本発明の一実施の形態に係る自動変速機は、車両に搭載される車載部品の後方に設置された変速機ケースと、変速機ケースに収容され、内燃機関から動力が伝達される入力軸と、変速機ケースに収容され、内燃機関と入力軸との間で動力を伝達可能でかつ動力の伝達を遮断可能なクラッチと、入力軸上に設けられ、油圧によってクラッチを操作するクラッチレリーズ部材と、クラッチレリーズ部材に油圧配管を介して接続され、油圧配管を通してクラッチレリーズ部材に作動油を圧送する油圧発生装置とを備え、油圧発生装置がベースプレートを介して変速機ケースの外壁に固定された自動変速機であって、ベースプレートは、油圧配管が接続され、油圧発生装置の作動油を油圧配管に供給する作動油供給部を有し、作動油供給部は、油圧発生装置の前端面よりも後方に設置されている。
以下、本発明に係る自動変速機の実施例について、図面を用いて説明する。
図1から図13は、本発明に係る一実施例の自動変速機を示す図である。図1から図13のいずれかにおいて、上下前後左右方向は、車両の前進する方向を前、後退する方向を後とした場合に、車両の幅方向が左右方向、車両の高さ方向が上下方向である。
まず、構成を説明する。
図1において、車両100のエンジンルーム100Aには、AMT(Automated Manual Transmission)からなる自動変速機1と、エンジン50と、ラジエータ51とが設置されている。
自動変速機1は、ラジエータ51の後方に設置されており、車両100の前後方向においてラジエータ51と重なっている。本実施例のラジエータ51は、本発明の車載部品を構成する。
図1から図3において、自動変速機1は、変速機ケース2を備えており、変速機ケース2は、クラッチハウジング3と、クラッチハウジング3に車両の幅方向(以下、車幅方向という)で隣接するトランスミッションケース4とを含んで構成されている。図4において、クラッチハウジング3は、トランスミッションケース4よりも上下方向の寸法が大きく形成されている。
クラッチハウジング3には発進用のクラッチ5(図5参照)が収容されている。トランスミッションケース4には、図7に示すように、入力軸6、第1のカウンタ軸7、第2のカウンタ軸8およびディファレンシャル装置9が収容されている。入力軸6、第1のカウンタ軸7および第2のカウンタ軸8は、それぞれ軸線方向が平行となるように設置されている。
入力軸6にはエンジン50から動力が伝達される。ラジエータ51は、エンジン50を流れる冷却液を冷却する機能を有し、前方からエンジンルーム100A内に空気を取り入れる図示しないファンやファンを覆うラジエータファンシュラウド51A等を有する。
図7において、入力軸6には変速用の入力ギヤ6Aが設けられており、入力ギヤ6Aは、変速段に応じた数だけ入力軸6の軸線方向に離隔して設置されている。第1のカウンタ軸7には変速用の第1のカウンタギヤ7Aが設けられており、第2のカウンタ軸8には変速用の第2のカウンタギヤ8Aが設けられている。第1のカウンタギヤ7Aおよび第2のカウンタギヤ8Aは、入力ギヤ6Aに噛み合っている。
第1のカウンタ軸7および第2のカウンタ軸8のそれぞれにはファイナルドライブギヤ7B、8Bが設けられており(図6に仮想線で示す)、ファイナルドライブギヤ7B、8Bは、ディファレンシャル装置9のファイナルドリブンギヤ9Aに噛み合っている。
ディファレンシャル装置9は、ファイナルドリブンギヤ9Aと、ファイナルドリブンギヤ9Aの外周部に取付けられたデフケース9Bと、デフケース9Bに収容された図示しない差動ギヤとを含んで構成されている。
トランスミッションケース4にはシフトアンドセレクト軸10が収容されている。シフトアンドセレクト軸10は、入力軸6の軸線と直交する上下方向の軸線を有し、トランスミッションケース4の上部に設けられたシフトケース4Cに回転自在、かつ、上下方向に移動自在に取付けられている。
第1のカウンタ軸7、第2のカウンタ軸8およびファイナルドリブンギヤ9Aは、入力軸6に対してシフトアンドセレクト軸10と反対側に設置されている。
シフトアンドセレクト軸10には上下に離隔してインナレバー10A、10Bが設けられている。インナレバー10Aは、シフトピース12A、12Bに選択的に係合可能となっており、インナレバー10Bは、シフトピース12C、12Dに選択的に係合可能となっている。
シフトピース12Aから12Dは、それぞれシフトシャフト13Aから13Dに連結されている。シフトシャフト13Aから13Dは、入力軸6の軸線方向に沿って移動自在となるようにトランスミッションケース4に取付けられている。
