JP6944888B2 - 2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法に関する。
2−デオキシリボース−1−リン酸エステルは、医薬品などに用いられる各種のヌクレオシドを合成するための重要な中間体である。例えば特許文献1〜2には、複数種類の酵素を使用して、グルコン酸から、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、2−デオキシリボース及び2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを順次経由して、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法が開示されている。この製造方法においては、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する。
酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する方法については、例えば、特許文献3にも開示されている。
特開2012−80875号公報 特開2016−47066号公報 国際公開第2005/045052号
例えば特許文献1〜2の製造方法において2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が上がれば、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルの収率が向上し、延いては各種のヌクレオシドの生産効率が向上する。
本開示の実施形態は、上記状況のもとになされた。
本開示の実施形態は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の高い製造方法を提供することを目的とし、これを解決することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
[1] 酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応液のpHが、反応開始時において4.0超6.0以下であり、反応期間の前半においてよりも後半において低い、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法。
[2] 酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応液のpHが、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲である、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法。
[3] 前記反応期間の前半が、少なくとも反応期間全体の5分の1以上を占め、前記反応期間の後半が、少なくとも反応期間全体の2分の1以上を占める、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4] 反応開始時における前記反応液のpHをpH(a)とし、反応終止時における前記反応液のpHをpH(b)としたとき、pH(a)−pH(b)>0.1である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の製造方法。
[5] 前記反応期間の前半における前記反応液のpHが、反応開始時における前記反応液のpHに対して±0.1の範囲である、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の製造方法。
[6] 前記反応液の温度が0℃〜30℃の範囲である、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の製造方法。
[7] 前記リン酸供与体がピロリン酸又はピロリン酸塩を含む、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の製造方法。
[8] 前記リン酸供与体が酸性ピロリン酸ナトリウムを含む、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の製造方法。
[9] 前記反応液のpHが前記反応期間の前半においてよりも後半において低いこと、又は、前記反応液のpHが前記反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり前記反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲であることが、pH調整剤を用いて前記反応液のpHを調整することによって実現される、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の製造方法。
[10] 前記pH調整剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、リン酸、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[9]に記載の製造方法。
[11] 反応開始時において、前記反応液中に、酸性ホスファターゼが2−デオキシリボース1gに対して10ユニット以上存在する、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の製造方法。
本開示によれば、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の高い製造方法が提供される。
実施例1〜4における反応液のpHと2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率とを示すグラフである。 比較例1〜3における反応液のpHと2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率とを示すグラフである。
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において反応液中の各成分の量について言及する場合、反応液中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、反応液中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
<2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法>
