以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである(本実施形態ではφ300mm)。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウェハーWにはゲート絶縁膜として高誘電率膜(high-k膜)が形成されており、熱処理装置1による加熱処理によって高誘電率膜の成膜後熱処理(PDA:Post Deposition Anneal)が実行される。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2)および/またはアンモニア(NH3))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は二叉に分岐され、そのうちの一方である反応性ガス配管(第1供給配管)83aはアンモニア供給源91に接続され、他方の不活性ガス配管(第2供給配管)83bは窒素供給源92に接続されている。アンモニア供給源91は、制御部3の制御下にて、反応性ガス配管83aにアンモニアを送給する。窒素供給源92は、制御部3の制御下にて、不活性ガス配管83bに窒素ガスを送給する。
反応性ガス配管83aの経路途中には、供給元バルブ93、供給確認圧力計94、マスフローコントローラ95および供給バルブ96が介挿される。供給元バルブ93および供給バルブ96が開放されると、アンモニア供給源91から反応性ガス配管83aおよびガス供給管83を経て緩衝空間82にアンモニアが送給される。供給確認圧力計94は、アンモニア供給源91から反応性ガス配管83aに予め定められた圧力にてアンモニアが供給されているか否かを判定する。マスフローコントローラ95は、反応性ガス配管83aを流れるアンモニアの流量を予め定められた設定値に調整する。
一方、不活性ガス配管83bの経路途中には、マスフローコントローラ97および供給バルブ98が介挿される。供給バルブ98が開放されると、窒素供給源92から不活性ガス配管83bおよびガス供給管83を経て緩衝空間82に窒素ガスが送給される。マスフローコントローラ97は、不活性ガス配管83bを流れる窒素ガスの流量を予め定められた設定値に調整する。供給元バルブ93、供給バルブ96および供給バルブ98の全てが開放されているときには、反応性ガス配管83aから送給されたアンモニアと不活性ガス配管83bから送給された窒素ガスとがガス供給管83で合流してアンモニアと窒素ガスとの混合ガスが緩衝空間82に送給される。
また、反応性ガス配管83aと不活性ガス配管83bとを連通接続するバイパス配管84が設けられている。バイパス配管84は、反応性ガス配管83aの供給元バルブ93と供給確認圧力計94との間の部位と、不活性ガス配管83bの窒素供給源92とマスフローコントローラ97との間の部位とを連通接続する。バイパス配管84には、バイパスバルブ85が介挿される。バイパスバルブ85が開放されると、反応性ガス配管83aと不活性ガス配管83bとが連通状態となる。
ガス供給管83から送給されて緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れて緩衝空間82を満たす。そして、緩衝空間82を満たした処理ガスがガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中には排気バルブ89および真空圧力計191が介挿されている。排気バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。真空圧力計191は、直接的にはガス排気管88の圧力を測定する。ガス排気管88の真空圧力計191が設けられている部位の圧力はチャンバー6内の圧力とほぼ同じであるため、真空圧力計191によって測定された圧力は、チャンバー6内の圧力でもある。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。
排気部190としては、真空ポンプや熱処理装置1が設置される工場の排気ユーティリティを用いることができる。排気部190として真空ポンプを採用し、ガス供給孔81から何らのガス供給を行うことなく密閉空間である熱処理空間65の雰囲気を排気すると、チャンバー6内を真空雰囲気にまで減圧することができる。また、排気部190として真空ポンプを用いていない場合であっても、ガス供給孔81からガス供給を行うことなく排気を行うことにより、チャンバー6内を大気圧未満の気圧に減圧することができる。減圧されているチャンバー6内の圧力は真空圧力計191によって測定される。
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図3は、サセプタ74の平面図である。また、図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm〜φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
また、図2および図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する光照射部である。
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
