以下、場合によって図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。各要素の寸法比率は図面に図示された比率に限られるものではない。
本明細書において例示する材料は特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。組成物中の各成分の含有量は、組成物中の各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
[コンクリート構造物]
図1は、コンクリート構造物の一例を示す模式断面図である。コンクリート構造物50は、コンクリートを含む構造体10と、コンクリートを含む構造体10上に設けられた接着層20と、接着層20のコンクリートを含む構造体10側とは反対側に設けられた補強層30とを有している。すなわち、コンクリート構造物50は、コンクリートを含む構造体10と、接着層20と、補強層30とをこの順に有する。接着層20と補強層30とを合わせて、コーティング層40ともいう。図1は、コンクリートを含む構造体10及び接着層20、並びに接着層20及び補強層30が互いに直接接触している例で示しているが、本開示の趣旨を損ねない範囲で、それぞれ間に別の層が設けられていてもよい。
コンクリート構造物50は、はく落防止構造として用いられてもよい。上記はく落防止構造は、コンクリート構造物のはく落防止用、コンクリート構造物の保護用、又はタイルのはく落防止用に好適に用いることができる。タイルのはく落防止用とは、コンクリート構造物50が更にタイルを有する場合に、タイルのはく落を防止するものである。
コンクリートを含む構造体10は、例えば、トンネルの内壁、高速道路橋脚、鉄道橋脚、及び橋梁等であってよい。
(接着層)
接着層20は補強層30を、コンクリートを含む構造体10の表面に接着すると共に、コンクリート構造物におけるはく落防止性能を向上させる層である。接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’の下限値は4.0×108Pa以上であるが、例えば、4.5×108Pa以上、5.0×108Pa以上、5.5×108Pa以上、6.0×108Pa以上、7.0×108Pa以上、8.0×108Pa以上、10.0×108Pa以上、又は20×108Pa以上であってもよい。接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’の下限値が上記範囲内であることで、コンクリート構造物の耐荷重により優れる。接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’の上限値は、例えば、80×108Pa以下、又は50×108Pa以下であってよい。接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’の上限値が上記範囲内であることで、荷重がかかった場合に変形しにくく、破れにくいため、信頼性の高いはく落防止性能を発揮し得ることができる。
接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’は上述の範囲内で調整することができ、例えば、4.0×108〜80×108Pa、又は4.5×108〜50×108Paであってよい。接着層20の50℃における貯蔵弾性率E’は、例えば、後述する接着層20を形成する際の樹脂組成物の成分組成、及び硬化条件等を調製することによって制御することができる。
本明細書における50℃における貯蔵弾性率E’は、動的粘弾性測定によって得られる値を意味する。接着層20の動的粘弾性測定には、コンクリート構造物50から接着層20を採取し、それを試験体として用いることもできるし、コンクリート構造物50の製造に使用する接着層のみの硬化膜を予め作製し、それを試験体として用いることもできる(接着層20の損失正接、厚み、その他の特性試験に供する試験体も同様である。)。接着層20の動的粘弾性、具体的には、本願実施例に記載の方法で測定する。
接着層20の動的粘弾性測定よって測定される損失正接(tanδ)における極大値(ピーク温度)の下限値は、例えば、55℃以上、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上であってよい。接着層20の動的粘弾性測定よって測定される損失正接(tanδ)における極大値(ピーク温度)の上限値は、例えば、100℃以下、90℃以下、又は80℃以下であってよい。接着層20の損失正接(tanδ)における極大値(ピーク温度)は、上述の範囲内で調整することができ、例えば、55〜100℃、又は60〜80℃であってよい。この範囲であれば、50℃で接着層が軟化せず、50℃における押し抜き最大荷重に優れる。
接着層20の厚みの下限値は、例えば、0.05mm以上、0.07mm以上、0.10mm以上、又は0.15mm以上であってよい。接着層20の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コンクリートを含む構造体10と補強層30との接着性を向上させることができ、コンクリート構造物の耐荷性をより向上させることができる。接着層20の厚みの上限値は、例えば、0.50mm以下、0.40mm以下、0.30mm以下、又は0.25mm以下であってよい。接着層20の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工時間を短くすることができる。接着層20の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.05〜0.50mm、又は0.10〜0.30mmであってよい。
接着層20は、プライマーとなる第一の樹脂組成物を、コンクリートを含む構造体10上に塗工し、硬化して形成されることからプライマー層ともいう。接着層20は、例えば、アクリル樹脂の硬化物、ウレタン樹脂の硬化物、及びエポキシ樹脂の硬化物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでもよく、好ましくはエポキシ樹脂の硬化物を含み、より好ましくはエポキシ樹脂の硬化物からなる。接着層20は、上記樹脂がコンクリートを含む構造体10の表面に存在する微細な凹凸やひび割れ部分等に含浸し、その後硬化されることによって、コンクリートを含む構造体10と強く接着することができる。そして、接着層20が上述の樹脂を含むことによって、コンクリートを含む構造体10の表面との接着性により優れたものとなり、コンクリート構造物50のはく落防止性能をより向上し得る。
(補強層)
補強層30はコンクリート構造物50において、コンクリートを含む構造体10から発生するコンクリート片等のはく落を防止する層である。補強層30は、50℃における貯蔵弾性率に対する−30℃における貯蔵弾性率の比が、例えば、1〜20、1〜15、1〜10、又は1〜8であってよい。補強層30の50℃及び−30℃における貯蔵弾性率が上述の関係にあることによって、低温域から高温域に亘って耐荷性の変化が抑制されることから、コンクリート構造物50のはく落防止性能をより信頼性に優れたものとすることができる。補強層30の当該貯蔵弾性率の比は、後述する補強層30を形成する際の樹脂組成物の成分組成、硬化条件、及び厚み等を調整することによって制御することができる。
補強層30の動的粘弾性測定よって測定される損失正接(tanδ)が、−10〜30℃の温度域に極大値を有しなくてもよい。補強層30の動的粘弾性測定よって測定される損失正接が、−30〜50℃の温度域に極大値を有しなくてもよく、且つ−50〜80℃の温度域に極大値を有しなくてもよい。補強層30が、上述の温度域内に損失正接の極大値を有しないことは、上記温度範囲(損失正接の極大値を有しない温度域)における破断強度及び破断伸度の変化が小さいことを意味し、寒冷地及び高温地等の環境下においても補強層30が靭性及び耐荷力の信頼性に優れることを意味する。
本明細書における補強層30の動的粘弾性測定に供する試験体は、例えば、コンクリート構造物50から補強層30を採取し、それを試験体として用いることもできるし、コンクリート構造物50の製造に使用する補強層30の硬化膜を予め作製し、それを試験体として用いることもできる(補強層30のヘーズ、全光線透過率、その他の特性試験に供する試験体も同様である。)。補強層30の動的粘弾性は、具体的には、実施例に記載の方法によって測定できる。損失正接の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求められる。
補強層30は、わずかに着色又はわずかな濁りがあってもよいが、ぎらつきなどの外観を改善する観点から、好ましくは無色透明である。補強層30の外観は、後述する第二の樹脂組成物、又は、第二の樹脂組成物及び溶剤を含む補強層形成剤の組成を調整することによって制御できる。
補強層30のヘーズの上限値は、例えば、30以下、28以下、25以下、23以下、又は20以下であってよい。補強層30のヘーズの上限値が上記範囲内であることで、コーティング層40の透明性をより向上させることができる。補強層30のヘーズの下限値は、特に制限されるものではないが、通常、1以上、又は3以上であってよい。補強層30のヘーズは上述の範囲内で調整することができ、例えば、1〜30、又は3〜20であってよい。
本明細書におけるヘーズは、JIS K 7136:2000「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠して求められる値を意味する。具体的には、当該ヘーズは、濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH4000)を用いて測定できる。
補強層30の全光線透過率の最小値は、80%以上、85%以上、又は90%以上であってよい。補強層30の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層40の透明性をより向上させるができる。
本明細書における全光線透過率は、JIS K 7375:2008「プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方」に準拠して求められる値を意味する。具体的には、当該全光線透過率は濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH4000)を用いて測定できる。
補強層30は、ヘーズが低く且つ全光線透過率が高いことが望ましい。具体的には、例えば、補強層30のヘーズが30以下、且つ補強層30の全光線透過率が80%以上であってよく、また、補強層30のヘーズが20以下、且つ補強層30の全光線透過率が90%以上であってよい。
補強層30は、接着層20上に第二の樹脂組成物を塗工し、硬化して形成されることから樹脂硬化層ともいう。補強層30は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂等を含んでもよく、ポリウレタンウレア樹脂からなってもよい。
補強層30の厚みの下限値は、例えば、0.3mm以上、0.4mm以上、又は0.5mm以上であってよい。補強層30の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コンクリート構造物50の耐荷性をより向上させることができる。補強層30の厚みの上限値は、例えば、5mm以下、4mm以下、3mm以下、又は2mm以下であってよい。補強層30の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工コストを低減し、かつはく落防止性能を向上(例えば、耐荷性を向上)させることができる。補強層30の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.3〜5mm、又は0.5〜2mmであってよい。
上述のコンクリート構造物においては、補強層30に対して、連続繊維で構成されるメッシュ、連続繊維で構成されるシート、及び、短繊維等の補強材を配合することは必ずしも必要ではなく、これらを含まない場合であっても充分なはく落防止性能を発揮し得る。補強層30は、補強メッシュ及び連続繊維で構成されるシートを含まなくてもよい。ここで、連続繊維とは、単繊維から構成される長繊維束を意味する。単繊維としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。
補強層30は、本開示の趣旨を損ねない範囲で上述のような補強材等を含んでもよい。補強層30が粒子及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む場合、上記粒子の平均粒径及び上記繊維の平均長軸長さが10μm以下であってよい。より具体的には、補強層30中に含まれる粒子の平均粒径、及び短繊維の平均長軸長さのいずれもが、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、更に好ましくは0.1μm以下である。粒子が二次粒子を形成し得る材料の場合、上記平均粒径は、一次粒子の平均粒径を意味する。
