JP4377476B2 - 強化繊維強化樹脂製ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、十分な剛性を持つ強化繊維強化樹脂製ロール、および十分な剛性を持ち、耐湿熱特性に優れた強化繊維強化樹脂製ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素繊維等の強化繊維とエポキシ樹脂等のマトリックス樹脂とからなる繊維強化樹脂(FRP)成形体は、軽量で、剛性等の機械特性に優れていることから、釣り竿、ゴルフシャフトなどの汎用用途から産業用途、航空機用途までの幅広い用途で用いられている。これらFRP成形体を成形する方法としては、幾つかの方法が挙げられる。炭素繊維を強化繊維とする場合には、プリプレグと呼ばれる、あらかじめ強化繊維にマトリックス樹脂を含浸させた中間材料を用いる方法が最も広く用いられている。
【0003】
このようなFRP成形体は、軽量で、剛性に優れていることから、近年の印刷機、製紙機、紙加工機等の高速化の要求を満足すべく、従来、鋼鉄製かアルミニウム製のものが主であったこれら機械用のロールの母材として使用されつつある。特に、新聞輪転機のインキロールやニップロール等には、ゴムを被覆したFRP製ロールが使用されるようになってきている。
【0004】
新聞輪転機のニップロールのロールシェルには、ニップ時の圧力による変形に耐えられる剛性が要求される。ロールシェルの剛性の低下は、ニップロールのたわみに影響を与える。ニップロールのたわみが大きくなると、紙しわが発生したり、ニップ幅の偏りが起こってニップ幅の調整が困難になる。そのため、従来のニップロールには、スチール製のロールシェルが用いられてきた。よって、ニップロールのロールシェルにFRP製ロールを使用する場合は、従来のスチール製のロールシェルと同程度の剛性を持たせる必要がある。
【0005】
また、これらゴム被覆ロールは、ゴムの耐用年数が来るとゴムを巻き換えて、再加硫を行うのが一般的である。このゴム加硫の条件は高温多湿で厳しいため、この用途に使用する材料は耐湿熱特性に優れたものでなければならない。
しかしながら、一般にスポーツ用途に使用されている130℃硬化型のプリプレグ材料からなるFRP成形体では、耐熱性が十分でなかった。また、耐熱用途で使用されている多官能エポキシ樹脂を主成分とするFRP成形体は、吸水率が高いため、十分な性能を発揮することが出来なかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、スチール製のロールと同等の剛性を持つ強化繊維強化樹脂製ロールを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、スチール製のロールと同等の剛性を持ち、かつゴム被覆層を設ける時の加硫工程のような高温多湿の厳しい条件にも耐え得る強化繊維強化樹脂製ロールを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは、引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(I)と、引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(II)とを積層してなり、前記引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維と前記引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維との重量比率が、2/3〜4/1であることを特徴とする。
【0008】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、下記(a)の要件を満足することが好ましい。
(a)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置したときの吸水率が、3.5重量%以下であること。
【0009】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、下記(b)の要件を満足することが好ましい。
(b)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置した後の150℃における剛性率(LogG'after)と、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置する前の150℃における剛性率(LogG'before)との比(LogG'after/LogG'before)が、0.95以上であること。
【0010】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、下記(c)の要件を満足することが好ましい。
(c)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板のガラス転移温度が、150〜200℃であること。
【0011】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)20〜59重量%、下記(式1)〜(式4)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位が骨格をなすエポキシ樹脂組成物(B)25〜50重量%、架橋ゴム微粒子変性エポキシ樹脂(C)15〜40重量%、および前記エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との混合物に溶解可能な熱可塑性樹脂(D)1〜10重量%からなる樹脂成分(X)と、該樹脂成分(X)100重量部に対して20〜50重量部のジアミノジフェニルスルホン(E)とを含有し、かつエポキシ樹脂組成物の60℃の粘度が、500〜3000ポイズであることが好ましい。
【0012】
【化2】
