JP7075813B2 - 土木建築用コーティング樹脂組成物、硬化物、土木建築構造物、及び土木建築構造物のコーティング方法 - Google Patents

土木建築用コーティング樹脂組成物、硬化物、土木建築構造物、及び土木建築構造物のコーティング方法 Download PDF

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Description

本発明は、土木建築用コーティング樹脂組成物、硬化物、土木建築構造物、及び土木建築構造物のコーティング方法に関する。
近年、トンネルの内壁、高速道路橋脚、鉄道橋脚、及び橋梁等のコンクリート構造物からのコンクリート片の落下が問題となっている。また、外壁面にタイルを張り付けた建築等の構造物において、経年劣化等によってタイルが落下する問題も生じている。コンクリート片の落下については、例えば、コンクリートの表面が何らかの劣化因子によって部分的に母体からはく離する場合、及びはく離が進行して比較的大きなコンクリート片としてはく落する場合等がある。
コンクリート片のはく落等は種々の要因によって引き起こされることが知られている。このような要因としては、例えば、ひび割れ及びコールドジョイント等の初期欠陥、地震等の衝撃によって施工後に発生するひび割れ及びはく離等の損傷、並びに、施工後のコンクリートの劣化が知られている。コンクリートの劣化としては、中性化、塩害及びアルカリ骨材反応等などが知られている。
コンクリート片又はタイルのはく落防止方法が検討されている。例えば、土木建築構造物の外壁面にエポキシ樹脂積層膜を設け、当該エポキシ樹脂積層膜の中間に補強材としてガラスクロス又はビニロン三軸メッシュを挟み込むライニング工法が知られている。また、補強材を使用しないはく落防止工法が検討されている。例えば、特許文献1には、コンクリート構造物の表面に、高いはく落防止性能を有する塗膜を形成でき、可使時間が長いなど塗装作業性が高い塗料組成物が開示されている。この特許文献1に記載の塗料組成物は芳香族ジイソシアネートであるジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を含んでいる。
特許文献2には、コンクリート表面を表面被覆材によって覆った後も、コンクリート表層の劣化の程度及びクラックの発生状態を確認することが可能なコンクリート片はく落防止構造が開示されている。この特許文献2に記載のコンクリート片はく落防止構造においては、無黄変イソシアネートプレポリマーと脂環式ポリアミンを用いて透明補強層を形成しており、透明補強短繊維及びガラス繊維製クロス等の補強材も使用されている。また、特許文献3には、透明な樹脂塗膜とすることができ、高強度樹脂塗膜を形成することができるコンクリート片及びタイルのはく落防止用一成分型ポリウレタン樹脂組成物が開示されている。
外壁面にタイルを張り付けた建築物等において、タイルの落下を防止するために、上述のコンクリート片はく落防止方法を用いることも考えられるが、タイル仕上げの外観が既存のものと異なってしまうという問題もある。
特開2017-36357号公報 特開2016-30716号公報 特開2011-252292号公報
しかし、十分な可使時間と硬化後の破断強度とを両立したコーティング樹脂組成物の研究は十分になされているとはいえない。
本発明は、十分な可使時間を有し、且つ破断強度に優れる硬化物を形成することが可能な土木建築用コーティング樹脂組成物、及び土木建築構造物のコーティング方法を提供することを目的とする。本発明はまた、十分な可使時間を有する土木建築用コーティング樹脂組成物から形成された、破断強度に優れる硬化物及び上記硬化物を備える土木建築構造物を提供することを目的とする。
本発明の一側面は、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含み、プレポリマー(a)が、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する、土木建築用コーティング樹脂組成物を提供する。
上記土木建築用コーティング樹脂組成物は、プレポリマー(a)がイソシアナト基を有し、活性水素を有する化合物とウレア結合又はウレタン結合を形成することによって硬化物を形成することができる。そして、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する特定のプレポリマー(a)と、硬化剤(b)と、の組み合わせによって、十分な可使時間を有するとともに、基材(例えば、コンクリート等)の表面における凹凸部分又は角部分の形状等に合わせて適用させることが可能であることから、基材への接着性に優れ、破断強度に優れる硬化物を形成することができる。
上記脂肪族ポリイソシアネート由来の構造が脂環構造を含んでもよい。脂肪族ポリイソシアネート由来の構造が脂環構造を有することによって、硬化物の透明性を維持しつつ、破断強度等の機械的強度をより向上させることができる。
プレポリマー(a)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールに由来する構造を有していてもよい。
硬化剤(b)が、芳香族系硬化剤を含んでもよい。硬化剤(b)が芳香族系硬化剤を含むことにより、硬化物の機械的強度をより向上させることができる。
硬化剤(b)が、直鎖状又は分岐状の脂肪族ポリアミン、及び1級アミノ基を1つ以上有する脂環族ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミンを含んでもよい。
硬化剤(b)が、芳香族ポリアミン、芳香族ポリオール、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリオール、アルカノールアミン及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含んでもよい。
上記コーティング樹脂組成物が、耐候性付与剤(c)を更に含み、耐候性付与剤(c)が、ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、及びヒンダードアミン系誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。コーティング樹脂組成物が耐候性付与剤(c)を含むことによって、硬化物の機械的強度と耐候性とをより高い水準で両立することができる。
上記コーティング樹脂組成物が、揺変性付与剤(d)を更に含み、揺変性付与剤(d)が、微粉状シリカ、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、ポリカルボン酸アマイド誘導体、及びポリエーテルリン酸エステル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。
上記脂肪族ポリイソシアネートは、25℃、大気圧下における飽和蒸気濃度が300ppb以下の化合物であってもよい。このような脂肪族ポリイソシアネートを用いることによって、コーティング樹脂組成物を使用する際の安全性をより高めることができる。
上記コーティング樹脂組成物における脂肪族ポリイソシアネートの含有量が25質量%以下であってもよい。脂肪族ポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることによって、脂肪族ポリイソシアネートが樹脂組成物中に残存している場合であっても、安全性に対する信頼度をより高めることができる。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、コンクリート構造物はく落防止、コンクリート構造物保護、タイルのはく落防止、建築物の塗膜防水材、又はコンクリート床版の床版防水に用いられてもよい。
本発明の一側面は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。
上記硬化物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を硬化して得られるものであることから、破断強度に優れる。
上記硬化物の破断強度は、-10℃において10MPa以上、23℃において5MPa以上、及び50℃において3MPa以上であってもよい。上記硬化物の破断強度が上記範囲内であることによって、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度においてより十分なはく落防止性能を有することができ、荷重がかかっても十分に変位することができ且つ強靭な硬化物(耐荷力に優れる硬化物)となり得る。
上記硬化物の破断伸度は、-10℃において100%以上、23℃において100%以上、及び50℃において100%以上であってもよい。上記硬化物の破断伸度が上記範囲内であることによって、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度でより優れた靭性を有することができる。
上記硬化物の引張弾性率が、-10℃において5~200MPaであり、23℃において1~150MPa、及び50℃において1~150MPaであってもよい。また、上記硬化物の50℃における引張弾性率に対する、上記硬化物の-10℃における引張弾性率の比(-10℃における弾性率を50℃における弾性率で割った値であり、-10℃~50℃における引張弾性率の温度変化率を意味する。)が0.8~30であってもよい。上記硬化物の-10℃~50℃における引張弾性率の温度変化率が上記範囲内であると、硬化物の引張り特性の温度変化が小さいため、温度が変化する環境においても、高い破断強度と高い破断伸度をより高水準で両立することが可能であり、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度でより優れた靭性を得ることができる。
上記硬化物の動的粘弾性測定よって測定される損失正接が、-10~30℃の温度域に極大値を有していなくてもよい。上記の範囲に損失正接の極大値を有さないことで、上記温度範囲(損失正接の極大値を有しない温度域)における破断強度及び破断伸度の変化が小さいため、寒冷地及び高温地等の環境下においても靭性及び耐荷力の信頼性に優れる。動的粘弾性測定は、実施例に記載の方法によって測定できる。損失正接の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求められる。
本発明の一側面は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化物を備える土木建築構造物を提供する。
上記土木建築構造物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化物を備えていることから、硬化物は破断強度に優れており、構造物の一部がはく落等することが十分に抑制されている。
本発明の一側面は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いる、土木建築構造物のコーティング方法を提供する。
本発明によれば、十分な可使時間を有し、且つ破断強度に優れる硬化物を形成することが可能な土木建築用コーティング樹脂組成物、及び土木建築構造物のコーティング方法を提供することができる。本発明によればまた、十分な可使時間を有する土木建築用コーティング樹脂組成物から形成された、破断強度に優れる硬化物及び上記硬化物を備える土木建築構造物を提供することができる。
本明細書における土木建築用コーティング樹脂組成物の「土木建築用」とは、当該樹脂組成物が、例えば、橋、高架道路、ダム、トンネル、道路及び土地造成等の土木分野、並びにビル、マンション及び住宅等の建築分野などで使用されることを意味する。本明細書において「土木建築用樹脂組成物」は、例えば、コーティング、塗料(上塗り塗料、中塗り塗料、及び下塗り塗料等)、プライマー、トップコート、ペンキ、スプレー、及びワニス等に用いることができる。以下、例えば、コーティングに使用される土木建築用樹脂組成物を、土木建築用コーティング樹脂組成物という。
土木建築用コーティング樹脂組成物の一実施形態は、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含む。プレポリマー(a)が、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する。プレポリマー(a)は、イソシアナト基を有することで、硬化剤(b)(活性水素を有する化合物)との反応によって、例えば、ウレア結合又はウレタン結合を形成でき、破断強度に優れる硬化物を形成することができる。
プレポリマー(a)は、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有しており、当該構造の他に、他の成分由来の構造を有していてもよい。プレポリマー(a)は、イソシアナト基をプレポリマー(a)の末端に有していてもよく、また側鎖に有していてもよい。プレポリマー(a)は、例えば、末端構造として下記一般式(1)に示される構造単位を有する。
Figure 0007075813000001
上記一般式(1)において、Rは、炭素数が11以上の官能基を示す。上記官能基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子が含まれていてもよい。上記官能基は、例えば、脂肪族基であってよい。上記脂肪族基の炭素数は、12以上、又は13以上であってよく、30以下、又は20以下であってよい。上記一般式(1)において、Rは、例えば、下記一般式(2)~下記一般式(6)で表される構造であってよい。
