本発明の一実施の形態のクリーニング装置は、金属石鹸および帯電性粒子を含有する固形潤滑剤と、導電性を有するとともに上記固形潤滑剤を上記像担持体の表面に塗布する塗布部材と、上記塗布部材に電圧を印加して上記帯電性粒子を所望の極性に帯電させるための電源装置と、弾性を有するとともに上記固形潤滑剤が塗布された上記像担持体の表面に当接して上記表面上の付着物を掻き取るためのクリーニング部材とを有する。上記クリーニング装置は、以下に説明する各構成要件を満足する範囲において、例えば前述の先行技術文献に記載されているような、公知のクリーニング装置の構成要素をそのまま用い、あるいは利用して構成することができる。
上記固形潤滑剤は、金属石鹸および帯電性粒子を含有する。上記金属石鹸は、電子写真方式の画像形成装置で像担持体に塗布される固形潤滑剤において公知の金属石鹸から適宜に選ぶことが可能である。上記金属石鹸は、一種でもそれ以上でもよい。上記金属石鹸の例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの直鎖炭化水素にカルシウム、マグネシウム、鉛、亜鉛、銅、鉄などの金属が結合した脂肪酸金属塩、が含まれ、中でも、特に、ステアリン酸亜鉛は、像担持体の摩擦係数を低減する効果が高い観点から好ましい。
上記帯電性粒子は、上記像担持体の表面に供給されるトナーの外添剤の帯電性の極性とは逆の極性の帯電性を有する。すなわち、上記外添剤が負帯電性であれば、上記帯電性粒子は正帯電性であり、当該外添剤が正帯電性であれば上記帯電性粒子は負帯電性である。
上記帯電性粒子の帯電性は、例えば、常温常湿環境などの一般的な環境下において、上記帯電性粒子と二成分現像剤のキャリア粒子とが入ったポリエチレン製容器を振って両粒子を混合し、ブローオフ法により、上記帯電性粒子が正および負のどちらの極性に摩擦帯電したか、によって判別することが可能である。
また、上記帯電性粒子の帯電性の極性は、上記トナーの帯電性の極性と逆の極性であること、すなわち、上記トナーが負帯電性のトナーであれば上記帯電性粒子は正帯電性を有し、正帯電性のトナーであれば上記帯電性粒子は負帯電性を有することが、クリーニング部材による像担持体の表面上の残留トナーの除去をより容易にする観点から好ましい。
上記帯電性粒子の材料は、所望の帯電性を呈する範囲において適宜に決めることができ、無機粒子であってもよいし、有機粒子であってもよい。上記無機粒子の材料の例には、金属酸化物が含まれ、当該金属酸化物の例には、シリカ、アルミナ、チタニアおよびジルコニアが含まれる。上記無機粒子は、その帯電性を調整する観点から、あるいは、上記金属石鹸中での分散性を高める観点から、公知の適当な表面処理剤によって表面処理されていてもよい。当該表面処理剤の例には、シリコーンオイルおよびシランカップリング剤が含まれる。
上記有機粒子の例には、樹脂粒子が含まれる。当該樹脂粒子の材料の樹脂は、その樹脂そのものが、または、粒子としたときに、前述した粒径や硬さなどの所望の物性を十分に発現可能な樹脂から適宜に選ぶことが可能であり、一種でもそれ以上でもよい。上記樹脂の例には、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂およびメラミン樹脂が含まれる。中でも、比重が軽くクリーニング部材を傷つけにくい観点から、アクリル樹脂、スチレン樹脂またはスチレン−アクリル樹脂であることがより好ましい。
アクリル樹脂の例には、アクリル酸またはそのエステル類、メタクリル酸またはそのエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリル酸誘導体の単独重合体または共重合体が含まれる。
スチレン樹脂の例には、スチレンおよびスチレン誘導体などのスチレン系モノマーの単独重合体、およびスチレン系モノマーを主成分としこれと共重合可能なビニル化合物との共重合体樹脂を言う。スチレン系モノマーの例には、スチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−メチルスチレン、ビニルナフタレン、などの芳香族ビニル化合物が含まれる。
上記スチレン−アクリル樹脂は、スチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体であり、その重合形態は限定されない。
上記樹脂粒子は、その帯電性を調整する観点から、所望の極性を有する官能基を上記樹脂粒子の少なくとも表面に導入してもよい。上記官能基の導入の方法は、公知の方法によって行うことができ、例えば、上記官能基を有する樹脂のシェル層を含む上記樹脂粒子とすること、上記樹脂粒子の表面を上記官能基で化学的に修飾し、または物理的に担持させること、あるいは、上記樹脂粒子の材料の樹脂に上記官能基を導入すること、によって行うことができる。
以下、上記帯電性粒子の帯電性について、トナーおよびその外添剤が負帯電性を有する場合を例に、さらに説明する。
上記トナーおよびその外添剤が負帯電性を有する場合では、上記帯電性粒子は正帯電性を有する。この場合、上記帯電性粒子は、少なくともその表面に正帯電性の含窒素官能基を有することが、クリーニング部材および像担持体の表面を上記帯電性粒子が摩耗することを抑制する観点から好ましい。帯電性粒子は、上記含窒素官能基を粒子全体に含んでいてもよいし、表面を含む一部(例えばシェル層)のみに有していてもよい。
上記正帯電性の含窒素官能基は、正帯電性を示す、窒素原子を含有する官能基である。上記含窒素官能基は、前述したように、上記樹脂粒子の表面に化学的に結合していてもよいし、分子間力による相互作用などによって物理的に担持されていてもよい。上記窒素原子が樹脂粒子と化学的に結合している場合では、上記窒素原子は、樹脂粒子の表面を構成する樹脂の構造単位に含まれていてもよいし、特定の官能基を介して適宜に結合していてもよい。
また、上記含窒素官能基の、上記樹脂粒子の表面における含有量は、それが多いほど(樹脂粒子の表面が窒素原子をより多く含むほど)上記樹脂粒子の正帯電性が強くなるが、多すぎると、逆極性のトナーを用いる画像形成プロセスに影響を及ぼす可能性がある。上記含窒素官能基の、上記樹脂粒子の表面における含有量は、本実施の形態の効果が得られるとともに所期の画像形成プロセスが実現可能な範囲において適宜に決めることができ、窒素原子の存在比率で0.5atom%以上であることが、前述のクリーニング性を高める効果を十分に発現させる観点から好ましく、0.7atom%以上であることがより好ましい。また、上記含有量は、逆極性のトナーを用いる画像形成プロセスに影響を抑える観点から、15atom%以下であることが好ましく、10atom%以下であることがより好ましい。
