ところで、自動車の衝突等によりシートベルトからシート幅方向の内側に向けて強い力がサイドシールドに印加される場合がある。かかる場合に、サイドシールドが曲げ変形することにより可動カバー部材のサイドシールドとの係合が外れて可動カバー部材がサイドシールドから脱落する可能性がある。これを回避するために、特許文献1に記載された従来技術では、可動カバー部材に設けられた支持軸がサイドシールドに穿設された支持孔に回動可能に取付けられている。そして、可動カバー部材がシートベルトの一端取付部が取付けられる部分を被覆状態にあるとき支持孔から支持軸が軸方向に外れないように支持軸に径方向に突出して設けられた凸部が支持孔の外周縁部に係合している。これによって、サイドシールドの変形により可動カバー部材がシートベルトの一端取付部が取付けられる部分を被覆した状態からサイドシールドに対して回動しても支持軸の凸部が支持孔の外周縁部に係合して可動カバー部材がサイドシールドから脱落するのが抑制されている。しかし、特許文献1に記載の技術においては、サイドシールドに対して可動カバー部材を取付けるのに支持孔に対して支持軸を位置合わせして軸方向に差し込んでから回動させて取付ける必要があるため取付作業性が悪いという問題があった。
このような問題に鑑み本発明の課題は、シートベルトの一端取付部が取付けられる部分を被覆するカバー部材が取付けられたサイドシールドを有する乗物用シートにおいて、サイドシールドに対するカバー部材の取付作業性を向上した乗物用シートを提供することにある。
本発明の第1発明は、乗物用シートであって、着座乗員の身体を拘束するシートベルトと、シートクッションのシート幅方向側部を覆うサイドシールドと、を有し、該サイドシールドには前記シートベルトの前記シートクッションに対して固定された一端取付部を外部に露出可能とする開口部が設けられ、該開口部には前記一端取付部を外部から視認不能に覆うカバー部材が脱着可能に取付けられており、該カバー部材は前記開口部の上部外周縁部に設けられた上被係止部に上方から係止されてシート幅方向の移動を制限する上係止部と、前記カバー部材が前記上被係止部を中心に回動させられることにより前記開口部の下部外周縁部に設けられた下被係止部にシート幅方向外側から係止されて上下方向の移動を制限する下係止部と、を有することを特徴とする。
第1発明によれば、乗物用シートは、サイドシールドにシートベルトのシートクッションに対して固定された一端取付部を外部に露出可能とする開口部が設けられているのでシートベルトの一端取付部をシートクッションに取付けるのが容易となる。また、開口部を覆ってサイドシールドに取付けられたカバー部材は、上係止部がサイドシールドの上被係止部に係止されてシート幅方向の移動を制限され、下係止部がサイドシールドの下被係止部に係止されて上下方向の移動を制限されている。これによって、カバー部材は、サイドシールドに曲げ変形が加えられてもシート幅方向及び上下方向の移動を制限されるのでサイドシールドから離脱しにくい。さらに、カバー部材は、サイドシールドの上被係止部に上係止部を上方から係止した状態で、上被係止部を中心に下部をシート幅方向の外側から内側に向けて回動させ下係止部を下被係止部にシート幅方向外側から係止させればよいので取付作業性が良い。
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記上係止部は横断面が前後方向に長辺を有する略矩形状で上下方向に延びる板状体を有し、前記上被係止部は前記板状体が上下方向に挿通される横長貫通孔を有していることを特徴とする。
第2発明によれば、上係止部の板状体は上被係止部の横長貫通孔に挿入された状態で、カバー部材のシート幅方向の移動は制限されるが、カバー部材の上被係止部を中心としたシート幅方向への回動は許容される。これによって、上係止部は上被係止部に係止した状態で円滑にカバー部材をシート幅方向外側から内側に向かって回動させ下係止部を下被係止部に係止させることができる。
本発明の第3発明は、上記第1発明又は上記第2発明において、前記下被係止部は長辺が上下方向に延びる略矩形状の縦長貫通孔を有し、前記下係止部は前記縦長貫通孔に挿入されたとき前記縦長貫通孔の上下方向に延びる外周縁部によって前後方向に弾性的に押し狭められた後に復元して前記外周縁部に裏側から係合して抜け止めされる係合部が設けられていることを特徴とする。
