JP6966007B2 - ポンプおよび冷却基板 - Google Patents

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Description

本発明は、電気浸透流を用いたポンプ、および、このポンプを備えた冷却基板に関する。
特許文献1には、誘電体多孔質膜と、誘電体多孔質膜の一方側に配された第1の透水性電極と、誘電体多孔質膜の他方側に配された第2の透水性電極とを備える電気浸透流を用いたポンプが開示されている。
特許第6166268号
前記ポンプの流量は、誘電体多孔質膜の流体の流動方向における断面積に比例し、誘電体多孔質膜の厚さ(すなわち、流体の流動方向における寸法)に反比例する。このため、前記ポンプの流量を大きくする方法としては、誘電体多孔質膜の断面積を大きくするか、または、誘電体多孔質膜の厚さを小さくすることが考えられる。
しかし、誘電体多孔質膜の断面積を大きくすると、前記ポンプのサイズが大きくなることから基板などへの組み込みが難しくなり、誘電体多孔質膜の厚さを小さくすると、前記ポンプの機械的強度を確保するのが難しくなる。このため、前記ポンプでは、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることが難しい場合がある。
本発明は、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプ、および、このポンプを備えた冷却基板を提供することを課題とする。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
前記流動方向のゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成されている。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
前記流動方向のゼータ電位が相互に同じ符号となり、かつ、前記第1の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値が前記第2の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で構成されている。
また、本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔率が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔率よりも大きい。
また、本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔径が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔径よりも大きい。
また、本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の屈曲度が、前記第1の誘電体の前記流動方向の屈曲度よりも小さい。
また、本発明の一態様の冷却基板は、
前記流体が充填されて流れる基板流路と
前記基板流路に配置され、前記ポンプ流路が前記基板流路に接続されている前記態様のポンプと
を備える。
前記態様のポンプによれば、第1の誘電体と第2の誘電体とが、流動方向Aのゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成されている。このような構成により、複数の誘電体の全ての層において流動方向と同じ向きの駆動力を得ることができるので、ポンプの流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
前記態様のポンプによれば、第1の誘電体と第2の誘電体とが、流動方向Aのゼータ電位が相互に同じ符号となり、かつ、第1の誘電体の流動方向のゼータ電位の絶対値が第2の誘電体の流動方向のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で構成されている。このような構成により、流動方向の駆動力が、流動方向と逆向きの駆動力よりも大きくなるので、ポンプの流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
また、前記態様のポンプによれば、第2の誘電体の流動方向の気孔率が、第1の誘電体の流動方向の気孔率よりも大きくなる、または、第2の誘電体の流動方向の気孔径が、第1の誘電体の流動方向の気孔径よりも大きくなる、または、第2の誘電体の流動方向の屈曲度が、第1の誘電体の流動方向の屈曲度よりも小さくなるように構成されている。このような構成により、1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプよりも流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
前記態様の冷却基板によれば、前記ポンプにより、放熱効率の高い冷却基板を実現できる。
本発明の第1実施形態の冷却基板を示す斜視図。 図1のII-II線に沿った断面図。 図2のIII-III線に沿った断面図。 ポンプ周辺を拡大した図2の断面図。 本発明の第1実施形態のポンプを示す模式図。 図5のポンプの積層数と駆動力の相対値との関係を示すグラフ。 本発明の第2実施形態のポンプを説明するための図。 図5のポンプの説明するための斜視図。 実施例の冷却システムの構成を示す模式図。 従来の冷却基板を用いたときのICの最高温度と、図16のポンプを用いた本発明の冷却基板を用いたときのICの最高温度との関係を示すグラフ。 図12の冷却システムの第1の変形例を示す模式図。 図12の冷却システムの第2の変形例を示す模式図。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
前記流動方向のゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成されている。