Figure 0007075813000002
Figure 0007075813000003
Figure 0007075813000004
Figure 0007075813000005
Figure 0007075813000006
上記一般式(2)~上記一般式(6)において、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基、アルキレン基、及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を示す。R、R、R、R、R、R、R及びR10は、互いに同一であっても異なっていてもよい。上記アルキル基及び上記アルキレン基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。上記アリール基は、芳香環上に置換基を有していてもよい。
は、炭素数4~18の官能基、炭素数5~9の官能基又は炭素数5~6の官能基であってよい。R及びRは、炭素数2~20の官能基、炭素数2~14の官能基又は炭素数2~10の官能基であってよい。Rは、炭素数2~9の官能基、炭素数3~6の官能基又は炭素数3~4の官能基であってよい。R及びRは、炭素数2~20の官能基、炭素数2~14の官能基又は炭素数2~10の官能基であってよい。R9及びR10は、炭素数2~18の官能基、炭素数2~10の官能基又は炭素数4~6の官能基であってよい。上記一般式(2)~上記一般式(6)において、p、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ独立に1以上の整数であってよい。
プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量は、プレポリマー(a)の全質量を基準として、0.1~15質量%、3~12質量%、又は5~10質量%であってよい。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が0.1質量%以上であると、調製されるプレポリマー(a)の数平均分子量、及び粘度の増大による作業性の低下を抑制することできる。さらに、樹脂組成物中の架橋点を増加させて樹脂硬化に伴う、硬化物の基材(例えば、コンクリート)に対する接着性を向上させることができる。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が15質量%以下であると、ウレタン結合及び環構造等の剛直成分の比率を適度なものとし、硬化物の機械的強度をより向上させることができる。
プレポリマー(a)の23℃における粘度は、1000~150000mPa・s、3000~100000mPa・s、又は10000~50000mPa・sであってよい。プレポリマー(a)の23℃における粘度が上記の数値範囲内であると、得られる土木建築用コーティング組成物の施工性により優れる。プレポリマー(a)の粘度は、溶剤及び可塑剤等を添加することで、適宜調整することができる。
プレポリマー(a)の数平均分子量は、500以上であってよく、700~10000、又は1000~10000であってよい。プレポリマー(a)の数平均分子量が上記の数値範囲内であると、得られるコーティングの機械的強度をより向上できる。本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値を示し、ポリスチレン換算分子量で表す。なお適宜、GPCを用いた測定の前処理としてイソシアナト基の誘導化を行うこともできる。
プレポリマー(a)は、例えば、以下の方法によって調製することができる。プレポリマー(a)は、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートと、ポリオール、芳香族ポリアミン類、脂肪族ポリアミン類、アルカノールアミン類、及びシラン化合物等を含む活性水素化合物とを50~130℃で加熱攪拌して反応させることを含む方法によって調製することができる。プレポリマー(a)は、脂肪族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートと、脂肪族ポリオールとを50~130℃で加熱攪拌して反応させることを含む方法によって調製することができ、また、脂肪族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートと、脂肪族ポリオールと、芳香族ポリオール類、芳香族ポリアミン類、脂肪族ポリアミン類、アルカノールアミン類、及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の活性水素化合物と、を50~130℃で加熱攪拌して反応させることを含む方法によって調製することができる。上記のプレポリマー(a)の調製方法においては、必要に応じて、例えば、ポリアミン等のポリオール以外の活性水素化合物を用いてもよく、また、有機錫化合物、有機ビスマス及びアミン等のウレタン化触媒を用いてもよい。
プレポリマー(a)の調製方法において、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させてプレポリマー(a)を調製する場合、ポリイソシアネートが有するイソシアナト基と、ポリオールが有する水酸基との当量比(イソシアナト基の当量/水酸基の当量)は、8.0~1.5、又は3.5~1.8であってよい。
ポリイソシアネートに占めるイソシアナト基の含有量は、ポリイソシアネートの全質量を基準として、0.1~60質量%、5~40質量%、又は10~35質量%であってよい。
炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、14以上、又は15以上であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の下限値が上記範囲内であると、脂肪族ポリイソシアネートの沸点が高く、且つ飽和蒸気濃度を小さくできる。このため、土木建築用コーティング樹脂組成物にプレポリマー(a)を調製する際のポリイソシアネートが残存していた場合であっても、作業時の安全性により優れる。炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、30以下、又は20以下であってよい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の上限値が上記範囲内であると、得られるプレポリマー(a)の粘度が適度なものとなり、土木建築用コーティング樹脂組成物の粘度が上がり施工し難くなることを十分に抑制できる。
炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくは環構造を有し、より好ましくは2つ以上の環構造を有する。上記環構造は、多環又は縮合環の脂環であってよく、炭素以外の元素を含むヘテロ環であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートが環構造(例えば、脂環構造)を有することで、硬化物の耐候性(低黄変)と破断強度とをより高水準で両立することができる。
炭素数13以上のポリイソシアネートが有するイソシアナト基の数は、例えば、2~9個、2~6個、又は2~3個であってよく、2個であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートが有するイソシアナト基の数が上記の数値範囲内であると、ゲル化が十分に抑制されたプレポリマー(a)を製造できる。
炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のイソシアヌレート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアロファネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のビュレット化合物、及びヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアダクト化合物等が挙げられる。ポリイソシアネートは、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートに加えて、他のポリイソシアネート化合物を含んでもよい。他のポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、及び水素添加キシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートと、他のポリイソシアネート化合物とを併用する場合、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートと、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種との組み合わせを挙げることができ、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとの組み合わせであることが更に好ましい。
上記炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物及び上記他のポリイソシアネート化合物は、変性されていてもよく、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を有していてもよく、イソシアヌレート結合を有していることが好ましい。
ポリオールは、2つ以上の水酸基を有する化合物である。ポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール、及び(水添)ポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは、これらのうち、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカーボネートポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
ポリオールは、塗膜の強度及び耐候性をより向上させる観点からは、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、及びポリテトラメチレンエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。ポリオールは、さらに得られるプレポリマー(a)の粘度をより低減する観点から、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン系ポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール、又はポリテトラメチレンポリオールを含むことがより好ましく、ポリテトラメチレンポリオールを含むことが特に好ましい。また、上記のポリオール以外にも、後記の硬化剤(b)として用いるポリオールに例示されるポリオールを好適に用いることができる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UHシリーズ;UH-50、UH-100、UH200、及びUH-300等)、1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL PHシリーズ;PH-50、PH-100、及びPH‐200等)、1,4-シクロヘキサンジメタノールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL;UC-100等)、1,4-シクロヘキサンジメタノールと1,6-ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL;UM-90(3/1)、UM-90(1/1)、及びUM-90(1/3)等)、及び旭化成株式会社製デュラノールシリーズ、東ソー株式会社製のニッポランシリーズ、株式会社クラレ製のクラレポリオールCシリーズ、及び株式会社ダイセル製のプラクセルCDシリーズが挙げられる。
前記ポリテトラメチレンポリオールとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGシリーズ;PTMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000等)、インビスタ社製のTERATHANEシリーズ、BASFジャパン株式会社製のPoly THFシリーズ、保土谷化学工業株式会社製のPTG及びPTG-Lシリーズ、並びにテトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合させたポリテトラメチレンポリオール(旭化成株式会社製、PTXG-1800等)などが挙げられる。
ポリオールの数平均分子量は、100~10,000、300~5,000、又は500~2,000であってよい。
芳香族ポリアミン類、芳香族ポリオール類、脂肪族ポリアミン類、アルカノールアミン類、及びシラン化合物等の活性水素化合物としては、後述する硬化剤(b)として例示した化合物を使用することができる。
