JP6962210B2 - 液体を吐出する装置 - Google Patents

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Description

本発明は、液体を吐出する装置に関する。
インクジェット記録装置は、一般的に、液体噴射ヘッドのノズルを囲うようにしてノズル形成面にキャップを当接させるキャッピング状態で、液体噴射ヘッドのノズルからキャップ内にインクを強制的に吸引して排出するクリーニング動作(吸引クリーニング)が実行可能である。吸引クリーニングを繰り返し行うと、次第にキャップ先端のニップ部がインクで汚れ、吸引クリーニング等のキャッピング時にキャップのニップ部に付着したインクがノズル面に転写する。そのインクは乾燥して増粘し、ノズル面のノズルを囲うように固着してしまう。ノズル面への固着インクの堆積が進むと、印刷時に被搬送物と擦れて画像不良が生じたり、キャッピング時にノズル面とキャップニップ部との間に隙間が生じてノズル面の保湿・吸引が正しく行えなかったりする。そのため、ノズル面払拭時に固着インクを十分に除去する必要がある。そこで、記録ヘッドのノズル面をクリーニングするために、液体(洗浄液)を含浸又は塗布した不織布や多孔質部材で払拭するタイプのインクジェット記録装置が知られている。
しかし、洗浄液を不織布や多孔質部材に塗布する液体塗布手段を有する従来のインクジェット記録装置の場合、塗布される洗浄液が不織布の1箇所に集中したり、洗浄液が塗布されない領域が生じたりするという問題があった。
一方で、インクジェット記録装置が液体塗布手段を備えずに、予め洗浄液を含浸させた不織布や多孔質部材が使用される場合には、不織布の製造コストが高くなるという問題があった。
特許文献1には、洗浄液吸収体がウェブに洗浄液を供給して含浸させ、ウェブは搬送ベルトの搬送面に摺接することで搬送面に付着した異物及びインク、あるいはそれらが混合した液状物を拭き取ってクリーニングする技術が開示されている。しかし、ウェブとの接触面が平坦である洗浄液吸収体によっては、ウェブに洗浄液を均一に塗布することは困難である。
そこで本発明は、液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材に洗浄液を均一に塗布することができる液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
この課題は、液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材に洗浄液を塗布するローラ部材と、を有し、前記ローラ部材は、前記払拭部材と接触するローラ表面に、前記ローラ部材の半径方向と交差する方向に設けられた溝部を有し、前記溝部は、前記ローラ部材の幅方向において異なる溝深さ及び/又は異なる溝幅を有し、前記溝部は前記ローラ部材の幅方向中央部から両端に向かって広がる溝幅を有する、ことを特徴とする液体を吐出する装置によって解決される。
液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材に洗浄液を均一に塗布することができる。
インクジェット記録装置600を前方側から見た斜視説明図である。 同装置の機構部の全体構成を説明する側面概略構成図である。 同機構部の要部平面説明図である。 同装置の制御部の概要を示すブロック説明図である。 キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムを示す図である。 キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムを示す図である。 本発明の実施形態に係る払拭ユニットを示す図である。 本発明の第1実施形態に係る洗浄液塗布機構を示す図である。 塗布ローラ405を含む洗浄液塗布部の概略図である。 従来の洗浄液塗布装置の概略図である。 本発明の第2実施形態に係る洗浄液塗布機構の概略図である。 本発明の第3実施形態に係る洗浄液塗布機構の概略図である。 本発明の第3実施形態に係る洗浄液塗布機構の概略図である。 本発明の実施形態に係る塗布ローラ表面の微細溝の形状を示す概略断面図である。 本発明の別の実施形態に係る塗布ローラ表面の微細溝の形状を示す概略図である。
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置600を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置600は、装置本体1と、装置本体1に装着された被搬送物を装填するための供給トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された被搬送物をストックするための排出トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排出トレイ部の側方)には、インクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ(メインタンク)10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、被搬送物送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