前記ポンプによれば、第1の誘電体と第2の誘電体とが、流動方向のゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成されている。このような構成により、流動方向の駆動力が、流動方向と逆向きの駆動力よりも大きくなるので、ポンプの流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
前記流動方向のゼータ電位が相互に同じ符号となり、かつ、前記第1の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値が前記第2の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で構成されている。
前記ポンプによれば、第1の誘電体と第2の誘電体とが、流動方向のゼータ電位が相互に同じ符号となり、かつ、第1の誘電体の流動方向のゼータ電位の絶対値が第2の誘電体の流動方向のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で構成されている。このような構成により、流動方向の駆動力が、流動方向と逆向きの駆動力よりも大きくなるので、ポンプの流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
また、本発明の一態様のポンプは、
前記流体が、水である。
前記ポンプによれば、流体として、熱容量がオイルなど溶媒よりも大きい水を用いているので、例えば、冷却に用いる場合、オイルなどの溶媒を用いたポンプよりも大きな冷却効果を得ることができる。
また、本発明の一態様のポンプは、
前記流体が、添加物が添加された水である。
前記ポンプによれば、流体として添加物が添加された水を用いているので、流体の導電率あるいはゼータ電位といった諸特性を調整でき、より大きな流動の駆動力を得ることができる。
また、本発明の一態様のポンプは、
前記流体が、緩衝液、不凍液または耐腐食剤のいずれかである。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔率が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔率よりも大きい。
前記ポンプによれば、第2の誘電体の流動方向の気孔率が、第1の誘電体の流動方向の気孔率よりも大きくなるように構成されている。このような構成により、1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプよりも流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔径が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔径よりも大きい。
前記ポンプによれば、第2の誘電体の流動方向の気孔径が、第1の誘電体の流動方向の気孔径よりも大きくなるように構成されている。このような構成により、1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプよりも流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
本発明の一態様のポンプは、
流体が流れるポンプ流路と、
前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
を備え、
前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
前記複数の誘電体が、
前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
を有し、
前記第2の誘電体の前記流動方向の屈曲度が、前記第1の誘電体の前記流動方向の屈曲度よりも小さい。
前記ポンプによれば、第2の誘電体の流動方向の屈曲度が、第1の誘電体の流動方向の屈曲度よりも小さくなるように構成されている。このような構成により、1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプよりも流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
前記ポンプは、
前記複数の電極の各々が、前記複数の誘電体の各々よりも大きい前記流動方向の厚さを有していてもよい。
このような構成により、ポンプの機械的強度をさらに高めることができる。
また、本発明の一態様のポンプは、
前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がTiOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がTiOで構成されているか、または、前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がZrOで構成されているか、または、前記第1の誘電体がZrOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がポリテトラフルオロエチレンで構成され前記第2の誘電体がポリエチレンテレフタレートで構成されている。
前記ポンプによれば、第1誘電体および第2誘電体の各々が異なる酸化セラミクスの組み合わせで構成されているので、一般的な電子セラミックの製法を展開することができる。その結果、低コストで大量生産可能なポンプを実現できる。
本発明の一態様の冷却基板は、
前記流体が充填されて流れる基板流路と
前記基板流路に配置され、前記ポンプ流路が前記基板流路に接続されている前記態様のポンプと
を備える。
前記冷却基板によれば、前記ポンプにより、放熱効率の高い冷却基板を実現できる。
前記冷却基板は、
前記ポンプが、相互に長さの異なる3つの辺で構成された直方体状を有し、
前記基板流路が、前記ポンプを収容して位置決めする位置決め凹部を有していてもよい。
このような構成により、ポンプを基板流路に容易に配置することができる。
