JP6958696B2 - 固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサ - Google Patents

固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサ Download PDF

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Description

本発明は、固体電解コンデンサ素子、固体電解コンデンサ、固体電解コンデンサ素子の製造方法、及び、固体電解コンデンサの製造方法に関する。
固体電解コンデンサは、例えば、特許文献1に示すように、粗面化された弁作用金属基体の表面に酸化皮膜からなる誘電体層を形成した後、陽極部と陰極部を分断するためにマスキング層を形成し、陽極部を除いた誘電体層上に固体電解質層と、カーボンペースト層及び銀ペースト層からなる集電層とを順次形成する等の方法により作製される固体電解コンデンサ素子を備えている。
特開2009−158692号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の固体電解コンデンサでは、漏れ電流が大きくなる不具合が発生することがあった。
図7(a)及び図7(b)は、従来の固体電解コンデンサを構成する固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
従来の固体電解コンデンサ素子6を構成する固体電解質層40及び集電層50は、通常、弁作用金属基体10の陰極部となるべき一方の端部を、導電性高分子の原料溶液や分散液、及び、カーボンペースト等に浸漬することによって形成される。
しかし、固体電解質層40を形成するために導電性高分子の原料溶液又は分散液に弁作用金属基体10を浸漬した際、原料溶液又は分散液がマスキング層35にはじかれてしまい、図7(a)に示すように、マスキング層35と固体電解質層40との間に隙間が形成される場合があった。
この場合、集電層50を形成するためにカーボンペースト等を固体電解質層40上に塗布すると、上記隙間にカーボンペースト等が入り込み、図7(b)に示すように、集電層50が誘電体層20と接触することになる。その結果、漏れ電流が大きくなると考えられる。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、漏れ電流が抑制された固体電解コンデンサ素子を提供することを目的とする。本発明はまた、該固体電解コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサ、該固体電解コンデンサ素子の製造方法、及び、該固体電解コンデンサ素子を用いた固体電解コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の固体電解コンデンサ素子は、陽極端子領域と陰極形成領域とを有する弁作用金属基体と、上記陰極形成領域上に形成された誘電体層と、上記誘電体層上に形成された固体電解質層と、上記固体電解質層上に形成された集電層とを有する固体電解コンデンサ素子であって、上記陽極端子領域上に、上記陽極端子領域と上記陰極形成領域とを区画し、上記弁作用金属基体を対極と絶縁するための、マスキング部材からなるマスキング領域が形成されており、上記マスキング部材の表面に、親水性部材からなる親水性領域が形成されていることを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサ素子では、後述の図1に示すように、マスキング部材30の表面に親水性部材31からなる親水性領域31aが形成されているため、固体電解質層40を形成するための導電層高分子の原料溶液又は分散液が親水性領域31a上で保持されやすくなる。従って、マスキング領域30aと固体電解質層40との間には、図7(a)に示したような隙間が形成されることがない。その結果、漏れ電流が抑制されると考えられる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、上記親水性部材は、シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤はいずれも、マスキング部材に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子においては、上記シランカップリング剤が、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらのシランカップリング剤は、マスキング部材の表面に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子においては、上記金属キレート剤が、8−キノリノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの金属キレート剤は、マスキング部材の表面に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、上記マスキング領域上に形成された上記固体電解質層の少なくとも一部は、上記集電層によって覆われておらず露出していることが好ましい。
マスキング領域上に形成された固体電解質層の少なくとも一部が集電層によって覆われずに露出していると、露出領域において集電層と誘電体層とが直接接触することが防止される。
本発明の固体電解コンデンサ素子においては、上記陰極形成領域上の上記誘電体層上に形成された上記固体電解質層の全体が、上記集電層により覆われていることが好ましい。
