JP2018189571A - センサ素子 - Google Patents

センサ素子

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Abstract

【課題】Ptの拡散と、固体電解質層と絶縁層との熱膨張係数差に起因するクラックとを抑制したセンサ素子を提供する。【解決手段】平板状センサ素子101のヒータ部70が、Ptを含むヒータエレメント72と、素子の基体部を構成する固体電解質4,6と異なる熱膨張係数を有する絶縁材料を90〜99.9wt%の重量比で含んでなる絶縁層74と、ヒータ電極71とを有し、ヒータ電極を除く部分が基体部に埋設されてなり、ヒータエレメントは厚みが10〜50μmであって絶縁層に覆われており、絶縁層は気孔率が4%以下であって厚みが50〜150μmであり、絶縁層と、素子長手方向における先端部との距離、素子厚み方向におけるヒータ電極が備わる主面との距離、素子幅方向における素子側面との距離がそれぞれ0.25〜0.75mm、0.20〜0.60mm、0.20〜0.60mmであり、素子の全長が80.0mm以下であるようにした。【選択図】図1

Description

本発明は、酸素イオン伝導性固体電解質を用いて構成されたセンサ素子に関し、特にそのヒータの構成に関する。
従来より、自動車のエンジン等の内燃機関における燃焼ガスや排気ガス等の被測定ガス中の所定ガス成分(例えばO、NOx、HC、COなど)の濃度を測定する装置として、ジルコニア(ZrO)等の酸素イオン伝導性固体電解質を用いてセンサ素子を形成したガスセンサが公知である。
こうしたガスセンサのセンサ素子(ガスセンサ素子)として、対象となるガス成分の検知等を担うセンサ部と、係るセンサ部を構成する酸素イオン伝導性固体電解質を活性化させるべくセンサ部を加熱するためのヒータを有するヒータ部とが、積層・一体化された構成を有するものが広く知られている。係る構成を有するセンサ素子は、ガスセンサの駆動開始時、センサ素子を(センサ部を)早期に所望の駆動温度(あるいは活性化温度)まで加熱することができるという利点がある。
そのようなヒータは通常、Pt(白金)などの金属からなる抵抗発熱部を有するヒータエレメントと、該ヒータエレメントと周囲とを電気的に絶縁するべくヒータエレメントを取り囲むように設けられた絶縁層とを含んで構成される。絶縁層を構成する絶縁材料としては、アルミナやスピネルなどが用いられる。
このようなセンサ素子を継続的に使用すると、使用時の加熱と使用後の冷却という温度サイクルが繰り返されることになるが、絶縁層にはその都度、周囲の固体電解質層との熱膨張係数差に起因した応力が生じる。係る応力の作用により絶縁層にクラックが発生することを抑制するべく、係る絶縁層を多孔質構造としたセンサ素子が、すでに公知である(例えば、特許文献1参照)。
また、係る熱膨張差に起因して生じる応力を緩和するべく、固体電解質層または絶縁層の熱膨張係数(熱膨張率)を調整したセンサ素子も、すでに公知である(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。特許文献2には、固体電解質層を構成するジルコニアを、C相(キュービック相)とM相(モノクリニック相)との混相とすることにより、固体電解質層の熱膨張係数を調整する態様が開示されている。一方、特許文献3には、絶縁層を構成するアルミナに希土類元素を添加することにより、絶縁層の熱膨張係数を固体電解質層の熱膨張係数と同等となるように調整する態様が開示されている。
さらには、絶縁層とこれに接する固体電解質層との密着性を確保するために、絶縁層のうち、固体電解質層との界面部分のみを緻密化したセンサ素子も、すでに公知である(例えば特許文献4参照)。
加えて、絶縁層を緻密に形成しつつも耐熱衝撃性の低下が抑制された、円筒形のセンサ素子も、すでに公知である(例えば特許文献5参照)。
特許第3668050号公報 特許第3873302号公報 特許第4980996号公報 特許第3096281号公報 特許第4573939号公報
センサ素子を駆動する際の駆動温度(ヒータによる加熱温度)は、センサ素子の構成や各構成要素の材質、センサ素子に対する要求性能などに応じて適宜に定められてよい。しかしながら、ヒータエレメントをPtにて形成し、絶縁層を多孔質に形成したヒータを有する従来のセンサ素子については、駆動温度を850℃程度の比較的高温に設定して使用を継続した場合、ヒータ抵抗値が経時的に増大し、やがてはセンサ素子が使用不能となるという不具合が、駆動温度が低い場合に比して生じやすいという傾向がある。
本発明の発明者が鋭意検討したところ、係るヒータ抵抗値の増大は、駆動時に高温状態とされたヒータエレメントのPtが、気相となって多孔質である絶縁層内を拡散することが原因であると推察された。
センサ素子の長寿命化のためには、そのような使用時におけるPtの拡散が抑制される構成が求められるが、一方で、従来のセンサ素子同様、固体電解質層と絶縁層との熱膨張係数差に起因したクラックの抑制も実現される必要がある。
特許文献1ないし特許文献5のいずれにも、センサ素子の使用時におけるPtの拡散抑制について、何ら開示も示唆もなされてはいない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、使用時におけるPtの拡散の抑制と、固体電解質層と絶縁層との熱膨張係数差に起因したクラックの発生の抑制とを両立させることにより、長寿命化が図られたセンサ素子を提供することを、目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、被測定ガス中の所定ガス成分を検知するガスセンサに備わる、平板状のセンサ素子であって、酸素イオン伝導性の固体電解質からなる基体部と、前記センサ素子を加熱するヒータ部と、を備え、前記ヒータ部は、外部から給電されることによって発熱する、Ptを含むヒータエレメントと、前記固体電解質と異なる熱膨張係数を有する絶縁材料を90wt%〜99.9wt%の重量比で含んでなる絶縁層と、前記センサ素子の主面に露出して備わり、前記ヒータエレメントと電気的に接続されているヒータ電極と、を有し、前記ヒータ電極を除く部分が前記基体部に埋設されてなり、前記ヒータエレメントは前記絶縁層によって覆われており、前記絶縁層の気孔率が4%以下であり、前記絶縁層の厚みが50μm〜150μmであり、前記ヒータエレメントの厚みが10μm〜50μmであり、前記センサ素子の長手方向における前記センサ素子の先端部と前記絶縁層との距離が0.25mm〜0.75mmであり、前記センサ素子の厚み方向における前記ヒータ電極が備わる主面から前記絶縁層までの距離が0.20mm〜0.60mmであり、前記センサ素子の幅方向における前記センサ素子の側面から前記絶縁層までの距離が0.20mm〜0.60mmであり、前記センサ素子の長手方向の全長が80.0mm以下である、ことを特徴とする。
