい。
接着層20は、例えば、セメント硬化体を含む構造体10上に塗工することによって形成することができる。塗工は、ローラー、はけ、スプレーなどを用いて塗布することが好ましい。
接着層を形成する樹脂組成物は、主剤となる樹脂、これと対応する硬化剤、及び非反応性成分、その他添加剤等を含む。
接着層は、前記接着層を形成する樹脂組成物より得られる層であり、接着層中には樹脂硬化物のほかに非反応性成分、その他添加剤等の不揮発成分を含む。
また、主剤となる樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種であり、エポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、主剤となる樹脂がエポキシ樹脂である組成物を、エポキシ樹脂組成物という。また、硬化剤は、これらの樹脂と反応する化合物であってよく、外部刺激で反応活性化する潜在性硬化剤であってもよい。
本発明の前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含む。その非反応性有機化合物の分子量は300以下であることが好ましく、200以下であることがより好ましい。なお、非反応性成分である有機化合物を非反応性有機化合物ということもある。
さらに、前記非反応性有機化合物は下記(1)を満たし、下記(2)及び/又は(3−1)若しくは(3−2)を満たすことが好ましい。また、接着層を形成する樹脂組成物は、下記(4)を満たすことが好ましい。
(1)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上である。
(2)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下である。
(3−1)その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点は、180℃以上である。
(3−2)非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点180℃未満がである。
(4)接着層を形成する樹脂組成物は、23℃における粘度が50〜2000mPa・secである。
前記オクタノール/水分配係数は、3.0以上であることが好ましく、4.0以上であることがより好ましく、5.0以上であることがさらに好ましい。
また、前記23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることがさらに好ましい。
非反応性成分は、接着層用樹脂組成物の浸透性を向上できることから、セメント硬化体を含む構造体の表層にある微細な凹凸に含浸し、アンカリング効果によって接着力を発揮でき、さらに前記の(1)の条件を満たすことで、高温多湿環境、更にはコーティング層を有する構造物が湿潤状態となった場合でも、十分な耐久性を有し、前記の(1)かつ(2)を満たすことで、前記耐久性をさらに向上させることができる。
なお、接着層用樹脂組成物中に非反応性有機化合物全体の合計量は少なくとも1質量%以上含まれるものとし、そのうち最も沸点が高い化合物は、接着層用樹脂組成物中に少なくとも1質量%以上含まれるものとする。最も沸点が高い化合物とは、接着層用樹脂組成物中に含まれる非反応性有機化合物が1種類の場合、その非反応性有機化合物を示し、接着層用樹脂組成物中に含まれる非反応性有機化合物が2種類以上の場合、2種類以上の中で最も沸点が高い非反応性有機化合物を示す。
また、前記オクタノール/水分配係数とは、化合物が水とオクタノールの二相に溶解したときの平衡溶解度比を実測した値である。この分配係数の値が大きいほど脂溶性が高いことを示す。
非反応性成分とは、主剤となる樹脂及びこれと対応する硬化剤との硬化反応に関与しない成分である。したがって、接着層用樹脂組成物に含まれる非反応性有機化合物は、後述する実施例記載のように接着層用樹脂組成物を密閉容器に入れ、十分反応させた硬化物より、非反応性成分を抽出し、公知の定性、定量分析をおこない、非反応性成分の定性及び/又は定量を行っても良い。また、エポキシ樹脂組成物の含有物質が既知の場合には、含有物質の中から、エポキシ化合物と反応しない化合物を非反応性成分としても良い。
非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の物性(沸点、オクタノール/水分配係数、23℃での水100gに対する溶解度)は、得られた非反応成分あるいは非反応成分と同じ純物質を用い、公知の方法にて求めても良い。また、得られた非反応成分の化合物が特定できる場合には、物性データベースや文献記載の物性値を用いても良い。また、物性値が未知の化合物については、公知の物性予測計算より求めても良い。
前記の(1)の条件を満たす非反応性成分としては、特に限定されるわけではないが、分子量500以下の水酸基、アミノ基、アミド基、及びカルボン酸基を有しない化合物が好ましく、前記に加え、エーテル基、エステル基、ケトン基、及びハロゲン基を有しない化合物が好ましく、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素が更により好ましく、さらにより芳香族炭化水素が特に好ましい。前記の(1)及び(2)の条件を満たす非反応性成分についても同様である。
さらに、非反応性成分は、前記の(1)及び(2)の条件に加えて、下記の(3−1)又は(3−2)の条件を満たすことが好ましい。
前記接着層用樹脂組成物は、(3−1)前記接着層を形成する樹脂組成物に含まれる、非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点は、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、250℃以上がさらに好ましい。また、非反応性有機化合物の含有率の合計は、接着層用樹脂組成物全量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
このような非反応性成分を含む接着層用樹脂組成物は特に限定されるわけではないが、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、無溶剤型エポキシ樹脂組成物であることがより好ましく、(1)、(2)、及び(3−1)の条件を満たすことで、特に低温(例えば5℃)での施工性を両立することができる。
なお、無溶剤型エポキシ樹脂組成物とは、特に限定されるわけではないが、実質的に低沸点の揮発性溶剤を含まないエポキシ樹脂組成物であり、沸点が200℃未満、より好ましくは180℃未満、さらに好ましくは160℃未満の非反応性有機化合物が、エポキシ樹脂組成物全量に対して10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。
前記の接着層用樹脂組成物に用いられる高沸点の非反応性有機化合物としては、フェニルキシリルエタン、エチルビフェニル、ジキシリルメタンなどの芳香族炭化水素、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどの末端に二重結合を有する直鎖アルキル化合物、ナフテン系ベースオイル、パラフィン系ベースオイルなどの鉱油の水添加物が好適に挙げられる。
前記接着層用樹脂組成物は、(3−2)非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点180℃未満が好ましく、150℃以下がより好ましく、また、前記化合物の沸点は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。その非反応性有機化合物の含有率の合計が接着層用樹脂組成物全量に対して1〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。このような非反応性成分を含む接着層用樹脂組成物は特に限定されるわけではないが、エポキシ樹脂を含むことが好ましく、ハイソリッド型エポキシ樹脂組成物を含むことが好ましく、(1)、(2)、及び(3−2)の条件を満たすことで、特に低温(例えば5℃)での施工性をさらに向上させることができる。
なお、ハイソリッド型エポキシ樹脂組成物とは、特に限定されるわけではないが、従来の溶剤型エポキシ樹脂組成物に比べ、溶剤の含有率を少なくし、VOCを低減したエポキシ樹脂組成物であり、沸点が180℃未満、より好ましくは150℃以下の非反応性有機化合物の含有率が40質量%以下、好ましくは35質量%以下であるエポキシ樹脂組成物である。
一方、溶剤型エポキシ樹脂組成物とは、沸点が180℃未満、より好ましくは150℃以下の非反応性有機化合物の含有率が40質量%を超え、50質量%を超え、60質量%を超えるエポキシ樹脂組成物である。
前記接着層用樹脂組成物に用いられる高沸点の非反応性有機化合物としては、特に限定されるわけではないが、炭素数6〜12の芳香族炭化水素、及び炭素数6〜12の直鎖、分岐鎖、脂環構造若しくは不飽和結合を有する脂肪族炭化水素が好ましく、炭素数7〜9の芳香族炭化水素、及び炭素数8〜12の直鎖、分岐鎖、脂環構造若しくは不飽和結合を有する脂肪族炭化水素がより好ましい。
炭素数6〜12の芳香族炭化水素としては、ソルベントナフサ、石油ナフサなどに含まれる芳香族炭化水素等が挙げられ、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ナフタレン、インデンなどが挙げられる。