第3発明によれば、下係止部は前後方向に弾性的に押し狭められた後に復元して外周縁部に裏側から係合して抜け止めされる係合部が設けられている。これによって、上下方向には挿入によって変形しないので下係止部の上下端部が縦長貫通孔の上下の外周縁部に直接当接してカバー部材のサイドシールドに対する上下方向の移動を効率よく制限できる。
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記下被係止部は前記カバー部材に一体的に形成された突起部にクリップが被せつけられて該クリップに前記係合部が形成されていることを特徴とする。
第4発明によれば、突起部に別部材のクリップを被せつける構造でクリップに係合部が形成されているので、前後方向に弾性的に押し狭められる弾性力をクリップの材質や形状で調整しやすい。
図1〜図5は、本発明の一実施形態を示す。各図中、矢印により自動車用シート1が自動車のフロアFに取付けられたときの自動車及び自動車用シート1の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
図1には、自動車用シート1の概略構成が示されている。自動車用シート1は、セダンタイプの自動車の前部右側座席として構成されている。自動車用シート1は、着座者の背凭れとなるシートバック2と、着座部となるシートクッション3と、を備えている。シートクッション3は、骨格をなすクッションフレーム3Fと、クッションフレーム3Fの上に載置されるクッション材としてのクッションパッド3Pと、クッションパッド3Pを覆う表皮材としてのクッションカバー3Cと、を有する。クッションフレーム3Fは、上方から見て矩形枠状の枠体3F1と、枠体3F1を左右一対のスライドレール4に対して連結する左右一対の前リンク部材(図示せず)と、左右一対の後リンク部材3F2と、を有する。これによって、シートクッション3は、スライドレール4によって、フロアFに対して前後方向の位置が調整可能とされているとともに、左右一対の前リンク部材と後リンク部材3F2によってフロアFに対して上下方向の位置が調整可能とされている。シートバック2は、その左右両サイドの下端部が、それぞれ、図示しないリクライナを介してシートクッション3の左右両サイドの後端部に連結されている。これによって、シートバック2は、シートクッション3に対して傾き角度が調整可能とされている。ここで、自動車用シート1が、特許請求の範囲の「乗物用シート」に相当する。
図1及び図2に示すように、シートクッション3の右側後部に着座乗員の身体を拘束するシートベルト装置40のウェビング41の一端部に取付けられた取付部材42が取付けられている。ウェビング41の他端部はリトラクターに巻き取られた状態で自動車ボデーに取付けられている。ウェビング41の中間部にはタングプレート(図示せず)が遊嵌状態で配設されており、タングプレートをシートクッション3の左側後部に配設されたバックル(図示せず)に係止することによって、シートベルト装置40は着座乗員の上体及び腰部を前方から拘束する。取付部材42は、金属製のプレートで中央にボルト孔42aが設けられ、このボルト孔42aにボルトを通してクッションフレーム3Fの右側の後リンク部材3F2に対して締結固定されている。ここで、ウェビング41と取付部材42が、それぞれ、特許請求の範囲の「シートベルト」と「一端取付部」に相当する。
図1及び図2に示すように、シートクッション3の右側側面部には、樹脂製のサイドシールド10が配設されている。サイドシールド10は、シートクッション3の右側側面部を右側から覆うメイン部11と、メイン部11の後端部側において上方に向かって延びてリクライナによるシートバック2とシートクッション3の連結部分を覆う後アッパ部12と、を有する。サイドシールド10は、概ね、シートクッション3の右側側面部に沿って延びる板状の平面部11aと、平面部11aの上端部から左方に向かって庇状に延びる上庇面部11bと、平面部11aの前端部から左方に向かって庇状に延びる前庇面部11cと、平面部11aの後端部から左方に向かって庇状に延びる後庇面部11dと、を有する形状をしている。サイドシールド10は、左側面(シート幅方向内側の面)に配設された複数の係止部(図示せず)をクッションフレーム3Fの枠体3F1に設けられた被係止部(図示せず)に係止することによりシートクッション3の右側側面部に取付けられている。メイン部11の平面部11aの前部には、リクライナを操作するリクライニング操作スイッチや、リフタ機構を操作するリフタ機構操作スイッチが設けられるスイッチベース(図示せず)が嵌め込まれて配設される略長円状の前開口部11a1が設けられている。メイン部11の後部には、平面部11aと上庇面部11bにわたってサイドシールド10をクッションフレーム3Fに対して取付けたときに、ウェビング41の取付部材42を取付ける部分である後リンク部材3F2を露出可能とする後開口部11a2が設けられている。