次に、このインクジェット記録装置600の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架した主ガイド部材である主ガイドロッド31と従ガイドロッド32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ500によってタイミングベルト502を介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液滴吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向(被搬送物送り方向)に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、各色の液体を吐出するノズル列を有する1又は複数のヘッド構成などを採用することもできる。
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク35を搭載している。この各色のヘッドタンク35には各色の可撓性を有する供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための送液手段である供給ポンプユニット24が設けられている。
一方、供給トレイ2の被搬送物積載部(圧板)41上に積載した被搬送物42を供給するための供給部として、被搬送物積載部41から被搬送物42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(供給コロ)43及び供給コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は供給コロ43側に付勢されている。
そして、この供給部から供給された被搬送物42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、被搬送物42を案内するガイド45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された被搬送物42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
この搬送ベルト51は、副走査モータ504によってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された被搬送物42を排出するための排出部として、搬送ベルト51から被搬送物42を分離するための分離爪61と、排出ローラ62及び排出コロ63とを備え、排出ローラ62の下方に排出トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される被搬送物42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に供給する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、吸引ポンプ508などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、空吐出受け94に空吐出されたインクは廃液タンク506に排出されて収容される。
インクジェット記録装置600は、キャリッジ33の走査方向において、維持回復機構81と搬送ベルト51との間に、払拭ユニット100を有する。払拭ユニット100は、シート状の払拭部材である不織布101を記録ヘッド34のノズル面37に接触させてノズル面37を払拭して清掃する。払拭ユニット100は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭するときに、副走査方向に移動する。
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したインクジェット記録装置600においては、供給トレイ2から被搬送物42が1枚ずつ分離供給され、略鉛直上方に供給された被搬送物42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド部材47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、装置に設けられた制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に被搬送物42が給送されると、被搬送物42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって被搬送物42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している被搬送物42にインク滴を吐出して1行分を記録し、被搬送物42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は被搬送物42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、被搬送物42を排出トレイ3に排出する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプ508によってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