炭素数6〜12の直鎖、分岐鎖、脂環構造若しくは不飽和結合を有する脂肪族炭化水素としては、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、ナフテン、ガソリン、灯油、軽油に含まれる脂肪族炭化水素等が挙げられ、例えば、ヘプタン、ジメチルペンタン、メチルヘキサン、オクタン、ノナン、ジメチルヘプタン、メチルオクタン、デカン、メチルノナン、エチルオクタン、ジメチルオクタン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、プロピルシクロペンタン、トリメチルシクロヘキサン及びこれらの構造の一部に不飽和結合を有する脂肪族炭化水素などが挙げられる。
本発明の前記接着層を形成する樹脂組成物は、特に限定されるわけではないが、エポキシ樹脂を主成分とする主剤と、エポキシ樹脂と反応する成分を主成分とする硬化剤を混合して得られる2液型エポキシ樹脂組成物が好ましい。
エポキシ樹脂組成物の主剤の主成分となるエポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、及びオレフィン酸化型等のエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びアルキルジフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち、接着層の高温(例えば50℃)での接着性を高める観点から、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことがより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂は他の官能基を有していてもよい。他の官能基としては、例えば、水酸基などが挙げられる。エポキシ樹脂は、液状であることが好ましい。
エポキシ樹脂のエポキシ当量(1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂のグラム数)は、接着層の高温(例えば50℃)での接着性を調整するために選択することができる。すなわち、接着層の高温での接着性を向上させるために、エポキシ当量が小さいエポキシ樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、例えば、150以上、160以上、又は180以上であってよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限値は、例えば、250以下、230以下、又は200以下であってよい。接着層の高温での接着性を調整するために、エポキシ当量の異なる複数のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。例えば、エポキシ樹脂組成物を構成する樹脂として、エポキシ当量が180〜195であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと、エポキシ当量が200〜250であるアルキルジフェノール型エポキシ樹脂とを混合して用いてもよい。
エポキシ樹脂組成物の主剤は、エポキシ樹脂のほかに、前記の非反応性成分や、必要に応じてグリジルエーテルなどの反応希釈剤、シランカップリング剤などのカップリング剤、その他の添加剤を含有することができる。これらの添加剤は、接着層用樹脂組成物中に含まれていてもよい。
反応性希釈剤としては、例えば、少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物等を用いることができる。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物は、エポキシ樹脂組成物の粘度を低減し施工性を向上させることができる。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物の分子量は、例えば、500以下、又は250以下であってよい。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物は、例えば、アルキルジグリシジルエーテル等が挙げられる。アルキルジグリシジルエーテルとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びグリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
接着層用樹脂組成物中に含まれる硬化剤は、主剤となる樹脂と反応し、硬化物を生成する成分であればよい。
エポキシ樹脂組成物の場合、硬化剤の主成分となるエポキシ樹脂と反応する成分としては、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物、又はエポキシ基と反応し得る活性水素を生じ得る化合物などを用いることができる。このような硬化剤としては、例えば、アミン、二塩基酸、及び酸無水物等が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤は、常温での硬化性に優れることから、アミンを含むことが好ましい。アミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミンは、またポリアミンであってもよい。
エポキシ樹脂組成物の硬化剤は、接着層のガラス転移温度(tanδにおける極大値)を高くし、高温(例えば50℃)での接着性を高める観点から、芳香族ポリアミン及びその変性物(A)を含むことが好ましい。ここで用いられる芳香族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する芳香族化合物、及び、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物等が挙げられる。当該アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物は、常温での硬化性に優れる観点から、1級のアミノ基を有する芳香族化合物を含むことが好ましく、アミノ基がアルキレン基を介して芳香環に結合している芳香族化合物を含むことがより好ましい。
上述のような芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミン等が挙げられる。当該芳香族ポリアミンは、メタキシリレンジアミンを含むことが好ましく、メタキシリレンジアミンであることがより好ましい。当該芳香族ポリアミンは、変性物を含むことが好ましく、変性物であることが好ましい。当該変性物は、特に制限されるものでは無いが、例えば、アミンアダクト、変性ポリアミン、及びポリアミドアミン等を用いることができる。アミンアダクトは、ポリアミンにエポキシ樹脂を付加させることによって得られる化合物である。変性ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ポリアミドアミンとしては、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、及びポリアミンとポリカルボン酸との反応物等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物の硬化剤は、ガラス転移温度を高くし、高温(例えば50℃)での接着性を高める観点から、脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含むことが好ましい。ここで用いられる脂環式ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する脂環構造を含む化合物、及び、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する脂環構造を含む化合物等が挙げられる。これらのうち、ガラス転移温度を高める観点から、脂環式ポリアミンは、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含むことが好ましい。ここで用いられる脂環式ポリアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン(IPDA)、及びビス(アミノシクロヘキシル)メタン(H−MDA)等が挙げられる。当該脂環式ポリアミンは、変性物を含むことが好ましい、変性物であることがより好ましい。当該変性物は、特に制限されないが、例えば、アミンアダクト、変性ポリアミン、及びポリアミドアミン等を用いることができる。アミンアダクトは、ポリアミンにエポキシ樹脂を付加させることによって得られる化合物である。変性ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ポリアミドアミンとしては、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、及びポリアミンとポリカルボン酸との反応物等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂組成物の硬化剤は、接着性を高める観点から、変性脂肪族ポリアミン(C)を含むことが好ましい。変性脂肪族ポリアミンは、脂肪族ポリアミンを変性したものであり、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ここで用いられる脂肪族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する脂肪族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する脂肪族化合物等が挙げられる。脂肪族ポリアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、オクタメチレンジアミン(OMD)、及びノナンジアミン(NDA)等の脂肪族ジアミン並びにこれらの構造異性体;エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、及びジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)等のハイアミン並びにこれらの誘導体;ポリオキシアルキルアミン及びこれらの誘導体並びにこれらの構造異性体等が挙げられる。ポリオキシアルキルアミンとしては、ハンツマン社製ジェファーミン、及び三井化学ファイン株式会社製ポリエーテルアミン等が挙げられる。