上記樹脂粒子の表面における窒素は、上記含窒素官能基に由来する。上記含窒素官能基の、上記樹脂粒子の表面における含有量は、上記樹脂粒子の表面を構成する元素(ここでは、選択元素C、NおよびOの存在比率の合計を100%としたとき)のうちの窒素原子の存在比率として求めることが可能であり、X線光電子分光法(XPS)によって求めることが可能である。
上記含窒素官能基は、一種でもそれ以上でもよいが、全体として正の帯電性を示す。たとえば、上記含窒素官能基は、アミノ基、アミド基またはイミド基を含む場合ではニトロ基またはニトロソ基をさらに含んでいてもよいが、ニトロ基またはニトロソ基のみを含むことはない。上記含窒素官能基の例には、構造式(1)〜(4)で示される、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基、および1〜2級アミド基が含まれる。たとえば、構造式(1)の含窒素官能基は、樹脂の側鎖に存在し、構造式(2)(3)の含窒素官能基は、いずれも主鎖に存在する。また、例えば、構造式(4)の含窒素官能基は、樹脂の側鎖または主鎖に存在する。
上記構造式(1)〜(4)において、R1、R2、は、それぞれ、水素、アルキル基またはアルケニル基である。当該アルキル基およびアルケニル基は、いずれも、炭素数1〜10の直鎖、分岐鎖若しくは環状の基である。
上記帯電性粒子は、適度な大きさを有することが、クリーニングニップ部でのクリーニング部材の摩耗を抑制する観点、および、像担持体の表面上でトナーから遊離した外添剤を堰き止める観点、から好ましい。なお、「クリーニングニップ部」とは、電子写真方式の画像形成装置における像担持体とそれに当接するクリーニング部材との当接部である。
たとえば、上記帯電性粒子の体積平均粒径は、像担持体の表面上においてトナーから遊離した外添剤を堰き止める観点から30nm以上であることが好ましい。当該粒径が30nmより小さいと、像担持体表面の微小な凹凸に上記帯電性粒子が嵌まり、クリーニングニップ部を通過することがあり、上記の堰き止め効果が十分に発揮されないことがある。また、上記体積平均粒径は、クリーニングブレードのチッピングなどのクリーニング部材の損傷を抑制する観点から、300nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
また、上記帯電性粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、以下の式から求めることができ、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。
変動係数(CV値:%)=100×(標準偏差/平均粒径)
上記帯電性粒子の体積平均粒径およびCV値は、例えば、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(「LA−960」(株式会社堀場製作所製))を用いて求めることが可能である。
上記帯電性粒子は、適度な丸みを有することが、クリーニングニップ部での像担持体およびクリーニング部材の摩耗を抑制する観点から好ましい。たとえば、上記帯電性粒子の平均円形度は、0.9以上であることが、上記の観点から好ましい。
上記帯電性粒子はクリーニングニップ部において、その粒子形状を保つのに十分な硬さを有することが好ましい。大まかには、上記帯電性粒子は、ロックウェル硬さでMスケールの硬さを有することが、クリーニングニップ部における形状の維持および像担持体への研磨の観点から好ましい。
上記帯電性粒子は、粒径が小さく、それ自体の硬度を測定することは困難だが、例えば帯電性粒子と同組成の部材により上記のロックウェル硬さの測定によって相対的に硬度を確認することが可能である。また、例えば、クリーニングニップ部におけるニップ圧の条件下にある上記帯電性粒子の粒子形状を観察し、この粒子形状が実質的に変形しないことを観察することによって、その帯電性粒子が所期の硬さを有することを確認することが可能である。
上記樹脂粒子の上記樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準によってゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定する場合で5,000以上であることが、クリーニングニップ部での像担持体およびクリーニング部材の摩耗を抑制する観点から好ましい。また、上記Mwは、上記の摩耗抑制効果が頭打ちになる観点、および、入手の容易さの観点、から500,000以下であることが好ましい。
上記帯電性粒子の真密度は、1.2以下であることが好ましい。真密度が1.2より高くなると、帯電性粒子の重さによるクリーニングブレードのニップ部直前の流動性が低下することや、帯電性粒子のもつ運動エネルギーの増加に伴い、クリーニングブレードの帯電性粒子を除去することによる負荷が必要以上に大きくなり、クリーニング性が不十分になることなどの悪影響が生じうる。
なお、帯電性粒子の真密度の測定は、ヘリウムによるガス置換式の測定法を用いる。測定器にアキュピック1330(株式会社島津製作所社製)を用いて測定できる。測定法は、ステンレス製の内径18.5mm、長さ39.5mm、容量10cm3のセルに、精秤した測定サンプルを入れる。次いで、試料セル中の微粉体(帯電性粒子の測定サンプル)の容積をヘリウムの圧力変化によって測定し、求められた容積とサンプルの重さから帯電性粒子の真密度を求めることが可能である。なお、メラミン樹脂の粒子の真密度は、一般に1.4以上である。
上記帯電性粒子がコアシェル構造の樹脂粒子である場合における上記シェル部を構成する樹脂は、シェル部に例えば上記含窒素官能基を一定量(窒素の存在比率0.5〜15atom%)有していればよく、上記コア部を構成する樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、シェル部は、コア部の表面全てを被覆するものであるのが好ましいが、コア部の表面の一部にシェル部が形成されていない部分が存在していてもよい。
コアシェル構造を有する上記樹脂粒子は、合成品であってもよいし、市販品であってもよい。当該樹脂粒子の重合方法は特に限定されず、懸濁重合、分散重合、シード重合など従来公知の製造方法によって製造することができる。たとえば、上記樹脂粒子は、少なくとも1分子中に1個以上のビニル基を有する化合物を含む単量体成分を重合してなるビニル系重合体で構成することができ、コア部およびシェル部を構成する単量体成分の組合せとしては、シェル部を構成する単量体とコア部を構成する単量体とが同一の化合物であってもよいし、異なっていてもよい。