シフトシャフト13Aから13Dにはシフトフォーク14Aから14Dが固定されており、シフトフォーク14Aから14Dは、それぞれ図示しない噛み合いクラッチに連結されている。噛み合いクラッチは、第1のカウンタ軸7および第2のカウンタ軸8の軸線上において、第1のカウンタ軸7および第2のカウンタ軸8の軸線方向に移動自在に設けられている。
本実施例の自動変速機1は、シフトアンドセレクト軸10が上下方向に移動すると、セレクト操作が行われ、シフトアンドセレクト軸10が所定の変速段のセレクト位置で回転すると、シフト操作が行われる。
具体的には、シフトアンドセレクト軸10が上下方向に移動して、所定の変速段においてインナレバー10A、10Bがシフトピース12Aから12Dのいずれか1つに嵌合し、シフトアンドセレクト軸10が回転すると、シフトシャフト13Aから13Dのいずれか1つが入力軸6の軸線方向に移動する。
このとき、シフトフォーク14Aから14Dのいずれか1つが噛み合いクラッチを第1のカウンタ軸7または第2のカウンタ軸8の軸線方向に移動させ、第1のカウンタギヤ7Aまたは第2のカウンタギヤ8Aを第1のカウンタ軸7または第2のカウンタ軸8に連結する。
これにより、第1のカウンタ軸7または第2のカウンタ軸8に連結される第1のカウンタギヤ7Aまたは第2のカウンタギヤ8Aに噛み合う入力ギヤ6Aとの間で所定の変速段が成立する。
所定の変速段が成立すると、エンジン50の動力が入力軸6から第1のカウンタギヤ7Aまたは第2のカウンタギヤ8Aを介して第1のカウンタ軸7または第2のカウンタ軸8に伝達される。
このとき、第1のカウンタ軸7または第2のカウンタ軸8からファイナルドライブギヤ7B、8Bを介してファイナルドリブンギヤ9Aに動力が伝達された後、デフケース9Bに内蔵された差動ギヤから左右のドライブシャフト101L、101R(図1参照)を介して左右の駆動輪102L、102Rに動力が伝達される。これにより、左右の駆動輪102L、102Rが差動回転する。
エンジン50は、図示しないクランク軸と、クランク軸に設けられた図示しないフライホイールとを備えている。クラッチ5は、入力軸6の端部に設けられた図示しない摩擦プレート等を備えている。
クラッチ5は、摩擦プレートをフライホイールに接触させることにより、クランク軸と入力軸6との間で動力を伝達可能とし、摩擦プレートをフライホイールから離隔させることにより、クランク軸と入力軸6との間で動力の伝達を遮断可能とする。
図2、図5において、クラッチハウジング3にはクラッチレリーズ部材20が収容されている。クラッチレリーズ部材20は、レリーズベアリング21およびレリーズシリンダ22を備えており、レリーズベアリング21およびレリーズシリンダ22は、入力軸6上に設置されている。
レリーズシリンダ22には油圧配管23を通して作動油が導入される。レリーズベアリング21は、レリーズシリンダ22に導入された油圧によって作動され、クラッチ5の摩擦プレートをフライホイールに接触させ、あるいは、フライホイールから離隔させる。これにより、エンジン50から入力軸6に動力の伝達および動力の遮断が行われる。
図1、図2において、変速機ケース2の上部には油圧発生装置32と、変速アクチュエータ33と、制御装置34とが設けられている。油圧発生装置32、変速アクチュエータ33および制御装置34は、ベースプレート35に取付けられており、ベースプレート35は、トランスミッションケース4の上壁4cに取付けられている(図6参照)。
シフトケース4Cは、トランスミッションケース4の一部を構成するものであり、シフトケース4Cの上面を含んだものがトランスミッションケース4の上壁4cである。
図6において、油圧発生装置32は、リザーバタンク36、モータ37、オイルポンプ38およびアキュムレータ39を備えている。本実施例のリザーバタンク36は、本発明の作動油貯留装置を構成し、アキュムレータ39は、本発明の蓄圧器を構成する。
リザーバタンク36は、オイルを貯留しており、車幅方向においてモータ37を跨がるようにしてモータ37の上方に設置されている(図4参照)。
オイルポンプ38は、モータ37によって駆動されることにより、リザーバタンク36に貯留される作動油をベースプレート35に形成される図示しない油路を介してアキュムレータ39に供給する。
アキュムレータ39は、作動油の圧力を蓄え、ベースプレート35に形成された図示しない油路を通して高圧の油圧を変速アクチュエータ33に圧送する。
図10において、ベースプレート35は、水平方向に延びる板状に形成されている。ベースプレート35にはアキュムレータ39が取付けられるアキュムレータ取付部35Aと、モータ37が取付けられるモータ取付部35Bとが設けられている。
