以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明に係る液体を吐出する装置としてのインクジェット記録装置600を前方側から見た斜視説明図である。
このインクジェット記録装置600は、装置本体1と、装置本体1に装着された被搬送物を装填するための供給トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された被搬送物をストックするための排出トレイ3とを備えている。さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排出トレイ部の側方)には、インクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
このカートリッジ装填部4には、色の異なる色材である記録液(インク)、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数の記録液カートリッジであるインクカートリッジ(メインタンク)10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。また、インクカートリッジ10k、10c、10m、10yは縦置き状態で横方向に並べて装填する構成としている。
また、操作/表示部5には、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの装着位置(配置位置)に対応する配置位置で、各色のインクカートリッジ10k、10c、10m、10yの残量がニアーエンド及びエンドになったことを表示するための各色の残量表示部11k、11c、11m、11yを配置している。さらに、この操作/表示部5には、電源ボタン12、被搬送物送り/印刷再開ボタン13、キャンセルボタン14も配置している。
次に、このインクジェット記録装置600の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面模式的説明図、図3は同じく要部平面説明図である。
フレーム21を構成する左右の側板21A、21Bに横架した主ガイド部材である主ガイドロッド31と従ガイドロッド32とでキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ500によってタイミングベルト502を介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、前述したようにイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向(被搬送物送り方向)に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。なお、各色の液体を吐出するノズル列を有する1又は複数のヘッド構成などを採用することもできる。
記録ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
また、キャリッジ33には、各記録ヘッド34に各色のインクを供給するための各色のヘッドタンク35を搭載している。この各色のヘッドタンク35には各色の可撓性を有する供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための送液手段である供給ポンプユニット24が設けられている。
一方、供給トレイ2の被搬送物積載部(圧板)41上に積載した被搬送物42を供給するための供給部として、被搬送物積載部41から被搬送物42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(供給コロ)43及び供給コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は供給コロ43側に付勢されている。
そして、この供給部から供給された被搬送物42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、被搬送物42を案内するガイド45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された被搬送物42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。さらに、搬送ベルト51の裏側には、記録ヘッド34による印写領域に対応してガイド部材57を配置している。
この搬送ベルト51は、副走査モータ504によってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図3のベルト搬送方向に周回移動する。
さらに、記録ヘッド34で記録された被搬送物42を排出するための排出部として、搬送ベルト51から被搬送物42を分離するための分離爪61と、排出ローラ62及び排出コロ63とを備え、排出ローラ62の下方に排出トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される被搬送物42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に供給する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