図2〜図5に示すように、後開口部11a2の上左端部から左側(シート幅方向内側)部分の上庇面部11bは前後方向に延びる上連結部11b1として形成され、後開口部11a2の下端部から下側部分の平面部11aは前後方向に延びる下連結部11a3として形成されている。後開口部11a2の上左端部に対応する上連結部11b1の右端部から下方に延びる内側立壁部11b2が形成され、後開口部11a2の上後端部に対応する上庇面部11bから下方に延びる後側立壁部11b3が形成され、後開口部11a2の上前端部に対応する上庇面部11bから下方に延びる前側立壁部11b4が形成されている。後開口部11a2の下後端部に対応する平面部11a、後開口部11a2の下端部に対応する平面部11a、後開口部11a2の下前端部に対応する平面部11aには、それぞれ、左方に向かって後述するカバー部材20の板厚分だけ凹む後段差部11a4、下段差部11a5、前段差部11a6が設けられている。内側立壁部11b2、後側立壁部11b3及び前側立壁部11b4の下端部と、後段差部11a4、下段差部11a5及び前段差部11a6の開口内側端部によって後内側開口部11a7が形成される。シートクッション3にサイドシールド10とウェビング41の取付部材42が取付けられたとき、取付部材42は後内側開口部11a7から外部に露出する。ここで、後側立壁部11b3と前側立壁部11b4が、特許請求の範囲の「上部外周縁部」に相当し、後段差部11a4と前段差部11a6が、特許請求の範囲の「下部外周縁部」に相当する。また、後内側開口部11a7が、特許請求の範囲の「開口部」に相当する。
図2〜図5に示すように、後側立壁部11b3には前方に向けて突出する上後被係止部11b5が設けられている。上後被係止部11b5は、水平方向に延びる上方から見て三角形状のベース部11b51と、ベース部11b51の左端部側を後側立壁部11b3に対して筋交い状に補強する補強部11b52と、を有する。ベース部11b51には、上方から見て長軸を前後方向とする矩形状の貫通孔11b53が形成されている。貫通孔11b53の大きさは、後述するカバー部材20の上後係止部22dの係止片22d3が遊嵌できる大きさにされている。前側立壁部11b4には後方に向けて突出する上前被係止部11b6が設けられている。上前被係止部11b6は、水平方向に延びる上方から見て矩形状のベース部11b61と、ベース部11b61の外周縁部から上方に延びて補強する補強部11b62と、を有する。ベース部11b61には、上方から見て長軸を前後方向とする矩形状の貫通孔11b63が形成されている。貫通孔11b63の大きさは、後述するカバー部材20の上前係止部22eの係止片22e3が遊嵌できる大きさにされている。ここで、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6が、特許請求の範囲の「上被係止部」に相当する。また、貫通孔11b53と貫通孔11b63が、特許請求の範囲の「横長貫通孔」に相当する。
後段差部11a4の開口内側端部の下部には、前方に向けて突出する下後被係止部11a8が設けられている。下後被係止部11a8は、水平方向に対して垂直で平面部11aに沿って延びる右方から見て長軸を上下方向とする矩形状のベース部11a81を有する。ベース部11a81には、右方から見て長軸を前後方向とする矩形状の貫通孔11a82が形成されている。貫通孔11a82の大きさは、後述するカバー部材20の下後係止部21dの基体部21d1及びクリップ30に対応した大きさにされている。前段差部11a6の開口内側端部の下部の下後被係止部11a8の若干上方には、後方に向けて突出する下前被係止部11a9が設けられている。下前被係止部11a9は、サイドシールド10にカバー部材20が取付けられたとき、カバー部材20の左側面(シート幅方向内側面)に沿う形状のベース部11a91を有する。ベース部11a91には、右方から見て長軸を前後方向とする矩形状の貫通孔11a92が形成されている。貫通孔11a92の大きさは、後述するカバー部材20の下前係止部21eの基体部21e1及びクリップ30に対応した大きさにされている。下後被係止部11a8と下前被係止部11a9の上下方向の高さが異なっているのは、サイドシールド10の形状による制約や他の部品との干渉を避けるための制約があるためであり、それらの制約がなければ同一の高さにすることができる。ここで、下後被係止部11a8と下前被係止部11a9が、特許請求の範囲の「下被係止部」に相当する。また、貫通孔11a82と貫通孔11a92が、特許請求の範囲の「縦長貫通孔」に相当する。