そして、エポキシ樹脂組成物の硬化剤は、接着層の柔軟性を向上させ耐湿性を高める観点から、ポリアミドアミン(D)を含むことが好ましい。ポリアミドアミンは、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、ポリアミンとポリカルボン酸、ポリアミンと脂肪酸との反応物等が挙げられる。ここで用いられるポリアミンは、上述の芳香族ポリアミン、上述の脂環式ポリアミン、及び上述の脂肪族ポリアミン等を含むことが好ましい。
さらにエポキシ樹脂組成物の硬化剤は、接着性を高める観点から、脂肪族ポリアミン(E)を含むことが好ましい。ここで用いられるポリアミンは、上述の脂肪族ポリアミンを含むことが好ましい。
上述の硬化剤は、接着層の耐湿性を高めると共に、さらに接着性を高める観点から、ポリアミドアミン(D)及び脂肪族ポリアミン(E)を含むことが好ましい。また、接着層の耐湿性を高めると共に、接着層のガラス転移温度を上げ、押抜き試験の最大耐荷重を向上させる観点から、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含むことが好ましい。
さらに、接着層の耐湿性をより高めると共に、接着層のガラス転移温度を上げ、押抜き試験の最大耐荷重を向上させる観点から、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含むことが好ましく、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含むことがより好ましく、ポリアミドアミン(D)、脂肪族ポリアミン(E)、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含み且つ脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその誘導体(B−2)を含まないことがさらにより好ましい。
エポキシ樹脂組成物の硬化剤は、さらに前記の非反応性成分や、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、反応性希釈剤、揺変性付与剤等が挙げられる。
エポキシ樹脂組成物は、主剤のエポキシ基の数と、硬化剤の有する活性水素の数との当量比(エポキシ基のモル当量/活性水素のモル当量)の下限値は、例えば、0.8以上、又は0.9以上であってよい。当該当量比を上記範囲内とすることによって、接着層によるセメント硬化体を含む構造体と機能層との接着性をより十分なものとすることができる。主剤のエポキシ基の数と、硬化剤の有する活性水素の数との当量比の上限値は、例えば、1.2以下、又は1.1以下であってよい。当該当量比を上記範囲内とすることによって、硬化時に環境水分の影響を受け、接着層のガラス転移温度が低減することを抑制することができる。
前記接着層を形成する樹脂組成物は、さらに(4)23℃における粘度が50〜2000mPa・secが好ましく、100〜1500mPa・secがより好ましく、200〜1000mPa・secがさらに好ましい。この範囲であれば、低温(例えば5℃)での施工性により優れ、セメント硬化体表面のひび割れに含浸し、補修できる。
本明細書における「粘度」は、JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法)」における円すい−平板形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計で記載の方法に準拠し測定された動粘度を意味する。
接着層20の厚みの下限値は、例えば、0.05mm以上、0.07mm以上、0.10mm以上、又は0.15mm以上であってよい。接着層20の厚みの下限値が上記範囲内であることで、セメント硬化体を含む構造体10と機能層30との接着性を向上させることができ、コーティング層を有する構造物の耐荷性をより向上させることができる。接着層20の厚みの上限値は、例えば、0.50mm以下、0.40mm以下、0.30mm以下、又は0.25mm以下であってよい。接着層20の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工時間を短くすることができる。接着層20の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.05〜0.50mm、又は0.10〜0.30mmであってよい。
接着層20は、コーティングを施したコンクリート表面を可視できることから、有色又はわずかな濁りがあってもよいが、透明であることが好ましい。
接着層20は、プライマーとなる前記樹脂組成物を、セメント硬化体を含む構造体10上に塗工し、硬化して形成されることからプライマー層ともいう。接着層20は、上記樹脂がセメント硬化体を含む構造体10の表面に存在する微細な凹凸やひび割れ部分等に含浸し、その後硬化されることによって、セメント硬化体を含む構造体10と強く接着することができる。そして、接着層20が上述の樹脂を含むことによって、セメント硬化体を含む構造体10の表面との接着性により優れたものとなり、コーティング層を有する構造物60のはく落防止性能をより向上し得る。
(機能層)
機能層30はコーティング層を有する構造物60において、特に限定されるわけではないが、セメント硬化体を含む構造体10から発生するコンクリート片等のはく落を防止し、コンクリートの劣化因子遮断性能を有する機能層である。
機能層30は、例えば、機能層を形成する樹脂組成物を接着層上に塗工することによって形成することができる。塗工は、コテ、ヘラ、スプレーなどを用いて塗布することが好ましい。
機能層を形成する樹脂組成物は、主剤となる樹脂、これと対応する硬化剤を含む。
機能層は、主剤となる樹脂と硬化剤より得られる硬化物を含む。
また、機能層に含まれる硬化物は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂より選択される少なくとも一種であり、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂であることが好ましい。ここでは、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、及びポリウレタンウレア樹脂を総称してウレタン樹脂といい、ウレタン樹脂を得るために使用する樹脂組成物を、ウレタン樹脂組成物という。また、ウレタン樹脂組成物に含まれる主剤及び硬化剤を、ウレタン樹脂組成物の主剤及び硬化剤ということもある。
前記機能層を形成するウレタン樹脂組成物は、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)を主成分とする主剤と、イソシアナト基と反応する成分を主成分とする硬化剤を混合して得られる2液型ウレタン樹脂組成物が好ましい。
ウレタン樹脂組成物の主剤は、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)(以下、単にプレポリマー(a)ともいう)を含む。プレポリマー(a)は、例えば、ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する。ポリイソシアネート由来の構造は、脂肪族ポリイソシアネート構造を含んでもよい。脂肪族ポリイソシアネート由来の構造は、脂環構造を含んでもよい。脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、6以上であることが好ましく、10以上であることがさらに好ましく、13以上であることがさらに好ましい。ポリオールは、例えば、脂肪族ポリオールであってよい。プレポリマー(a)は、ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造の他に、他の成分に由来する構造を有していてもよい。プレポリマー(a)は、イソシアナト基をプレポリマー(a)の末端に有していてもよく、また側鎖に有していてもよい。
プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量は、プレポリマー(a)の全質量を基準として、0.1〜15質量%、1〜12質量%、又は3〜10質量%であってよい。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が0.1質量%以上であると、プレポリマー(a)の数平均分子量及び粘度を適度なものとすることができ、ウレタン樹脂組成物の粘度上昇に伴う作業性の低下を抑制することできる。さらに、プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が上記範囲内であることによって、プレポリマー(a)を硬化させる際に架橋点を増加させることができ、機能層とエポキシ層との接着性を向上させることができる。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が15質量%以下であると、機能層中のウレタン結合及び環構造等の剛直成分の割合を適度なものとし、機能層の柔軟性の低下を抑制することができる。
プレポリマー(a)は、例えば、以下の方法によって調製したものを使用することができる。プレポリマー(a)の調製方法としては、例えば、イソシアナト基を2以上有する脂肪族ポリイソシアネートを含む多官能イソシアネートと、水酸基を2以上有する脂肪族ポリオールと、を50〜130℃で加熱撹拌して反応させることを含む方法、又は、イソシアナト基を2以上有する脂肪族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートと、水酸基を2以上有する脂肪族ポリオールと、イソシアナト基と反応可能な官能基を2以上有する活性水素化合物と、を50〜130℃で加熱撹拌して反応させることを含む方法等が挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は6以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、13以上であることがさらに好ましい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の下限値が上記範囲内であると、脂肪族ポリイソシアネートの沸点が高く、且つ飽和蒸気濃度を小さくできる。このため、ウレタン樹脂組成物中に、プレポリマー(a)の原料であるポリイソシアネートが残存していた場合であっても、ウレタン樹脂組成物を使用する作業環境への影響を低減することができる。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、30以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の上限値が上記範囲内であると、得られるプレポリマー(a)の粘度が適度なものとなり、ウレタン樹脂組成物の粘度が上がり施工し難くなることを抑制できる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される、上記脂肪族ポリイソシアネートは、環構造を有することが好ましく、2つ以上の環構造を有することがより好ましい。上記環構造は、多環又は縮合環の脂環であってよく、炭素以外の元素を含むヘテロ環であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートが環構造(例えば、脂環構造)を有することで、硬化物の耐候性(低黄変)と破断強度とをより高水準で両立することができる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のイソシアヌレート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアロファネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のビュレット化合物、及びヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアダクト化合物等が挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用されるポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール、及び(水添)ポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは、これらのうち、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
上述のポリオールは、塗膜の強度及び得られる機能層の耐候性を向上させる観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、及びポリテトラメチレンエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上述のポリオールは、得られるプレポリマー(a)の粘度を低減する観点から、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン系ポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール、又はポリテトラメチレンポリオールを含むことがより好ましく、ポリテトラメチレンポリオールを含むことが特に好ましい。また、上記のポリオール以外にも、後述する硬化剤(b)として用いるポリオールに例示されるポリオールを好適に用いることができる。
上記ポリテトラメチレンポリオールとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGシリーズ;PTMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000等)、インビスタ社製のTERATHANEシリーズ、BASFジャパン株式会社製のPoly THFシリーズ、保土谷化学工業株式会社製のPTG及びPTG−Lシリーズ、並びにテトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合させたポリテトラメチレンポリオール(旭化成株式会社製、PTXG−1800等)などが挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用されるポリオールの数平均分子量は、100〜10,000、300〜5,000、又は500〜2,000であってよい。
本明細書における「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値を示し、ポリスチレン換算分子量で表す。なお適宜、GPCを用いた測定の前処理としてイソシアナト基の誘導化を行ってもよい。
ウレタン樹脂組成物の硬化剤(b)としては、例えば、プレポリマー(a)が有するイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する化合物、及び潜在硬化剤等を使用できる。潜在硬化剤は、水と反応しプレポリマー(a)のイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を生成する化合物等を使用できる。
ウレタン樹脂組成物の硬化剤(b)は芳香族系硬化剤を含有してもよい。芳香族系硬化剤としては、イソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する芳香族化合物を用いることができ、例えば、アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物等を用いることができる。アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリアミン、及び芳香族ポリオール等が挙げられ、特に硬化時間が短いことから、芳香族ポリアミンが好ましい。上記芳香族系硬化剤は2つ以上の化合物の混合物でも構わない。硬化剤(b)は、例えば、芳香族系硬化剤に加えて、脂肪族ポリアミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリオール、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びシラン化合物等を更に含有してもよい。
芳香族ポリアミンは、例えば、アミノ基を2以上有する芳香族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアニリン(MDA)、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)(MMEA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)(MMIPA)、4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)ジフェニルメタン、フェニレンジアミン、メチレンビス(о−クロロアニリン)(MBOCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)(MMA)、4,4’−メチレンビス(2−クロロ−6−エチルアニリン)(MCEA)、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオール)エタン、N,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)(MDIPA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、アルキレングリコールビス(パラ−アミノベンゾエート)、及びポリアルキレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)等のアミノベンゾエート末端化合物等が挙げられる。芳香環を1つ有する芳香族ジアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。