陰極形成領域上の誘電体層上に形成された固体電解質層の全体が集電層により覆われていると、固体電解コンデンサ素子のESRを充分に低下させることができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、上記マスキング部材の高さは50μm以下であることが好ましい。
マスキング部材の高さが50μmを超える場合、コンデンサ素子が大きくなりすぎて、体積あたりの容量が低下してしまうことがある。
本発明の固体電解コンデンサは、本発明の固体電解コンデンサ素子を備え、上記固体電解コンデンサ素子が外装樹脂によって封止されていることを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法は、弁作用金属基体の表面に誘電体層を形成する工程と、上記弁作用金属基体上にマスキング部材からなるマスキング領域を形成することにより、上記マスキング領域によって、上記弁作用金属基体を陽極端子領域と陰極形成領域とに区画する工程と、上記マスキング領域の一部上及び上記誘電体層上に固体電解質層を形成する工程と、上記固体電解質層上に集電層を形成する工程とを備え、上記マスキング領域を形成する工程では、上記マスキング部材の表面に、親水性部材からなる親水性領域を形成することを特徴とする。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法では、マスキング部材の表面に、親水性部材からなる親水性領域を形成するため、固体電解質層を形成するための導電層高分子の原料溶液又は分散液が親水性領域上で保持されやすくなる。従って、マスキング領域と固体電解質層との間に隙間が形成されることがない。その結果、漏れ電流が抑制された固体電解コンデンサ素子を製造することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法において、上記親水性部材は、シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤はいずれも、マスキング部材に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法においては、上記シランカップリング剤が、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらのシランカップリング剤は、マスキング部材の表面に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法においては、上記金属キレート剤が、8−キノリノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの金属キレート剤は、マスキング部材の表面に充分な親水性を付与することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法において、上記集電層を形成する工程では、上記マスキング領域上に形成された上記固体電解質層の少なくとも一部を、上記集電層によって覆わずに露出させることが好ましい。
マスキング領域上に形成された固体電解質層の少なくとも一部を集電層によって覆わずに露出させることによって、集電層と誘電体層とが直接接触することが防止される。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法において、上記集電層を形成する工程では、上記陰極形成領域上の上記誘電体層上に形成された上記固体電解質層の全体を上記集電層によって覆うことが好ましい。
陰極形成領域上の誘電体層上に形成された固体電解質層の全体を集電層によって覆うことにより、固体電解コンデンサ素子のESRを充分に低下させることができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法において、上記マスキング部材の高さは50μm以下であることが好ましい。
マスキング部材の高さが50μm以下であると、小型の固体電解コンデンサ素子を製造することができる。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法によって上記固体電解質コンデンサ素子を製造する工程と、上記固体電解コンデンサ素子を外装樹脂によって封止する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、漏れ電流が抑制された固体電解コンデンサ素子を提供することができる。
図1は、本発明の固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。 図2は、図1に示す固体電解コンデンサ素子1の斜視図である。 図3は、本発明の固体電解コンデンサ素子の別の一例を模式的に示す断面図である。 図4は、本発明の固体電解コンデンサ素子のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。 図5(a)〜図5(d)は、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。 図6は、本発明の固体電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。 図7(a)及び図7(b)は、従来の固体電解コンデンサを構成する固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサについて説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