ベースプレート35には連通孔35Cが形成されており、連通孔35Cは、リザーバタンク36とオイルポンプ38とを連通する油路を構成している。本実施例のアキュムレータ取付部35Aは、本発明の蓄圧器取付部を構成する。
ベースプレート35には変速アクチュエータ33が取付けられる変速アクチュエータ取付部35Eが形成されており、変速アクチュエータ取付部35Eには開口部35eが形成されている。
開口部35eにはシフトアンドセレクト軸10が挿通されており、シフトアンドセレクト軸10の上部は、開口部35eを通してベースプレート35の上面から上方に突出している。シフトアンドセレクト軸10の上部には図示しないセレクトレバーおよびシフトレバーが設けられている。
図9において、変速アクチュエータ33は、クラッチ操作ソレノイド40、セレクト操作ソレノイド41、シフト操作ソレノイド42、セレクトアクチュエータ43およびシフトアクチュエータ44を有する。
図4、図11から図13において、ベースプレート35の下部には作動油供給部35Dが形成されている。作動油供給部35Dは、ベースプレート35の下部から下方に延びており、作動油供給部35Dには油圧配管23の一端部が取付けられている。
図4において、クラッチハウジング3には開口部3Bが形成されており、開口部3Bは、延出部35aよりも下方に形成されている。油圧配管23にはプラグ23Aが取付けられており、プラグ23Aは、開口部3Bに接続されている。
図4、図10、図12において、作動油供給部35Dには油路35dが形成されており、油路35dは、ベースプレート35に形成された図示しない油路を介してアキュムレータ39に連通している。これにより、アキュムレータ39の高圧の油圧は、作動油供給部35Dの油路35dおよび油圧配管23を通してレリーズシリンダ22に供給される。
図12、図13において、作動油供給部35Dは、ベースプレート35の前端面35fよりも後方に設置されている。本実施例の前端面35fは、本発明の油圧発生装置の前端面を構成する。
クラッチ操作ソレノイド40は、アキュムレータ39が発生する高圧の油圧を作動油供給部35Dの油路35dから油圧配管23を介してレリーズシリンダ22に供給することにより、クラッチ5を操作する。
セレクト操作ソレノイド41は、アキュムレータ39が発生する高圧の油圧を調整してセレクトアクチュエータ43に供給し、シフト操作ソレノイド42は、アキュムレータ39が発生する高圧の油圧を調整してシフトアクチュエータ44に供給する。
セレクトアクチュエータ43は、セレクト操作ソレノイド41から供給される油圧に基づいて、シフトアンドセレクト軸10のセレクトレバーを押圧してシフトアンドセレクト軸10をセレクト方向に操作する。
シフトアクチュエータ44は、シフト操作ソレノイド42から供給される油圧に基づいて、シフトアンドセレクト軸10のシフトレバーを押圧してシフトアンドセレクト軸10をシフト方向に操作する。
制御装置34は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含んだマイクロコンピュータから構成されている。
制御装置34は、例えば、運転席に設けられる図示しないシフトレバーのシフト操作を検出する図示しないシフトポジョンセンサの検出情報、車速を検出する図示しない車速センサの検出情報、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサ等からの検出情報に基づいて変速点を判断する。
制御装置34は、変速点を判断したときに、クラッチ操作ソレノイド40を操作してレリーズシリンダ22に油圧を供給する。レリーズシリンダ22に油圧が供給されると、レリーズベアリング21がクラッチ5の摩擦プレートをフライホイールから離隔させることにより、クランク軸から入力軸6に伝達される動力が遮断される。
レリーズシリンダ22に油圧を供給することを停止すると、レリーズベアリング21がクラッチ5の摩擦プレートをフライホイールに接触させることにより、クランク軸から入力軸6に動力が伝達される。
制御装置34は、クラッチ5の切断時に、セレクト操作ソレノイド41およびシフト操作ソレノイド42を制御して、シフトアクチュエータ44およびセレクトアクチュエータ43を駆動することにより、シフトアンドセレクト軸10を軸線方向および軸線周りに操作して変速を行う。
図5において、入力軸6上にはクラッチストロークセンサ24が設けられており、クラッチストロークセンサ24は、配線24aを介して制御装置34に接続されている。クラッチストロークセンサ24は、レリーズシリンダ22の移動位置を検出し、検出情報を制御装置34に出力する。
