JP6960349B2 - 2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法に関する。
2−デオキシリボース−1−リン酸エステルは、医薬品などに用いられる各種のヌクレオシドを合成するための重要な中間体である。例えば特許文献1〜2には、複数種類の酵素を使用して、グルコン酸から、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、2−デオキシリボース及び2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを順次経由して、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法が開示されている。この製造方法においては、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する。
特開2012−80875号公報 特開2016−47066号公報
例えば特許文献1〜2の製造方法において2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が上がれば、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルの収率が向上し、延いては各種のヌクレオシドの生産効率が向上する。
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の高い製造方法を提供することを目的とし、これを解決することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[1] 酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度が8質量%以下である、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法。
[2] 前記リン酸供与体が酸性ピロリン酸ナトリウムを含む、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記オルトリン酸塩がリン酸二水素ナトリウムを含む、[1]又は[2]に記載の製造方法。
本開示によれば、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の高い製造方法が提供される。
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において反応液中の各成分の量について言及する場合、反応液中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、反応液中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
<2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法>
本実施形態は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度が8質量%以下である製造方法である。
本実施形態によれば、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を高めることができる。この機序として、下記が推測される。
酸性ホスファターゼは、リン酸化合物を加水分解してリン酸を脱離させる脱リン酸化酵素であり、至適pHが酸性側にある酵素である。酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とを共存させると、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生じる(本開示において、この酵素反応を「2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応」という。)。
2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応のリン酸供与体として、酸性ピロリン酸ナトリウムが使用される場合が多いところ、本発明者は、酸性ピロリン酸ナトリウムのメーカー又はロットの違いによって、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が変動することを見出した。
一般的に酸性ピロリン酸ナトリウムは、リン酸二水素ナトリウムを加熱し縮合させて製造する。その製造過程において、加熱温度及び/又は加熱時間が不足すると、リン酸二水素ナトリウムが比較的多量に残留し、一方で、加熱温度及び/又は加熱時間が過剰であると、副産物としてトリポリリン酸ナトリウム及び/又はトリメタリン酸ナトリウムが生成する。
上記の化学物質の影響を本発明者が検討したところ、反応液中のリン酸二水素ナトリウム等のオルトリン酸塩濃度が2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率に影響することが分かった。一方、反応液中のトリメタリン酸ナトリウム等のトリメタリン酸塩濃度は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率に影響しないことがわかった。なお、トリポリリン酸ナトリウム等のトリポリリン酸塩は、酸性ホスファターゼの基質、つまり2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応のリン酸供与体となるので、反応液中に存在していても、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を低下させることはない。
そこで、本実施形態においては、反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度を8質量%以下とする。これにより、本実施形態は2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を高めることができる。
以下、本実施形態における工程、酵素、化学物質について詳細に説明する。
本実施形態は、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを得るまでの製造方法であってもよく、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法の一部であってもよい。本実施形態は、例えば特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に開示されている、グルコン酸から、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、2−デオキシリボース及び2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを順次経由して、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法の一部であってもよい。
本実施形態の製造方法は、例えば、水に2−デオキシリボースとリン酸供与体とが溶解又は分散した液体組成物を用意し、当該液体組成物のpHを酸性ホスファターゼの活性域(好ましくは至適pH)に調整し、そこに酸性ホスファターゼを添加することで開始する。
本実施形態において、2−デオキシリボースとリン酸供与体との反応で生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは、反応液中に存在する過剰なリン酸供与体やリン酸塩を除去して精製することで、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する原料に使用することができる。前記のリン酸供与体やリン酸塩を除去する方法としては、例えば、金属水酸化物を添加してリン酸の金属塩として沈殿除去する方法、陰イオン交換樹脂などによって除去する方法などがある。