[固体電解コンデンサ素子]
まず、本発明の固体電解コンデンサ素子について説明する。
本発明の固体電解コンデンサ素子は、陽極端子領域と陰極形成領域とを有する弁作用金属基体と、上記陰極形成領域上に形成された誘電体層と、上記誘電体層上に形成された固体電解質層と、上記固体電解質層上に形成された集電層とを有する固体電解コンデンサ素子であって、上記陽極端子領域上に、上記弁作用金属基体を対極と絶縁するためのマスキング領域が形成されている。
図1は、本発明の固体電解コンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す固体電解コンデンサ素子1の斜視図である。
図1及び図2に示す固体電解コンデンサ素子1は、陽極端子領域(図1中、両矢印aで示される領域)と陰極形成領域(図1中、両矢印bで示される領域)とを有する弁作用金属基体10と、陽極端子領域a上及び陰極形成領域b上に形成された誘電体層20と、誘電体層20上に形成された固体電解質層40と、固体電解質層40上に形成された集電層50とを有する。陽極端子領域a上には、陽極端子領域aと陰極形成領域bとを区画し、弁作用金属基体10を対極と絶縁するための、マスキング部材30からなるマスキング領域30aが形成されている。マスキング領域30aを構成するマスキング部材30の表面の全体には、親水性部材31からなる親水性領域31aが形成されている。そして、固体電解質層40は、親水性領域31aの少なくとも一部を覆っている。図1では、マスキング領域30aを構成するマスキング部材30の全体に、親水性部材31が形成されているため、マスキング領域30aと親水性領域31aが一致している。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、マスキング領域は、図2に示すように、弁作用金属基体、又は、弁作用金属基体上に形成された誘電体層の表面に周設されていることが好ましく、弁作用金属基体の長軸方向に略直交する方向(以下、弁作用金属基体の周方向ともいう)に沿って一周するように形成されていることがより好ましい。同様に、親水性領域も、マスキング領域の表面に周設されていることが好ましく、弁作用金属基体の周方向に沿って一周するように形成されていることがより好ましい。
親水性領域の幅(図1中、両矢印31aで示される長さ)は、マスキング領域の幅(図1中、両矢印30aで示される長さ)と同じであるか、マスキング領域の幅よりも狭いものであればよい。
マスキング領域中における親水性領域の位置は特に限定されないが、図7(a)に記載されたような隙間の形成を防止する観点からは、マスキング領域のうち、陰極形成領域側に近い位置に形成されていることが好ましく、陰極形成領域側の端部に形成されていることがより好ましい。
図3は、本発明の固体電解コンデンサ素子の別の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す固体電解コンデンサ素子2では、マスキング領域30aのうち、陰極形成領域b側の端部に、親水性部材31からなる親水性領域31aが形成されている。一方、陽極端子領域a側の端部には親水性領域31aが形成されていない。
図4は、本発明の固体電解コンデンサ素子のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
図4に示す固体電解コンデンサ素子3では、マスキング領域30a中に、マスキング領域30aを2分割するように、親水性領域31aが形成されている。このように、陰極形成領域b側の端部に親水性領域31aが形成されていない場合であっても、固体電解質層40を形成するための導電層高分子の原料溶液又は分散液が親水性領域31a上で保持されやすいため、マスキング領域30a中の、陰極形成領域b側の端部(図4中、両矢印Xで示される領域)上にも固体電解質層40が形成され、図7(a)に示すような隙間が形成されにくい。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、マスキング領域を構成するマスキング部材の高さは特に限定されないが、50μm以下であることが好ましい。
本明細書において、マスキング部材の高さとは、マスキング部材が設けられている誘電体層の表面からマスキング部材の表面までの高さである。なお、弁作用金属基体の表面が多孔質層を有する場合、多孔質層の内部に侵入するマスキング部材の侵入深さはマスキング部材の高さに含まれない。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、マスキング部材の材料としては、例えば、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂(テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、及び、それらの誘導体又は前駆体等の絶縁性樹脂が挙げられる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、マスキング部材の表面に設けられる親水性部材としては、例えば、シランカップリング剤、金属キレート剤、湿潤剤等が挙げられる。これらの親水性部材は1種でもよく、2種以上でもよい。これらの中では、シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤は1種でもよく、2種以上でもよい。これらの中では、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