本明細書における「平均粒径」は、JIS Z 8825:2013「粒子径解析−レーザ回折・散乱法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。本明細書における「平均長軸長さ」は、JIS P 8226:2011「パルプ−光学的自動分析法による繊維長測定方法−第2部:非偏光法」に記載の方法に準拠して測定される値を意味する。
上述の粒子の素材は特に制限されるものではない。粒子の素材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、ガラス、及び石英等の無機材料、並びに、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム、及びシリコーン等の有機素材等が挙げられる。これらの素材の中でも、補強層30のヘーズが低く且つ全光線透過率に優れることから、粒子の素材は、好ましくは、シリカ及びガラスからなる群より選択される少なくとも一種の素材を含み、より好ましくはシリカ又はガラスである。
連続繊維で構成されるメッシュ及び連続繊維で構成されるシートとは、連続繊維を網目状に編んだもの、連続繊維を接着又は接合してシート状に成形させたもののことをいう。短繊維等の補強材とは、繊維の平均長軸長さが30mm以下の繊維のことをいう。これら繊維の素材は特に制限されるものではない。繊維としては、例えば、ビニロン繊維、ガラス繊維、及び炭素繊維等が挙げられる。
補強層30が、平均粒径が10μm以下である粒子、及び平均長軸長さが10μm以下である繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含む場合には、コーティング層40の透明性の低下をより十分に抑制する観点から、上述の所定の粒子及び所定の繊維の合計の含有量が、補強層30の全量を基準として、好ましくは20質量%未満であり、より好ましくは10質量%未満であり、更に好ましくは5質量%未満であり、更により好ましくは3質量%未満である。なお、補強層30は、好ましくは、平均粒径が10μm超である粒子、及び平均長軸長さが10μm超である繊維を含まない。
(コーティング層:接着層及び補強層を含む積層)
コーティング層40のヘーズの上限値は、例えば、40以下、35以下、又は30以下であってよい。コーティング層40のヘーズの上限値が上記範囲内であることで、コーティング層40の透明性が高く、コンクリート構造物50におけるコンクリートを含む構造体10の表面を視認し易く、上記構造体のひび割れ等の劣化の発生を目視にて確認することが容易となる。コーティング層40のヘーズの下限値は、例えば、1以上、又は3以上であってよい。
コーティング層40の全光線透過率の最小値は、例えば、70%以上、75%以上、又は80%以上であってよい。コーティング層40の全光線透過率の最小値が上記範囲内であることで、コーティング層40の透明性が高く、コンクリート構造物50におけるコンクリートを含む構造体10の表面を視認し易く、上記構造体のひび割れ等の劣化の発生を目視にて確認することが容易となる。
コーティング層40は、ヘーズが低く且つ全光線透過率が高いことが望ましい。具体的には、例えば、コーティング層40のヘーズが40以下、且つコーティング層40の全光線透過率が70%以上であってもよく、また、コーティング層40のヘーズが30以下、且つコーティング層40の全光線透過率が80%以上であってもよい。
上述のコーティング層40は、耐候性及び破断強度に優れ、且つ透明性に優れ得ることから、コンクリート構造物50はコンクリートを含む構造体10の外観を損なわずに、劣化因子に対する優れた遮断性(例えば、遮塩性、酸素透過阻止性、水蒸気透過阻止性、及び中性化阻止性)を有し得る。
(コンクリート構造物の性能)
コンクリート構造物50は耐荷性に優れることから、はく落防止性能に優れる。コンクリート構造物50の50℃における押し抜き最大荷重の下限値は、例えば、1.5kN以上、1.6kN以上、1.8kN以上、又は2.0kN以上とすることができる。コンクリート構造物50の50℃における押し抜き最大荷重の上限値は、特に限定されるものではないが、通常3.5kN以下であり、製造コストを低減する観点から、3.2kN以下、又は3.0kN以下であってよい。
コンクリート構造物50の押し抜き試験における変位の下限値は、はく落しようとするコンクリート片(タイル構造物においてはタイル等)の落下を防止しつつ、その変状によって異常を発見しやすくできることから、例えば、10mm以上、30mm以上、50mm以上、又は70mm以上とすることができる。コンクリート構造物50の押し抜き試験における変位の上限値は、過度な変状を抑制する観点から、例えば、100mm以下、90mm以下、又は80mm以下であってよい。
コンクリート構造物50の押し抜き試験における最大荷重及び変位は、23℃において上述の範囲内であることが好ましく、−10℃、23℃、及び50℃の各温度において上述の範囲内であることがより好ましく、−30℃、23℃、及び50℃の各温度において上述の範囲内であることがさらに好ましい。コンクリート構造物50の押し抜き試験における最大荷重及び変位が上述の範囲内であると、コンクリート片(タイル構造物においてはタイル等)のはく落を好適に防止できる。また、コンクリート構造物50の押し抜き試験における最大荷重及び変位が上述の範囲内であると、従来のコンクリート構造物と比較して耐荷重に優れるため、荷重がかかった場合でも破れにくく、信頼性の高いはく落防止性能を発揮し得る。
本明細書における押し抜き試験とは、JSCE−K 533−2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準拠して行われる試験を意味する。
コンクリート構造物50は、接着層20及び補強層30を備えることから、土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法(JSCE−K 533−2013)、及び構造物施工管理要領(平成29年7月、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社)のはく落防止対策に記載される性能を発揮し得る。
コンクリート構造物50は、上述の接着層20及び補強層30に加えて、その他の層を更に有していてもよい。その他の層は、例えば、トップコート層などが挙げられる。コンクリート構造物50は、例えば、コーティング層40のコンクリートを含む構造体10側とは反対側にトップコート層を更に有していてもよい。トップコート層はコンクリート構造物50に対して、例えば、耐候性及び景観性などを付与することができる。
上述のコンクリート構造物50の説明は、コンクリートを含む構造体10を例に説明したが、コンクリートを含む構造体10に代えてタイルを有する構造体を用いた場合にも適用することができる。
[コンクリート構造物の製造方法]
上述のコンクリート構造物50は、例えば、以下の方法によって製造することができる。コンクリート構造物の製造方法の一実施形態は、コンクリートを含む構造体上に第一の樹脂組成物層を設け、硬化させることによって、50℃における貯蔵弾性率E’が4.0×108Pa以上である接着層を形成する工程と、上記接着層上に第二の樹脂組成物層を設け、硬化させることによって補強層を形成する工程と、を有する。
(第一の樹脂組成物層)
上記コンクリート構造物の製造方法において、第一の樹脂組成物層の厚みは、硬化後の接着層の厚みに応じて調整することができる。第一の樹脂組成物層の厚みの下限値は、例えば、0.05mm以上、0.07mm以上、0.10mm以上、又は0.15mm以上であってよい。第一の樹脂組成物層の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コンクリートを含む構造体と補強層との接着性を向上させることができ、コンクリート構造物の耐荷性をより向上させることができる。第一の樹脂組成物層の厚みの上限値は、例えば、0.50mm以下、0.40mm以下、0.30mm以下、又は0.25mm以上であってよい。第一の樹脂組成物層の厚みの上限値が上記範囲内であることで、コンクリートを含む構造体等に対して十分な接着強度を有し、かつ施工時間を短くすることができる。第一の樹脂組成物層の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.05〜0.50mm、又は0.10〜0.30mmであってよい。
第一の樹脂組成物層は、例えば、第一の樹脂組成物、又は、第一の樹脂組成物及び溶剤を含むプライマー溶液を、コンクリートを含む構造体上に塗工することによって形成することができる。塗工は、例えば、コテ、ヘラ、ハケ、ローラー、及びスプレー等を用いる方法等によって行うことができる。手作業でプライマー溶液を塗工する場合、屋外において所望の厚みの塗膜を容易に形成することができる。プライマー溶液の塗工は、複数回に分けて行ってもよい。
第一の樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂等の樹脂と、樹脂に対応する硬化剤とを含むものであってよく、好ましくはエポキシ樹脂と対応する硬化剤とを含む。なお、第一の樹脂組成物はプライマー層を形成するものであるからプライマーともいう。つまり、プライマーとして、例えば、エポキシ系プライマー、アクリル系プライマー、及びウレタン系プライマー等を用いることができる。
エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、及びオレフィン酸化型等のエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、好ましくはグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を含む。グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びアルキルジフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち、接着層の貯蔵弾性率E’を高める観点から、エポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、及びビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方を含み、より好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含み、更に好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂である。エポキシ樹脂は他の官能基を有していてもよい。他の官能基としては、例えば、水酸基などが挙げられる。エポキシ樹脂は、好ましくは液状である。
エポキシ樹脂のエポキシ当量(1グラム当量のエポキシ基を含むエポキシ樹脂のグラム数)は、接着層の貯蔵弾性率E’を調整するために選択することができる。すなわち、接着層の貯蔵弾性率E’を向上させるために、エポキシ当量が小さいエポキシ樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限値は、例えば、150以上、160以上、又は180以上であってよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限値は、例えば、250以下、230以下、又は200以下であってよい。接着層の貯蔵弾性率E’を調整するために、エポキシ当量の異なる複数のエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。例えば、第一の樹脂組成物を構成する樹脂として、エポキシ当量が180〜195であるビスフェノールA型ジグリシジルエーテルと、エポキシ当量が200〜250であるアルキルジフェノール型エポキシ樹脂とを混合して用いてもよい。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合の硬化剤としては、エポキシ基と反応し得る活性水素を有する化合物、又はエポキシ基と反応し得る活性水素を生じ得る化合物などを用いることができる。このような硬化剤としては、例えば、アミン、二塩基酸、及び酸無水物等が挙げられる。エポキシ樹脂の硬化剤は、常温での硬化性に優れることから、好ましくはアミンを含む。アミンは、1級アミン、2級アミン、及び3級アミンのいずれであってもよい。アミンは、またポリアミンであってもよい。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’を高める観点から、好ましくは、芳香族ポリアミン及びその変性物(A)を含む。ここで用いられる芳香族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する芳香族化合物、及び、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物等が挙げられる。当該アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物は、常温での硬化性に優れる観点から、好ましくは1級のアミノ基を有する芳香族化合物を含み、より好ましくは、アミノ基がアルキレン基を介して芳香環に結合している芳香族化合物を含む。