制御装置34は、クラッチストロークセンサ24の検出情報に基づいて、クラッチ5の状態(例えは、クラッチ5が半クラッチ状態にある等)を判断する。本実施例のクラッチレリーズ部材20、油圧発生装置32、変速アクチュエータ33、制御装置34およびベースプレート35は、変速ユニット30を構成している。
図7において、自動変速機1を入力軸6の軸線方向から見た場合に、クラッチハウジング3には膨出部3Aが形成されており、膨出部3Aは、上下方向に延びるトランスミッションケース4の前壁4Aよりも外側に膨れ出ている。
ベースプレート35の延びる方向の端部には延出部35aが形成されている。延出部35aは、トランスミッションケース4の前壁4Aよりも前方に延びている。本実施例のトランスミッションケース4の上壁4cは、本発明の変速機ケースの外壁およびトランスミッションケースの外壁を構成する。
図11において、延出部35aの上面側にはリザーバタンク36およびモータ37が設置されている。
図11、図12において、延出部35aの下面には作動油供給部35D、オイルポンプ38およびアキュムレータ39が設置されており、オイルポンプ38とアキュムレータ39とは車幅方向に並んで設置されている。
図8において、作動油供給部35Dは、オイルポンプ38の前端面38aおよびアキュムレータ39の前端面39aよりも後方で、かつ車幅方向においてオイルポンプ38とアキュムレータ39との間に設置されている。
図11において、作動油供給部35D、オイルポンプ38およびアキュムレータ39は、上下方向でリザーバタンク36に重なる位置に設置されている。
図11において、アキュムレータ取付部35Aは、上下方向においてリザーバタンク36に重なっており、アキュムレータ39の右端部は、アキュムレータ取付部35Aに挿入されている(図8参照)。これにより、アキュムレータ39は、リザーバタンク36と上下方向に重なるように設置される。
図4において、アキュムレータ39は、リザーバタンク36に対して、側方(左方)に設けられている。
図1、図2のいずれかにおいて、リザーバタンク36、モータ37、オイルポンプ38およびアキュムレータ39は、車両100の前後方向においてラジエータ51に対向している。
図12において、リザーバタンク36は、前端面36aがベースプレート35の前端面35fよりも後方に位置するように設置されている。図3において、アキュムレータ39は、前端面39aがリザーバタンク36の前端面36aよりも後方に位置するように設置されている。
図13において、オイルポンプ38は、前端面38aがアキュムレータ39の前端面39aよりも後方に位置するように設置されている。
図8において、クラッチハウジング3の前端面3aは、トランスミッションケース4の前端面4aよりも前方に位置しており、作動油供給部35Dは、クラッチハウジング3の前端面3aよりも後方に設置されている。本実施例のクラッチハウジング3の前端面3aは、本発明の変速機ケースの前端面を構成する。
アキュムレータ39は、車幅方向においてオイルポンプ38に対してクラッチハウジング3と反対側に設置されている。換言すれば、オイルポンプ38は、車幅方向においてアキュムレータ39とクラッチハウジング3との間に設置されている。
図11において、アキュムレータ取付部35Aは、その後端部においてアキュムレータ39側からオイルポンプ38に向かって膨らむ球面部35Rを有する。球面部35Rは、アキュムレータ39の後端部の半径方向外縁から半径方向中心部に向かってオイルポンプ38側に突出し、突出方向の先端が頂部35rを構成している。作動油供給部35Dは、球面部35Rの頂部35rよりも後方に位置している(図12参照)。
図11、図13において、作動油供給部35Dは、補強部35Mを介してアキュムレータ取付部35Aに連結されている。補強部35Mは、作動油供給部35Dの上下方向長さよりも短い上下方向長さでアキュムレータ取付部35Aから作動油供給部35Dに延びている。
図12において、アキュムレータ取付部35Aは、前方に膨らむ曲面部35Hを備えており、上下方向において、曲面部35Hの前端面35hと同じ高さ位置で作動油供給部35Dと油圧配管23の一端部とが接続されている(以下、作動油供給部35Dと油圧配管23の一端部の接続箇所を接続部52という)。
次に、作用を説明する。
例えば、車両100が前突して車両100の前方から後方に衝撃が伝達されると、ラジエータ51が後方の自動変速機1に向かって移動し、油圧発生装置32にラジエータ51が衝突するおそれがある。
このとき、作動油供給部35Dに過大な衝撃が加わり、作動油供給部35Dと油圧配管23との接続が維持されないおそれがある。