金属キレート剤としては、例えば、8−キノリノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン等が挙げられる。これらの金属キレート剤は1種でもよく、2種以上でもよい。これらの中では、8−キノリノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
湿潤剤としては、例えば、エトキシレート非イオン界面活性剤(例えばAirProducts社製 Carbowetシリーズ)、アセチレングリコール系界面活性剤(例えばAirProducts社製 Surfynolシリーズ)、アルカンジオール系界面活性剤(例えばAirProducts社製 EnviroGemシリーズ)等が挙げられる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、マスキング領域のうち、親水性領域よりも陽極端子領域側の領域を構成するマスキング部材の表面には、疎水性部材からなる疎水性領域が形成されていてもよい。上記疎水性部材としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン等が挙げられる。
親水性領域よりも陽極端子領域側の領域に疎水性領域が形成されていると、固体電解質層40を形成するための導電層高分子の原料溶液又は分散液が親水性領域では保持されやすく、疎水性領域では保持されにくくなるため、固体電解質層が形成される領域を調整することができる。
続いて、本発明の固体電解コンデンサ素子を構成する弁作用金属基体、誘電体層、固体電解質層及び集電層について説明する。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、弁作用金属基体は、いわゆる弁作用を示す弁作用金属からなる。弁作用金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、ジルコニウム等の金属単体、又は、これらの金属を含む合金等が挙げられる。これらの中では、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、弁作用金属基体の形状は、平板状であることが好ましく、箔状であることがより好ましい。また、弁作用金属基体の表面には、エッチング層等の多孔質層が設けられていることが好ましい。弁作用金属基体が多孔質層を有することにより、陽極となる弁作用金属基体の表面積が増加するため、コンデンサ容量を高めることができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、誘電体層は、上記弁作用金属の酸化皮膜からなることが好ましい。例えば、弁作用金属基体としてアルミニウム箔が用いられる場合、ホウ酸、リン酸、アジピン酸、又は、それらのナトリウム塩、アンモニウム塩等を含む水溶液中で酸化することにより、酸化皮膜を形成することができる。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、固体電解質層は、マスキング領域のうち第1の被覆領域の全部及び露出領域の少なくとも一部に形成されている。固体電解質層は、露出領域の全部に形成されていてもよく、また、第2の被覆領域の一部に形成されていてもよい。さらに、固体電解質層は、陰極形成領域上の誘電体層上にも形成されている。
本発明の固体電解コンデンサ素子においては、マスキング領域上に形成された固体電解質層の少なくとも一部が集電層によって覆われずに露出していることが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサ素子においては、陰極形成領域上の誘電体層上に形成された固体電解質層の全体が、集電層により覆われていることが好ましい。
弁作用金属基体が多孔質層を有する場合、固体電解質層は弁作用金属の多孔質層中に含浸される内層と、その外側を覆う外層とで構成されていることが好ましい。内層と外層とは同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
固体電解質層を構成する材料としては、例えば、ピロール類、チオフェン類、アニリン類等を骨格とした導電性高分子等が挙げられる。チオフェン類を骨格とする導電性高分子としては、例えば、PEDOT[ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)]が挙げられ、ドーパントとなるポリスチレンスルホン酸(PSS)と複合化させたPEDOT:PSSであってもよい。
本発明の固体電解コンデンサ素子において、固体電解質層上に形成される集電層は、下地であるカーボン層とその上の銀層からなることが好ましいが、カーボン層のみであってもよく、銀層のみであってもよい。
[固体電解コンデンサ素子の製造方法]
続いて、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法について説明する。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法は、弁作用金属基体の表面に誘電体層を形成する工程と、上記弁作用金属基体上にマスキング部材からなるマスキング領域を形成することにより、上記マスキング領域によって、上記弁作用金属基体を陽極端子領域と陰極形成領域とに区画する工程と、上記マスキング領域の一部上及び上記誘電体層上に固体電解質層を形成する工程と、上記固体電解質層上に集電層を形成する工程とを備え、上記マスキング領域を形成する工程では、上記マスキング部材の表面に、親水性部材からなる親水性領域を形成することを特徴とする。
