[本開示の実施形態の概要]
まず、本開示の実施形態の概要について説明する。
(1)本開示に係る炭化珪素半導体装置100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、第1電極60と、第2電極70とを備えている。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素基板10は、第1導電型を有する第1不純物領域11と、第1不純物領域11上に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型を有する第2不純物領域12と、第1不純物領域11から隔てられるように第2不純物領域12上に設けられ、かつ第1導電型を有する第3不純物領域13とを含んでいる。第1主面1には、第3不純物領域13および第2不純物領域12を貫通して第1不純物領域11に至る側面3と、側面3と連なる底面4とにより規定されるゲートトレンチ5が設けられている。炭化珪素基板10は、第1不純物領域11および第2不純物領域12の双方に接し、第2不純物領域12よりも第2主面2側にあり、かつ第2導電型を有する第4不純物領域14と、第1不純物領域11および第4不純物領域14の双方に接し、第4不純物領域14よりも第2主面2側にあり、かつ第2導電型を有する第5不純物領域15と、底面4と第2主面2との間にあり、第1不純物領域11を挟んで第5不純物領域15と対向し、かつ第2導電型を有する第6不純物領域16とをさらに含んでいる。第5不純物領域15は、第6不純物領域16と対向する側端面52を有している。第4不純物領域14は、第2主面2と平行な方向において、側端面52よりもゲートトレンチ5に向かって延在する張り出し部41を含んでいる。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。第1電極60は、第1主面1に接する。第2電極70は、第2主面2に接する。第2不純物領域12における不純物濃度は、5×1017cm-3以上である。第2主面2に垂直な断面において、第1不純物領域11と第2不純物領域12と側面3とが接する第1位置Aと、第2主面2に最も近い側端面52の第2位置Bとを通る直線Lは、第4不純物領域14および第6不純物領域16の各々から離間しており、かつ第4不純物領域14と第6不純物領域16との間に位置している。
上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100によれば、第4不純物領域14は、第2主面2と平行な方向において、側端面52よりもゲートトレンチ5に向かって延在する張り出し部41を含んでいる。これにより、チャネル領域およびゲートトレンチ5の下部に対して電界が侵入することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜81の底部における電界集中を緩和することができる。また上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100によれば、第2主面2に垂直な断面において、第1不純物領域11と第2不純物領域12と側面3とが接する第1位置Aと、第2主面2に最も近い側端面52の第2位置Bとを通る直線Lは、第4不純物領域14および第6不純物領域16の各々から離間しており、かつ第4不純物領域14と第6不純物領域16との間に位置している。これにより、チャネル領域からの電流を第1不純物領域11全体に効率的に拡散させることができる。結果として、炭化珪素半導体装置のオン抵抗を低減することができる。
(2)上記(1)に係る炭化珪素半導体装置100において、第5不純物領域15と第6不純物領域16とは、第2導電型を有する半導体領域19によって接続されていてもよい。これにより、第5不純物領域15と第6不純物領域16とを同電位にすることができる。結果として、炭化珪素半導体装置100のスイッチング特性を向上させることができる。
(3)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置100において、張り出し部41は、第2不純物領域12と接していてもよい。
(4)上記(1)または(2)に係る炭化珪素半導体装置100において、張り出し部41は、第1不純物領域11によって第2不純物領域12から隔てられていてもよい。
(5)上記(4)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1不純物領域11は、張り出し部41と第2不純物領域12とに挟まれた第1層21と、第1層21と第6不純物領域16とに挟まれた第2層22とを有していてもよい。底面4は、第1層21によって構成されていてもよい。
(6)上記(5)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1層21の不純物濃度は、第2層22の不純物濃度よりも低くてもよい。
