JP6967418B2 - 磁性材料、および積層チップ部品 - Google Patents

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本発明は、磁性材料、および積層チップ部品に関する。
電子機器を構成する電子部品には、より高い周波数で動作することが求められている。そのため、電子部品の一つであるインダクタには、高い磁気特性と低い磁気損失とともに、高い直流重畳特性が求められている。そして、インダクタを構成する磁性材料には、フェライトや以下の特許文献1などに記載の金属磁性材料がある。また、以下の特許文献2には、窒素アトマイズ合金粉末の表面にフェライトの薄膜が形成され、その薄膜の上に、さらに絶縁膜が形成された磁性材料について記載されている。
特開2015―65363号公報 特開平5―36514号公報
インダクタを構成する磁気材料について、上記特許文献1などに記載された金属磁性材料は、磁性体にフェライトを用いた磁性材料と比較して、磁気特性、特に直流重畳特性が優れている。しかし、低抵抗であるため、渦電流損失の影響を受けるという問題がある。また、金属磁性材料は、所定の形状等に成形された焼結体の状態でインダクタのコアなどの電子部品の部材、あるいは周知の積層インダクタの磁性層などの電子部品の所定の部位に用いられる。したがって、金属磁性材料は、結着や絶縁のために、粉体状の合金などからなる磁性体(以下、金属磁性体とも言う)にガラスなどの添加剤が添加されたものとなっている。
しかし、金属磁性体の個々の粒子は硬い金属であり、成形に際して粒子自体が潰れず、成形圧力を大きくする必要があり、成形金型の寿命を短くする可能性がある。また、成形圧力が低いと、金属磁性体の粒子間に多くの隙間が生じるため、緻密な焼結体を得るためには、上記の隙間に多量の添加剤を充填させる必要がある。しかし、磁気特性に寄与しない添加剤を多量に添加すれば、金属磁性体本来の磁気特性が得られ難くなる。
特許文献2に記載の磁性材料では、金属粉末の表面に絶縁膜が形成されて、渦電流損失が低いものとなっている。しかし、複雑な工程によってフェライトの薄膜と絶縁膜を金属粉末の表面に形成しているため製造コストが極めて高いものとなる。なお、フェライトは原料を焼成する際の固相反応により生成されるため、粉体状の金属磁性体とともに焼成してしまうとフェライトが固相反応を起こす前に金属の酸化反応が起こり、フェライトの固相反応(フェライト化)が阻害されてしまう可能性がある。そのため、特許文献2に記載の磁性材料は、フェライトの原料であるNiClとZnClの水溶液に金属粉末を浸し、空気中で酸化させる操作を繰り返してフェライト化反応を起こさせ、さらに、そのフェライトの皮膜の上に絶縁膜をスパッタリングによって形成している。そのため、磁性材料の製造コストが嵩み、その磁性材料を用いた電子部品を安価に提供することが難しくなる。
そこで本発明は、磁気特性に優れた安価な磁性材料、およびその磁性材料を用いた積層チップ部品を提供することを目的としている。
上記目的を達成するための本発明の一態様は、焼結用の磁性材料であって、
xwt%のフェライトとywt%の金属磁性体とが混合されているとともに、添加剤として、前記フェライトと前記金属磁性体との合計質量に対してewt%のガラスとfwt%の炭酸リチウムを含み、
前記フェライトは、amol%のFeと、bmol%のZnOと、cmol%のCuOと、dmol%のNiOを含むNi系フェライトであり、
前記金属磁性体はFeSiCr合金であり、
a+b+c+d=100、
40≦a≦45、
0<b≦30、
0<c≦15、
0.2≦e≦0.3、
0.02≦f≦0.03
x+y=100、
40≦x≦60、
であることを特徴とする磁性材料としている。
本発明のその他の態様は、電気絶縁性の磁性層と、導電体からなる電極パターンが形成された電極層とが層状に積層されてなる積層チップ部品であって、
前記磁性層は、磁性材料からなる焼結体であり、
前記導電体は銀であり、
前記磁性材料は、xwt%のフェライトとywt%の金属磁性体とが混合されているとともに、添加剤として、前記フェライトと前記金属磁性体との合計質量に対してewt%のガラスとfwt%の炭酸リチウムを含み、