第一の本実施形態は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応液のpHが、反応開始時において4.0超6.0以下であり、反応期間の前半においてよりも後半において低い製造方法である。
第二の本実施形態は、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、反応液のpHが、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲である製造方法である。
以下、第一の本実施形態と第二の本実施形態とに共通する事項については、本実施形態と総称して説明する。
本実施形態によれば、反応期間全体を長くし過ぎることなく、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を高めることができる。この機序として、下記が推測される。
酸性ホスファターゼは、リン酸化合物を加水分解してリン酸を脱離させる脱リン酸化酵素であり、至適pHが酸性側にある酵素である。酸性ホスファターゼは一般的に、pH3.0〜6.0程度において脱リン酸化活性を発揮するが、至適pHは4.0〜6.0程度である。つまり、酸性ホスファターゼは、酸性側でも比較的高いpHにおいて高い脱リン酸化活性を発揮する。また、至適pHであるpH4.0〜6.0程度において、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とを共存させると、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生じる(本開示において、この酵素反応を「2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応」という。)。ただし、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの濃度が高くなれば、酸性ホスファターゼによって2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが脱リン酸化される酵素反応が進行する(本開示において、この酵素反応を「2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの分解反応」という。)。
本発明者が検討したところ、反応液のpHを酸性ホスファターゼの至適pHに保つと、ある時点で2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が低下しはじめ、所望の収率には達しにくいことが分かった(例えば、図1Bの比較例1〜2)。これは、至適pHにおいては酸性ホスファターゼの脱リン酸化活性が高く、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルが生成しても脱リン酸化されて2−デオキシリボースに戻ることによるものと推測される。一方、反応液のpHを酸性ホスファターゼの活性域ではあるが至適pHよりも低い範囲に保つと、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの分解反応を抑えつつ合成反応を進行させることができ、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率は時間とともに徐々に上昇を続けるが、所望の収率に達するまでに長時間を要するか又は長時間を要しても所望の収率に達しにくいことが分かった(例えば、図1Bの比較例3)。
そこで、第一の本実施形態においては、反応液のpHを、反応開始時において4.0超6.0以下とし、反応期間の前半においてよりも後半において低くする(言い換えると、反応液のpHを、反応期間の後半においてよりも前半において高くする。)。第二の本実施形態においては、反応液のpHを、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲とし、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲とする。
これにより、2−デオキシリボース及びリン酸供与体の濃度が高く且つ2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの濃度が低い期間であるところの反応期間前半においては、酸性ホスファターゼに2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応を活発に行わせる。一方で、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの濃度が高まった期間であるところの反応期間後半においては、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの分解反応を抑えつつ合成反応を進行させる。
したがって、第一の本実施形態及び第二の本実施形態によれば、反応期間全体を長くし過ぎることなく、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの最終的な収率を高めることができる。
以下、本実施形態における反応期間の区分及び反応液のpHについて詳細に説明する。
[反応期間の区分]
本実施形態において、反応期間全体は「反応期間の前半」と「反応期間の後半」とに2分される。「反応期間の前半」とは、反応開始時を始まりとする期間であり、「反応期間の後半」とは、「反応期間の前半」に続く期間であって反応終止時を終わりとする期間である。
本実施形態において反応期間の前半と後半との境界は、例えば、下記の考え方によって設定することができる。
酸性ホスファターゼは一般的にpH4.5〜5.5の範囲において最も活性が高いところ、pH4.5〜5.5の範囲で2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの合成反応を継続すると、収率は当初は順調に上昇するが、収率の上昇は次第に鈍化し、ある時点で収率は低下に転じる(図1Bの比較例1〜2を参照)。pH4.5〜5.5の範囲で反応を継続した場合における2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を予め調べ、反応時間ごとの収率を示すグラフを描き、収率の上昇が鈍化する時期を前半と後半との境界とする。
上記の考え方を採用すれば、前述した機序に適ったpH制御を実現できる。また、上記の考え方を採用すれば、反応開始時の材料又は酸性ホスファターゼの濃度、反応温度などを変更しても、それぞれの場合に応じた適切な時期に反応期間の前半と後半との境界を設定することができる。
