JP6957914B2 - プリプレグ及び炭素繊維強化複合材料 - Google Patents
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Description
[1] エポキシ樹脂(A)、並びにジシアンジアミド(B)を含むエポキシ樹脂組成物、及び平均単繊維繊度が1.0dtex以上2.4dtex以下の炭素繊維(C)を含有し、140℃に予熱した金型で挟んで4MPaに加圧し、5分間保持して得られる成形体のガラス転移点が130℃以上となるプリプレグ。
[2] 前記炭素繊維(C)がPAN系炭素繊維である[1]に記載のプリプレグ。
[3] 前記炭素繊維(C)の、単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状の真円度が0.7以上0.9以下である、[1]又は[2]に記載のプリプレグ。
[4] 前記炭素繊維(C)の、単繊維の繊維軸に垂直な断面の断面積と、該断面の周長の比が0.5以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載のプリプレグ。
[5] さらに硬化促進剤(D)として、2,4−ジ(N,N−ジメチルウレイド)トルエンを含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のプリプレグ。
[6] 前記ジシアンジアミド(B)の含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して4質量部以上8質量部以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載のプリプレグ。
[7] 前記エポキシ樹脂(A)が下記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂を含む、[1]〜[6]いずれかに記載のプリプレグ。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載のプリプレグの硬化物である炭素繊維強化複合材料。
なお本発明において、炭素繊維強化複合材料を「成形体」、エポキシ樹脂組成物の硬化物を「硬化樹脂」と称することがある。またジシアンジアミド(B)の粒子が、強化繊維基材を構成する繊維間に入りこむことを、便宜的に「含浸する」と称し、その入りこみやすさを「含浸性」と称することがある。
(エポキシ樹脂(A))
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、イソシアネート変性したオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂等の液状エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ウレタン変性型エポキシ樹脂、等が挙げられる。また下記式(1)で表される構造を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物はジシアンジアミド(B)を含有する。ジシアンジアミド(B)は、エポキシ樹脂に対して室温で難溶性あるいは不溶性であり、潜在性を有する潜在性硬化剤である。当該エポキシ樹脂組成物は1液性の硬化性樹脂組成物であることから、硬化剤とエポキシ樹脂が有するエポキシ基とは常時接し得る状態にある。エポキシ樹脂に対して室温で難溶性あるいは不溶性であるジシアンジアミドを用いる事で保存安定性が良好なプリプレグとなる。
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物において、ジシアンジアミド(B)の硬化活性を高めるために、硬化促進剤(D)(硬化助剤)を用いてもよい。ジシアンジアミド(B)と、その硬化活性を高める潜在性を有する硬化促進剤(D)とを組み合わせて用いることで、本発明に係るプリプレグをより短時間で硬化させることができ、炭素繊維強化複合材料をより好適に製造することができる。但し、エポキシ樹脂組成物中の硬化促進剤(D)の含有量が多すぎると、得られる成形体の耐熱性が低下したり、プリプレグの保存安定性が悪くなったりするおそれがあるため、少量の添加に留めておくことが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂(A)100質量部に対し、通常、2質量部以上7質量部以下が好ましい。
本発明のプリプレグにおけるハイサイクル成形性の観点から、硬化促進剤(D)としては、2,4−ジ(N,N−ジメチルウレイド)トルエンが特に好ましい。
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤(E)として、熱可塑性樹脂、およびエラストマーから選択される少なくとも一種の樹脂を添加することができる。このような添加剤(E)は、エポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて、粘度、貯蔵弾性率、およびチキソトロープ性を適正化するだけでなく、エポキシ樹脂組成物の硬化物(硬化樹脂)やこれを含む成形体の靭性を向上させる役割がある。添加剤(E)は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。また添加剤(E)は、エポキシ樹脂組成物中に溶解した状態で存在していてもよく、微粒子、長繊維、短繊維、織物、不織布、メッシュ、パルプ等の形状でプリプレグの表層に配置されていてもよい。このように添加剤(E)をプリプレグの表層に配置した場合には、前記プリプレグを積層し硬化して得られる炭素繊維強化複合材料の層間剥離を抑制することができる。