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るセンサ素子であって、前記酸素イオン伝導性の固体電解質がジルコニアであり、前記絶縁材料がα−アルミナである、ことを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様に係るセンサ素子であって、前記絶縁層の気孔率が2%以下である、ことを特徴とする。
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに係るセンサ素子であって、前記基体部の一方端部に設けられたガス導入口と、前記基体部の内部に設けられ、前記ガス導入口と所定の拡散抵抗の下で連通する少なくとも1つの内部空所と、前記基体部の外面に設けられた外側ポンプ電極と、前記少なくとも1つの内部空所に面して設けられた内側ポンプ電極と、前記外側ポンプ電極と前記少なくとも1つの内側ポンプ電極の間に存在する前記固体電解質からなり、前記少なくとも1つの内部空所と外部との間で酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う、少なくとも1つの電気化学的ポンプセルと、を備え、前記ヒータ電極を除く前記ヒータ部が、前記ガス導入口から前記少なくとも1つの内部空所に至るガス流通部の下方位置において、前記固体電解質によって前記ガス流通部と離隔させられつつ前記ガス流通部の延在方向に沿って配置されてなる、ことを特徴とする。
本発明の第1ないし第4の態様によれば、センサ素子が継続的に使用され、使用時の加熱と使用後の冷却という温度サイクルが繰り返される場合における、Ptの拡散と、固体電解質層とヒータ絶縁層との熱膨張係数差に起因したクラックの発生とが、好適に抑制されるので、平板状のセンサ素子の長寿命化が、実現される。
センサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。 図1のA−A’位置におけるセンサ素子101の長手方向に垂直な断面の概略図である。 ヒータ部70の要部の概略的な平面配置を示す図である。 センサ素子101を作製する際の処理の流れを示す図である。 ヒータエレメント72とヒータ絶縁層74の形成に係る手順をより詳細に示す図である。
<ガスセンサの概略構成>
初めに、本実施の形態に係るセンサ素子101を含む、ガスセンサ100の概略構成について説明する。本実施の形態においては、ガスセンサ100が、センサ素子101によってNOxを検知し、その濃度を測定する、限界電流型のNOxセンサである場合を例として説明を行う。
図1は、センサ素子101の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す図である。また、図2は、図1のA−A’位置におけるセンサ素子101の長手方向に垂直な断面の概略図である。
センサ素子101は、それぞれが酸素イオン伝導性固体電解質であるジルコニア(ZrO)からなる(例えばイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)などからなる)、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの固体電解質層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する、平板状の(長尺板状の)素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。なお、以降においては、図1におけるこれら6つの層のそれぞれの上側の面を単に上面、下側の面を単に下面と称することがある。また、センサ素子101のうち固体電解質からなる部分全体を基体部と総称する。
係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空所20へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面(センサ素子101の一方主面)の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部22c(図2)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrOとのサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に可変電源24によって所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、基準電極42によって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。
さらに、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保たれるようになっている。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41が動作することによりなされる。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101と外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、アルミナ(Al)を主成分とする多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護膜としても機能する。
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N+O)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された制御電圧V2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすれば、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができ、これによって被測定ガス中のNOx成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。そして、測定電極44におけるNOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることによって流れるポンプ電流Ip2が、被測定ガス中のNOxの濃度に略比例することに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
<ヒータ部>
センサ素子101は、さらに、基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子101を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。図3は、ヒータ部70の要部の概略的な平面配置を示す図である。
ヒータ部70は、ヒータ電極71(71a、71b、71c)と、ヒータエレメント72と、ヒータリード72a(72a1、72a2)と、抵抗検出リード72bと、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74とを備えている。ただし、図3においてはスルーホール73とヒータ絶縁層74とは省略している。ヒータ部70は、ヒータ電極71を除いて、センサ素子101の基体部に埋設されてなる。