また、上記樹脂粒子は、シェル部のみ、またはシェル部とコア部との両方に、(メタ)アクリル酸アミノアルキル(炭素数1〜8)エステル、(メタ)アクリルアミドおよびメチロール(メタ)アクリルアミドなどの含窒素官能基を有するビニル系単量体が含まれる態様から製造することが可能であり、また、第四級アンモニウム塩や脂肪族アミンの酢酸塩などの含窒素官能基を有する乳化剤を用いて重合する態様から製造することが可能である。上記(メタ)アクリル酸アミノアルキル(炭素数1〜8)エステルの例には、アミノメチルアクリレート、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレートおよびアミノブチルアクリレートが含まれる。
また、上記市販品の例には、「ファインスフェア FS−107」(日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製、「ファインスフェア」は日本ペイント株式会社の登録商標)、および、「ケミスノー MP−2800」(綜研化学株式会社製、「ケミスノー」は同社の登録商標)が含まれる。
上記固形潤滑剤における上記金属石鹸の含有量は、本実施の形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることが可能であり、成形性や割れやすさの観点から70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
上記固形潤滑剤における上記帯電性粒子の含有量は、本実施の形態の効果が得られる範囲において適宜に決めることが可能である。上記含有量は、クリーニング性の向上効果を十分に発現させる観点から1質量%以上であることが好ましい。また、上記含有量は、クリーニング性の観点から、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。上記含有量が1質量%未満であると、粒子が少なすぎて粒子による効果が不十分となることがあり、その結果、クリーニングブレードの摩耗の抑制が不十分になることがある。上記含有量が30質量%を超えると、クリーニング性が不十分になることがある。
上記固形潤滑剤は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、上記金属石鹸および上記樹脂粒子以外の他の成分をさらに含有していてもよい。
上記固形潤滑剤は、公知の方法によって製造することが可能である。たとえば、上記固形潤滑剤は、金属石鹸と樹脂粒子とを混合し、加温溶融して金型内に注入し、次いで冷却して固化させることによって製造することが可能である。また、金属石鹸と樹脂粒子とを混合し、圧縮成型することによっても製造することが可能である。
上記塗布部材は、固形潤滑剤の形態に応じて、固形潤滑剤を像担持体の表面に塗布するための公知の装置の中から適宜に選ぶことが可能である。たとえば、上記固形潤滑剤は、棒状の塊あるいは粉体の状態で塗布に供され、上記塗布部材には、固形潤滑剤の上記塊や上記粉体などの供給源と像担持体の表面との両方に接触する位置に配置されている弾性ローラを用いることが可能である。当該弾性ローラの例には、ブラシローラおよびスポンジローラが含まれる。
上記塗布部材における上記のローラの回転方向は、像担持体に対してウィズ方向(表面が同一方向に移動する方向)およびカウンター方向(表面が逆方向に移動する方向)のいずれでもよい。像担持体に固形潤滑剤を均一に塗布する観点、および、上記ローラがトナーを取り除いた後の像担持体の表面に固形潤滑剤が塗布される観点から、カウンター方向であることがより好ましい。なお、像担持体の表面における固形潤滑剤の塗布量は、上記ローラの回転速度によって調整することが可能であり、例えば上記回転速度を上げることにより、上記塗布量を多くすることができる。
上記塗布部材は、それが保持する固形潤滑剤を帯電させる導電性を有する。当該導電性は、塗布部材全体が有していてもよいし、固形潤滑剤を保持する部分、例えばブラシローラであればブラシの繊維であり、スポンジローラであればスポンジの部分、のみに導電性を有していてもよい。
上記塗布部材における導電性は、低すぎると上記帯電性粒子における所望の極性の帯電が不十分となることがあり、高すぎると像担持体に電気が流れ、帯電性粒子の帯電が不十分となることがある。このような観点から、上記導電性は、静電帯電が生じる程度の導電性以上であり、かつ塗布部材から像担持体への電流のリークを生じる導電性未満である範囲から適宜に決めることが可能である。
上記電源装置は、上記外添剤の帯電性とは逆の極性の電圧を上記塗布部材に印加するための装置である。電源装置には、所望の極性の電圧を印加可能な公知の装置を採用することが可能である。
上記電源装置が印加する電圧は、直流電圧でもよいし、交流電圧でもよいし、これらの重畳電圧であってもよい。中でも、上記電圧は、帯電性粒子を迅速に帯電させる観点から、直流電圧または重畳電圧であることが好ましく、よって、上記電源装置は、直流電圧、または直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を前記塗布部材に印加するための装置であることが好ましい。
上記電源装置が上記塗布部材へ印加する電圧は、低すぎると、塗布部材に保持された状態の帯電性粒子が凝集して像担持体の表面上に均一に塗布されないためにクリーニング部材が局所的に摩耗されることがある。上記電圧が高すぎると、塗布部材から像担持体へ電気のリークが生じ、やはり帯電性粒子が凝集して像担持体の表面上に均一に塗布されなくなることがある。このような帯電性粒子の帯電不良による塗布状態の不良を防止する観点から、上記電圧は、例えば上記塗布部材を正極性に帯電させる場合では、+100〜+500Vであることが好ましく、+300〜+500Vであることがより好ましい。
上記クリーニング部材は、像担持体の表面に当接する弾性部材であり、当該クリーニング部材には、ゴム弾性を有する板である公知のクリーニングブレードを好適に用いることが可能である。
上記クリーニング装置は、本実施の形態の効果が得られる範囲において、前述した構成要素以外の他の構成要素をさらに有していてもよい。当該他の構成要素の例には、フリッカー、スクレーパ、およびさらなる電源装置が含まれる。
上記フリッカーは、上記塗布部材の塗布部に当接して塗布部材に付着している固形潤滑剤および転写残トナーなどの像担持体表面の付着物を当該塗布部から除去するための部材である。上記スクレーパは、上記フリッカーが保持する上記固形潤滑剤および付着物を当該フリッカーから除去するための部材である。これらには、フリッカーおよびスクレーパとして公知の部材を用いることが可能である。
上記さらなる電源装置は、上記フリッカーに電圧を印加し、上記塗布部材の塗布部に付着する上記固形潤滑剤および上記付着物の除去を促進するための装置である。上記電圧は、本実施の効果が得られ、かつ上記塗布部のクリーニングに好適な範囲から適宜に決めることが可能であり、例えば、負帯電性の上記トナーおよび上記外添剤と、正帯電性の上記帯電性粒子を用いる場合では、+400〜1000Vであることが好ましい。上記フリッカーへの電圧の印加は、連続していてもよいし、断続的であってもよい。
