JP6968763B2 - 付属構造物の施工方法 - Google Patents
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Description
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、多層建物において複数の階層にわたって設置される付属構造物を施工するための施工方法に関する。ここで、「多層建物」の具体的な構造や種類は任意であり、例えば、戸建て住宅、アパートやマンションの如き集合住宅、オフィスビル、商業施設等の建物等を含む概念であるが、実施の形態では、改修中のオフィスビルとして説明する。また、「付属構造物」とは、例えば、多層建物に付属される構造物であり、例えば、階段、エスカレータ等を含む概念であるが、実施の形態では、階段(具体的には、折り返し階段)として説明する。
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
最初に、実施の形態に係る多層建物の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る多層建物を概念的に示す斜視図である(一部図示省略)。以下の説明では、図1のX方向を多層建物の左右方向(−X方向を多層建物の左方向、+X方向を多層建物の右方向)、図1のY方向を多層建物の前後方向(+Y方向を多層建物の前方向、−Y方向を多層建物の後方向)、図1のZ方向を多層建物の上下方向(+Z方向を多層建物の上方向、−Z方向を多層建物の下方向)と称する。
天井部10は、多層建物1を構成する天井であり、例えば公知のコンクリート製の天井材等)を用いて構成され、図1に示すように、多層建物1の上端部に設けられている。
第1床部から第4床部24は、多層建物1を構成する床であり、例えば公知のコンクリート製の床材(一例として、スパンクリート、気泡コンクリートパネル(ALCパネル)、鉄筋コンクリートのパネル)を用いて構成され、図1に示すように、相互に間隔を隔てて上下方向に向けて並設されている。具体的には、第1床部から第4床部24は、下方から上方に向けて第1床部から第4床部24の順に並設されている。なお、以下の説明では、多層建物1の階層のうち、第1床部と第2床部22と相互間に位置する階層(図示省略)を「第1階層」と称し、第2床部22と第3床部23との相互間に位置する階層1aを「第2階層1a」と称し、第3床部23と第4床部24との相互間に位置する階層1bを「第3階層1b」と称し、第4床部24と天井部10との相互間に位置する階層1cを「第4階層1c」と称する。
第1梁部31から第4梁部34は、第2床部22から第4床部24及び天井部10を支持する梁であり、例えば公知の鋼製の梁材(又は公知のコンクリート製の梁材)を用いて構成され、対応する床部にそれぞれ設けられている。具体的には、図1に示すように、第1梁部31は第2床部22の下面と当接するように複数設けられ、第2梁部32は第3床部23の下面と当接するように複数設けられ、第3梁部33は第4床部24の下面と当接するように複数設けられ、第4梁部34は天井部10の下面と当接するように複数設けられている。
第1壁部から第4壁部は、多層建物1を構成する壁であり、例えば公知のコンクリート製の壁材を用いて構成され、対応する階層にそれぞれ設けられている。具体的には、図1に示すように、第1壁部は第1階層に複数設けられ、第2壁部は第2階層1aに複数設けられ、第3壁部は第3階層1bに複数設けられ、第4壁部は第4階層1cに複数設けられている。
第1柱部から第4柱部は、多層建物1を構成する柱であり、例えば公知のコンクリート製の柱材を用いて構成され、対応する階層にそれぞれ設けられている。具体的には、図1に示すように、第1柱部は第1階層に設けられ、第2柱部は第2階層1aに設けられ、第3柱部は第3階層1bに設けられ、第4柱部は第4階層1cに設けられている。
また、図1に示すように、第2床部22、第3床部23、及び第4床部24の各々には、吹き抜け開口41が設けられている。吹き抜け開口41は、第1階層から第4階層1cの各々の内部空間を連通するための開口であり、左右方向に長尺な長方形状に形成されており、第2床部22、第3床部23、及び第4床部24の各々の設置空間Sに対応する部分に配置されている。ここで、「設置空間S」とは、後述の対象階層における付属構造物を設置する空間を意味する。