本実施形態における2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率としては、反応開始時の2−デオキシリボース量に対して85mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましい。
本実施形態の製造方法は、反応期間の長さに特に制限はないが、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が、反応開始時の2−デオキシリボース量に対して85mol%以上(より好ましくは90mol%以上)になるまで反応を継続することが好ましい。反応期間の長さは、例えば、2時間〜72時間であり、好ましくは10時間〜48時間であり、より好ましくは18時間〜30時間であり、最も好ましくは20時間〜28時間である。
[オルトリン酸塩]
本開示において反応液中のオルトリン酸塩濃度について言及する場合、反応液中にオルトリン酸塩に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、反応液中に存在する当該複数種の物質の合計濃度を意味する。
反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度(質量%)とは、反応開始時における反応液全体の質量に対するオルトリン酸塩の質量である。
本実施形態においては、反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度が、8質量%以下であり、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましい。反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度は、0質量%から上記数値までの範囲において、低いほど好ましい。
オルトリン酸塩としては、具体的には、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素リチウム、リン酸水素二リチウム等が挙げられる。
本実施形態においては、特に、反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度が低いことが好ましい。リン酸供与体として酸性ピロリン酸ナトリウムが用いられる場合、リン酸二水素ナトリウムは酸性ピロリン酸ナトリウムに含まれて反応液に持ち込まれることになるので、例えば、酸性ピロリン酸ナトリウムを精製すること、リン酸二水素ナトリウム含有量の少ない酸性ピロリン酸ナトリウムを選ぶことによって、反応開始時における反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度を制御する。
本開示は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応開始時における反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度が8質量%以下である製造方法を開示する。反応開始時における反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度は、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1.5質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましい。反応開始時における反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度は、0質量%から上記数値までの範囲において、低いほど好ましい。
[反応液]
本実施形態において、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する場である反応液は、水を主溶媒とすることが好ましく、必要に応じてアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を適量添加してもよい。酸性ホスファターゼのうち、金属イオンを補因子とする酸性ホスファターゼを使用する場合は、補因子となる金属イオンを反応液中に添加する。
反応液のpHは、反応開始時において、3.0〜6.0が好ましく、3.5〜5.5がより好ましく、4.0〜5.0が更に好ましい。
反応液のpHを調整するpH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、ギ酸、酢酸、硫酸、硝酸、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等が挙げられる。
反応液の温度は、酸性ホスファターゼの活性が得られる温度であれば特に制限はない。反応液の温度は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の観点から、0℃〜30℃が好ましく、0℃〜20℃がより好ましく、0℃〜15℃が更に好ましく、0℃〜10℃が更に好ましく、0℃〜5℃が更に好ましい。
[酸性ホスファターゼ]
酸性ホスファターゼは、ホスファターゼ(EC3.1.3)のうち、至適pHが酸性側にある酵素の総称である。酸性ホスファターゼの至適pHは一般的に4.0〜6.0程度である。
本実施形態における酸性ホスファターゼは、その種類に特に制限はなく、種々の微生物由来の酸性ホスファターゼが使用できる。酸性ホスファターゼは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態における酸性ホスファターゼは、野生型(EC3.1.3.2)でもよく、野生型の少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換して酵素性能を向上させた変異型でもよい。
野生型酸性ホスファターゼとしては、例えば、Bacteroides vulgatus(GenBank受入番号ABR38243)、Bradyrhizobium japonicum(GenBank受入番号BAC50005)、Capnocytophaga ochracea(GenBank受入番号ACU92248)、Caulobacter arescentus(GenBank受入番号YP_002515738)、Caulobacter segnis(GenBank受入番号EEZ38419)、Desulfotalea psychrophila(GenBank受入番号YP_066101)、Desulfovibrio magneticus(GenBank受入番号YP_002953066)、Enterobacter aerogenes(GenBank受入番号ABW37174)、Escherichia blattae(GenBank受入番号BAA84942)、Escherichia coli(GenBank受入番号CAA60534)、Fibrobacter succinogenes(GenBank受入番号YP_003250152)、Flavobacterium johnsoniae(GenBank受入番号YP_001193982)、Francisella philomiragia(GenBank受入番号ABZ87670)、Francisella tularensis(GenBank受入番号YP_169222)、Granulibacter bethesdensis(GenBank受入番号YP_745642)、Helocobacter pylori(GenBank受入番号CAD21745)、Klebsiella pneumoniae(GenBank受入番号BAH62928)、Mesorhizobium