上記クリーニング装置は、公知の電子写真方式の画像形成技術に用いることが可能である。すなわち、上記クリーニング装置は、その表面にトナー画像を担持するための像担持体と、上記トナー画像を被転写部材に転写した後の上記像担持体の表面の付着物を上記表面から除去するためのクリーニング装置とを有する電子写真方式の画像形成装置の当該クリーニング装置に適用することが可能である。
また、上記クリーニング装置は、その表面に担持するトナー画像を被転写部材に転写した後の像担持体の表面から、上記表面の付着物を除去するクリーニング工程を含む電子写真方式の画像形成方法に適用可能である。上記クリーニング工程は、固形潤滑剤を上記像担持体の表面に塗布部材によって塗布する塗布工程と、塗布すべき上記固形潤滑剤を保持している上記塗布部材に電圧を印加して、上記固形潤滑剤に含有される帯電性粒子を、上記トナー画像を構成するトナーの外添剤の帯電性とは逆の極性に帯電させる電圧印加工程と、上記固形潤滑剤が塗布された上記像担持体の表面に当接するクリーニング部材によって上記表面上の付着物を掻き取る掻き取り工程とを含む。
なお、上記電子写真方式の画像形成に用いられる上記トナーは、トナー母体粒子とその表面に付着する外添剤とによって構成されるトナー粒子からなる一成分現像剤であってもよいし、当該トナー粒子とこれを表面に担持するキャリア粒子とによって構成される二成分現像剤であってもよい。上記トナーには、公知のトナーを用いることが可能である。すなわち、上記トナーは、少なくとも、結着樹脂および着色剤が含有されるトナー母体粒子と外添剤とから構成される。当該外添剤の添加により、トナーの流動性が高められ、帯電極性が調整される。
上記外添剤は、トナーの外添剤として公知の粒子の中から適宜に決めることが可能であり、その例には、無機微粒子、有機微粒子および滑剤が含まれる。上記無機微粒子の例には、シリカ、チタニア、アルミナおよびチタン酸ストロンチウムの微粒子が含まれる。当該無機微粒子は、必要に応じて疎水化処理されていてもよい。
上記シリカ微粒子(負帯電性)の例には、日本アエロジル株式会社製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、キャボット社製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5が含まれる。
上記チタニア微粒子(負帯電性)の例には、日本アエロジ株式会社製の市販品T−805、T−604、テイカ株式会社製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン工業株式会社製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産株式会社製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OCが含まれる。
上記アルミナ微粒子(負帯電性)の例には、日本アエロジル株式会社製の市販品RFY−C、C−604、石原産業株式会社製の市販品TTO−55が含まれる。
上記トナーにおける上記外添剤の含有量は、トナー粒子に対して0.1〜10.0質量%であることが好ましい。上記外添剤は、タービュラーミキサ、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサ、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用してトナーへ添加することができる。
以下、本発明の一実施の形態におけるクリーニング装置、画像形成装置および画像形成方法を説明する。本実施の形態の画像形成装置は、固形潤滑剤塗布装置を除き、像担持体と、固形潤滑剤を有するクリーニング装置とを有する電子写真方式の公知の画像形成装置と同様に構成すること可能である。
図1は、本発明の一実施の形態の画像形成装置の構成の一部を模式的に示す図である。本実施の形態の画像形成装置は、図1に示されるように、像担持体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、中間転写体5、帯電装置6、クリーニング装置および前露光装置11を有している。
像担持体1は、例えば、公知の有機感光体である。像担持体1は、アルミニウム製のドラム状の基体(導電性支持体)と、その外周面に配置されている感光層とを有する。当該感光層は、例えば、ポリカーボネート樹脂と、電荷発生化合物や電荷輸送化合物などの感光材料とを含有する厚さ25μmの樹脂製の層である。像担持体1は、回転可能に配置されており、その回転速度は、例えば460mm/秒である。
帯電装置2は、コロナ放電による非接触式の帯電装置である。また、露光装置3は、例えば、レーザー光線の照射装置および当該レーザー光線の光路を形成する不図示の光学系を含む。
現像装置4は、像担持体1に対向して配置される現像スリーブ10と、現像スリーブ10の表面に担持されるトナーの層厚を規制する現像ブレード13とを有し、二成分現像剤12を収容している。二成分現像剤12を構成するトナー粒子は、乳化重合法により製造された体積平均粒径が6.5μmのトナー母体粒子を有し、トナー母体粒子に対して外添処理されたシリカやチタニアの無機微粒子を前述した外添剤として有している。上記外添剤および上記トナー粒子は、例えば、いずれも負帯電性を有している。
中間転写体5は、導電性を付与したポリイミド樹脂からなる無端状のベルトである。当該ベルトは、トナー画像の転写時には不図示の転写ローラによって像担持体1に圧接する。帯電装置6は、像担持体1の回転方向における転写ローラの下流側に配置されており、例えばコロナ放電による非接触式の帯電装置である。
上記クリーニング装置は、不図示のクリーニング容器と、その開口部に支持されているクリーニングブレード7と、上記クリーニング容器の開口の内側であり、かつ像担持体1の回転方向におけるクリーニングブレード7よりも上流側の位置に配置されている固形潤滑剤塗布装置14とを有する。
クリーニングブレード7は、弾性を有する板であり、例えば、反発弾性率が24%(25℃)、JIS A硬度が72°、厚さが2.00mm、自由長が10mm、幅が324mmである、ウレタンゴム製の板である。クリーニングブレード7は、その一側縁で像担持体1の長手方向の全体に当接している。像担持体1に対するクリーニングブレード7の当接荷重は25N/mであり、当接角は18°である。前露光装置11は、光照射装置であり、クリーニングブレード7と帯電装置2との間に配置されている。
固形潤滑剤塗布装置14は、画像形成装置では、像担持体1の回転方向における帯電装置6の下流側に位置する。固形潤滑剤塗布装置14は、回転ブラシ8、固形潤滑剤9、フリッカー15、スクレーパ16、第1電源装置17および第2電源装置18を有している。
