JP2024034577A - 印刷用塗工紙 - Google Patents

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淳 中村
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Abstract

【課題】本発明の目的は、白紙部の白さ不均一性を抑え及び層剥離強さが良好な、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙を提供することである。【解決手段】課題は、パルプ、填料、紙力剤、歩留り向上剤及び内添サイズ剤、並びにサイズプレスによって表面サイズ剤を含有する原紙と前記原紙に対して塗工層とを有し、前記紙力剤が澱粉類を含み、前記歩留り向上剤が硫酸アルミニウムを含み、前記内添サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤を含み、前記表面サイズ剤が澱粉類を含み、前記原紙の密度が0.81g/cm3以下であり、前記塗工層において原紙を基準にして最外に位置する最外塗工層が白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を含有し、用紙の密度が1.00g/cm3超である印刷用塗工紙によって解決される。【選択図】なし

Description

本発明は、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙に関する。
軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙は、新聞折り込みチラシに代表される配布用印刷物、カタログ、各種冊子及び雑誌のカラーページなどに多く使用される。
例えば、軽量コート紙に該当するA3グレード相当の印刷用塗工紙に関し、白紙光沢度(75°)が40%超60%未満の印刷用塗工紙であって、原紙の少なくとも片面に片面塗工量5~15g/mの顔料塗工層を備え、最外顔料塗工層が0.80μm以下の平均粒子径(D50)を有する不定形炭酸カルシウムを含む、印刷用塗工紙が公知である(例えば、特許文献1参照)。
国際公開第2020/171198号
軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙は、原紙の影響を受け易い。この理由は、塗工層の塗工量が少ないためである。主な影響には、白紙部の白さ不均一性を挙げることができる。白紙部の白さ不均一性の発生には、異なる二種の理由がある。
理由の一つは、原紙の低い平滑性の影響を受けないように塗工した塗工層塗工液がレベリングする前に乾燥して塗工層の平滑化を図ると、原紙の凹凸に対して塗工層の厚さが不均一になるからである。その結果、印刷用塗工紙は、塗工層の厚さによる原紙色の影響の違いによって白紙部の白さ不均一性を発生する。なおかつ、塗工層塗工液がレベリングする前に乾燥した塗工層を有する印刷用塗工紙は、原紙に対する塗工層の喰い込み効果が不足して原紙と塗工層との間で層間剥離を発生し易くなる。一方で、原紙に対して塗工層塗工液がレベリングして原紙の凹凸に対して塗工層の厚さが均一になると、印刷用塗工紙は、原紙の低い平滑性を再現するために平滑性に劣る。
一般に、原紙の平滑性を得るためには原紙をカレンダー処理する。カレンダー処理を施した原紙は、相対的に凸部に該当する部分が潰されて硬化する。カレンダー処理を施した原紙は、潰された凸部と潰されない凹部との間で部分的に密度が異なる領域を有する。従って、理由のもう一つは、部分的に密度が異なる領域を有する原紙に対して塗工層塗工液を塗工すると不均一な浸透を発生するからである。その結果、印刷用塗工紙は、部分的に密度が異なる領域を有する原紙に依存して塗工層塗工液の成分分布が異なる領域を生むために白紙部の白さ不均一性を発生する。一方で、部分的に異なる原紙の密度を軽減するために過度のカレンダー処理を施すと、印刷用塗工紙は、原紙に対する塗工層の喰い込み効果が小さくなって原紙と塗工層との間で層間剥離を発生し易くなる。
また仮に、原紙にカレンダー処理を施したとしても、上記影響を受け難くすることが必要である。
本発明の目的は、印刷用塗工紙の平滑性を悪化させることなく、白紙部の白さ不均一性を抑え及び層間剥離の発生を抑えた層間剥離強さが良好な、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙を提供することである。
本発明者らは鋭意研究を行った結果、本発明に係る印刷用塗工紙を発明するに至った。本発明の目的は以下により達成される。