前記フェライトは、amol%のFeと、bmol%のZnOと、cmol%のCuOと、dmol%のNiOを含むNi系フェライトであるであり、
前記金属磁性体はFeSiCr合金であり、
a+b+c+d=100、
40≦a≦45、
0<b≦30、
0<c≦15、
0.2≦e≦0.3、
0.02≦f≦0.03
x+y=100、
40≦x≦60、
であることを特徴とする積層チップ部品としている。
本発明によれば、磁気特性に優れた安価な磁性材料と積層チップ部品が提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
本発明の実施例に係る磁性材料の特性を評価するためのサンプルの作製手順を示す図である。 本発明の実施例に係る磁性材料の熱収縮特性を示す図である。
===本発明に想到する過程===
電子回路に実装されるインダクタには、小型化に適した積層インダクタが用いられることが多い。積層インダクタは、磁性材料からなる磁性層と電極パターンが形成された電極層とが層状に積層された構造を有する。積層インダクタの作製手順としては、まず、厚膜技術を用いて磁性層となるペースト状の磁性材料をシート状に成形し、そのシート上に電極層となる電極パターンを形成する。次に、電極パターンが形成されたシート状の磁性材料を順次積層して得た積層体を焼成する。そして、外部の電子回路に接続される外部電極を形成するために、焼成によって得られた焼結体の表面に塗布した導電性ペーストを焼き付ける。
なお、フェライトには、概ね、Mn−Zn系フェライトとNi系フェライトとがあるが、積層インダクタには、普通、低温焼成が可能なNi系フェライト(Ni−Zn系、Ni−Zn−Cu系など)を磁性体として含んだ磁性材料が用いられる。これは、電極パターンを形成する導電体に融点が962℃のAg(銀)を用いることが一般的であるため、焼成はこの温度よりも低い温度で行う必要があるためである。しかし、Ni系フェライトは、Mn―Zn系フェライトと比較すると損失(コアロス)が大きく直流重畳特性が劣化するという問題がある。Ni系フェライト中のFe(鉄)の割合を大きくして飽和磁束密度を高め、直流重畳特性を改善することも考えられるが、Feの割合を大きくするとコアロスが増大し、Mn−Zn系フェライトに対するNi系フェライトの欠点がさらに顕著になってしまう。
そこで本発明者は、磁性体として、Ni系フェライトと金属磁性体の双方を含む磁性材料であれば、低温焼成が可能で優れた直流重畳特性が得られると考えた。また、Ni系フェライトと金属磁性体とを含んだ磁性材料をそのまま同時に焼成することができれば、多くの添加剤を用いなくても、金属磁性体がNi系フェライトを介して結着し、磁気特性を損なわずに緻密な焼結体が得られ、さらに、Ni系フェライトが絶縁膜として機能し、金属磁性体に特有の渦電流損失も発生し難いと考えた。もちろん、製造工程も簡素なものとなる。ところが、フェライトと金属磁性体とを含んだ磁性材料を同時に焼成した場合、Niフェライトが焼結する900℃程度の温度でも金属磁性体が酸化し、フェライト化が抑制されてしまうことが判明した。
そこで、本発明者は、Ni系フェライトと金属磁性体とを含んだ実用的な磁性材料を実現すべく鋭意研究を行った。その結果、ZnとCuを含むNi系フェライトとFeSiCr合金からなる金属磁性体とが同時に焼成できることを見いだした。そして、Ni系フェライト(以下、フェライトとも言う)を構成する各元素の割合と、フェライトとFeSiCr合金(以下、金属磁性体とも言う)との割合とを適切に設定することで、フェライトを含まない金属磁性材料と同等以上の磁気特性を有する磁性材料が得られることを確認した。
===実施例===
本発明の実施例に係る磁性材料の特性を評価するために、フェライトと金属磁性体の割合、フェライトの組成、添加剤の添加量が異なる各種磁性材料を作製するとともに、その磁性材料を焼成してなる焼結体をサンプルとした。そして、各サンプルの磁気特性を測定した。