ヒータ電極71(71a、71b、71c)は、第1基板層1の下面(センサ素子101の他方主面)に接する態様にて形成されてなる電極である。
ヒータエレメント72は、第2基板層2と第3基板層3との間に設けられた抵抗発熱体である。ヒータエレメント72は、センサ素子101の外部から通電経路であるヒータ電極71、スルーホール73、およびヒータリード72aを通じて給電されることより発熱する。ヒータエレメント72は、Ptにて、あるいはPtを主成分として、形成されてなる。ヒータエレメント72は、センサ素子101のガス流通部が備わる側の所定範囲に、素子厚み方向においてガス流通部と対向するように埋設されている。
ヒータエレメント72の両端に接続された1対のヒータリード(ヒータリード72a1とヒータリード72a2)は、略同一の形状を有するように、つまりは、両者の抵抗値が同じであるように、設けられる。ヒータリード72a1、72a2はそれぞれ、対応するスルーホール73を介して異なるヒータ電極71a、71bと接続されている。
さらに、ヒータエレメント72と一方のヒータリード72a2との接続部75から引き出される態様にて、抵抗検出リード72bが設けられている。なお、抵抗検出リード72bの抵抗値は無視できるものとする。抵抗検出リード72bは、対応するスルーホール73を介してヒータ電極71cと接続されている。
センサ素子101においては、ヒータ電極71a、71bの間に電流を流し、ヒータエレメント72による加熱を行うことで、センサ素子101の各部を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。具体的には、センサ素子101は、ガス流通部付近の固体電解質の温度が750℃〜950℃程度になるように加熱される。係る加熱によって、センサ素子101において基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。
ヒータエレメント72の抵抗値(ヒータ抵抗値)Rは、ヒータリード72a1とヒータリード72a2の抵抗値が同じであり、抵抗検出リード72bの抵抗値が無視できることから、ヒータ電極71a、71bの間の抵抗値をRとし、ヒータ電極71b、71cの間の抵抗値をRとした場合、
=R−R ・・・・(1)
なる式にて算出される。ヒータ抵抗値は、ヒータエレメント72により加熱を行う際の加熱温度の制御に用いられる。
ヒータ絶縁層74は、ヒータエレメント72を覆う態様にて形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2とヒータエレメント72との間の電気的絶縁性、および、第3基板層3とヒータエレメント72との間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
ヒータ絶縁層74は、Al(α−アルミナ)を主成分として90wt%〜99.9wt%の重量比で含んでなる。その他、副成分として、原料粉末中に焼結助剤として含まれていたSiOおよびMgCOに由来するSiの化合物およびMgの化合物を含んでなる。これらSiの化合物およびMgの化合物は等量ずつ含まれるのが好適である。加えて、本実施の形態においては、係るヒータ絶縁層74が、気孔率が4.0%以下、好ましくは2.0%以下という、緻密化層として設けられてなる。
ヒータ絶縁層74における4.0%以下という気孔率は、主成分たるAlの原料を特定のものとすること、および、最終的にセンサ素子101を得る際の焼成条件を特定のものとすることにより、実現されてなる。詳細については後述する。
なお、本実施の形態において、ヒータ絶縁層74の気孔率は、センサ素子101のヒータ電極72を含む長手方向に垂直な断面につき、研磨したしたうえでSEMにて撮像し、得られたSEM像を二値化処理することにより、算出するものとする。
ヒータ絶縁層74が緻密化層として設けられるのは、センサ素子101の使用時に、ヒータエレメント72を構成するPtが、ヒータ絶縁層74の気孔内に拡散することを、防ぐためである。本実施の形態に係るセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74を気孔率が4.0%以下の緻密化層として備えることで、センサ素子101を継続的に使用した場合にあっても、Ptの拡散に起因したヒータエレメント72の損傷が好適に抑制されている。それゆえ、従来のセンサ素子に比して、長寿命化が実現されてなる。
なお、ヒータエレメント72からのPtの拡散の有無は、一定時間使用した後のセンサ素子101のヒータ絶縁層74を実際に露出させ、係る露出したヒータ絶縁層についてSEMなどによる像観察および組成分析を行うことによって直接に確認できるほか、次の(2)式にて算出される、使用前(初期)のヒータ抵抗値R0を基準としたときの使用後のヒータ抵抗値Rの上昇率(抵抗上昇率)からも把握できる。
抵抗上昇率(%)=100×(R−R0)/R0 ・・・・(2)
ヒータ抵抗値は、一方のヒータ電極71から他方のヒータ電極71に至るまでのヒータ電流の経路における電気抵抗値であるが、その変動要因は主としてヒータエレメント72からのPtの拡散であることが、あらかじめ確認されている。それゆえ、使用初期と使用後の双方においてヒータ抵抗値を測定し、(2)式にて算出される抵抗上昇率が、所定の閾値を超えているか否かを判断することで、センサ素子101を破壊せずとも、センサ素子101を使用することでヒータエレメント72からPtが拡散しているか否かを判断することができる。
具体的には、抵抗上昇率が2%以上である場合に、ヒータエレメント72からPtが拡散していると判断される。本実施の形態に係る、ヒータ絶縁層74の気孔率が4.0%以下であるセンサ素子101においては、(2)式にて算出される抵抗上昇率が、2%未満に抑制される。また、ヒータ絶縁層74の気孔率が2.0%以下である場合には、抵抗上昇率が0.7%以下にまで抑制される。
ところで、特許文献5においても言及されているように、従来、本実施の形態に係るセンサ素子101と同様の平板状のセンサ素子において、アルミナを主成分とする絶縁層を緻密化層として設けた場合には、使用時の加熱と使用後の冷却という温度サイクルが繰り返された結果として、ヒータ絶縁層と固体電解質層との熱膨張係数差に起因したクラックが発生するものと考えられていた。なお、ジルコニアの熱膨張係数は概ね10〜11(×10−6/℃)であり、アルミナの熱膨張係数は概ね7〜9(×10−6/℃)である。
しかしながら、本実施の形態に係るセンサ素子101は、以下に示す各部の寸法につき、それぞれに付記した範囲内の値とすることによって、平板状をなし、かつ、緻密化されたヒータ絶縁層74を有しつつも、ヒータ絶縁層74と固体電解質層(特に第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因したクラックの発生が、好適に抑制されたものとなっている。