次に、この液体を吐出する装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この液体を吐出する装置全体の制御を司る、本発明に係る制御を行うための手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した制御手段としての主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて被搬送物42に画像を形成するために、キャリッジ33を主走査方向に移動させる主走査モータ500を主走査モータ駆動回路303を介して、被搬送物42を送る副走査モータ504を副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。また、主制御部301は後述する払拭ユニット100の移動位置及び移動速度、巻き取りローラ103の回転量などを制御する。また、主制御部301は図8に示す洗浄液塗布機構400の供給ポンプ403の作動を制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシート512のスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサ510で読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ500を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシート516のスリット数を、フォトセンサ518で読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ504を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって供給コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータを回転駆動することにより、前述したようにキャップ82の昇降、吸引ポンプ508の駆動などを行わせる。
主制御部301は、供給ポンプ用駆動回路311を介して供給ポンプユニット24のポンプを駆動するための駆動モータ(供給モータ)514を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクを補充供給する(充填する。)。このとき、主制御部301は、ヘッドタンク35が満タン状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給(充填動作)を制御する。この場合、ヘッドタンク35の大気開放機構を開状態にして充填を行う大気開放充填、大気開放機構を閉じたまま充填を行う通常充填がある。
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液滴を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成する。また、印刷制御部302は、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する。また、印刷制御部302は、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含む。そして印刷制御部302は、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
次に、本実施形態の一例について詳細に説明する。
まず、図5,6を参照して、キャップ82からノズル面37への固着インクの堆積メカニズムについて説明する。図5ではキャップ82が記録ヘッド34に対して移動する前提で説明するが、実際に動くのはキャップ82と記録ヘッド34うちのどちらであってもよい。また、キャップ82の下には、記録ヘッド34のノズル38からインクを吸引するための吸引ポンプ508が配置されている。
記録ヘッドの維持回復動作(メンテナンス)の際、記録ヘッド34のノズル面37から離れたキャップ82が上昇してノズル面37に接触してキャッピングした後(図5(a))、吸引ポンプ508によりノズル38からインク90が吸引される(図5(b))。次いで、キャップ82がノズル面37から離れた位置に下方へ移動し、ノズル面37を不織布101で払拭した後、キャップ内のインク90が排出される(図5(c))。インク90の排出後も、ノズル面37と当接するキャップ82の部分であるニップ部83にインク90が付着してしまう。この状態でキャッピングを行うと、ノズル面37にインク90が再度接触し(図5(d))、キャップ82がノズル面37から離れた後もインク90がノズル面37に転写されてしまう(図5(e))。
以上のような堆積メカニズムにより、ノズル面37にはノズル38を囲うようにインク90が付着することになる(図6)。図6は、記録ヘッド34の底面図であって、インク90が長方形にノズル面37に堆積していることが見て取れる。これは、キャップ82のニップ部83がノズル38を取り囲むために長方形の形状を有することに起因する。しかしながら、ニップ部83は長方形の形状に限られず、他の形状を有していてもよい。
次に、図7を参照して本発明の実施形態に係る払拭ユニットについて説明する。
払拭ユニット(ワイピングユニット)100は、記録ヘッド34のノズル面37に付着したインク90や異物などをメンテナンス時に不織布101によって拭き取るものである。
払拭ユニット100は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する面状かつロール状の払拭部材である不織布101、不織布101を供給する供給ローラ102、不織布101をノズル面37に押し当てる押圧ローラ104、供給された不織布101を巻き取る巻き取り部材である巻き取りローラ103、押圧ローラ104を押圧するための圧縮バネ106、圧縮バネを固定するための台座105などを有している。払拭方向と直交方向の不織布101の幅は、記録ヘッド34のノズル面37を一度に払拭できるように設定されている。押圧ローラ104は、記録ヘッド34のノズル面37に一定圧力で押し当たるように、台座105に圧縮バネ106によって連結されている。記録ヘッド34と払拭ユニット100は互いに相対移動可能である。なお、インクジェット記録装置600は、液滴であるインクを吐出するノズル38を有した記録ヘッド34と、ノズル38を囲むように記録ヘッド34に当接可能なニップ部83を有するキャップ82と、払拭ユニット100とを備えている。