さらに、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構81を配置している。
この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a〜82d(区別しないときは「キャップ82」という。)と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液体を吐出させる空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け84と、吸引ポンプ98などを備えている。ここでは、キャップ82aを吸引及び保湿用キャップとし、他のキャップ82b〜82dは保湿用キャップとしている。
そして、この維持回復機構81による維持回復動作で生じる記録液の廃液、キャップ82に排出されたインク、空吐出受け84に空吐出されたインクは廃液タンク506に排出されて収容される。
インクジェット記録装置600は、キャリッジ33の走査方向において、維持回復機構81と搬送ベルト51との間に、粘着手段90を有する。粘着手段90は、粘着部材を記録ヘッド34のノズル面37に接触させてノズル面37上の固化インクを接着、除去する。粘着手段90は、記録ヘッド34のノズル面37に接着するときに、副走査方向に移動する。
また、図3に示すように、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液体を吐出させる空吐出を行うときの液体を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したインクジェット記録装置600においては、供給トレイ2から被搬送物42が1枚ずつ分離供給され、略鉛直上方に供給された被搬送物42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド部材47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、装置に設けられた制御部のACバイアス供給部から帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト51上に被搬送物42が給送されると、被搬送物42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって被搬送物42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している被搬送物42にインク滴を吐出して1行分を記録し、被搬送物42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は被搬送物42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、被搬送物42を排出トレイ3に排出する。
また、印字(記録)待機中にはキャリッジ33は維持回復機構81側に移動されて、キャップ82で記録ヘッド34がキャッピングされて、ノズルを湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、キャップ82で記録ヘッド34をキャッピングした状態で吸引ポンプ98によってノズルから記録液を吸引し(「ノズル吸引」又は「ヘッド吸引」という。)し、増粘した記録液や気泡を排出する回復動作を行う。また、記録開始前、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出する空吐出動作を行う。これによって、記録ヘッド34の安定した吐出性能を維持する。
次に、この液体を吐出する装置の制御部の概要について図4を参照して説明する。なお、同図は同制御部の全体ブロック説明図である。
この制御部は、この液体を吐出する装置全体の制御を司る、本発明に係る制御を行うための手段を兼ねたマイクロコンピュータで構成した制御手段としての主制御部301及び印刷制御を司るマイクロコンピュータで構成した印刷制御部302とを備えている。
そして、主制御部301は、通信回路300から入力される印刷処理の情報に基づいて被搬送物42に画像を形成するために、キャリッジ33を主走査方向に移動させる主走査モータ500を主走査モータ駆動回路303を介して、被搬送物42を送る副走査モータ504を副走査モータ駆動回路304を介して駆動制御するとともに、印刷制御部302に対して印刷用データを送出するなどの制御を行う。