ヒータ絶縁層74の厚みt1:50μm〜150μm;
ヒータエレメント72の厚みt2:10μm〜50μm;
センサ素子101の長手方向(図1の図面視左右方向)における先端部とヒータ絶縁層74との距離(以下、先端部距離)d1:0.25mm〜0.75mm;
センサ素子101の厚み方向(図1の図面視上下方向)における他方主面(ヒータ電極71が備わる方の主面)からヒータ絶縁層74までの距離(≒第1基板層1と第2基板層2の厚みの総和、以下、厚み方向距離)d2:0.20mm〜0.60mm;
センサ素子101の幅方向(図2の図面視左右方向)におけるセンサ素子101の側面からヒータ絶縁層74までの距離(以下、側部距離)d3:0.20mm〜0.60mm;
センサ素子101の長手方向の全長L:80.0mm以下。
以下においては、これらのセンサ素子101各部の寸法に関する条件をセンサ素子寸法条件と総称する。本実施の形態に係るセンサ素子101は、係るセンサ素子寸法条件の充足によるクラック発生の抑制という観点からも、長寿命化が図られているといえる。
係るセンサ素子寸法条件のうち、ヒータエレメント72の厚みt2の範囲は、ヒータ抵抗値がセンサ素子101の性能・寿命等の観点から定められる所定の範囲内の値となるようにする、という観点から定められる。
また、ヒータ絶縁層74の厚みt1はその内側に存在するヒータエレメント72を含んだ値である。ヒータ絶縁層74の厚みt1をセンサ素子寸法条件における上限値よりも大きくすることは、ヒータ絶縁層74と固体電解質層(特に第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因した応力が増大し、その結果、センサ素子101にクラックが生じやすくなるため好ましくない。一方、ヒータ絶縁層74の厚みt1をセンサ素子寸法条件における下限値よりも小さくすることは、絶縁性が十分に確保されず、ヒータエレメント72を流れるヒータ電流がリークするおそれがあるため好ましくない。ただし、係る厚みt1は一定である必要はなく、ヒータエレメント72が存在する箇所としない箇所とで異なっていてもよい。
さらに、基体部内におけるヒータ絶縁層74の配置位置を規定する先端部距離d1、厚み方向距離d2、および側部距離d3を、センサ素子寸法条件における下限値よりも小さくすることは、センサ素子101の強度を弱めることになり、ヒータ絶縁層74と固体電解質層(特に第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因した応力を原因とするクラックが発生しやすくなるため好ましくない。なお、センサ素子101の全長Lの下限値は、センサ素子101の設計上の要請から適宜に定められる。
一方、先端部距離d1、厚み方向距離d2、側部距離d3、およびセンサ素子101の全長Lをセンサ素子寸法条件における上限値よりも大きくすることは、素子が大型化し、加熱のためにより大きなヒータ電流を流すことが必要となる結果、リーク電流も大きくなる、という点において好ましくない。
<センサ素子の製造プロセス>
次に、上述のような構成および特徴を有するセンサ素子101を製造するプロセスについて説明する。本実施の形態においては、ジルコニアなどの酸素イオン伝導性固体電解質をセラミックス成分として含むグリーンシートからなる積層体を形成し、該積層体を切断・焼成することによってセンサ素子101を作製する。
以下においては、図1に示した6つの層からなるセンサ素子101を作製する場合を例として説明する。係る場合、第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6とに対応する6枚のグリーンシートが用意されることになる。
図4は、センサ素子101を作製する際の処理の流れを示す図である。図5は、ヒータエレメント72とヒータ絶縁層74の形成に係る手順をより詳細に示す図である。
センサ素子101を作製する場合、まず、パターンが形成されていないグリーンシートであるブランクシート(図示省略)を用意する(ステップS1)。6つの層からなるセンサ素子101を作製する場合であれば、各層に対応させて6枚のブランクシートが用意される。ブランクシートは、印刷時や積層時の位置決めに用いる複数のシート穴が設けられている。係るシート穴は、パターン形成に先立つブランクシートの段階で、パンチング装置による打ち抜き処理などで、あらかじめ形成されている。なお、対応する層が内部空間を構成するグリーンシートの場合、該内部空間に対応する貫通部も、同様の打ち抜き処理などによってあらかじめ設けられる。また、センサ素子101の各層に対応するそれぞれのブランクシートの厚みは、全て同じである必要はない。
各層に対応したブランクシートが用意できると、それぞれのブランクシートに対してパターン印刷・乾燥処理を行う(ステップS2)。パターンや接着剤の印刷には、公知のスクリーン印刷技術を利用可能である。また、印刷後の乾燥処理についても、公知の乾燥手段を利用可能である。
例えば、ヒータエレメント72、ヒータリード72a、および抵抗検出リード72となるパターン(以下、ヒータパターン)とヒータ絶縁層74となるパターンの形成についてであれば、図5に示すように、まず、焼成後に第2基板層2となるブランクシートが、印刷対象として用意される(ステップS21)。なお、印刷を繰り返すことによるブランクシートの変形等を考慮し、あらかじめ第1基板層1となるブランクシートと、第2基板層2となるブランクシートとが積層されたもの(先行積層シート)が、用意される態様であってもよい。
これらブランクシートあるいは先行積層シートが用意されると、その上に、ヒータ絶縁層74のうち、第2基板層2に隣り合う部分を形成するべく、ヒータ絶縁層形成用のペースト(以下、絶縁ペースト)が所定のパターンに印刷される(ステップS22)。形成しようとするヒータ絶縁層74の厚みによっては、係る印刷が複数回繰り返されてもよい。
絶縁ペーストとしては、あらかじめ主成分たるAl(α−アルミナ)と焼結助剤として添加されるSiOとMgCOとを湿式混合し、その後乾燥させることで得られる無機混合粉末と、あらかじめ溶解させたバインダー成分(分散剤、有機溶媒、ポリビニルブチラール樹脂、および非イオン性界面活性剤)とを混合し、所定の粘度に調整したものが、使用される。
その際、Al(α−アルミナ)の原料粉末としては、平均粒子径が0.05μm〜0.4μm、比表面積が10m/g〜30m/g程度のものを用いる。係る要件を充足する原料粉末の使用と焼結助剤の存在により、気孔率が4.0%以下と緻密であってPtの拡散が抑制できるヒータ絶縁層74を、設けることができる。Alの原料粉末が異なる場合、例えばα−アルミナであっても上述の要件を満たさないものや、γ−アルミナやθ−アルミナを主相とする遷移アルミナ等を原料粉末とした場合、Ptの拡散が抑制できる程度の緻密なヒータ絶縁層74の形成は難しい。