押圧ローラ104の表面には、記録ヘッド34のノズル面37を傷つけないようにゴムなどの弾性部材が設けられていると好ましい。また、押圧ローラ104は、回転自在なローラ部材であり、巻き取りローラ103により不織布101を巻き取る際、押圧ローラ104と不織布101との間に働く摩擦力によって押圧ローラ104が連れ回ることが好ましい。押圧ローラ104を回転自在なローラで構成することで、不織布101と押圧ローラ104が摺動することなく、払拭動作中のスムーズな不織布の走行が可能となる。
インクジェット記録装置600は、払拭ユニット100を副走査方向へ移動する移動手段としての移動部530を有する。移動部530は、払拭ユニット100の接続部532と接続され、ローラ526に掛け回されたベルト520と、ローラ526を駆動するモータ524を有する。モータ524を駆動してローラ526を回転駆動することによって、ベルト520及びベルト520に接続された払拭ユニット100を副走査方向に移動する。
払拭ユニット100は、カム534と係合部536を介して接触する。カム534を回転駆動することによって、払拭ユニット100を上下方向に移動することができる。
巻き取りローラ103にはロータリーエンコーダ109が取り付けられており、ロータリーエンコーダ109のフォトセンサ107により不織布101の巻き取り距離を計測することができる。払拭ユニット100は、巻き取りローラ103を回転駆動する駆動モータ108を有し、主制御部301により駆動モータ108の回転速度が制御される。
次に、図8を参照して本発明の第1実施形態に係る洗浄液塗布機構と払拭ユニット100の払拭動作について説明する。図8は、不織布(ウェブ)101を用いた記録ヘッド34のノズル面払拭によるクリーニング方法の一連の動作を示している。
本実施形態に係るインクジェット記録装置600は、払拭ユニット100に加えて、供給された不織布101に洗浄液401を塗布する洗浄液塗布機構400を有する。この洗浄液塗布機構400は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する払拭部材である不織布101の領域に洗浄液を塗布するためのローラ部材である塗布ローラ405と、洗浄液401を収容する洗浄液カートリッジ402と、洗浄液カートリッジ402から洗浄液401を吸い出すための供給ポンプ403と、吸い出された洗浄液を塗布ローラ405に滴下する洗浄液ノズル404とを有する。
不織布101は、多孔質層を有するシート状の部材(ウェブ)である。塗布ローラ405は不織布101の表面側に配置されている。洗浄液401は、主制御部301(図4)による供給ポンプ403の作動により、洗浄液ノズル404により塗布ローラ405に滴下される。洗浄液ノズル404の先端は、塗布ローラ405に接触しない上方位置に位置決めされている。
図8(a)は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の領域に洗浄液401を塗布する状態を示している。洗浄液401が、供給ポンプ403により洗浄液カートリッジ402内から洗浄液ノズル404側に送られると、洗浄液401は洗浄液ノズル404の先端から塗布ローラ405上に滴下する。塗布ローラ405の表面には、幅方向に平行に延びる微細溝が設けられているため、塗布ローラ405に滴下された洗浄液401は、微細溝の毛細管現象によって塗布ローラ405の幅方向(紙面垂直方向)に広がる。このように洗浄液401が満遍なく広がった状態の塗布ローラ405を不織布101に押し当てることにより、不織布101の幅方向全域に洗浄液を均等に塗布することができる。
またこの構成によれば、洗浄液が一箇所に集中しなくなるため、より少量の洗浄液で不織布101の幅方向全域に浸透させることができる。
塗布ローラ405に滴下され、塗布ローラ405の表面の微細溝に沿って広がった洗浄液は、表面張力によって微細溝内に保持されるため、塗布ローラ405が回転しても落下することはない。図8(a)に示すように、塗布ローラ405が不織布101に接触したときに、塗布ローラ405に保持されていた洗浄液が不織布101に吸収される。
図8(b)は、洗浄液を吸収した不織布101が記録ヘッド34のノズル面37に接触した状態であって、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する直前の状態を示している。不織布101の裏面が押圧ローラ104によって記録ヘッド34のノズル面37に押し付けられている。この状態から、払拭ユニット100は移動部530により図中左方向に移動され、不織布101が記録ヘッド34のノズル面37全体を払拭する。
図8(c)は、不織布101で記録ヘッド34のノズル面37を払拭し終えた状態を示している。記録ヘッド34のノズル面37を拭き終えた不織布101はインクや異物などで汚れているため、供給ローラ102にロール状に巻かれた不織布101を巻き取りローラ103により巻き取って新しいウェブ領域を送り出す。インクジェット記録装置600に備えられた別の記録ヘッド34を払拭ユニット100によって払拭する場合には、図8(a)から図8(c)に示す動作を繰り返し行う。