また、主制御部301には、キャリッジ33の位置を検出するキャリッジ位置検出回路305からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいてキャリッジ33の移動位置及び移動速度を制御する。また、主制御部301は後述する粘着手段90の移動位置及び移動速度、接着ローラ94の回転量などを制御する。キャリッジ位置検出回路305は、例えばキャリッジ33の走査方向に配置されたエンコーダシート512のスリット数を、キャリッジ33に搭載されたフォトセンサ510で読み取って計数することで、キャリッジ33の位置を検出する。主走査モータ駆動回路303は、主制御部301から入力されるキャリッジ移動量に応じて主走査モータ500を回転駆動させて、キャリッジ33を所定の位置に所定の速度で移動させる。
また、主制御部301には搬送ベルト51の移動量を検出する搬送量検出回路306からの検出信号が入力され、主制御部301はこの検出信号に基づいて搬送ベルト51の移動量及び移動速度を制御する。搬送量検出回路306は、例えば搬送ローラ52の回転軸に取り付けられた回転エンコーダシート516のスリット数を、フォトセンサ518で読み取って計数することで搬送量を検出する。副走査モータ駆動回路304は、主制御部301から入力される搬送量に応じて副走査モータ504を回転駆動させて、搬送ローラ52を回転駆動して搬送ベルト51を所定の位置に所定の速度で移動させる。
主制御部301は、給紙コロ駆動回路307に給紙コロ駆動指令を与えることによって供給コロ43を一回転させる。主制御部301は、維持回復機構駆動用モータ駆動回路308を介して維持回復機構81のモータを回転駆動することにより、前述したようにキャップ82の昇降、吸引ポンプ98の駆動などを行わせる。
主制御部301は、供給ポンプ用駆動回路311を介して供給ポンプユニット24のポンプを駆動するための駆動モータ(供給モータ)514を駆動制御し、カートリッジ装填部4に装填されたインクカートリッジ10からヘッドタンク35に対してインクを補充供給する(充填する。)。このとき、主制御部301は、ヘッドタンク35が満タン状態にあることを検知するヘッドタンク満タンセンサ312からの検知信号に基づいて補充供給(充填動作)を制御する。この場合、ヘッドタンク35の大気開放機構を開状態にして充填を行う大気開放充填、大気開放機構を閉じたまま充填を行う通常充填がある。
また、主制御部301は、カートリッジ通信回路314を通じて、カートリッジ装填部4に装着された各インクカートリッジ10に設けられる記憶手段である不揮発性メモリ316に記憶されている情報を取り込んで、所要の処理を行って、本体記憶手段である不揮発性メモリ(例えばEEPROM)315に格納保持する。
また、主制御部301には、環境温度、環境湿度を検知する環境センサ313からの検知信号が入力される。
印刷制御部302は、主制御部301からの信号とキャリッジ位置検出回路305及び搬送量検出回路306などからのキャリッジ位置や搬送量に基づいて、記録ヘッド34の液体を吐出させるための圧力発生手段を駆動するためのデータを生成する。また、印刷制御部302は、上述した画像データをシリアルデータでヘッド駆動回路310に転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、滴制御信号(マスク信号)などをヘッド駆動回路310に出力する。また、印刷制御部302は、ROMに格納されている駆動信号のパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動波形生成部及びヘッドドライバに与える駆動波形選択手段を含む。そして印刷制御部302は、1の駆動パルス(駆動信号)或いは複数の駆動パルス(駆動信号)で構成される駆動波形を生成してヘッド駆動回路310に対して出力する。
ヘッド駆動回路310は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部302から与えられる駆動波形を構成する駆動信号を選択的に記録ヘッド34の液体を吐出させるエネルギーを発生する駆動素子(例えば前述したような圧電素子)に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスを選択することによって、例えば、大滴(大ドット)、中滴(中ドット)、小滴(小ドット)など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
次に、図5を参照して本発明の実施形態に係る粘着手段について説明する。
粘着手段90は、記録ヘッド34のノズル面37に付着した固化インク105や異物などをメンテナンス時に粘着部材91によって除去するものである。
粘着手段90は、記録ヘッド34のノズル面37を払拭する面状かつロール状の粘着部材91、粘着部材91を供給する固定ローラ93、供給された粘着部材91を巻き取る巻き取り部材である接着ローラ94、接着ローラ94を押圧するための圧縮バネ106、圧縮バネを固定するための台座111などを有している。払拭方向と直交方向の粘着部材91の幅は、記録ヘッド34のノズル面37を一度に払拭できるように設定されている。接着ローラ94は、記録ヘッド34のノズル面37に一定圧力で押し当たるように、台座111に圧縮バネ106によって連結されている。記録ヘッド34と粘着手段90は互いに相対移動可能である。