上述のような芳香族ポリアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン、及びパラキシリレンジアミン等が挙げられる。当該芳香族ポリアミンは、好ましくはメタキシリレンジアミンを含み、より好ましくはメタキシリレンジアミンである。当該芳香族ポリアミンは、好ましくは変性物を含み、より好ましくは変性物である。当該変性物は、特に制限されるものでは無いが、例えば、アミンアダクト、変性ポリアミン、及びポリアミドアミン等を用いることができる。アミンアダクトは、ポリアミンにエポキシ樹脂を付加させることによって得られる化合物である。変性ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ポリアミドアミンとしては、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、及びポリアミンとポリカルボン酸との反応物等が挙げられる。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’を高める観点から、好ましくは、脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含む。ここで用いられる脂環式ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する脂環構造を含む化合物、及び、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する脂環構造を含む化合物等が挙げられる。これらのうち、ガラス転移温度(tanδにおける極大値)を高める観点から、脂環式ポリアミンは、好ましくは、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含む。ここで用いられる脂環式ポリアミンとしては、例えば、イソホロンジアミン(IPDA)、及びビス(アミノシクロヘキシル)メタン(H−MDA)等が挙げられる。当該脂環式ポリアミンは、好ましくは変性物を含み、より好ましくは変性物である。当該変性物は、特に制限されないが、例えば、アミンアダクト、変性ポリアミン、及びポリアミドアミン等を用いることができる。アミンアダクトは、ポリアミンにエポキシ樹脂を付加させることによって得られる化合物である。変性ポリアミンとしては、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ポリアミドアミンとしては、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、及びポリアミンとポリカルボン酸との反応物等が挙げられる。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤は、接着性を向上し押し抜き最大荷重を高める観点から、好ましくは、変性脂肪族ポリアミン(C)を含む。変性脂肪族ポリアミンは、脂肪族ポリアミンを変性したものであり、例えば、ポリアミン−エチレンオキシドアダクト、ポリアミン−プロピレンオキシドアダクト、マンニッヒ型硬化剤、及びシアノエチル化ポリアミン等が挙げられる。ここで用いられる脂肪族ポリアミンとしては、例えば、アミノ基を2以上有する脂肪族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する脂肪族化合物等が挙げられる。脂肪族ポリアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、オクタメチレンジアミン(OMD)、及びノナンジアミン(NDA)等の脂肪族ジアミン並びにこれらの構造異性体;エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、及びジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)等のハイアミン並びにこれらの誘導体;ポリオキシアルキルアミン及びこれらの誘導体並びにこれらの構造異性体等が挙げられる。ポリオキシアルキルアミンとしては、ハンツマン社製ジェファーミン、及び三井化学ファイン株式会社製ポリエーテルアミン等が挙げられる。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤は、接着層の柔軟性を向上して押し抜き最大荷重を高める観点から、好ましくはポリアミドアミン(D)を含む。ポリアミドアミンは、例えば、ポリアミンとダイマー酸との反応物、ポリアミンとポリカルボン酸との反応物等が挙げられる。ここで用いられるポリアミンは、好ましくは、上述の芳香族ポリアミン、上述の脂環式ポリアミン、及び上述の脂肪族ポリアミン等を含む。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、硬化剤は、接着性を向上し押し抜き最大荷重を高める観点から、好ましくは脂肪族ポリアミン(E)を含む。ここで用いられるポリアミンは、好ましくは、上述の脂肪族ポリアミンを含む。
上述の硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’をより高くする観点から、好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環式ポリアミン及びその変性物(B)を含む。上述の硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’をより高くすると共に、ガラス転移温度を高める観点から、好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含み、より好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)を含み、且つ脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその誘導体(B−2)を含まない。
上述の硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’を高くすると共に、接着性を高め、押し抜き最大荷重を向上させる観点から、好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含み、より好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、変性脂肪族ポリアミン(C)を含み、且つ脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその誘導体(B−2)を含まない。
上述の硬化剤は、接着層の貯蔵弾性率E’をより高くすると共に、接着性を高め、押し抜き最大荷重を向上させる観点から、好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、脂環式ポリアミン及びその変性物(B)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含む、より好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含み、更に好ましくは、芳香族ポリアミン及びその誘導体(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含み、且つ脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその誘導体(B−2)が含まない。
第一の樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む場合、第一の樹脂組成物中のエポキシ基の数と、硬化剤の有する活性水素の数との当量比(エポキシ基のモル当量/活性水素のモル当量)の下限値は、例えば、0.8以上、又は0.9以上であってよい。当該当量比を上記範囲内とすることによって、接着層によるコンクリートを含む構造体と補強層との接着性をより十分なものとすることができる。第一の樹脂組成物中のエポキシ基の数と、硬化剤の有する活性水素の数との当量比の上限値は、例えば、1.2以下、又は1.1以下であってよい。当該当量比を上記範囲内とすることによって、硬化時に環境水分の影響を受け、接着層の貯蔵弾性率E’が低減することを抑制することができる。
第一の樹脂組成物は、上述の樹脂及び樹脂に対応する硬化剤に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、反応性希釈剤、揺変性付与剤等が挙げられる。
反応性希釈剤としては、例えば、少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物等を用いることができる。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物は、第一の樹脂組成物の粘度を低減し施工性を向上させることができる。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物の分子量は、例えば、500以下、又は250以下であってよい。少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物は、例えば、アルキルジグリシジルエーテル等が挙げられる。アルキルジグリシジルエーテルとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びグリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
第一の樹脂組成物が少なくとも2つのグリシジル基を有する低分子化合物を含む場合、当該低分子化合物の含有量の上限値は、第一の樹脂組成物の全量基準で、例えば、20質量%以下、又は15質量%以下であってよい。当該低分子化合物の含有量の上限値を上記範囲内とすることで、接着層の貯蔵弾性率E’が低下することを抑制することができる。当該低分子化合物の含有量の下限値は、第一の樹脂組成物の全量基準で、例えば、10質量%以上、又は11質量%以上であってよい。当該低分子化合物の含有量の下限値を上記範囲内とすることで、第一の樹脂組成物の施工性をより向上させることができる。
揺変性付与剤は、後述する第二の樹脂組成物に使用可能なものとして記載したものを同様に用いることができる。
第一の樹脂組成物がウレタン樹脂を含む場合、樹脂に対応する硬化剤を含むものであってよく、空気中の水分等の樹脂が反応し硬化する1液硬化型であってもよい。ウレタン樹脂に含まれるポリイソシアネート成分としては、接着層の貯蔵弾性率E’を高くすると共に、接着性を高め、押し抜き最大荷重を向上させる観点から、好ましくは脂肪族ポリイソシアネートを含み、より好ましくは脂環式ポリイソシアネートを含む。
(第二の樹脂組成物層)
上記コンクリート構造物の製造方法において、第二の樹脂組成物層の厚みは、硬化後の補強層の厚みに応じて調整することができる。第二の樹脂組成物層の厚みの下限値は、例えば、0.3mm以上、0.4mm以上、又は0.5mm以上であってよい。第二の樹脂組成物層の厚みの下限値が上記範囲内であることで、コンクリート構造物の耐荷性をより向上させることができる。第二の樹脂組成物層の厚みの上限値は、例えば、5mm以下、4mm以下、3mm以下、又は2mm以上であってよい。第二の樹脂組成物層の厚みの上限値が上記範囲内であることで、施工コストを低減し、かつはく落防止性能を向上(例えば、耐荷性を向上)させることができる。第二の樹脂組成物層の厚みは上述の範囲内で調整することができ、例えば、0.3〜5mm、又は0.5〜2mmであってよい。
第二の樹脂組成物層は、例えば、第二の樹脂組成物、又は、第二の樹脂組成物及び溶剤を含む補強層形成剤を接着層上に塗工することによって形成することができる。塗工の方法等は、第一の樹脂組成物層の塗工の説明を適用することができる。
第二の樹脂組成物としては、コーティング用樹脂組成物等を用いることができる。第二の樹脂組成物は、例えば、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)、及び硬化剤(b)を含有する樹脂組成物等を用いることができる。上記プレポリマー(a)は、ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有するものであってよい。第二の樹脂組成物は、溶剤(c)に溶解させて補強層形成剤として使用することができる。