以下、本発明の一実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向あるいは位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した本開示の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本開示の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。さらに、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは必ずしも合致していない。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の冷却基板1は、例えば、略四角形の板状で、Si(シリコン)で構成されている。この冷却基板1は、図1〜図3に示すように、流体が流れる基板流路2と、この基板流路2に配置された電気浸透流を用いたポンプ10とを備えている。
冷却基板1の寸法は、例えば、厚さが0.1〜0.8mmで、板面の各辺の長さがそれぞれ約20mmである。また、冷却基板1を構成する材料としては、Siに限らず、セラミクスを用いることもできる。
流体としては、水、緩衝液、水および不凍液の混合液、水および耐腐食剤の混合液を用いることができる。
水は、好ましくは、H4〜9であり、より好ましくは、pH7(=純水)である。また、水は、例えば、KClなどの電解質を含んでいてもよい。
緩衝液は、弱酸または弱塩基とその塩とを含む水溶液であり、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、マッキルベイン(Mcllvaine)緩衝液、HEPES緩衝液、ホウ酸緩衝液、MOPS緩衝液、グッド緩衝液などを含む。ゼータ電位は流体のpHによって変動する場合がある。電極12での電気分解などによりpHが変動してゼータ電位が変動すると、前述の数式1に示すように、ポンプ10の流量Qが変動し、例えば、ポンプ10の送液効率が低下する可能性がある。このため、流体として、pHの変動が小さい緩衝液を用いることで、ポンプ10の送液効率の低下を防ぐことができる。
不凍液は、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、メタノール、エタノールなどのアルコール類などを含む。流体として水を用いる場合、水に不凍液を添加することで、流体の凝固点を低下させることができる。なお、不凍液の添加量が多いほど、水の凝固点を低下させることができる。
耐腐食剤は、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、有機酸、亜硝酸塩などを含む。例えば、ポンプ流路11または電極12が金属材料で構成されている場合、水に長時間触れることで、ポンプ流路11または電極12が腐食される恐れがある。流体として水を用いる場合、水に耐腐食剤を添加することで、金属材料で構成されたポンプ流路11または電極12の腐食を防止できる。
基板流路2は、冷却基板1の内部に設けられ、流体を循環させることで冷却基板1の板面の略全体を冷却可能に配置されている。この基板流路2は、図4に示すように、ポンプ10を収容して位置決めする位置決め部3を有している。なお、基板流路2の寸法は、例えば、幅が約500μmであり、高さが約340μmである。
図2に示すように、冷却基板1の内部には、基板流路2と冷却基板1の外部とに接続された流体供給路4が設けられている、この流体供給路4を介して、基板流路2に液体が供給され充填されている。なお、この流体供給路4は、基板流路2に流体が充填された後、基板流路2の流体が冷却基板1の外部に漏出しないように封止されている。
図3に示すように、冷却基板1の各板面には、ポンプ10に接続された一対の取り出し電極5が設けられている。この一対の取り出し電極5を介して、ポンプ10と電源100(図5参照)とが接続される。
ポンプ10は、例えば、相互に長さの異なる3つの辺を含む直方体状を有している。このポンプ10は、図5に示すように、流体が流れるポンプ流路11と、ポンプ流路11に配置されて、流体の流動方向(言い換えると、ポンプ流路11の延在方向)に流体がそれぞれ通過可能な複数の電極12および複数の誘電体13とを備えている。
ポンプ10の寸法は、例えば、3つの辺の1つの辺の長さが0.1〜0.8mmの範囲で決定され(例えば、320μm)、残り2つの辺の長さが0.1〜1.0mmの範囲で決定される(例えば、700μm、860μm)。
ポンプ流路11は、図5に示すように、矢印Aで示す方向に延びる略直線状を有し、その延在方向の両端が基板流路2に接続されている。すなわち、ポンプ流路11は、その延在方向に沿って基板流路2に充填された流体が流れるように構成されている。なお、ポンプ流路11は略直線状に限らず、湾曲状であってもよいし、中間部が屈曲していてもよい。
複数の電極12および複数の誘電体13は、相互に隣接する電極12間に1つの誘電体13が位置するように、流体の流動方向に沿って交互に接触して積層されている。電極12は、例えば、厚さ(すなわち、矢印A方向の寸法)が1μmの多孔質の導電性材料で構成され、誘電体は、例えば、厚さが20μmの多孔質のセラミクスで構成されている。多孔質の導電性材料としては、Pt、Cu、Ag、Au、Niなどの金属材料を用いることができる。また、多孔質のセラミクスとしては、SiO、Al、ZrO、TiO、BaTiOなどを用いることができる。
なお、各電極12および各誘電体13は、多孔性材料に限らず、非多孔性材料で構成してもよい。この場合、例えば、各電極12および各誘電体13に、流体の流動方向に延びる複数の貫通孔を設ければよい。
第1実施形態では、ポンプ10は、4つの電極121、122、123、124(以下、流体の流動方向の最上流から順に、第1電極121、第2電極122、第3電極123、第4電極124とする。)と、3つの誘電体131、132、133(以下、流体の流動方向の最上流から順に、第1誘電体131、第2誘電体132、第3誘電体133とする。)と備え、各電極121、122、123、124間が、矢印A方向において等間隔に配置されている。