loti(GenBank受入番号NP_103983)、Methylobacterium chloromethanicum(GenBank受入番号ACK82712)、Methylobacterium extorquens(GenBank受入番号YP_001639040)、Methylobacterium populi(GenBank受入番号ACB79832)、Methylobacterium radiotolerans(GenBank受入番号ACB26070)、Methylococcus capsulatus(GenBank受入番号YP_114641)、Morganella morganii(GenBank受入番号BAA96744)、Phenylococcus capsulatus(GenBank受入番号YP_002129169)、Prevotella intermedia(GenBank受入番号BAA33148)、Prochlorococcus marinus(GenBank受入番号YP_001016363)、Providencia stuartii(GenBank受入番号CAA46032)、Ralstonia eutropha(GenBank受入番号YP_840758)、Raoultella planticola(GenBank受入番号BAB18918)、Salmonella typhi(GenBank受入番号AAK50861)、Salmonella typhimurium(GenBank受入番号AAM81208)、Shigella boydii(GenBank受入番号ABB68879)、Shigella flexneri(GenBank受入番号BAA11655)、Shigella dysenteriae(GenBank受入番号ABB64580)、Shigella sonnei(GenBank受入番号AAZ91025)、Sebaldella termitidis(GenBank受入番号ACZ10023)、Serratia proteamaculans(GenBank受入番号ABV43590)、Stenotrophomonas maltophilia(GenBank受入番号YP_002026426)、Xanthomonas campestris(GenBank受入番号AAM43356)、Zymomonas mobilis(GenBank受入番号AAA27700)等の微生物が有する酸性ホスファターゼが挙げられる。
変異型酸性ホスファターゼは、野生型酸性ホスファターゼを公知の遺伝子工学的手法により改変することで作製可能である。具体的には、上記微生物の野生型遺伝子に対して特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に記載されている遺伝子工学的手法を適用することにより、変異型酸性ホスファターゼを作製可能である。変異型酸性ホスファターゼの具体例は、特開2012−80875号公報及び特開2016−47066号公報に記載されている。
本実施形態においては酸性ホスファターゼとして、酸性ホスファターゼを発現している微生物若しくは高等生物由来の細胞、又はこれらの破砕物を使用してもよい。
反応液中の酸性ホスファターゼ量は、反応効率の観点から、反応開始時において、2−デオキシリボース1gに対して10ユニット〜200ユニットが好ましく、10ユニット〜70ユニットがより好ましい。
反応液中の酸性ホスファターゼの活性値は、1ユニット/mL〜1000ユニット/mLが好ましい。
[2−デオキシリボース]
2−デオキシリボースは、リボースの2位のヒドロキシ基が水素原子に置換された構造を有する。2−デオキシリボースは、本実施形態の技術分野において、その他の名称として、デオキシリボース、2−デオキシ−D−リボース、D−2−デオキシリボース等とも呼ばれる。
2−デオキシリボースは、化学的な合成品でもよく、酵素的な合成品でもよい。例えば特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に開示されているように、酵素反応によって2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩から合成された合成品でもよい。
反応液中の2−デオキシリボース濃度は、反応液全量に対して2質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。
[リン酸供与体]
本実施形態におけるリン酸供与体は、酸性ホスファターゼの基質となり、2−デオキシリボースにリン酸基を与える化学物質であれば、その種類に特に制限はない。
リン酸供与体としては、例えば、アデノシントリリン酸(ATP)、ポリリン酸、又はこれらの塩が挙げられる。ポリリン酸又はポリリン酸塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、又はこれらのナトリウム塩若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのリン酸供与体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
リン酸供与体としては、反応収率の観点から、ピロリン酸又はピロリン酸塩が好ましく、酸性ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。
反応液中の2−デオキシリボースとリン酸供与体との量比は、反応効率の観点から、反応開始時において、2−デオキシリボース1molに対して、リン酸供与体が1mol〜10mol存在することが好ましく、1mol〜5mol存在することがより好ましい。
反応液中のリン酸供与体濃度は、0.05mol/L〜20mol/Lが好ましく、0.1mol/L〜10mol/Lがより好ましい。
以下に実施例を挙げて本開示の実施形態をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本開示の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。したがって、本開示の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。
[変異型酸性ホスフォターゼの作製]
特開2012−80875号公報の段落0235〜0286に記載されている方法に従い、Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を含むプラスミドpSFAPm75を有する大腸菌を作製し、変異型酸性ホスファターゼを発現させた。この変異型酸性ホスファターゼは、Shigella flexneriの野生型酸性ホスファターゼの57番目のアミノ酸残基をスレオニン、122番目のアミノ酸残基をグリシン、126番目のアミノ酸残基をバリン、171番目のアミノ酸残基をグルタミン酸、197番目のアミノ酸残基をチロシンに置換した変異型酵素である。変異型酸性ホスファターゼを発現した大腸菌を培養し、遠心分離により回収し、培養上清にて懸濁した(菌体濃度8.3質量%)。この菌体懸濁液を−20℃にて凍結保存した。以下の実験例には、凍結保存した菌体懸濁液を解凍し、これを酸性ホスファターゼ液として用いた。
[2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの定量]
反応液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。分析条件は下記のとおりである。
・カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E(昭和電工株式会社)
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RID)