硬化剤(b)としては、例えば、プレポリマー(a)が有するイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する化合物、及び潜在硬化剤等を使用できる。潜在硬化剤は、水と反応してプレポリマー(a)のイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を生成する化合物等を使用できる。硬化剤(b)は芳香族系硬化剤を含んでもよい。芳香族系硬化剤としては、イソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する芳香族化合物を用いることができ、例えば、アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物等を用いることができる。アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリアミン、及び芳香族ポリオール等が挙げられる。硬化剤(b)は、例えば、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリオール、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びシラン化合物等が挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2個以上有する芳香族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1個以上有する芳香族化合物が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアニリン(MDA)、4,4’-メチレンビス(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)(MMEA)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(MDEA)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)(MMIPA)、4,4’-ビス(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン、フェニレンジアミン、メチレンビス(オルト-クロロアニリン)(MBOCA)、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)(MMA)、4,4’-メチレンビス(2-クロロ-6-エチルアニリン)(MCEA)、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオール)エタン、N,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジイソプロピルアニリン)(MDIPA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、アルキレングリコールビス(パラ-アミノベンゾエート)、及びポリアルキレングリコールビス(パラ-アミノベンゾエート)等のアミノベンゾエート末端化合物等が挙げられる。芳香族ポリアミンを用いた場合、芳香環を有するため、硬化物の強度をより向上させることができる。また、塗膜の黄変が小さいことから、芳香族ポリアミンは、芳香環が1つのジアミンが好ましい。芳香環が1つのジアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。
芳香族ポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有する芳香族化合物が挙げられる。芳香族ポリオールとしては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びフェノール樹脂等のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリオール;ベンゼンジメタノール、及びベンゼンジエタノール等のアルコール性水酸基を有する芳香族ポリオール;並びに、芳香族骨格を含有したポリカーボネートポリオール、芳香族骨格を含有したポリエステルポリオール、芳香族骨格を含有したポリエーテルポリオール及び芳香族骨格を含有したヒマシ油系変性ポリオール等のポリマー系芳香族ポリオールなどが挙げられる。芳香族ポリオールを用いた場合、芳香環を有するため、硬化物の引張強度をより向上させることができる。また芳香族ポリオールは、土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化時間を短縮できることから、アルコール性水酸基を有する芳香族ポリオール、又はポリマー系芳香族ポリオールが好ましい。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2個以上有する脂肪族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1個以上有する脂肪族化合物が挙げられる。脂肪族ポリアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、オクタメチレンジアミン(OMD)、及びノナンジアミン(NDA)等の脂肪族ジアミン並びにこれらの構造異性体;エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、及びジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)等のハイアミン並びにこれらの誘導体;N-アミノエチルピベラジン(NAEP)、メンセンジアミン(MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、及び1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3-BAC)等の脂環構造を有するジアミン並びにこれらの構造異性体;ポリオキシアルキルアミン及びこれらの誘導体並びにこれらの構造異性体等が挙げられる。ポリオキシアルキルアミンとしては、ハンツマン社製ジェファーミン、及び三井化学ファイン株式会社製ポリエーテルアミン等が挙げられる。また、潜在硬化剤として、上記脂肪族ポリアミンのケチミン化合物、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びアルジミン化合物が挙げられる。
脂肪族ポリアミンは、上記のアミンの中でも、直鎖状の脂肪族ポリアミン、分岐状の脂肪族ポリアミン、及び1級アミノ基を1個以上有する脂環ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミンを含むことが好ましい。脂肪族ポリアミンが上記の化合物を含むことによって、より十分な可使時間を有する樹脂組成物を得ることができる。換言すれば、脂肪族ポリアミンは、脂環構造を有さない脂肪族ポリアミン及び1級アミンの構造を1つ以上有する脂肪族ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を1つ以上有する脂肪族ポリアミンがより好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を2つ以上有する脂肪族ポリアミンがさらに好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を3つ以上有する脂肪族ポリアミンが特に好ましい。
脂肪族ポリアミンの数平均分子量は、1000以上、又は3000以上であってよく、7000以下、又は10000以下であってよい。脂肪族ポリアミンの数平均分子量が上記範囲内であることで、得られる硬化物の低温における特性(例えば、破断強度等)により優れる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミンが好ましく、ポリオキシアルキレンポリアミンの数平均分子量は、1000以上、又は3000以上であってよい。脂肪族ポリアミンとして、上記範囲内となる数平均分子量のポリオキシアルキレンポリアミンを用いることで、得られる硬化物の低温における特性(例えば、破断強度等)を更に向上させることができる。
アルカノールアミンとしては、例えば、アルコール性水酸基、及びアミノ基を有する化合物、並びに、アルコール性水酸基、アミノ基及びイミノ基を有する化合物等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、及びN-(2-ヒドロキシエチル)-N-(2-ヒドロキシプロピル)アミン等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、比較的低分子量の脂肪族ポリオール、比較的高分子量の脂肪族ポリオールを用いることができる。比較的低分子量の脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3-ブタンジオール(1,3-BD)、1,4-ブタンジオール(1,4-BD)、4,4’-ジヒドロキシフェニルプロパン、及び4,4’-ジヒドロキシフェニルメタン等の2価アルコール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)、及び1,2,5-ヘキサントリオール等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、グルコース、シュークロース、及びソルビトール等の4価以上の多価アルコールが挙げられる。
比較的高分子量の脂肪族ポリオールとしては、例えば、プレポリマー(a)の調製に用いるポリオールとして例示した化合物を好適に用いることができる。
シラン化合物は、加水分解等されることによって、プレポリマー(a)が有するイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を生成する化合物である。シラン化合物としては、アルコキシシラン誘導体、及びシラン系カップリング剤等が挙げられる。シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等の炭化水素結合アルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン等の炭化水素結合イソプロペノキシシラン類;3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメイルメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3-グリシドキシプロピルエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-(アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。
上記のシラン化合物の中でも、プレポリマー(a)との反応性を制御しやすい観点から、アミノ基を有するシラン化合物が好ましく、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-(アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、及びN-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等がより好ましい。
シラン化合物の分子量は、500以下、又は400以下であってよい。シラン化合物は、例示されたシラン化合物及び/又はこれらシラン系カップリング剤の1種又は2種以上の部分加水分解縮合物であってもよく、部分加水分解縮合物の分子量は、200~3000の化合物が挙げられる。
硬化剤(b)は、上述の化合物の中から1種を単独に、又は2種以上を併用してもよい。硬化剤(b)は、例えば、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリオール、及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含んでもよい。硬化剤(b)は、より十分な可使時間が得られることから、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリオール、及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含むことがより好ましい。また、硬化剤(b)は、得られる硬化物の低温での特性(例えば、破断強度等)により優れることから、芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、及び脂肪族ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含むことが更に好ましい。そのうち、芳香族ポリアミン、及び脂肪族ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含むことが特に好ましい。
硬化剤(b)は、プレポリマー(a)のイソシアナト基のモル量と、硬化剤(b)の反応可能な活性水素のモル量との比(R値:例えば、NCO基/OH基、又はNCO基/NH基のモル比)が、0.5~2.0、0.8~1.2、又は0.9~1.1となるように、配合されてよい。硬化剤(b)の配合量が上記範囲内であると、硬化後の樹脂の分子量が増大し、硬化物の強度及び耐候性により優れる。また、硬化剤(b)の配合量が上記範囲内であると、硬化物の黄変を防ぐことができる。