また、図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。まず、処理対象となる半導体ウェハーWに対する熱処理の手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウェハーWは、ゲート絶縁膜として高誘電率膜が形成されたシリコンの半導体基板である。高誘電率膜は、例えばALD(Atomic Layer Deposition)やMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の手法によって半導体ウェハーWの表面に堆積されて成膜されている。その半導体ウェハーWに対して熱処理装置1がアンモニア雰囲気中にてフラッシュ光を照射して成膜後熱処理(PDA)を行うことにより、成膜後の高誘電率膜中の欠陥を消滅させる。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
まず、高誘電率膜が形成された半導体ウェハーWが熱処理装置1のチャンバー6に搬入される。半導体ウェハーWの搬入時には、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して高誘電率膜が形成された半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。この際に、チャンバー6の内外はともに大気圧であるため、半導体ウェハーWの搬入にともなってチャンバー6内の熱処理空間65に装置外雰囲気が巻き込まれる。そこで、供給バルブ98を開放して窒素供給源92からチャンバー6内に窒素ガスを供給し続けることによって搬送開口部66から窒素ガス流を流出させ、装置外部の雰囲気がチャンバー6内の流入するのを最小限に抑制するようにしても良い。さらに、ゲートバルブ185の開放時には、排気バルブ89を閉止してチャンバー6からの排気を停止するのが好ましい。これにより、チャンバー6内に供給された窒素ガスは搬送開口部66のみから流出することとなるため、外部雰囲気の流入をより効果的に防ぐことができる。
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、高誘電率膜が成膜された表面を上面としてサセプタ74に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
半導体ウェハーWがチャンバー6に収容され、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖された後、チャンバー6内を大気圧よりも低い気圧に減圧する。具体的には、搬送開口部66が閉鎖されることによって、チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間となる。この状態にて、給気のための供給バルブ96および供給バルブ98を閉止しつつ、排気バルブ89を開放する。これにより、チャンバー6内に対してはガス供給が行われることなく排気が行われることとなり、チャンバー6内の熱処理空間65が減圧される。
チャンバー6内が所定の圧力にまで減圧された後、排気バルブ89を開放しつつ、供給元バルブ93、供給バルブ96および供給バルブ98を開放する。供給元バルブ93および供給バルブ96が開放されることによって、反応性ガス配管83aからアンモニアが送給される。また、供給バルブ98が開放されることによって、不活性ガス配管83bから窒素ガスが送給される。送給されたアンモニアと窒素ガスとはガス供給管83で合流する。そして、アンモニアと窒素ガスとの混合ガスがチャンバー6内の熱処理空間65に供給される。その結果、チャンバー6内にて保持部7に保持された半導体ウェハーWの周辺には減圧状態にてアンモニア雰囲気が形成される。アンモニア雰囲気中におけるアンモニアの濃度(つまり、アンモニアと窒素ガスとの混合比)は、特に限定されるものではなく適宜の値とすることができるが、例えば10vol.%以下であれば良い(本実施形態では約2.5vol.%)。アンモニアの濃度は、マスフローコントローラ95およびマスフローコントローラ97によってそれぞれアンモニアおよび窒素ガスの供給流量を制御することにより調整することができる。
次に、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して半導体ウェハーWの予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。予備加熱温度T1は300℃以上600℃以下であり、本実施形態では450℃である。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、基板Wの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、高誘電率膜が成膜された半導体ウェハーWの表面にフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射することによって、高誘電率膜を含む半導体ウェハーWの表面は瞬間的に処理温度T2にまで昇温して成膜後熱処理が実行される。フラッシュ光照射によって半導体ウェハーWの表面が到達する最高温度(ピーク温度)である処理温度T2は600℃以上1200℃以下であり、本実施形態では1000℃である。
アンモニア雰囲気中にて半導体ウェハーWの表面が処理温度T2にまで昇温して成膜後熱処理が実行されると、高誘電率膜の窒化が促進されるとともに、高誘電率膜中に存在していた点欠陥等の欠陥が消滅する。なお、フラッシュランプFLからの照射時間は0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の短時間であるため、半導体ウェハーWの表面温度が予備加熱温度T1から処理温度T2にまで昇温するのに要する時間も1秒未満の極めて短時間である。フラッシュ光照射後の半導体ウェハーWの表面温度は処理温度T2からただちに急速に下降する。