パルプ、填料、紙力剤、歩留り向上剤及び内添サイズ剤、並びにサイズプレスによって表面サイズ剤を含有する原紙と前記原紙に対して塗工層とを有し、前記紙力剤が澱粉類を含み、前記歩留り向上剤が硫酸アルミニウムを含み、前記内添サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤を含み、前記表面サイズ剤が澱粉類を含み、前記原紙の密度が0.81g/cm以下であり、前記塗工層において原紙を基準にして最外に位置する最外塗工層が白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を含有し、用紙の密度が1.00g/cm超である、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙。
本発明により、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当しつつ、印刷用塗工紙の平滑性を悪化させることなく、白紙部の白さ不均一性を抑え及び層間剥離強さが良好な印刷用塗工紙を提供することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
経済産業省が公表する紙品目では、軽量コート紙を「1m当たり両面で30g程度以下の塗料を塗布、使用される原紙は上質紙、雑誌の本文、カラーページ、チラシなどに使用されるもの。」と定義する。
本発明の印刷用塗工紙は、パルプ、填料、紙力剤、歩留り向上剤及び内添サイズ剤、並びにサイズプレスによって表面サイズ剤を含有する原紙と、前記原紙に対して塗工層とを有する。そして、前記塗工層において原紙を基準にして最外に位置する最外塗工層が白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を含有する。
上記パルプは、製紙分野で従来公知のものである。パルプの例としては、LBKP(Leaf Bleached Kraft Pulp)、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)などの化学パルプ、GP(Groundwood Pulp)、PGW(Pressure GroundWood pulp)、RMP(Refiner Mechanical Pulp)、TMP(ThermoMechanical Pulp)、CTMP(ChemiThermoMechanical Pulp)、CMP(ChemiMechanical Pulp)などの機械パルプ、CGP(ChemiGroundwood Pulp)などのセミケミカルパルプ、DIP(DeInked Pulp)などの古紙パルプ(Waste Paper Pulp)、及び製紙工場で発生する損紙(Spoilage)を離解して成るパルプを挙げることができる。パルプは、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
上記填料は、製紙分野で従来公知の白色顔料である。白色顔料の例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、酸化亜鉛、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、活性白土及び珪藻土などの白色無機顔料、並びにプラスチック顔料などの白色有機顔料を挙げることができる。填料は、これら白色無機顔料及び白色有機顔料から成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
上記紙力剤は、紙力増強剤とも称される、製紙分野で従来公知のものである。紙力剤の例としては、アニオン性、カチオン性、部分カチオン変性及びグリオキザール変性のポリアクリルアミド系樹脂、各種澱粉及び各種変性澱粉(例えば、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉、ジアルデヒド澱粉、燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシブチル化澱粉及び尿素燐酸エステル化澱粉などである。)などの澱粉類、植物由来の各種ガム類、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、メラニンホルムアルデヒド系樹脂、ポリアミドポリアミンエピハロヒドリン系樹脂などを挙げることができる。紙力剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
印刷用塗工紙は、原紙の紙力剤に澱粉類を少なくとも含む。いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、原紙の紙力剤にカチオン化澱粉を少なくとも含む。この理由は、層間剥離強さを良化するからである。