(7)上記(5)または(6)に係る炭化珪素半導体装置100において、第1不純物領域11は、第2層22よりも第2主面2側にあり、かつ第5不純物領域15と第6不純物領域16とに挟まれた第3層23を有していてもよい。第3層23の不純物濃度は、第2層22の不純物濃度よりも高くてもよい。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第2主面2に垂直な断面において、直線Lは、側面3に対して垂直であってもよい。これにより、チャネル領域からの電流を第1不純物領域11全体にさらに効率的に拡散させることができる。結果として、炭化珪素半導体装置のオン抵抗をさらに低減することができる。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、底面4を含む平面に対する側面3の角度は、45°以上65°以下であってもよい。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに係る炭化珪素半導体装置100において、第5不純物領域15は、第2主面2に対向する下端面53を有していてもよい。第2主面2に対して垂直な方向において、第1主面1と下端面53との距離は、2.5μm以下であってもよい。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”−”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
まず、本実施形態に係る炭化珪素半導体装置の一例としてのMOSFET100の構成について説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60(第1電極60)と、ドレイン電極70(第2電極70)とを主に有している。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50および炭化珪素エピタキシャル層40は、たとえばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、たとえば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。炭化珪素基板10の第1主面1の最大径は、たとえば100mm以上であり、好ましくは150mm以上である。
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000−1)面または(000−1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、たとえば<11−20>方向であってもよいし、<1−100>方向であってもよい。オフ角は、たとえば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11(第1不純物領域11)と、ボディ領域12(第2不純物領域12)と、ソース領域13(第3不純物領域13)と、第4不純物領域14と、第5不純物領域15と、第6不純物領域16と、コンタクト領域18とを主に有する。ドリフト領域11は、たとえば窒素などのn型不純物を含み、n型の導電型を有する。ドリフト領域11は、たとえば第1層21と、第2層22と、第3層23と、第4層24とを主に有している。
ボディ領域12はドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。ボディ領域12におけるp型不純物の濃度は、5×1017cm-3以上である。短チャネル効果(パンチスルー)は、pn接合領域からチャネル領域内に空乏層が広がってチャネル領域全体が空乏層になることによって発生し得る。ボディ領域12におけるp型不純物の濃度を高くすることによって、チャネル領域に形成される空乏層の広がりを低減することができる。結果として、ボディ領域12の厚みが小さい場合においても、短チャネル効果の発生を抑制することができる。そのため、距離H1(図1参照)を低減することができる。ボディ領域12の厚みは、たとえば0.7μmよりも小さくてもよい。ボディ領域12のp型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3程度である。ボディ領域12のp型不純物の濃度は、ドリフト領域11のn型不純物の濃度よりも高くてもよい。
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、たとえば窒素またはリン(P)などのn型不純物を含んでおり、n型の導電型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成している。ソース領域13のn型不純物の濃度は、ボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高くてもよい。ソース領域13のn型不純物の濃度は、たとえば1×1019cm-3程度である。
コンタクト領域18は、たとえばアルミニウムなどのp型不純物を含んでおり、p型の導電型を有する。コンタクト領域18のp型不純物の濃度は、たとえばボディ領域12のp型不純物の濃度よりも高い。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18のp型不純物の濃度は、たとえば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
第1主面1には、側面3と底面4とにより規定されるゲートトレンチ5が設けられている。側面3は、ソース領域13およびボディ領域12を貫通してドリフト領域11に至る。底面4は、側面3と連なる。底面4は、ドリフト領域11に位置する。底面4は、たとえば第2主面2と平行な平面である。底面4を含む平面に対する側面3の角度θ1は、たとえば45°以上65°以下である。角度θ1は、たとえば50°以上であってもよい。角度θ1は、たとえば60°以下であってもよい。ゲートトレンチ5は、たとえば第2主面2と平行な方向に沿ってストライプ状に伸長している。ゲートトレンチ5は、ハニカム状に伸長していてもよいし、アイランド状に点在していてもよい。