第1電極121および第3電極123は、直流または交流の電源100の入力側端子に接続され、第2電極122および第4電極124は、電源100の出力側端子に接続されている。複数の電極121、122、123、124の隣接する電極間の極性は、相互に異なっており、例えば、第1電極121および第2電極122間に矢印A方向の電界E1が発生し、第2電極122と第3電極123との間に矢印Aに対して反対方向の電界E2が発生し、第3電極123および第4電極124間に矢印A方向の電界E3が発生するように構成されている。
このように、第1実施形態のポンプ10によれば、ポンプ流路11に配置されて、流体の流動方向に流体がそれぞれ通過可能な複数の電極12および複数の誘電体13を備え、複数の電極12および複数の誘電体13が、複数の電極12の隣接する電極間に複数の誘電体13の1つが位置するように、流体の流動方向に沿って交互に接触して積層されている。このような構成により、例えば、各誘電体13の厚さを小さくしても、ポンプ10の機械的強度を確保することができるので、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプを実現できる。
なお、各電極121、122、123、124が、各誘電体131、132、133よりも大きい流動方向Aの厚さを有するように構成することで、ポンプ10の機械的強度をさらに高めることができる。
ところで、電気浸透流を用いたポンプの流量Qは、例えば、次の数式1により算出される。
Figure 0006966007
上記数式1において、Aは誘電体の流動方向に垂直な断面の面積[m]、Lは孔質誘電体の平均気孔径[m]、εは溶液の誘電率[C/V・m]、μは溶液の粘度[Pa・s]、ζはゼータ電位[V]、λはデバイ長[m]、Iは1次修正ベッセリ関数、Iは0次修正ベッセリ関数、ΔPは圧力勾配[Pa]、Vは印加電圧[V]を表す 。
圧力勾配ΔP=0の場合、流量Qは電界強度E(=V/L)とゼータ電位ζの積に比例する。したがって、ポンプ10では、電界強度Eとゼータ電位ζの積に比例した駆動力Fが発生すると考え、この駆動力FをF=kEζと定義する(kは比例係数)。
ここで、流動方向Aに対する全長がLで、同じ厚さの誘電体をn(nは自然数)個積層したポンプ10を考える(なお、ここでは電極の厚さは無視する)。ポンプ流路11に流体が流れている状態における奇数番目の誘電体(この実施形態では、第1誘電体131および第3誘電体133。以下、第1の誘電体という。)の流動方向Aのゼータ電位をζ1とし、偶数番目の誘電体(この実施形態では、第2誘電体132。以下、第2の誘電体という。)の流動方向Aのゼータ電位をζ2としたときに、各誘電体は、ζ2=−ζ1となる材料で、言い換えると、第1の誘電体のゼータ電位と第2の誘電体のゼータ電位とが相互に逆符号となる材料で構成されている。
流動方向Aの上流から数えて奇数番目の誘電体への印加電圧をVとすると、流動方向Aの上流から数えて偶数番目の誘電体への印加電圧は−Vとなる。従って、第1の誘電体に生じる電界E1はE1=V/(L/n)=nV/Lとなり、第2の誘電体に生じる電界E2はE2=−V/(L/n)=−nV/Lとなる。この時、F=kEζの定義に従うと、第1の誘電体に発生する駆動力F1はF1=knVζ/Lであり、第2の誘電体に発生する駆動力F2はF2=knVζ/Lであるので、F1=F2となる。加えて、F1およびF2はnに比例するので、図6に示すように、積層数nが大きくなればなるほど、駆動力Fは大きくなる。このように、ゼータ電位が相互に逆符号となる材料で形成された誘電体を交互に積層することで、積層数nに比例して得られる駆動力Fが増大し、ポンプ10の流量Qを増大させることができる。なお、図6おいて、Fは、積層数n=1の場合におけるポンプ10全域における平均値を1としたときの相対値である。
すなわち、第1実施形態のポンプ10では、第1誘電体131および第3誘電体133の各々の電気二重層の電荷が正であるとすると、第2誘電体132の電気二重層の電荷は負となる。このため、第2誘電体132では、流動方向Aと逆向きの電界E2が、電気二重層の負の電荷に対して力を及ぼすので、第2誘電体132に発生する駆動力F2は、図5に示すように、流動方向Aと同じ正方向に働く。よって、第1誘電体131および第3誘電体133と、第2誘電体132とを流動方向Aのゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成することで、第1誘電体131、第2誘電体132および第3誘電体133の全ての層において流動方向Aと同じ向きの駆動力Fを得ることができ、ポンプ10の流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプ10を実現できる。
また、第1の誘電体のゼータ電位と第2の誘電体のゼータ電位とが同じ符号となり、かつ、第1のゼータ電位の絶対値が第2の誘電体のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で、各誘電体を構成することでも、同様の効果を得ることができる。
また、冷却基板1は、ポンプ10により、放熱効率の高い冷却基板を実現できる。
また、冷却基板1は、ポンプ10が、相互に長さの異なる3つの辺で構成された直方体状を有し、基板流路2が、ポンプ10を収容して位置決めする位置決め部3を有している。このような構成により、ポンプ10の基板流路2に対する姿勢を決めつつ、ポンプ10を冷却基板1に対して位置決めすることができる。
なお、図5において、第1電極121および第3電極123の電位がそれぞれ正の電位であり、第2電極122の電位が負の電位であるとする。この場合、第1誘電体131および第3誘電体133(すなわち、第1の誘電体)と、第2誘電体132(すなわち、第2の誘電体)とは、例えば、次に示す材料で構成される。
・第1の誘電体:SiO、第2の誘電体:Al
・第1の誘電体:TiO、第2の誘電体:Al