図9は、塗布ローラ405を含む洗浄液塗布部の概略図である。図9(b)は、図9(a)の矢印X方向に見た洗浄液塗布部の概略側面図である。図9(c)は、他の実施形態に係る微細溝の概略側面図である。
塗布ローラ405は、不織布101と接触するローラ表面に、塗布ローラ405の半径方向と交差する方向に設けられた溝部である微細溝406を有している。微細溝406は、2つの山部の間の谷部であって洗浄液を保持するものであり、塗布ローラ405の周方向に一定間隔で複数形成されており、そのローラ幅方向の長さは不織布101の幅よりも長い。微細溝406の周方向の幅(ピッチ)及び深さは、塗布する洗浄液の量によって変わる。すなわち、洗浄液塗布量が少ないほど微細溝406の幅及び深さを小さくし、逆に洗浄液塗布量が多いほど微細溝406の幅及び深さを大きくすればよい。洗浄液塗布量と微細溝406の寸法の関係について、概ね微細溝406の幅は0.2〜3mm、深さは0.2〜2mm程度に設定するのが良い。
なお、微細溝406は、図9(b)に示すようなローラ幅方向と平行に延びるものに限られず、図9(c)に示すように、例えばローラ幅方向から角度をずらした溝や、スパイラル形状(螺旋形状)の溝であってもよい。すなわち、微細溝406は、塗布ローラ405の半径方向と交差する方向に設けられればよい。このような微細溝406によっても、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の全域に洗浄液401を均一に塗布することができる。
なお前述したように、本実施形態では微細溝406は洗浄液を保持するように構成されているが、必ずしも微細溝406は洗浄液を保持する必要はなく、少なくとも洗浄液を特定の方向に誘導する溝であればよく、その後は洗浄液が不織布に全て吸収されても良い。
図9(b)に示すように、本実施形態では、1つの洗浄液ノズル404が塗布ローラ405の幅方向中央部において塗布ローラ405の上方に配置されている。洗浄液ノズル404は塗布ローラ405に接触していない。このように、塗布ローラ405の幅方向中央部の1箇所に少量の洗浄液を滴下する場合でも、洗浄液は、ローラ表面の微細溝406による毛細管現象によってローラ幅方向全体に広がる。よって、洗浄液を滴下する箇所は塗布ローラ405の幅方向中央部の1箇所に限られず、塗布ローラ405の幅方向の複数箇所であってもよい。このために、2以上の洗浄液ノズル404が設けられてもよい。
洗浄液が塗布ローラ405の表面の微細溝406に保持された状態で不織布101の表面に接触することにより、洗浄液が不織布101の幅方向に均一に塗布される。前述したように、洗浄液塗布量は微細溝406の周方向の幅及び深さによって決まるため、一定の寸法の微細溝406を形成することで、常に一定量の洗浄液を不織布101の所定領域に均一に塗布することができる。
本実施形態では、塗布ローラ405は専用のモータ等の駆動源を有しておらず、不織布101とその裏面側に配置された押圧ローラ104とが共に塗布ローラ405までスライドし、塗布ローラ405と接触した時に、塗布ローラ405は不織布101との摩擦力によって従動回転する。
塗布ローラ405は、樹脂やアルミニウムなどの硬質な素材から作られ、これによって微細溝406の形状(幅や深さ)を高精度に形成することができる。微細溝406の形状を均一に形成できることで、塗布ローラ405の回転方向における洗浄液塗布量のばらつきが減少する。
一方で、塗布ローラ405に対向する押圧ローラ104は、ゴムや多孔質発泡ウレタンなどの比較的柔らかい素材で形成される。これによって、押圧ローラ104が不織布101を介して塗布ローラ405と接触したときに、不織布101が塗布ローラ405の微細溝406に進入しやすくなり、微細溝406に保持された洗浄液を不織布101に効果的に吸収させることができる。
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置600は、不織布101に洗浄液401を塗布するための塗布ローラ405を備え、塗布ローラ405は、不織布101と接触するローラ表面に、ローラ幅方向に延び微量の洗浄液を保持する微細溝406を有しているため、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の全域に微量の洗浄液401を均一に塗布することができる。
図10は、従来の洗浄液塗布装置の概略図である。図10(b)は、図10(a)の矢印X方向に見た洗浄液塗布装置の概略側面図である。
図示のように、この洗浄液塗布装置は、洗浄液401を収容する洗浄液カートリッジ402と、洗浄液カートリッジ402から洗浄液401を吸い出すための供給ポンプ403と、吸い出された洗浄液を不織布101に滴下する洗浄液ノズル404とを有する。記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の領域に洗浄液を塗布するための塗布ローラは設けられていない。ここで、1つの洗浄液ノズル404が不織布101の幅方向中央部に配置されている。このように不織布101に洗浄液を直接滴下する場合、洗浄液の濡れ広がりは、不織布101自体の浸透性にのみ頼っている為、洗浄液を不織布101の幅方向に均等に塗布することは困難である。
複数の洗浄液ノズル404を設置して複数の滴下位置を設けて不織布101の幅方向に均一に塗布しようとしても、洗浄液ノズル404の直下位置での洗浄液塗布量が多くなってしまうことは避けられず、どうしても洗浄液塗布量にムラが生じてしまう。