本実施形態において反応期間の前半は、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、少なくとも反応期間全体の5分の1以上を占めることが好ましく、4分の1以上を占めることがより好ましく、3分の1以上を占めることが更に好ましい。また、反応期間の後半は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の観点から、少なくとも反応期間全体の2分の1以上を占めることが好ましい。
[反応液のpH]
第一の本実施形態は、反応液のpHが、反応開始時において4.0超6.0以下であり、反応期間の前半においてよりも後半において低い。ここで、pHが低いとは、有意にpHが低いことを意味する。
第一の本実施形態は、反応期間の前半の間、反応液のpHが一定でもよく変動してもよい。また、第一の本実施形態は、反応期間の後半の間、反応液のpHが一定でもよく変動してもよい。
第一の本実施形態は、反応液のpHが、反応期間の前半と後半との境界において低下する形態、反応期間の前半から後半へ段階的に低下する形態、反応期間全体を通じて連続的に低下する形態、反応期間の前半に連続的に低下し後半において低めを保つ形態などのいずれでもよい。
第一の本実施形態においては、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、反応開始時における反応液のpHが4.0超6.0以下である。反応開始時における反応液のpHは、4.1以上6.0以下がより好ましく、4.1以上5.5以下が更に好ましく、4.1以上5.3以下が更に好ましい。
第一の本実施形態は、反応開始時における反応液のpHをpH(a)とし、反応終止時における反応液のpHをpH(b)としたとき、{pH(a)−pH(b)}が0.1超であることが好ましい。これにより、反応期間全体を長くし過ぎることなく2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を上げることができる。{pH(a)−pH(b)}は、0.2超がより好ましく、0.3超が更に好ましく、0.35超が更に好ましい。{pH(a)−pH(b)}は、反応期間全体を通じて酸性ホスファターゼの活性を得る観点から、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.0以下が更に好ましい。
第一の本実施形態において、前半の中間的なpHと、後半の中間的なpHとの差は、反応期間全体を長くし過ぎることなく2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を上げる観点から、0.1超が好ましく、0.2超がより好ましく、0.3超が更に好ましく、0.35超が更に好ましい。前半の中間的なpHと、後半の中間的なpHとの差は、反応期間全体を通じて酸性ホスファターゼの活性を得る観点から、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.0以下が更に好ましい。
第二の本実施形態は、反応液のpHが、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲である。
第二の本実施形態は、反応期間の前半の間、反応液のpHが一定でもよく変動してもよい。また、第二の本実施形態は、反応期間の後半の間、反応液のpHが一定でもよく変動してもよい。
第二の本実施形態には、反応液のpHが、前半と後半とで有意な差がない形態、前半においてよりも後半において低い形態、前半においてよりも後半において高い形態が含まれる。2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を上げる観点からは、反応液のpHが、前半と後半とで有意な差がない形態、又は、前半においてよりも後半において低い形態が好ましい。ここで、pHが低いとは、有意にpHが低いことを意味する。
第二の本実施形態としては、反応期間全体を長くし過ぎることなく2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を上げる観点から、反応液のpHが、前半においてよりも後半において低い形態が好ましい。この場合、反応液のpHは、反応期間の前半と後半との境界において低下する形態、反応期間の前半から後半へ段階的に低下する形態、反応期間全体を通じて連続的に低下する形態、反応期間の前半に連続的に低下し後半において低めを保つ形態などのいずれでもよい。
第二の本実施形態においては、反応開始時における反応液のpHを、4.0超6.0以下とする。反応開始時における反応液のpHは、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、4.1以上6.0以下がより好ましく、4.1以上5.5以下が更に好ましく、4.1以上5.3以下が更に好ましい。
第二の本実施形態における反応液のpHは、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲である。第二の本実施形態において、反応期間の前半のpHは、4.1以上6.0以下の範囲がより好ましく、4.1以上5.5以下の範囲が更に好ましく、4.1以上5.3以下の範囲が更に好ましい。
第二の本実施形態における反応液のpHは、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲である。第二の本実施形態において、反応期間の後半のpHは、3.0以上4.4以下の範囲がより好ましく、3.2以上4.4以下の範囲が更に好ましく、3.5以上4.3以下の範囲が更に好ましい。
第二の本実施形態は、反応開始時における反応液のpHをpH(a)とし、反応終止時における反応液のpHをpH(b)としたとき、{pH(a)−pH(b)}が0.1超であることが好ましい。これにより、反応期間全体を長くし過ぎることなく2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を上げることができる。{pH(a)−pH(b)}は、0.2超がより好ましく、0.3超が更に好ましく、0.35超が更に好ましい。{pH(a)−pH(b)}は、反応期間全体を通じて酸性ホスファターゼの活性を得る観点から、2.5以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下が更に好ましく、1.0以下が更に好ましい。