・第1の誘電体:SiO、第2の誘電体:TiO
・第1の誘電体:SiO、第2の誘電体:ZrO
・第1の誘電体:ZrO、第2の誘電体:Al
・第1の誘電体:ポリテトラフルオロエチレン、第2の誘電体:ポリエチレンテレフタレート
例えば、流体がpH7の純水である場合、SiOは、ゼータ電位が約−50mVであり、Alは、ゼータ電位が約+40mVである。
第1電極121および第3電極123の電位がそれぞれ負の電位であり、第2電極122の電位が正の電位である場合、上記材料の各組み合わせにおいて、第1誘電体131および第3誘電体133を構成する材料と、第2誘電体132を構成する材料を入れ替えればよい(例えば、第1誘電体131および第3誘電体133をAlで構成し、第2誘電体132をSiOで構成すればよい)。
ゼータ電位ζは、例えば、次のように定義する。すなわち、対象の誘電体13と同じ材料組成および同じ条件で平板試料を作製し、使用する流体(すなわち、ポンプ流路11を流れる流体)に浸ける。そして、ゼータ電位測定装置を用いて、流体に浸けられた状態の平板試料のゼータ電位を測定し、測定された結果をゼータ電位ζとして定義する。
続いて、ポンプ10の製造方法の一例を説明する。ここでは、電極12および外部電極21、22をPtで構成し、誘電体13をSiO2で構成した図6のポンプ10の製造方法を説明する。
例えば、第1誘電体131および第3誘電体133をSiOで構成し、第2誘電体132をAlで構成するとする。この場合、まず、SiOおよびAlに対してトルネン/エタノール混合溶媒、分散剤およびバインダーと共にボールミルで8hr分散処理が行われ、その後、ドクターブレード法により、第1誘電体131および第3誘電体133となるSiOのセラミックグリーンシートと、第2誘電体132となるAlのセラミックグリーンシートとが形成される。このとき、SiOまたはAlには、それぞれ同質の焼結助剤を添加する。焼結助剤は、例えば、Ca−B−SiO、ZnO−B−SiO、CaO−Al−SiOなどのガラス、または、焼成時に液相を形成する酸化物である。
次に、形成したセラミックグリーンシート上にマスクを被せて、Ptを蒸着させる(または、Ptペーストを印刷する)ことにより、SiOのセラミックグリーンシート上およびAlのセラミックグリーンシート上にそれぞれ電極12を複数形成する。形成された各電極12には、流体が通過可能な複数の孔が形成される。そして、電極12が形成されたSiOのセラミックグリーンシートおよびAlのセラミックグリーンシートを積層機で積層した後、圧着機で圧着して、電極12とSiOのセラミックグリーンシートおよびAlのセラミックグリーンシートとが交互に積層され積層体が形成される。
セラミックグリーンシート上に形成される電極12の厚さはかなり小さいため(例えば、1μm)、セラミックグリーンシートの気孔を塞ぐことがない。このため、積層体には、ポンプ流路11を構成する積層方向に延びる複数の貫通孔が形成される。
続いて、形成された積層体をダイシングでカットした後、摂氏800度〜摂氏1000度で焼成する。そして、焼成された積層体にマスクを被せて、Ptを蒸着させることにより、外部電極21、22を形成して、ポンプ10の製造が終了する。
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のポンプ10は、次に示す3点の少なくともいずれかの点で第1実施形態のポンプ10とは異なっている。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同一部分に同一参照番号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる点について説明する。
・第2誘電体132(第2の誘電体の一例)の気孔率が、第1誘電体131および第3誘電体133(第1の誘電体の一例)の気孔率よりも大きい。
・第2誘電体132の気孔径が、第1誘電体131および第3誘電体133の気孔径よりも大きい。
・第2誘電体132の屈曲度が、第1誘電体131および第3誘電体133の屈曲度よりも小さい。
第1の誘電体および第2の誘電体の気孔率、気孔径および屈曲度の関係がポンプ10の流量に与える影響について説明する。
半径r、長さLを有する1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプ(以下、従来のポンプという。)がする仕事W単層を考える。従来のポンプの誘電体は、気孔径a、気孔率ψ、屈曲度τの多孔体であるとする。このとき、誘電体の気孔数Nとすると、下記数式2より、下記数式3で表される(電極の厚さは無視する)。
Figure 0006966007
Figure 0006966007
また、気孔径aがデバイ長λよりも十分に大きい場合(気孔径aがデバイ長λの50倍以上の場合)を考える。図7に示すように、気孔径aがデバイ長λよりも十分に大きい細管300内における電気浸透流は栓流となり、その速度uは、下記数式4で表される。数式4において、εrは流体の比誘電率、ε0は真空誘電率、μは流体の粘度、Eは電界強度、ζはゼータ電位を表す。
Figure 0006966007
数式4によれば、速度uは、ゼータ電位および流体の粘度の釣り合いから決定される。言い換えると、速度uは、細管300の壁面310近傍ではたらく静電引力による仕事と、流体摩擦力によるエネルギー損失とが釣り合うような速度に収束する。
従って、ポンプがする仕事Wは、誘電体の気孔の表面積Sを用いて、W=(静電引力による仕事)+(摩擦力による仕事)=(静電引力)×(距離)×S+(摩擦力)×(距離)×Sで表される。
距離は、短時間あたりの流体粒子の移動距離に相当し、流速uに一致するので、静電引力をFa、摩擦力をFbとすると、仕事Wは、下記数式5で表される。
Figure 0006966007
静電引力Faは電界Eに比例し、電界Eは実効電極間距離L√τに反比例するため、印加電圧をVとすると、下記数式6で表される。なお、kは比例定数とする。
Figure 0006966007