絶縁ペーストによるパターンが印刷されると、続いてその上に、ヒータパターンを形成するべく、ヒータパターン形成用のペーストが積層印刷される(ステップS23)。なお、ヒータパターンの形成に際しては、形成対象(ヒータエレメント72、ヒータリード72a、および抵抗検出リード72)に応じて異なるペーストが使用されてもよい。
最後に、ヒータ絶縁層74のうち、第3基板層3に隣り合う部分を形成するべく、絶縁ペーストが所定のパターンに再度印刷される(ステップS24)。その際には、先に印刷した絶縁ペーストによるパターンとの間で、ヒータパターンが隠れるようにする。ヒータパターンが存在しない箇所においては、先に印刷した絶縁ペーストによるパターンの上に、後から印刷した絶縁ペーストによるパターンが重畳することになる。係る印刷についても、形成しようとするヒータ絶縁層74の厚みによっては複数回繰り返されてもよい。
より詳細には、絶縁ペーストおよびヒータパターン形成用のペーストによるパターンの形成は、焼成時の収縮を鑑み、最終的に得られるセンサ素子101において、上述したセンサ素子寸法条件のうち、センサ素子101の全長L以外の条件が充足される態様にて行われる。その他、種々の電極等のパターン形成についても同様に、最終的に得られるセンサ素子101において形成対象物があらかじめ定められたサイズにて形成される条件にて、行われる。
各ブランクシートに対するパターン印刷が終わると、各層に対応するグリーンシート同士を積層・接着するための接着用ペーストの印刷・乾燥処理を行う(ステップS3)。
続いて、接着剤が塗布されたグリーンシートを所定の順序に積み重ねて、所定の温度・圧力条件を与えることで圧着させ、一の積層体とする圧着処理を行う(ステップS4)。係る圧着処理によって、ヒータパターンおよびこれを被覆するヒータ絶縁層形成用のパターンが、焼成後に第2基板層2になるグリーンシートと第3基板層3になるグリーンシートに挟み込まれた状態が得られる。
具体的には、図示しない所定の積層治具に積層対象となるグリーンシートをシート穴により位置決めしつつ積み重ねて保持し、公知の油圧プレス機などの積層機によって積層治具ごと加熱・加圧することによって行う。加熱・加圧を行う圧力・温度・時間については、用いる積層機にも依存するものであるが、良好な積層が実現できるよう、適宜の条件が定められればよい。
上述のようにして積層体が得られると、続いて、係る積層体の複数個所を切断してセンサ素子101個々の単位(素子体と称する)に切り出す(ステップS5)。より詳細には、係る切断は、焼成時の収縮を鑑みつつ、最終的に得られるセンサ素子101の全長Lについてセンサ素子寸法条件が充足される態様にて行われる。
切り出された素子体を、1300℃〜1500℃程度の焼成温度で焼成する(ステップS6)。これにより、ヒータ絶縁層74が気孔率4.0%以下の緻密化層として形成されてなるとともに、上述したセンサ素子寸法条件を充足するセンサ素子101が生成される。
このようにして得られたセンサ素子101は、所定のハウジングに収容され、ガスセンサ100の本体(図示せず)に組み込まれる。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、固体電解質からなる基体部の内部にヒータ部を有する平板状のセンサ素子において、ヒータ絶縁層を気孔率が4.0%以下の緻密化層として設けつつ、上述したセンサ素子寸法条件が充足されるようにする。これにより、係るセンサ素子が継続的に使用され、使用時の加熱と使用後の冷却という温度サイクルが繰り返される場合における、Ptの拡散と、固体電解質層とヒータ絶縁層との熱膨張係数差に起因したクラックの発生とが、好適に抑制される。すなわち、本実施の形態によれば、平板状のセンサ素子の長寿命化が、実現される。
<変形例>
上述の実施の形態においては、センサ素子101が、限界電流型のNOxセンサに備わる、直列2室構造型の平板状のセンサ素子である場合を例として説明を行っている。しかしながら、ヒータ絶縁層を緻密化層として設けつつ、センサ素子寸法条件が充足されるようにすることで、センサ素子の長寿命化を図るという態様は、同様の構成を有しかつ他のガス種を検知するセンサ素子はもとより、センサ部とヒータ部とが一体に構成された種々の平板状のセンサ素子に適用が可能である。
例えば、3つの内部空所を有する限界電流型のガスセンサに備わるセンサ素子に適用される態様であってもよいし、上述の実施の形態とは内部空所の配置態様が異なるセンサ素子に適用される態様であってもよいし、混成電位型のガスセンサに備わるセンサ素子に適用される態様であってもよい。
ヒータ絶縁層74を形成するための絶縁ペーストの作製条件と、ヒータ絶縁層74の気孔率と、センサ素子寸法条件の規定の対象としたセンサ素子101の6箇所の寸法(ヒータ絶縁層74の厚みt1、ヒータエレメント72の厚みt2、先端部距離d1、厚み方向距離d2、側部距離d3、および、センサ素子101の全長L)との組み合わせを種々に違えた、全21種類(全実施例および全比較例)のセンサ素子101を作製した。それぞれのセンサ素子101について、ヒータ部70による加熱を長時間継続させる耐久試験を行い、試験後の状態を評価した。
絶縁ペーストの作製条件については、原料として使用するAl(アルミナ)の原料種を2水準に違えるとともに、(焼結)助剤の添加率(組成比)を0.1wt%、6wt%、10wt%、15wt%の4水準に違えた。なお、以降においては、アルミナの原料種について、上述のα−アルミナであって平均粒子径が0.05μm〜0.4μmであり、比表面積が10m/g〜30m/g程度である、という要件を満たすものを原料種「A」とし、平均粒径が0.5μm〜1.0μmで、比表面積が70m/g〜100m/g程度であるものを原料種「B」とする。原料種「B」は、従来のセンサ素子に備わる多孔質のヒータ絶縁層の形成に使用可能なものである。
絶縁ペーストの作製は次のようにした。まず、容積1Lのポリポット内に主成分たるAlの粉末と、焼結助剤たるSiOおよびMgCOの粉末と、溶媒としてのIPAと、Al製の玉石とを投入し、該ポリポットを100rpmの回転数にて24時間混合して得られた混合物を乾燥させて、無機混合粉末を得た。係る無機混合粉末と、自動公転攪拌機にて4分間攪拌されることによって溶解されたバインダー成分(分散剤、有機溶媒、ポリビニルブチラール樹脂、および非イオン性界面活性剤)とを、自動公転攪拌機にて15分間、Al製の玉石を用いて攪拌・混合することによって、解砕度が50μm以下で、粘度が20〜40Pa・sの絶縁ペーストを得た。なお、いずれの実施例および比較例においても、SiOおよびMgCOは等量とした。
また、ヒータ絶縁層74の気孔率は、アルミナの原料種を「A」としたセンサ素子101については、2.0%と4.0%の2水準に違えた。これは、気孔率が4.0%となるときのセンサ素子101の作製条件(素子体の焼成条件)をあらかじめ実験的に特定し、これを基準条件として、作製条件を違えることにより、気孔率が2.0%となるセンサ素子を作製した。具体的には、焼成温度を1300℃〜1500℃程度の範囲内で違える所定の焼成プロファイルを実行することにより、2.0%と4.0%の2水準の気孔率を実現した。