インクジェット記録装置600は、粘着手段90を副走査方向へ移動する移動手段としての移動部530を有する。移動部530は、粘着手段90の接続部532と接続され、ローラ526に掛け回されたベルト520と、ローラ526を駆動するモータ524を有する。モータ524を駆動してローラ526を回転駆動することによって、ベルト520及びベルト520に接続された粘着手段90を副走査方向に移動する。
粘着手段90は、カム534と係合部536を介して接触する。カム534を回転駆動することによって、粘着手段90の接着ローラ94を上下方向に移動することができる。
粘着手段90は、接着ローラ94を回転駆動する駆動モータ108を有し、主制御部301により駆動モータ108の回転速度が制御される。
図6〜12は、本発明の第1実施形態に係る記録ヘッドの維持回復装置を示す概略図である。以下では、これらの図を用いて、記録ヘッドの維持回復装置の構成及び維持回復方法について説明する。
図6に示すように、第1実施形態に係る記録ヘッドの維持回復装置200は、液体吐出ノズル38を有するノズル面37を備える液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド34上の液体残留物である固化インク105を除去するための粘着部材91を有する粘着手段90、及び、粘着手段90のノズル面37への接着を補助する接着補助手段99を有する。粘着手段90は、巻き出しローラである固定ローラ93、巻き取りローラである接着ローラ94及びこれらローラに巻き掛けられた粘着部材91を有する。接着ローラ94は、粘着部材91のノズル面37への接触時に粘着部材91が記録ヘッド34のノズル穴に接触しないように粘着部材91を部分的に接着させる接着部材である。
接着補助手段99は、負圧室96、負圧室に接続した吸引チューブ97、負圧室の天面に取り付けられた接着補助部材95及び吸引ポンプ98を具備し、平板状の形状を有する。接着補助手段99は、ノズル面37に部分的に接着した粘着部材91を、ノズル面37上の固化インク105を含む領域であって記録ヘッド34のノズル穴以外の領域に対して接着させる。このために、接着補助部材95には、ノズル穴に対応する穴115が形成されており、接着補助部材95が粘着部材91をノズル面37に押し当てた際にも、粘着部材91が記録ヘッド34のノズル穴に接触しない。なお、接着補助手段99はキャップ82とは別に設けられてもよいし、キャップ82が接着補助部材95を備え、接着補助手段99としての機能をも有してもよい。
ノズル面37上には液体吐出ノズル38のノズル穴が複数設置されており、ノズル列(液体吐出ノズル38)の並び方向は、固定ローラ93及び接着ローラ94上の粘着部材91の巻き取り方向と同じ方向である。また、ノズル面37上には、放置時間中にインクが乾燥、固化してできた固化インク105が固着している(図6)。図示の例では、固化インク105は、キャップ82の縁がキャピング時にノズル面に接触した位置に対応してノズル面37上に分布している。従って、固化インク105の分布位置はキャップ82の形状に依存する。
粘着部材91は、固定ローラ93及び接着ローラ94によって一定の張力で保持され、面状に広げられている。また、ノズル面37に対向する粘着部材91の面全体には粘着剤が塗布されている。図7に示すように、粘着部材91により固化インク105を払拭する場合、カム534や移動部530による上下左右の移動及び接着ローラ94に接続した圧縮バネ106の付勢力により、接着ローラ94が粘着部材91を介してノズル面37に接触する。
その後、接着ローラ94は、ノズル面37上を反時計回りに回転しながら移動部530により移動しつつ、粘着部材91の両端部をノズル面37に貼り付ける(図8)。接着ローラ94の移動中、粘着部材91は接着ローラ94から展開される。図8では、接着ローラ94はノズル面37の端部まで移動しているが、その後さらに図中右方向へ移動する。
次いで、図9に示すように、接着ローラ94がノズル面37の端部を超えて移動したとき、粘着部材91はノズル面37に貼り付けられるが、このとき、後述するように接着ローラ94は鼓状の形状を有するため、粘着部材91の両端部(図中手前側及び奥側)のみがノズル面37に貼り付けられる。次いで、接着補助手段99の接着補助部材95が粘着部材91を介してノズル面37に面状に接触する。ただし、接着補助部材95は、液体吐出ノズル38に対応する位置に穴115を有するため、粘着部材91は液体吐出ノズル38(ノズル穴)には接触しない。このようにして、粘着部材91は記録ヘッド34のノズル穴以外の全領域に対して接触する。次いで、接着補助手段99に取り付けられた吸引ポンプ98の吸引によって、接着補助部材95の裏面に形成された負圧室96内の圧力が負圧になり、ノズル面37に接着した粘着部材91の一部、特にノズル面周囲の粘着部材が剥がれる又は剥がれやすくなる。このように、接着補助手段99は、粘着部材91のノズル面37からの剥離を補助する機能をも有する。なお、接着補助手段99による剥離工程は省略されてもよく、接着補助手段99による接着工程後に接着ローラ94による剥離工程を行ってもよい。