上記歩留り向上剤は、製紙分野で従来公知のものである。歩留り向上剤の例としては、硫酸アルミニウム及びポリケイ酸ナトリウムなどの無機塩類、非イオン性、カチオン性、アニオン性及び両性の有機高分子電解質、並びにアニオン性コロイダルシリカなどを挙げることができる。有機高分子電解質の例としては、ポリアクリルアミド系樹脂(ただし、紙力剤とは異なる樹脂を選択)、各種澱粉及び各種変性澱粉などの澱粉類(ただし、紙力剤とは異なる澱粉類を選択)、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ポリビニルアミン系樹脂、ジメチルジアリルアミン-二酸化硫黄共重合系樹脂、並びにジシアンジアミド-ホルムアルデヒド-塩化アンモニウム重縮合系樹脂などを挙げることができる。歩留り向上剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
印刷用塗工紙は、原紙の歩留り向上剤に硫酸アルミニウムを少なくとも含む。この理由は、白紙部の白さ不均一性を抑えることを良化する及び/又は層間剥離強さを良化するからである。
上記内添サイズ剤は、製紙分野で従来公知のものである。内添サイズ剤の例としては、ロジン系サイズ剤、アルケニル無水コハク酸系サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤、脂肪酸系サイズ剤、及びカチオン性スチレン-アクリル共重合系樹脂のサイズ剤などを挙げることができる。内添サイズ剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
印刷用塗工紙は、原紙の内添サイズ剤にアルキルケテンダイマー系サイズ剤を少なくとも含む。この理由は、白紙部の白さ不均一性を抑えることを良化する又は層間剥離強さを良化するからである。
上記表面サイズ剤は、サイズプレス液に配合してサイズプレスすることによって紙に含有させるサイズ剤であって、製紙分野で従来公知のものである。表面サイズ剤の例としては、各種澱粉及び各種変性澱粉などの澱粉類(ただし、紙力剤及び歩留り向上剤とは異なる澱粉類を選択する)、各種ポリビニルアルコール、各種変性ポリビニルアルコール、スチレン-アクリル共重合系樹脂のサイズ剤、オレフィン系サイズ剤、スチレン-マレイン酸共重合系樹脂のサイズ剤などを挙げることができる。表面サイズ剤は、これらから成る群から選ばれる一種又は二種以上である。
印刷用塗工紙は、原紙の表面サイズ剤に澱粉類を少なくとも含む。いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、原紙の表面サイズ剤に酸化澱粉を少なくとも含む。この理由は、層間剥離強さを良化するからである。
サイズプレスは従来公知の方式であって、例えば、インクラインドサイズプレス、ホリゾンタルサイズプレス、フィルムトランスファー方式としてロッドメタリングサイズプレス、ロールメタリングサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレスがあり、ロッドメタリングサイズプレスとしてシムサイザー、オプティサイザー、スピードサイザー、フィルムプレスを挙げることができ、ロールメタリングサイズプレスとしてゲートロールコーターを挙げることができる。その他に、ビルブレードコーター、ツインブレードコーター、ベルバパコーター、タブサイズプレス、及びカレンダーサイズプレスなどを挙げることができる。
印刷用塗工紙は、紙力剤である澱粉類、歩留り向上剤である硫酸アルミニウム、内添サイズ剤であるアルキルケテンダイマー系サイズ剤及び表面サイズ剤である澱粉類の少なくともいずれかを原紙から欠くと、白紙部の白さ不均一性を抑えることが悪化及び/又は層間剥離強さの悪化をもたらす。
原紙は、必要に応じて各種添加剤を含有することができる。添加剤の例としては、定着剤、嵩高剤、印刷適性向上剤、カチオン化剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、及び耐水化剤などを挙げることができる。
原紙は、パルプ、填料、紙力剤、歩留り剤及び内添サイズ剤を配合した紙料を抄造し、前記抄造して得た抄造紙に対して表面サイズ剤を含有するサイズプレス液でサイズプレスすることで得ることができる。抄造は、酸性、中性、アルカリ性のいずれでもよい。抄造には、製紙分野で従来公知の抄紙機を用いることができる。抄紙機の例としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機及びヤンキー抄紙機などを挙げることができる。