フラッシュ加熱処理の終了後、供給バルブ96および供給バルブ98を閉止してチャンバー6内を再び減圧する。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65から有害なアンモニアを排出することができる。続いて、排気バルブ89を閉止して供給バルブ98を開放し、窒素供給源92からチャンバー6内に窒素ガスを供給して常圧(大気圧)にまで復圧する。これにより、チャンバー6内が窒素雰囲気に置換される。また、ハロゲンランプHLも消灯し、これによって半導体ウェハーWが予備加熱温度T1からも降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
ところで、上記の熱処理装置1に対しては定期的に或いは不定期にメンテナンスが行われる。不定期にメンテナンスが行われるのは、熱処理装置1に何らかの障害が発生した場合である。熱処理装置1のメンテナンスを行う際には、チャンバー6の内部を開放して各種配管を外すこととなる。従って、メンテナンス前にチャンバー6内の熱処理空間65および各種配管を含む熱処理装置1の全体から有害なアンモニアを完全に排出しておく必要がある。
ところが、単に排気バルブ89を開放してチャンバー6内の雰囲気を排気しただけでは、反応性ガス配管83aに残留しているアンモニアを完全には排出することが困難な場合がある。反応性ガス配管83aからのアンモニアの排出の容易さはマスフローコントローラ95に大きく依存する。反応性ガス配管83aには、プロセスの目的に応じて様々なフルスケールサイズのマスフローコントローラ95が設けられる。例えば、大きなアンモニア供給流用が必要な場合にはフルスケールサイズが大きな(例えば、100リットル/分)マスフローコントローラ95が反応性ガス配管83aに設けられる。一方、高精度のアンモニア供給流量制御が求められる場合にはフルスケールサイズが比較的小さな(例えば、20リットル/分)マスフローコントローラ95が反応性ガス配管83aに設けられる。
大きなフルスケールサイズのマスフローコントローラ95よりも小さなフルスケールサイズのマスフローコントローラ95の方が圧力損失が大きい。従って、反応性ガス配管83aに小さなフルスケールサイズのマスフローコントローラ95が設けられている場合には、反応性ガス配管83aからの排気が困難となり、管内に残留しているアンモニアの排出が難しくなる。そこで、本実施形態においては、以下のようにしてマスフローコントローラ95のフルスケールサイズにかかわらず反応性ガス配管83aから完全にアンモニアを排出するようにしている。なお、上述した半導体ウェハーWのプロセスの途中ではチャンバー6を開放することはないため、単にチャンバー6からの排気を行ったときに反応性ガス配管83aに若干のアンモニアが残留していたとしても問題とはならない。
図8は、熱処理装置1の雰囲気置換方法の手順を示すフローチャートである。まず、メンテナンスを行う前のチャンバー6内に半導体ウェハーWが存在していない状態でハロゲンランプHLが点灯する(ステップS1)。ハロゲンランプHLからの光照射によってチャンバー6内の雰囲気が加熱されて昇温し、雰囲気中の気体分子の熱運動が活性化する。ステップS1における雰囲気の加熱温度は特に限定されるものではないが、例えばハロゲンランプHLからの約30分の光照射によってチャンバー6内の雰囲気は約300℃に加熱される。
チャンバー6内の雰囲気が加熱された後、反応性ガス配管83aの排気を実行する(ステップS2)。ステップS2の排気を行うときには、供給元バルブ93、バイパスバルブ85および供給バルブ98が閉止され、供給バルブ96および排気バルブ89が開放される。これにより、ガス排気管88からチャンバー6内およびマスフローコントローラ95を含む反応性ガス配管83a(正確には、供給元バルブ93よりも下流側の部位)の排気が行われ、反応性ガス配管83a内は減圧されることとなる。但し、上述したように、反応性ガス配管83aに設けられたマスフローコントローラ95のフルスケールサイズが小さい場合には、反応性ガス配管83aからの排気が困難となり、アンモニアが残留しやすい。
このため、本実施形態では、供給確認圧力計94の測定値が予め設定された第1圧力以下となるまで排気を継続する(ステップS3)。具体的には、例えば、供給確認圧力計94に大気圧−90kPaを第1圧力として設定し、測定値が第1圧力以下となると供給確認圧力計94が異常信号を発信するようにしておく。
供給確認圧力計94の測定値が第1圧力以下となり、供給確認圧力計94が異常信号を発信すると、ステップS4に進み、排気を停止して反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給を実行する。このときには、供給元バルブ93、供給バルブ96および供給バルブ98が閉止され、バイパスバルブ85が開放される。これにより、窒素供給源92から送給された窒素ガスがバイパス配管84を通ってマスフローコントローラ95を含む反応性ガス配管83a(正確には、供給元バルブ93と供給バルブ96との間の部位)に充填されることとなる。なお、反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給を行っている間も、排気バルブ89は継続して開放され、チャンバー6内は減圧されている。
本実施形態では、供給確認圧力計94の測定値が予め設定された第2圧力以上となるまで反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給を継続する(ステップS5)。第2圧力は第1圧力よりも高い。具体的には、例えば、供給確認圧力計94に170kPaを第2圧力として設定し、測定値が第2圧力以上となると供給確認圧力計94が正常信号を発信するようにしておく。