第4不純物領域14は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。第4不純物領域14のp型不純物の濃度は、たとえば3×1016cm-3以上5×1018cm-3以下である。第4不純物領域14のp型不純物の濃度を5×1018cm-3以下とすることにより、第4不純物領域14が完全に空乏化することを抑制することができる。第4不純物領域14は、第1不純物領域11および第2不純物領域12の双方に接する。第4不純物領域14は、第2不純物領域12よりも第2主面2側にある。第4不純物領域14は、たとえば第2不純物領域12の下端面54から第2主面2に向かって突出している。第2主面2と平行な方向において、第4不純物領域14の幅は、第2不純物領域12の幅よりも小さくてもよい。第2主面2と平行な方向において、第4不純物領域14の幅は、第5不純物領域15の幅よりも大きくてもよい。
第4不純物領域14は、たとえば、張り出し部41と、第2部分42と、第3部分43とを有している。張り出し部41は、第2主面2と平行な方向において、第5不純物領域15の側端面52よりもゲートトレンチ5に向かって延在する。張り出し部41は、第2部分42と連なっている。張り出し部41は、第2部分42に対してゲートトレンチ5側に位置している。張り出し部41は、第1不純物領域11によって第2不純物領域12から隔てられていてもよい。
第2部分42は、第2主面2に対して垂直な方向において、第3部分43と第5不純物領域15との間に位置している。第2部分42は、第3部分43と第5不純物領域15との各々に接している。第3部分43は、第2不純物領域12に接している。第3部分43は、第2主面2に対して垂直な方向において、第2部分42と第2不純物領域12との間に位置している。第2主面2と平行な方向において、第3部分43の幅は、第5不純物領域15の幅よりも大きくてもよい。第2主面2と平行な方向において、第3部分43の幅は、第2不純物領域12の幅よりも小さくてもよい。第2主面2と平行な方向において、第3部分43の幅は、第2部分42と張り出し部41とにより構成される領域の幅よりも小さくてもよい。
第5不純物領域15は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。第5不純物領域15のp型不純物の濃度は、第4不純物領域14のp型不純物の濃度とほぼ同じであってもよい。第5不純物領域15は、第1不純物領域11および第4不純物領域14の双方に接する。第5不純物領域15は、第2部分42に接する。第5不純物領域15は、第4不純物領域14よりも第2主面2側にある。第5不純物領域15は、第2部分42から第2主面2に向かって突出している。第5不純物領域15は、第6不純物領域16と対向する側端面52を有している。第5不純物領域15は、第2主面2に対向する下端面53を有している。
第6不純物領域16は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。第6不純物領域16のp型不純物の濃度は、第4不純物領域14のp型不純物の濃度とほぼ同じであってもよい。第6不純物領域16は、ゲートトレンチ5の底面4と第2主面2との間にある。第6不純物領域16は、第1不純物領域11を挟んで第5不純物領域15と対向している。第6不純物領域16は、たとえばゲートトレンチ5の底面4の全体と、側面3の一部とに対向している。第2主面2と平行な方向において、第6不純物領域16の幅W3は、底面4の幅W1よりも大きくてもよい。第2主面2と平行な方向において、第6不純物領域16の幅W3は、ゲートトレンチ5の開口部の幅W2よりも小さくてもよい。
ドリフト領域11の第1層21は、張り出し部41とボディ領域12とに挟まれている。第1層21は、ボディ領域12および第3部分43の各々と接している。第1層21は、ボディ領域12よりも第2主面2側にある。第1層21は、第3部分43よりもゲートトレンチ5側にある。ゲートトレンチ5の底面4は、第1層21によって構成されていてもよい。ゲートトレンチ5の側面3の一部は、第1層21によって構成されていてもよい。第1層21のn型不純物の濃度は、たとえば1×1016cm-3以上1×1017cm-3以下である。
第2層22は、第1層21と第6不純物領域16とに挟まれている。第2層22は、第1層21および第6不純物領域16の各々と接している。第2層22は、第1層21よりも第2主面2側にある。第2層22は、第6不純物領域16よりも第1主面1側にある。第2層22は、張り出し部41と接している。第2層22は、張り出し部41よりもゲートトレンチ5側にある。第2主面2と平行な方向において、第2層22の幅は、第1層21の幅よりも小さくてもよい。第1層21の不純物濃度は、第2層22の不純物濃度よりも低くてもよい。