原紙は、サイズプレス前及び/又はサイズプレス後において、カレンダー処理を施すことができる。カレンダー処理とは、ロール間に紙を通すことによって光沢面化、平滑化及び厚みを平均化する処理である。カレンダー処理の装置としては、例えば、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダーなどを挙げることができる。
原紙の密度は、0.81g/cm以下である。印刷用塗工紙は、原紙の密度が前記範囲から外れると、白紙部の白さ不均一性を抑え難く及び層間剥離強さが得難くなる。原紙の密度は下限を特に限定しない。前記下限は、通常において印刷用塗工紙の原紙に使用できる密度以上であればよい。例えば、前記下限は0.45g/cm以上である。いくつかの実施態様において、原紙の密度は、0.64g/cm以上である。少なくとも一つの実施態様において、原紙の密度は、0.64g/cm以上0.81g/cm以下である。
原紙の密度は、ISO534:2011「Paper and board-Determination of thickness, density and specific volume」に準じて求められる値である。印刷用塗工紙の状態から原紙の密度は、印刷用塗工紙の塗工層を切除した原紙から求めることができる。
原紙の密度は、パルプの種類、パルプの叩解度(濾水度で表す。)、抄紙工程のプレスパート及びドライヤーパートの条件、並びにカレンダー処理の有無及び条件によって制御できる。例えば、原紙は、パルプの叩解度を下げる、プレスパートのプレス圧を下げる、ドライヤーパートの乾燥強度を上げる、及びカレンダー処理を施さない若しくは少ないニップ数でカレンダー処理若しくは軽めの線圧に設定してカレンダー処理する、という手段を採用することによって密度が下がる。いくつかの実施態様において、原紙は、原紙の全パルプに対して50質量%超がLBKPであって、前記LBKPの濾水度が370ml以上500ml以下である。いくつかの実施態様において、原紙は、少ないニップ数及び/又は軽めの線圧に設定したカレンダー処理によって密度を上記範囲にする。これらの理由は、原紙がある程度の平滑度を有しつつ、上記喰い込み効果を得ることができるからである。濾水度は、ISO5627-2:2001「Pulps-Determination of drainability-Part 2 Canadian Standard freeness method」に準じて求められるCSF濾水度である。
印刷用塗工紙は原紙に対して塗工層を有する。前記塗工層は1層又は2層以上である。本発明においては、原紙を基準として最外に位置する塗工層を最外塗工層という。塗工層が1層の場合は該塗工層が最外塗工層になる。最外塗工層は、白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を含有する。塗工層が2層以上の場合、原紙と最外塗工層との間に存在する塗工層は、例えば、白色顔料の有無、白色顔料の種類及び含有量、バインダーの有無、バインダーの種類及び含有量、並びに各種添加剤の有無、各種添加剤の種類及び含有量について特に限定しない。いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙の塗工層が2層以上の場合、原紙と最外塗工層との間に存在する塗工層は、塗工紙分野で従来公知の白色顔料、バインダー及び各種添加剤を含有する。また、いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は塗工層が1層である。この理由は、製造コストに有利になるからである。
原紙又は塗工層に対して塗工層を設ける方法は、塗工層塗工液を原紙又は塗工層に対して塗工及び乾燥する方法であって、特に限定されない。塗工層を設ける方法は、例えば、製紙分野で従来公知の塗工装置及び乾燥装置を用いて塗工層塗工液を塗工及び乾燥する方法を挙げることができる。塗工装置の例としては、サイズプレス、フィルムプレスコーター、エアナイフコーター、ロッドブレードコーター、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、カーテンコーター、Eバーコーター、フィルムトランスファーコーターなどを挙げることができる。乾燥装置の例としては、直線トンネル乾燥機、アーチドライヤー、エアループドライヤー、サインカーブエアフロートドライヤーなどの熱風乾燥機、赤外線加熱ドライヤー及びマイクロ波を利用した乾燥機などの各種乾燥装置を挙げることができる。いくつかの実施態様において、塗工装置は、ブレードコーターなどの接触型である。この理由は、塗工層の平滑性が得られ易いからである。
塗工層にはカレンダー処理を施すことができる。一般に、印刷用塗工紙は、塗工層にカレンダー処理を施すことによって光沢感を得ることができる。カレンダー処理の装置の例は、上記した通りであり、ここでは割愛する。