本発明における、平均単繊維繊度が1.0dtex以上2.4dtex以下の炭素繊維(C)(以下、単に「炭素繊維(C)」と称することがある)としては、PAN系炭素繊維が好ましい。PAN系炭素繊維はピッチ系炭素繊維に比べて強度が高く、例えば自動車の構造部材等への利用において好ましい。
真円度 = 4πS/L2 (I)
真円度が0.7未満の場合は断面形状が異形になりすぎて炭素繊維(C)の収束性が低下し、炭素繊維(C)の製造工程における工程通過性の低下や、プリプレグを製造する際に炭素繊維(C)間に大きな空隙が生じて繊維含有率を高くすることができず、得られる炭素繊維強化複合材料の力学特性が低下する場合がある。また、ジシアンジアミド(B)の含浸性も低下する傾向がある。真円度が0.9を超える場合には、真円に近づくために、単繊維繊度が大きすぎる場合と同様に耐炎化反応が不十分となり、繊維束の強度や弾性率低下に至る傾向がある。また、プリプレグを製造する際に炭素繊維(C)同士の収束性が高くなりすぎ、ジシアンジアミド(B)の含浸性が低下する傾向がある。
本発明のプリプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、従来公知の方法で製造することができる。製造方法としては、例えば、前記エポキシ樹脂組成物を構成する各成分を同時に混合してエポキシ樹脂組成物を調製してもよく、あるいは、予め、エポキシ樹脂(A)にジシアンジアミド(B)および必要に応じて硬化促進剤(D)等を適宜分散させた硬化剤マスターバッチを調製し、これを用いてエポキシ樹脂組成物を調製してもよい。また、製造時に、混練による剪断発熱等で、混練釜内の温度が上昇する場合には、混練速度を調整したり、混練釜を水冷する等して、混練中にエポキシ樹脂組成物の温度を上げない工夫をすることが好ましい。混練釜を備えた混練装置としては、例えば、らいかい機、アトライタ、プラネタリミキサー、ディゾルバー、三本ロール、ニーダー、万能攪拌機、ホモジナイザー、ホモディスペンサー、ボールミル、およびビーズミルが挙げられる。また、混練装置は二種以上を併用することができる。
本発明のプリプレグを加熱加圧し硬化させることにより、本発明に係る炭素繊維強化複合材料を製造することができる。
本発明の炭素繊維強化複合材料を製造する方法としては、オートクレーブ成形、真空バッグ成形、プレス成形等の方法が挙げられる。このうち、本発明のプリプレグにおいて好ましく用いられるエポキシ樹脂組成物の特徴を活かして、生産性が高く、良質な炭素繊維強化複合材料が得られるという観点から、プレス成形が好ましい。プレス成形で炭素繊維強化複合材料を作製する場合における製造方法は、本発明のプリプレグ、または本発明のプリプレグを積層してなるプリフォームを、予め硬化温度に調整した金型に挟んで加熱加圧する工程を含むことが好ましい。
実施例で用いた強化繊維、樹脂原料、および各物性の測定方法を、次に示す。
炭素繊維(C)
・C−1:PAN系炭素繊維基材、平均単繊維繊度1.4dtex、真円度0.85、フィラメント数24000本、CF単繊維断面積77.5μm2、CF単繊維断面周長、33.9 μm、CF断面周長断面積比0.44、フィラメント強度3680MPa、フィラメント弾性率240GPa。
・C−2:PAN系炭素繊維基材、平均単繊維繊度0.67dtex、真円度0.95、フィラメント数15000 本、CF単繊維断面積36.4μm2、CF単繊維断面周長22.0μm、CF断面周長断面積比0.60、フィラメント強度4900MPa、フィラメント弾性率240GPa。
・C−3:PAN系炭素繊維基材、平均単繊維繊度0.73dtex、真円度0.95、フィラメント数50000本、CF単繊維断面積41.6μm2、CF単繊維断面周長23.4μm、CF断面周長断面積比0.56、フィラメント強度4120MPa、フィラメント弾性率240GPa。
・A−1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量184〜194g/eq、三菱化学(株)製、商品名:jER828)。
・A−2:A−1と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォンとの反応物(予備反応物):
A−1と4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン(和歌山精化工業(株)製、商品名:セイカキュアーS)とをA−1/4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン=100/9の質量比で室温にて混合した後に150℃にて混合加熱して得た反応物(エポキシ当量266g/eq)。
・B−1:ジシアンジアミド(三菱化学(株)製、商品名:Dicy15、メディアン径(D50):代表値4μm)。
・B−2:ジシアンジアミド(Air Products and Chemicals, Inc.製、商品名:Dicyanex1400F、メディアン径(D50):代表値3μm)。
・D−1:2,4−ジ(N,N−ジメチルウレイド)トルエン(CVC Specialty Chemicals, Inc.製、商品名:OMICURE U−24)。
・D−2:メチレンビスジメチルウレア(CVC Specialty Chemicals, Inc.製、商品名:OMICURE 52)。
・E−1:ポリエーテルスルホン(BASF社製、商品名:ULTRASON E2020P)
(1)エポキシ樹脂組成物の調製
表1に記載したエポキシ樹脂組成物1及び2(実施例1〜2、比較例1〜2に使用)を、下記方法によって調製した。