本実施形態は、反応期間中に反応液のpHを所定の範囲に制御してもよく、反応期間中に反応液のpHを制御せず成り行きにまかせてもよい。酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する工程においては、反応液に緩衝作用が乏しい場合、例えばリン酸供与体に由来するイオンによって反応液のpHが自ずと変動することがある。反応期間中の自発的なpH変動が、第一の本実施形態又は第二の本実施形態に当たる場合は、反応期間中に反応液のpHを制御せず成り行きにまかせてよい。
本実施形態は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率を安定させる観点、又は、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、反応期間中に反応液のpHを所定の範囲に制御することが好ましい。
本実施形態において反応期間中に反応液のpHを所定の範囲に制御する場合は、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、少なくとも反応期間全体の5分の1以上を前半として、前半及び後半のpHを制御することが好ましく、反応期間全体の4分の1以上を前半とすることがより好ましく、反応期間全体の3分の1以上を前半とすることが更に好ましい。また、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の観点から、少なくとも反応期間全体の2分の1以上を後半とすることが好ましい。
上記の期間区分で、第一の本実施形態又は第二の本実施形態を実施することができ、反応液のpHを前述の好ましい範囲になるように制御する。
本実施形態において反応期間中に反応液のpHを所定の範囲に制御する場合は、反応期間全体を長くし過ぎない観点から、反応期間の前半における反応液のpHを、反応開始時における反応液のpHに対して±0.1の範囲内に保つことが好ましい。反応期間の前半における反応液のpHは、反応開始時における反応液のpHに対して、±0.08の範囲内がより好ましく、±0.05の範囲内が更に好ましい。
本実施形態において反応期間中に反応液のpHを制御せず成り行きにまかせる場合は、反応開始時における反応液のpHが0.3〜0.4程度低下した時点を前半と後半の境界と見ることができる。反応開始時の反応液のpHが酸性ホスファターゼの至適pHであり且つ反応液に緩衝作用が乏しい場合、一般的には、反応開始から6時間〜8時間程度で反応液のpHが0.3〜0.4程度低下する。
したがって、本実施形態の一例においては、反応開始から6時間以上8時間以下の期間が反応期間の前半であり、残りの期間が反応期間の後半である。
上記の期間区分で、第一の本実施形態又は第二の本実施形態を実施することができる。
以下、本実施形態における工程、酵素、化学物質について詳細に説明する。
本実施形態は、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを得るまでの製造方法であってもよく、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法の一部であってもよい。本実施形態は、例えば特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に開示されている、グルコン酸から、2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸、2−デオキシリボース及び2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを順次経由して、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する製造方法の一部であってもよい。
本実施形態の製造方法は、例えば、水に2−デオキシリボースとリン酸供与体とが溶解又は分散した液体組成物を用意し、当該液体組成物のpHを所定の範囲に調整し、そこに酸性ホスファターゼを添加することで開始する。
本実施形態において、2−デオキシリボースとリン酸供与体との反応で生成した2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは、反応液中に存在する過剰なリン酸供与体やリン酸塩を除去して精製することで、2−デオキシリボース−1−リン酸エステルを製造する原料に使用することができる。前記のリン酸供与体やリン酸塩を除去する方法としては、例えば、金属水酸化物を添加してリン酸の金属塩として沈殿除去する方法、陰イオン交換樹脂などによって除去する方法などがある。
本実施形態における2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率としては、反応開始時の2−デオキシリボース量に対して85mol%以上が好ましく、90mol%以上がより好ましい。
本実施形態の製造方法は、反応期間の長さに特に制限はないが、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率が、反応開始時の2−デオキシリボース量に対して85mol%以上(より好ましくは90mol%以上)になるまで反応を継続することが好ましい。反応期間の長さは、例えば、2時間〜72時間であり、好ましくは10時間〜48時間であり、より好ましくは20時間〜35時間であり、最も好ましくは25時間〜30時間である。
[反応液]
本実施形態において、酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを合成する場である反応液は、水を主溶媒とすることが好ましく、必要に応じてアルコール、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒を適量添加してもよい。酸性ホスファターゼのうち、金属イオンを補因子とする酸性ホスファターゼを使用する場合は、補因子となる金属イオンを反応液中に添加する。
反応液の温度は、酸性ホスファターゼの活性が得られる温度であれば特に制限はない。反応液の温度は、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの収率の観点から、0℃〜30℃が好ましく、0℃〜20℃がより好ましく、0℃〜15℃が更に好ましく、0℃〜10℃が更に好ましく、0℃〜5℃が更に好ましい。
[酸性ホスファターゼ]
酸性ホスファターゼは、ホスファターゼ(EC3.1.3)のうち、至適pHが酸性側にある酵素の総称である。酸性ホスファターゼの至適pHは一般的に4.0〜6.0程度である。
