JP6964058B2 - 塗工紙 - Google Patents
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特許文献1のシートでは非水溶性の熱可塑性ビヒクルを多く含む層によって、特許文献2のシートでは架橋されたシーリング層によって、ホログラフィー効果が発現するエンボス加工を達成する。しかしながら、これらシートは、熱可塑性ビヒクルを多く含む層及び架橋されたシーリング層によってむしろ印刷時のインキ乾燥性が悪く、その結果、商業印刷として印刷適性に問題がある。例えば、インキ乾燥性が低下すると、インキ汚れが発生し易い。また、インキ乾燥性が悪いと、商業印刷として生産性に劣って好ましくない。
(1)商業印刷として印刷が可能であること(印刷適性)
(2)印刷前にホログラフィー効果を有すること(前ホログラフィー性)
(3)印刷後にホログラフィー効果を有すること(後ホログラフィー性)
本発明において、「塗工層」とは、用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に、原紙と区別できる明確な領域を有する場合、当該領域を指す。例えば、樹脂成分やポリマー成分を塗工し、塗工された前記成分が少量であって原紙に吸収され、結果として、用紙の断面を電子顕微鏡によって観察した際に原紙と区別できる明確な領域を有しない場合、「塗工層」は無となる。
カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって平滑性や厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置としては、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
キャスト処理とは、湿潤状態にある塗工層を加熱された鏡面に圧着することによって、鏡面形状を塗工層の表面に転写すると共に塗工層から水分を乾燥除去して、塗工層に光沢を付与する処理をいう。キャスト処理に使用する装置は通常、表面がクロムメッキされたシリンダーの表面に、弾性ロールを用いて連続的に塗工紙を圧着する構造の装置である。キャスト処理の方式は、塗工層塗工液を塗工後一旦乾燥させてから再度水分を付与し、その後キャスト装置の鏡面に圧着するリウェット法、塗工層塗工液を塗工後に乾燥させずそのままキャスト装置の鏡面に圧着するいわゆる直接法などを例示することができる。ただし、キャスト処理の方式は、これらの方式に限定されない。
ストライプ形状の凹部における最大深さが1.5μmに満たない場合、塗工紙は、前ホログラフィー及び後ホログラフィー性を有することができない。ストライプ形状の凹部における最大深さが3.0μmを超える場合、塗工紙は、前ホログラフィー及び後ホログラフィー性を有することができない。
白色顔料は、塗工紙分野で従来公知の白色顔料である。白色顔料の例としては、重質炭酸カルシウム、各種軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、マイカ、タルク、板状硫酸バリウム、板状水酸化マグネシウム、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、天然シリカ、乾式合成シリカ、湿式合成シリカ、密実有機顔料、中空有機顔料、お椀型有機顔料及び金平糖型有機顔料などの各種有機顔料、並びにこれらを変性した顔料、並びにこれら二種以上の複合体などを挙げることができる。白色顔料は、これらからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
最外塗工層がエンボス加工部位を得るために、最外塗工層は、中空有機顔料又は平均粒子径の0.3μm以下の無機白色顔料を含有することが好ましい。例えば、最外塗工層は、レーザー回折・散乱法又は動的光散乱法によって体積基準として得られる粒度分布から求められる平均粒子径が0.1μm以上0.3μm以下の無機白色顔料を、最外塗工層中の白色顔料100質量部に対して80質量部以上含有することが好ましい。又は、最外塗工層は、中空有機顔料を最外塗工層中の白色顔料100質量部に対して8質量部以上30質量部以下含有することが好ましい。
最外塗工層におけるバインダーの含有量は、最外塗工層の白色顔料100質量部に対して5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
バインダーは、塗工紙分野で従来公知のバインダーである。バインダーの例としては、スチレン−ブタジエン系及びエチレン−酢酸ビニル系などの各種共重合体、アクリル酸系樹脂、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリア及びメラミンなどのホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物が挙げられる。さらにバインダーの例としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉及びそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類、並びにそれらの変性体を挙げることができる。またバインダーの例としては、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白及びコラーゲンなどの天然タンパク質及びそれらの変性体、ポリ乳酸及びポリペプチドなどの合成高分子を挙げることができる。バインダーは、これらからなる群から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。
塗工紙は、原紙のカレンダー処理、塗工層の塗工量とカレンダー処理及び/又はキャスト処理とによって、あるいは塗工層中の白色顔料の種類及び含有量によって、塗工紙の最外塗工層を有する側におけるエンボス加工後のエンボス未加工部位において、ISO8254−1:2009の規定に基づく入射・受光角75度の白紙光沢度を40%以上にすることができる。