最外塗工層の白色無機顔料は、製紙分野で従来公知の白色無機顔料である。白色無機顔料の例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、酸化亜鉛、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、活性白土及び珪藻土などを挙げることができる。
最外塗工層の澱粉類は、上記の紙力剤、歩留り向上剤及び表面サイズ剤でも用いる従来公知の各種澱粉及び各種変性澱粉などである。最外塗工層の澱粉類は、従来公知のものから選ばれる一種又は二種以上である。いくつかの実施態様において、印刷用塗工紙は、最外塗工層の澱粉類に酸化澱粉及び尿素燐酸エステル化澱粉から成る群から選ばれる一種又は二種である、この理由は、白紙部の白さ不均一性を抑えること及び/又は層間剥離強さを良化するからである。
酸化澱粉は、澱粉に塩素、臭素、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩などの酸化剤を用いて酸化して、アルデヒド基及び/又はカルボキシ基をグルコースに有するデン粉である。アルデヒド基及びカルボキシ基を導入する方法は、例えば、澱粉のスラリーに次亜塩素酸塩を添加して反応させる方法を挙げることができる。澱粉スラリーが、低いpHではアルデヒド基が、高いpHではカルボキシ基が導入される。
尿素燐酸エステル化澱粉は、燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とをグルコースに有する澱粉である。燐酸エステル基を導入する方法は、例えば、トリポリ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を単独で添加して焙焼反応させる方法を挙げることができる。燐酸エステル基とカルバミン酸エステル基とを導入する方法は、例えば、無機燐酸類と共に尿素を添加して焙焼反応させる方法を挙げることができる。主に、尿素燐酸エステル化澱粉は、後者の無機燐酸類と尿素を焙焼反応させる方法によって各種尿素置換度のものを得ることができる。いくつかの実施態様において、尿素燐酸エステル化澱粉は、尿素置換度が0.005以上0.05以下である。この理由は、上記喰い込み効果が良化するからである。「尿素置換度」とは、澱粉を構成するグルコース単位が有する水酸基におけるカルバミン酸エステル基の置換度である。例えば、尿素置換度=0.02は、澱粉を構成するグルコース単位100個当たり置換基が2個有することを意味する。尿素置換度は、澱粉において従来から知られた値であって公知の方法で求められる。尿素置換度は、例えば、熱分解GC法またはCHN元素分析計を用いた窒素含有量から求めることができる。また、尿素置換度は、「澱粉科学実験法」(鈴木繁男・中村道徳編集、1979年第1刷発行、朝倉書店発行)を参考にすることができる。
最外塗工層のスチレン-ブタジエン共重合系樹脂は、共重合系樹脂を構成する単量体としてスチレン系単量体及びブタジエンが70質量%以上を占める樹脂である。スチレン系単量体とは、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどのビニル基に置換基を有するスチレン誘導体、及びビニルトルエン、p-クロルスチレンなどのベンゼン環に置換基を有する誘導体である。スチレン-ブタジエン共重合系樹脂は、スチレン系単量体及びブタジエンと共重合が可能な単量体を共重合系樹脂を構成するスチレン系単量体及びブタジエン以外の他単量体として含むことができる。他単量体の例としては、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、(メタ)アクリル酸エステル、及びマレイン酸などを挙げることができる。いくつかの実施態様において、スチレン-ブタジエン共重合系樹脂は、上記他単量体として(メタ)アクリロニトリルを含む樹脂である。この理由は、白紙部の白さ不均一性を抑えることを良化するからである。
いくつかの実施態様において、最外塗工層の澱粉類の含有量は、最外塗工層の白色無機顔料100質量部に対して2質量部以上4質量部以下である。いくつかの実施態様において、最外塗工層のスチレン-ブタジエン共重合系樹脂の含有量は、最外塗工層の白色無機顔料100質量部に対して3質量部以上6質量部以下である。少なくとも一つの実施態様において、最外塗工層の澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂の含有量は、最外塗工層の白色無機顔料100質量部に対して、それぞれ2質量部以上4質量部以下及び3質量部以上6質量部以下である。