第3層23は、第2層22よりも第2主面2側にある。第3層23は、第2層22と連なっている。第3層23は、第5不純物領域15と第6不純物領域16とに挟まれている。第3層23は、第5不純物領域15および第6不純物領域16の各々と接している。第3層23と、第5不純物領域15と、第6不純物領域16とは、第2主面2と平行な同一平面に位置していてもよい。第3層23の不純物濃度は、第2層22の不純物濃度よりも高くてもよい。第3層23のn型不純物の濃度は、たとえば3×1016cm-3以上4×1017cm-3以下である。
第4層24は、第3層23よりも第2主面2側にある。第4層24は、第3層23と連なっている。第4層24は、第5不純物領域15および第6不純物領域16の各々と接している。第4層24は、第5不純物領域15よりも第2主面2側にある。第4層24は、第6不純物領域16よりも第2主面2側にある。第4層24は、第3層23とバッファ層17とに挟まれていてもよい。第4層24は、バッファ層17に連なっていてもよい。バッファ層17の不純物濃度は、第4層24の不純物濃度よりも高くてもよい。
図1に示されるように、第2主面2に垂直な断面において、第1不純物領域11と第2不純物領域12と側面3とが接する第1位置Aと、第2主面2に最も近い側端面52の第2位置Bとを通る直線Lは、第4不純物領域14および第6不純物領域16の各々から離間しており、かつ第4不純物領域14と第6不純物領域16との間に位置している。別の観点から言えば、当該直線Lは、第4不純物領域14および第6不純物領域16の各々と交差しない。当該直線Lは、第1層21、第2層22、第3層23および第4層24の各々と交差する。当該直線Lと第4不純物領域14との間には、ドリフト領域11がある。同様に、当該直線Lと第6不純物領域16との間には、ドリフト領域11がある。
第1位置Aは、ボディ領域12とドリフト領域11との境界面54と、ゲートトレンチ5の側面3との接点である。第2位置Bは、第5不純物領域15の側端面52に沿った直線と、第5不純物領域15の下端面53に沿った直線との交点であってもよい。図1に示されるように、第2主面2に垂直な断面において、直線Lは、側面3に対して垂直であってもよい。当該断面は、ゲートトレンチ5の延在方向に対して垂直な方向であってもよい。側面3に対する直線Lの傾斜角θ2は、たとえば85°以上95°以下であってもよい。
図1に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向において、第1主面1と下端面53との距離H1は、たとえば2.5μm以下である。距離H1は、2.0μm以下であってもよいし、1.5μm以下であってもよい。第2主面2に対して垂直な方向において、第6不純物領域16の上端面と第1位置Aとの間の距離H2は、0.4μm以上0.8μm以下である。
ゲート絶縁膜81は、たとえば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、たとえば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3および底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4において第1層21と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12および第1層21の各々と接する。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に設けられている。ゲート電極82は、たとえば導電性不純物を含むポリシリコンから構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82の一部は、第1主面1上に配置されていてもよい。
ソース電極60は、第1主面1に接する。ソース電極は、コンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。ソース配線62は、コンタクト電極61上にある。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13およびコンタクト領域18に接していてもよい。コンタクト電極61は、たとえばTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されている。コンタクト電極61は、ソース領域13とオーミック接合している。コンタクト電極61は、コンタクト領域18とオーミック接合していてもよい。第4不純物領域14、第5不純物領域15および第6不純物領域16の各々は、ソース電極60に接地されていてもよい。
ドレイン電極70は、第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。
層間絶縁膜83は、ゲート電極82およびゲート絶縁膜81に接して設けられている。層間絶縁膜83は、たとえば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを電気的に絶縁している。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に設けられていてもよい。
図2は、図1のII−II線に沿った矢視断面模式図である。図2に示されるように、第5不純物領域15と第6不純物領域16とは、半導体領域19によって接続されていてもよい。半導体領域19は、たとえばアルミニウム(Al)などのp型不純物を含み、p型(第2導電型)の導電型を有する。半導体領域19は、第3層23に接している。半導体領域19は、第5不純物領域15の側面3の一部と接し、かつ第6不純物領域16の側面3の一部と接している。ゲートトレンチ5の底面4は、第2主面2と平行な方向に延在している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、ゲートトレンチ5の底面4は、たとえば長方形状である。