・キャリア:75mmol/L リン酸二水素ナトリウム水溶液
[リン酸二水素ナトリウム及び縮合リン酸ナトリウムの定量]
以下の実験例で使用した酸性ピロリン酸ナトリウム試薬(「試薬A」という。)中のリン酸二水素ナトリウム及び縮合リン酸ナトリウムの含有量は、樹脂分離−バナドモリブデン酸アンモニウム法(日本化学雑誌85巻5号)により定量した。試薬Aの定量結果を表1に示す。
Figure 0006960349
試薬Aは、高純度の製品である。工業用の酸性ピロリン酸ナトリウムは、試薬Aよりも純度が低く、残留物であるリン酸二水素ナトリウムをより多く含む。以下の実験例においては、試薬Aのほかに、リン酸二水素ナトリウム試薬又はトリメタリン酸ナトリウム試薬を使用して反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度又はトリメタリン酸ナトリウム濃度を調整した。
<反応液中のオルトリン酸塩濃度の検討>
反応液中のオルトリン酸塩濃度の影響を調べる目的で下記の実験例1〜5を行った。以下において、「dR」とは、2−デオキシ−D−リボースを意味し、「dR5P」とは、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを意味する。
[実験例1]
100mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)3.9g(0.029モル)と水26gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に試薬A 8.11g(酸性ピロリン酸ナトリウム 0.035モル)を入れ、4℃で約30分間攪拌した。液のpHを確認したところ3.7であった。次いで、2N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)で液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液1.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、水を足して反応液の全量を41gに調製し、反応を開始した。反応期間は22時間とし、反応期間中、反応液の温度を4℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実験例2]
100mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)3.9g(0.029モル)と水26gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に試薬A 8.11g(酸性ピロリン酸ナトリウム 0.035モル)とリン酸二水素ナトリウム試薬(無水物、和光純薬工業社品)0.231g(総リン酸塩量に対するリン酸二水素ナトリウム量が5質量%になる量)とを入れ、4℃で約30分間攪拌した。液のpHを確認したところ3.6であった。次いで、2N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)で液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液1.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、水を足して反応液の全量を41gに調製し、反応を開始した。反応期間は22時間とし、反応期間中、反応液の温度を4℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実験例3〜5]
総リン酸塩量に対するリン酸二水素ナトリウム量が10質量%、20質量%又は30質量%になるようにリン酸二水素ナトリウムの添加量を変更し、反応液の全量が41gになるように水の量を加減した以外は、実験例2と同様にして反応を行った。
表2に、実験例1〜5における反応液中のリン酸塩量及びdR5Pの収率を示す。実験例1〜5において、総リン酸塩量とは、反応液の調製に使用した試薬Aに含まれる酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びトリメタリン酸ナトリウムと、反応液の調製に使用したリン酸二水素ナトリウム試薬との合計量である。
Figure 0006960349
実験例1〜5から、反応液中のリン酸二水素ナトリウム濃度が増加すると、dR5Pの収率が有意に低下することがわかった。オルトリン酸塩がdR5Pの合成反応を阻害するものと推測された。
<反応液中のトリメタリン酸塩濃度の検討>
反応液中のトリメタリン酸塩濃度の影響を調べる目的で下記の実験例6〜7を行った。
[実験例6]
100mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)3.9g(0.029モル)と水26gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に試薬A 8.11g(酸性ピロリン酸ナトリウム 0.035モル)とトリメタリン酸ナトリウム試薬(Combi−Blocks社品)0.293g(総リン酸塩量に対するトリメタリン酸ナトリウム量が5質量%になる量)とを入れ、4℃で約30分間攪拌した。液のpHを確認したところ3.6であった。次いで、2N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)で液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液1.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、水を足して反応液の全量を41gに調製し、反応を開始した。反応期間は22時間とし、反応期間中、反応液の温度を4℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実験例7]
総リン酸塩量に対するトリメタリン酸ナトリウム量が10質量%になるようにトリメタリン酸ナトリウムの添加量を変更し、反応液の全量が41gになるように水の量を加減した以外は、実験例6と同様にして反応を行った。
なお、トリメタリン酸ナトリウムの水への溶解度が低いことにより、反応液中のトリメタリン酸ナトリウム濃度をさらに濃くした有意義な実験例は実施困難であった。
表3に、実験例6〜7における反応液中のリン酸塩量及びdR5Pの収率を示す。表3には、実験例1についてもあわせて示す。実験例1及び6〜7において、総リン酸塩量とは、反応液の調製に使用した試薬Aに含まれる酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム及びトリメタリン酸ナトリウムと、反応液の調製に使用したトリメタリン酸ナトリウム試薬との合計量である。
Figure 0006960349
実験例1及び6〜7から、反応液中のトリメタリン酸ナトリウム濃度が増加しても、dR5Pの収率は有意に低下しないことがわかった。

Claims (3)

  1. 酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、
    反応開始時における反応液中のオルトリン酸塩濃度が質量%以下である、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法。
  2. 前記リン酸供与体が酸性ピロリン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記オルトリン酸塩がリン酸二水素ナトリウムを含む、請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
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