図9に示す状態で10秒間保持した後、接着補助手段99を待避位置まで下げ(図10)、接着ローラ94を移動部530により移動させて再度ノズル面37に接触させ、今度は接着ローラ94を時計回りに回転させながら粘着部材91を接着ローラ94に巻き取る(図11)。つまり、接着ローラ94は、接着補助手段99による粘着部材91の接着後に、ノズル面37に接着した粘着部材91をノズル面37に対して水平に剥離させる。
次に、粘着部材91を巻き取った接着ローラ94は初期位置(図12)まで後退した後、時計回りに回転しながら使用分だけ巻き取り、次回の使用時に今回剥ぎ取った固化インク105がノズル面37に転写しないようにする。
以上が、記録ヘッド34の維持回復方法である。
次に、図13を用いて接着ローラ94の構造を説明する。
接着ローラ94は、ノズル面に対応する中央部が両端部よりもくびれた鼓状の形状を有している。言い換えれば、鼓状の形状とは、接着ローラ94の中央部の直径が他の箇所よりも小さい構造である。この接着ローラ94の構造により、粘着部材91がノズル穴に直接触れないようにノズル面37に両端部で接着するとともに、後続の接着補助部材95の剥離工程において負圧室96を負圧にした際の粘着部材91の剥離が可能となる。この接着ローラ94の構造により、粘着部材91のノズル面37への接着時に、ノズル穴内に形成されるインクのメニスカスが破壊されない。
以上の装置により、ノズル面37に固着した固化インク105の剥離状態を評価した。評価方法には画像計測を用いた。ノズル面37上の固化インク105を、光学倍率10倍の対物レンズを搭載したカメラによって撮影し、撮影画像を2値化した。その後、残留インクの色を検出し、除去率=残留インク量/接着前インク量として除去率を縦軸、実験回数を横軸として、10回の計測結果を図14に実線で示した。
<比較例1>
比較例1のために、粘着部材を用いる特許文献3の技術を適用した。図15が比較例1の構成を示す。
図15は塗布ヘッド1のメンテナンスの様子を示す。塗布ヘッド1内には加圧配管2より供給された蛍光体ペースト3が充填されている。図15(a)に示すように、吐出面4上に吸引や加圧によって押し出された吐出口5の蛍光体ペーストに対し粘着テープ8が設置されているが、粘着テープ8はまだ貼付けられていない。次に、図15(b)に示すように、吐出面4上のインクに粘着テープ8が押し付けられ、このとき粘着テープ8に蛍光体ペーストが接着される。次に、図15(c)のように、塗布ヘッド1は鉛直上方に移動し、これによって粘着テープ8が引っ張られる。すると、図15(d)のように粘着テープ8が剥がれ、押し出された蛍光体ペーストが粘着テープ8に吸着される。
以上の装置により、ノズル面に固化インクを付着させた状態からのインクの除去率を調べた。図14において、除去率を縦軸、実験回数を横軸として、グラフを点線で示した。
図14から、第1実施形態に係る記録ヘッドの維持回復装置200によれば、ノズル面の残留インク量が比較例1の構成に比べて少ないことが分かった。第1実施形態の構成によれば、10回のワイピング後の残留インク量は徐々に増加するが、払拭率は90%を維持した。一方、比較例1の構成によれば、10回のワイピング後の払拭率は10%だった。この原因は、各工程が異なるためである。つまり、第1実施形態では、大きく分けて、第一工程としてノズル穴以外の領域に対して粘着部材を接触させる機構を有する接着補助部材による接着工程で、略全てのインクを一旦粘着部材に押し付ける。次に、粘着部材を剥離させる接着部材により粘着部材をノズル面に対して水平に剥離させる第二工程において、粘着部材を水平方向に剥がす。水平方向に剥がすか、鉛直方向に剥がすかで、粘着部材の接着力に差が生じる。水平方向に剥がす場合、剥離方向に対して垂直なラインに対して力が働く。これにより、剥離時に生じる接着力のばらつきが小さくなる。一方、比較例1の構成のように鉛直方向に剥がす場合、ノズル面全体へ一度に力がかかる。そのため、ノズル面上の粘着部材による接着力にばらつきが生じる。ここで言う接着力とは、ノズル面と粘着部材との間に働く力ではなく、粘着部材と固化インクの間に働く力である。
この接着力がばらつくか否かで、メンテナンス時の固化インクの除去性能に大きな差が生じる。粘着部材の粘性が比較的低い、あるいは固化インクが粉末状であれば、さほど問題にはならないが、固化インクの場合、強い接着力でノズル面に接着している。そのため、なるべく粘着部材との間に働く接着力を高く保たせる必要がある。第1実施形態の構成によれば、接着力のばらつきが小さいため、ノズル面上に残留するインクが10%となった。これによってノズル周囲のインクの染み出し、不吐出、吐出曲がりを防止できた。