回転ブラシ8は、例えば、金属製の回転軸の表面から起立する導電性ポリエステル繊維により構成されている導電性ファーブラシである。たとえば、回転ブラシ8のブラシ毛長は3mmであり、ブラシ毛の太さが3d(デニール)であり、ブラシ毛の密度は180(kF/inch2)である。また、ローラ径は14mmである。回転ブラシ8は、そのブラシ毛の先端部が像担持体1の表面に例えば0.8mm食い込む位置に配置されており、像担持体1に対して相対速度θ:1.3でカウンター方向に回転する。
固形潤滑剤9は、例えばステアリン酸亜鉛と正帯電性を有するアクリル樹脂製の粒子(例えば平均粒径が200nm)とを含有する組成物の棒状の塊であり、前述した本実施の形態の固形潤滑剤である。固形潤滑剤9は、像担持体1のドラム長さ(回転ブラシ8の軸方向におけるブラシ部の長さ)と同程度の長さを有する、長手方向を横断する断面形状が矩形の、細長な直方体の形状を有しており、回転ブラシ8に向けて不図示のばねによって(例えばバネ圧0.7N/mで)付勢され、回転ブラシ8に当接している。
フリッカー15は、回転ブラシ8の回転方向の上流側における像担持体1と固形潤滑剤9との間の位置で、例えば1mmの食い込み量で回転ブラシ8に当接している。フリッカー15は、例えば金属製の筒である。スクレーパ16は、フリッカー15の表面に当接している。スクレーパ16は、例えば1mmの食い込み量でおり、フリッカー15の表面の付着物(例えば固形潤滑剤9など)を当該表面から除去する。
第1電源装置17は、回転ブラシ8の導電性ポリエステル繊維にプラスの電圧を印加するための装置である。第1電源装置17は、例えば、回転ブラシ8の上記回転軸に所望の極性および強さの電圧で電気を流すように電気的に接続されている。また、第2電源装置18は、フリッカー15にプラスの電圧を印加するための装置である。第2電源装置18は、例えば、フリッカー15の上記筒に所望の極性および強さの電圧で電気を流すように電気的に接続されている。
回転している像担持体1の表面に、帯電装置2が電圧を印加する。帯電している像担持体1の表面に、露光装置3からのレーザー光線が照射され、形成すべき画像に対応する静電潜像が像担持体1の表面に形成される。
現像スリーブ10は、線速度800mm/分で回転駆動し、また、像担持体1の表面電位と同極性のバイアス電圧が印加される。現像装置4では、現像スリーブ10に向けて二成分現像剤12が撹拌、搬送される間に、負極性に帯電する。現像装置4は、現像スリーブ10への上記バイアス電圧の印加により、二成分現像剤12による反転現像を行う。二成分現像剤12中のトナー粒子は、上記静電潜像に付着し、こうして静電潜像が現像される。
中間転写体5は、トナー画像を担持する像担持体1の表面に圧接し、トナーの帯電極性とは通常、逆極性の電圧を上記転写ローラによって印加される。こうして、像担持体1の表面上のトナー画像が中間転写体5の表面に転写される。転写されたトナー画像は、普通紙などの記録媒体にさらに転写された後に定着装置による加熱加圧によって定着し、こうして記録媒体に所期の画像が形成される。
帯電装置6は、トナー画像を転写した後の像担持体1の表面に電圧を印加する。この電圧の印加により、転写後の像担持体1の表面に付着する転写残トナーなどの付着物の極性が一様に整えられる。
一方で、回転ブラシ8には、第1電源装置17からのプラスの電圧、例えば+300Vの電圧が印加され、また、付勢して当接している固形潤滑剤9が導電性ポリエステル繊維に付着する。付着した固形潤滑剤9中のアクリル樹脂粒子はプラスに帯電する。回転ブラシ8は、像担持体1の表面の転写残トナーなどの付着物を当該表面から掻き取り、プラスに帯電したアクリル樹脂粒子を含む固形潤滑剤は、帯電された像担持体1の表面に供給され、こうして固形潤滑剤が像担持体1の表面に一様に塗布され、上記アクリル樹脂粒子も像担持体1の表面の全体に均一に配置される。
なお、回転ブラシ8の付着物は、第2の電源装置18からプラスの電圧、例えば+1000Vの電圧が印加されているフリッカー15へ移され、フリッカー15の表面からスクレーパ16によって掻き取られ、上記クリーニング容器に収容される。このように、固形潤滑剤塗布装置14は、像担持体1の表面に残留するトナーを回収し、クリーニングブレード7に到達する転写残トナーを減らす役割も兼ねている。
クリーニングブレード7は、固形潤滑剤が塗布された像担持体1の表面に当接する。転写残トナーは、クリーニングブレード7によって像担持体1の表面から掻き取られる。固形潤滑剤は、その一部がクリーニングブレード7によって掻き取られ、固形潤滑剤中のステアリン酸亜鉛は、クリーニングブレード7によって所定の厚さに均される。クリーニングブレード7により掻き取られた転写残トナー、アクリル樹脂粒子および余剰のステアリン酸亜鉛は、上記クリーニング容器に収容される。
前露光装置11は、転写残トナーが除去された像担持体1の表面に、像担持体1の表面電位を一様に整えるための光を照射する。こうして、像担持体1の静電履歴は、次の静電潜像の形成のための帯電工程までに、像担持体1の表面から消去される。
上記画像形成装置では、高印字率の画像を連続して形成しても、像担持体1およびクリーニングブレード7の摩耗が抑制される。その理由は、以下のように考えられる。図2は、本実施の形態におけるクリーニングニップ部およびその近傍を拡大して模式的に示す図である。
像担持体1の表面における、トナー母体粒子P3と外添剤P1とからなるトナー粒子は、負帯電性を有し、その外添剤P1も負帯電性を有する。回転ブラシ8は、固形潤滑剤9の塗布によって、ステアリン酸亜鉛のみならず、プラスに帯電したアクリル樹脂粒子P2をも像担持体1の表面に一様に塗布する。
アクリル樹脂粒子P2は、クリーニングニップ部7Nの上流側まで到達し、当該上流側でクリーニングブレード7によって堰き止められる。こうして、アクリル樹脂粒子P2およびトナー母体粒子P3の溜まりである静止層7Sが当該上流側に形成される。アクリル樹脂粒子P2は、一般に、トナー母体粒子P3に比べて十分に小さいので、静止層7Sにおけるクリーニングニップ部7N側に溜まる。この静止層7Sにおいて、アクリル樹脂粒子P2はプラスに帯電していることから、外添剤P1はアクリル樹脂粒子P2に静電的に捕集される。こうして、像担持体1の表面上の外添剤P1は、静止層7Sにおいてアクリル樹脂粒子P2に実質的に全て捕集される。