本実施形態に係る土木建築用コーティング樹脂組成物は、耐候性付与剤(c)、揺変性付与剤(d)、硬化触媒(e)、溶剤(f)、及びその他成分等を更に含んでもよい。
耐候性付与剤(c)は、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、及びヒンダードアミン系誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。硬化剤(b)として芳香族ポリアミンを用いた場合、耐候性付与剤(c)を組み合わせて用いることで、硬化物の強度と耐候性とをより高水準で両立できる。
耐候性付与剤(c)の添加量は、プレポリマー(a)100質量部に対して、0.01~10質量部、0.05~1質量部であってよい。耐候性付与剤(c)の添加量を0.01質量部以上とすることで、硬化物の耐候性をより向上させることができ、10質量部以下とすることで、硬化物から耐候性付与剤がブリードアウトすることを十分に抑制することができ、耐候性付与剤による硬化物の変色を抑制することができる。また、耐候性付与剤(c)の添加量が上記範囲内であると、硬化物に対する耐候性付与の効果と、経済性とのバランスの点で優れる。
ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体は、太陽光中の紫外線を吸収することで、硬化物の耐候性を向上させることができる。ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体は、一般的なベンゾフェノン型紫外線吸収剤、及びベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤等に比べて、硬化物からブリードアウトし難い性質があるため、長期間に渡って硬化物の耐候性を維持することができる。
ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体としては、例えば、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン及び2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの混合物(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN400)、2-[4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)]-1,3,5-トリアジン(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN479)、及びトリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN777)等が挙げられる。
ヒンダードアミン系誘導体は、4位に置換基を有する、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン誘導体である。4位の置換基としては、例えば、アルキル基、エステル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びその他種々の置換基が挙げられる。また、N位にはアルキル基、及びオキシラジカル等が置換していてもよい。特にヒドロキシフェニルトリアジン誘導体との組み合わせて用いることで、硬化物の耐候性がより優れることから、4位の置換基としてエステル基、N位の置換基としてアルキル基であるものが好ましい。
ヒンダードアミン系誘導体としては、例えば、TINUVIN292、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN765、チマソルブ119FL、チマソルブ2020FDL、チマソルブ944、及びチマソルブ622LD等(以上いずれもBASFジャパン株式会社製、商品名)、スミソルブ577等(住友化学株式会社製、商品名)、アデカスタブLA-52、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-62、アデカスタブLA-67、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-68LD、アデカスタブLA-82、アデカスタブLA-87、アデカスタブLA-503、及びアデカスタブLA-601等(以上いずれも株式会社ADEKA製、商品名)、並びに、サノールLS-2626、サノールLS-744、及びサノールLS-440等(以上いずれも三共株式会社製、商品名)などが挙げられる。ヒンダードアミン系誘導体としては、特に、TINUVIN292が好ましい。
揺変性付与剤(d)は、例えば、微粉状シリカ、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、ポリカルボン酸アマイド誘導体、及びポリエーテルリン酸エステル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。土木建築用コーティング樹脂組成物は、揺変性付与剤(d)を更に含むことにより、斜面及び垂直面へ塗布する場合のタレを抑制することができる。揺変性付与剤(d)は、親水性微粉状シリカと、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体及びポリカルボン酸アマイド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用すること、又は、疎水性微粉状シリカと、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体及びポリカルボン酸アマイド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用することが好ましい。揺変性付与剤(d)は、上記のような組み合わせで使用することによって、微粉状シリカの添加量を低減することができ、硬化物の透明性をより向上させることができる。
微粉状シリカのBET法で求められる比表面積は、130~300m/g、200~300m/g、又は180~250m/gであってよい。微粉状シリカの比表面積が上記範囲内であると、微粉状シリカの分散性により優れ、土木建築用コーティング樹脂組成物に揺変性をより十分に付与することができる。
微粉状シリカは、親水性微粉状シリカであってもよい。親水性微粉状シリカは、特に、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、及びポリカルボン酸アマイド誘導体等と組み合わせて使用することでき、微粉状シリカの添加量を低減することができる。微粉状シリカは、疎水化処理されたものであってもよい。疎水化処理は、好ましくはアルキルシリル化合物によって行われ、より好ましくは、ジメチルシリル又はトリメチルシリルによって行われる。
ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体としては、例えば、BYK-R 606(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリカルボン酸アマイド誘導体としては、例えば、BYK-405、及びBYK-R 605等(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリエーテルリン酸エステル誘導体としては、例えば、ディスパロン3500(楠本化成株式会社製、商品名)等を使用することができる。
硬化触媒(e)は、例えば、有機金属化合物、及びアミン類等が挙げられる。硬化触媒(e)は、架橋速度に優れることから、有機錫化合物を含むことが好ましい。有機錫化合物は、例えば、スタナスオクテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、及びジオクチル錫ジバーサテート等が挙げられる。これらの有機鉛化合物の中でも、架橋速度に優れ、毒性及び揮発性の比較的低い液体であることから、ジブチル錫ジアセチルアセトナートが特に好ましい。硬化触媒(e)(架橋触媒)の配合量は、架橋速度に優れ、硬化物の物性に優れる等の点から、プレポリマー(a)100質量部に対して、0.001~3質量部が好ましく、0.01~0.1質量部がより好ましい。
溶剤(f)は、例えば、n-ヘキサン等の脂肪族系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族系溶剤、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶剤、脂肪族エステル系溶剤、脂肪族エーテル系溶剤、並びにこれらを含有する石油系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。
溶剤(f)としては、上記有機溶剤の中でも、プレポリマー(a)との相溶性に優れることから、脂肪族系溶剤、芳香族系溶剤、脂肪族エステル系溶剤、又は脂肪族エーテル系溶剤が好ましく、脂肪族系溶剤、脂肪族エステル系溶剤、又は脂肪族エーテル系溶剤がより好ましく、脂肪族エステル系溶剤が更に好ましい。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせで用いてもよい。
脂肪族系溶剤としては、例えば、分岐構造を有する炭化水素、及び環構造を有する炭化水素等を用いることができる。分岐構造を有する炭化水素としては、例えば、炭素数7~15のイソパラフィン系炭化水素及びその混合物(例えば、出光興産株式会社製のIPソルベント、及び日油株式会社製のNAソルベント等)等を用いることができる。環構造を有する炭化水素としては、例えば、炭素数7~15のナフテン系炭化水素及びその混合物(例えば、丸善石油化学株式会社製のスワクリーン150、及び大商化成株式会社製のダイカエコシンナー等)等を用いることができる。
脂肪族エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、及び3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート等を用いることができる。脂肪族エステル系溶剤は、好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む。
脂肪族エーテル系溶剤としては、例えば、エーテル構造を有する脂肪族化合物を用いることができる。エーテル構造を有する脂肪族化合物としては、例えば、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジグライム、エチルグライム、エチルジグライム、トリグライム、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、メチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ヘキシルジグリコール、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等を用いることができる。
その他成分としては、消泡剤、湿潤分散剤、界面活性剤、顔料、染料、無機充填剤、酸化防止剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、滑剤、防蟻剤、及び防かび剤等の添加剤を使用することができる。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、硬化時に天候等の外的要因を受けにくいことから、A液(主剤)と、B液(硬化剤組成物)と、を含んで構成される二液混合型の樹脂組成物であってもよい。二液混合型の場合、A液(主剤)はプレポリマー(a)を含み、B液(硬化剤組成物)は硬化剤(b)を含む。また、耐候性付与剤(c)、揺変性付与剤(d)、硬化触媒(e)、溶剤(f)及びその他成分は、A液及びB液のどちらに配合してもよいが、B液に配合することが好ましい。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、A液及びB液以外の第三の成分を含んで構成されてもよい。一方、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、混合操作が不要となり易施工となることから、一液混合型の樹脂組成物であってもよい。一液混合型の場合、硬化剤(b)には、潜在硬化剤(例えば、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、ケチミン化合物、アルジミン化合物、及びシラン化合物等)を含む。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物中に脂肪族ポリイソシアネートが含まれる場合、当該脂肪族ポリイソシアネートの25℃、大気圧下における飽和蒸気濃度は、300ppb以下、100ppb以下、又は50ppb以下であってよい。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物中に脂肪族ポリイソシアネートが含まれる場合、当該脂肪族ポリイソシアネートの含有量が、樹脂組成物全量を基準として、25質量%以下、10質量%以下、又は7質量%以下であってよい。脂肪族ポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であると、安全性を更に向上することができ、塗膜の特性にも優れる。