図1に、サンプルの作製手順を示した。まずフェライトの原料となるFe、ZnO、CuO、NiOを秤量し、これらのフェライトの原料を、ボールミルなどを用いて混合した(s1)。なお、以下の記載において、フェライトに含まれるFe、Ni、Zn、およびCuの各元素の割合(mol%)が示されている場合、Fe、Ni、Zn、およびCuの割合は、それぞれ、Fe、NiO、ZnO、CuOで換算しているものとする。
次に、上記フェライト原料の混合物を750℃で仮焼成した(s2)。さらに、仮焼成によって得られた粉体をボールミルにてさらに30時間粉砕した(s3)。ここでは、仮焼成後の粉体材料が0.5μmの平均粒径となるまで粉砕した。粉砕後の粉体に対し、金属磁性体の粉体を混合した(s4)。ここでは、平均粒径10μmの金属磁性体を用いた。それによって、平均粒径が0.5μmのフェライトの粉体材料が金属磁性体の粒子間に確実に充填されるようにした。そして、フェライトの原料と金属磁性体とを混合して得た粉体材料に、各種添加剤をサンプルに応じた量だけ添加し(s5)、磁性材料を得た。なお、添加剤には、ガラスと炭酸リチウム(LiCO)とを用いた。ガラスにはホウ珪酸ガラスを用いた。
次に、上記までの手順(s1〜s5)によって得られた粉体状の磁性材料に、PVA水溶液などのバインダーを加えて適宜な大きさの粒子径となるように造粒し(s6)、その造粒物を所定の形状に成形した(s7)。ここでは、4tの成形圧力で、外径18mm、内径9mm、厚さ2mmのリング状に成形した。そして、そのリング状の成形体をAgの融点以下である900℃の温度で1時間焼成し(s8)、サンプルとなるリングコアを得た。
<予備検討>
本発明の実施例に係る磁性材料の主な特徴は、フェライトに金属磁性体が混合されていることで、フェライトにおける直流重畳特性が改善されている点にある。そこで、まず、金属磁性体を含まない磁性材料を用いて作製したサンプルと、フェライトに金属磁性体を混合した磁性材料を用いたサンプルとを作製し、直流重畳特性を改善することができる磁性材料の作製条件を確認した。ここでは、図1に示した手順において、フェライトの原料を秤量して混合する工程(s1)で、Fe、Zn、Ni、およびCuの割合(mol%)をサンプルに応じて変えるとともに、金属磁性体の混合工程(s4)では、フェライトが60wt%、金属磁性体が40wt%となるように調整した。また、金属磁性体の混合工程(s4)を省略して磁性体としてフェライトのみを含んだサンプルも作製した。なお、添加剤の添加工程(s5)では、この工程(s5)の前までの工程で得たフェライトの原料からなる粉体材料、あるいはフェライトの原料と金属磁性体からなる粉体材料の質量を100wt%として、各種添加剤をサンプルに応じた質量比(wt%)で添加した。なお、ここでは、ガラスを0.2wt%、LiCOを0.02wt%添加した。
以下の表1にサンプルの作製条件を示した。
Figure 0006967418
表1において、サンプル1〜4は、全て、フェライトが60wt%、金属磁性体が40wt%の割合で含まれている磁性材料を用いて作製したサンプルである。そして、サンプル1〜4は、それぞれ、フェライトに含まれるFe、Zn、Ni、Cuの割合が異なっている。ここでは、サンプル1〜4ごとに、直流重畳特性に影響するFeの割合を変えた。また、ZnとCuの割合を、それぞれ、30mol%と10mol%で一定とし、FeとNiの割合を相補的に増減させて、各元素の組成割合の合計が100mol%となるように調整した。そして、サンプル5〜8は、金属磁性体を含まない磁性材料を用いて作製したサンプルである。なお、サンプル5、6、7、および8は、フェライトの組成がサンプル1、2、3、および4と同じである。
次に、上述した条件で作製したサンプル1〜8に対し、直流重畳特性を評価した。ここでは、各サンプルに巻線を所定の巻数(例えば巻数3)で巻回し、各サンプルをトロイダルコイルのコアとした。そして、そのコアのインダクタンスLを、LCRメータなどを用いて測定し、直流重畳特性を評価した。直流重畳特性については、例えば、コアに巻回されている巻線に1MHzの交流電流を流しつつ、バイアス電流を増加させていき、バイアス電流が0AのときのインダクタンスLに対し、インダクタンスLが20%低減したときのバイアス電流値(以下、飽和電流値(A)とも言う)を測定することで評価した。そして、フェライトと金属磁性体とを含むサンプル1〜4のうち、フェライトのFeの割合が46mol%のサンプル4が、組成が同じフェライトのみを用いたサンプル8に対して直流重畳特性が改善されなかった。すなわち、サンプル4とサンプル8は飽和電流値(A)が同等であり、サンプル1〜3は、サンプル5〜7よりも飽和電流値(A)が大きくなった。