摩擦力Fは流速uに比例し、流動方向の反対方向に働くため、下記数式7で表される。なお、bは比例定数とする。
Figure 0006966007
流速uと流量Qの関係は、下記数式8で表され、気孔表面積Sは、下記数式9で表される。
Figure 0006966007
Figure 0006966007
従来のポンプがする仕事W単層は、上記数式5〜9を踏まえると下記数式10で表される。数式10において、右辺の第1項が静電引力による仕事に相当し、右辺の第2項が摩擦力による仕事(エネルギー損失)に相当する。
Figure 0006966007
次に、図5のポンプ10がする仕事W積層を考える。ここでは、第1の誘電体である第1誘電体131および第3誘電体133の気孔径をa、気孔率をψ1、屈曲度τ1とし、第2の誘電体である第2誘電体132の気孔径をa、気孔率をψ、屈曲度τとする。また、第1の誘電体の流速をu、静電引力をFa1、摩擦力をFb1、気孔の表面積をSとし、第2の誘電体の流速をu、静電引力をFa2、摩擦力をFb2、気孔の表面積をSとする。各誘電体の長さは、L/3であるとすると、ポンプ10がする仕事W積層は、下記式11で表される。数式11においても、右辺の第1項が静電引力による仕事に相当し、右辺の第2項が摩擦力による仕事に相当する。
Figure 0006966007
上記数式10および上記数式11によれば、a=aかつψかつτの時、W積層=W単層となる。a>aの場合、W積層における静電引力による仕事が、W単層における静電引力による仕事よりも大きくなり、W積層における摩擦力による仕事の絶対値が、W単層における摩擦力による仕事の絶対値よりも小さくなる。ψ>ψの場合、または、τ<τの場合、W積層における静電引力による仕事は、W単層における静電引力による仕事と同じであるが、W積層における摩擦力による仕事の絶対値は、W単層における摩擦力による仕事の絶対値よりも小さくなる。従って、第2の誘電体の気孔率ψを第1の誘電体の気孔率ψよりも大きくする、または、第2の誘電体の気孔径aを第1の誘電体の気孔径aよりも大きくする、または、第2の誘電体の屈曲度τを第1の誘電体の屈曲度τよりも小さくすることで、W積層>W単層となり、従来のポンプよりもポンプ10の流量を増大させることができる。その結果、機械的強度を確保しつつ、流量を高めることができる電気浸透流を用いたポンプ10を実現できる。
なお、気孔率ψは、例えば、次のように定義する。すなわち、対象の誘電体13における流動方向Aの中心を通りかつ流動方向Aに直交する断面(図8の(i)−(i)線に沿った断面)をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察する。倍率は、気孔が観察視野内に50個程度存在するような倍率とする。コントラストを大きく設定して観察視野を撮像する。観察視野を変えながら、対象の誘電体13内の任意の領域10ヶ所の画像を取得し、取得された各画像から気孔率をそれぞれ計測する。各画像から得られた気孔率の平均を対象の誘電体13の気孔率ψと定義する。
気孔径aは、例えば、次のように定義する。すなわち、対象の誘電体13における流動方向Aの中心を通りかつ流動方向Aに直交する断面(図8の(i)−(i)線に沿った断面)をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察する。倍率は、気孔が観察視野内に50個程度存在するような倍率とする。コントラストを大きく設定して観察視野を撮像する。観察視野を変えながら、対象の誘電体13内の任意の領域10ヶ所の画像を取得し、取得された各画像から気孔径(フェレ径)をそれぞれ計測する。各画像から得られた気孔径の平均を対象の誘電体13の気孔径aと定義する。
屈曲度τは、例えば、次のように定義する。すなわち、対象の誘電体13と同じ材料組成および同じ条件で平板試料を作製し、作製した平板試料の両面に、面全体を覆う電極を設ける。この平板試料に対して十分に水を浸透させた状態で、電極間の電気抵抗Rを測定する。また、平板試料と同じ電極面積および電極間距離を有する電極対を浸水させて、電極間の電気抵抗Rrefを測定する。このとき、同じ電気抵抗を持つ水を使用し、電気抵抗Rrefの測定の際、電界の回りこみによる測定誤差が出ないよう注意する。測定した電気抵抗RおよびRrefを用いて、次の数式12で求められた結果を屈曲度τと定義する。
Figure 0006966007
なお、数式12において、ψは開気孔率を表し、アルキメデス法(JIS R 1634:1998)によって求められる。乾燥状態の試料の重量(乾燥質量)をw1とし、水中に沈めて飽水させた状態の試料の重量(水中質量)をw2とし、飽水試料を水中から取り出し表面の水滴を拭って除去したときの重量(飽水質量)をw3とすると、開気孔率ψは次の数式13で求められる。
Figure 0006966007
第2実施形態のポンプ10の製造方法は、第1誘電体131および第3誘電体133と第2誘電体132とで異なる材料または異なる製法を用いてセラミックグリーンシートを形成する点で、第1実施形態のポンプ10の製造方法と異なっている。
第2誘電体132の気孔率を第1誘電体131および第3誘電体133の気孔率よりも大きくする場合、例えば、次の材料を用いる。すなわち、第1誘電体131および第3誘電体133の材料として、粒径(D50)が1μmのSiO紛を使用し、第2誘電体132の材料として、粒径(D50)が2μmのSiO粉と粒径(D50)が0.2μmのSiO粉とを重量比1:1で混合した材料を使用する。
第2誘電体132の気孔径を第1誘電体131および第3誘電体133の気孔径よりも大きくする場合、例えば、次の材料を用いる。すなわち、第1誘電体131および第3誘電体133の材料として、粒径(D50)が1μmのSiO粉を使用し、第2誘電体132の材料として、粒径(D50)が10μmのSiO紛を使用する。なお、気孔径aは、10nm以上であるのが好ましく、0.1μm〜10μmであるのがより好ましい。気孔径aが10nm未満である場合、気孔径aが小さすぎて壁面310(図7参照)に形成される電気二重層が重なって送液効率が低下するおそれがある。