第二の樹脂組成物は、イソシアナト基を有するプレポリマー(a)(以下、単にプレポリマー(a)ともいう)を含む。プレポリマー(a)は、例えば、ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造を有する。ポリイソシアネート由来の構造は、脂肪族ポリイソシアネート構造を含んでもよい。脂肪族ポリイソシアネート由来の構造は、脂環構造を含んでもよい。脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、例えば、6以上、10以上、又は13以上であってよい。ポリオールは、例えば、脂肪族ポリオールであってよい。プレポリマー(a)は、ポリイソシアネート由来の構造及びポリオール由来の構造の他に、他の成分に由来する構造を有していてもよい。プレポリマー(a)は、イソシアナト基をプレポリマー(a)の末端に有していてもよく、また側鎖に有していてもよい。プレポリマー(a)は、例えば、末端構造として下記一般式(1)に示される構造単位を有する。
上記一般式(1)において、R1は、炭素数が4以上、8以上、又は11以上の官能基を示す。上記官能基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子が含まれていてもよい。上記官能基は、例えば、脂肪族基であってよい。上記脂肪族基の炭素数は、6以上、12以上、又は13以上であってよく、30以下、又は20以下であってよい。上記一般式(1)において、R2は、例えば、下記一般式(2)〜下記一般式(6)で表される構造であってよい。
上記一般式(2)〜上記一般式(6)において、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、アルキル基、アルキレン基、及びアリール基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を示す。R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、互いに同一であっても異なっていてもよい。上記アルキル基及び上記アルキレン基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。上記アリール基は、芳香環上に置換基を有していてもよい。
R3は、炭素数4〜18の官能基、炭素数5〜9の官能基、又は炭素数5〜6の官能基であってよい。R4及びR5は、炭素数2〜20の官能基、炭素数2〜14の官能基、又は炭素数2〜10の官能基であってよい。R6は、炭素数2〜9の官能基、炭素数3〜6の官能基、又は炭素数3〜4の官能基であってよい。R7及びR8は、炭素数2〜20の官能基、炭素数2〜14の官能基、又は炭素数2〜10の官能基であってよい。R9及びR10は、炭素数2〜18の官能基、炭素数2〜10の官能基、又は炭素数4〜6の官能基であってよい。上記一般式(2)〜上記一般式(6)において、p、q、r、s、t、u及びvは、それぞれ独立に1以上の整数であってよい。
プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量は、プレポリマー(a)の全質量を基準として、0.1〜15質量%、1〜12質量%、又は3〜10質量%であってよい。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が0.1質量%以上であると、プレポリマー(a)の数平均分子量及び粘度を適度なものとすることができ、第二の樹脂組成物の粘度上昇に伴う作業性の低下を抑制することできる。さらに、プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が上記範囲内であることによって、プレポリマー(a)を硬化させる際に架橋点を増加させることができ、補強層(例えば、硬化膜)と接着層との接着性を向上させることができる。プレポリマー(a)に占めるイソシアナト基の含有量が15質量%以下であると、補強層中のウレタン結合及び環構造等の剛直成分の割合を適度なものとし、補強層の柔軟性の低下を抑制することができる。
プレポリマー(a)の23℃における粘度は、1,000〜150,000mPa・s、3,000〜100,000mPa・s、又は10,000〜50,000mPa・sであってよい。プレポリマー(a)の23℃における粘度が上記範囲内であると、得られる第二の樹脂組成物の施工性をより向上できる。プレポリマー(a)の粘度は、溶剤及び可塑剤等を添加することで、適宜調整することができる。
本明細書における「粘度」は、JIS Z 8803:2011「液体の粘度測定方法)」における円すい−平板形回転粘度計、単一円筒形回転粘度計で記載の方法に準拠し測定された動粘度を意味する。
プレポリマー(a)の数平均分子量は、500以上であってよく、700〜10,000、又は1,000〜10,000であってよい。プレポリマー(a)の数平均分子量が上記の数値範囲内であると、得られる補強層の機械的強度を向上できる。
本明細書における「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される値を示し、ポリスチレン換算分子量で表す。なお適宜、GPCを用いた測定の前処理としてイソシアナト基の誘導化を行ってもよい。
プレポリマー(a)は、例えば、以下の方法によって調製したものを使用することができる。プレポリマー(a)の調製方法としては、例えば、イソシアナト基を2以上有する脂肪族ポリイソシアネートを含む多官能イソシアネートと、水酸基を2以上有する脂肪族ポリオールと、を50〜130℃で加熱撹拌して反応させることを含む方法、又は、イソシアナト基を2以上有する脂肪族ポリイソシアネートを含むポリイソシアネートと、水酸基を2以上有する脂肪族ポリオールと、イソシアナト基と反応可能な官能基を2以上有する活性水素化合物と、を50〜130℃で加熱撹拌して反応させることを含む方法等が挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法においては、必要に応じて、有機錫化合物、有機ビスマス及びアミン等のウレタン化触媒等を更に用いてもよい。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、ポリイソシアネートに占めるイソシアナト基の含有量は、ポリイソシアネートの全質量を基準として、0.1〜60質量%、5〜50質量%、又は10〜40質量%であってよい。ポリイソシアネートに占めるイソシアナト基の含有量が上記範囲内であることによって、硬化剤との混合によって、優れた硬化性が得られる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は6以上、10以上、13以上、14以上、又は15以上であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の下限値が上記範囲内であると、脂肪族ポリイソシアネートの沸点が高く、且つ飽和蒸気濃度を小さくできる。このため、第二の樹脂組成物中に、プレポリマー(a)の原料であるポリイソシアネートが残存していた場合であっても、第二の樹脂組成物を使用する作業環境への影響を低減することができる。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数は、30以下、又は20以下であってよい。上記脂肪族ポリイソシアネートの炭素数の上限値が上記範囲内であると、得られるプレポリマー(a)の粘度が適度なものとなり、第二の樹脂組成物の粘度が上がり施工し難くなることを抑制できる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される、上記脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくは環構造を有し、より好ましくは2つ以上の環構造を有する。上記環構造は、多環又は縮合環の脂環であってよく、炭素以外の元素を含むヘテロ環であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートが環構造(例えば、脂環構造)を有することで、硬化物の耐候性(低黄変)と破断強度とをより高水準で両立することができる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される、上記脂肪族ポリイソシアネートが有するイソシアナト基の数は、例えば、2〜9個、2〜6個、又は2〜3個であってよく、2個であってもよい。上記脂肪族ポリイソシアネートが有するイソシアナト基の数が上記の数値範囲内であると、ゲル化が十分に抑制されたプレポリマー(a)を製造できる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のイソシアヌレート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアロファネート化合物、ヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のビュレット化合物、及びヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート由来のアダクト化合物等が挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、ポリイソシアネートは、上記脂肪族ポリイソシアネートに加えて、特性を損なわない範囲で、芳香族ポリイソシアネート化合物を含んでもよい。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、上記脂肪族ポリイソシアネート及び上記他のポリイソシアネート化合物は、変性されていてもよく、ウレトジオン結合、イソシアヌレート結合、アロファネート結合、ビュレット結合、ウレトンイミン結合、カルボジイミド結合、ウレタン結合、及びウレア結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を有していてもよく、イソシアヌレート結合を有していることが好ましい。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用されるポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・エステルポリオール、ポリ(メタ)アクリル系ポリオール、及び(水添)ポリブタジエン系ポリオール等が挙げられる。ポリオールは、これらのうち、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びポリカーボネートポリエステルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
上述のポリオールは、塗膜の強度及び得られる補強層の耐候性を向上させる観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、及びポリテトラメチレンエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。上述のポリオールは、得られるプレポリマー(a)の粘度を低減する観点から、ポリオキシアルキレン系ポリオールを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレン系ポリオールは、ポリオキシプロピレンポリオール、又はポリテトラメチレンポリオールを含むことがより好ましく、ポリテトラメチレンポリオールを含むことが特に好ましい。また、上記のポリオール以外にも、後述する硬化剤(b)として用いるポリオールに例示されるポリオールを好適に用いることができる。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL UHシリーズ;UH−50、UH−100、UH−200、及びUH−300等)、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL PHシリーズ;PH−50、PH−100、及びPH−200等)、1,4−シクロヘキサンジメタノールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL;UC−100等)、1,4−シクロヘキサンジメタノールと1,6−ヘキサンジオールと炭酸ジメチルとを共重合させたポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL;UM−90(3/1)、UM−90(1/1)、及びUM−90(1/3)等)、及び旭化成株式会社製デュラノールシリーズ、東ソー株式会社製のニッポランシリーズ、株式会社クラレ製のクラレポリオールCシリーズ、及び株式会社ダイセル製のプラクセルCDシリーズが挙げられる。
上記ポリテトラメチレンポリオールとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製のポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMGシリーズ;PTMG650、PTMG850、PTMG1000、PTMG1300、PTMG1500、PTMG1800、PTMG2000、及びPTMG3000等)、インビスタ社製のTERATHANEシリーズ、BASFジャパン株式会社製のPoly THFシリーズ、保土谷化学工業株式会社製のPTG及びPTG−Lシリーズ、並びにテトラハイドロフランとネオペンチルグリコールとを共重合させたポリテトラメチレンポリオール(旭化成株式会社製、PTXG−1800等)などが挙げられる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用されるポリオールの数平均分子量は、100〜10,000、300〜5,000、又は500〜2,000であってよい。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において使用される、イソシアナト基と反応可能な官能基を2以上有する活性水素化合物は、例えば、芳香族ポリオール類、芳香族ポリアミン類、脂肪族ポリアミン類、アルカノールアミン類、及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。上記活性水素化合物としては、後述する硬化剤(b)として例示した化合物を使用することができる。
上述のプレポリマー(a)の調製方法において、ポリイソシアネートと脂肪族ポリオールとを反応させてプレポリマー(a)を調製する場合、ポリイソシアネートが有するイソシアナト基と、ポリオールが有する水酸基とのモル比(イソシアナト基のモル当量/水酸基のモル当量)は、1.3〜8.0、1.5〜3.5、又は1.7〜3.0であってよい。ポリイソシアネートが有するイソシアナト基と、ポリオールが有する水酸基とのモル比が上記範囲内であることによって、プレポリマーの粘度が適切に制御され、第二の樹脂組成物にした場合の作業性に優れる。
第二の樹脂組成物は硬化剤(b)を含む。硬化剤(b)としては、例えば、プレポリマー(a)が有するイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する化合物、及び潜在硬化剤等を使用できる。潜在硬化剤は、水と反応しプレポリマー(a)のイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を生成する化合物等を使用できる。
硬化剤(b)は芳香族系硬化剤を含有してもよい。芳香族系硬化剤としては、イソシアナト基と反応することが可能な活性水素を有する芳香族化合物を用いることができ、例えば、アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物等を用いることができる。アミノ基及び水酸基を合計で2個以上有する芳香族化合物としては、例えば、芳香族ポリアミン、及び芳香族ポリオール等が挙げられ、特に硬化時間が短いことから、芳香族ポリアミンが好ましい。上記芳香族系硬化剤は2つ以上の化合物の混合物でも構わない。ただし、経済性及び硬化性、並びに可使時間を好適に制御する観点からは、上記芳香族系硬化剤は1種の化合物からなることが好ましい。硬化剤(b)は、例えば、芳香族系硬化剤に加えて、脂肪族ポリアミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリオール、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びシラン化合物等を更に含有してもよい。
硬化剤(b)が芳香族系硬化剤を含有する場合、硬化剤(b)中の上記芳香族系硬化剤の含有量は、硬化剤(b)の全量を基準として、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記芳香族系硬化剤の含有量が100質量%であるとは、硬化剤(b)が上記芳香族系硬化剤からなることを意味する。この場合、上記芳香族系硬化剤は芳香族ポリアミンを含んでもよく、芳香族ポリアミンからなってもよい。硬化剤(b)中における芳香族系硬化剤の含有量の割合が増えると、50℃における引張弾性率及び破断強度をより向上させることができる。また硬化剤(b)中における芳香族系硬化剤の含有量の割合が増えると、コンクリート構造物の高温時(例えば50℃)におけるはく落防止の押抜き性能をより向上させることができる。なお、上記芳香族系硬化剤が2つ以上の化合物の混合物である場合、上記「芳香族系硬化剤の含有量」とは、各芳香族系硬化剤の含有量の総和を意味する。
第二の樹脂組成物における芳香族系硬化剤の含有量は、第二の樹脂組成物の全量を基準として、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。第二の樹脂組成物における芳香族系硬化剤の含有量の割合が増えると、50℃における引張弾性率及び破断強度をより向上させることができる。また第二の樹脂組成物における芳香族系硬化剤の含有量の割合が増えると、高温時(例えば50℃)におけるはく落防止の押抜き性能をより向上させることができる。なお、上記芳香族系硬化剤が2つ以上の化合物の混合物である場合、上記「芳香族系硬化剤の含有量」とは、各芳香族系硬化剤の含有量の総和を意味する。
芳香族ポリアミンは、例えば、アミノ基を2以上有する芳香族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する芳香族化合物等が挙げられる。芳香族ポリアミンとしては、例えば、メチレンジアニリン(MDA)、4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、4,4’−メチレンビス(2−エチル−6−メチルアニリン)(MMEA)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)(MDEA)、4,4’−メチレンビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)(MMIPA)、4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)ジフェニルメタン、フェニレンジアミン、メチレンビス(о−クロロアニリン)(MBOCA)、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)(MMA)、4,4’−メチレンビス(2−クロロ−6−エチルアニリン)(MCEA)、1,2−ビス(2−アミノフェニルチオール)エタン、N,N’−ジアルキル−p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)(MDIPA)、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、アルキレングリコールビス(パラ−アミノベンゾエート)、及びポリアルキレングリコールビス(p−アミノベンゾエート)等のアミノベンゾエート末端化合物等が挙げられる。芳香環を1つ有する芳香族ジアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)が好ましい。
芳香族ポリオールは、例えば、水酸基を2以上有する芳香族化合物等が挙げられる。芳香族ポリオールとしては、例えば、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、及びフェノール樹脂等のフェノール性水酸基を有する芳香族ポリオール;ベンゼンジメタノール、及びベンゼンジエタノール等のアルコール性水酸基を有する芳香族ポリオール;並びに、芳香族骨格を含有したポリカーボネートポリオール、芳香族骨格を含有したポリエステルポリオール、芳香族骨格を含有したポリエーテルポリオール及び芳香族骨格を含有したヒマシ油系変性ポリオール等のポリマー系芳香族ポリオールなどが挙げられる。芳香族ポリオールは、第二の樹脂組成物又は補強層形成剤の硬化時間を短縮できることから、好ましくは、アルコール性水酸基を有する芳香族ポリオール又はポリマー系芳香族ポリオールが好ましい。
硬化剤(b)は、芳香族系硬化剤に加えて、例えば、脂肪族ポリアミン、アルカノールアミン、脂肪族ポリオール、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びシラン化合物等を更に含有してもよい。硬化剤(b)は、十分な可使時間を得る観点から、芳香族ポリアミンと、脂肪族ポリアミン、脂肪族ポリオール、及びシラン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、を含有することがより好ましい。また、硬化剤(b)は、得られる樹脂硬化層の低温での特性(例えば、破断強度等)により優れることから、芳香族ポリアミンと、脂肪族ポリアミン、及び脂肪族ポリオールからなる群より選ばれる少なくとも1種とを含むことが更に好ましい。そのうち、芳香族ポリアミンと、脂肪族ポリアミンとを含むことが特に好ましい。
脂肪族ポリアミンは、例えば、アミノ基を2以上有する脂肪族化合物、又は、アミノ基及びイミノ基をそれぞれ1以上有する脂肪族化合物等が挙げられる。脂肪族ポリアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、オクタメチレンジアミン(OMD)、及びノナンジアミン(NDA)等の脂肪族ジアミン並びにこれらの構造異性体;エチレンジアミン(EDA)、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ジプロプレンジアミン(DPDA)、及びジエチルアミノプロピルアミン(DEAPA)等のハイアミン並びにこれらの誘導体;N−アミノエチルピベラジン(NAEP)、メンセンジアミン(MDA)、イソホロンジアミン(IPDA)、及び1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)等の脂環構造を有するジアミン並びにこれらの構造異性体;ポリオキシアルキルアミン及びこれらの誘導体並びにこれらの構造異性体等が挙げられる。ポリオキシアルキルアミンとしては、ハンツマン社製ジェファーミン、及び三井化学ファイン株式会社製ポリエーテルアミン等が挙げられる。また、潜在硬化剤として、上記脂肪族ポリアミンのケチミン化合物、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、及びアルジミン化合物が挙げられる。
脂肪族ポリアミンは、上述のアミンの中でも、直鎖状の脂肪族ポリアミン、分岐状の脂肪族ポリアミン、及び1級アミノ基を1以上有する脂環ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。換言すれば、脂肪族ポリアミンは、脂環構造を有さない脂肪族ポリアミン及び1級アミンの構造を1以上有する脂肪族ポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を1以上有する脂肪族ポリアミンがより好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を2以上有する脂肪族ポリアミンがさらに好ましく、脂環の構造を有さず、1級アミンの構造を3以上有する脂肪族ポリアミンが特に好ましい。
脂肪族ポリアミンの数平均分子量は、1,000以上又は3,000以上であってよく、また7,000以下又は10,000以下であってよい。脂肪族ポリアミンの数平均分子量が上記範囲内であることで、得られる補強層の低温における特性(例えば、破断強度等)を向上させることができる。脂肪族ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリアミンを含むことが好ましい。ポリオキシアルキレンポリアミンの数平均分子量は、1,000以上又は3,000以上であってよい。数平均分子量が上記範囲内となるポリオキシアルキレンポリアミンを用いることで、得られる補強層の低温における特性(例えば、破断強度等)を更に向上させることができる。
アルカノールアミンとしては、例えば、アルコール性水酸基、及びアミノ基を有する化合物、並びに、アルコール性水酸基、アミノ基及びイミノ基を有する化合物等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、及びN−(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミン等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、比較的低分子量の脂肪族ポリオール、比較的高分子量の脂肪族ポリオールを用いることができる。比較的低分子量の脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,3−ブタンジオール(1,3−BD)、及び1,4−ブタンジオール(1,4−BD)等の2価アルコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、及び1,2,5−ヘキサントリオール等の3価アルコール、ペンタエリスリトール、グルコース、シュークロース、及びソルビトール等の4価以上の多価アルコールが挙げられる。比較的高分子量の脂肪族ポリオールとしては、例えば、プレポリマー(a)の調製に用いるポリオールとして例示した化合物を好適に用いることができる。