土木建築構造物の保護膜を形成するために用いるコーティング樹脂組成物は、トンネル内等の閉鎖された場所でも使用されることから、作業時の安全性の観点から、コーティング樹脂組成物としては、揮発性の高い脂肪族系ジイソシアネートの含有量が十分に低減されたウレタン樹脂又はウレア樹脂系組成物であることが求められている。本実施形態に係る土木建築用コーティング樹脂組成物は、上記のとおり、揮発性の低い脂肪族ポリイソシアネートを用いていることから、安全性が高い。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の粘度は、例えば、0.1~100Pa・s、又は1~50Pa・sであってよい。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の粘度が上記の範囲内であると、コテ及びヘラ等で施工がより容易なものとなる。また、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物のチキソトロピーインデックス(TI)(5rpmの粘度/50rpmの粘度)は、1.0以上、1.1以上、又は1.2以上であってよい。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物のTIが上記の範囲内にあると、樹脂組成物に揺変性(チキソ性)をより十分に付与することができ、コーティングの際に、液タレが発生することをより抑制することができきる。粘度の測定は、JIS-Z8803(液体の粘度測定方法)に従い測定することができる。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物のタレ性は、100mm未満、50mm未満、又は10mm未満であってよい。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物のタレ性が上記の範囲内であると、天井面及び垂直面への、コーティングの施工をより容易なものとすることができる。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、可使時間を10分以上、20分以上、又は30分以上とすることができる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の可使時間が上記の範囲内であると、コテ及びヘラ等で容易に施工できる。可使時間は、実施例に記載の評価方法に基づいて決定することができる。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は、タックフリー時間を72時間未満、24時間未満、又は6時間未満とすることができる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物のタックフリー時間が上記の範囲であると、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いて形成したコーティングにさらにトップコートを塗布できるようになるまでの時間をより短縮できる。タックフリー時間は、JIS A1439(2010)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.19 タックフリー試験」に準拠して測定することができる。
<土木建築用コーティング樹脂組成物の製造方法>
土木建築用コーティング樹脂組成物(A液(主剤)及びB液(硬化剤組成物))は、当業者において通常用いられる方法によって製造することができる。A液及びB液はそれぞれ、A液及びB液の各成分を、例えば、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、及びプラネタリーミキサー等で混合することにより調製することができる。
<土木建築用コーティング樹脂組成物の用途>
土木建築用コーティング樹脂組成物は、例えば、コンクリート構造物はく落防止、コンクリート構造物保護、タイルのはく落防止、建築物の塗膜防水材、建築物の塗り床材、建築物の外壁塗装、及び橋梁の床版防水材等に用いることができる。
コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物をコンクリート構造物はく落防止に用いるものであってよい。上記コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、作業時の安全性と施工性に優れ、施工時の湿度の影響を低減できる。また上記コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物を用いる場合、積層数が少ないことから、従来のコーティング樹脂組成物を使用する場合と比較して、工期が長期化することを抑制できる。また、上記コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物は、耐候性及び強度に優れ、且つ透明な樹脂硬化物を得ることができる。上記コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物は、コンクリート構造物の表面に塗布され、構造物の劣化によるコンクリート片のはく落を抑制できる塗膜を形成する樹脂組成物できる。
例えば、土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法(JSCE-K 533-2013)や、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のはく落防止対策に記載される性能を有するものである。
コンクリート構造物保護用樹脂組成物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物をコンクリート構造物の保護に用いるものであってよい。上記コンクリート構造物保護用樹脂組成物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、作業時の安全性及び施工性に優れ、施工時の湿度の影響を低減できる。また上記コンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物を用いる場合、積層数が少ないことから、工期が長期化することを抑制できる。また、上記コンクリート構造物保護用樹脂組成物は、耐候性及び強度に優れ、且つ透明な樹脂硬化物を好適に得ることができる。上記コンクリート構造物保護用樹脂組成物は、塗膜の外観、コンクリートとの接着性、及び劣化因子遮断性(遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、中性化阻止性)等のコンクリート構造物の保護性能に優れる。
タイルのはく落防止用樹脂組成物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物をタイルのはく落防止に用いるものであってよい。上記タイルのはく落防止用樹脂組成物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、作業時の安全性と施工性に優れ、施工時の湿度の影響を低減できる。また上記タイルのはく落防止用樹脂組成物を用いる場合、積層数が少ないことから、工期が長期化することを抑制できる。また、上記タイルのはく落防止用樹脂組成物は、耐候性に優れ、透明の高強度樹脂塗膜を好適に得られる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、タイルのはく落防止においても、コンクリート片のはく落と同様の効果を得ることができるため、好ましい。
建築物の塗膜防水材用樹脂組成物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を建築物の塗膜防水材用樹脂組成物に用いるものであってよい。上記建築物の塗膜防水材用樹脂組成物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、作業時の安全性と施工性に優れ、施工時の湿度の影響を低減できる。また、上記建築物の塗膜防水材用樹脂組成物は、積層数が少ないことから、工期が長期化することを抑制できる。また、上記建築物の塗膜防水材用樹脂組成物は、耐候性に優れ、透明の高強度樹脂塗膜を好適に得られる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、上記建築物の塗膜防水材用樹脂組成物は、従来のウレタン防水材に比べ、高強度樹脂塗膜となることから、建築物の屋上の防水材として用いた場合、屋上の耐久性が向上し、屋上がさまざまな用途に利用できるようになる。
床版防水用樹脂組成物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物をコンクリート床版の床版防水用樹脂組成物(例えば、床版防水層(NEXCO床版防水グレードI)、床版防水層(NEXCO床版防水グレードII)、端部保護材等)に用いるものであってよい。上記床版防水用樹脂組成物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、作業時の安全性と施工性に優れ、施工時の湿度の影響を低減できる。また、上記床版防水用樹脂組成物は、積層数が少ないことから、工期の長期化を抑制できる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いることから、上記床版防水用樹脂組成物はまた、耐候性に優れ、高強度の樹脂塗膜を好適に得ることができる。
上記床版防水用樹脂組成物は、従来の床版防水に比べて、より高強度の樹脂塗膜を形成することができる。上記床版防水用樹脂組成物は、また耐候性にも優れることから、床版防水層(NEXCO床版防水グレードII)として用いた場合、床版防水をそのまま床版防水の端部保護材として用いることができる。また、床版防水用樹脂組成物を用いることにより、床版防水材と端部保護材がシームレス構造となり、防水の信頼性に優れる構造を提供できる。
上記床版防水用組成物(床版防水層(NEXCO床版防水グレードI)、床版防水層(NEXCO床版防水グレードII)、端部保護材)は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)の床版防水に記載される性能を有するものである。
<硬化物>
硬化物の一実施形態は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である。硬化物の形態は、例えば、膜であってもよい。硬化物は、例えば、硬化膜、及びコーティング膜等を含む。
硬化物の厚さは、0.3~5mm、0.3~3mm、又は0.5~2mmであってよい。上記硬化物の厚さが上記の範囲内であると、はく落防止効果をより十分なものとすることができる。
硬化物は、わずかに着色又はわずかな濁りがあってもよいが、好ましくは無色透明である。硬化物のヘーズ値は、80%以下、50%以下、30%以下、又は20%以下であってよい。また、硬化物のヘーズ値は、ぎらつき等の外観を改善する目的で、適宜添加剤等でコントロールできることが好ましい。硬化物の全光線透過率は、80%以上、85%以上、又は90%以上であってよい。この範囲であれば、硬化物を形成した後であっても、硬化物下のひび割れ等の異常を目視により容易に確認できる。なお、全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して測定することができる。
硬化物の23℃における破断強度は、5MPa以上、10MPa以上、又は20MPa以上であってよい。硬化物の50℃における破断強度は、3MPa以上、5MPa以上、又は10MPa以上であってよい。硬化物の-10℃における破断強度は、10MPa以上、20MPa以上、又は30MPa以上であってよい。硬化物の-30℃における破断強度は、10MPa以上、20MPa以上、又は30MPa以上であってよい。硬化物の破断強度が、上記範囲内であることによって、各温度でより優れたはく落防止効果を得ることができる。また、硬化物の破断強度が、上記範囲内であることによって、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度でより優れたはく落防止性能と耐荷力を得ることができる。なお、破断強度は、JIS K 7161-1:2014「プラスチック-引張特性の求め方」に準拠して測定することができる。
硬化物の23℃における破断伸度は、100%以上、200%以上、300%以上、又は500%以上であってよい。硬化物の50℃における破断伸度は、100%以上、200%以上、300%以上、又は500%以上であってよい。硬化物の-10℃における破断伸度は、100%以上、200%以上、又は300%以上であってよい。硬化物の-30℃における破断伸度は、100%以上、200%以上、300%以上、又は500%以上であってよい。硬化物の破断伸度が、上記の範囲内であることによって、各温度でより優れたはく落防止硬化を得ることができる。また、硬化物の破断伸度が、上記の範囲内であることによって、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度でより優れた靭性と耐荷力得ることができる。なお、破断伸度は、JIS K 7161-1:2014「プラスチック-引張特性の求め方」に準拠して測定することができる。