【0013】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、さらに、前記エポキシ樹脂組成物(B)以外で、かつ軟化点が70℃以上であるエポキシ樹脂(F)を、前記樹脂成分(X)100重量部に対して5〜50重量部含有していることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは、引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(I)と、引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(II)とを積層してなるロールである。
【0015】
前記引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維を有する強化繊維強化樹脂層(I)(以下、強化繊維強化樹脂層(I)と記す)は、スチール製のロールシェルと同等の剛性を得るために設けられる強化繊維強化樹脂層である。
【0016】
一方、前記引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維を有する強化繊維強化樹脂層(II)(以下、強化繊維強化樹脂層(II)と記す)は、強化繊維強化樹脂製ロールのつぶし強度を向上させるため、およびゴム加硫時のクラックを防止するために設けられる強化繊維強化樹脂層である。
また、強化繊維強化樹脂層(II)は、研磨しろとして、強化繊維強化樹脂製ロールの最外層およびその付近に好適に用いられる。強化繊維強化樹脂層(II)を研磨しろとすることによって、強化繊維強化樹脂層(I)を研磨しろに用いた場合に比べ、ロール成形時やゴム巻き換え時における表面研磨による強化繊維強化樹脂製ロールの剛性の低下を最小限に抑制することができる。
【0017】
前記引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維と前記引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維との使用比率は、重量比で2/3〜4/1である必要がある。この重量比率が2/3未満では、引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維の量が不十分となり、スチール製のロールシェルと同等の剛性を有する強化繊維強化樹脂製ロールが得られなくなる。重量比率が4/1を超えると、引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維の量が不十分となり、得られる強化繊維強化樹脂製ロールはつぶし強度に劣り、ゴム加硫時にクラックが発生しやすくなる。
【0018】
本発明における強化繊維は、引張弾性率が600〜800GPaまたは140〜300GPaの長繊維強化繊維であればよく、その材質等は特に限定はされない。強化繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、スチール繊維などが挙げられる。中でも、炭素繊維が、成形後の機械的特性が良好なことから好適に用いられる。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系の炭素繊維およびピッチ系の炭素繊維のいずれも使用可能である。
【0019】
本発明における強化繊維強化樹脂層のマトリックス樹脂として用いられるエポキシ樹脂組成物は、下記(a)の要件を満足することが好ましい。
(a)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置したときの吸水率が、3.5重量%以下であること。
【0020】
エポキシ樹脂組成物が前記(a)の要件を満足することにより、得られる強化繊維強化樹脂製ロールは、高温多湿条件下での暴露を繰り返しても劣化することがなく、ゴム被覆層を設けるときの加硫工程のような高温多湿の厳しい条件下にも十分耐えうるものになる。
【0021】
前記(a)の要件を満足しない、すなわち硬化樹脂板を150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置したときの吸水率が3.5重量%を超えるエポキシ組成物を用いた場合、得られる強化繊維強化樹脂製ロールは、加硫工程のような高温多湿の厳しい条件にさらされると、ロールシェル内でクラック等が発生して強度低下を生じやすくなる。
【0022】
ここで、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置したときの吸水率、すなわちエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の耐湿熱試験後の吸水率は、以下のようにして測定される。
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得る。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製する。この試験片について、150℃、飽和蒸気圧下での60時間の耐湿熱試験を行い、耐湿熱試験後の試験片の吸水率(重量%)を測定する。
【0023】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、下記(b)の要件を満足することが好ましい。
(b)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置した後の150℃における剛性率(LogG'after)と、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置する前の150℃における剛性率(LogG'before)との比(LogG'after/LogG'before)が、0.95以上であること。
【0024】