第5不純物領域15は、たとえばゲートトレンチ5の底面4の延在方向と平行な方向に延在している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第5不純物領域15は、たとえば長方形状である。同様に、第6不純物領域16は、たとえばゲートトレンチ5の底面4の延在方向と平行な方向に延在している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第6不純物領域16は、たとえば長方形状である。第5不純物領域15の延在方向は、第6不純物領域16の延在方向と同じであってもよい。第5不純物領域15と第6不純物領域16とは、ゲートトレンチ5の底面4の延在方向(図2の上下方向)に対して垂直な方向(図2の左右方向)に沿って交互に配置されていてもよい。
図3は、図1のIII−III線に沿った矢視断面模式図である。第4不純物領域14は、たとえばゲートトレンチ5の底面4の延在方向と平行な方向に延在している。第2主面2に対して垂直な方向から見て、第4不純物領域14は、たとえば長方形状である。複数の第4不純物領域14の各々は、ゲートトレンチ5の底面4の延在方向と垂直な方向において、互いに間隔を隔てて配置されていてもよい。複数の第4不純物領域14の各々の間には、第2導電型を有する半導体領域19が配置されていなくてもよい。
次に、第1変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図4に示されるように、張り出し部41は、第2不純物領域12と接していてもよい。この場合、第4不純物領域14は、張り出し部41と、第2部分42とにより構成されている。張り出し部41は、ゲートトレンチ5の底面4を含む平面と交差するように配置されていてもよい。張り出し部41の側端面は、第1層21に接していてもよい。ドリフト領域11は、第1層21と、第3層23と、第4層24とにより構成されていてもよい。第1層21の不純物濃度は、第3層23の不純物濃度よりも低くてもよい。
次に、第2変形例に係るMOSFETの構成について説明する。
図5に示されるように、ゲートトレンチ5は、垂直トレンチであってもよい。つまり、底面4を含む平面に対する側面3の角度θ1は、90°であってもよい。この場合、第2主面2に平行な方向において、ゲートトレンチ5の底面4の幅は、ゲートトレンチ5の開口部の幅とほぼ同じである。ゲートトレンチ5の側面3に対する直線Lの傾斜角θ2は、90°よりも大きい。垂直トレンチは、図4に示す第4不純物領域14の構造を有するMOSFETに採用されてもよいし、図1に示す第4不純物領域14の構造を有するMOSFETに採用されてもよい。図5に示されるように、第2主面2に対して垂直な方向において、第1主面1と下端面53との距離H1は、たとえば2.5μm以下である。距離H1が小さくなると、ボディ領域12の下端面54に対する直線Lの傾斜角θ3(図5参照)は、小さくなる。傾斜角θ3は、たとえば30°以上60°以下である。
次に、本実施形態に係るMOSFET100の製造方法について説明する。
まず、炭化珪素基板を準備する工程が実施される。たとえば昇華法によって製造された炭化珪素インゴット(図示せず)がスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板50が準備される。次に、バッファ層17を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシラン(SiH4)とプロパン(C3H8)との混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素(H2)を用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、炭化珪素単結晶基板50上にバッファ層17が形成される。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物がバッファ層17に導入される。
次に、第1エピタキシャル層20を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、バッファ層17上に第1エピタキシャル層20が形成される(図6参照)。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第1エピタキシャル層20に導入される。第1エピタキシャル層20は、n型の導電型を有する。第1エピタキシャル層20のn型不純物の濃度は、バッファ層17のn型不純物の濃度よりも低い。
次に、第5不純物領域15および第6不純物領域16を形成する工程が実施される。たとえば、第5不純物領域15および第6不純物領域16の各々が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第1エピタキシャル層20に注入される。これにより、第5不純物領域15および第6不純物領域16が形成される(図7参照)。第5不純物領域15および第6不純物領域16の各々は、第1エピタキシャル層20の表面に露出しないように、第1エピタキシャル層20の内部に形成される。第5不純物領域15および第6不純物領域16は、同時に形成されてもよいし、別々に形成されてもよい。