硬化物の23℃における引張弾性率は、5MPa以上、10MPa以上、又は30MPa以上であってよく、また200MPa以下、180MPa以下、又は150MPa以下であってよい。硬化物の50℃における引張弾性率は、1MPa以上、5MPa以上、又は10MPa以上であってよく、また150MPa以下、100MPa以下、又は80MPa以下であってよい。硬化物の-10℃における引張弾性率は、5MPa以上、10MPa以上、又は30MPa以上であってよく、また200MPa以下、180MPa以下、又は150MPa以下であってよい。硬化物の引張弾性率は、例えば、-10℃において5~200MPa、23℃において1~150MPa、及び50℃において1~150MPaであってもよい。
上記硬化物の50℃における引張弾性率に対する、硬化物の-10℃における引張弾性率の比(-10℃における弾性率を50℃における弾性率で割った値であり、-10℃~50℃における引張弾性率の温度変化率を意味する。)が0.8~30、0.9~10、0.9~5、又は1.0~2.5であってよい。上記硬化物の-10℃~50℃における引張弾性率の温度変化率が上記範囲内であると、硬化物の引張り特性の温度変化が小さいため、温度が変化する環境においても、高い破断強度と高い破断伸度をより高水準で両立することが可能であり、補強メッシュ等を用いない場合においても、各温度でより優れた靭性と耐荷力を得ることができる。
硬化物の動的粘弾性測定よって測定される損失正接(tanδ)が、-10~30℃の温度域に極大値を有していなくてもよい。硬化物の動的粘弾性測定よって測定される損失正接が、-30~50の温度域に極大値を有していなくてもよく、-50~80℃の温度域に極大値を有していなくてもよい。上記の温度域内に損失正接の極大値を有しないことで、上記温度範囲(損失正接の極大値を有しない温度域)における破断強度及び破断伸度の変化が小さいため、寒冷地及び高温地等の環境下においても靭性及び耐荷力の信頼性に優れる。動的粘弾性測定は、実施例に記載の方法によって測定できる。損失正接の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求められる。
硬化物の促進暴露試験の前後における破断強度保持率は、60%以上、80%以上、又は90%以上であってよい。硬化物の促進暴露試験の前後における破断伸度保持率は、50%以上、60%以上、又は70%以上であってよい。なお、促進暴露試験は、JIS B 7753:2007に規定するサンシャインウェザオメーターを用いて、試験時間は700時間として行われる耐候性試験である。
硬化物の促進暴露試験後の色差(ΔE)は、15以下、5以下、又は3以下であってよい。なお、色差はJIS K5600-4-6:1999「塗料一般試験方法の測色(SCE)に準拠し、促進暴露試験前後の試験片を測定して求めることができる。
硬化物の促進暴露試験の前後における光沢保持率は、60%以上、又は80%以上であってよい。なお、光沢保持率は、JIS K5600-4-7:1999「塗料一般試験方法の鏡面光沢度(60°)に準拠し、促進暴露試験前後の試験片を測定して求めることができる。
<はく落防止としての性能>
硬化物は、押し抜き試験における変位が10mm以上、30mm以上、50mm以上、又は70mm以上であってよく、最大耐荷力が1.5kN以上、1.8kN以上、2.0kN以上、又は2.5kN以上であってよい。硬化物の変位及び最大耐荷力は、23℃において上記数値範囲内であることが好ましく、-10℃、23℃、及び50℃の各温度において上記数値範囲内であることがより好ましく、-30℃、23℃、及び50℃の各温度において上記数値範囲内であることがさらに好ましい。硬化物の変位及び最大耐荷力が上記の範囲内であると、コンクリート片及びタイル等のはく落を好適に防止できる。また、硬化物の変位及び最大耐荷力が上記の範囲内であると、従来の土木建築用コーティングと比較して耐荷力に優れるため、荷重がかかった場合でも破れにくく、信頼性の高いコーティングとなる。なお、押し抜き試験は、JSCE-K 533-2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準じて求めることができる。
硬化物は、適用する構造物に対する付着強度、ひび割れ抵抗性、及び塩化物イオン透過性等の耐久性能に優れることが好ましい。硬化物の構造物に対する付着強度の耐久性試験前後における保持率は、50%以上、80%以上、又は90%以上であってよい。硬化物のひび割れ抵抗性の耐久性試験での保持率は、50%以上、80%以上、又は90%以上であってよい。硬化物の塩化物イオン透過性は、負荷前、負荷後において、0.005g/m・日以下、0.002g/m・日以下、又は0.001g/m・日以下であってもよい。なお、これらの性能は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のはく落防止の性能照査に従って、求められるものである。
<コンクリート表面保護としての性能>
硬化物のコンクリート表面保護の性能は、各種の耐久性試験後(標準養生後、促進耐候性試験後、温冷繰り返し試験後、耐アルカリ試験後、及び耐湿試験後)、硬化物の健全性に優れることが好ましく、硬化物に異常がないことがより好ましい。また、各種の耐久性試験後(標準養生後、促進耐候性試験後、温冷繰り返し試験後、及び耐アルカリ試験後)、硬化物とコンクリートとの付着強度は、1.0N/mm以上、1.5N/mm以上、又は2.0N/mm以上であってよい。
硬化物の遮塩性は、5.0×10-3mg/cm・日以下、3.0×10-3mg/cm・日以下、又は1.0×10-3mg/cm・日以下であってよい。硬化物の酸素遮断性は、5.0×10-2mg/cm・日以下、4.0×10-2mg/cm・日以下、又は3.0×10-2mg/cm・日であってよい。硬化物の水蒸気遮断性は、5.0mg/cm・日以下、3.0mg/cm・日以下、又は1.0mg/cm・日以下であってよい。硬化物によるコンクリートの中性化阻止性は、中性化深さ1mm以下であってよい。
硬化物の柔軟性(ひび割れ追従性)は、常温養生後(常温時)の硬化物の伸びが、0.4mm以上、0.8mm以上、又は3mm以上であってよく、常温養生後(低温時)の硬化物の伸びが、0.2mm以上、0.4mm以上、又は3mm以上であってよく、促進耐候性試験後(常温時)の硬化物の伸びは、0.2mm以上、0.4mm以上、又は3mm以上であってよい。なお、前記のコンクリート表面保護の性能は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のコンクリート表面保護の性能照査に従って、求められるものである。
<土木建築構造物>
土木建築構造物の一実施形態は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化物を備える。本実施形態に係る土木建築構造物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を、例えば、塗料(上塗り塗料、中塗り塗料、下塗り塗料)、コーティング、プライマー、トップコート、ペンキ、スプレー、及びワニス等として用いて得られる土木建築構造物であってよい。土木建築構造物は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を、対象となる構造物に塗布して樹脂組成物層を設けて、当該樹脂組成物層を硬化させることによって硬化物層(例えば、硬化膜、コーティング等)を形成することで得られる。
本実施形態に係る土木建築構造物は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化物を備えることから、耐候性に優れ、透明の高強度樹脂でコーティングされるため、構造物の長寿命化、及び意匠性の向上を可能とする。本明細書において、土木建築構造物とは、例えば、橋、高架道路、ダム、トンネル、道路、及び土地造成等の土木分野における構造物、並びにビル、マンション、及び住宅等の建築分野における構造物を意味する。
<コーティング方法(塗装方法)>
コーティング方法の一実施形態は、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いる工程を含む。上記コーティング方法は、例えば、対象となる構造物上に上述の土木建築用コーティング樹脂組成物からなる樹脂組成物層を設け、上記樹脂組成物層を硬化させる工程を含む方法であってよい。上記コーティング方法は、例えば、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を対象となる構造物(例えば、土木建築構造物)に適用させる前に、上記構造物の表面にプライマー、不陸調整材ガスバリア塗料、補強用塗料、及びパテからなる群より選ばれる少なくとも1種を塗布する工程を含んでもよい。また、上記コーティング方法は、補強メッシュ又は短繊維を施工する工程(例えば、上記樹脂組成物をメッシュ又は短繊維に含浸させる工程)を含んでもよい。
上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を、土木建築構造物へ適用する方法(例えば、樹脂組成物層を設ける方法)としては、例えば、塗装及び塗布等を挙げることができる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物は可使時間が十分に長いことから、コテ、ヘラ、ハケ、及びローラー等を用いて手作業で塗装することもできる。手作業で土木建築用コーティング樹脂組成物を塗装することで、屋外において所望の膜厚の塗膜を形成することができる。
上記コーティング方法において、上記樹脂組成物層の厚さは、硬化後の厚さ(硬化物の厚さ)に応じて調整することができ、例えば、0.3~5mm、0.3~3mm、又は0.5~2mmであってよい。上記樹脂組成物層の厚さが上記の範囲内であると、はく落防止効果をより十分なものとすることができる。上述の土木建築用コーティング樹脂組成物を複数回に分けて塗装してもよい。
プライマーは、土木建築構造物の表面にひび割れ等が存在する場合に使用することが好ましい。プライマーは土木建築構造物の表面に存在するひび割れに含浸する。土木建築構造物の表面に、ひび割れに含浸するプライマーを塗布することで、はく落防止効果をより向上させることができる。プライマーとしては、例えば、エポキシ系プライマー、アクリル系プライマー、及びウレタン系プライマー等を挙げることができる。
不陸調整材及びパテは、土木建築構造物の表面に凹凸が存在する場合に使用することが好ましい。不陸調整材及びパテを土木建築構造物の表面に塗装することで、上述の土木建築用コーティング樹脂組成物の塗装がより容易なものとなる。不陸調整材は、コンクリート構造物の表面にプライマーを塗布してから塗装してもよい。
本実施形態に係るコーティング方法においては、例えば、上記の土木建築用コーティング樹脂組成物を塗装した後に、さらに、上塗り塗料を塗装してもよい。上塗り塗料を塗装することで、塗膜の強度をより高くすることができる。上塗り塗料は、例えば、フッ素系トップコート、シリコーン系トップコート、及びアクリルウレタン系トップコート等を挙げることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下、実施例及び比較例を参照して本発明の内容をより詳細に説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
(評価方法)
実施例、及び比較例における評価は以下の方法に従って行った。
<<組成物の特性評価>>
[可使時間]
樹脂組成物(A液(主剤)及びB液(硬化剤組成物))を均一になるまで混合した後、23℃の条件下で可使時間を測定した。なお、可使時間は、均一になるまで混合した樹脂組成物をヘラでスレート板に塗布して塗膜を形成する操作において、樹脂組成物が硬化する前に平滑な塗膜を形成することが可能な最大の時間とした。樹脂組成物の可使時間を下記の基準で樹脂組成物の評価を行った。
A:可使時間が、30分以上
B:可使時間が、20分以上30分未満
C:可使時間が、10分以上20分未満
D:可使時間が、10分未満
[タックフリー時間]
均一になるまで混合した樹脂組成物に対して、JIS A1439(2010)「建築用シーリング材の試験方法」の「5.19 タックフリー試験」に準拠して、23℃、50%相対湿度におけるタックフリー時間を測定して、下記の基準で評価した。
A:タックフリー時間が、6時間未満
B:タックフリー時間が、6時間以上24時間未満
C:タックフリー時間が、24時間以上72時間未満
D:タックフリー時間が、72時間以上
[飽和蒸気濃度が300ppb以下であるポリイソシアネートの残存量の測定]
樹脂組成物の試料に、アセトニトリルを加えた後、試料中のイソシアナト基の量に対して大過剰の二級アミン(例えば、芳香族イソシアネートに対してはジエチルアミン、脂肪族イソシアネートに対しては1-フェニルピペラジン)を添加して、室温で誘導体化を行った。さらにアセトニトリルで希釈し、高速液体クロマトグラフィー装置(日本分光株式会社製、PU-2085 Plus型、検出器:UV、カラム:CAPCELL PAK C18 UG120、溶離液:アセトニトリルと水との混合溶媒)にて定量分析を行った。検出された誘導体の含有量から、飽和蒸気濃度が300ppb以下であるポリイソシアネートの残存量を下記の基準で評価した。