先ず、エポキシ樹脂(A−2)を表1に記載した配合比に従ってニーダーに計量して投入し80℃にて加熱溶解した後、60℃以下に冷却した。一方、(E−1)と、(E−1)の2倍量のエポキシ樹脂(A−1)とを混合し、170℃で溶解物が均一に混ざるまで撹拌し、その後100℃まで冷却して、添加剤(E−1)を含有する添加剤マスターバッチを得た。次いで、この添加剤マスターバッチを前述のエポキシ樹脂(A−2)と混合し、100℃で均一に成るまで撹拌し、その後60℃まで冷却したものをベース樹脂とした。
前記「(1)エポキシ樹脂組成物の調製」で得られたエポキシ樹脂組成物1又は2を、離型紙(リンテック(株)製、商品名:CFP−45)上に樹脂目付が53.6g/m2となるように、コンマコーターを用いて均一に塗布して樹脂層を形成した。
前記「(2)プリプレグの製造」で得られたプリプレグを、298mm×298mmの大きさに複数枚切断した。そして、切断したプリプレグを、縦糸の繊維方向が一方向になるように5枚積層した一方向積層プリフォーム1(厚さ:1.1mm、層体積:97.7cm3、片面表面積S1(下面の表面積):888.0cm2)と、同様に10枚積層した一方向プリフォーム2(厚さ:2.2mm、層体積:195.4cm3、片面表面積S1(下面の表面積):888.0cm2)を作製した。
前記成形方法において、金型からの脱型時の成形物の状態を確認した。不具合無く成形物を取得できれば良好な硬化性であり、成形体が大きく変形したり、割れが発生したりした場合は、硬化不足による非硬化と判断した。
前記「(3)炭素繊維強化複合材料の製造」にて得られた炭素繊維強化複合材料1から、幅12.7mm、長さ80mm厚み1mmの試験片を各々6個作製した(乾燥試験片)。なお、試験片の長さ方向が繊維の0°方向となるよう作製した。得られた試験片について、SACMA SRM 1Rに準拠し、100kNロードセルを備えたINSTRON 5882測定機を用い、温度23℃、湿度50%RHの環境下、クロスヘッドスピード1.27mm/minの条件で、圧縮強度を測定した。測定値をVf(繊維体積含有率)60%に換算し、6個の試験片におけるその平均値を測定結果とした。結果を表1に示す。なお測定は、同じ炭素繊維強化複合材料1から切り出したタブを各試験片に接着して行った。
前記<乾燥試験片の室温における0°圧縮特性の評価>と同様に、前記「(3)炭素繊維強化複合材料の製造」にて得られた炭素繊維強化複合材料2から、SACMA SRM 1Rに準拠する様に9個の試験片を各々作製した。9個の内6個の試験片を70℃の温水中に14日間浸漬して吸水させた(吸水試験片)。試験片を温水中に浸漬させる際、試験片同士が重なって水と接する面積が変化しないように間隔を開けて配置した。温水から取り出した吸水後の試験片につき、直ちに80℃に加熱したオーブンを備えた前記INSTRONを用いて0°圧縮強度を測定した。測定値をVf(繊維体積含有率)60%に換算し、6個の試験片におけるその平均値を測定結果とした。結果を表1に示す。
前記<乾燥試験片の室温における0°圧縮特性の評価>で得られた0°圧縮強度(D)と、前記<吸水試験片の80℃における0°圧縮特性の評価>で得られた圧縮強度(HW)の比(D)/(HW)を強度保持率とした。結果を表1に示す。
まず、前記<吸水試験片の80℃における0°圧縮特性の評価>における、70℃温水への浸漬期間中の試験片の吸水量は、6個の吸水試験片の吸水による重量増加量の平均値とした。次いで、浸漬前の試験片の吸湿量を、浸漬に使用していない残り3個の試験片を90℃のオーブン中で重量変化がなくなるまで絶乾させた時の重量減少分の平均として求めた。続いて、前記6個の試験片の吸水量と3個の試験片の吸湿量から炭素繊維複合材料の吸水率を算出した。結果を表1に示す。
前記「(3)炭素繊維強化複合材料の製造」にて得られた炭素繊維強化複合材料2から、長さ55mm×幅12.7mm×厚さ2.2mmの試験片を作成した。この試験片の耐熱性を、TAインストルメンツ社製のレオメーター ARES−RDAを用いて、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で測定した。即ち、logG’を温度に対してプロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、logG’が急激に低下する領域の近似直線との交点の温度を、ガラス転移点(G’−Tg)として得た。結果を表1に示す。
前記<乾燥試験片の耐熱性の測定>と同様に、前記「(3)炭素繊維強化複合材料の製造」にて得られた炭素繊維強化複合材料2から試験片を切り出し、70℃の温水中に14日間浸漬して吸水させた後、直ちにこの試験片のG’−Tgを測定した。結果を表1に示す。
Claims (4)
- ジシアンジアミドを含有するエポキシ樹脂組成物、及び、平均単繊維繊度が1.0dtex以上2.4dtex以下、単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状の真円度が0.7以上0.9以下かつ前記断面の断面積と前記断面の周長の比が0.5以下であるPAN系炭素繊維からなり、140℃に予熱した金型で挟んで4MPaに加圧し、5分間保持して得られる成形体のガラス転移点が130℃以上となるプリプレグを、温度140〜150℃、圧力4〜15MPaの条件下で5〜20分間硬化させる、炭素繊維複合材料の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物がさらに硬化促進剤として、2,4−ジ(N,N−ジメチルウレイド)トルエンを含有する、請求項1に記載の製造方法。
- 前記エポキシ樹脂組成物におけるジシアンジアミドの含有量が、エポキシ樹脂100質量部に対して4質量部以上8質量部以下である、請求項1または2に記載の製造方法。
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