一方、アルミナの原料種を「B」としたセンサ素子101については、原料種が「A」の場合の基準条件と同じ条件で作製したものと、基準条件と同じ条件の場合よりも気孔率が小さくなるように焼成条件を調整したものとの2水準とした。
なお、ヒータ絶縁層74の気孔率は次のようにして特定した。まず、センサ素子101の長手方向に垂直でかつヒータエレメント72を含む断面を脱粒のないように研磨した面についてSEM像(反射電子像、倍率1000倍、120万画素)を撮像した。係る断面SEM像のうち、ヒータ絶縁層74の断面において面積が2000μm以上である2つの領域を気孔率算出領域として特定し、それら2つの領域のそれぞれについて画像処理により気孔率を算出した。そして、得られた2つの値の平均値を、当該実施例あるいは比較例の気孔率とした。
画像処理による気孔率の算出は、ソフトウェアとしてImage-Pro Premier 9.2(日本ローパー社製)を使用して行った。具体的には、それぞれの気孔率算出領域について、気孔以外の部分がマスク領域となるように二値化およびマスク画像生成を行い、マスク領域以外の領域について面積比(%)を求め、その値を当該気孔率算出領域についての気孔率とした。
また、センサ素子寸法条件の規定の対象とした全6箇所の寸法(ヒータ絶縁層74の厚みt1、ヒータエレメント72の厚みt2、先端部距離d1、厚み方向距離d2、側部距離d3、および、センサ素子101の全長L)については、以下のように違えた。
t1:40μm、50μm、100μm、150μm、160μmの5水準;
t2:5μm、10μm、30μm、50μm、60μmの5水準;
d1:0.20mm、0.25mm、0.50mm、0.75mm、0.80mmの5水準;
d2:0.16mm、0.20mm、0.40mm、0.60mm、0.70mmの5水準;
d3:0.16mm、0.20mm、0.40mm、0.60mm、0.70mmの5水準;
L:60.0mm、80.0mm、90.0mmの3水準。
以上に基づき作製条件の組み合わせを違えた全21種類のセンサ素子101のうち、Al(アルミナ)の原料種が「A」であり、助剤の添加率が0.1wt%〜10wt%の範囲を満たし、ヒータ絶縁層74の気孔率が4.0%以下であり、かつ、t1、t2、d1、d2、d3、およびLの全てについて上述のセンサ素子寸法条件が全て充足されるセンサ素子101が実施例(実施例1〜実施例11)に該当し、それらの要件を1つでも満たさないものが比較例(比較例1〜比較例10)に該当する。
耐久試験は、ヒータエレメント72による加熱を900℃で2000時間継続するという条件で行った。係る耐久試験後のセンサ素子101について、クラックの発生有無の確認と、リーク電流値の測定と、SEM像に基づくヒータ絶縁層74におけるPtの拡散の有無の確認とを行ったほか、試験前後において測定ヒータ抵抗値を測定し、当該測定結果を(2)式に代入することにより試験後における抵抗上昇率を算出した。
なお、リーク電流の測定は、ヒータエレメント72にてセンサ素子101を700℃〜900℃程度に加熱した状態でヒータ電極71と外側ポンプ電極23との間に一定の電圧をかけ、両電極間に生じる電流を測定することにより行った。
実施例1〜実施例11のセンサ素子101の形成条件と各種評価結果とを表1に一覧にして示す。また、比較例1〜比較例9のセンサ素子101の形成条件と各種評価結果とを表2に一覧にして示す。なお、表1および表2においてはヒータ絶縁層74を単に「絶縁層」と記載し、また、ヒータエレメント72を単に「ヒータ」と記載している。
Figure 2018189571
Figure 2018189571
(実施例1〜実施例11)
アルミナの原料種を「A」とし、実施例1を基準に、実施例2においてはヒータ絶縁層74の気孔率を他の実施例での値よりも小さくした。また、実施例3においてはヒータ絶縁層74の厚みt1を他の実施例よりも小さくし、実施例4においては逆に大きくした。また実施例5についてはヒータエレメント72の厚みt2を他の実施例よりも小さくし、実施例6においては逆に大きくした。また、実施例7においては先端部距離d1、厚み方向距離d2、および側部距離d3の値を他の実施例よりも小さくし、実施例8においては逆に大きくした。実施例9においてはセンサ素子101の全長Lの値を他の実施例よりも大きくした。実施例10においては助剤添加量を他の実施例よりも小さくし、実施例11においては逆に大きくした。
実施例1〜実施例11のセンサ素子101においてはいずれも、ヒータ絶縁層74が、気孔率が4.0%または2.0%(実施例2のみ)の緻密化層として形成されているが、耐久試験後においては、クラックの発生とヒータ絶縁層74におけるPtの拡散の双方共に、確認されなかった。また、リーク電流は12μA以下に留まり、抵抗上昇率も1.1%以下に留まった。
係る結果は、アルミナの原料種を「A」とし、助剤の添加率が0.1wt%〜10wt%の範囲を満たすようし、ヒータ絶縁層を気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成し、かつ、ヒータ絶縁層74の厚みt1、ヒータエレメント72の厚みt2、先端部距離d1、厚み方向距離d2、側部距離d3、および、センサ素子101の全長Lの全てについて、上述のセンサ素子寸法条件が全て充足されるようにした、センサ素子101においては、Ptの拡散と、ヒータ絶縁層74と固体電解質層(特に第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因したクラックの発生とが、好適に抑制されることを、示している。
なお、ヒータ絶縁層74の気孔率を2.0%にまで低減させた実施例2においては、耐久試験後の抵抗上昇率が全ての実施例および比較例のなかで最小の0.7%に留まった。このことは、センサ素子寸法条件が充足される場合、センサ素子101のヒータ部70の経時的安定性という観点からは、ヒータ絶縁層74の気孔率を2.0%以下とすることがより好ましい、ということを意味している。
(比較例1〜比較例2)
比較例1および比較例2に係るセンサ素子101は、アルミナの原料種を「B」として作製したものである。比較例1に係るセンサ素子101は、他の条件は実施例1と同じとして作製した。比較例2に係るセンサ素子101は、比較例1に比してヒータ絶縁層74の気孔率が小さくなるように焼成条件を調整したほかは、実施例1と同じ条件にて作製した。
比較例1のセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74が、気孔率が35.1%の多孔質層として形成された。一方、比較例2のセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74が、気孔率が5.0%という比較的緻密な層として形成された。
これら比較例1および比較例2に係るセンサ素子101は、耐久試験後にクラックの発生はみられない点においては実施例1〜実施例11と同様であり、また、リーク電流の大きさも実施例1〜実施例11と同程度であったが、Ptの拡散が確認され、かつ、抵抗上昇率が2.0%以上となった。