また、ノズル穴を避けるように粘着部材を貼り付けることでノズル穴内に形成されるインクのメニスカスが破壊されない。また、粘着部材を第二工程で水平方向に剥がすことにより、垂直に剥がした場合に生じうる粘着部材の挙動によるインクの跳ね飛ばしを防止できる。さらに、粘着部材を水平に剥がすことによりノズル面からの剥離状態を一定に保ち、剥離時のインク戻りや撥水膜へのインク再付着を防止できる。これによってノズル周囲のインクの染み出し、不吐出、吐出曲がりを防止できる。
さらに、粘着部材の剥離時の方向を垂直ではなく水平方向としたことにより、記録ヘッドのノズルプレートを固定する接着剤の劣化や、撥水膜の劣化を抑えることができ、記録ヘッド自体の寿命向上にも繋がった。また、ノズル面を直接払拭することによるノズル面の撥水膜の劣化を抑えることができる。
次に、図16〜21を用いて記録ヘッドの維持回復装置の第2実施形態を説明する。
この記録ヘッドの維持回復装置では、粘着手段90が、図6に示す粘着部材91の粘着部に液体(洗浄液)を吸収する吸収体110を有している。図16は粘着部材91の構造を模式的に示しており、図16(a)は、吸収体を設置した粘着部材の概略側面図、図16(b)は粘着部材の概略斜視図である。図16(a)は、吸収体110を設置した粘着部材91を、ローラの巻取り方向より観察したものである。記録ヘッドのノズル列は、この巻き取り方向と同じ方向に並んでいる。吸収体110は、巻き取り方向のうち、特にノズル列の並ぶ中央付近に設置されている。吸収体110は例えば多孔質の部材又は液体吸収により膨潤、ゲル化する高吸収性ポリマーである。
本第2実施形態では、高吸収性ポリマーである吸収体110が粘着部材91の凹部91aに設置され、吸収体の表面には洗浄液が塗布される。このために、図17に示すように、維持回復装置は吸収体110に洗浄液を塗布するための塗布手段である洗浄液ノズル120を有する。洗浄液ノズル120はノズル面37の付近ではなく、維持回復装置200の待避位置に設置されている。
高吸収性ポリマーを用いることで、特に、粘着部材の粘着力が強すぎることで生じうるノズル面の撥水膜の劣化を防止できる。高吸収性ポリマーに浸透させた液体により、粘着力が弱まる効果が得られる他、固化インクを溶解又は剥離しやすい状態にすることができる。液体は、純水であっても、界面活性剤等を含む洗浄剤であってもよい。また、高吸収性ポリマーは粘着部材の粘着部全面に設けられてもよいし、一部に設けられてもよい。これによって、ノズル周囲の撥水膜の劣化や剥がれを防止できる。
以下では、図17〜20を用いて第2実施形態の維持回復装置の動作を説明する。
図17,18は維持回復装置の概略構成図、図19,20はノズル面37近傍の概略拡大図である。
印刷時には、キャップ82が待避し、ノズル面37が空気中に露出する、いわゆるデキャップ状態になる。この時、図17に示すように、維持回復装置200の粘着手段90もキャップ同様に待避し、ノズル面37から離れる。待避状態で洗浄液ノズル120は粘着部材91の上方に位置する。次に、図18に示すように、メンテナンス開始時には、洗浄液ノズル120より洗浄液121が滴下され、粘着部材91上の吸収体110が膨潤する。
次に、移動部530によって粘着手段90の粘着部材91がノズル面37に接着すると(図19)、吸収体110に滴下された洗浄液121が、ノズル周囲の固化インク105に対して染み出し、固化インク105を溶解又は剥離させる(図20)。洗浄液121はほぼ水で構成されるが、水の他に界面活性剤や溶剤を含む。例えば50[mm]×20[mm]のノズル面であれば、洗浄液の量は100[μl]程度が望ましい。これは吸収体110の性能によって変化し、第2実施形態で用いた高吸収性ポリマーは厚みが100μm、面積が40mm2だった。洗浄液の量は100[μl]より多くても少なくても良いが、高吸収性ポリマーの性質上、保水量が80[μl]であったことから、若干染み出す程度の量を用いた。固化インク105の溶解にはこの程度の量であれば良い。
第2実施形態によれば、粘着部材91がノズル面37に対して接着しすぎないよう粘着力を調整でき、また、固化インクを溶解、剥離しやすくできる。図21は、ノズル面の撥水膜の剥がれ状態を確認するため、インクを滴下し、後退接触角を測定した結果を示す。横軸はメンテナンス回数、縦軸は後退接触角である。なお、新品の記録ヘッドであれば、ノズル面の後退接触角は約90°である。実線は第2実施形態の結果、点線は吸収体110を有しない粘着部材91、すなわち図5の構成を用いた結果、一点差線は比較例の結果である。
<比較例2>
比較例2は、図5の構成も高吸収性ポリマーも用いない、つまり、図15に示した構成の結果である。具体的には、第一工程で粘着部材をノズル面に貼り付けるが、第二工程では粘着部材をノズル面に対して垂直方向に引き剥がす。さらに、粘着部材は高吸収性ポリマーを有さず、洗浄液も塗布しない。その結果である撥水膜に対するインクの後退接触角は図21に示されている。
第2実施形態では、撥水膜に対するインクの後退接触角を測定したところ、後退接触角が最小で40°、最大で60°となった(図21)。メンテナンス回数が増加するほど、後退接触角はやや低下するものの、最初の状態を概ね維持できており、劣化する様子は見られなかった。これにより、ノズル面上からのインク除去率が変化せず、汚染の進行が抑えられた。