不織布101への洗浄液塗布量にムラが生じた状態で記録ヘッドのノズル面を払拭した場合、ノズル面汚れの払拭性にもムラが出てしまい、記録ヘッドのノズル面に固着インクや異物などの汚れが残ってしまい、綺麗にクリーニング出来ない。
図11は、本発明の第2実施形態に係る洗浄液塗布機構の概略図である。図11(b)は、図11(a)の矢印X方向に見た洗浄液塗布機構の概略断面図である。
この洗浄液塗布機構400は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の裏面領域に洗浄液を塗布するためのローラ部材である中空ローラ115と、洗浄液401を収容する洗浄液カートリッジ402と、洗浄液カートリッジ402から洗浄液401を吸い出すための供給ポンプ403と、吸い出された洗浄液を中空ローラ115に供給するチューブ116とを有する。洗浄液塗布用の中空ローラ115は不織布101の裏面側に配置されており、中空ローラ115の内部は洗浄液401で満たされている。不織布101の裏面側に配置された中空ローラ115は、不織布101を記録ヘッド34のノズル面37に押付ける押圧部材である押圧ローラ104(図8)の機能を兼ね備えている。ここで、洗浄液塗布機構400は、払拭ユニット100と共に移動可能なように、払拭ユニット100に一体的に構成されてもよい。
図11(b)に示すように、中空ローラ115は、不織布101又は中空ローラ115の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する、洗浄液を吐出するための孔部である洗浄液吐出孔117を有する。より具体的には、複数の洗浄液吐出孔117が、中空ローラ115の上部に、不織布101の全幅にわたってローラ幅方向に一定間隔で設けられている。主制御部301(図4)による供給ポンプ403の作動により、洗浄液401がチューブ116を介して中空ローラ115の内部に供給されると、洗浄液401は洗浄液吐出孔117から吐出し、不織布101の裏面に塗布される。
このようにして、洗浄液は、複数の洗浄液吐出孔117を介して不織布101の裏面に幅方向に均一に塗布され、不織布101の浸透性によって濡れ広がり、不織布101の表面の洗浄液浸透状態は均一な状態となる。洗浄液塗布量が極微量であれば洗浄液吐出孔117の径を小さくしたり、供給ポンプ403の送液圧力を調節したりすればよい。
同じ中空ローラ115を用いて不織布101の表側から洗浄液を滴下した場合に比べて、図11の構成のように不織布101の裏面から洗浄液を塗布した方が、不織布101の表面の洗浄液の濡れ状態は均一な状態となる。
中空ローラ115は回転しないように固定されているため、洗浄液吐出孔117は、図11に示すように上方を向いていて不織布101の裏面と接触する位置からずれることはない。
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置600は、不織布101に洗浄液401を塗布するための中空ローラ115を備え、中空ローラ115は不織布101の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する、洗浄液を吐出するための孔部(洗浄液吐出孔117)を有するため、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の全域に微量の洗浄液401を均一に塗布することができる。
図12,13は、本発明の第3実施形態に係る洗浄液塗布機構の概略図である。図12は洗浄液塗布機構400の全体を示す概略図であり、図12(b)は、図12(a)の矢印X方向に見た洗浄液塗布機構の概略断面図である。図13は塗布ローラ118の詳細図であり、図13(b)は、図13(a)の矢印X方向に見た洗浄液塗布機構の概略断面図である。
この洗浄液塗布機構400は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の裏面領域に洗浄液を塗布するための塗布ローラ118と、洗浄液401を収容する洗浄液カートリッジ402と、洗浄液カートリッジ402から洗浄液401を吸い出すための供給ポンプ403と、吸い出された洗浄液を塗布ローラ118に供給するチューブ116とを有する。洗浄液塗布用の塗布ローラ118は不織布101の裏面側に配置されており、塗布ローラ118の内部は洗浄液401で満たされている。不織布101の裏面側に配置された塗布ローラ118は、不織布101を記録ヘッド34のノズル面37に押付ける押圧部材である押圧ローラ104(図7)の機能を兼ね備えている。ここで、洗浄液塗布機構400は、払拭ユニット100と共に移動可能なように、払拭ユニット100に一体的に構成されてもよい。
図13に示すように、塗布ローラ118は不織布101の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する洗浄液吐出孔113aを有するが、図11に示す第2実施形態とは異なり、塗布ローラ118は、洗浄液401を収容した内側中空ローラ113と、それを覆う外側円筒ローラ114を有する。内側中空ローラ113は、ローラ幅方向に配置された2つの洗浄液吐出孔113aを上部に備えている。外側円筒ローラ114は、ローラ幅方向に延びる複数の微細溝406をローラ表面に有し、微細溝406の谷部分に洗浄液通過孔114aが形成されている。