<磁気特性>
表1に示したサンプル1〜8において、Feの割合が46mol%のフェライトと金属磁性体とを60wt%と40wt%の質量比で混合した磁性材料では、直流重畳特性に改善が見られなかった。そこで、フェライト中のFeを45mol%以下としつつ、フェライトの組成やフェライトと金属磁性体との混合割合が異なる各種磁性材料を用いたサンプルを作製し、各サンプルの磁気特性を測定した。そして、サンプルの作製条件と磁気特性との関係を調べた。
以下の表2に磁気特性を測定するためのサンプルの作製条件を示した。
Figure 0006967418
表2において、サンプル9〜11は、図1に示したサンプルの作製手順における秤量工程(s1)に際し、サンプル3と同様に、Feを45mol%、ZnOを30mol%、NiOを15mol%、CuOを10mol%としている。しかし、フェライトと金属磁性体との混合比率(wt%)がサンプル3とは異なっており、サンプル9、10、および11は、フェライトと金属磁性体との混合比率(フェライト:金属磁性体)が、30wt%:70wt%、40wt%:60wt%、および75wt%:25wt%となっている。
サンプル12は、サンプル3に対し、Cuの割合を16mol%に増加させ、その増加分に応じてNiの割合を9mol%に減少させている点のみが異なっている。そして、サンプル13とサンプル14は、フェライト中の各元素の組成割合(mol%)や、フェライトと金属磁性体との混合比率(wt%)が同じであるが、添加剤の添加量が異なっている。サンプル13は、ガラスの添加量がサンプル3の0.2wt%に対して0.4wt%であり、サンプル14は、LiCOの添加量がサンプル3の0.02wt%に対して0.04wt%である。
以下の表3にサンプル1〜4およびサンプル9〜14の磁気特性を示した。
Figure 0006967418
表3に示したように、サンプル1〜4、サンプル9〜14の磁気特性として、上述した直流重畳特性を示す飽和電流値(A)の他に、周知のBHアナライザーを用いて、周波数1MHzにおける比透磁率(実数部μ’、虚数部μ”)、飽和磁束密度Bm(mT)、サンプルを4000A/mの磁界強度で磁化させた際の残留磁界強度(以下、保磁力とも言う)Hc(A/m)、およびコアロス測定した。コアロスPcvについては、測定時の最大磁気飽和密度Bmを20mTとし、1MHzの周波数にて測定した。
表3に示した各サンプル1〜4、サンプル9〜14は、フェライトと金属磁性体とを混合することで直流重畳特性を改善するための条件を見いだすために作製されたものである。そして、各サンプルの合否を判断するのに当たり、フェライトと金属磁性体とを混合しても直流重畳特性が改善されなかったサンプル4の直流重畳特性を基準とし、直流重畳特性がこのサンプル4と同等以下のサンプルを、まず、不合格とした。したがって、サンプル4の他に、サンプル11、12を不合格とした。さらに、直流重畳特性がサンプル4よりも優れていたサンプル1、2、3、9、10、13、14について、比透磁率μ’および飽和磁束密度Bm(mT)が特異的に劣っていたサンプル1とサンプル9も不合格とした。
以上より、本発明の実施例に係る磁性材料は、Zn、Ni、Cuを含むフェライトと金属磁性体とを含み、フェライトは、Fe、Zn、およびCuの割合が、それぞれ、40mol%以上45mol%以下、30mol%以下、および15mol%以下で、残部がNiであり、フェライトと金属磁性体の質量比をそれぞれxwt%とywt%とすると、x+y=100で、40≦x≦60であることが必要となる。