図5(a)〜図5(d)は、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
図5(a)〜図5(d)を参照しながら、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法の一例について説明する。
まず、図5(a)に示すように、弁作用金属基体10の表面に誘電体層20を形成する。
例えば、アルミニウム箔等の弁作用金属基体の表面に対して、アジピン酸アンモニウム水溶液中で陽極酸化処理(化成処理ともいう)を行うことにより、酸化皮膜からなる誘電体層を形成することができる。
次に、図5(b)に示すように、弁作用金属基体10上にマスキング部材30からなるマスキング領域30aを形成することで、マスキング領域30aによって陽極端子領域と陰極形成領域とが区画される。その後、マスキング部材30の表面に、親水性部材31からなる親水性領域31aを形成する。
本発明においては、マスキング領域30aが形成されている箇所を陽極端子領域とする。一方、マスキング領域30aが形成されていない箇所は、この段階では陽極端子領域とも陰極形成領域ともなりうる。
ただし、通常は面積の大きい側を陰極形成領域とし、面積の小さい側を陽極端子領域とする。これ以降、図5(b)におけるマスキング領域30aとマスキング領域30aよりも右側の領域とを合わせた領域(図5(b)中、両矢印aで示される領域)を陽極端子領域とし、マスキング領域30aよりも左側の領域(図5(b)中、両矢印bで示される領域)を陰極形成領域として説明する。
陽極端子領域上にマスキング領域を形成する方法は特に限定されないが、例えば、マスキング部材となる絶縁性樹脂を陽極端子領域に塗布し、必要に応じて加熱、乾燥等を行う方法が挙げられる。
絶縁性樹脂を塗布する方法としては、インクジェット方式、スクリーン印刷方式、ディスペンサー方式、転写方式など公知の手法を採用することができる。
マスキング部材の表面に親水性領域を形成する方法は特に限定されないが、例えば、親水性部材となるシランカップリング剤等をマスキング部材の表面に塗布し、必要に応じて加熱、乾燥等を行う方法が挙げられる。
シランカップリング剤等を塗布する方法としては、インクジェット方式、スクリーン印刷方式、ディスペンサー方式、転写方式など公知の手法を採用することができる。
なお、誘電体層は、弁作用金属基体の表面全体に形成される必要はなく、少なくとも弁作用金属基体の陰極形成領域に形成されればよい。少なくとも上記の領域に誘電体層が形成される限り、弁作用金属基体の表面に誘電体層を形成する工程とマスキング領域を形成する工程を行う順序は特に限定されない。すなわち、弁作用金属基体の表面に誘電体層を形成した後にマスキング領域を形成してもよいし、弁作用金属基体の表面にマスキング領域を形成した後に誘電体層を形成してもよい。また、マスキング部材の表面に親水性領域を形成する順序も特に限定されない。
また、弁作用金属基体として、予め化成処理が施された化成箔を用いてもよい。化成箔を用いる場合であっても、実際に使用する際には所定の形状に裁断する必要があるため、酸化皮膜を含まない裁断面が露出する。従って、化成箔を用いる場合であっても、裁断面をはじめとする弁作用金属基体の表面に酸化皮膜を形成する「切口化成」と呼ばれる処理を行う必要があり、このような切口化成も、本発明の「弁作用金属基体の表面に誘電体層を形成する工程」に含まれる。
続いて、図5(c)に示すように、固体電解質層40を、陰極形成領域の誘電体層20の全部と、マスキング領域30aのうち、親水性部材31が設けられた親水性領域31aの少なくとも一部を覆うように形成する。
固体電解質層を形成する方法としては、例えば、導電性高分子を分散させた分散液(導電性ポリマー液ともいう)を誘電体層上に付与して乾燥させる方法、又は、導電性高分子となるモノマーを含有する溶液(導電性モノマー液ともいう)を誘電体層上に付与して重合させる方法等が挙げられる。
導電性ポリマー液又は導電性モノマー液を誘電体層上に付与する方法は特に限定されないが、例えば、誘電体層上に導電性ポリマー液又は導電性モノマー液を塗布する方法や、表面に誘電体層及びマスキング領域を形成した弁作用金属基体の陰極形成領域側の端部を、導電性ポリマー液又は導電性モノマー液中に所定の深さまで浸漬する方法等が挙げられる。
例えば、図5(c)において、弁作用金属基体10の陰極形成領域b側の端部からマスキング領域30aの半分までを導電性ポリマー液又は導電性モノマー液中に浸漬した場合、親水性領域31aを構成する親水性部材31によって導電性ポリマー液又は導電性モノマー液が保持されることとなる。その結果、マスキング領域30aと固体電解質層40との間には、図7(a)に示したような隙間が形成されることがない。
その後、図5(d)に示すように、集電層50を、固体電解質層40上に形成する。図5(d)では、集電層50は陰極形成領域b上のみに形成されている。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法においては、陽極端子領域上の固体電解質層上に集電層が形成されていてもよいが、マスキング領域上に形成された固体電解質層の少なくとも一部を、集電層によって覆わずに露出させることが好ましい。
本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法においては、陰極形成領域上の誘電体層上に形成された固体電解質層の全体を集電層によって覆うことが好ましい。
その他、マスキング部材の高さ、マスキング部材の材料等については、[固体電解コンデンサ素子]で説明したとおりである。