ウレタン樹脂組成物において、硬化剤(b)の含有量は、プレポリマー(a)のイソシアナト基のモル当量と、硬化剤(b)の反応可能な活性水素のモル当量との比(R値:例えば、NCO基/OH基、又はNCO基/NH基のモル比)が所定の範囲とするように調整することができる。上記R値は、例えば、0.5〜2.0、0.8〜1.2、又は0.9〜1.1であってよい。ウレタン樹脂組成物における硬化剤(b)の含有量が上記範囲内であると、機能層における樹脂の数平均分子量が増大し、機能層の破断伸度を向上させることができる。
ウレタン樹脂組成物は、プレポリマー(a)、及び硬化剤(b)の他に、例えば、耐候性付与剤(d)、揺変性付与剤(e)、硬化触媒(f)及びその他添加剤(g)等を更に含んでもよい。また、補強層形成剤は、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の他に、例えば、耐候性付与剤(d)、揺変性付与剤(e)、硬化触媒(f)及びその他添加剤(g)等を更に含んでもよい。
ウレタン樹脂組成物における硬化剤の含有量は、ウレタン樹脂組成物の全量を基準として、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。ウレタン樹脂組成物における硬化剤の含有量の割合が増えると、50℃における引張弾性率及び破断強度をより向上させることができ、高温時(例えば50℃)におけるはく落防止の押抜き性能をより向上させることができる。なお、硬化剤が2つ以上の化合物の混合物である場合、上記「硬化剤の含有量」とは、各芳香族系硬化剤の含有量の総和を意味する。
本発明の機能層30は、50℃における貯蔵弾性率に対する−30℃における貯蔵弾性率の比が、1〜20であることが好ましく、1〜15であることがより好ましく、1〜10であることがさらに好ましく、1〜8であることがさらにより好ましい。機能層30の50℃及び−30℃における貯蔵弾性率が上述の関係にあることによって、低温域から高温域に亘って耐荷性の変化が抑制されることから、コーティング層を有する構造物60のはく落防止性能をより信頼性に優れたものとすることができる。機能層30の当該貯蔵弾性率の比は、後述する機能層30を形成する際の樹脂組成物の成分組成、硬化条件、及び厚み等を調整することによって制御することができる。
機能層30の動的粘弾性測定よって測定される損失正接(tanδ)が、−10〜30℃の温度域に極大値を有しなくてもよい。機能層30の動的粘弾性測定よって測定される損失正接が、−30〜50℃の温度域に極大値を有しなくてもよく、且つ−50〜80℃の温度域に極大値を有しなくてもよい。機能層30が、上述の温度域内に損失正接の極大値を有しないことは、上記温度範囲(損失正接の極大値を有しない温度域)における破断強度及び破断伸度の変化が小さいことを意味し、寒冷地及び高温地等の環境下においても機能層30が靭性及び耐荷力の信頼性に優れることを意味する。
本明細書における機能層30の動的粘弾性測定に供する試験体は、例えば、コーティング層を有する構造物60から機能層30を採取し、それを試験体として用いることもできるし、コーティング層を有する構造物60の製造に使用する機能層30の硬化膜を予め作製し、それを試験体として用いることもできる(機能層30のヘーズ、全光線透過率、その他の特性試験に供する試験体も同様である。)。機能層30の動的粘弾性は、具体的には、実施例に記載の方法によって測定できる。損失正接の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求められる。
機能層30は、特に限定されるわけではないが、わずかに着色又はわずかな濁りがあってもよく、無色透明であることが好ましい。
機能層のヘーズの上限値は、例えば、30以下、28以下、25以下、23以下、又は20以下であってよい。機能層30のヘーズの上限値が上記範囲内であることで、コーティング層50の透明性をより向上させることができる。機能層30のヘーズの下限値は、特に制限されるものではないが、通常、1以上、又は3以上であってよい。機能層30のヘーズは上述の範囲内で調整することができ、例えば、1〜30、又は3〜20であってよい。
本明細書におけるヘーズは、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠して求められる値を意味する。具体的には、当該ヘーズは、濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH4000)を用いて測定できる。
機能層30の全光線透過率は、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよい。機能層30の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層50の透明性をより向上させるができる。
本明細書における全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して求められる値を意味する。具体的には、当該全光線透過率は濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH4000)を用いて測定できる。
機能層30の厚みの下限値は、例えば、0.3mm以上、0.4mm以上、又は0.5mm以上であってよい。機能層30の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コーティング層を有する構造物60の耐荷性をより向上させることができる。機能層30の厚みの上限値は、例えば、5mm以下、4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってよい。機能層30の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工コストを低減し、かつはく落防止性能を向上(例えば、耐荷性を向上)させることができる。機能層30の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.3〜5mm、又は0.5〜2mmであってよい。
本発明のコーティング層を有する構造物においては、機能層30に対して、連続繊維で構成されるメッシュ、連続繊維で構成されるシート、及び、短繊維等の補強材含んでもよい。連続繊維で構成されるメッシュ及び連続繊維で構成されるシートとは、連続繊維を網目状に編んだもの、連続繊維を接着又は接合してシート状に成形させたもののことをいう。短繊維等の補強材とは、繊維の平均長軸長さが30mm以下の繊維のことをいう。これら繊維の素材は特に制限されるものではない。繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維等が挙げられる。
(トップコート層)
本発明のコーティング層には、特に限定されるわけではないが、接着層30のセメント硬化体を含む構造体10側とは反対側に設けられたトップコート層40とを有していてもよい。トップコート層として、アクリル樹脂層、アクリルウレタン樹脂層、ウレタン樹脂層、フッ素樹脂層のいずれかを有することができ、耐候性に優れることから、フッ素樹脂層、アクリル樹脂層、アクリルウレタン樹脂層のいずれかであることが好ましい。
トップコート層40は、例えば、機能層30上に塗工することによって形成することができる。塗工は、ローラー、はけ、スプレーなどを用いて塗布することが好ましい。
トップコート層を形成する樹脂組成物(以下、トップコート層用樹脂組成物ということもある)は、主剤となる樹脂、これと対応する硬化剤を含む。
トップコート層は、主剤となる樹脂と硬化剤より得られる硬化物を含む。
ここで、例えば、アクリルウレタン樹脂層を得るために使用する樹脂組成物を、アクリルウレタン樹脂組成物という。
また、アクリルウレタン樹脂組成物は、主剤及び硬化剤の他に、例えば、溶剤及びその他添加剤等を更に含んでもよい。
主剤としては、アクリルポリオール等のポリオールが挙げられる。
硬化剤としては、前記脂肪族ポリイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。
トップコート層40は、透明性に優れることから、全光線透過率は、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよい。トップコート層40の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層の透明性をより向上させるができる。