なお、本実施例の磁性材料は、粉体状の金属磁性体の粒子間にフェライト材料を介在させることで、金属磁性体の磁気特性を劣化させずに、絶縁性を確保して、渦電流損失を低減させることができる。したがって、添加剤の添加量は、目的とする磁気特性や焼結性が得られるように適宜に設定すればよい。
もちろん、本実施例の磁性材料では、金属磁性体の粒子間に介在するフェライトが結着剤のように作用することから、フェライトの成形圧力を高くすることで添加剤を添加しなくても十分に緻密な焼結体を得ることができると考えられる。しかし、添加剤を添加することは、高い成形圧力を不要とし、成形金型の長寿命化に繋がる。また、添加剤は磁性材料の焼成温度を低くする作用がある。したがって、磁性材料に添加剤を含ませることは、インダクタ用のコアなど、磁性材料を用いた最終的な製品の製造コストを低減させることなる。しかし、磁気特性に寄与しない添加剤は、その添加量を必要最小限にした方がよい。そして、表3に示したサンプル13、14は、好適な添加剤の添加量を確認するためのサンプルであり、添加剤の添加量がサンプル1〜4、9〜10とは異なっている。サンプル13とサンプル14は、フェライトの組成や、フェライトと金属磁性体との混合比率(wt%)がサンプル3と同じであるが、サンプル13は、ガラスの添加量がサンプル3の0.2wt%に対して0.4wt%に増量され、サンプル14は、LiCOの添加量がサンプル3の0.02wt%に対して0.04wt%に増量されている。
そして、添加剤の添加量がサンプル4と同じで、磁気特性に優れていたサンプル2、3、10のうち、サンプル10が、比透磁率の実数部μ’(以下、比透磁率μ’とも言う)と飽和磁束密度Bmが最も低かった。そして、このサンプル10に対し、サンプル13とサンプル14は、比透磁率μ’が10%程度低下し、飽和磁束密度Bmが20%程度低下した。しかし、比透磁率μ’や飽和磁束密度Bmが極めて低かったサンプル1やサンプル9に対しては、十分に優れた特性を有していた。そこで、ここでは、サンプル13のガラスの添加量0.4wt%に対して0.1wt%の余裕を確保し、ガラスの添加量の好適な上限を0.3wt%とした。また、サンプル14のLiCOの添加量0.04wt%に対して0.01wt%の余裕を確保し、LiCOの添加量の好適な上限を0.03wt%とした。
<焼結性>
本発明の実施例に係る磁性材料は、フェライトの直流重畳特性を金属磁性体で補強するとともに、金属磁性体の渦電流損失をフェライトによって抑制するものである。さらに、成形が難しい金属磁性体に成形が容易なフェライトを混合したものである。そこで、金属磁性体のみからなる磁性材料と、本発明の実施例に係る磁性材料の成形容易性や焼結性について検討した。
ここでは、まず、表3に示したサンプル10と同様の条件で作製したサンプル(サンプルAとする)を用意した。さらに、図1に示したサンプルの作製手順において、フェライトに関わる工程(s1〜s3)を省略し、金属磁性体に添加剤を加えて得た混合物を図1に示した造粒工程(s6)から焼成工程(s8)までの手順で作製したサンプル(サンプルBとする)を用意した。なお、サンプルAとサンプルBは、ともに4tの圧力で成形工程(s7)を行った。そして、焼成工程(s7)の実行中におけるサンプルの収縮率を、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定した。
図2は、サンプルAとサンプルBのTMAでの測定結果を示しており、この図2に示したように、サンプルAは、約650℃の温度以上になると急激に体積が縮小し、より緻密な焼結体になっていることが分かる。一方、サンプルBは、焼成温度である900℃を超えても焼結が進まず、緻密な焼結体が得られないことが分かった。すなわち、金属磁性体を緻密に焼結させるためには、成形圧力をより高くしたり、より多くの添加剤を添加したりする必要があることが確認できた。そして、上述したように、成形圧力を高くすれば焼結体の製造コストが増大し、添加剤を増量すれば、磁気特性が劣化する。以上より、本発明の実施例に係る磁性材料では、磁気特性に優れた緻密な焼結体を、より低い製造コストで作製することができることが確認できた。
===作用と効果===