図2〜図5に示すように、カバー部材20は樹脂製の部材でその外形は、サイドシールド10の後開口部11a2に対して上左端部以外の部分が当接して取付けられるような形状とされている。カバー部材20は、サイドシールド10の後開口部11a2を覆うように取付けられたとき、サイドシールド10の平面部11aに滑らかに連続してつながる平面部21と、サイドシールド10の上庇面部11bに滑らかに連続してつながる上庇面部22と、を有する。平面部21は、下後端部21aと、下端部21bと、下前端部21cと、を有する。上庇面部22は、上左端部22aと、上後端部22bと、上前端部22cと、を有する。カバー部材20が、サイドシールド10の後開口部11a2を覆うように取付けられたとき、下後端部21aは後段差部11a4に、下端部21bは下段差部11a5に、下前端部21cは前段差部11a6に、嵌まり込む。また、上後端部22bは後側立壁部11b3の上端部に当接し、上前端部22cは前側立壁部11b4の上端部に当接し、上左端部22aは内側立壁部11b2の上端部に対して間隙23を有して対向する。間隙23には、シートベルト装置40のウェビング41が通される。
図3〜図5に示すように、カバー部材20の上庇面部22の下面には、後側に下方に突出する上後係止部22dが、前側に下方に突出する上前係止部22eが、設けられている。上後係止部22dと上前係止部22eは、それぞれ、サイドシールド10の上後被係止部11b5と上前被係止部11b6に対応した位置に設けられている。上後係止部22dと上前係止部22eは、実質的に同一の形状なので、代表として上後係止部22dについて説明し、上前係止部22eについては図面に対応する符号を付して説明を省略する。上後係止部22dは、水平方向に延びる基部22d1と、基部22d1を前後端部で上庇面部22の下面に対して支持する支持部22d2と、基部22d1の左端部から下方に延びて形成された係止片22d3と、を有する。係止片22d3は、横断面が長軸を前後方向とする矩形状に形成され、サイドシールド10の貫通孔11b53に遊嵌できるものとなっている。係止片22d3を貫通孔11b53の中に挿入したとき、基部22d1の下面はベース部11b51の上面に当接する。この状態でカバー部材20は、サイドシールド10に対し貫通孔11b53を中心として上下方向に(図4において時計回り又は反時計回りに)回動可能とされている。上前係止部22eについても上後係止部22dと同様であり、係止片22e3を貫通孔11b63の中に挿入したとき、基部22e1の下面はベース部11b61の上面に当接する。この状態でカバー部材20は、サイドシールド10に対し貫通孔11b63を中心として上下方向に(図4において時計回り又は反時計回りに)回動可能とされている。すなわち、係止片22d3と係止片22e3を、それぞれ、貫通孔11b53と貫通孔11b63に挿入した状態でカバー部材20は、サイドシールド10に対し貫通孔11b53と貫通孔11b63を中心として上下方向に(図4において時計回り又は反時計回りに)回動可能とされている。ここで、上後係止部22dと上前被係止部11b6が、特許請求の範囲の「上係止部」に相当する。また、係止片22d3と係止片22e3が、特許請求の範囲の「板状体」に相当する。
図3〜図5に示すように、カバー部材20の平面部21の左面には、後側に左方に突出する下後係止部21dが、前側に左方に突出する下前係止部21eが、設けられている。下後係止部21dと下前係止部21eは、それぞれ、サイドシールド10の下後被係止部11a8と下前被係止部11a9に対応した位置に設けられている。下後係止部21dと下前係止部21eは、実質的に同一の形状なので、代表として下後係止部21dについて説明し、下前係止部21eについては図面に対応する符号を付して説明を省略する。下後係止部21dは、カバー部材20の平面部21に一体で形成され左方に突出する基体部21d1にクリップ30が被せつけられて形成されている。