シラン化合物としては、加水分解等されることによって、プレポリマー(a)が有するイソシアナト基と反応することが可能な活性水素を生成する化合物である。シラン化合物としては、例えば、アルコキシシラン誘導体、及びシラン系カップリング剤等が挙げられる。シラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等の炭化水素結合アルコキシシラン類;ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン等の炭化水素結合イソプロペノキシシラン類;3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメイルメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−(アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等の官能基を有するアルコキシシラン類などが挙げられる。
シラン化合物としては、上述の化合物の中でも、プレポリマー(a)との反応性の制御が容易であることから、アミノ基を有するシラン化合物が好ましい。アミノ基を有するシラン化合物としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−(アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、及びN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等がより好ましい。
シラン化合物の分子量は、例えば、500以下又は400以下であってよい。シラン化合物は、上述のシラン化合物及びこれらのシラン系カップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種の部分加水分解縮合物であってもよい。部分加水分解縮合物の分子量は、200〜3,000であってよい。
第二の樹脂組成物において、硬化剤(b)の含有量は、プレポリマー(a)のイソシアナト基のモル当量と、硬化剤(b)の反応可能な活性水素のモル当量との比(R値:例えば、NCO基/OH基、又はNCO基/NH基のモル比)が所定の範囲とするように調整することができる。上記R値は、例えば、0.5〜2.0、0.8〜1.2、又は0.9〜1.1であってよい。第二の樹脂組成物における硬化剤(b)の含有量が上記範囲内であると、補強層における樹脂の数平均分子量が増大し、補強層の破断伸度を向上させることができる。また、第二の樹脂組成物における硬化剤(b)の含有量が上記範囲内であると、補強層の黄変を抑制することができ、補強層の耐候性をより向上できる。
第二の樹脂組成物は、溶剤(c)に溶解させて補強層形成剤として使用することができる。溶剤(c)としては、例えば、芳香族化合物及び脂肪族化合物等を用いることができる。脂肪族化合物としては、例えば、直鎖構造、環構造、分岐構造、エステル構造、ケトン構造、及びエーテル構造から選ばれる少なくとも1種の分子構造を有する脂肪族化合物を含有してもよい。脂肪族化合物としては、より具体的には、直鎖構造を有する脂肪族化合物、環構造を有する脂肪族化合物、分岐構造を有する脂肪族化合物、エステル構造を有する脂肪族化合物、ケトン構造を有する脂肪族化合物、及びエーテル構造を有する脂肪族化合物等を挙げることができる。
芳香族化合物としては、例えば、炭素数6〜12の芳香族化合物及びその混合物を用いることできる。芳香族化合物は、例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、プロピルベンゼン類、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジメチルエチルベンゼン、及びジエチルベンゼンなどが挙げられる。芳香族化合物が混合物の場合、炭素数6〜12の芳香族ナフサ(例えば、三協化学株式会社製のソルベント#100及びソルベント#150、丸善石油化学株式会社製のスワゾール1000、スワゾール1500及びスワゾール1800、出光興産株式会社製のイプゾール100及びイプゾール150、JXTGエネルギー株式会社製のT−SOL 100FLUID及びT−SOL 150FLUID等)、及び、炭素数6〜12の芳香族化合物と炭素数6〜12の脂肪族化合物との混合物であるミネラルスピリット(例えば、JXTGエネルギー株式会社製のミネラルスピリットA、Aソルベント)、ターペン(スズカファイン株式会社製のLSターペン)等を用いることができる。
環構造を有する脂肪族化合物としては、例えば、炭素数7〜15のナフテン系炭化水素及びその混合物(例えば、丸善石油化学株式会社製のスワクリーン150、及び大商化成株式会社製のダイカエコシンナー等)等を用いることができる。直鎖構造を有する脂肪族化合物としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、及びペンタデカン等が挙げられる。分岐構造を有する脂肪族化合物としては、例えば、2,4−ジメチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3,4−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、3−エチルオクタン、及びジメチルオクタン類等が挙げられる。脂肪族化合物の混合物としては、例えば、炭素数7〜15のイソパラフィン系炭化水素及びその混合物(例えば、出光興産株式会社製のIPソルベント、IPクリーン、及び日油株式会社製のNAソルベント、JXTGエネルギー株式会社製のナフテゾール及びアイソゾール等)、テレビン油(ヤスハラケミカル株式会社製のテレビン油、大阪塗料工業株式会社製のテレビン油、及び荒川化学工業製のテレビン油等)等を用いることができる。
溶剤(c)のアニリン点は、好ましくは85℃以下であり、より好ましくは60℃以下であり、更に好ましくは15℃以下である。溶剤(c)のアニリン点が上記範囲内であることによって、硬化剤の溶解性を向上させることができ、補強層形成剤の保存安定性を向上させることができる。溶剤(c)のアニリン点が上記範囲内であることによって、特に低温(例えば、5℃)における補強層形成剤の保存安定性に優れる。溶剤(c)のアニリン点が上記範囲内である場合、補強層形成剤が無機粒子を含む場合であっても、当該無機粒子の分散性に優れたものとすることができる。すなわち、補強層形成剤の施工性(特に、ダレ防止性)を向上させるために、例えば、後述する微粉状シリカ等の含有量を増やそうとする場合には、アニリン点が上記範囲内となる溶剤を好適に用いることができる。換言すれば、アニリン点が上記範囲内となる溶媒を用いることによって、補強層形成剤の施工性を向上させることができる。溶剤(c)は混合物であってもよい。混合物の場合、混合物の状態でのアニリン点が上記範囲内になるものを好適に用いることができる。
本明細書における「アニリン点」は、JIS K 2256:2013「石油製品−アニリン点及び混合アニリン点の求め方」に記載の方法にしたがって求められる数値を意味する。
溶剤(c)の含有量は、補強層形成剤の全量を基準として、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%である。溶剤(c)の含有量は、補強層形成剤の全量を基準として、例えば、50質量%以下、40質量%以下、又は30質量%以下であってよい。溶剤(c)の含有量が上記範囲内であると、補強層形成剤の粘度を適度なものとすることができ、第二の樹脂組成物層を接着層上に塗布する際の作業性に優れる。また溶剤(c)の含有量が上記範囲内であると、補強層形成剤の塗膜中に発生した気泡を消泡させることが容易となり、得られる補強層の欠陥の発生を十分に抑制することができる。
第二の樹脂組成物は、プレポリマー(a)、及び硬化剤(b)の他に、例えば、耐候性付与剤(d)、揺変性付与剤(e)、硬化触媒(f)及びその他添加剤(g)等を更に含んでもよい。また、補強層形成剤は、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の他に、例えば、耐候性付与剤(d)、揺変性付与剤(e)、硬化触媒(f)及びその他添加剤(g)等を更に含んでもよい。
耐候性付与剤(d)は、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体及びヒンダードアミン系誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。硬化剤(b)として芳香族ポリアミンを用いた場合、耐候性付与剤(d)を組み合わせて用いることで、補強層の引張強さと、耐候性とをより高水準で両立できる。
ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体は、太陽光中の紫外線を吸収することで、硬化物の耐候性を向上させることができる。ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体は、一般的なベンゾフェノン型紫外線吸収剤、及びベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤等に比べて、硬化物からブリードアウトし難い性質があるため、長期間に渡って補強層の耐候性を維持することができる。
ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体としては、例えば、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン及び2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシロキシ−プロピル)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンの混合物(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN400)、2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN479)、及びトリス[2,4,6−[2−{4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル}]−1,3,5−トリアジン(BASFジャパン株式会社製、商品名:TINUVIN777)等が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体としては、分散性に優れることから、TINUVIN400が好ましい。
ヒンダードアミン系誘導体は、4位に置換基を有する、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン誘導体である。4位の置換基としては、例えば、アルキル基、エステル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びその他種々の置換基が挙げられる。また、N位にはアルキル基、及びオキシラジカル等が置換していてもよい。特にヒドロキシフェニルトリアジン誘導体との組み合わせて用いることで、補強層の耐候性がより向上することから、4位の置換基としてエステル基、N位の置換基としてアルキル基であるものが好ましい。
ヒンダードアミン系誘導体としては、例えば、TINUVIN292、TINUVIN123、TINUVIN144、TINUVIN765、チマソルブ119FL、チマソルブ2020FDL、チマソルブ944、及びチマソルブ622LD等(以上いずれもBASFジャパン株式会社製、商品名)、スミソルブ577等(住友化学株式会社製、商品名)、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、アデカスタブLA−503、及びアデカスタブLA−601等(以上いずれも株式会社ADEKA製、商品名)、並びに、サノールLS−2626、サノールLS−744、及びサノールLS−440等(以上いずれも三共株式会社製、商品名)などが挙げられる。ヒンダードアミン系誘導体としては、特に、TINUVIN292が好ましい。
耐候性付与剤(d)の含有量は、プレポリマー(a)100質量部に対して、0.01〜10質量部、0.05〜1質量部であってよい。耐候性付与剤(d)の含有量の下限値を上記範囲内とすることによって、補強層の耐候性をより向上させることができる。また耐候性付与剤(d)の含有量の上限値を上記範囲内とすることによって、補強層から耐候性付与剤がブリードアウトすることを抑制でき、耐候性付与剤(d)による補強層の変色を抑制できる。また、耐候性付与剤(d)の含有量を上記範囲内とすることによって、補強層に対する耐候性付与の効果と、経済性とをより望ましいバランスとすることができる。