また、本発明の固体電解コンデンサ素子の製造方法においては、マスキング領域のうち、親水性領域よりも陽極端子領域側の領域を構成するマスキング部材の表面に、疎水性部材からなる疎水性領域を形成してもよい。
[固体電解コンデンサ]
続いて、本発明の固体電解コンデンサについて説明する。
本発明の固体電解コンデンサは、[固体電解コンデンサ素子]で説明した固体電解コンデンサ素子を備え、上記固体電解コンデンサ素子が外装樹脂により封止されている。本発明の固体電解コンデンサが複数の固体電解コンデンサ素子を備える場合、[固体電解コンデンサ素子]で説明した固体電解コンデンサ素子以外の固体電解コンデンサ素子を備えてもよい。
図6は、本発明の固体電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
図6に示す固体電解コンデンサ100は、複数の固体電解コンデンサ素子1(以下、単にコンデンサ素子1ともいう)と、陽極端子70(陽極側のリードフレーム)と、陰極端子80(陰極側のリードフレーム)と、外装樹脂60と、を備えている。
外装樹脂60は、コンデンサ素子1の全体と陽極端子70の一部と陰極端子80の一部とを覆うように形成されている。外装樹脂60の材質としては、例えば、エポキシ樹脂等が挙げられる。
[固体電解コンデンサの製造方法]
以下、本発明の固体電解コンデンサの製造方法について説明する。
本発明の固体電解コンデンサの製造方法では、[固体電解コンデンサ素子の製造方法]で説明した方法によって固体電解コンデンサ素子を作製し、上記固体電解コンデンサ素子を外装樹脂によって封止する。
本発明の固体電解コンデンサは、好ましくは、以下のように製造される。
まず、[固体電解コンデンサ素子の製造方法]で説明した方法により、1又は複数の固体電解コンデンサ素子を作製する。
複数の固体電解コンデンサ素子を備える固体電解コンデンサを製造する場合には、複数の固体電解コンデンサ素子を積層する。このとき、弁作用金属基体の陽極端子領域を互いに対向させて積層する。陽極端子領域を互いに接合するとともに、陽極端子領域に陽極端子を接合する。接合方法としては、例えば、溶接や圧着等が挙げられる。また、集電層に対応する部分同士もそれぞれ接するように積層し、集電層に陰極端子を接合する。これにより、集電層は互いに電気的に接続されることになる。集電層同士の接続や集電層と陰極端子の接合には、例えば、導電性接着剤が用いられる。
続いて、コンデンサ素子の全体と陰極端子の一部と陽極端子の一部とを覆うように外装樹脂で封止する。外装樹脂は、例えば、トランスファーモールドによって形成する。以上により、固体電解コンデンサが得られる。
以下、本発明の固体電解コンデンサ素子及び固体電解コンデンサをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
まず、弁作用金属基体として、表面に多孔質層を有するアルミニウム化成箔を準備し、所定の形状に裁断した。
次に、アルミニウム化成箔の長軸方向の一端から所定の間隔を隔てた位置に、アルミニウム化成箔を一周するようにマスキング部材を帯状に塗布することによって、マスキング部材を多孔質層中に含浸させ、マスキング領域を形成した。マスキング領域により分割されたアルミニウム化成箔のうち、面積の小さい部分と上記マスキング領域とを含む領域を陽極端子領域とし、それ以外の領域を陰極形成領域とした。マスキング部材の材料としてはポリイミドを用いた。
この際、マスキング領域の幅は0.7mmとし、マスキング部材の高さは10μmとした。
マスキング領域を形成したアルミニウム化成箔をアジピン酸アンモニウム水溶液中で酸化し、酸化アルミニウムからなる誘電体層を裁断面に形成した。
さらに、上記マスキング領域を構成するマスキング部材の陰極形成領域側の半分に、シランカップリング剤である3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを塗布し、親水性部材からなる親水性領域を形成した。
続いて、陰極形成領域の全体、及び、マスキング領域のうち親水性領域の全体(マスキング部材の陰極形成領域側の半分)を導電性ポリマー配合液に浸漬させた。導電性ポリマー配合液としては、PEDOT:PSSの分散液(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とが混合された分散液)を用いた。浸漬後、乾燥させることにより、陰極形成領域の全体、及び、親水性領域の全体に固体電解質層を形成した。
その後、固体電解質の表面のうち、陰極形成領域をカーボンペーストに浸漬した後、乾燥させることにより、カーボン層を形成した。得られたカーボン層の表面を銀ペーストに浸漬した後、乾燥させることにより銀層を形成し、固体電解コンデンサ素子を作製した。
上記の固体電解コンデンサ素子を4個積層し、弁作用金属基体の露出部分を外部接続端子(陽極端子)と抵抗溶接で接合し、銀層と別の外部接続端子(陰極端子)とを導電性接着剤で接合し、外装樹脂により封止することで、実施例1に係る固体電解コンデンサを得た。得られた固体電解コンデンサのサイズは、長さ7.3mm、幅4.3mm、厚み1.9mmであった。
(実施例2)
シランカップリング剤を3−アミノプロピルトリメトキシシランに変更したほかは実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、実施例2に係る固体電解コンデンサを得た。
(実施例3)
シランカップリング剤を金属キレート剤である8−キノリノールに変更したほかは実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、実施例3に係る固体電解コンデンサを得た。