第1付属構造物51は第3階層1bに付属(設置)される構造物であり、第2付属構造物52は第2階層1aに付属される構造物であり、第3付属構造物は第1階層に付属される構造物である。ただし、これら第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物の構成はそれぞれ略同一であるので、以下では、第1付属構造物51の構成のみについて説明する。
第1階段部60a及び第2階段部60bは、第1付属構造物51の基本構造体である。これら第1階段部60a及び第2階段部60bは、例えば公知の鋼製のササラ桁等を用いて構成され、図1に示すように、第3階層1bの設置空間Sに設けられており、具体的には、第1階段部60aは、設置空間Sの前方側に配置されており、第2階段部60bは、設置空間Sの後方側に配置されている。また、これら第1階段部60a及び第2階段部60bの各々は、階段部本体61a、61b、及び踊場部62a、62bを備えている。
階段部本体61a、61bは、第1階段部60a又は第2階段部60bの基本構造体である。これら階段部本体61a、61bは、長尺な鋼製の板状体にて形成されており、図1に示すように、相互に間隔を隔てて前後方向に沿って並設され、具体的には、階段部本体61aは、階段部本体61bよりも前方側に設けられている。
踊場部62a、62bは、第1階段部60a又は第2階段部60bにおいて踊場を形成するためのものである。これら踊場部62a、62bは、例えば鋼製の長尺な板状体にて形成されており、図1に示すように、相互に間隔を隔てて前後方向に沿って並設されている(図1では、踊場部62aが踊場部62bよりも前方側に設けられている)。具体的には、第1階段部60aの踊場部62aの右端部は第1階段部60aの階段部本体61aの上部と接続されており、第1階段部60aの踊場部62bの右端部は第1階段部60aの階段部本体61bの上部と接続されている。第2階段部60bの踊場部62aの右端部は第2階段部60bの下部と接続されており、第2階段部60bの踊場部62bの右端部は第2階段部60bの階段部本体61bの下部と接続されている。
段板部70は、第1付属構造物51において人の足により踏まれるものである。この段板部70は、例えば鋼製の平坦な板状体(具体的な、矩形状の板状体)にて形成されており、図1に示すように、第1階段部60a及び第2階段部60bの各々の階段部本体61a、61bの相互間及び踊場部62a、62bの相互間にわたって複数設けられている。具体的には、第1階段部60a及び第2階段部60bの各々の階段部本体61a、61bの複数の載置部63にそれぞれ載置され、当該階段部本体61a、61bに対して固定具、溶接、又は嵌合構造等によって固定されている。また、第1階段部60a及び第2階段部60bの各々の踊場部62a、62bの上端部に載置され、当該踊場部62a、62bに対して固定具、溶接、又は嵌合構造等によって固定されている。
手摺部80は、当該手摺部80に人がつかまることで第1付属構造物51からの転落を防止するためのものである。この手摺部80は、例えば公知の鋼製の階段用手摺等を用いて構成されており、第1階段部60a及び第2階段部60bの各々に設けられている。具体的には、図1に示すように、第1階段部60aの階段部本体61bの上端部に立設されており、この階段部本体61bに対して固定具等によって接続されている。また、第2階段部60bの階段部本体61a、61b及び踊場部62bの上端部の後端部に立設されており、これら階段部本体61a、61b及び踊場部62bに対して固定具等によって接続されている。
次に、第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物の施工方法について説明する。ただし、これら第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物の施工方法はそれぞれ略同一であるので、以下では、第1付属構造物51の施工方法のみについて説明する。なお、第1付属構造物51の施工方法の前提としては、第2床部22、第3床部23、及び第4床部24の各々にあらかじめ設けられた吹き抜け開口41が仮設床部26(例えばコンクリート製の床材等)によって閉鎖された状態(以下、「閉鎖状態」と称する)であるものとして説明する。