エポキシ樹脂組成物が前記(b)の要件を満足することにより、得られる強化繊維強化樹脂製ロールは、高温多湿条件下での暴露を繰り返しても劣化することがなく、ゴム被覆層を設けるときの加硫工程のような高温多湿の厳しい条件下にも十分耐えうるものになる。
【0025】
ここで、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の150℃における剛性率(LogG'before)は、以下のようにして求めることができる。
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得る。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製する。動的粘弾性測定装置を使用して、この試験片を5℃/STEPで昇温しながら、試験片に10ラジアン/秒の速度で剪断力を加えて、試験片の貯蔵剛性率の温度依存性を測定する。このときの150℃における貯蔵剛性率を、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の150℃における剛性率(LogG'before)とする。
【0026】
また、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置した後の150℃における剛性率(LogG'after)は、以下のようにして求めることができる。
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得る。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製する。この試験片について、150℃、飽和蒸気圧下での60時間の耐湿熱試験を行う。耐湿熱試験後の試験片の貯蔵剛性率の温度依存性を動的粘弾性測定装置によって測定する。このときの150℃における貯蔵剛性率を、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の150℃における剛性率(LogG'after)とする。
【0027】
また、前記エポキシ樹脂組成物は、下記(c)の要件を満足することが好ましい。
(c)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板のガラス転移温度が、150〜200℃であること。
【0028】
エポキシ樹脂組成物が前記(c)の要件を満足することにより、得られる強化繊維強化樹脂製ロールは、ゴム被覆層を設けるときの加硫工程のような高温条件下にも耐えうるものになる。
【0029】
ここで、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板のガラス転移温度は、以下のようにして求めることができる。
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得る。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製する。動的粘弾性測定装置を使用して、この試験片を5℃/STEPで昇温しながら、試験片に10ラジアン/秒の速度で剪断力を加えて、試験片の貯蔵剛性率の温度依存性を測定する。この貯蔵剛性率の温度依存性の曲線のガラス状態領域での接線と転移領域での接線との交点を、ガラス転移温度とする。
【0030】
本発明における強化繊維強化樹脂層のマトリックス樹脂として用いられるエポキシ樹脂組成物としては、常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)20〜59重量%、前記(式1)〜(式4)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位が骨格をなすエポキシ樹脂組成物(B)25〜50重量%、架橋ゴム微粒子変性エポキシ樹脂(C)15〜40重量%、および前記エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との混合物に溶解可能な熱可塑性樹脂(D)1〜10重量%からなる樹脂成分(X)と、該樹脂成分(X)100重量部に対して20〜50重量部のジアミノジフェニルスルホン(E)とを含有し、かつエポキシ樹脂組成物の60℃の粘度が、500〜3000ポイズであるエポキシ樹脂組成物を挙げることができる。
【0031】
また、前記エポキシ樹脂組成物としては、さらに、前記エポキシ樹脂(B)以外で、かつ軟化点が70℃以上であるエポキシ樹脂(F)を、前記樹脂成分(X)100重量部に対して5〜50重量部含有しているエポキシ樹脂組成物を挙げることができる。
【0032】
前記常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)(以下、成分(A)と記す)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
【0033】
成分(A)は、前記樹脂成分(X)中に20〜59重量%含まれるように配合される。成分(A)が20重量%未満では、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ、プリプレグ化時のエポキシ樹脂組成物の含浸が不十分となったり、タックがなくなりすぎたりする。また、プリプレグが固くなり、成形後に目的とする物性が得られないので好ましくない。一方、成分(A)が59重量%を超えると、逆にエポキシ樹脂組成物の粘度が低くなり、タックが強すぎたり、成形時の樹脂フローが多くなったりして、成形後に目的とする物性が得られないので好ましくない。
【0034】
また、成分(A)として、エポキシ当量(g/eq)が200以下のものを用いることが好ましい。エポキシ当量(g/eq)が200以下の成分(A)は、エポキシ樹脂組成物の粘度をプリプレグ用のマトリックス樹脂に必要とされる適当な粘度レベルに維持し、かつ架橋ゴム微粒子変性エポキシ樹脂(C)を良好に分散させることができる。
【0035】