揺変性付与剤(e)は、例えば、微粉状シリカ、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体、ポリカルボン酸アマイド誘導体、及びポリエーテルリン酸エステル誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでもよい。補強層形成剤が揺変性付与剤(e)を更に含有することによって、斜面及び垂直面へ補強層形成剤を塗布する場合のタレを抑制することができる。
揺変性付与剤(e)は、親水性微粉状シリカと、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体及びポリカルボン酸アマイド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用すること、又は、疎水性微粉状シリカと、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体及びポリカルボン酸アマイド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種とを組み合わせて使用することが好ましい。揺変性付与剤(e)は、上記のような組み合わせで使用することによって、微粉状シリカの添加量を低減することができ、補強層の透明性を向上させることができる。
微粉状シリカのBET法で求められる比表面積は、例えば、130〜300m2/g、200〜300m2/g、又は180〜250m2/gであってよい。微粉状シリカの比表面積が上記範囲内であると、微粉状シリカの補強層形成剤中における分散性に優れることから、補強層形成剤に揺変性を十分に付与することができる。
微粉状シリカは、例えば、親水性微粉状シリカであってもよい。親水性微粉状シリカは、特に、ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体及びポリカルボン酸アマイド誘導体等と組み合わせて使用することでき、微粉状シリカの添加量を低減することができる。微粉状シリカは、疎水化処理されたものであってもよい。疎水化処理は、好ましくはアルキルシリル化合物によって行われ、より好ましくは、ジメチルシリル又はトリメチルシリルによって行われる。
微粉状シリカの含有量は、補強層形成剤の垂直面への作業性に優れる(ダレにくい)観点から、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の合計量100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましい。微粉状シリカの含有量は、上記に加えて、厚く施工した場合も作業性に優れる観点から、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の合計量100質量部に対して、1.9質量部以上がより好ましくい。微粉状シリカの含有量は、更に低粘度での作業性にも優れる観点から、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の合計量100質量部に対して、2.5質量部以上が特に好ましい。微粉状シリカの含有量は、プレポリマー(a)、硬化剤(b)及び溶剤(c)の合計量100質量部に対して、例えば、20質量部以下、10質量部以下、又は5質量部以下であってよい。微粉状シリカの添加量の上限値を上記範囲内とすることで、補強層の透明性を向上させることができる。アニリン点が低い溶剤を適宜選択することによって、微粉状シリカの含有量に関わらず、微粉状シリカを分散させることができ、補強層形成剤を容易に製造することができる。
ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体としては、例えば、BYK−R 606(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリカルボン酸アマイド誘導体としては、例えば、BYK−405、及びBYK−R 605等(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名)等を使用することができる。ポリエーテルリン酸エステル誘導体としては、例えば、ディスパロン3500(楠本化成株式会社製、商品名)等を使用することができる。
硬化触媒(f)としては、例えば、有機金属化合物、及びアミン類等が挙げられる。硬化触媒(f)は、架橋速度に優れる有機錫化合物を含むことが好ましい。有機錫化合物は、例えば、スタナスオクテート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、及びジオクチル錫ジバーサテート等が挙げられる。これらの有機鉛化合物の中でも、架橋速度に優れ、毒性及び揮発性の比較的低い液体であることから、ジブチル錫ジラウレートが特に好ましい。硬化触媒(f)の配合量は、架橋速度に優れタックフリー時間をより短くすることができ、補強層の破断強度に優れる等の点から、プレポリマー(a)100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
その他添加剤(g)としては、例えば、消泡剤、湿潤分散剤、界面活性剤、顔料、染料、無機充填剤、酸化防止剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、滑剤、防蟻剤、及び防かび剤等の添加剤を使用することができる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フッ素変性シリコーン系消泡剤、アクリルポリマー系消泡剤、及びビニルエーテルポリマー系消泡剤等を用いることができる。消泡剤の含有量は、プレポリマー(a)100質量部に対して、例えば、0.05〜5質量部であってよく、0.1〜3質量部であってもよい。消泡剤の含有量が上記範囲内であると、プレポリマー(a)の反応によって生じ得る発泡をより十分に抑制しうることから、得られる補強層の欠陥を十分に抑制することができ、補強層の外観及び引張強さ等を向上させることができる。
上述の第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は、硬化時に天候等の外的要因を受けにくいことから、A液(主剤組成物)と、B液(硬化剤組成物)と、を含んで構成される二液混合型の第二の樹脂組成物又は補強層形成剤であってもよい。二液混合型の場合、A液はプレポリマー(a)を含み、B液は硬化剤(b)を含む。二液混合型の場合、A液とB液とのいずれか一方が溶剤(c)を含んでいてもよく、またA液及びB液の両方が溶剤(c)を含んでいてもよい。上述の耐候性付与剤(d)、揺変性付与剤(e)、硬化触媒(f)及びその他添加剤(g)は、A液及びB液のいずれに配合してもよいが、B液に配合することが好ましい。上述の第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は、A液及びB液以外の第三の成分を含んで構成されてもよい。
第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は、混合操作が不要であり施工性を向上できることから、一液混合型の第二の樹脂組成物又は補強層形成剤であってもよい。一液混合型の場合、硬化剤(b)は、潜在硬化剤(例えば、オキサゾリジン化合物、ビスオキサゾリジン化合物、ケチミン化合物、アルジミン化合物、及びシラン化合物等)を含む。
上述の第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は、プレポリマー(a)の原料である脂肪族ポリイソシアネートが含まれ得る。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤が脂肪族ポリイソシアネートを含有する場合、当該脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、第二の樹脂組成物の全量又は補強層形成剤全量を基準として、25質量%以下、10質量%以下、又は7質量%以下であってよい。当該脂肪族ポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であると、安全性を向上することができ、第二の樹脂組成物又は補強層形成剤の塗膜の破断強度にも優れる。
第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は、トンネル内等の閉鎖された場所での使用も想定される。そのため、第二の樹脂組成物及び補強層形成剤には作業時の安全性の観点から、揮発性の高い脂肪族系ジイソシアネートの使用を抑制することが望ましい。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤に含有され得る脂肪族ポリイソシアネートは、25℃、大気圧下における飽和蒸気濃度が、300ppb以下、100ppb以下、又は50ppb以下であることが好ましい。このような脂肪族ポリイソシアネートを原料とするプレポリマー(a)の使用によって、第二の樹脂組成物及び補強層形成剤の安全性をより向上させることができる。
第二の樹脂組成物及び補強層形成剤の粘度は、例えば、0.1〜100Pa・s、又は1〜50Pa・sであってよい。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤の粘度が上記範囲内であると、コテ及びヘラ等での施工が容易なものとなる。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤の粘度は、例えば、プレポリマー(a)の濃度、溶剤(c)の含有量等によって調整することができる。
第二の樹脂組成物及び補強層形成剤のチキソトロピーインデックス(TI)(5rpmの粘度/50rpmの粘度)は、例えば、1.0以上、1.1以上、又は1.2以上であってよい。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤のTIが上記範囲内であると、第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は揺変性(チキソ性)に優れ、プライマー層上に第二の樹脂組成物及び補強層形成剤を塗布する際の液ダレの発生を抑制できる。
本明細書における「チキソトロピーインデックス(TI)」は、以下の動的粘度測定によって測定される粘度を用いて算出される値を意味する。すなわち、第二の樹脂組成物又は補強層形成剤を均一になるまで混合した後、東機産業株式会社製のE型粘度計TVE25Hを用いて、JIS Z 8803:2001「液体の粘度測定方法:円すい−平板形回転粘度計」に記載の方法にしたがって測定を行う。コーンローターは、3°×R9.7を用い、この際のサンプル量は0.2mLとし、測定温度は23℃とする。測定は、回転速度を5rpm及び50rpmとして粘度測定を行い、回転速度を5rpmとした際の粘度を、回転速度を50rpmとした際の粘度で割って、チキソトロピーインデックスを算出することができる。
上述の第二の樹脂組成物及び補強層形成剤は例えば以下のようにして調製することができる。第二の樹脂組成物及び補強層形成剤(A液(主剤組成物)及びB液(硬化剤組成物)の二液混合型第二の樹脂組成物又は補強層形成剤)は、上述の各成分を、A液及びB液を調製するためにそれぞれ混合器によって混合することで調製することができる。通常、A液及びB液の混合は第二の樹脂組成物及び補強層形成剤を塗工する直前に行う。混合器としては、例えば、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、及びプラネタリーミキサー等を用いることができる。
上述のコンクリート構造物の製造方法は、上述の工程に加えて、他の工程を更に有してもよい。他の工程としては、例えば、第一の樹脂組成物の塗工の前にコンクリートを含む構造体の表面を研磨する工程、及び補強層を形成した後に、さらに、上塗り塗料の層を設け、その他の層を形成する工程等が挙げられる。上塗り塗料は、例えば、フッ素系トップコート剤、シリコーン系トップコート剤、及びアクリルウレタン系トップコート剤等を挙げることができる。
以上、幾つかの実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。また、上述した実施形態についての説明内容は、互いに適用することができる。
以下、実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明する。ただし、本開示は、下記の実施例に限定されるものではない。
[接着層の合成と評価]
<接着層を形成するためのプライマー(第一の樹脂組成物)>
プライマーは以下のプライマーE1〜E7を用いた。
〔プライマーE1〕
以下の主剤と硬化剤とを100対50(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:1,230mPa・s)