これに対して、本実施例の自動変速機1によれば、油圧発生装置32がベースプレート35を介してトランスミッションケース4の上壁4cに固定されている。ベースプレート35は、油圧配管23が接続され、油圧発生装置32の作動油を油圧配管23に供給する作動油供給部35Dを有し、作動油供給部35Dは、ベースプレート35の前端面35fよりも後方に設置されている。
これにより、車両100の前突時にラジエータ51が後方に移動したときに、ラジエータ51が作動油供給部35Dに接触する前にラジエータ51をベースプレート35に接触させることができる。このため、ラジエータ51から作動油供給部35Dに加わる衝撃を緩和して、油圧配管23を保護できる。この結果、作動油供給部35Dと油圧配管23との接続を維持できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、エンジン50と入力軸6との間で動力を伝達可能でかつ動力の伝達を遮断可能なクラッチ5と、入力軸6上に設けられ、油圧によってクラッチ5を操作するクラッチレリーズ部材20とを有し、油圧発生装置32から油圧配管23を通してクラッチレリーズ部材20に作動油を圧送している。
これにより、ベースプレート35と変速機ケース2との間にクラッチ5を作動するためのレリーズアームや油圧シリンダを設置することを不要にでき、自動変速機1の小型化を図ることができる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、油圧発生装置32は、作動油を送り出すオイルポンプ38と、オイルポンプ38から供給される作動油を蓄圧し、クラッチレリーズ部材20に圧送するアキュムレータ39とを有し、オイルポンプ38とアキュムレータ39とは、車幅方向に並んで設置されている。
作動油供給部35Dは、オイルポンプ38の前端面38aおよびアキュムレータ39の前端面39aよりも後方で、かつ車幅方向においてオイルポンプ38とアキュムレータ39との間に設置されている。
これにより、作動油供給部35Dを、オイルポンプ38の前端面38aとアキュムレータ39の前端面39aよりも後方で、車幅方向でオイルポンプ38とアキュムレータ39の間に挟まれた狭い空間に設置できる。
したがって、後方に移動するラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉することを困難にして、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和できる。この結果、油圧配管23をより効果的に保護でき、作動油供給部35Dと油圧配管23との接続をより効果的に維持できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、ベースプレート35は、アキュムレータ39が取付けられるアキュムレータ取付部35Aを有する。アキュムレータ取付部35Aは、アキュムレータ39側からオイルポンプ38に向かって膨らむ球面部35Rを有し、作動油供給部35Dは、球面部35Rの頂部35rよりも後方に位置している。
これにより、球面部35Rによって前方から後方に向かうにつれてアキュムレータ39とオイルポンプ38との間の空間を狭くすることができる。このため、車両100の前突時にラジエータ51が後方に移動したときに、ラジエータ51がアキュムレータ39とオイルポンプ38との間の空間に侵入することを困難にできる。
この結果、ラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉することをより一層困難にして、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、作動油供給部35Dは、補強部35Mを介してアキュムレータ取付部35Aに連結されている。
これにより、補強部35Mによって作動油供給部35Dの剛性を向上できる上に、ラジエータ51から作動油供給部35Dに衝撃が加わった場合に、その衝撃を作動油供給部35Dとアキュムレータ取付部35Aとに分散できる。このため、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和して、油圧配管23をより効果的に保護することができる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、アキュムレータ取付部35Aは、前方に膨らむ曲面部35Hを有し、上下方向において、曲面部35Hの前端面35hと同じ高さ位置に作動油供給部35Dと油圧配管23との接続部52が位置している。