前記エポキシ樹脂組成物(B)(以下、成分(B)と記す)は、前記(式1)〜(式4)で表される、ジシクロペンタジエン骨格、ナフタレン骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格のうち少なくとも1つを繰り返し単位として有するエポキシ樹脂である。
剛直な骨格を有する成分(B)が配合されたエポキシ樹脂組成物は、これを硬化したときに、架橋密度を極端に高めることなく、優れた耐熱性を有する成形物となる。そのため、成分(B)をエポキシ樹脂組成物中に配合することよって、残留応力が小さな硬化成形品が得られ、吸湿サイトが少なくなることにより、耐湿性が向上した強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができる。
【0036】
成分(B)は、前記樹脂成分(X)中に25〜50重量%含まれるように配合される。成分(B)が25重量%未満では、架橋密度が極端に高くなることなく、優れた耐熱性を有する硬化成形品からなる強化繊維強化樹脂製ロールが得られ難くなる。成分(B)が50重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下し、硬化成形品の靱性が低下する。
【0037】
成分(B)のうち、前記(式1)で表される繰り返し単位、すなわちジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のHP7200、東都化成(株)製のEX1257等の市販品が挙げられる。
【0038】
前記(式2)で表される繰り返し単位、すなわちナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業(株)製のHP4032等の市販品が挙げられる。
【0039】
前記(式3)で表される繰り返し単位、すなわちビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂としては、油化シェルエポキシ(株)製のYX4000H、YL6121H等の市販品が挙げられる。
【0040】
前記(式4)で表される繰り返し単位、すなわちフルオレン骨格を有するエポキシ樹脂としては 新日鐵化学(株)製のESF−300、油化シェルエポキシ(株)製のHPT1079等の市販品が挙げられる。
【0041】
前記架橋ゴム微粒子変性エポキシ樹脂(C)(以下、成分(C)と記す)とは、エポキシ樹脂を平均粒径1.0μm以下の架橋ゴム微粒子で変性したエポキシ樹脂であり、エポキシ樹脂組成物に残留応力抑制効果を付与する機能を果たす。そのため、成分(C)をエポキシ樹脂組成物中に配合することによって、残留応力が小さな硬化成形品が得られ、吸湿サイトが少なくなることにより、耐湿性が向上した強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができる。
【0042】
また、成分(C)のように、あらかじめ架橋してある架橋ゴム微粒子で変性したエポキシ樹脂は、これが配合されたエポキシ樹脂樹脂組成物を硬化させて得られる硬化成形品に十分な耐熱性を付与する。
これに対して、未架橋の液状ゴム、例えば、末端カルボキシル化ブタジエンーアクリロニトリルゴム(CTBN)のようなゴム粒子は、エポキシ樹脂組成物への残留応力抑制効果の付与が不十分となるだけではなく、これが配合されたエポキシ樹脂樹脂組成物を硬化させて得られる硬化成形品への耐熱性の付与も不十分となる。
【0043】
成分(C)は、前記樹脂成分(X)中に15〜40重量%含まれるように配合される。成分(C)が15重量%未満では、エポキシ樹脂組成物への残留応力抑制効果の付与が十分でなくなる。成分(C)が40重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、これを含浸させたプリプレグの取扱い性が低下する。さらに、これを硬化成形した成形品である強化繊維強化樹脂製ロールの剛性や耐熱性も低下する。
【0044】
成分(C)に用いられる架橋ゴム微粒子の平均粒径が1.0μmを超えると、プリプレグを硬化成形して強化繊維強化樹脂製ロールにするときに、この架橋ゴム微粒子が強化繊維の間に入って行き難くなり、均質な硬化成形品からなる強化繊維強化樹脂製ロールが得られ難くなる。このため成分(C)としては、平均粒径1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下の架橋ゴム微粒子で変性されたエポキシ樹脂を使用する。
【0045】
成分(C)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂中に平均粒径1.0μm以下の架橋ゴム微粒子を配合して部分的に反応させてある樹脂組成物の市販品、例えば、BPA328(日本触媒(株)製)、BPF307(日本触媒(株)製)、BPA601(日本触媒(株)製)、架橋NBR変性エポキシ樹脂(日本合成ゴム(株)製)等が挙げられる。
【0046】
前記熱可塑性樹脂(D)(以下、成分(D)と記す)とは、成分(A)と成分(B)との混合物に溶解可能な熱可塑性樹脂であり、例えば、ポリビニルフォルマール、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等が挙げられる。中でも、ポリビニルフォルマール、フェノキシ樹脂が好適である。この成分(D)は、単一の樹脂であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0047】
成分(D)は、前記樹脂成分(X)中に1〜10重量%、好ましくは2〜6重量%含まれるように配合される。成分(D)の配合量が1重量%未満では、エポキシ樹脂組成物を含浸させたプリプレグのタックが強すぎたり、成形時の樹脂フローが多くなったりして、成形後に目的とする物性が得られないので好ましくない。成分(D)が10重量%を超えると、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなり、これを含浸させたプリプレグの取扱い性が低下するため好ましくない。