係る結果は、ヒータ絶縁層の気孔率が4.0%を上回る場合には、Ptの拡散が抑制されないことを示している。
(比較例3)
比較例3に係るセンサ素子101は、ヒータ絶縁層74の厚みt1をセンサ素子寸法条件の下限値(50μm、実施例3の場合に相当)よりも小さい40μmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例3に係るセンサ素子101においては、実施例1〜実施例11と同様、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されており、耐久試験後にクラックの発生はみられず、Ptの拡散も確認されず、抵抗上昇率も実施例と同程度の1.1%に留まったが、リーク電流の値は実施例1〜実施例11に比して著しく大きい105μAとなった。
係る結果は、センサ素子101におけるクラックの抑制とPtの拡散の抑制とを目的として、ヒータ絶縁層74を緻密化層として設ける場合、ヒータ絶縁層74の厚みがセンサ素子寸法条件の下限値よりも小さすぎると、たとえクラック抑制とPtの拡散抑制の効果が得られるとしても、ヒータ絶縁層74が本来の機能である絶縁効果を奏さず、好ましくないことを示している。
(比較例4)
比較例4に係るセンサ素子101は、ヒータ絶縁層74の厚みt1をセンサ素子寸法条件の上限値(150μm、実施例4の場合に相当)よりも大きい160μmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例4に係るセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されているが、耐久試験後においては、リーク電流の値は実施例4と同程度の8μAにまで抑制されていたものの、クラックの発生とPtの拡散とがともに確認されたほか、抵抗上昇率も2.0%を上回った。
比較例4のセンサ素子101にクラックが発生したのは、ヒータ絶縁層74の厚みt1がセンサ素子寸法条件における上限値よりも大きかったために、ヒータ絶縁層74と周囲の固体電解質層(例えば第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因する応力が十分に緩和されなかったためであると考えられる。また、ヒータ絶縁層74を緻密化層として形成しているにもかかわらず、Ptが拡散しているのは、形成されたクラックを介した拡散が生じたためであると考えられる。
(比較例5)
比較例5に係るセンサ素子101は、ヒータエレメント72の厚みt2をセンサ素子寸法条件の下限値(10μm、実施例5の場合に相当)よりも小さい5μmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例5に係るセンサ素子101においては、実施例1〜実施例11と同様、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されており、耐久試験後にクラックの発生はみられず、Ptの拡散も確認されず、リーク電流の値も実施例と同程度の10μAに留まったが、抵抗上昇率は2.0%を上回った。
Ptの拡散が確認されなかったにもかかわらず、抵抗上昇が生じているということは、その要因が、ヒータエレメント72そのものにあることを意味する。比較例5に係るセンサ素子101は、ヒータエレメント72の厚みt2を小さくしたほかは実施例1と同様に作製したものであるから、厚みt2を小さくしたことが、抵抗値の安定性を損ねる要因であったと判断される。
係る結果は、ヒータエレメント72の厚みがセンサ素子寸法条件の下限値よりも小さすぎる場合、たとえヒータ絶縁層74を緻密化層として設けることで、クラック抑制とPtの拡散抑制の効果が得られるとしても、ヒータ抵抗値が安定せず、好ましくないことを示している。
(比較例6)
比較例6に係るセンサ素子101は、ヒータエレメント72の厚みt2をセンサ素子寸法条件の上限値(50μm、実施例6の場合に相当)よりも大きい60μmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例6に係るセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されているが、耐久試験後においては、リーク電流の値は実施例1と同程度の10μAに留まったものの、クラックの発生とPtの拡散とがともに確認されたほか、抵抗上昇率も2.0%を上回った。
比較例6のセンサ素子101にクラックが発生したのは、ヒータエレメント72の厚みt2がセンサ素子寸法条件における上限値よりも大きかったために、ヒータ絶縁層74と周囲の固体電解質層(例えば第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因する応力が十分に緩和されなかったためであると考えられる。また、ヒータ絶縁層74を緻密化層として形成しているにもかかわらず、Ptが拡散しているのは、形成されたクラックを介した拡散が生じたためであると考えられる。
(比較例7)
比較例7に係るセンサ素子101は、先端部距離d1、厚み方向距離d2、および側部距離d3をそれぞれについてのセンサ素子寸法条件の下限値(d1:0.25mm、d2:0.20mm、d3:0.20mm、実施例7相当)よりも小さい値であるd1=0.20mm、d2=0.16mm、d3=0.16mmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例7に係るセンサ素子101においては、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されているが、耐久試験後においては、リーク電流の値は実施例1と同程度の11μAに留まったものの、クラックの発生とPtの拡散とがともに確認されたほか、抵抗上昇率も2.0%を上回った。
比較例7のセンサ素子101にクラックが発生したのは、先端部距離d1、厚み方向距離d2、および側部距離d3がセンサ素子寸法条件における下限値よりも小さかったために、ヒータ絶縁層74と周囲の固体電解質層(例えば第2基板層2および第3基板層3)との熱膨張係数差に起因する応力が十分に緩和されなかったためであると考えられる。また、ヒータ絶縁層74を緻密化層として形成しているにもかかわらず、Ptが拡散しているのは、形成されたクラックを介した拡散が生じたためであると考えられる。
(比較例8および比較例9)
比較例8に係るセンサ素子101は、先端部距離d1、厚み方向距離d1、および側部距離d3をそれぞれについてのセンサ素子寸法条件の上限値(d1:0.75mm、d2:0.60mm、d3:0.60mm、実施例8の場合に相当)よりも大きい値であるd1=0.80mm、d2=0.70mm、d3=0.70mmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