金属磁性体は高い飽和磁束密度Bmを有するものの、抵抗が低く、渦電流損失を低減させることが難しかった。そのため、従来の磁性材料では、金属磁性体に絶縁体であるガラスを混合したり、金属磁性体の粉体表面に酸化皮膜を形成したりしていた。しかし、ガラスや酸化皮膜は、非磁性体である。そのため従来の磁性材料を用いたインダクタでは、インダクタンスLの特性を向上させることが難しかった。
一方、本発明の実施例に係る磁性材料は、高抵抗のNi系フェライトに金属磁性体であるFeSiCr合金が混合されている。そして、焼成に際しては、金属磁性体の一部がNi系フェライトと反応する。それによって、一体的な焼結体が得られる。なお、Ni系フェライトにおいて、Feの組成割合を高くすると、抵抗の低減や焼結性の悪化などが発生する。そこで、本実施例の磁性材料では、Ni系フェライトのFeの組成割合を、50mol%よりも低い、40mol%以上45mol%以下としている。それによって、本実施例の磁性材料では、焼成に際してFeSiCrと反応しても、抵抗の減少や焼結性の悪化を抑制することができる。
さらに、本実施例の磁性材料では、焼成時に金属磁性体の酸化よりもフェライトの生成が優先されることで、金属磁性体の酸化温度が高くなり、フェライトの反応が可能となる900℃での焼結が可能なものとなっている。その結果、金属磁性体の透磁率も高いものとなる。すなわち、本実施例の磁性材料では、Niフェライトの特性と金属磁性体の特性の双方の劣化を抑制することができる。なお、添加剤が添加されている実施例の磁性材料は、焼結助剤としてよく用いられるガラスと、LiCOの添加量を好ましい上限以下に設定されていることで、磁性体以外を添加することによる磁気特性の劣化を最小限にしつつ、焼結性が改善されている。特に、LiCOは、焼成時に液相化することで、焼成温度の低減に大きく寄与しているものと考えられる。
===その他実施例====
本発明の実施例に係る磁性材料は、積層インダクタの磁性層に適用するのに好ましい特性を有するものであるが、当然のことながら、磁性体を用いた様々な電子部品や部材に適用することができる。
s1 フェライト原料の秤量・混合工程、s2 仮焼成工程、s3 粉砕工程、
s4 金属磁性体混合工程、s5 添加剤添加工程、s6 造粒工程、s7 成形工程、s8 焼成工程

Claims (2)

  1. 焼結用の磁性材料であって、
    xwt%のフェライトとywt%の金属磁性体とが混合されているとともに、添加剤として、前記フェライトと前記金属磁性体との合計質量に対してewt%のガラスとfwt%の炭酸リチウムを含み、
    前記フェライトは、amol%のFeと、bmol%のZnOと、cmol%のCuOと、dmol%のNiOを含むNi系フェライトであり、
    前記金属磁性体はFeSiCr合金であり、
    a+b+c+d=100、
    40≦a≦45、
    0<b≦30、
    0<c≦15、
    0.2≦e≦0.3、
    0.02≦f≦0.03
    x+y=100、
    40≦x≦60、
    であることを特徴とする磁性材料。
  2. 電気絶縁性の磁性層と、導電体からなる電極パターンが形成された電極層とが層状に積層されてなる積層チップ部品であって、
    前記磁性層は、磁性材料からなる焼結体であり、
    前記導電体は銀であり、
    前記磁性材料は、xwt%のフェライトとywt%の金属磁性体とが混合されているとともに、添加剤として、前記フェライトと前記金属磁性体との合計質量に対してewt%のガラスとfwt%の炭酸リチウムを含み、
    前記フェライトは、amol%のFeと、bmol%のZnOと、cmol%のCuOと、dmol%のNiOを含むNi系フェライトであるであり、
    前記金属磁性体はFeSiCr合金であり、
    a+b+c+d=100、
    40≦a≦45、
    0<b≦30、
    0<c≦15、
    0.2≦e≦0.3、
    0.02≦f≦0.03
    x+y=100、
    40≦x≦60、
    であることを特徴とする積層チップ部品。
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