内側中空ローラ113は固定されており回転しないが、それを覆っている外側円筒ローラ114は内側中空ローラ113に対して回転する。内側中空ローラ113の洗浄液吐出孔113aと外側円筒ローラ114の洗浄液通過孔114aはローラ幅方向において同じ位置に形成されている。したがって、回転した外側円筒ローラ114に設けた洗浄液通過孔114aが内側中空ローラ113に設けた洗浄液吐出孔113aに一致したときに、内部の洗浄液401が外側円筒ローラ114の外部(微細溝406の谷部分)に吐出する。すると、洗浄液401は、外側円筒ローラ114の表面の微細溝406の毛細管現象によってローラ幅方向に均一に広がり、微細溝406内に保持される。
外側円筒ローラ114の微細溝406に沿って広がった洗浄液401は、不織布101の裏面に接触し、不織布101の浸透性によって吸収され、不織布101の表面まで均一に濡れ広がる。
このように、不織布101を記録ヘッド34に押付ける塗布ローラ118には、幅方向に孔部(洗浄液吐出孔113a及び洗浄液通過孔114a)を設けているので、洗浄液401がこの孔部からローラ幅方向に吐出して不織布101の裏側に均一に塗布され、不織布101の裏面の洗浄液は表面に浸透する際に更に均一に染み出してくる。
図12,13に示す第3実施形態では、内側中空ローラ113の幅方向に設けた洗浄液吐出孔113aと外側円筒ローラ114の幅方向に設けた洗浄液通過孔114aの数は共に2個であるが、孔の数はこれに限られず、ローラ幅方向に1又は3以上の穴がそれぞれ設けられてもよい。また図13(a)において、内側中空ローラ113の洗浄液吐出孔113aは、内側中空ローラ113の周方向の複数個所に設けられてもよい。
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置600は、不織布101に洗浄液401を塗布するための塗布ローラ118を備え、塗布ローラ118は不織布101の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する、洗浄液を吐出するための孔部(洗浄液吐出孔113a及び洗浄液通過孔114a)を有するため、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する不織布101の全域に微量の洗浄液401を均一に塗布することができる。
図14は、本発明の実施形態に係る塗布ローラ表面の微細溝の形状を示す概略断面図である。
図示のように、塗布ローラ表面の微細溝406は、塗布ローラ405の幅方向において異なる深さを有している。具体的には、ローラ幅の中央部では溝深さが最も浅く、ローラ幅の両端に近づくにしたがって溝深さが深くなっている。よって、微細溝406は塗布ローラ405の幅方向中央部から両端に向かって下降する傾斜を有している。
このように形成された微細溝406により、塗布ローラ405の幅方向中央部に配置された洗浄液ノズル404から滴下された洗浄液は、傾斜に沿って幅方向中央部から両端部に素早く流れる。中央部での溝深さが浅いことにより毛細管現象が働いて洗浄液が両端部に広がりやすくなり、さらに微細溝406がローラ両端部に向かって下方向に傾斜していることによって、洗浄液のローラ両端部への広がりが促進される。
なお、図14に示す微細溝406の形状は図12,13に示す第3実施形態における微細溝406に適用することもできる。
図15は、本発明の別の実施形態に係る塗布ローラ表面の微細溝の形状を示す概略図である。
本実施形態では、塗布ローラ表面の微細溝406は、塗布ローラ405の幅方向において異なる溝幅を有している。ここで、溝幅は、塗布ローラ405の幅方向と直交する周方向の幅である。具体的には、ローラ幅の中央部では溝幅が最も狭く、ローラ幅の両端に近づくにしたがって溝幅が広くなっている。すなわち、微細溝406は塗布ローラ405の幅方向中央部から両端に向かって広がる溝幅を有している。
このように形成された微細溝406によっても、塗布ローラ405の幅方向中央部に配置された洗浄液ノズル404から滴下された洗浄液は、幅方向中央部から両端部に素早く流れる。
なお、図15に示す微細溝406の形状は図12,13に示す第3実施形態における微細溝406に適用することもできる。
さらに、図14に示す溝深さの形状変化と図15に示す幅方向の形状変化を組み合わせてもよい。すなわち、塗布ローラ表面の微細溝406は、塗布ローラ405の幅方向において異なる深さ及び異なる溝幅を有してもよい。この場合、ローラ幅の中央部では溝深さが最も浅く、ローラ幅の両端に近づくにしたがって溝深さが深くなるとともに、ローラ幅の中央部では溝幅が最も狭く、ローラ幅の両端に近づくにしたがって溝幅が広くなる。
このように形成された微細溝406によって、塗布ローラ405の幅方向中央部に配置された洗浄液ノズル404から滴下された洗浄液は、幅方向中央部から両端部に素早く流れる。
プリンタ、ファクシミリ、複写機、プロッタ、これらの機能を併せ持つ複合機等の画像形成装置として、例えばインク滴(液滴)を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。このようなインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルからインク滴を被搬送物に吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義であり、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する行為(単に液滴を媒体に着弾させる液滴吐出ないし液体吐出と称されるもの)を含み、2次元画像だけでなく、3次元画像(立体画像)を対象とする)を行うものである。また、記録ヘッドとして用いられる液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)は、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品であり、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め、液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、通電によって発熱する発熱体を液室内に設けて、発熱体により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出するサーマル型ヘッドが知られている。