A:残存量が、1質量%未満
B:残存量が、1質量%以上
定量分析の検量線作成には純粋なイソシアネートモノマーから上記誘導化手順と同様の方法で合成した標準品を用いた。なお、プレポリマー製造の仕込み比、イソシアネート濃度測定及び樹脂組成物の配合において、ジイソシアネート化合物の残存量が5質量%以上であることが明らかな場合には、プレポリマー製造の仕込み比や樹脂組成物の配合等から化学量論的に算出することもできる。
[粘度の測定]
均一になるまで混合した樹脂組成物について、東機産業株式会社製のE型粘度計TVE25Hを用いて、JIS-Z8803(液体の粘度測定方法)に従い粘度を測定した。コーンローターは、3°×R9.7を用い、この際のサンプル量は0.2mlとした。測定温度は23℃とした。回転速度は20rpmとした。増粘剤を添加したサンプルのチキソ性を求める場合には、回転速度を5rpm及び50rpmとして粘度を測定し、回転速度を5rpmとした際の粘度を、回転速度を50rpmとした際の粘度で割った値をチキソトロピーインデックス(TI)とした。
[タレ性の測定]
23℃の条件下、垂直に立てたスレート板(厚さ:4mm×横:70mm×縦:150mm)の上部から10~70mmの位置に、縦60×横60mmの範囲で所定の厚み(標準は1mm)となるように、均一になるまで混合した樹脂組成物のサンプルを塗布して、硬化するまでのタレの長さを計測し、下記の基準で評価した。
A:タレの長さが、10mm未満
B:タレの長さが、10mm以上、100mm未満
C:タレの長さが、100mm以上
<<硬化膜の特性評価>>
[硬化膜の作製]
均一になるまで混合した樹脂組成物を、はく離処理された基板に厚さ2mmとなるように塗布した後、23℃、50%RHの標準状態で、7日間養生することによって評価用サンプルである硬化膜を作製した。
[透明性]
上記で得られた硬化膜を目視観察によって評価した。
A:硬化膜が、無色透明である。
B:硬化膜が、わずかに着色している、又はわずかな濁りがある。
C:硬化膜が、着色している又は濁りがある。
[引張試験(各温度での破断強度、破断伸度、及び引張弾性率)]
上記で得られた硬化膜からダンベル状3号形を使用して試験片を打ち抜き、得られた試験片に対して、各温度おける破断強度、破断伸度、及び引張弾性率を、JIS K 7161-1:2014「プラスチック-引張特性の求め方」に準拠して測定した。
[ヘーズの測定]
上記で得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH2000を用いて、JIS K 7136:2000(プラスチック-透明材料のヘーズの求め方)に従いヘーズを測定した。
[全光線透過率の測定]
日本電色工業株式会社製のNDH2000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック-全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に従い全光線透過率を測定した。
[動的粘弾性測定(損失正接の極大値を示す温度)]
上記で得られた硬化膜を短冊状に切り取って試験片とし、TA Instruments社製の固体粘弾性アナライザー RSA-G2を用いて、以下の条件で測定した。
測定モード:引っ張りモード 動的測定
sweep TYPE:温度ステップ3℃/分
Soak時間:0.5分
周波数:1Hz(6.28rad/秒)
ひずみ:0.2~3%(AUTO設定)
温度範囲:-100℃~200℃
雰囲気:窒素気流中
なお、損失正接の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求め、上記極大値を示す温度を、ピーク温度とした。
<<硬化膜の特性評価(促進暴露)>>
[促進暴露試験]
上記で得られた硬化膜から、縦100mm×横50mm×厚さ2mmの短冊状に試験片を採取し、JIS B7753に規定するサンシャインウェザオメーター(スガ試験機株式会社製、ブラックパネル温度:63℃、シャワー18分/120分)を用いて以下の評価を行った。なお、試験時間は、700時間とした。
[促進暴露後の外観]
促進暴露試験後の試験片を目視により観察し、下記の基準で評価した。
A:試験片に、異常のない場合
B:試験片に、僅かな黄変、濁り、又はクレーズが認められる場合
C:試験片に、クラック・変色が認められる場合
[透明性(ひび割れ目視可能性)]
スレート板上に、筆記具を用いて0.1mm幅と0.2mm幅の黒色のラインを描き、その後に、均一になるまで混合した樹脂組成物を、ヘラを用いて厚さ2mmとなるようにラインを描いたスレート板上に塗布し、23℃、50%RHの標準状態で、7日間養生した後、下記の基準で評価した。
A:目視にて0.1mm幅のラインが明確に視認できる場合
B:目視にて0.1mm幅のラインは明確に視認できないが、0.2mmのラインは明確に視認できる場合
C:目視にて0.1mm幅と0.2mm幅のラインが明確に視認できない場合
[破断強度保持率、及び破断伸度保持率の測定]
上記の引張試験と同様の方法で、促進暴露試験前後の試験片を評価し、各々の保持率を求めた。
[色差ΔE*abの測定]
JIS K5600-4-6:1999「塗料一般試験方法の測色(SCE)」に準拠して、分光測色計(KONIKA MINOLTA社製、SPECTROPHTOMETER CM-2500d)を用いて測定される、促進暴露試験前の試験片のLを初期値とし、当該初期値に対する促進暴露試験後の試験片のLを測定し、ΔEabを下記の基準で評価した。
A:ΔE≦3
B:3<ΔE≦15
C:15<ΔE
[光沢保持率の測定]
JIS K5600-4-7:1999「塗料一般試験方法の鏡面光沢度(60°)に準拠し、光沢計(BYK Gardner社製、micro-TRI-gloss)を用いて測定される、促進暴露試験前の試験片の鏡面光沢度を初期値とし、当該初期値に対する促進暴露試験後の試験片の鏡面光沢度を測定し、光沢保持率を下記の基準で評価した。
A:光沢保持率が、80%以上
B:光沢保持率が、60%以上80%未満
C:光沢保持率が、60%未満
<<はく落防止性能の評価>>
[押し抜き試験]
JSCE-K 533-2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準じて試験を行ない、荷重-変位測定における変位10mm以上における最大荷重を押し抜き最大荷重(kN)とした。なお、下地は300mm×300mm×60mmの上蓋式U形側溝蓋を用いた。
(原材料)
実施例で使用した原材料は、次のとおりである。
[ポリイソシアネート]
炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート
H-MDI:ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート(エボニックジャパン社製、VESTANAT H12MDI)
D101:ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、NCO%:19.7質量%)
D201:ポリイソシアネート(旭化成株式会社製、NCO%:15.8質量%)
炭素数13未満の脂肪族ポリイソシアネート
H6XDI:水添キシリレンジイソシアネート(三井化学株式会社製、タケネート600)
IPDI:イソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン社製、VESTANAT IPDI)
芳香族ポリイソシアネート
MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
[ポリオール]
PH-200D:ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:ETERNACOLL PH-200D、水酸基価:56.6mgKOH/g)
PH-100:ポリカーボネートジオール(宇部興産株式会社製、商品名:ETERNACOLL PH-100、水酸基価:106.0mgKOH/g)
PTMG 1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製、水酸基価:115.6mgKOH/g)
PTMG 3000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製、水酸基価:39.5mgKOH/g)
[硬化剤(b)]
芳香族ポリアミン
DETDA:ジエチルトルエンジアミン(三井化学ファイン株式会社製、ETHACURE 100 PLUS)
脂肪族ポリアミン(ポリエーテルポリアミン)
T5000:ポリオキシアルキレントリアミン(三井化学ファイン株式会社製、商品名:Polyeteramine T 5000、アミン価:29.8mgKOH/g)
脂肪族ポリアミン(脂環構造を有するポリアミン)
DMDC:4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)
DC11:イソホロンジアミン変性組成物(三菱ケミカル株式会社製、jERキュアDC11)
脂肪族ポリオール
BD:1,4-ブタンジオール
TMP:トリメチロールプロパン
アルカノールアミン
MEA:モノエタノールアミン
DEA:ジエタノールアミン
シラン化合物
KBM-903:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)
[耐候性付与剤(c)]
(1)ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体
(i)TINUVIN 400:2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10-C16、主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、15% 1-メトキシ-2-プロパノール(BASFジャパン株式会社製)
(2)ヒンダードアミン系誘導体
(i)TINUVIN 292:70-80% ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートと、20-30% メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物(BASFジャパン株式会社製)
(ii)TINUVIN 123:デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル:1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物(BASFジャパン株式会社製)
[揺変性付与剤(d)]
フュームドシリカ(親水性)
Aerosil 200:日本アエロジル株式会社製、比表面積200m/g
Aerosil 300:日本アエロジル株式会社製、比表面積300m/g
フュームドシリカ(疎水性)
Aerosil R974:日本アエロジル株式会社製、比表面積200m/g、ジメチルシリル処理
Aerosil RX200:日本アエロジル株式会社製、比表面積200m/g、トリメチルシリル処理
Aerosil RX300:日本アエロジル株式会社製、比表面積300m/g、トリメチルシリル処理
ポリカルボン酸アマイド誘導体
BYK 405:ポリカルボン酸アマイドの溶液(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体
BYK-R 606:ポリヒドロキシカルボン酸エステル(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
[硬化触媒(e)]
DBTDL:ジラウリン酸スズジブチル(和光純薬工業株式会社製)
[溶剤]
キシレン:和光純薬工業株式会社製
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(三協化学株式会社製)
[プライマー]
エポキシ系プライマー
無溶剤形低粘度エポキシ樹脂系プライマー(主剤:エポキシ樹脂、硬化剤:ポリアミン、混合粘度:500mPa・s(23℃))
(合成例1)
<<末端がイソシアナト基であるプレポリマーP1の合成>>
末端がイソシアナト基であるプレポリマーを次のとおり合成した。
攪拌機、温度計、窒素シール管、及び加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、1000質量部のポリオール(PH-200D)を仕込み、攪拌しながら670質量部のポリイソシアネート(H-MDI)を仕込み、さらに硬化触媒としてDBTDLを、H-MDI及びPH-200Dの合計量を基準として、10ppm加えた。H-MDI及びPH-200Dの仕込み比(モル比)は表1に示すとおりとした。その後、70~80℃で攪拌しながら反応させた。JIS K 1603-1:2007「イソシアネート基含有率の求め方」の手順に従った中和滴定によって決定されるイソシアナト基の含有量が、理論値以下になった時点(約2時間)で反応を終了し、冷却することによってプレポリマーP1を合成した。得られたプレポリマーP1は、滴定によるイソシアナト基の含有量がプレポリマーP1の全量基準で、10.3質量%であった。得られたプレポリマーP1は、常温で透明の液体であり、23℃における粘度が157,000mPa・sであった。