これらの理由は、最外塗工層に係る塗工層塗工液を塗工した際のレベリングする速度が緩やかになる及び最外塗工層の喰い込みが増すからである。これらの結果によって、印刷用塗工紙は、白紙部の白さ不均一性を抑えること及び層間剥離強さを良化することができる。
最外塗工層が、白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を少なくともいずれかを最外塗工層から欠くと、印刷用塗工紙は、白紙部の白さ不均一性を抑えること及び/又は層間剥離強さを良好に得ることができない。
最外塗工層は、白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂以外に塗工紙分野で従来公知の各種添加剤を含有することができる。添加剤は、例えば、白色有機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を除く各種バインダー、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、カチオン化剤、滑剤、耐水化剤、印刷適性向上剤、消泡剤、発泡剤、浸透剤、着色剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤及び防バイ剤などを挙げることができる。
白色有機顔料は、塗工紙分野で従来公知のものである。白色有機顔料は、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン-アクリル共重合系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂及び酢酸ビニル-塩化ビニル共重合系樹脂などを挙げることができる。
また、白色有機顔料の形としては、例えば、中空及び密実などを挙げることができる。ここで、「中空」とは、顔料を構成する樹脂粒子の内部に閉空間が存在する状態であり、「密実」とは、顔料を構成する樹脂粒子の内部に閉空間が存在しない状態である。
澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を除く各種バインダーは、例えば、(メタ)アクリロニトリル-ブタジエン共重合系樹脂などスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を除く共役ジエン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステルの重合系樹脂及び(メタ)アクリル酸エステル-ブタジエン共重合系樹脂などのアクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合系樹脂及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂などのビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂及び尿素系樹脂などの熱硬化合成樹脂、並びにこれらの官能基変性された樹脂、天然ゴム、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン及び大豆蛋白などの天然高分子系樹脂及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、並びにポリエチレングリコールなどを挙げることができる。
印刷用塗工紙の密度は、1.00g/cm超である。印刷用塗工紙は、用紙の密度が前記範囲から外れると、白紙部の白さ不均一性を抑え難くなる。印刷用塗工紙の密度は上限を特に限定しない。いくつかの実施態様において、前記上限は1.30g/cm以下である。この理由は、オフセット印刷などの印刷においてインキ定着性及びインキ乾燥性が良化するからである。少なくとも一つの実施態様において、印刷用塗工紙の密度は、1.00g/cm超1.30g/cm以下である。
印刷用塗工紙の密度は、原紙の密度と同様に、ISO534:2011「Paper and board-Determination of thickness, density and specific volume」に準じて求められる値である。
印刷用塗工紙の密度は、上記原紙の密度を制御する方法に加えて、塗工層の塗工量、塗工層中の白色無機顔料の含有量、並びにカレンダー処理の有無及び条件によって制御することができる。例えば、印刷用塗工紙は、最外塗工層の白色無機顔料の含有量を増す、塗工層の塗工量を増す、及びカレンダー処理を施すなどの手段を採用することによって密度が上がる。
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されない。ここで「質量部」及び「質量%」は、乾燥固形分量あるいは実質成分量の各々「質量部」及び「質量%」を表す。塗工層の塗工量は乾燥固形分量を表す。