供給確認圧力計94の測定値が第2圧力以上となり、供給確認圧力計94が正常信号を発信すると、ステップS6に進み、上記の排気と窒素ガス供給とを設定回数繰り返したか否かが制御部3によって判定される。制御部3には、繰り返しの設定回数が例えばGUI(Graphical User Interface)を用いて予め設定されている。排気と窒素ガス供給とが設定回数繰り返されていない場合には、再度ステップS2〜ステップS5が繰り返される。例えば、繰り返しの設定回数として”10”と設定されている場合には、上述した排気と窒素ガス供給とが10回繰り返されることとなる。
本実施形態においては、供給確認圧力計94の測定値が第1圧力以下となるまで反応性ガス配管83aの排気を継続している。マスフローコントローラ95のフルスケールサイズが小さい場合には反応性ガス配管83aからの排気が困難となることもあるが、供給確認圧力計94の測定値が第1圧力以下となるまで反応性ガス配管83aの排気を継続することにより、マスフローコントローラ95のフルスケールサイズに関わらず、反応性ガス配管83aを第1圧力以下にまで減圧して反応性ガス配管83aから残留アンモニアを完全に排出することができる。
また、反応性ガス配管83aからアンモニアを排出した後、供給確認圧力計94の測定値が第2圧力以上となるまで反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給を継続している。マスフローコントローラ95のフルスケールサイズが小さい場合には反応性ガス配管83aへの給気も困難となるが、供給確認圧力計94の測定値が第2圧力以上となるまで反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給を継続することにより、マスフローコントローラ95のフルスケールサイズに関わらず、反応性ガス配管83aに十分に窒素ガスを供給して充填することができる。
このように、上述した排気に続いて窒素ガス供給を行うことにより、アンモニアを供給する反応性ガス配管83aから完全にアンモニアを排出して反応性ガス配管83a内に窒素ガスを充填することができるのである。その結果、メンテナンス時にチャンバー6の内部を開放しても、反応性ガス配管83a内に微量に残留していたアンモニアが漏出するおそれはない。また、このような反応性ガス配管83aからの排気と反応性ガス配管83aへの窒素ガス供給とを複数回繰り返すことにより、より確実に反応性ガス配管83aからアンモニアを排出して反応性ガス配管83a内に窒素ガスを充填することができる。
排気停止および窒素ガスの供給停止を判定するための供給確認圧力計94は、本来はアンモニア供給源91から適正な圧力でアンモニアが供給されているか否かを判定する要素である。すなわち、本実施形態のようにすれば、新たに特別な機構を設けることなく、反応性ガス配管83aから完全にアンモニアを排出して反応性ガス配管83a内に窒素ガスを充填することができるのである。また、供給確認圧力計94が異常信号を発信したら排気を停止し、供給確認圧力計94が正常信号を発信したら窒素ガス供給を停止すれば良いため、給排気の制御は容易である。
また、本実施形態においては、排気を行う前に、ハロゲンランプHLから光照射を行ってチャンバー6内の雰囲気を加熱するようにしている。これにより、チャンバー6内雰囲気中の気体分子の熱運動が活性化し、続く排気工程にて気体分子が速やかに排気されることになる。その結果、供給確認圧力計94の測定値が第1圧力以下となるまでに要する排気時間を短縮することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記のステップS3では、供給確認圧力計94の測定値が予め設定された第1圧力以下となるまで排気を継続していたが、これに加えて、真空圧力計191の測定値が所定値(例えば、0.1kPa)以下となるまで排気を継続するようにしても良い。もっとも、マスフローコントローラ95のフルスケールサイズが小さく反応性ガス配管83aからの排気が困難な場合には、供給確認圧力計94の測定値が予め設定された第1圧力以下となる時点では既に真空圧力計191の測定値が所定値以下となっていることが多い。
また、上記実施形態においては、反応性ガス配管83aからアンモニアを供給していたが、これに限定されるものではなく、反応性ガス配管83aから酸素(O2)、水素(H2)、塩素(Cl2)、塩化水素(HCl)、オゾン(O3)、一酸化窒素(NO)、亜酸化窒素(N2O)、二酸化窒素(NO2)、三フッ化窒素(NF3)などを反応性ガスとして供給するようにしても良い。また、不活性ガス配管83bから供給されるガスも窒素ガスに限定されるものではなく、不活性ガス配管83bからアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)などを不活性ガスとして供給するようにしても良い。これら種々のガスを用いた場合であっても、本発明に係る技術を適用することにより、反応性ガス配管83aから完全に反応性ガスを排出して当該反応性ガス配管83a内に不活性ガスを充填することができる。
また、本発明に係る技術は、マスフローコントローラ95のフルスケールサイズが小さい場合に限らず、例えば反応性ガス配管83aの配管径が細くて圧力損失が大きい場合にも好適に適用することが可能である。
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。この場合、排気前にアークランプからの光照射によってチャンバー6内の雰囲気が加熱される。
また、熱処理装置1によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。また、熱処理装置1では、注入された不純物の活性化、金属とシリコンとの接合、或いはポリシリコンの結晶化を行うようにしても良い。