一方、比較例2の構成によれば、後退接触角は10°〜20°となった。この後退接触角であれば、インクが記録ヘッドから被搬送物上に落下する危険性は減少するものの、濡れ広がりが大きく、払拭性が悪化するため、ノズル面上の汚染が進行した。これにより、最終的に堆積したインクが被搬送物を摺擦するため、画像の乱れや汚れに繋がった。
以上のように、第2実施形態の構成によれば、記録ヘッドのノズル面の撥水膜劣化を防止し、撥水性を良好に維持できた。また、記録ヘッドの寿命が向上した。
次に、図22を用いて記録ヘッドの維持回復装置の第3実施形態を説明する。
図22は、接着ローラ94による粘着部材91の引き剥がしの瞬間を示している。第3実施形態に係る記録ヘッドの維持回復装置200では、粘着手段90は、固定ローラ93、接着ローラ94、これらローラに巻き掛けられた粘着部材91及び接着ローラに接続された振動子92を有する。振動子92は、接着ローラ94による粘着部材91の剥離時に接着ローラ94に振動を付加するものであり、例えばソレノイドコイルである。しかし、振動子は別の方式のものであってもよい。接着ローラ94は前述したように第一工程の粘着部材91の貼り付け及び第二工程の引き剥がしを行うが、振動子92によって接着ローラ94を振動させながら粘着部材91を引き剥がす。粘着部材91を剥離させる剥離部材としても機能する接着ローラ94に振動を付加することで、粘着部より粘着剤が剥がれ落ちる確率が減少し、粘着部材91を効果的に引き剥がすことができる。
粘着部材91の剥離時に振動子92によって粘着部材91に振動を付加することによって、粘着部材を引き剥がした後に粘着剤の残渣がノズル面に付着することを防止できる。これによってノズル面上のインク堆積を防止し、ノズル穴からのインク染み出しや、吐出曲がりを防止できる。
比較のために、1か月使用した場合の粘着剤の剥離確率を使用した。剥離確率は、80個のヘッド全てに対し、使用した後の状態を観察、残留した粘着剤の量を調べ、残留有ヘッド数/全ヘッド数より、発生確率を算出した。記録ヘッドは前述したように50[mm]×20[mm]のノズル面を有するヘッドである。
<比較例3>
比較例3は、振動子92を設置しなかった構成における、ノズル面への粘着剤の剥離確率を示した。比較には1か月使用した場合の粘着剤の剥離確率を使用した。剥離確率は、80個のヘッド全てに対し、使用した後の状態を観察、残留した粘着剤の量を調べ、残留有ヘッド数/全ヘッド数より、発生確率を算出した。記録ヘッドは前述したように50[mm]×20[mm]のノズル面を有するヘッドである。
第3実施形態では、1か月間の使用中、粘着剤が残留した確率は0%だった。インクジェット記録装置には記録ヘッドがそれぞれ60〜80個程度設置されているが、粘着剤の剥離は生じなかった。一方、比較例3の構成によれば、粘着剤が残留した確率は約10%だった。この場合、8個程度のヘッドに粘着剤が残留する。これが継続することで、粘着剤がノズル面の撥水性を著しく低下させるほか、粘着剤自体にインクが堆積することによって被搬送物への逆転写が生じることが分かった。
以上のように、第3実施形態の構成によれば、記録ヘッドのノズル面への粘着剤付着による劣化が防止でき、ノズル面上のインク堆積を防止し、ノズル穴からのインク染み出しや、吐出曲がりを防止することができた。また、ヘッド交換による手間やコストが低減できた。
次に、図23を用いて記録ヘッドの維持回復装置の第4実施形態を説明する。
第4実施形態の維持回復装置では、ノズル穴周囲が親油性の膜でコーティングされている。このために、例えばシリコン油コーティングが使用される。ノズル穴周囲を親油性とすると、含水率が50%を超えるインクよりも、洗浄液のほうがより濡れ性が良くなる。図23(a)は、親油性としたノズル面37上に固化インク105が堆積しているときに、洗浄液130を塗布した直後の状態を示す。
ノズル穴周囲を親油性の膜でコーティングすることにより、固化インク105よりも洗浄液130のほうがより濡れ性が高くなる。そのため、図23(a)に示すように、洗浄液130は固化インク105の下側に滑り込む。図23(b)に示すように、この状態で例えば維持回復装置に備えられたウェブワイプ部材150を固化インク105に接触させると、洗浄液130が固化インク105を押しのける。さらに、図23(c)に示すように、ウェブワイプ部材150によって払拭すると、固化インク105はウェブワイプ部材150に付着する。これにより、ノズル穴周囲から固化インク105が取り除かれる。
このように、ノズル周囲に親油性を持たせることにより、洗浄液が固化インクとノズル面との界面に侵入しやすくなり、ノズル面の撥水膜劣化の原因と考えられる粘着部材の粘着力を低下させられる。また、ノズル周囲が親油性を有することで、粘着部材の粘着力自体を低下させることができ、引き剥がし時の撥水膜の劣化を防止できる。これにより、ノズル穴よりインクが染み出す、撥水膜が剥がれ、ノズル穴に侵入するといった現象によりノズルが不吐出になることを防止できる。