トップコート層40の厚みの下限値は、例えば、0.005mm以上、0.01mm以上、0.02mm以上であってよい。トップコート層40の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コーティング層の耐候性をより向上させることができる。トップコート層40の厚みの上限値は、例えば、0.50mm以下、0.40mm以下、0.30mm以下、又は0.25mm以下であってよい。トップコート層40の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工時間を短くすることができる。
(コーティング層の性能)
本発明のコーティング層50は、特に限定されるわけではないが、可視光の光透過性を有することが好ましい。ここでの光透過性とは、コーティング層50を、セメント硬化体を含む構造物に施した際、セメント硬化体表面が目視可能であることを示し、セメント硬化体表面に発生した幅1mmのひび割れが目視可能であることが好ましく、セメント硬化体表面に発生した幅0.5mmのひび割れが目視可能であることがより好ましく、セメント硬化体表面に発生した幅0.2mmのひび割れが目視可能であることがさらに好ましい。
また、コーティング50は、全光線透過率の最小値は、例えば、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上であってよい。コーティング層50の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層の透明性が高く、コーティング層を有する構造物60におけるセメント硬化体を含む構造体10の表面を視認し易く、上記構造体のひび割れ等の劣化の発生を目視にて確認することが容易となる。
コーティング層50のヘーズの上限値は、例えば、60%以下、50%以下、40以下、35以下、又は30以下であってよい。コーティング層50のヘーズの上限値が上記範囲内であることで、コーティング層50の透明性が高く、コーティング層を有する構造物60におけるセメント硬化体を含む構造体10の表面を視認し易く、上記構造体のひび割れ等の劣化の発生を目視にて確認することが容易となる。コーティング層50のヘーズの下限値は、例えば、1以上、又は3以上であってよい。
本発明のコーティング層50は、特に限定されるわけではないが、セメント硬化体の劣化因子を遮断する性能に優れるため、表面保護性能を有する。ここでの表面保護性能とは、遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、中性化阻止性のいずれか一つ以上、二つ以上、三つ以上、もしくはすべての性能を有するものである。遮塩性は、5.0×10−3mg/cm・日以下、1.0×10−3mg/cm・日以下、0.5×10−3mg/cm・日以下であり、JSCE−K 521−1999(土木学会コンクリート標準示方書 表面被覆材の酸素透過性試験方法)に準拠して求められる値を意味する。酸素透過阻止性は、5.0×10−2mg/cm・日以下、3.0×10−2mg/cm・日以下、2.0×10−2mg/cm・日以下であり、JSCE−K 521−1999(土木学会コンクリート標準示方書 表面被覆材の酸素透過性試験方法)に準拠して求められる値を意味する。水蒸気透過阻止性は、5.0mg/cm・日以下、1.0mg/cm・日以下、0.5mg/cm・日以下であり、JIS Z 0208:1976「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して求められる値を意味する。中性化阻止性は、1.0mm以下、0.5mm以下、0.2mm以下であり,JIS A 1153:2003「コンクリートの促進中性化試験方法」に準拠して求められる値を意味する。
本発明のコーティング層50は、特に限定されるわけではないが、はく落防止性能を有する。ここでのはく落防止性能とは、コーティング層を有する構造物の23℃における押し抜き試験の最大荷重の下限値は、例えば、0.3kN以上、0.5kN以上、1.5kN以上、又は2.0kN以上とすることができる。押し抜き試験における変位の下限値は、はく落しようとする破片(例えば、コンクリート片、モルタル片、タイル構造物においてはタイル等)の落下を防止しつつ、その変状によって異常を発見しやすくできることから、例えば、10mm以上、30mm以上、50mm以上、又は70mm以上とすることができる。コーティング層を有する構造物60の押し抜き試験における変位の上限値は、過度な変状を抑制する観点から、例えば、100mm以下、90mm以下、又は80mm以下であってよい。押し抜き試験とは、JSCE−K 533−2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)もしくは、橋梁構造物設計要領 性能照査試験方法:押抜試験(首都高速道路株式会社 平成18年8月)に準拠して行われる試験を意味する。
[コーティング層を有する構造物の製造方法]
上述のコーティング層を有する構造物60は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
コーティング層を有する構造物の製造方法の一実施形態は、セメント硬化体を含む構造体上に、接着層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と
前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有する製造方法である。
また、トップコート層を設ける場合は、前記、機能層上にトップコート層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによってトップコート層を形成する工程を有する。
各樹脂組成物の組成、硬化条件等は、前述の通りである。
[コーティング用樹脂組成物セット]
本発明のコーティング用樹脂組成物セットは、エポキシ樹脂組成物及びウレタン樹脂組成物を含む。
さらに、前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物が、オクタノール/水分配係数が3以上であり、コーティング用樹脂組成物セットは、セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための組成物セットである。
エポキシ樹脂組成物、非反応性成分及びウレタン樹脂組成物の規定は前述と同義である。
本発明のコーティング用樹脂組成物セットは、エポキシ樹脂組成物が充填された容器及びウレタン樹脂組成物が充填された容器の集合物を示すが、同時に集合物として存在する必要はなく、本発明のコーティング層を有する構造物を製造する際に段階的に供給された集合物であってもよい。
各組成物は別々の容器に充填されていてもよく、さらに、エポキシ樹脂組成物中の主剤と硬化剤はそれぞれ別の容器に充填されていてもよく、ウレタン樹脂組成物中の主剤と硬化剤もそれぞれ別の容器に充填されていてもよい。
前記容器の形状や材質は、各組成物が保管及び輸送される際に安定であれば、特に限定されない。
本発明のコーティング用樹脂組成物セットは、さらに、希釈剤、反応促進剤、反応遅延剤、増粘剤、素地調整材が充填された容器を含んでいても良い。
本発明のコーティング用樹脂組成物セットを使用することで、例えば、エポキシ樹脂組成物中の主剤と硬化剤を別々に輸送し、接着層を塗膜する現場において、別々に保管されていた前記主剤及び硬化剤を混合し、これを塗布し、硬化させることで、接着層を形成させることができる。ウレタン樹脂組成物についても同様である。このようにして、低温でも接着層と機能層の施工が容易であり、高温多湿環境下、及びコーティング層を有する構造物が湿潤状態となる環境下において、十分な耐久性を有し、セメント硬化体の表面保護性能、及びはく落防止性能をもつコーティング層を有する構造物を提供することができる。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
[接着層用樹脂組成物の調製と評価]
<エポキシ樹脂組成物の調製>
密閉容器に主剤として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂と、硬化剤として、アミノ基を有する化合物を主成分とするアミン系硬化剤を混合し、エポキシ樹脂組成物R1〜R7を得た。
得られたエポキシ樹脂組成物R1〜R7は以下の通り分析した。
<エポキシ樹脂の評価>
(エポキシ樹脂組成物の粘度測定)
エポキシ樹脂組成物の粘度はE型粘度計(東機産業社製TVE−25)を用いて、JIS K 7117−2:1999(プラスチック−液状,乳濁状又は分散状の樹脂−回転粘度計による定せん断速度での粘度の測定方法)に準拠した粘度を測定した。特に記載のない場合は、測定温度 23℃、せん断速度 19.15s−1で測定した。
(エポキシ樹脂(硬化物)の非反応性成分の分析)
調整したエポキシ樹脂組成物を密閉容器に入れ、室温で48時間硬化させて得られたエポキシ樹脂(硬化物)に、水または有機溶剤を加え、24時間静置し、非反応成分となった助剤および溶剤を抽出した。その抽出液をガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計、核磁気共鳴装置(1H−NMR)を用い、公知の方法で、定性及び定量分析(含有率の測定)を行なった。得られた結果より、エポキシ樹脂組成物全量に対して1質量%以上含まれる最も沸点高い非反応性有機化合物について、文献値より物性(沸点、分配係数、23℃での水100gに対する溶解度)を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 0006969647