(合成例2~合成例12)
<<末端がイソシアナト基であるプレポリマーP2~P12の合成>>
表1及び表2に示すとおりに原材料及び仕込み比(モル比)を変更したこと以外は、合成例1と同様にして、末端がイソシアナト基であるプレポリマーP2~P8及びその他のプレポリマーP9~P12を合成した。なお、プレポリマーP7は、23℃における粘度86,000mPa・sであり、プレポリマーP11は、23℃における粘度28,000mPa・sであった。各合成例で得られたプレポリマーP1~P12を以下の樹脂組成物の調製において主剤(A液)として用いた。
Figure 0007075813000007
Figure 0007075813000008
(実施例1)
<硬化剤組成物(B液)の調製>
容器に、表3に示すとおりに硬化剤(b)、硬化触媒(e)及び溶剤(f)を仕込み、均一になるまで混練することで硬化剤組成物(B液)を調製した。具体的には、容器に、硬化剤(b)として10.4質量部の1,4-ブタンジオール(BD)、硬化触媒(e)として0.05質量部のジラウリン酸スズジブチル(DBTDL)、及び溶剤(f)として11.1質量部のキシレンを加えて均一になるまで混練し、硬化剤組成物(B液)を調製した。
<樹脂組成物の製造>
表3に示すとおりに、容器に、プレポリマー(a)としてP1を100質量部仕込み、上記で調製した硬化剤組成物(B液)を21.55質量部加えて均一になるまで攪拌混合し、樹脂組成物を製造した。プレポリマー(a)、硬化剤(b)の各成分、及び溶剤(f)の仕込み比(質量比)は表3に示すとおりである。
<樹脂組成物、及び硬化膜の評価>
樹脂組成物、及び硬化膜について、可使時間、タックフリー時間、飽和蒸気濃度300ppb以下のイソシアネートの残存量、硬化膜の透明性、23℃における破断強度、23℃における引張弾性率、及び23℃における破断伸度について評価した。その結果を表3に示す。
[実施例2~19、及び比較例1~4]
表3~表7に示すとおりに原材料及び仕込み比(質量比)を変更したこと以外は実施例1と同様にして、B液を調製した。さらに主剤(A液)として、表3~表7に示すプレポリマー(a)100質量部に対して、上記B液を表3~表7に示す質量部で仕込み、攪拌混合して、樹脂組成物を製造した。樹脂組成物、及び硬化膜について、可使時間、タックフリー時間、飽和蒸気濃度300ppb以下のイソシアネートの残存量、硬化膜の透明性、破断強度、引張弾性率及び破断伸度について評価した。その結果を表3~表7に示す。
Figure 0007075813000009
表3に示した評価結果から分かるように、プレポリマー(a)として、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造を有するプレポリマーを用いた実施例1~5の樹脂組成物は、飽和蒸気濃度が300ppb以下のイソシアネートの残存がないため安全性により優れる。また硬化剤(b)として、比較的反応性の高いポリアミン類を用いた場合でも十分な可使時間が得られた。さらに、実施例1~5の樹脂組成物は、プレポリマーとして、炭素数13未満の脂肪族ポリイソシアネートを用いたプレポリマーを使用した比較例1~4と比べて、十分な可使時間を有するとともに、透明性及び硬化膜の破断強度にも優れ、土木建築用コーティング樹脂組成物して好適である。また、実施例1、実施例4及び実施例5の樹脂組成物は、脂環構造を有する脂肪族ポリイソシアネートを用いたプレポリマーを含み、硬化膜の破断強度と破断伸度に優れ、靭性の高い硬化膜が得られた。
Figure 0007075813000010
表4に示した評価結果から分かるように、プレポリマー(a)として、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネートに由来する構造を有するプレポリマーを用いた実施例6及び7の樹脂組成物は、実施例1~5の樹脂組成物と同様に可使時間に優れるとともに、硬化膜の-10℃における破断強度及び50℃における破断強度にも優れることが確認された。
Figure 0007075813000011
表5に示した評価から分かるように、硬化剤(b)として、脂肪族ポリオールと、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリオール、及びアルカノールアミンのいずれか1種と、を併用した場合、樹脂組成物の可使時間が長く、またタックフリー時間(硬化時間)も十分短いため施工性に優れることが確認された。
Figure 0007075813000012
表6に示した評価から分かるように、硬化剤として芳香族系硬化剤を含んだ場合でも、特定の耐候性付与剤を用いることで、促進暴露試験後でも十分な特性を有する硬化膜となる。そのため、トップコートなどの上塗り層が不要となり、省施工、低コストではく落防止が可能となる。
Figure 0007075813000013
表7に示した評価から、揺変性付与剤(d)として、無機粒子(フュームドシリカ)と、ポリカルボン酸アマイド、又はポリヒドロキシカルボン酸エステルと併用した場合(実施例13~16)の方が、無機粒子のみを用いた場合(実施例17~19)と比較して、硬化膜のヘーズ値が減少することが確認された。揺変性付与剤(d)として、無機粒子と、ポリカルボン酸アマイド又はポリヒドロキシカルボン酸エステルと、を併用することで、保護膜上からコンクリートのひび割れ等の異常の発見が容易となることが確認された。
<<はく落防止対策の評価>>
実施例5の樹脂組成物を用いて、はく落防止の押抜き試験、ひび割れ含浸試験、及びはく落防止の耐久性試験(付着強度、ひび割れ抵抗性、塩化物イオン透過性)を行った。これらの試験は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のはく落防止対策に従って行い、評価した。
(1)はく落防止の押抜き試験
はく落防止の押抜き試験は、上述のはく落防止性能の評価と同様の方法で行った。
(2)はく落防止の耐久性能試験
はく落防止の耐久性能試験は、NEXCO試験方法 第4編 試験法425-2004に従って評価した。
Figure 0007075813000014
表8の結果から、実施例5で調製した樹脂組成物の硬化膜は、コンクリート構造物のはく落防止対策として十分な特性を有することが確認された。すなわち、このような樹脂組成物はコンクリート構造物はく落防止用樹脂組成物として好適であることが確認された。
<<コンクリート表面保護の評価>>
実施例5の樹脂組成物を用いて、硬化膜の外観、コンクリートとの接着性、劣化因子遮断性(遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、中性化阻止性)、及びひびわれ追従性を評価した。これらの性能評価は、構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のコンクリート表面保護の性能照査に従って行った。
Figure 0007075813000015
表9の結果から、実施例5で調製した樹脂組成物の硬化膜は、コンクリート構造物の表面保護膜として十分な特性を有することが確認された。すなわち、このような樹脂組成物はコンクリート構造物保護用樹脂組成物として好適であることが確認された。
(実施例20)
表10に示すとおりに原材料及び仕込み比(質量比)を変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。樹脂組成物、及び硬化膜について、可使時間、タックフリー時間、飽和蒸気濃度300ppb以下のイソシアネートの残存量、透明性、全光線透過率、破断強度、引張弾性率、破断伸度、引張弾性率の温度変化率、色差、損失正接の極大値を示す温度及びはく落防止性能について評価した。その結果を表10に示す。
Figure 0007075813000016
表10に示した評価結果から分かるように、実施例20の樹脂組成物は、十分な可使時間を有し、且つ破断強度に優れる硬化膜を形成できることが確認された。また、表10に示した結果からわかるように、当該樹脂組成物を硬化させることで得られる硬化膜は、硬化膜の引張り特性の温度変化が小さいため、温度が変化する環境においても、破断強度と破断伸度とを高い水準で両立することができる。また、動的粘弾性測定より測定される損失正接の極大値を示す温度が-55℃であることから、-55℃超の温度域において、破断強度及び破断伸度の変化が小さく、寒冷地及び高温地等の環境下においても、靭性(高い破断強度と高い破断伸度との両立)及び耐荷力の信頼性が高いことが確認された。

Claims (18)

  1. イソシアナト基を有するプレポリマー(a)と、硬化剤(b)とを含む、コーティング樹脂組成物であって、
    プレポリマー(a)が、イソシアナト基を2個有する炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート(ただし、イソシアヌレート結合又はアロファネート結合を有するものを除く)由来の構造及びポリオール(ただし、3官能以上のポリヒドロキシ化合物を除く)由来の構造を有し、
    前記コーティング樹脂組成物における脂肪族ポリイソシアネートの含有量が25質量%以下である、土木建築用コーティング樹脂組成物。
  2. 前記脂肪族ポリイソシアネート由来の構造が脂環構造を含む、請求項1記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  3. プレポリマー(a)が、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールに由来する構造を有する、請求項1又は2に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  4. 硬化剤(b)が、芳香族系硬化剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  5. 硬化剤(b)が、直鎖状の脂肪族ポリアミン、分岐状の脂肪族ポリアミン、及び1級アミノ基を1つ以上有する脂環ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族ポリアミンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  6. 硬化剤(b)が、芳香族ポリアミン、芳香族ポリオール、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリオール、アルカノールアミン及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも2種の硬化剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  7. 前記コーティング樹脂組成物が、耐候性付与剤(c)を更に含み、
    前記耐候性付与剤(c)が、ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体、及びヒンダードアミン系誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  8. 前記コーティング樹脂組成物が、揺変性付与剤(d)を更に含み、
    前記揺変性付与剤(d)が、微粉状シリカ、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、ポリカルボン酸アマイド誘導体、及びポリエーテルリン酸エステル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  9. 前記脂肪族ポリイソシアネートは、25℃、大気圧下における飽和蒸気濃度が300ppb以下の化合物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  10. コンクリート構造物はく落防止、コンクリート構造物保護、タイルのはく落防止、建築物の塗膜防水、又はコンクリート床版の床版防水に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
  12. 破断強度が、-10℃において10MPa以上、23℃において5MPa以上、及び50℃において3MPa以上である、請求項11に記載の硬化物。
  13. 破断伸度が、-10℃において100%以上、23℃において100%以上、及び50℃において100%以上である、請求項11又は12に記載の硬化物。
  14. 引張弾性率が、-10℃において5~200MPa、23℃において1~150MPa、及び50℃において1~150MPaである、請求項11~13のいずれか一項に記載の硬化物。
  15. 50℃における引張弾性率に対する、-10℃における引張弾性率の比が0.8~30である、請求項11~14のいずれか一項に記載の硬化物。
  16. 動的粘弾性測定よって測定される損失正接が-10~30℃の温度域に極大値を有しない、請求項11~15のいずれか一項に記載の硬化物。
  17. 請求項1~9のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物の硬化物を備える土木建築構造物。
  18. 請求項1~9のいずれか一項に記載の土木建築用コーティング樹脂組成物を用いる、土木建築構造物のコーティング方法。
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