なお、本願において、「被搬送物」の材質は紙に限定されず、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等も含み、液滴が付着されるものであれば、記録媒体、用紙、記録紙等と称されるものを含む総称として「被搬送物」なる用語を用いている。また液体吐出ヘッドから吐出される「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。より具体的には、「液体」は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等であり、これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化した液体吐出に関連する部品の集合体であり、例えばキャリッジ、ヘッドタンク、液体供給機構、維持回復機構の少なくとも一つを含んで構成される。また「液体を吐出する装置」は液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれ、画像形成装置のほかに立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置等がある。
34 記録ヘッド
37 ノズル面
38 ノズル
101 払拭部材
401 洗浄液
405 塗布ローラ(ローラ部材)
406 微細溝
600 インクジェット記録装置(液体を吐出する装置)
特開2006−264893号公報

Claims (8)

  1. 液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材と、
    前記払拭部材に洗浄液を塗布するローラ部材と、を有し、
    前記ローラ部材は、前記払拭部材と接触するローラ表面に、前記ローラ部材の半径方向と交差する方向に設けられた溝部を有し、
    前記溝部は、前記ローラ部材の幅方向において異なる溝深さ及び/又は異なる溝幅を有し、
    前記溝部は前記ローラ部材の幅方向中央部から両端に向かって広がる溝幅を有する、ことを特徴とする液体を吐出する装置。
  2. 前記溝部は洗浄液を保持する、ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
  3. 液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材と、
    前記払拭部材に洗浄液を塗布するローラ部材と、を有し、
    前記ローラ部材は、前記払拭部材と接触するローラ表面に、前記ローラ部材の半径方向と交差する方向に設けられた溝部を有し、
    前記溝部は、前記ローラ部材の幅方向において異なる溝深さ及び/又は異なる溝幅を有し、
    前記溝部は前記ローラ部材の幅方向中央部から両端に向かって下降する傾斜を有する、ことを特徴とする液体を吐出する装置。
  4. 前記ローラ部材が前記払拭部材の表面側に配置される、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の液体を吐出する装置。
  5. 液体を吐出するノズルを有した液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材と、
    前記払拭部材に洗浄液を塗布するローラ部材と、を有し、
    前記ローラ部材は、前記払拭部材の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する、洗浄液を吐出するための孔部を有し、
    前記ローラ部材が、前記払拭部材を前記液体吐出ヘッドの前記ノズル面に押付ける押圧部材の機能を有する、ことを特徴とする液体を吐出する装置。
  6. 前記ローラ部材が前記払拭部材の裏面側に配置される、ことを特徴とする請求項に記載の液体を吐出する装置。
  7. 前記孔部は、前記ローラ部材の上部に一定間隔で複数設けられている、ことを特徴とする請求項又はに記載の液体を吐出する装置。
  8. 液体を吐出するノズルを有した液体吐出ヘッドと、
    前記液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材と、
    前記払拭部材に洗浄液を塗布するローラ部材と、を有し、
    前記ローラ部材は、前記払拭部材の幅方向と平行に配置され半径方向に延在する、洗浄液を吐出するための孔部を有し、
    前記ローラ部材は、洗浄液を収容した内側中空ローラと、それを覆う外側円筒ローラを有し、前記内側中空ローラは前記孔部としての洗浄液吐出孔を上部に備え、前記外側円筒ローラは、ローラ幅方向に延びる複数の溝部をローラ表面に有し、前記溝部の谷部分に前記孔部としての洗浄液通過孔が形成されている、ことを特徴とする液体を吐出する装置。
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