【0048】
前記成分(B)以外で、かつ軟化点が70℃以上であるエポキシ樹脂(F)(以下、(F)成分と記す)は、エポキシ樹脂組成物の低温での硬化特性を犠牲にすることなく、その流動性を抑制する機能を果たすものであり、エポキシ樹脂組成物の室温での取扱い性を良好にする。
成分(F)の軟化点が70℃未満では、エポキシ樹脂組成物の室温での取扱い性を適度なものにする作用が果たされなくなる。
【0049】
成分(F)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、イソシアナート変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。成分(F)は、単一の樹脂であってもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
【0050】
成分(F)は、前記樹脂成分(X)100重量部に対して5〜50重量部配合されることが好ましい。成分(F)の配合量が5重量部未満では、エポキシ樹脂組成物の室温での取扱い性が悪くなり、この樹脂組成物を含浸させたプリプレグのタックが強すぎたり、成形時の樹脂フローが多くなったりして、成形後に目的とする物性が得られないので好ましくない。成分(F)が50重量部を超えると、エポキシ樹脂組成物が固くなり、この樹脂組成物を含浸させたプリプレグの含浸が不十分であったり、タックがなくなりすぎたり、プリプレグが固くなり、成形後に目的とする物性が得られないので好ましくない。
【0051】
成分(F)は、エポキシ樹脂組成物全体の硬化性を考慮すると、エポキシ当量(g/eq)が200〜10000のものを使用するのが好ましく、より好ましくはエポキシ当量(g/eq)が250〜700のものである。
【0052】
前記ジアミノジフェニルスルフォン(E)(以下、成分(E)と記す)は硬化剤である。
成分(F)は、前記樹脂成分(X)100重量部に対して20〜50重量部配合される。これによって、前記(c)の要件を満足するエポキシ樹脂組成物を得やすくなる。
【0053】
また、エポキシ樹脂組成物の60℃の粘度は、500〜3000ポイズであることが好ましい。60℃の粘度が500ポイズ未満では、タック性が強すぎたり、あるいはこれを強化繊維に含浸して得られるプリプレグの硬化成形時に、フロー樹脂が多くなったりして、好ましい物性を有する硬化成形品からなる強化繊維強化樹脂製ロールを成形しにくくなる。60℃の粘度が3000ポイズを超えると、これを強化繊維に含浸させてプリプレグにするときの含浸性が悪化し、エポキシ樹脂組成物が均一に含浸されているプリプレグを得にくくなる。
【0054】
ここで、エポキシ樹脂組成物の粘度とは、動的粘弾性測定装置の直径25mmの2枚のディスクプレート(ディスクプレート間隔0.5mm)間に、調製したエポキシ樹脂組成物を充填し、雰囲気温度60℃にて、シェア速度10ラジアン/秒の条件下で測定したレオメータ粘度である。
【0055】
本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは エポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として、前記2種類の長繊維強化繊維に含浸させて2種類のプリプレグを作製し、これらプリプレグを積層し、硬化成形して製造される。
【0056】
本発明の強化繊維強化樹脂製ロールの製造に用いられるプリプレグは、前記長繊維強化繊維とエポキシ樹脂組成物からなるものであれば、形態、配列については限定されず、一方向に引き揃えた長繊維、クロス(織物)、トウ、マット、ニット、スリーブの形態で使用することができる。
【0057】
本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは、例えば、マンドレル上に前記プリプレグあるいは積層プリプレグを、必要に応じて、その全長あるいは一部分に内側からアングル層、ストレート層を組み合わせて所望の枚数巻き付け、加熱、加圧処理により成形して製造することができる。このとき、プリプレグの厚み、繊維目付、樹脂含有率等は特に限定されないが、各層の必要な厚み、巻き径から適宜選択される。
【0058】
プリプレグの硬化成形は、例えば、金型等を用いたコンプレッション成形、オートクレーブ成形、真空バッグ成形、テープラッピング成形等によって行うことができる。
【0059】
本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは 新聞輪転機用ロールに特に好適なものであるが、これに限らず、種々の管状の製品に適用できることは勿論のことである。
【0060】
【実施例】
以下、本発明の強化繊維強化樹脂製ロールの具体的な構成を実施例に基づいて説明し、併せてその性能を比較例の炭素繊維強化樹脂製ロールと比較して示す。
【0061】
[成分(A)]
EP828:油化シェルエポキシ株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート828(エポキシ当量:184〜194、常温で液状)
EP807:油化シェルエポキシ株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エピコート807(エポキシ当量:160〜170、常温で液状)
【0062】
[成分(B)]
HP7200:大日本インキ化学工業株式会社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量:264、常温で固体状)
【0063】
[成分(C)]
BPF307:日本触媒株式会社製、平均粒径0.3μmの架橋アクリルゴム微粒子とビスフェノールF型エポキシ樹脂との反応物、推定架橋ゴム含有量20重量%
【0064】
[成分(D)]