第2誘電体132の屈曲度を第1誘電体131および第3誘電体133の屈曲度よりも小さくする場合、例えば、次の製法材料を用いる。すなわち、第1誘電体131および第3誘電体133では、SiOに対してトルネン/エタノール混合溶媒、分散剤およびバインダーと共にボールミルで8hr分散処理が行われ、その後、ドクターブレード法により、種々の厚みのセラミックグリーンシートが形成される。形成されたセラミックグリーンシートに対して、レーザー光の照射またはトラックドエッチングにより、細孔が形成される。第2誘電体132では、樹脂ビーズ(例えば直径1μm)およびSiOに対してトルネン/エタノール混合溶媒、分散剤およびバインダーと共にボールミルで8hr分散処理が行われ、その後、ドクターブレード法により、種々の厚みのセラミックグリーンシートが形成される。第1誘電体131および第3誘電体133では、ストレートポアが形成され、第2誘電体132では、屈曲したポアが形成される。なお、SiOには、同質の焼結助剤が添加される。焼結助剤は例えば、CaO−B−SiO、ZnO−B−SiO、CaO−Al−SiOなどのガラス、または、焼成時に液相を形成する酸化物である。
基板30に実装されたIC(集積回路)40上に、放熱グリース50、冷却基板60、放熱グリース50、ヒートシンク70、および、クーリングファン80の順に積層した図9に示す冷却システム200を用いて、IC40の最高温度Tを測定した。
具体的には、冷却基板60として、本発明の第1実施形態のポンプ10の誘電体13の数が2から30の範囲でそれぞれ異なる複数の本発明の冷却基板1の1つを用いた場合のIC40の最高温度Tと、従来の冷却基板(すなわち、1つの誘電体と、この誘電体の両端の一対の電極とで構成されたポンプ)を用いた場合のIC40の最高温度T0とを測定した。本発明の冷却基板1において、各ポンプ10は、全て同じ形状および大きさになるように構成した。
従来の冷却基板を用いたときのIC40の最高温度T0と、本発明の冷却基板1を用いたときのIC40の最高温度Tとの関係を図10に示す。なお、図10において、縦軸は、従来の冷却基板を用いたときのIC40の最高温度T0に対する本発明の冷却基板1を用いたときのIC40の最高温度Tの比(すなわち、相対温度)を示しており、横軸は、ポンプ10の誘電体13の数を示している。
図10に示されているように、測定の結果、第1実施形態の冷却基板1を用いた場合のIC40の最高温度Tは、従来の冷却基板を用いた場合のIC40最高温度T0よりも低くなることが分かった。また、第1実施形態の冷却基板1を用いた場合、誘電体13の数が30以下であれば、誘電体13の数が多くなればなるほど、IC40の最高温度Tが低くなることが分かった。特に、誘電体13の数が10以下の場合、第1実施形態の冷却基板1を用いることで、従来の冷却基板1を用いた場合よりも大きな冷却効果が得られることが分かった。
また、冷却システム200は、例えば、図11に示すように、冷却基板60とヒートシンク70とを一体化して、冷却基板60がヒートシンク70を兼ねるように構成してもよい。このような構成により、小型の冷却システム200を実現できる。
また、冷却システム200は、例えば、図12に示すように、ヒートシンク70およびクーリングファン80に代えて、IC40から離れて配置された熱交換器90を設け、冷却基板60内の流体を熱交換器90で冷却するように構成してもよい。このように、IC40から離れて熱交換器90を配置することで、熱交換器90の形状、大きさおよび配置などの制約が生じ難い。このため、図9および図11の冷却システム200と比較して、冷却能力の高い熱交換器90を用いることができて、冷却基板60の冷却能力を大幅に高めることができるので、より発熱が大きな熱源への適用が可能になる。
なお、前記様々な実施形態または変形例のうちの任意の実施形態または変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせまたは実施例同士の組み合わせまたは実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態または実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
本発明のポンプ10は、例えば、ICの冷却システムに適用できる。
1 冷却基板
2 基板流路
3 位置決め部
4 流体供給路
5 取り出し電極
10 ポンプ
11 ポンプ流路
12 電極
13 誘電体
21、22 外部電極
30 基板
40 IC
50 放熱グリース
60 冷却基板
70 ヒートシンク
80 クーリングファン
90 熱交換器
100 電源

Claims (13)

  1. 流体が流れるポンプ流路と、
    前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
    を備え、
    前記複数の誘電体の各々は、前記流動方向に対向する一対の第1主面を有し、前記複数の電極の各々は、前記流動方向に対向する一対の第2主面を有し、
    前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置しかつ前記第1主面および前記第2主面が接触した状態で、前記流動方向に沿って交互に積層され、
    前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
    前記複数の誘電体が、
    前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
    前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
    を有し、
    前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
    前記流動方向のゼータ電位が相互に逆符号となる材料で構成されている、ポンプ。
  2. 流体が流れるポンプ流路と、