<原紙>
CSF濾水度420mlのLBKP710質量部、CSF濾水度480mlのNBKP100質量部、損紙由来パルプ190質量部から成るパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム50質量部、紙力剤10質量部、歩留り向上剤8質量部、及び内添サイズ剤0.3質量部を配合して紙料を調成した。前記紙料を長網抄紙機で抄造して抄造紙を得た。前記抄造紙の両面に対して、表面サイズ剤を含むサイズプレス液でサイズプレスを施して原紙を得た。表面サイズ剤の付着量は、片面あたり0.7g/mとした。
ここで、原紙の密度は、紙料の供給量、抄紙工程のプレスパート及びドライヤーパートの条件、並びにカレンダー処理によって調整した。
紙力剤、歩留り向上剤、内添サイズ剤及び表面サイズ剤の種類、並びに原紙の密度は表1に記載する。
<最外塗工層の塗工層塗工液>
最外塗工層の塗工層塗工液は、下記の内容により調製した。
重質炭酸カルシウム 85質量部
軽質炭酸カルシウム 10質量部
カオリン 5質量部
分散剤 0.02質量部
多糖類 種類は表1に記載/3質量部
樹脂 種類は表1に記載/4質量部
滑剤 0.3質量部
上記の内容で配合し、水で混合・分散して、濃度65質量%に調整した。
<印刷用塗工紙>
印刷用塗工紙を以下の手順にて作製した。
上記原紙に対して、最外塗工層の塗工層塗工液をブレードコーターにて両面塗工し、その後に乾燥した。さらに乾燥後に、カレンダー処理を施した。塗工量は、片面あたり5~9g/mの間で調整した。目視により、これら印刷用塗工紙は、平滑性に問題がなかった。
ここで、印刷用塗工紙の密度は、塗工量及びカレンダー処理によって調整した。印刷用塗工紙の密度は表1に記載する。
得た印刷用塗工紙について、白紙部の白さ不均一性及び層間剥離を評価した。
<白紙部の白さ不均一性>
白紙部の白さ不均一性は、印刷用塗工紙の最外塗工層面を目視で観察する方法によって行った。白紙部の白さ不均一性は、下記の基準で評価した。本発明において、印刷用塗工紙は、評価A又はBであれば白紙部の白さ不均一性を抑えられたものとする。
A:白紙部に白さの不均一が、認められない。
B:白紙部に白さの不均一が、概ね認められない。注視すると認められる。
C:白紙部に白さの不均一が、上記Bより劣り、僅かに認められる。
D:白紙部に白さの不均一が、明らかに確認できる。
<層間剥離>
層間剥離は、一定枚数の印刷に対して層間剥離を発生した枚数を数える方法によって行った。オフセット印刷機(三菱重工社製ダイヤ3H-4)を用い、平版オフセットプロセスインキを使用して4色印刷を印刷用塗工紙の両面に行った。印刷には、各色ベタ画像、人物写真画像、風景写真画像及び文字画像をランダムに配置した評価用画像を用いた。印刷は、印刷用塗工紙の四六版横目通紙で8000枚/時の印刷速度で行い、1000枚印刷した時の層間剥離が発生した枚数を集計して、下記の基準で評価した。本発明では、印刷用塗工紙は、評価A又はBであれば層間剥離強さが良好であるものとする。
A:層間剥離の発生枚数が0枚である。
B:層間剥離の発生枚数が1枚以上2枚以下である。
C:層間剥離の発生枚数が3枚以上4枚以下である。
D:層間剥離の発生枚数が5枚以上である。
評価結果を表1に記載する。
Figure 2024034577000001
表1から、本発明に該当する実施例1~9は、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当しつつ、印刷用塗工紙の平滑性を悪化させることなく、白紙部の白さ不均一性を抑え及び層間剥離強さが良好な印刷用塗工紙であると分かる。一方、本発明の構成を満足しない比較例1~8は、白紙部の白さ不均一性を抑えること及び層間剥離強さが良好であることの少なくともいずれかを得ることができない印刷用塗工紙であると分かる。

Claims (1)

  1. パルプ、填料、紙力剤、歩留り向上剤及び内添サイズ剤、並びにサイズプレスによって表面サイズ剤を含有する原紙と前記原紙に対して塗工層とを有し、前記紙力剤が澱粉類を含み、前記歩留り向上剤が硫酸アルミニウムを含み、前記内添サイズ剤がアルキルケテンダイマー系サイズ剤を含み、前記表面サイズ剤が澱粉類を含み、前記原紙の密度が0.81g/cm以下であり、前記塗工層において原紙を基準にして最外に位置する最外塗工層が白色無機顔料、澱粉類及びスチレン-ブタジエン共重合系樹脂を含有し、用紙の密度が1.00g/cm超である、経済産業省が公表する紙品目の軽量コート紙に該当する印刷用塗工紙。
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