表1中の記号や単位の意味は以下の通りである。
「−」は未施工を示す。
含有率はエポキシ樹脂組成物全量に対する含有率(質量%)を示す。
分配係数は、オクタノール/水分配係数を示す。
溶解度は23℃での水100gに対する溶解度(g/100HO)を示す。
[機能層用樹脂組成物の調製と評価]
<ウレタン樹脂組成物の主剤の調製>
末端がイソシアナト基であるプレポリマーを次のとおり合成した。窒素ガスを流しながら、379.1質量部のジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート(H12−MDI)と、173.3質量部の石油ナフサ(ソルベント#100)と、396.5質量部のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG1000 水酸基価:115mgKOH/g)とを混合した。ここに、ジブチル錫ラウレート(DBTDL)を、H12−MDI及びPTMG1000の合計質量を基準として、10ppmとなるように更に加えた。得られた混合物を70〜80℃で39分撹拌した。さらに396.6質量部のPTMG1000を加え、70〜80℃で60分撹拌した。その後、十分に脱水した52.5質量部のアエロジル200PEを加え、十分に分散した。得られたウレタン樹脂組成物用の主剤は、滴定によって決定されるイソシアナト基の含有量が、ウレタン樹脂組成物の主剤の全量基準で3.65質量%であった。得られたウレタン樹脂組成物の主剤は、常温で透明の液体であり、23℃における粘度が53,600mPa・sであった。
なお、前記イソシアナト基の含有量は、JIS K 1603−1:2007「イソシアネート基含有率の求め方」の手順に従った中和滴定によって決定した。
<ウレタン樹脂組成物の硬化剤の調製>
容器に、硬化剤として72.6質量部のジエチルトルエンジアミン(DETDA)及び158.7質量部の石油ナフサ(ソルベント#100)とを測り取り、均一になるまで混練した。さらに耐候性付与剤、揺変性付与剤、及びその他添加剤を加え、更に撹拌混合することによって、ウレタン樹脂硬化剤を調製した。
<ウレタン樹脂組成物の調製>
容器に、上記主剤及び上記硬化剤を4:1(質量比)を加えて均一になるまで撹拌混合することによって、ウレタン樹脂組成物U1を調製した。
<ウレタン樹脂の評価>
上述のとおり調製したウレタン樹脂組成物U1を基材上に塗布し、温度:23℃、及び湿度:50%の環境下で7日間養生させた後、基材から剥がし、厚さ:1.6mmのウレタン樹脂U1(硬化膜)を得た。ウレタン樹脂U1の評価結果は表2に記す。
Figure 0006969647
(貯蔵弾性率E’及び損失正接(tanδ)の極大値の測定)
上記で得られた硬化膜を短冊状に切り取って試験片とし、TA Instruments社製の固体粘弾性アナライザー RSA−G2を用いて、動的粘弾性測定を行い、各温度における貯蔵弾性率E’を求めた。動的粘弾性測定の条件は以下に示すものとした。結果を表2に示す。
〔動的粘弾性測定の条件〕
測定モード:引っ張りモード 動的測定
sweep TYPE:温度ステップ3℃/分
Soak時間:0.5分
周波数:1Hz(6.28rad/秒)
ひずみ:0.2〜3%(AUTO設定)
温度範囲:−100℃〜200℃
雰囲気:窒素気流中
(ヘーズの測定)
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用いて、JIS K 7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠したヘーズを測定した。結果を表2に示す。
(全光線透過率の測定)
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に準拠して全光線透過率を測定した。結果を表2に示す。
[トップコート層用樹脂組成物の調製]
<アクリルウレタン樹脂組成物の調製>
密閉容器に、アクリルポリオール、微粉シリカ、キシレンを主な成分とする主剤(粘度200mPa・s、加熱残分 22%)と、ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とトルエンを主成分とする硬化剤(粘度:80mPa・s、イソシアネート含有量 3.4質量%)を混合し、アクリルウレタン樹脂組成物T1を得た。
[コーティング層を有する構造物の作成と評価]
以下に示す方法により、コーティング層を有する構造物の作成と評価を行った。
<コーティング層の評価方法>
(エポキシ樹脂組成物の施工性評価)
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量0.2kg/mで塗布した。表3には、すべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好である場合をA23℃および35℃の環境で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好である場合をB、いずれの環境でも作業性が悪く、硬化後の塗膜で塗り斑やレベリング不良などの異常が発生した場合をCと示した。
(ウレタン樹脂組成物の施工性評価)
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量1.0kg/mで塗布した。実施例1〜5においてすべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好であった。
(トップコート層用組成物の施工性評価)
温度5℃/相対湿度50%、23℃/相対湿度50%および35℃/相対湿度50%の恒温恒湿室内で、垂直面に設置したスレート板に短毛ローラーを用い、塗布量0.1kg/mで塗布した。施工を行った全ての実施例及び比較例において、すべての温度/湿度の環境下で作業性が良好であり、硬化後の塗膜が良好であった。
<コーティング層を有する構造物の評価>
(耐熱水試験)
コーティング層を有する構造物を、コーティング面を上にし、密閉容器に入れ、水を基材の底面より高さ1cm(基材の厚さの半分)となるまで加えた。容器を密閉し、水温を50℃に保ち、10日間静置した。3日、7日、10日間のコーティング面の外観を確認した。表3には、異常なしの場合をA、1mm以下の微小な異常が発生した場合をB、1mmを超える膨れが発生した場合をCと示した。
(耐湿試験)
コーティング層を有する構造物を、東日本・中日本・西日本高速道路株式会社「構造物施工管理要領(令和元年7月)」のコンクリート表面被覆工の性能照査の耐湿試験に従って、7日、10日後のコーティング面の外観を評価した。表3には、異常なしの場合をA、1mm以下の微小な異常が発生した場合をB、1mmを超える膨れが発生した場合をCと示した。
(透明性試験)
離型フィルム上に表3に示したコーティング層の材料構成に従い、コーティング層を作成した。その後、離型フィルムを剥がすことでコーティング層のフリーフィルムを得た。このフリーフィルムを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に準拠して全光線透過率を測定した。実施例1〜5において、全光線透過率が70%以上であった。
(耐候性試験)
耐候性試験では、前記のコーティング層のフリーフィルムを超促進耐候性試験機(岩崎電機製アイスーパーUVテスター:紫外線照度150W/cm、光→結露サイクル、試験時間72時間)で試験した。このフリーフィルムの耐候性試験前後の色差ΔEを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 5600−4−6:1999(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第6節:測色(色差の計算))に準拠して測定した。表3には、色差ΔEが3以下の場合をA、3を超え5以下の場合をB、5を超える場合をCと示した。
(耐熱性試験)
耐熱性試験では、前記のコーティング層のフリーフィルムを温度70℃、湿度95%Rhの槽内で72時間を静置した。このフリーフィルムの耐熱試験前後の色差ΔEを日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 5600−4−6:1999(塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第6節:測色(色差の計算))に準拠して測定した。表3には、色差ΔEが3以下の場合をA、3を超え5以下の場合をB、5を超える場合をCと示した。
(表面保護性能の評価)
後述のとおり製造されたコーティング層を対象として、硬化膜の外観、コンクリートとの付着性、劣化因子遮断性(遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、中性化阻止性)、及びひびわれ追従性を評価した。これらの性能評価は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のコンクリート表面保護の性能照査に従って行った。