基体部21d1は、その主体である基体面部21d11が、平面部21の左面に対し垂直かつ水平面に対し垂直で、後方から見て上左コーナ部が面取りされた略矩形状の板状体として形成されている。この面取りは、下後係止部21dを下後被係止部11a8の貫通孔11a82に挿入しやすくするためのものである。そして、基体面部21d11の左右方向の中央下部には長軸を上下方向とする矩形状の貫通孔21d12が設けられている。基体面部21d11には、前後方向の曲げ剛性を確保するために上部と下部に基体面部21d11に対して垂直な立壁である補強リブ21d13が設けられている。補強リブ21d13の右端部は、カバー部材20の剛性を確保するためにカバー部材20の平面部21の左面に右方に向けて立設された複数のリブ21fの一部に連結されている。ここで、下後係止部21dと下前係止部21eが、特許請求の範囲の「下係止部」に相当する。また、基体部21d1と基体部21e1が、特許請求の範囲の「突起部」に相当する。
図3〜図5に示すように、クリップ30は、横断面が略U字状で上下方向に基体部21d1の上下の補強リブ21d13間の長さ延びる樹脂部材として形成されている。詳しくは、図5に示すように横断面の外形において、先端部31において前後長が貫通孔11a82の前後長より短く、中央部32において前後長が貫通孔11a82の前後長より長く形成され、先端部31と反対側端部に中央部32と同じ前後長の外突起部33が設けられた形状をしている。先端部31から中央部32にかけて前後長が滑らかに大きくなり、中央部32と外突起部33の間は短くなるようにくびれている。横断面の内形において、中央部32に対応する部分に対向して近接するように内側に向かって延びる一対の内突起部34が設けられ、その他の部分は前後に離隔している。基体部21d1の上下の補強リブ21d13間の基体面部21d11にクリップ30を外突起部33の側から差し込むと、内突起部34が基体面部21d11の貫通孔21d12に入ってクリップ30が基体部21d1に取付けられる。このとき、内突起部34の対向する先端部同士は隙間を有して対向している。これによって、クリップ30は中央部32の前後長を短くする方向に弾性変形が可能である。基体部21d1にクリップ30が取付けられて下後係止部21dが構成される。同様に、基体部21e1にクリップ30が取付けられて下前係止部21eが構成される。ここで、中央部32が、特許請求の範囲の「係合部」に相当する。
カバー部材20の係止片22d3と係止片22e3を、それぞれ、サイドシールド10の貫通孔11b53と貫通孔11b63に挿入した状態でカバー部材20を図4において貫通孔11b53と貫通孔11b63を中心として時計回りに回動させる。すると、カバー部材20の下後係止部21dと下前係止部21eは、それぞれ、サイドシールド10の貫通孔11a82と貫通孔11a92に挿入される。このとき、下後係止部21dと下前係止部21eのクリップ30は、それぞれ、中央部32の前後長を短くする方向に弾性変形して貫通孔11a82と貫通孔11a92を通過したのち復元して中央部32と外突起部33の間の部分が貫通孔11a82と貫通孔11a92に挿入された状態となる。これによって、カバー部材20はサイドシールド10に取付けられる。このとき、カバー部材20の下後係止部21dと下前係止部21eは、それぞれ、基体面部21d11と基体面部21e11の上端部及び下端部がサイドシールド10の貫通孔11a82と貫通孔11a92の上端縁部及び下端縁部に当接しているのでカバー部材20に上方向の力が印加されてもサイドシールド10から外れにくい。
自動車用シート1は、次のようにフロアFに対して取付けられる。予め、シートクッション3、シートバック2、スライドレール4を組み立てた状態で、シートクッション3の右側側面部にサイドシールド10を取付けておく。これを、フロアF上に載置してスライドレール4をフロアFに固定するとともに、シートベルト装置40のウェビング41の一端部に取付けられた取付部材42をクッションフレーム3Fの右側の後リンク部材3F2に対してボルトで締結固定する。このとき、この締結作業は、サイドシールド10の後内側開口部11a7を通して行われる。そして最後に、後開口部11a2を覆うようにカバー部材20を取付ける。