図24には、第4実施形態に係る維持回復装置の使用開始より1か月までの、記録ヘッド1個のノズル穴周囲のインク堆積量の推移を実線で示す。インク堆積量の測定では、レーザー顕微鏡によりインク堆積量[μl]を計測した。
<比較例4>
比較例4は、ノズル周囲を親油性の膜でコーティングしない構成でのインク堆積量の測定結果である。図24には、比較例4に係る維持回復装置の使用開始より1か月までの、記録ヘッド1個のノズル穴周囲のインク堆積量の推移が点線で示されている。
第4実施形態の維持回復装置によれば、1か月使用後の記録ヘッド1個あたりのノズル穴周囲のインク堆積量は0[μl]であった。一方、比較例の場合、インク堆積量は平均して10[μl]であった。このように、第4実施形態によれば、ノズル穴周囲のインク堆積量が無くなるため、比較例4の構成のようにノズル穴周囲のインク堆積の増加を防止でき、吐出時の曲がりや不吐出を防止することができた。さらに、第4実施形態の構成により、ノズル穴周囲に対する粘着部の粘着力自体を低下させ、撥水膜の劣化を防止することができた。また、ノズル穴よりインクが染み出す、撥水膜が剥がれてノズル穴に侵入するといった現象によりノズルが不吐出になることを防止できた。
本発明の実施形態に係る液体を吐出する装置又は画像形成装置は前述した維持回復装置を有する。図25は、前述した維持回復装置を搭載した液体を吐出する装置の1か月あたりの不具合発生率を実線で示す。
<比較例5>
比較例5は、従来の維持回復装置(メンテナンス手段)を有する液体を吐出する装置である。図25は、本発明の実施形態に係る維持回復装置を搭載しない液体を吐出する装置の1か月あたりの不具合発生率を点線で示す。
図25から分かるように、本実施形態に係る液体を吐出する装置又は画像形成装置によれば、1か月あたりの不具合の発生確率を1%以下に低減することができた。一方、比較例5の装置では、1か月あたりの不具合発生確率が20%となった。このように従来の装置では、固化インクの払拭性が低下するため、吐出時の不具合が多く、印字中の白スジや抜けが発生した。本実施形態によれば、ノズル面が常に正常に保たれるほか、撥水膜も正常な状態に維持できるため、吐出時の不具合がほとんど発生しなかった。これにより、記録ヘッドや維持回復装置(メンテナンス手段)の交換によるコストを削減することができた。
プリンタ、ファクシミリ、複写機、プロッタ、これらの機能を併せ持つ複合機等の画像形成装置として、例えばインク滴(液滴)を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。このようなインクジェット記録装置は、記録ヘッドのノズルからインク滴を被搬送物に吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義であり、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与する行為(単に液滴を媒体に着弾させる液滴吐出ないし液体吐出と称されるもの)を含み、2次元画像だけでなく、3次元画像(立体画像)を対象とする)を行うものである。また、記録ヘッドとして用いられる液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)は、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品であり、圧電アクチュエータ等により振動板を変位させ液室内の体積を変化させて圧力を高め、液滴を吐出させる圧電型ヘッドや、通電によって発熱する発熱体を液室内に設けて、発熱体により生じる気泡によって液室内の圧力を高め、液滴を吐出するサーマル型ヘッドが知られている。
なお、本願において、「被搬送物」の材質は紙に限定されず、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等も含み、液滴が付着されるものであれば、記録媒体、用紙、記録紙等と称されるものを含む総称として「被搬送物」なる用語を用いている。また液体吐出ヘッドから吐出される「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。より具体的には、「液体」は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等であり、これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化した液体吐出に関連する部品の集合体であり、例えばキャリッジ、ヘッドタンク、液体供給機構、維持回復機構の少なくとも一つを含んで構成される。また「液体を吐出する装置」は液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれ、画像形成装置のほかに立体造形装置、処理液塗布装置、噴射造粒装置等がある。
なお、本発明に係るノズルプレートの製造方法は、インクジェット記録装置はもとより、光硬化性樹脂などを射出する3Dプリンタのノズルなどに用いることが可能である。