まず、準備工程について説明する。準備工程は、第1付属構造物51の施工の準備を行うための工程である。
次に、運搬工程について説明する。運搬工程は、組立工程が行われる前の第1付属構造物51を、第1付属構造物51の組立作業を行う対象階層(ここでは、第3階層1b)の設置空間Sに対応する位置まで運搬する工程である。なお、実施の形態では、第2付属構造物52の組立作業を行う対象階層を第2階層1aとして説明すると共に、第3付属構造物の組立作業を行う対象階層を第1階層として説明する(すなわち、多層建物1は複数の対象階層を含むものとする)。
次に、組立工程について説明する。組立工程は、運搬工程の後に、第3階層1bで第1付属構造物51の少なくとも一部を組み立てる工程である。
次に、形成工程について説明する。形成工程は、組立工程及び運搬工程が行われた後に、複数の床部24のうち設置空間Sに対応する床部を撤去することにより、吹き抜け開口41を形成する工程である。
次に、設置工程について説明する。設置工程は、形成工程にて形成された吹き抜け開口41を介して組立工程にて組み立てられた第1付属構造物51を昇降させた後に、当該第1付属構造物51を設置空間Sに設置する工程である。
続いて、仕上工程について説明する仕上工程は、第1付属構造物51の仕上げを行う工程である。ここで、「仕上げ」とは、例えば、第1付属構造物51を塗装すること、第1付属構造物51を完全に組み立てること、又は不要な器具等を撤去すること等を含む概念である。
このように実施の形態1によれば、組立工程及び運搬工程が行われた後に、多層建物1を構成する複数の床部のうち設置空間Sに対応する床部の一部を撤去することにより、吹き抜け開口41を形成する形成工程と、形成工程にて形成された吹き抜け開口41を介して組立工程において組み立てられた第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物を昇降させることにより、第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物を設置空間Sに設置する設置工程と、を含むので、従来技術(既設の吹き抜け空間で各階層の階段部を設置する技術)に比べて、例えば、組立工程時又は運搬工程時での第1付属構造物51又は第2付属構造物52の部材、あるいは人が吹き抜け開口41を介して下の階層に落下することを抑制できると共に、組立作業が行われる際に第1付属構造物51又は第2付属構造物52の部材同士を溶接するときに生じた火花(又は煙)が吹き抜け開口41を介して下の階層に落下することを抑制できる。よって、組立工程時及び運搬工程時において人の作業安全性及び多層建物1の火災安全性を高めることができ、第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物を施工する際の安全性を確保しやすくなる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
上記実施の形態では、付属構造物の階段の種別が、折り返し階段であると説明したが、これに限らず、例えば、直階段、かね折れ階段、又はらせん階段であってもよい。
上記実施の形態では、準備工程及び仕上工程が行われると説明したが、これに限らない。例えば、支持部42、仮設支持部90、仮受梁部100a〜100c、及び仮設足場110の設置を必要としない場合には、準備工程を省略してもよい。また、第1付属構造物51、第2付属構造物52、及び第3付属構造物の塗装等を必要としない場合には、仕上工程を省略してもよい。
付記1の付属構造物の施工方法は、多層建物において複数の階層にわたって設置される付属構造物を施工するための施工方法であって、前記複数の階層のうち前記付属構造物の組立作業を行う対象となる対象階層で前記付属構造物の少なくとも一部を組み立てる組立工程と、前記組立工程が行われる前又は前記組立工程が行われた後の前記付属構造物を前記対象階層における前記付属構造物を設置する設置空間に対応する位置まで運搬する運搬工程と、前記組立工程及び前記運搬工程が行われた後に、前記多層建物を構成する複数の床部のうち前記設置空間に対応する床部の一部を撤去することにより、吹き抜け開口を形成する形成工程と、前記形成工程にて形成された前記吹き抜け開口を介して前記組立工程において組み立てられた前記付属構造物を昇降させることにより、当該付属構造物を前記設置空間に設置する設置工程と、を含む。