以上のように構成される本実施形態は、以下のような作用効果を奏する。サイドシールド10には、ウェビング41の一端部に取付けられた取付部材42をクッションフレーム3Fに取付ける部分を外部に露出可能とする後内側開口部11a7が設けられているので取付部材42をシートクッション3に取付けるのが容易となる。サイドシールド10に取付けられたカバー部材20は、上後係止部22dと上前係止部22eが、それぞれ、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6に係止されて左右方向の移動を制限され、下後係止部21dと下前係止部21eが、それぞれ、下後被係止部11a8と下前被係止部11a9に係止されて上下方向の移動を制限される。これによって、ウェビング41に強い力が印加されサイドシールド10の上連結部11b1及び内側立壁部11b2に曲げ変形が加えられても、カバー部材20のサイドシールド10に対する左右方向及び上下方向の移動が制限され、カバー部材20がサイドシールド10から離脱しにくい。さらに、カバー部材20は、上後係止部22dと上前係止部22eが、それぞれ、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6に係止された状態で、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6を中心に下部を図4において時計回りに回動させ、下後係止部21dと下前係止部21eを、それぞれ、下後被係止部11a8と下前被係止部11a9に係止させればよいので取付作業性が良い。
また、係止片22d3と係止片22e3は、横断面が前後方向に長辺を有する略矩形状で上下方向に延びる板状体であり、貫通孔11b53と貫通孔11b63は、前後方向に長辺を有する略矩形状の横長貫通孔として形成されている。係止片22d3と係止片22e3は、それぞれ、貫通孔11b53と貫通孔11b63に挿入された状態でカバー部材20の左右方向への移動は制限されるが、カバー部材20の上後被係止部11b5と上前被係止部11b6を中心とした左右方向への回動は許容される。これによって、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6は、それぞれ、上後被係止部11b5と上前被係止部11b6に係止した状態で円滑にカバー部材20を図4において時計回りに回動させ、下後係止部21dと下前係止部21eを、それぞれ、下後被係止部11a8と下前被係止部11a9に係止させることができる。
さらに、貫通孔11a82と貫通孔11a92は長辺が上下方向に延びる略矩形状の縦長貫通孔であり、下後係止部21dと下前係止部21eには、それぞれ、クリップ30が取付けられている。クリップ30は、貫通孔11a82又は貫通孔11a92に挿入されたとき中央部32が前後方向に弾性的に押し狭められた後に復元して貫通孔11a82又は貫通孔11a92の外周縁部に左側から係合して抜け止めされる。クリップ30は、上下方向には挿入によって変形せず、基体面部21d11と基体面部21e11の上端部及び下端部が、それぞれ、サイドシールド10の貫通孔11a82と貫通孔11a92の上端縁部及び下端縁部に直接当接してカバー部材20のサイドシールド10に対する上下方向の移動を効率よく制限できる。
加えて、下後係止部21dと下前係止部21eは、それぞれ、基体面部21d11と基体面部21e11にクリップ30が被せつけられて形成されているので、前後方向に弾性的に押し狭められる弾性力をクリップ30の材質や形状で調整しやすい。
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、次のようなものが挙げられる。
1.上記実施形態においては、下後係止部21dと下前係止部21eを、それぞれ、基体面部21d11と基体面部21e11にクリップ30を被せつけて形成した。しかし、これに限らず、基体部21d1と基体部21e1に前後方向に弾性的に押し狭められて貫通孔11a82又は貫通孔11a92の外周縁部に左側から係合して抜け止めされる部分を一体的に形成してもよい。
2.上記実施形態においては、係止片22d3と係止片22e3を横断面が前後方向に長辺を有する略矩形状で上下方向に延びる板状体として形成した。しかし、これに限らず、係止片22d3と係止片22e3に左右方向に弾性的に押し狭められて貫通孔11b53と貫通孔11b63の外周縁部に下側から係合して抜け止めされる部分を形成することもできる。この場合、カバー部材20をサイドシールド10に対して円滑に回動させることが若干阻害される。
3.上記実施形態においては、本発明を自動車用シート1に適用したが、これに限らず、本発明を自動車以外の、船、電車、飛行機等に搭載のシートに適用してもよい。