一方、アクリル樹脂粒子P2は、通常、外添剤P1に比べて十分に大きく、また前述したように、トナー母体粒子P3は、通常、アクリル樹脂粒子P2よりもさらに大きい。よって、外添剤P1を捕集しているアクリル樹脂粒子P2とトナー母体粒子P3とは、いずれも、クリーニングブレード7によって像担持体1の表面から掻き取られ、除去される。このため、転写残トナー中の外添剤P1は、アクリル樹脂粒子P2に捕集された状態で像担持体1の表面から除去されるので、クリーニングニップ部7Nまで実質的には到達しない。よって、像担持体1の表面におけるクリーニングニップ部7Nよりも下流側では、固形潤滑剤中のステアリン酸亜鉛で実質的に構成される均一な薄層が形成され、クリーニングニップ部7Nを外添剤P1が通過することによるクリーニングブレード7および像担持体1の表面における摩耗が防止される。そして、ステアリン酸亜鉛の薄層をその表面に有する像担持体1は、その後、さらなる画像の形成に供される。
このように、本実施の形態では、クリーニングニップ部7Nの上流側に外添剤P1と逆極性に帯電したアクリル樹脂粒子P2含む堰き止め層(静止層7S)が形成され、トナーから遊離した外添剤P1が物理的および静電的に堰き止められる。また、それに伴い、静止層7Sに到達したトナー粒子(トナー母体粒子P3)も堰き止められる。
また、固形潤滑剤9に含まれる帯電性粒子(アクリル樹脂粒子P2)の帯電極性と同極性の電圧が回転ブラシ8のブラシに印加されることから、固形潤滑剤9中に含まれるアクリル樹脂粒子P2が、当該粒子間および当該粒子とブラシとの間の静電的な反発により、凝集することなく像担持体1上に均一に塗布される。よって、アクリル樹脂粒子P2による外添剤P1の堰き止め効果がより大きくなる。
また、アクリル樹脂粒子がトナーの帯電極性とは反対の極性に帯電していることから、像担持体1の表面におけるトナー(トナー母体粒子P3)に対しても静電的に付着しやすいので、このような逆極性の帯電性粒子を伴わずに固形潤滑剤を像担持体1の表面に塗布する場合に比べて、像担持体1上のトナーの除去量がより一層高められる。
以上の説明から明らかなように、上記クリーニング装置は、金属石鹸および帯電性粒子を含有する固形潤滑剤と、導電性を有するとともに上記固形潤滑剤を上記像担持体の表面に塗布する塗布部材と、上記塗布部材に電圧を印加して上記帯電性粒子を所望の極性に帯電させるための電源装置と、弾性を有するとともに上記固形潤滑剤が塗布された上記像担持体の表面に当接して上記表面上の付着物を掻き取るためのクリーニング部材とを有し、上記帯電性粒子は、上記像担持体の表面に供給されるトナーの外添剤の帯電性の極性とは逆の極性の帯電性を有し、上記電源装置は、上記逆の極性の電圧を上記塗布部材に印加するための装置である。また、上記画像形成装置は、その表面にトナー画像を担持するための像担持体と、上記トナー画像を被転写部材に転写した後の上記像担持体の表面の付着物を上記表面から除去するための上記クリーニング装置とを有する。さらに、上記画像形成方法は、その表面に担持するトナー画像を被転写部材に転写した後の像担持体の表面から、上記表面の付着物を除去するクリーニング工程を含み、上記クリーニング工程は、固形潤滑剤を上記像担持体の表面に塗布部材によって塗布する塗布工程と、塗布すべき上記固形潤滑剤を保持している上記塗布部材に電圧を印加して、上記固形潤滑剤に含有される帯電性粒子を、上記トナー画像を構成するトナーの外添剤の帯電性とは逆の極性に帯電させる電圧印加工程と、上記固形潤滑剤が塗布された上記像担持体の表面に当接するクリーニング部材によって上記表面上の付着物を掻き取る工程とを含む。よって、クリーニング装置を有するとともに像担持体の表面に固形潤滑剤が塗布される電子写真方式の画像形成装置において、高印字率画像を連続印刷した場合であってもクリーニング部材の摩耗による画質の低下を抑制し、所期の画質を長期に亘って維持することができ、かつ画像形成プロセスによる所期の画質を維持することができる。
上記帯電性粒子の帯電性の極性が上記トナーの帯電性の極性と逆の極性であることは、クリーニング装置による転写残トナーの除去能力を高める観点からより一層効果的である。
また、上記電源装置が直流電圧、または直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を上記塗布部材に印加するための装置であることは、帯電性粒子を迅速に帯電させる観点からより一層効果的である。
また、上記帯電性粒子の体積平均粒径が30〜300nmであることは、当該帯電性粒子による外添剤の捕集効果を高める観点、および、クリーニングニップ部におけるクリーニング部材および像担持体の表面の摩耗を抑制する観点、からより一層効果的である。
また、上記帯電性粒子がアクリル樹脂、スチレン樹脂およびスチレン−アクリル樹脂からなる群から選ばれる一以上の樹脂で構成されており、かつ、少なくともその表面に正帯電性の含窒素官能基を有することは、その比重の軽さによる高い流動性を有することにより、外添剤やトナー母体粒子の静止層中への進行を抑制してクリーニング部材の負荷の低減が図れる観点からより一層効果的である。
また、上記金属石鹸がステアリン酸亜鉛であることは、像担持体の摩擦係数を低減する効果が高い観点からより一層効果的である。
[粒子1〜8の準備]
粒子1〜8をそれぞれ用意した。
粒子1は、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の開発品である。粒子1は、アクリル樹脂で構成されている樹脂粒子であり、その表面にアミノ基などの正帯電性の含窒素官能基を有している。粒子1の体積平均粒径Dは、60nmである。
粒子2は、粒子1と同様の方法で作製された樹脂粒子であり、その体積平均粒径Dは、200nmである。粒子3も、粒子1と同様の方法で作製された樹脂粒子であり、その体積平均粒径Dは、280nmである。
粒子4は、日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社製の開発品であり、スチレン樹脂で構成されている樹脂粒子であり、その表面にはアミノ基などの正帯電性の含窒素官能基を有している。粒子4の体積平均粒径Dは、200nmである。
粒子5は、株式会社日本触媒製の「エポスター S」(「エポスター」は同社の登録商標)である。粒子5は、メラミン樹脂で構成されている樹脂粒子であり、その表面に正帯電性の含窒素官能基であるアミノ基を有している。粒子5の体積平均粒径Dは、200nmである。
粒子6は、4−アミノブチルトリエトキシシランで表面処理されたシリカ粒子であり、その体積平均粒径Dは、200nmである。また、粒子7は、4−アミノブチルトリエトキシシランで表面処理されたアルミナ粒子であり、その体積平均粒径Dは、200nmである。さらに、粒子8は、ヘキサメチルジシラザンで表面処理されたシリカ粒子であり、その体積平均粒径Dは200nmである。
樹脂粒子1〜8の材質および物性を表1に示す。
[固形潤滑剤1〜10の調製]
90質量部のステアリン酸カルシウム(CaSt)と10質量部の粒子1とを、ヘンシェルミキサーを用いて混合し、混合物を得た。混合条件は、回転翼の周速が35m/秒であり、処理温度(槽内温度)が32℃であり、混合時間が3分間であった。