付記1に記載の付属構造物の施工方法によれば、組立工程及び運搬工程が行われた後に、多層建物を構成する複数の床部のうち設置空間に対応する床部の一部を撤去することにより、吹き抜け開口を形成する形成工程と、形成工程にて形成された吹き抜け開口を介して組立工程において組み立てられた付属構造物を昇降させることにより、当該付属構造物を設置空間に設置する設置工程と、を含むので、従来技術(既設の吹き抜け空間で各階層の階段部を設置する技術)に比べて、例えば、組立工程時又は運搬工程時での付属構造物の部材又は人が吹き抜け開口を介して下の階層に落下することを抑制できると共に、組立作業が行われる際に付属構造物の部材同士を溶接するときに生じた火花(又は煙)が吹き抜け開口を介して下の階層に落下することを抑制できる。よって、組立工程時及び運搬工程時において人の作業安全性及び多層建物の火災安全性を高めることができ、付属構造物を施工する際の安全性を確保しやすくなる。
1a 第2階層
1b 第3階層
1c 第4階層
10 天井部
22 第2床部
23 第3床部
24 第4床部
26 仮設床部
31 第1梁部
32 第2梁部
33 第3梁部
34 第4梁部
41 吹き抜け開口
42 支持部
43 当接部
44a、44b 支柱部
51 第1付属構造物
52 第2付属構造物
60a 第1階段部
60b 第2階段部
61a、61b 階段部本体
62a、62b 踊場部
63 載置部
70 段板部
80 手摺部
90 仮設支持部
91 当接部
100a、100b、100c 仮受梁部
110 仮設足場
111 転倒防止材
112 チェーンブロック
S 設置空間
Claims (4)
- 多層建物において複数の階層にわたって設置される付属構造物を施工するための施工方法であって、
前記複数の階層のうち前記付属構造物の組立作業を行う対象となる対象階層で前記付属構造物の少なくとも一部を組み立てる組立工程と、
前記組立工程が行われる前又は前記組立工程が行われた後の前記付属構造物を前記対象階層における前記付属構造物を設置する設置空間に対応する位置まで運搬する運搬工程と、
前記組立工程及び前記運搬工程が行われた後に、前記多層建物を構成する複数の床部のうち前記設置空間に対応する床部の一部を撤去することにより、吹き抜け開口を形成する形成工程と、
前記形成工程にて形成された前記吹き抜け開口を介して前記組立工程において組み立てられた前記付属構造物を昇降させることにより、当該付属構造物を前記設置空間に設置する設置工程と、
を含む付属構造物の施工方法。 - 前記運搬工程において、前記組立工程が行われる前の前記付属構造物を前記対象階層における前記設置空間に対応する位置まで運搬し、
前記組立工程において、前記運搬工程にて運搬された前記付属構造物の少なくとも一部を組み立てる、
請求項1に記載の付属構造物の施工方法。 - 前記多層建物において複数の前記付属構造物を施工するための当該施工方法であって、
前記複数の階層は、前記対象階層を複数含み、
前記組立工程において、前記複数の対象階層の各々で前記付属構造物を組み立て、
前記運搬工程において、前記組立工程が行われる前又は前記組立工程が行われた後の前記付属構造物を前記複数の対象階層の各々に搬送し、
前記形成工程において、前記複数の対象階層の各々に対応する前記床部の一部を撤去することにより、前記吹き抜け開口を複数形成し、
前記設置工程において、前記複数の対象階層の各々に対応する前記吹き抜け開口を介して前記複数の対象階層の各々で組み立てられた前記付属構造物をそれぞれ昇降させた後に、当該付属構造物を前記設置空間にそれぞれ設置する、
請求項1又は2に記載の付属構造物の施工方法。 - 前記付属構造物は、階段を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の付属構造物の施工方法。
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