曲面部35Hの前端面35hは、作動油供給部35Dから前方に最も離れた位置であり、曲面部35Hの前端面35hと同じ高さ位置で接続部52を位置させることで、接続部52を曲面部35Hの前端面35hから後方に離すことができる。
このため、後方に移動するラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉することを困難にして、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和できる。この結果、油圧配管23をより効果的に保護でき、作動油供給部35Dと油圧配管23との接続をより効果的に維持できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、ベースプレート35は、トランスミッションケース4の前端面4aよりも前方に延びる延出部35aを有する。延出部35aの上面側に、リザーバタンク36が設置されており、延出部35aの下面側に、作動油供給部35D、オイルポンプ38およびアキュムレータ39が設置されている。
これに加えて、作動油供給部35D、オイルポンプ38およびアキュムレータ39は、上下方向でリザーバタンク36に重なる位置に設置されている。
これにより、ベースプレート35の設置面積を少なくしてベースプレート35を小型化することができる。これに加えて、ベースプレート35を小型化することにより、オイルポンプ38とアキュムレータ39との間の空間を狭くでき、後方に移動するラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉することをより一層、困難にできる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、ベースプレート35の前端面35fよりも後方にリザーバタンク36の前端面36aが位置し、リザーバタンク36の前端面36aよりも後方にアキュムレータ39の前端面39aが位置し、アキュムレータ39の前端面39aよりも後方にオイルポンプ38の前端面38aが位置するように、リザーバタンク36、アキュムレータ39およびオイルポンプ38が設置されている。
これにより、後方に移動するラジエータ51を剛性の高いベースプレート35に最初に接触させて、ベースプレート35でラジエータ51の衝撃を受け止めることができる。次いで、後方に移動するラジエータ51をリザーバタンク36に接触させて、リザーバタンク36の変形を利用してラジエータ51の衝撃を受け止めることができる。
次いで、後方に移動するラジエータ51をアキュムレータ39に接触させた後、オイルポンプ38に接触させることにより、ラジエータ51の衝撃をアキュムレータ39およびオイルポンプ38によって受け止めることができる。
このように、ラジエータ51の衝撃をリザーバタンク36、アキュムレータ39およびオイルポンプ38によって多段的に緩和することができ、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、作動油供給部35Dは、クラッチハウジング3の前端面3aよりも後方に設置されている。これにより、後方に移動するラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉する前にクラッチハウジング3の前端面3aに干渉させることができる。
このため、作動油供給部35Dに加わる衝撃をより効果的に緩和できる。この結果、油圧配管23をより効果的に保護でき、作動油供給部35Dと油圧配管23との接続をより効果的に維持できる。
また、本実施例の自動変速機1によれば、クラッチハウジング3の前端面3aは、トランスミッションケース4の前端面4aよりも前方に位置している。ベースプレート35は、トランスミッションケース4の上壁4cに固定されており、アキュムレータ39は、車幅方向においてオイルポンプ38に対してクラッチハウジング3と反対側に設置されている。
これにより、アキュムレータ39がクラッチハウジング3側に設置される場合、ベースプレート35が大型化することに対し、アキュムレータ39をトランスミッションケース4側に設置することにより、ベースプレート35を小型化することができる。
このため、オイルポンプ38とアキュムレータ39との間の空間を狭くでき、後方に移動するラジエータ51が作動油供給部35Dに干渉することをより一層、困難にできる。
なお、本実施例の自動変速機1は、AMTを例にしているが、自動変速機としては、AT(Automatic Transmission)であってもよい。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。