本実施形態における酸性ホスファターゼは、その種類に特に制限はなく、種々の微生物由来の酸性ホスファターゼが使用できる。酸性ホスファターゼは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本実施形態における酸性ホスファターゼは、野生型(EC3.1.3.2)でもよく、野生型の少なくとも1つのアミノ酸を他のアミノ酸に置換して酵素性能を向上させた変異型でもよい。
野生型酸性ホスファターゼとしては、例えば、Bacteroides vulgatus(GenBank受入番号ABR38243)、Bradyrhizobium japonicum(GenBank受入番号BAC50005)、Capnocytophaga ochracea(GenBank受入番号ACU92248)、Caulobacter arescentus(GenBank受入番号YP_002515738)、Caulobacter segnis(GenBank受入番号EEZ38419)、Desulfotalea psychrophila(GenBank受入番号YP_066101)、Desulfovibrio magneticus(GenBank受入番号YP_002953066)、Enterobacter aerogenes(GenBank受入番号ABW37174)、Escherichia blattae(GenBank受入番号BAA84942)、Escherichia coli(GenBank受入番号CAA60534)、Fibrobacter succinogenes(GenBank受入番号YP_003250152)、Flavobacterium johnsoniae(GenBank受入番号YP_001193982)、Francisella philomiragia(GenBank受入番号ABZ87670)、Francisella tularensis(GenBank受入番号YP_169222)、Granulibacter bethesdensis(GenBank受入番号YP_745642)、Helocobacter pylori(GenBank受入番号CAD21745)、Klebsiella pneumoniae(GenBank受入番号BAH62928)、Mesorhizobium loti(GenBank受入番号NP_103983)、Methylobacterium chloromethanicum(GenBank受入番号ACK82712)、Methylobacterium extorquens(GenBank受入番号YP_001639040)、Methylobacterium populi(GenBank受入番号ACB79832)、Methylobacterium radiotolerans(GenBank受入番号ACB26070)、Methylococcus capsulatus(GenBank受入番号YP_114641)、Morganella morganii(GenBank受入番号BAA96744)、Phenylococcus capsulatus(GenBank受入番号YP_002129169)、Prevotella intermedia(GenBank受入番号BAA33148)、Prochlorococcus marinus(GenBank受入番号YP_001016363)、Providencia stuartii(GenBank受入番号CAA46032)、Ralstonia eutropha(GenBank受入番号YP_840758)、Raoultella planticola(GenBank受入番号BAB18918)、Salmonella typhi(GenBank受入番号AAK50861)、Salmonella typhimurium(GenBank受入番号AAM81208)、Shigella boydii(GenBank受入番号ABB68879)、Shigella flexneri(GenBank受入番号BAA11655)、Shigella dysenteriae(GenBank受入番号ABB64580)、Shigella sonnei(GenBank受入番号AAZ91025)、Sebaldella termitidis(GenBank受入番号ACZ10023)、Serratia proteamaculans(GenBank受入番号ABV43590)、Stenotrophomonas maltophilia(GenBank受入番号YP_002026426)、Xanthomonas campestris(GenBank受入番号AAM43356)、Zymomonas mobilis(GenBank受入番号AAA27700)等の微生物が有する酸性ホスファターゼが挙げられる。
変異型酸性ホスファターゼは、野生型酸性ホスファターゼを公知の遺伝子工学的手法により改変することで作製可能である。具体的には、上記微生物の野生型遺伝子に対して特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に記載されている遺伝子工学的手法を適用することにより、変異型酸性ホスファターゼを作製可能である。変異型酸性ホスファターゼの具体例は、特開2012−80875号公報及び特開2016−47066号公報に記載されている。
本実施形態においては酸性ホスファターゼとして、酸性ホスファターゼを発現している微生物若しくは高等生物由来の細胞、又はこれらの破砕物を使用してもよい。
反応液中の酸性ホスファターゼ量は、反応効率の観点から、反応開始時において、2−デオキシリボース1gに対して10ユニット〜200ユニットが好ましく、10ユニット〜70ユニットがより好ましい。
反応液中の酸性ホスファターゼの活性値は、1ユニット/mL〜1000ユニット/mLが好ましい。
[2−デオキシリボース]
2−デオキシリボースは、リボースの2位のヒドロキシ基が水素原子に置換された構造を有する。2−デオキシリボースは、本実施形態の技術分野において、その他の名称として、デオキシリボース、2−デオキシ−D−リボース、D−2−デオキシリボース等とも呼ばれる。
2−デオキシリボースは、化学的な合成品でもよく、酵素的な合成品でもよい。例えば特開2012−80875号公報又は特開2016−47066号公報に開示されているように、酵素反応によって2−デヒドロ−3−デオキシグルコン酸の二価金属塩から合成された合成品でもよい。
反応液中の2−デオキシリボース濃度は、反応液全量に対して2質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。