次いで、内部温度が160℃の金型に、上記混合物を、その温度を150℃以下に下がらないように制御しながら注入した。15分間、金型内部の温度を150℃に維持したまま金型を静置し、次いで、温度ムラが発生しないように注意しながら金型を1℃/分の速度で室温(25℃)まで冷却し、得られた固形物を上記金型から取り外した。こうして、縦8mm×横5mm×長さ328mmの固形潤滑剤1を得た。
粒子1に代えて粒子2を用い、その量を1質量%となる量に変更した以外は固形潤滑剤1と同様にして固形潤滑剤2を得た。また、粒子1に代えて粒子2を用いる以外は固形潤滑剤1と同様にして、固形潤滑剤3を得た。さらに、粒子2の量を30質量%となる量に変更した以外は固形潤滑剤2と同様にして、固形潤滑剤4を得た。
また、粒子1に代えて粒子3〜8のそれぞれを用いる以外は固形潤滑剤1と同様にして、固形潤滑剤5〜10のそれぞれを得た。
固形潤滑剤1〜10の組成を表2に示す。
[トナーの調製]
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加した。
次いで、温度を75℃とした後、スチレン532質量部、n−ブチルアクリレート200質量部、メタクリル酸68質量部およびn−オクチルメルカプタン16.4質量部からなる単量体混合液M1を1時間かけて滴下し、上記反応容器内の液体を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合を行い、樹脂微粒子A1の分散液を調製した。樹脂微粒子A1の重量平均分子量(Mw)は16500であった。
一方、撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1質量部、n−ブチルアクリレート62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部およびn−オクチルメルカプタン1.75質量部からなる単量体混合液M2に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP−57」(日本精蝋株式会社製)93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させ、モノマー溶液Bを調製した。
他方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱した。この界面活性剤溶液に、樹脂微粒子A1の分散液32.8質量部(固形分換算)を添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製、同社の登録商標)により、モノマー溶液Bを8時間混合分散させ、340nmの分散粒径を有する乳化粒子を含む乳化粒子分散液Cを調製した。
次いで、乳化粒子分散液Cに、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、得られた混合液を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子A2の分散液Dを調製した。樹脂微粒子A2のMwは23000であった。
樹脂微粒子A2の分散液Dに、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加した。次いで、80℃の温度条件下で、スチレン293.8質量部、n−ブチルアクリレート154.1質量部およびn−オクチルメルカプタン7.08質量部からなる単量体混合液M3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却し、コア部用樹脂微粒子の分散液Eを得た。コア部用樹脂微粒子のMwは26800、体積基準平均粒径は125nm、ガラス転移温度(Tg)は30.5℃であった。
単量体混合液M1に代えて、スチレンを548質量部、n−ブチルアクリレートを156質量部、メタクリル酸を96質量部、n−オクチルメルカプタンを16.5質量部含有する単量体混合液M4に変更する以外はコア部用樹脂粒子の調製と同様にして、重合反応および反応後の処理を行い、シェル層用樹脂微粒子の分散液Fを調製した。シェル層用樹脂粒子のTgは49.8℃であった。
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加し、この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、着色剤微粒子が分散されてなる着色剤微粒子分散液Gを調製した。この着色剤微粒子分散液Gにおける着色剤微粒子の粒径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子株式会杜製)を用いて測定したところ、110nmであった。
コア部用樹脂微粒子の分散液E420質量部(固形分換算)と、イオン交換水900質量部と、着色剤微粒子分散液G100質量部とを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置および撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を加えて、反応容器内の液体のpHを8〜11に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、上記反応容器内の液体に撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、上記液体を80分間かけて80℃(コア部形成温度)まで昇温した。その状態でフロー式粒子像分析装置「FPIA2100」(シスメックス株式会社製、「FPIA」は同社の登録商標)にて粒子の粒径を測定し、粒子の体積基準平均粒径が5.8μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を反応容器内の液体に添加して粒径成長を停止させた。
さらに、熟成処理として液温度80℃(コア部熟成温度)にて上記液体を1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、コア粒子を形成した。なお、コア粒子の平均円形度を「FPIA2100」にて測定したところ0.930であった。また、電界放出形走査電子顕微鏡「JSM−7401F」(日本電子株式会社製)を用いて走査透過電子顕微鏡法にてコア粒子を10000倍にて観察し、着色剤がコア粒子内に入り込み、当該コア粒子の表面に着色剤分散微粒子が実質的には残っていないことを確認した。