PVF:チッソ株式会社製、ポリビニルフォルマール樹脂、ビニレックE
[成分(E)(硬化剤)]
DDS:ジアミノジフェニルスルフォン
DICY:油化シェルエポキシ株式会社製、ジシアンジアミド、エピキュアDICY7(分子量:84)
DCMU:保土谷化学工業株式会社製、ジクロロジメチルウレア、DCMU−99(分子量:233)
【0065】
[成分(F)]
EP1002:油化シェルエポキシ株式会社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エピコート1002(エポキシ当量:600〜700、常温で固体状、軟化点:78℃)
N775:大日本インキ化学工業株式会社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピクロンN775(軟化点:70〜80℃)
XAC4151:旭チバ株式会社製、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂(エポキシ当量:412、常温で固体状、軟化点:104℃)
【0066】
[レオメータ粘度の測定]
レオメトリック・ファー・イースト(株)製の動的粘弾性測定装置RDA−700の直径25mmの2枚のディスクプレート(ディスクプレート間隔0.5mm)間に、調製したエポキシ樹脂組成物を充填し、雰囲気温度60℃にて、シェア速度10ラジアン/秒の条件下で測定した。
【0067】
[吸水率の測定]
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製した。この試験片について、平山製作所製のプレッシャークッカー試験装置PC−305RSを使用して、150℃、飽和蒸気圧下での60時間の耐湿熱試験を行い、耐湿熱試験後の試験片の吸水率(重量%)を測定した。
【0068】
[剛性率の保持率の測定]
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製した。レオメトリック・ファー・イースト(株)製の動的粘弾性測定装置RDA−700を使用して、この試験片を5℃/STEPで昇温しながら、試験片に10ラジアン/秒の速度で剪断力を加えて、試験片の貯蔵剛性率の温度依存性を測定した。このときの150℃における貯蔵剛性率を、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の150℃における剛性率(LogG'before)とした。
【0069】
ついで、前記硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットしてあらたに試験片を作製した。この試験片について、平山製作所製のプレッシャークッカー試験装置PC−305RSを使用して、150℃、飽和蒸気圧下での60時間の耐湿熱試験を行った。耐湿熱試験後の試験片の貯蔵剛性率の温度依存性をレオメトリック・ファー・イースト(株)製の動的粘弾性測定装置RDA−700によって測定した。このときの150℃における貯蔵剛性率を、エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板の150℃における剛性率(LogG'after)とした。
前記(LogG'before)と(LogG'after)の比(LogG'after/LogG'before)に100をかけた値を剛性率の保持率とした。
【0070】
[ガラス転移温度の測定]
エポキシ樹脂組成物を180℃、3時間の硬化条件下で成形し、厚さ2mmの硬化樹脂板を得た。この硬化樹脂板を60mm長×12mm幅にカットして試験片を作製した。レオメトリック・ファー・イースト(株)製の動的粘弾性測定装置RDA−700を使用して、この試験片を5℃/STEPで昇温しながら、試験片に10ラジアン/秒の速度で剪断力を加えて、試験片の貯蔵剛性率の温度依存性を測定した。この貯蔵剛性率の温度依存性の曲線のガラス状態領域での接線と転移領域での接線との交点を、ガラス転移温度とした。
【0071】
[強化繊維強化樹脂製ロールのたわみ量の測定]
以下に示す条件で、強化繊維強化樹脂製ロールに荷重をかけ、3点曲げ試験を行うことにより中央の変位量(たわみ量)を測定した。
条件:支持間スパン1600mm、荷重間スパン200mm、荷重1471N
【0072】
[実施例1]
(1)エポキシ樹脂組成物(マトリックス樹脂)の調製
EP807(成分(A))20重量部と、BPF307(成分(C))25重量部と、DDS(成分(E))35重量部とを均一に混合した混合物に、EP828(成分(A))15重量部と、HP7200(成分(B))37重量部と、PVF(成分(D))3重量部と、XAC4151(成分(F))37重量部とを均一に混合した混合物を添加し、これを混練することにより、60℃のレオメータ粘度が1880ポイズのエポキシ樹脂組成物を得た。
【0073】
このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化樹脂板の耐湿熱試験後の吸水率は3.3重量%であり、同じく耐湿熱試験後の150℃における剛性率の保持率(%)は97.6であった。また、このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化樹脂板のガラス転移温度は166℃であった。
【0074】
(2)プリプレグの作製
前記エポキシ樹脂組成物をロールコーターを用いて離型紙上に塗布し、樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に引き揃えた炭素繊維と樹脂フィルムを重ね、これを加熱加圧して炭素繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させ、以下のプリプレグを作製した。
プリプレグ(I):炭素繊維目付175g/m2 、炭素繊維としてK13710(三菱化学(株)製、ピッチ系炭素繊維、引張弾性率653GPa)を使用、樹脂含有率33重量%