(実施例4)
シランカップリング剤を金属キレート剤である1,2,3−ベンゾトリアゾールに変更したほかは、実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、実施例4に係る固体電解コンデンサを得た。
(実施例5)
シランカップリング剤を金属キレート剤である1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンに変更したほかは、実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、実施例5に係る固体電解コンデンサを得た。
(実施例6)
シランカップリング剤を湿潤剤(Air Products社製 Carbowet106)に変更したほかは、実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、実施例6に係る固体電解コンデンサを得た。
(比較例1)
マスキング領域に親水性領域を設けないほかは、実施例1と同様の手順でコンデンサ素子を作製し、比較例1に係る固体電解コンデンサを得た。
(良品率の評価)
実施例1〜実施例6及び比較例1に係る固体電解コンデンサを各1000個ずつ作製し、漏れ電流を評価した。漏れ電流が0.1CV以上のものを不良品と判定し、良品率を求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006958696
表1より、マスキング領域に親水性領域を有する各実施例に係る固体電解コンデンサは、親水性領域を有しない比較例1に係る固体電解コンデンサよりも、漏れ電流の良品率が高いことがわかった。
1、2、3 固体電解コンデンサ素子
6 従来の固体電解コンデンサ素子
10 弁作用金属基体
20 誘電体層
30 マスキング部材
30a マスキング領域
31 親水性部材
31a 親水性領域
40 固体電解質層
50 集電層
60 外装樹脂
70 陽極端子(陽極側のリードフレーム)
80 陰極端子(陰極側のリードフレーム)
100 固体電解コンデンサ

Claims (11)

  1. 陽極端子領域と陰極形成領域とを有する弁作用金属基体と、前記陰極形成領域上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、前記固体電解質層上に形成された集電層とを有する固体電解コンデンサ素子であって、
    前記陽極端子領域上に、前記陽極端子領域と前記陰極形成領域とを区画し、前記弁作用金属基体を対極と絶縁するための、マスキング部材からなるマスキング領域が形成されており、
    前記マスキング部材の表面に、親水性部材からなる親水性領域が形成されており、
    前記マスキング領域の前記陰極形成領域側の端部には、少なくとも前記マスキング部材が形成されており、
    前記マスキング部材は、前記親水性部材に比べて親水性が低い部材であることを特徴とする固体電解コンデンサ素子。
  2. 前記固体電解質層は、前記親水性領域上にまで延設されている請求項1に記載の固体電解コンデンサ素子。
  3. 前記マスキング部材の材料は、ポリフェニルスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シアン酸エステル樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、それらの誘導体及びそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも1種の材料である請求項1又は2に記載の固体電解コンデンサ素子。
  4. 前記弁作用金属基体が表面に多孔質層を有しており、
    前記多孔質層の内部にマスキング部材が侵入している、請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子。
  5. 前記親水性部材は、シランカップリング剤、金属キレート剤及び湿潤剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子。
  6. 前記シランカップリング剤が、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の固体電解コンデンサ素子。
  7. 前記金属キレート剤が、8−キノリノール、1,2,3−ベンゾトリアゾール及び1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の固体電解コンデンサ素子。
  8. 前記マスキング領域上に形成された前記固体電解質層の少なくとも一部は、前記集電層によって覆われておらず露出している請求項1〜7のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子。
  9. 前記陰極形成領域上の前記誘電体層上に形成された前記固体電解質層の全体が、前記集電層により覆われている請求項1〜8のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子。
  10. 前記マスキング部材の高さは50μm以下である請求項1〜9のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の固体電解コンデンサ素子を備え、
    前記固体電解コンデンサ素子が外装樹脂によって封止されていることを特徴とする固体電解コンデンサ。
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