[リン酸供与体]
本実施形態におけるリン酸供与体は、酸性ホスファターゼの基質となり、2−デオキシリボースにリン酸基を与える化学物質であれば、その種類に特に制限はない。
リン酸供与体としては、例えば、アデノシントリリン酸(ATP)、ポリリン酸、又はこれらの塩が挙げられる。ポリリン酸又はポリリン酸塩としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、又はこれらのナトリウム塩若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。これらのリン酸供与体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
リン酸供与体としては、反応収率の観点から、ピロリン酸又はピロリン酸塩が好ましく、酸性ピロリン酸ナトリウムがより好ましい。
反応液中の2−デオキシリボースとリン酸供与体との量比は、反応効率の観点から、反応開始時において、2−デオキシリボース1molに対して、リン酸供与体が1mol〜10mol存在することが好ましく、1mol〜5mol存在することがより好ましい。
反応液中のリン酸供与体濃度は、0.05mol/L〜20mol/Lが好ましく、0.1mol/L〜10mol/Lがより好ましい。
[pH調整剤]
本実施形態において、反応開始時の反応液のpH、及び/又は、反応期間中の反応液のpHを調整するpH調整剤としては、塩基又は酸が挙げられる。pH調整剤として用いる塩基としては、少量で速やかにpHを制御し得る観点から、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。pH調整剤として用いる酸としては、少量で速やかにpHを制御し得る観点から、塩酸、リン酸が好ましい。pH調整剤として用いる酸としては、リン酸供与体となる観点から、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム又はピロリン酸カリウムが好ましい。
以下に実施例を挙げて本開示の実施形態をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順などは、本開示の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。したがって、本開示の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。
[変異型酸性ホスフォターゼの作製]
特開2012−80875号公報の段落0235〜0286に記載されている方法に従い、Shigella flexneri由来変異型酸性ホスファターゼ遺伝子を含むプラスミドpSFAPm75を有する大腸菌を作製し、変異型酸性ホスファターゼを発現させた。この変異型酸性ホスファターゼは、Shigella flexneriの野生型酸性ホスファターゼの57番目のアミノ酸残基をスレオニン、122番目のアミノ酸残基をグリシン、126番目のアミノ酸残基をバリン、171番目のアミノ酸残基をグルタミン酸、197番目のアミノ酸残基をチロシンに置換した変異型酵素である。変異型酸性ホスファターゼを発現した大腸菌を培養し、遠心分離により回収し、培養上清にて懸濁した(菌体濃度8.3質量%)。この菌体懸濁液を−20℃にて凍結保存した。以下の実験例には、凍結保存した菌体懸濁液を解凍し、これを酸性ホスファターゼ液として用いた。
[2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの定量]
反応液中の2−デオキシリボース−5−リン酸エステルは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量した。分析条件は下記のとおりである。
・カラム:Shodex Asahipak NH2P−50 4E(昭和電工株式会社)
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/min
・検出器:示差屈折率検出器(RID)
・キャリア:75mmol/L リン酸二水素ナトリウム水溶液
以下において、「dR」とは、2−デオキシ−D−リボースを意味し、「dR5P」とは、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを意味する。
[実施例1]
反応液のpHを、反応期間中、所定の範囲を保ち且つ途中で低下するように制御した。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)13.0gで液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)又は1N−塩酸水溶液(和光純薬工業社品)を添加してpHを制御するpH制御機器を用いて、反応液のpHを制御した。反応開始から8時間目までは反応液のpHが4.50から4.55の範囲になるようにpH制御機器を設定し、8時間経過時点でpH制御機器の設定をpHが4.10から4.15の範囲になるように変え反応終了までこの設定を続けた。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実施例2]
反応液のpHを、反応期間中、制御せず成り行きで変化させた。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)13.0gで液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、反応液のpHを制御せず成り行きで変化させた。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実施例3]
反応液のpHを、反応期間中、制御せず成り行きで変化させた。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、ピロリン酸カリウム試薬2.8gで液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、反応液のpHを制御せず成り行きで変化させた。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[実施例4]