また、比較例9に係るセンサ素子101は、センサ素子101の全長Lの値をセンサ素子寸法条件の上限値(80.0mm、実施例9の場合に相当)よりも大きい値であるL=90.0mmとしたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例8および比較例9に係るセンサ素子101においては、実施例1〜実施例11と同様、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されており、耐久試験後にクラックの発生はみられず、Ptの拡散も確認されず、抵抗上昇率も実施例と同程度の1.0%に留まったが、リーク電流の値は実施例1〜実施例11に比して著しく大きい値(比較例8:76μA、比較例9:85μA)となった。これは、センサ素子101の寸法が大きいために、センサ素子101を加熱する際に大きな電流が必要となり、それゆえリーク電流も大きくなったことによるものと考えられる。
係る結果は、センサ素子101におけるクラックの抑制とPtの拡散の抑制とを目的として、ヒータ絶縁層74を緻密化層として設ける場合、先端部距離、厚み方向距離、側部距離、およびセンサ素子101の全長が、センサ素子寸法条件における上限値よりも大きすぎると、たとえクラック抑制とPtの拡散抑制の効果が得られるとしても、ヒータ絶縁層74が本来の機能である絶縁効果を奏さず、好ましくないことを示している。
また、比較例3〜比較例9の結果は、センサ素子101におけるクラックの抑制とPtの拡散の抑制とを目的として、ヒータ絶縁層74を緻密化層として設け、さらにセンサ素子101におけるリーク電流を抑制する場合には、少なくとも、ヒータ絶縁層74の厚みt1、ヒータエレメントの厚みt2、先端部距離d1、厚み方向距離d2、側部距離d3、およびセンサ素子101の全長Lについて、センサ素子寸法条件を充足する必要があることを示している。
(比較例10)
比較例10に係るセンサ素子101は、絶縁ペースト作製時の助剤添加量を他の実施例における最大値である10.0wt%(実施例11の場合に相当)よりも大きい15.0wt%としたほかは、実施例1と同じ条件にて作製したものである。
比較例10に係るセンサ素子101においては、実施例1〜実施例11と同様、ヒータ絶縁層74は気孔率が4.0%以下の緻密化層として形成されており、耐久試験後にクラックの発生はみられず、Ptの拡散も確認されず、抵抗上昇率も実施例と同程度の1.0%に留まったが、リーク電流の値は比較例3と同様、実施例1〜実施例11に比して著しく大きい86μAとなった。
係る大きなリーク電流の発生は、ヒータ絶縁層形成用の絶縁ペーストを作製する際の焼結助剤の添加量が多すぎたために、当該絶縁ペーストを用いて形成されたヒータ絶縁層74に残存した焼結助剤あるいはこれに由来する副成分が、ヒータ電流のリーク経路を形成してしまったことによるものと推察される。
すなわち、センサ素子101におけるクラックの抑制とPtの拡散の抑制とを目的として、ヒータ絶縁層74を緻密化層として設けるに際して、ヒータ絶縁層形成用の絶縁ペーストに焼結助剤を過度に添加することは、ヒータ絶縁層74にリーク経路が形成され、ヒータ絶縁層74が本来の機能である絶縁効果を奏さなくなる要因となるため、好ましくないといえる。
1 第1基板層
2 第2基板層
3 第3基板層
4 第1固体電解質層
5 スペーサ層
6 第2固体電解質層
10 ガス導入口
11 第1拡散律速部
12 緩衝空間
13 第2拡散律速部
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
22 内側ポンプ電極
23 外側ポンプ電極
30 第3拡散律速部
40 第2内部空所
41 測定用ポンプセル
42 基準電極
43 基準ガス導入空間
44 測定電極
45 第4拡散律速部
48 大気導入層
50 補助ポンプセル
51 補助ポンプ電極
70 ヒータ部
71(71a、71b、71c) ヒータ電極
72 ヒータエレメント
72a(72a1、72a2) ヒータリード
72b 抵抗検出リード
73 スルーホール
74 ヒータ絶縁層
75 接続部
100 ガスセンサ
101 センサ素子

Claims (4)

  1. 被測定ガス中の所定ガス成分を検知するガスセンサに備わる、平板状のセンサ素子であって、
    酸素イオン伝導性の固体電解質からなる基体部と、
    前記センサ素子を加熱するヒータ部と、
    を備え、
    前記ヒータ部は、
    外部から給電されることによって発熱する、Ptを含むヒータエレメントと、
    前記固体電解質と異なる熱膨張係数を有する絶縁材料を90wt%〜99.9wt%の重量比で含んでなる絶縁層と、
    前記センサ素子の主面に露出して備わり、前記ヒータエレメントと電気的に接続されているヒータ電極と、
    を有し、前記ヒータ電極を除く部分が前記基体部に埋設されてなり、
    前記ヒータエレメントは前記絶縁層によって覆われており、
    前記絶縁層の気孔率が4%以下であり、
    前記絶縁層の厚みが50μm〜150μmであり、
    前記ヒータエレメントの厚みが10μm〜50μmであり、
    前記センサ素子の長手方向における前記センサ素子の先端部と前記絶縁層との距離が0.25mm〜0.75mmであり、
    前記センサ素子の厚み方向における前記ヒータ電極が備わる主面から前記絶縁層までの距離が0.20mm〜0.60mmであり、
    前記センサ素子の幅方向における前記センサ素子の側面から前記絶縁層までの距離が0.20mm〜0.60mmであり、
    前記センサ素子の長手方向の全長が80.0mm以下である、
    ことを特徴とするセンサ素子。
  2. 請求項1に記載のセンサ素子であって、
    前記酸素イオン伝導性の固体電解質がジルコニアであり、
    前記絶縁材料がα−アルミナである、
    ことを特徴とするセンサ素子。
  3. 請求項1または請求項2に記載のセンサ素子であって、
    前記絶縁層の気孔率が2%以下である、
    ことを特徴とするセンサ素子。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセンサ素子であって、
    前記基体部の一方端部に設けられたガス導入口と、
    前記基体部の内部に設けられ、前記ガス導入口と所定の拡散抵抗の下で連通する少なくとも1つの内部空所と、
    前記基体部の外面に設けられた外側ポンプ電極と、前記少なくとも1つの内部空所に面して設けられた内側ポンプ電極と、前記外側ポンプ電極と前記少なくとも1つの内側ポンプ電極の間に存在する前記固体電解質からなり、前記少なくとも1つの内部空所と外部との間で酸素の汲み入れおよび汲み出しを行う、少なくとも1つの電気化学的ポンプセルと、
    を備え、
    前記ヒータ電極を除く前記ヒータ部が、前記ガス導入口から前記少なくとも1つの内部空所に至るガス流通部の下方位置において、前記固体電解質によって前記ガス流通部と離隔させられつつ前記ガス流通部の延在方向に沿って配置されてなる、
    ことを特徴とするセンサ素子。
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