プリプレグ(II):炭素繊維目付125g/m2 、炭素繊維としてTR30S12L(三菱レイヨン(株)製、PAN系炭素繊維、引張弾性率235GPa)を使用、樹脂含有率25重量%
【0075】
(3)強化繊維強化樹脂製ロールの作製
前記プリプレグ(I)とプリプレグ(II)を、外径80mm、長さ2100mmのストレートマンドレルの上に、下記(i)〜(iv)に説明する手順に従って順次巻き付けた。
【0076】
(i)プリプレグ(II)を繊維方向がマンドレルの中心線に対して90°となるようにマンドレルに巻き付けた時、4層となるように、プリプレグ(II)を裁断した。このプリプレグをマンドレルに巻き付け、90°補強層を形成した。
(ii)プリプレグ(I)を繊維方向がマンドレルの中心線に対して0°となるように前記90°補強層上に巻き付けた時、11層となるように、プリプレグ(I)を裁断した。このプリプレグを90°補強層の上に巻き付け、第1ストレート層を形成した。
(iii)前記(i)、(ii)の巻き付け工程をさらに2回繰り返し、計45層のプリプレグ巻き付け層からなる積層体を得た。
(iv)プリプレグ(II)を繊維方向がマンドレルの中心線に対して90°となるように前記積層体に巻き付けた時、4層となるように、プリプレグ(II)を裁断し、前記積層体に巻き付け、最外層(研磨しろ)を形成した。
【0077】
以上の工程によって、プリプレグ(I)とプリプレグ(II)とによる合計49層の積層体を作製した後に、その最外層のストレート層の上から幅25mm、厚み30μmのPET製テープを3mmピッチで巻き付け、これを190℃の硬化炉中に240分入れ、加熱硬化した。
【0078】
冷却後、PET製テープをはぎ取り、さらにマンドレルを抜き取った後、両端部からそれぞれ30mmを切断除去し、長さ2000mm、外径99mmのロール素管を得た。
【0079】
このロール素管に荷重をかけたときのたわみ量を上記測定方法により実施した結果、たわみ量は0.317mmであった。これに自重たわみ0.092mmを加えた総たわみ量は0.409mmであり、このロール径に相当するスチール製のロールシェルの総たわみ量0.410mmとほぼ同等であった。
【0080】
このようにして得られたロール素管を幅70mmの輪切りにして、150℃飽和蒸気圧下で60時間の耐湿熱試験を行った。この耐湿熱試験後の素管の外観は良好であり、クラック等の欠陥は見られなかった。
【0081】
[比較例1]
(1)エポキシ樹脂組成物(マトリックス樹脂)の調製
EP828(成分(A))45重量部と、EP1002(成分(F))35重量部と、N775(成分(F))30重量部との均一混合物に、DICY(成分(E))6重量部と、DCMU(成分(E))4重量部との均一混合物を添加し、これを混練することにより、60℃のレオメータ粘度が810ポイズのエポキシ樹脂組成物を得た。
【0082】
このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化樹脂板の耐湿熱試験後の吸水率は5.3重量%であり、同じく耐湿熱試験後の150℃における剛性率の保持率(%)は87であった。また、このエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られた硬化樹脂板のガラス転移温度は140℃であった。
【0083】
(2)プリプレグの作製
実施例1と同じ方法で以下のプリプレグを作製した。
プリプレグ(III):炭素繊維目付175g/m2 、炭素繊維としてK13710(三菱化学(株)製、ピッチ系炭素繊維、引張弾性率653GPa)を使用、樹脂含有率33重量%
プリプレグ(IV):炭素繊維目付125g/m2 、炭素繊維としてTR30S12L(三菱レイヨン(株)製、PAN系炭素繊維、引張弾性率235GPa)を使用、樹脂含有率25重量%
【0084】
(3)強化繊維強化樹脂製ロールの作製
前記プリプレグ(III)とプリプレグ(IV)を、外径84mm、長さ2100mmのストレートマンドレルの上に、下記(i)〜(iii)に説明する手順に従って順次巻き付けた。
(i)プリプレグ(IV)を繊維方向がマンドレルの中心線に対して90°となるようにマンドレルに巻き付けた時、4層となるように、プリプレグ(IV)を裁断した。このプリプレグをマンドレルに巻き付け、90°補強層を形成した。
(ii)プリプレグ(III)を繊維方向がマンドレルの中心線に対して0°となるように前記90°補強層上に巻き付けた時、11層となるように、プリプレグ(III)を裁断した。このプリプレグを90°補強層の上に巻き付け、ストレート層を形成した。
(iii)前記(ii)の巻き付け工程をさらに2回繰り返し、計37層のプリプレグ巻き付け層からなる積層体を得た。
【0085】
以上の工程によって、プリプレグ(III)とプリプレグ(IV)とによる合計37層の積層体を作製した後に、その最外層のストレート層の上から幅25mm、厚み30μmのPET製テープを3mmピッチで巻き付け、これを190℃の硬化炉中に240分入れ、加熱硬化した。
冷却後、PET製テープをはぎ取り、さらにマンドレルを抜き取った後、両端部からそれぞれ30mmを切断除去し、長さ2000mm、外径99mmのロール素管を得た。
【0086】
実施例1と同様に、たわみ量を測定した結果、たわみ量は0.360mmであった。自重たわみ0.049mmを加えた総たわみ量は0.409mmであり、このロール径に相当するスチール製のロールシェルの総たわみ量0.410mmとほぼ同等であった。
【0087】
このロール素管を幅70mmの輪切りにして、150℃飽和蒸気圧下で60時間の耐湿熱試験を行ったところ、ロール素管外部の内径側にみみず腫れ状のクラックが発生し、ロール素管内部にも微小クラックが発生した。