反応液のpHを、反応期間中、所定の範囲を保つように制御した。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)5.1gで液のpHを4.1に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)又は1N−塩酸水溶液(和光純薬工業社品)を添加してpHを制御するpH制御機器を用いて、反応液のpHを制御した。反応開始から反応終了まで、反応液のpHが4.10から4.15の範囲になるようにpH制御機器を設定した。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[比較例1]
反応液のpHを、反応期間中、所定の範囲を保つように制御した。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)41.3gで液のpHを5.0に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)又は1N−塩酸水溶液(和光純薬工業社品)を添加してpHを制御するpH制御機器を用いて、反応液のpHを制御した。反応開始から反応終了まで、反応液のpHが5.00から5.05の範囲になるようにpH制御機器を設定した。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[比較例2]
反応液のpHを、反応期間中、所定の範囲を保つように制御した。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)12.7gで液のpHを4.5に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)又は1N−塩酸水溶液(和光純薬工業社品)を添加してpHを制御するpH制御機器を用いて、反応液のpHを制御した。反応開始から反応終了まで、反応液のpHが4.50から4.55の範囲になるようにpH制御機器を設定した。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
[比較例3]
反応液のpHを、反応期間中、所定の範囲を保つように制御した。反応条件の詳細は、以下のとおりである。
300mL丸底フラスコにdR試薬(Biosynth社品)26gと水174gを入れたのち、フラスコを冷却した水浴に入れ、三日月翼で攪拌してdRを水に溶解させた。dR溶解液に酸性ピロリン酸ナトリウム試薬51.6g(含有量95.5質量%の試薬。dR1molに対して1.2mol)を入れ、3℃で約30分間攪拌した。液のpHを測定したところ3.7であった。次いで、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)1.7gで液のpHを3.8に調整し、菌体濃度8.3質量%の酸性ホスファターゼ液9.4g(換算活性量32ユニット/dR1g)を入れ、反応を開始した。反応期間中、1N−水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業社品)又は1N−塩酸水溶液(和光純薬工業社品)を添加してpHを制御するpH制御機器を用いて、反応液のpHを制御した。反応開始から反応終了まで、反応液のpHが3.75から3.80の範囲になるようにpH制御機器を設定した。反応期間は27時間とし、反応期間中、反応液の温度を3℃±1℃の範囲内に維持した。反応期間中、三日月翼にて反応液をゆっくり攪拌した。
実施例1〜4における反応液のpHとdR5Pの収率とを表1及び図1Aに示す。比較例1〜3における反応液のpHとdR5Pの収率とを表1及び図1Bに示す。
Figure 0006944888

Claims (11)

  1. 酸性ホスファターゼの存在下、2−デオキシリボースとリン酸供与体とから2−デオキシリボース−5−リン酸エステルを製造する製造方法であって、
    反応液のpHが、反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり、反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲である、2−デオキシリボース−5−リン酸エステルの製造方法。
  2. 前記反応液のpHが前記反応期間の前半においてよりも後半において低い、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記反応期間の前半が、少なくとも反応期間全体の5分の1以上を占め、
    前記反応期間の後半が、少なくとも反応期間全体の2分の1以上を占める、
    請求項1又は請求項2に記載の製造方法。
  4. 反応開始時における前記反応液のpHをpH(a)とし、反応終止時における前記反応液のpHをpH(b)としたとき、pH(a)−pH(b)>0.1である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記反応期間の前半における前記反応液のpHが、反応開始時における前記反応液のpHに対して±0.1の範囲である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記反応液の温度が0℃〜30℃の範囲である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記リン酸供与体がピロリン酸又はピロリン酸塩を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記リン酸供与体が酸性ピロリン酸ナトリウムを含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記反応液のpHが前記反応期間の前半においてよりも後半において低いこと、又は、前記反応液のpHが前記反応期間の前半において4.0超6.0以下の範囲であり前記反応期間の後半において3.0以上4.5未満の範囲であることが、pH調整剤を用いて前記反応液のpHを調整することによって実現される、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記pH調整剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、リン酸、ピロリン酸、ピロリン酸ナトリウム及びピロリン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項9に記載の製造方法。
  11. 反応開始時において、前記反応液中に、酸性ホスファターゼが2−デオキシリボース1gに対して10ユニット以上存在する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の製造方法。
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