    前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
    を備え、
    前記複数の誘電体の各々は、前記流動方向に対向する一対の第1主面を有し、前記複数の電極の各々は、前記流動方向に対向する一対の第2主面を有し、
    前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置しかつ前記第1主面および前記第2主面が接触した状態で、前記流動方向に沿って交互に積層され、
    前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
    前記複数の誘電体が、
    前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
    前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
    を有し、
    前記第1の誘電体および前記第2の誘電体の各々が、
    前記流動方向のゼータ電位が相互に同じ符号となり、かつ、前記第1の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値が前記第2の誘電体の前記流動方向のゼータ電位の絶対値よりも大きくなる材料で構成されている、ポンプ。
  3. 前記複数の電極が接続された外部電極を備え、
    前記複数の電極の各々は、一対の前記第2主面を繋ぐ部分を介して前記外部電極に接続されている、請求項1または2のポンプ。
  4. 前記流体が、水である、請求項1から3のいずれか1つのポンプ。
  5. 前記流体が、添加物が添加された水である、請求項1から3のいずれか1つのポンプ。
  6. 前記添加物が、緩衝液、不凍液または耐腐食剤のいずれかである、請求項のポンプ。
  7. 流体が流れるポンプ流路と、
    前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
    を備え、
    前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
    前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
    前記複数の誘電体が、
    前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
    前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
    を有し、
    前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔率が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔率よりも大きい、ポンプ。
  8. 流体が流れるポンプ流路と、
    前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
    を備え、
    前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
    前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
    前記複数の誘電体が、
    前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
    前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
    を有し、
    前記第2の誘電体の前記流動方向の気孔径が、前記第1の誘電体の前記流動方向の気孔径よりも大きい、ポンプ。
  9. 流体が流れるポンプ流路と、
    前記ポンプ流路に配置されて、前記流体の流動方向に前記流体がそれぞれ通過可能な複数の電極および複数の誘電体と
    を備え、
    前記複数の電極および前記複数の誘電体は、前記複数の電極の隣接する電極間に前記複数の誘電体の1つが位置するように、前記流動方向に沿って交互に接触して積層され、
    前記複数の電極は、隣接する電極間の極性が相互に異なり、
    前記複数の誘電体が、
    前記流動方向の最上流から数えて奇数番目に配置されている第1の誘電体と、
    前記流動方向の最上流から数えて偶数番目に配置されている第2の誘電体と
    を有し、
    前記第2の誘電体の前記流動方向の屈曲度が、前記第1の誘電体の前記流動方向の屈曲度よりも小さい、ポンプ。
  10. 前記複数の電極の各々が、前記複数の誘電体の各々よりも大きい前記流動方向の厚さを有している、請求項1からのいずれか1つのポンプ。
  11. 前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がTiOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がTiOで構成されているか、または、前記第1の誘電体がSiOで構成され前記第2の誘電体がZrOで構成されているか、または、前記第1の誘電体がZrOで構成され前記第2の誘電体がAlで構成されているか、または、前記第1の誘電体がポリテトラフルオロエチレンで構成され前記第2の誘電体がポリエチレンテレフタレートで構成されている、請求項1から10のいずれか1つのポンプ。
  12. 前記流体が充填されて流れる基板流路と
    前記基板流路に配置され、前記ポンプ流路が前記基板流路に接続されている、請求項1から11のいずれか1つのポンプと
    を備える、冷却基板。
  13. 前記ポンプが、相互に長さの異なる3つの辺で構成された直方体状を有し、
    前記基板流路が、前記ポンプを収容して位置決めする位置決め部を有している、請求項12の冷却基板。
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