本発明は、樹脂層を設けて該樹脂層にエンボス加工する方法又は箔押しによりエンボス加工面を付与して形成する方法に因らず、従来から商業印刷に使用される塗工紙に近い構造でありながら、ホログラフィー効果を発現しかつ凹凸が維持される特定のエンボス加工部位の形状を発明し、最外塗工層面に該エンボス加工部位を含む塗工紙を見出したものである。すなわち、最外塗工層が白色顔料及びバインダーを少なくとも含有し、前記最外塗工層が1個あたりの面積30mm2以下であるエンボス加工部位を最外塗工層面に個数、位置及び向きを任意に含み、前記エンボス加工がストライプ形状であり、前記ストライプ形状の凹部の幅が15μm以下かつ凹部の間隔が5μm以上15μm以下であり、前記ストライプ形状の凹部における最大深さが1.5μm以上3.0μm以下かつ塗工層の厚さ以内である塗工紙によって、印刷適性及びホログラフィー効果を有することができる。
濾水度420mlcsfのLBKP80質量部及び濾水度450mlcsfのNBKP20質量部からなるパルプスラリーに、填料として炭酸カルシウム9質量部、カチオン化澱粉1質量部、硫酸バンド1質量部及びアルキルケテンダイマー型サイズ剤0.05質量部を添加して、長網抄紙機で抄造し、サイズプレス装置で酸化澱粉を片面あたり1.5g/m2になるよう両面に付着させ、マシンカレンダー処理をして坪量100g/m2の原紙を作製した。
水を媒体として、下記の配合で最外塗工層塗工液を調製した。
重質炭酸カルシウム 35質量部
カオリン 55質量部
中空有機顔料(平均粒子径1μm、中空率50体積%) 10質量部
スチレン−ブタジエン系共重合体 10質量部
ポリビニルアルコール(ケン化度99.5モル%、平均重合度1200)
2質量部
ステアリン酸カルシウム 0.5質量部
pH調整剤 適宜
上記の内容で配合し、水で混合及び分散して、濃度43質量%に調整した。
塗工紙を以下の手順にて作製した。
原紙上に最外塗工層塗工液をブレードコーターにて両面塗工し、その後に乾燥した。さらに乾燥後に、カレンダー処理を施した。
エンボス加工は、エンボスパターンを構成する凸構造が設置されたエンボスロールとラバーロールとの間に塗工紙を通して、個々のエンボス加工部位の大きさが均等である前記エンボスパターンを塗工紙の片面に型押しすることによって行った。エンボスパターンは複数用意した。エンボス加工部位1個あたりの面積、エンボスの形状及びエンボス加工部位の合計が占める面積率を表1に記載する。
また、最外塗工層表面において、エンボス加工部位のストライプ形状の凹部における最大深さは、キーエンス社製のCOLOR3D−LaserScanningMicroscope VK−8700を用いて、倍率100倍で観察した画像に対し、カットオフ値2.5mmの条件でJIS B 0601−2001に準じて得られる粗さ曲線から求められる最大高さ粗さRzの値を測定することによって求めた。
塗工層の厚さは、日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM−6490LAを用いた断面観察することで測定した。
各実施例及び各比較例の塗工紙について、エンボス加工部位のストライプ形状の凹部の幅、凹部の間隔、凹部における最大深さ、最外塗工層の厚さを表1に記載する。
前ホログラフィー性は、印刷する前の白紙状態である塗工紙を観察することで行った。上記のように得られたエンボス加工部位を有する塗工紙に対して、室内照明下で目視にて観察してホログラフィー効果の視認程度を下記の基準で評価した。本発明において、2、3又は4の評価であれば、塗工紙は、前ホログラフィー性を有するものとする。
4:良好にホログラフィー効果が認められる。
3:概ね良好にホログラフィー効果が認められる。
2:微かにホログラフィー効果が認められる。
1:ホログラフィー効果が認められない。
印刷適性は、オフセット印刷機を用いて実施した。枚葉オフセット印刷機(三菱重工社製DAIYA3H)を用いて、6000枚/時間の印刷速度で2000枚の印刷を行い、印刷後、画像部分のインクの抜け、画像部分の滲み及び画像部分の汚れの観点から印刷サンプルの状態を目視で観察し、印刷適性の有無を評価した。
後ホログラフィー性は、オフセット印刷後の画像部分に存在するエンボス加工部位を有する塗工紙を観察することで行った。印刷された画像部分に存在するエンボス加工部位を有する塗工紙に対して、室内照明下で目視にて観察してホログラフィー効果の視認程度を下記の基準で評価した。本発明において、2、3又は4の評価であれば、塗工紙は、後ホログラフィー性を有するものとする。
4:良好にホログラフィー効果が認められる。
3:概ね良好にホログラフィー効果が認められる。
2:微かにホログラフィー効果が認められる。
1:ホログラフィー効果が認められない。
また主に、実施例1及び実施例10と実施例11との対比から、最外塗工層において、エンボス加工部位の合計が占める面積率が60面積%以下であることが好ましいと分かる。
Claims (2)
- 原紙と塗工層とからなる塗工紙であって、前記塗工層中、原紙を基準として最外に位置する最外塗工層が白色顔料及びバインダーを少なくとも含有し、前記最外塗工層が1個あたりの面積30mm2以下であるエンボス加工部位を最外塗工層面に個数、位置及び向きを任意に含み、前記エンボス加工部位のエンボスがストライプ形状であり、前記ストライプ形状の凹部の幅が15μm以下かつ凹部の間隔が5μm以上15μm以下であり、前記ストライプ形状の凹部における最大深さが1.5μm以上3.0μm以下かつ前記最外塗工層を含む塗工層全体の厚さ以内である塗工紙。
- 最外塗工層面において、エンボス加工部位の合計が占める面積率が60面積%以下である請求項1に記載の塗工紙。
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