(はく落防止性能の評価:押抜き試験)
前述のとおり製造されたコーティング層を有する構造物を対象として、JSCE−K 533−2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準じて、温度:50℃における押し抜き試験を行なった。荷重−変位測定における変位10mm以上、50mm以下における最大荷重を測定することで耐荷重(kN)と変位(mm)を求めた。
<コーティング層を有する構造物の作成>
(実施例1)
長さ7cm、幅7cm、厚さ2cmのモルタルの基板の一表面にエポキシ樹脂組成物R1 0.15kg/m塗布し、これを23℃で16時間硬化させた。次に、その上にウレタン樹脂組成物U1 0.5kg/m塗布し、これを23℃で5時間硬化させることで、接着層R1と機能層U1のコーティング層を有する構造物を得た。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
なお、前記基板の一表面とは、長さと幅でなる面を示し、厚さと幅でなる面や厚さと長さでなる面ではない。また、エポキシ樹脂組成物R1より形成される接着層を接着層R1、ウレタン樹脂組成物U1より形成される機能層を機能層U1という。
(実施例2〜3、比較例1〜3および5)
表3のコーティング層の材料構成に従い、使用材料、塗布量を変更した以外は、実施例1と同様にして、コーティング層を有する構造物を製造した。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
(実施例4)
長さ7cm、幅7cm、厚さ2cmのモルタルの基材の一表面(長さと幅でなる面)にエポキシ樹脂組成物R3 0.2kg/m塗布し、これを23℃で16時間硬化させた。次に、その上にウレタン樹脂組成物U1 0.5kg/m塗布し、これを23℃で5時間硬化させた。さらにその上にアクリルウレタン樹脂組成物T1 0.1kg/m塗布し、これを23℃で2時間硬化させることで、接着層R3と機能層U1とトップコート層T1のコーティング層を有する構造物を得た。
このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
なお、エポキシ樹脂組成物R3より形成される接着層を接着層R3、アクリルウレタン樹脂組成物T1より形成されるトップコート層をトップコート層T1という。
(実施例5、比較例4)
表3のコーティング層の材料構成に従い、使用材料、塗布量を変更した以外は、実施例4と同様にして、コーティング層を有する構造物を製造した。このコーティング層を有する構造物の耐熱水試験、耐湿試験、耐候性試験、耐熱性試験の結果を表3に示す。
Figure 0006969647
表3中の記号や単位の意味は以下の通りである。
「−」は未施工を示す。
含有率、沸点、分配係数、溶解度は、表1のエポキシ樹脂の非反応性成分の分析結果を転記したものである。
塗布量は各樹脂組成物の塗布量(kg/m)を示す。
(実施例6)
実施例5と同様の方法で作成したコーティング層を用い、前記の表面保護性能の評価をおこなった。その結果を表4に示す。
Figure 0006969647
(実施例7)
JIS A 5372:2010「プレキャスト鉄筋コンクリート製品」の付属書5に規定される「上ぶた式U形側溝」のうち、強度による区分「1種」かつ呼び名「300(400×600×厚み60mm)」の上ぶた式U形側溝(以下、単に「U形ぶた」という)のコンクリート板上にエポキシ樹脂組成物R4を0.2kg/m塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、16時間硬化させることによって、接着層を形成した。上記接着層上に、上記ウレタン樹脂組成物U1を1.5kg/m塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、5時間硬化させることによって、コーティング層を有する構造物を形成した。得られたコーティング層を有する構造物について、前述の方法の押抜き試験により、荷重−変位測定を測定した。その結果は耐荷重2.4kN、変位50mm以上(測定上限)であった。
本開示によれば、低温でも施工が容易であり、高温多湿環境下、及びコーティング層を有する構造物が湿潤状態となる環境下において、十分な耐久性を有し、セメント硬化体の表面保護性能、及びはく落防止性能をもつコーティング層を有する構造物を提供することができる。また、上述のコーティング層を有する構造物の製造方法を提供することができる。さらに、セメント硬化体を含む構造体上に、コーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セットを提供することができる。
10…セメント硬化体を含む構造体、20…接着層、30…機能層、40…トップコート層、50…コーティング層、60…コーティング層を有する構造物。

Claims (10)

  1. セメント硬化体を含む構造体と、前記構造体上に設けられたコーティング層を有する構造物であって、
    前記コーティング層は、接着層と、前記接着層の前記構造体側とは反対側に設けられた機能層とを有し、
    前記接着層を形成する樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物であり
    前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり
    前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
    コーティング層を有する構造物。
  2. 前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の23℃での水100gに対する溶解度が0.4g以下である、請求項1に記載のコーティング層を有する構造物。
  3. 前記接着層を形成する樹脂組成物の23℃における粘度が50〜2000mPa・secである、請求項1又は2に記載のコーティング層を有する構造物。
  4. 前記機能層を形成する樹脂組成物がウレタン樹脂組成物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
  5. 前記機能層を形成するウレタン樹脂組成物は、
    イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、
    前記イソシアナト基を有するプレポリマー(a)が、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する、請求項4に記載のコーティング層を有する構造物。
  6. 前記硬化剤(b)が、芳香族ポリアミンである請求項5に記載のコーティング層を有する構造物。
  7. 前記機能層は、50℃における貯蔵弾性率に対する−30℃における貯蔵弾性率の比が1〜20である、請求項4〜6のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
  8. 前記セメント硬化体が、モルタル及び/又はコンクリートである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング層を有する構造物。
  9. セメント硬化体を含む構造体上に、接着層を形成する樹脂組成物を塗布し、硬化させることによって、接着層を形成する工程と、
    前記接着層に、機能層を形成する樹脂組成物層を塗布し、硬化させることによって、機能層を形成する工程と、を有し、
    前記接着層を形成する樹脂組成物がエポキシ樹脂組成物であり
    前記接着層を形成する樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり
    前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、前記接着層を形成する樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
    コーティング層を有する構造物の製造方法。
  10. エポキシ樹脂組成物及びウレタン樹脂組成物を含む、コーティング用樹脂組成物セットであって、
    前記エポキシ樹脂組成物は、非反応性成分として、分子量500以下の有機化合物を含み、その非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物のオクタノール/水分配係数が3以上であり、
    前記非反応性有機化合物のうち最も沸点が高い化合物の沸点が180℃以上であり、その非反応性有機化合物の含有率の合計が、樹脂組成物全量に対して1〜20質量%である、
    セメント硬化体を含む構造体上に、少なくとも接着層と機能層を有するコーティング層を設けるための、コーティング用樹脂組成物セット。
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JP2005213844A (ja) * 2004-01-29 2005-08-11 Mitsui Kagaku Sanshi Kk コンクリート表面構造体及びその構築方法
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