次いで、上記反応容器中の上記コア粒子を含有する液体に、65℃においてシェル層用樹脂微粒子の分散液F46.8質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した。その後、80℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、コア粒子の表面に、シェル層用樹脂微粒子の粒子を融着させた。
その後、80℃(シェル熟成温度)で所定の円形度まで熟成処理を行い、シェル層を形成させた。ここで、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した。その後、当該粒子を40℃の温風で乾燥することにより、コア粒子の表面にシェル層を有するトナー母体粒子を得た。当該トナー母体粒子の体積基準平均粒径は5.9μmであり、Tgは31℃であり、平均円形度は0.960であった。
上記トナー母体粒子100質量部に、小径シリカ微粒子(「RX−200」、ヒュームドシリカ、HMDS処理、個数平均粒径12nm、負帯電性、日本アエロジル株式会社製)を0.75質量部、球状シリカ微粒子(「X−24 9600」ゾルゲル製法によるシリカ、HMDS処理、個数平均粒径80nm、負帯電性、信越化学工業株式会社製)を1.50質量部添加し、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業株式会社製)を用いて、撹拌羽根の周速を40m/秒、処理温度30℃で15分間混合した。その後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去した。こうしてトナー粒子を調製した。
上記トナー粒子に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを、トナー粒子の濃度が6質量%となるように添加して混合した。こうして、二成分現像剤である静電荷像現像用のトナーを作製した。
[固形潤滑剤塗布装置および画像形成装置]
電子写真方式の画像形成装置として、コニカミノルタ社製のデジタル印刷システム「bizhub PRESS C1100」をベースとした実験機を用意した。当該実験機は、図1に示されるような構成を有している。当該実験機の現像装置には上記のトナーを収容し、上記実験機の固形潤滑剤塗布装置には、その固形潤滑剤として固形潤滑剤1〜10のそれぞれを配置した。
より詳しくは、上記実験機は、固形潤滑剤1〜10のそれぞれを削り取って像担持体の表面に塗布する導電性のブラシロールを有しており、トナーにより当該ブラシローラが汚れないようにトナーを回収するローラを別途有し、さらにブラシローラに任意の出力で電圧を印加する外部電源を有している。また、上記実験機におけるクリーニングブレードは、像担持体とのなす角度が7.5°となるように、そして当接圧力が39.2〜68.6kPa(4.0〜7.0gf/mm2)の範囲内で自在に変えられるように設置されている。
(1)クリーニング性
上記実験機に固形潤滑剤1〜10のそれぞれを配置し、表3に示す電圧VBを上記ブラシロールに印加しながら、クリーニングブレードの当接圧力を適宜に設定し、温度10℃/湿度10%RHの条件下にて、印字率100%のベタ画像(A3上質紙)を50000枚出力した。そして、得られたベタ画像における、クリーニングニップ部におけるトナーのすり抜け(例えばスジ状の画像欠陥)の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。上記当接圧力が68.6kPa(7.0gf/mm2)以下で上記ベタ画像上にトナーすり抜けが確認されなければ(「◎」、「○」又は「△」であれば)実用上問題ないと判断される。
◎:当接圧力が49.0kPa(5.0gf/mm2)であっても、ベタ画像上にトナーのすり抜けが視認されない。
○:当接圧力が49.0kPa(5.0gf/mm2)ではベタ画像上にトナーのすり抜けが視認されるが、当接圧力が58.8kPa(6.0gf/mm2)であればベタ画像上にトナーのすり抜けが視認されない。
△:当接圧力が58.8kPa(6.0gf/mm2)ではベタ画像上にトナーのすり抜けが視認されるが、当接圧力が68.6kPa(7.0gf/mm2)であればベタ画像上にトナーのすり抜けが視認されない。
×:当接圧力が68.6kPa(7.0gf/mm2)であってもベタ画像上にトナーのすり抜けが視認される。
(2)クリーニングブレードの摩耗量
上記の「クリーニング性」の評価後にクリーニングブレードの摩耗幅を測定し、その結果を下記の基準により判定した。クリーニングブレードの摩耗幅は、クリーニングブレード7の長手方向を横断する断面において、ブレード先端部の表面に対して45°で交わる線を基準線とし、当該基準線に平行な方向における、ブレード先端部の表面とブレードの摩耗によって欠けた部分との境界間の距離であり、図3の符号Lで示される。
○:磨耗幅が6μm未満
△:磨耗幅が6μm以上9μm未満
×:磨耗幅が9μm以上
上記評価の結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例1〜11では、高い印字率の画像の形成であっても、十分なクリーニング性を示し、また、クリーニングブレードの摩耗を十分に抑制することができる。
特に、例えば実施例3および6〜9の対比によれば、粒子の材料がアクリル樹脂またはスチレン樹脂であることが、クリーニング性およびブレード摩耗の抑制の観点からより一層効果的であることがわかる。これは、上記の樹脂で構成されている粒子が適度な硬さを有しているため、と考えられる。
また、例えば実施例2〜4の対比によれば、固形潤滑剤中の上記粒子の含有量が少なくとも10質量%以上であることが、クリーニング性を高める観点からより一層効果的であり、少なくとも1質量%超30質量%未満であることが、ブレードの摩耗の抑制効果を高める観点からより一層効果的であることがわかる。
また、例えば実施例1、2および5の対比によれば、固形潤滑剤中の上記粒子の粒径は、小さい程、具体的には200nm未満であることが、ブレード摩耗の抑制効果を高める観点からより一層効果的であることがわかる。
これに対して、比較例1〜4では、いずれも、クリーニング性またはブレード摩耗の抑制効果が不十分である。比較例1、3は、いずれもクリーニング性が不十分である。これは、トナーの外添剤の帯電性とは逆極性の電圧が上記ブラシロールに印加されず、上記粒子が像担持体の表面において上記外添剤を十分に捕集できないため、と考えられる。
また、比較例2、4は、いずれもブレード摩耗の抑制効果が不十分である。比較例2では、上記粒子が上記外添剤と同じ極性の帯電性を有することから、像担持体の表面に供給される際に上記外添剤とは逆極性の帯電が不十分となり、また比較例4では、上記粒子を含まないことから、いずれも像担持体上で上記外添剤を捕集する粒子が実質的には存在しないため、上記外添剤の除去が不十分となるため、と考えられる。