【0088】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明の強化繊維強化樹脂製ロールは、引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(I)と、引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(II)とを積層してなり、前記引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維と前記引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維との重量比率が、2/3〜4/1であるので、スチール製のロールと同等の剛性を有する。
【0089】
また、前記エポキシ樹脂組成物が、上述の(a)の要件を満足すれば、スチール製のロールと同等の剛性を持ち、かつゴム被覆層を設ける時の加硫工程のような高温多湿の厳しい条件にも耐え得る強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができる。
また、前記エポキシ樹脂組成物が、上述の(b)の要件を満足すれば、スチール製のロールと同等の剛性を持ち、かつゴム被覆層を設ける時の加硫工程のような高温多湿の厳しい条件にも耐え得る強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができる。
また、前記エポキシ樹脂組成物が、上述の(c)の要件を満足すれば、ゴム被覆層を設けるときの加硫工程のような高温条件下にも十分耐えうる強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができる。
【0090】
また、前記エポキシ樹脂組成物が、前記成分(A)20〜59重量%、成分(B)25〜50重量%、成分(C)15〜40重量%、および成分(D)1〜10重量%からなる樹脂成分(X)と、該樹脂成分(X)100重量部に対して20〜50重量部のジアミノジフェニルスルホン(E)とを含有し、かつエポキシ樹脂組成物の60℃の粘度が、500〜3000ポイズである場合、剛性、耐熱性、耐湿性に優れた強化繊維強化樹脂製ロールを得ることができ、また、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させたプリプレグの取扱い性が良好となり、強化繊維強化樹脂製ロールを成形しやすくなる。
また、前記エポキシ樹脂組成物が、さらに、前記成分(F)を、前記樹脂成分(X)100重量部に対して5〜50重量部含有している場合、エポキシ樹脂組成物を強化繊維に含浸させたプリプレグの取扱い性がさらに良好となり、強化繊維強化樹脂製ロールを成形しやすくなる。
Claims (6)
- 引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(I)と、引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維を有し、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂組成物である1層以上の強化繊維強化樹脂層(II)とを積層してなり、
前記引張弾性率が600〜800GPaの長繊維強化繊維と前記引張弾性率が140〜300GPaの長繊維強化繊維との重量比率が、2/3〜4/1であることを特徴とする強化繊維強化樹脂製ロール。 - 前記エポキシ樹脂組成物が、下記(a)の要件を満足することを特徴とする請求項1記載の強化繊維強化樹脂製ロール。
(a)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置したときの吸水率が、3.5重量%以下であること。 - 前記エポキシ樹脂組成物が、下記(b)の要件を満足することを特徴とする請求項1または請求項2記載の強化繊維強化樹脂製ロール。
(b)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板を、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置した後の150℃における剛性率(LogG'after)と、150℃、飽和蒸気圧下に60時間放置する前の150℃における剛性率(LogG'before)との比(LogG'after/LogG'before)が、0.95以上であること。 - 前記エポキシ樹脂組成物が、下記(c)の要件を満足することを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の強化繊維強化樹脂製ロール。
(c)エポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂板のガラス転移温度が、150〜200℃であること。 - 前記エポキシ樹脂組成物が、常温で液状のビスフェノール型エポキシ樹脂(A)20〜59重量%、下記(式1)〜(式4)からなる群より選ばれる少なくとも1つの繰り返し単位が骨格をなすエポキシ樹脂組成物(B)25〜50重量%、架橋ゴム微粒子変性エポキシ樹脂(C)15〜40重量%、および前記エポキシ樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との混合物に溶解可能な熱可塑性樹脂(D)1〜10重量%からなる樹脂成分(X)と、該樹脂成分(X)100重量部に対して20〜50重量部のジアミノジフェニルスルホン(E)とを含有し、
かつエポキシ樹脂組成物の60℃の粘度が、500〜3000ポイズであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一項に記載の強化繊維強化樹脂製ロール。
- 前記エポキシ樹脂組成物が、さらに、前記エポキシ樹脂組成物(B)以外で、かつ軟化点が70℃以上であるエポキシ樹脂(F)を、前記樹脂成分(X)100重量部に対して5〜50重量部含有していることを特徴とする請求項5記載の強化繊維強化樹脂製ロール。
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