硬化剤:芳香族ポリアミン及びその変性物(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含む混合物(粘度:220mPa・s)
〔プライマーE2〕
以下の主剤と硬化剤とを100対50(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:760mPa・s)
硬化剤:芳香族ポリアミン及びその変性物(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミン及びその変性物(B−2)、変性脂肪族ポリアミン(C)、ポリアミドアミン(D)、並びに脂肪族ポリアミン(E)を含む混合物(粘度:180mPa・s)
〔プライマーE3〕
以下の主剤と硬化剤とを100対50(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:760mPa・s)
硬化剤:芳香族ポリアミン及びその変性物(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミンおよびその変性物(B−1)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有しない脂環式ポリアミンおよびその変性物(B−2)、変性脂肪族ポリアミン(C)、並びに脂肪族ポリアミン(E)を含む混合物(粘度:300mPa・s)
〔プライマーE4〕
以下の主剤と硬化剤とを100対40(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:500mPa・s)
硬化剤:芳香族ポリアミン及びその変性物(A)、脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、変性脂肪族ポリアミン(C)、ポリアミドアミン(D)、及び脂肪族ポリアミン(E)を含む混合物(粘度:300mPa・s)
〔プライマーE5〕
ウレタン系プライマー:1液型ウレタン樹脂、酢酸エチル、及び酢酸ブチル(粘度10mPa・s)
〔プライマーE6〕
以下の主剤と硬化剤とを100対50(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:550mPa・s)
硬化剤:芳香族ポリアミン及びその変性物(A)、並びに脂肪族ポリアミン(E)を含む混合物(粘度:500mPa・s)
〔プライマーE7〕
以下の主剤と硬化剤とを100対50(質量比)となるように混合されたプライマーを用いた。
主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするエポキシ樹脂(粘度:600mPa・s)
硬化剤:脂環構造に直接結合したアミノ基を有する脂環式ポリアミン及びその変性物(B−1)、並びに変性脂肪族ポリアミン(C)を含む混合物(粘度:500mPa・s)
<接着層としての硬化膜の評価>
上述のプライマーE1〜E7のそれぞれを用いて、硬化膜を形成し、接着層としての性能を評価した。具体的には、上述のプライマーを基材上に塗布し、温度:23℃、及び湿度:50%の環境下で7日間養生させることによって、厚さ:0.15mmの硬化膜を形成した。当該硬化膜について、接着層としての性能評価を行った。
[貯蔵弾性率E’及び損失正接(tanδ)の極大値の測定]
上記で得られた硬化膜を短冊状に切り取って試験片とし、TA Instruments社製の固体粘弾性アナライザー RSA−G2を用いて、動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率E’及び損失正接(tanδ)の極大値を決定した。動的粘弾性測定の条件は以下に示すものとした。結果を表1に示す。
〔動的粘弾性測定の条件〕
測定モード:引っ張りモード 動的測定
sweep TYPE:温度ステップ3℃/分
Soak時間:0.5分
周波数:1Hz(6.28rad/秒)
ひずみ:0.2〜3%(AUTO設定)
温度範囲:−100℃〜200℃
雰囲気:窒素気流中
なお、損失正接(tanδ)の極大値は、動的粘弾性測定によって測定される損失弾性率(E’’)と貯蔵弾性率(E’)との比(損失弾性率の値を貯蔵弾性率の値で割った値:E’’/E’)の温度依存性を示すグラフから求められる値であり、当該グラフにおいて上記極大値を示す温度をピーク温度とした。
[補強層の調製と評価]
<A液(主剤組成物)の調製>
末端がイソシアナト基であるプレポリマーを次のとおり合成した。撹拌機、温度計、窒素シール管、及び加熱・冷却装置付き反応容器に、窒素ガスを流しながら、24.5質量部のポリイソシアネート(H12−MDI)と、4.4質量部の溶剤(ソルベント#100)とを測り取った。次に、容器内を攪拌しながら、46.2質量部のポリオール(PTMG1000)を測り取り、加えた。ここに、硬化触媒として、DBTDLを、H12−MDI及びPTMG1000の合計量を基準として、10ppmとなるように更に加えた。その後、70〜80℃で撹拌しながら反応させた。JIS K 1603−1:2007「イソシアネート基含有率の求め方」の手順に従った中和滴定によって決定されるイソシアナト基の含有量が、理論値以下になった時点(約2時間)で反応を終了し、冷却することによってプレポリマーを合成した。得られたプレポリマーは、滴定によって決定されるイソシアナト基の含有量が、プレポリマーの全量基準で5.1質量%であった。得られたプレポリマーは、常温で透明の液体であり、23℃における粘度が32,000mPa・sであった。
<B液(硬化剤組成物)の調製>
容器に、硬化剤として7.2質量部の芳香族アミン(ジエチルトルエンジアミン:DETDA)及び12.8質量部の溶剤(ソルベント#100)とを測り取り、均一になるまで混練した。次に、耐候性付与剤、揺変性付与剤、及びその他添加剤を加え、更に撹拌混合することによって、硬化剤組成物(B液)を調製した。
<補強層形成剤(第二の樹脂組成物及び溶剤)の調製>
容器に、上記A液及び上記B液を加えて均一になるまで撹拌混合することによって、補強層形成剤を製造した。各原材料の配合比(質量比)を表2に示す。
<補強層としての硬化膜の評価>
上述のとおり調製した補強層形成剤を基材上に塗布し、温度:23℃、及び湿度:50%の環境下で7日間養生させることによって、厚さ:1.6mmの硬化膜を形成した。当該硬化膜について、補強層としての性能評価を行った。
[貯蔵弾性率の測定]
上記で得られた硬化膜を短冊状に切り取って試験片とし、TA Instruments社製の固体粘弾性アナライザー RSA−G2を用いて、動的粘弾性測定を行い、貯蔵弾性率E’を決定した。動的粘弾性測定の条件は、上記「接着層としての硬化膜の評価」に記載したものと同じ条件とした。結果を表2に示す。
[透明性の評価1:ヘーズの測定]
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用いて、JIS K 7136:2000(プラスチック−透明材料のヘーズの求め方)に準拠したヘーズを測定した。結果を表2に示す。
[透明性の評価2:全光線透過率の測定]
上述のとおり得られた硬化膜に対して、日本電色工業株式会社製のNDH4000を用い、JIS K 7375:2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率の求め方)に準拠して全光線透過率を測定した。結果を表2に示す。
(原材料)
表2中に記載の原材料は、次のとおりである。
[ポリイソシアネート]
H12−MDI:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアナート(エボニックジャパン社製、VESTANAT H12MDI、炭素数13以上の脂肪族ポリイソシアネート)
[ポリオール]
PTMG1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(三菱ケミカル株式会社製、水酸基価:115.6mgKOH/g)
[硬化剤(b)]
芳香族ポリアミン
DETDA:ジエチルトルエンジアミン(三井化学ファイン株式会社製、ETHACURE 100 PLUS)
[溶剤(c)]
ソルベント#100:芳香香族炭化水素類、三協化学株式会社製、アニリン点:13℃)
[耐候性付与剤(d)]
ヒドロキシフェニルトリアジン誘導体
TINUVIN 400:2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシラン[(C10−C16、主としてC12−C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、15% 1−メトキシ−2−プロパノール(BASFジャパン株式会社製)
ヒンダードアミン誘導体
TINUVIN 292:70−80% ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートと、20−30% メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物(BASFジャパン株式会社製)
[揺変性付与剤(e)]
フュームドシリカ(親水性)
Aerosil 200:日本アエロジル株式会社製、比表面積200m2/g
ポリヒドロキシカルボン酸エステル誘導体
BYK−R 606:ポリヒドロキシカルボン酸エステル(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
[その他の添加剤(g)]
分散剤
DISPERBYK 111:酸基を有するコポリマー(リン酸ポリエステル)(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
(実施例1)
プライマーE1、及び上述のとおり調製した補強層形成剤を用いて、コンクリート構造物を製造した。具体的には、コンクリート製の基材(コンクリートを含む構造体)上にプライマーE1を塗膜の厚さが0.15mmとなるように塗布し、これを硬化させることで、厚さ0.15mmの接着層を形成した。次に、上記接着層上に補強層形成剤を塗膜の厚さが2.0mmとなるように塗布し、これを硬化させることで、厚さ1.6mmの補強層を形成した。このようにして、コンクリート構造物を製造した。
<コーティング層(接着層及び補強層の積層体)としての評価>
上述のとおり製造されたコンクリート構造物を構成するコーティング層の透明性を評価した。透明性の評価はヘーズ及び全光線透過率によって行った。ヘーズ及び全光線透過率は、上記「補強層としての硬化膜の評価」に記載したものと同じ方法で測定した。結果を表3に示す。
<コンクリート構造物としての耐荷性の評価>
上述のとおり製造されたコンクリート構造物を対象として、50℃、23℃、及び−30℃の各温度における最大荷重を測定することで耐荷性の評価を行った。最大荷重は押し抜き試験によって測定した。
具体的には、JIS A 5372:2010「プレキャスト鉄筋コンクリート製品」の付属書5に規定される「上ぶた式U形側溝」のうち、強度による区分「1種」かつ呼び名「300(400×600×厚み60mm)」の上ぶた式U形側溝(以下、単に「U形ぶた」という)のコンクリート板上にプライマーE1を塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、硬化させることによって、厚み0.15mmの接着層を形成した。上記接着層上に、上記補強層形成剤を塗布し、温度23℃、湿度50%の条件で、硬化させることによって、厚み1.6mmの補強層を形成した。
次に、JSCE−K 533−2013(土木学会 コンクリート片のはく落防止に適用する表面被覆材の押し抜き試験方法)に準じて、温度:50℃における押し抜き試験を行なった。荷重−変位測定における変位10mm以上における最大荷重を押し抜き試験における最大荷重(kN)とした。結果を表3に示す。
(実施例2)
プライマーE1に代えて、プライマーE2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例3)
プライマーE1に代えて、プライマーE3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例4)
プライマーE1に代えて、プライマーE4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。
(実施例5)
プライマーE1に代えて、プライマーE5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。
(比較例1)
プライマーE1に代えて、プライマーE6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。
(比較例2)
プライマーE1に代えて、プライマーE7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、コンクリート構造物を製造した。得られたコンクリート構造物について、実施例1と同様に、コーティング層の透明性、及びコンクリート構造物の耐荷性を評価した。結果を表3に示す。