次に、第4不純物領域14を形成する工程が実施される。たとえば、第4不純物領域14が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第1エピタキシャル層20に注入される。これにより、第4不純物領域14が形成される(図7参照)。第4不純物領域14は、第5不純物領域15と接し、かつ第1エピタキシャル層20の表面に露出するように形成される。
次に、n型不純物イオンを注入する工程が実施される。たとえば、窒素などのn型を付与可能なn型不純物イオンが、第5不純物領域15と第6不純物領域16との間の領域に対して注入される。これにより、第3層23が形成される。第3層23の上側にあるn型不純物領域は、第2層22となる。第3層23の下側にあるn型不純物領域は、第4層24となる(図8参照)。第3層23のn型不純物の濃度は、第2層22および第4層24の各々のn型不純物の濃度よりも高くなる。
次に、第2エピタキシャル層を形成する工程が実施される。たとえば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとしてたとえば水素を用いたCVD法により、第1エピタキシャル層20上に第2エピタキシャル層が形成される。エピタキシャル成長の際、たとえば窒素などのn型不純物が第2エピタキシャル層に導入される。第2エピタキシャル層は、n型の導電型を有する。
次に、p型不純物イオンを注入する工程が実施される。たとえば、第4不純物領域14の第3部分43が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第2エピタキシャル層に注入される。これにより第3部分43が形成される。第3部分43は、第2部分42と繋がるように形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンが第2エピタキシャル層の表面全体に対して注入される。これにより、ボディ領域12が形成される。第2エピタキシャル層において、ボディ領域12および第3部分43が形成されてない領域は、第1層21となる。第1層21、第2層22、第3層23および第4層24は、ドリフト領域11を構成する。
次に、たとえばリン(P)などのn型不純物が第2エピタキシャル層の表面全体に対してイオン注入される。これにより、ソース領域13が形成される。次に、コンタクト領域18が形成される領域上に開口部を有するマスク層(図示せず)が形成される。次に、たとえばアルミニウムイオンなどのp型を付与可能なp型不純物イオンがソース領域13に注入される。これによりソース領域13と接するコンタクト領域18が形成される(図9参照)。
次に、炭化珪素基板10に注入された不純物イオンを活性化するために活性化アニールが実施される。活性化アニールの温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、たとえば1700℃程度である。活性化アニールの時間は、たとえば30分程度である。活性化アニールの雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、たとえばAr雰囲気である。
次に、ゲートトレンチ5を形成する工程が実施される。たとえば、ソース領域13およびコンタクト領域18から構成される第1主面1上に、ゲートトレンチ5(図1)が形成される位置上に開口を有するマスク51が形成される。マスク51を用いて、ソース領域13の一部と、ボディ領域12の一部と、ドリフト領域11の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、たとえば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、たとえば反応ガスとして六フッ化硫黄(SF6)またはSF6と酸素(O2)との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、ゲートトレンチ5が形成されるべき領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底部とを有する凹部が形成される。
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第1主面1上にマスク51が形成された状態で、たとえば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子およびフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、たとえば、塩素(Cl2)、三塩化ホウ素(BCl3)、SF6または四フッ化炭素(CF4)を含む。たとえば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、たとえば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、たとえば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
上記熱エッチングにより、炭化珪素基板10の第1主面1にゲートトレンチ5が形成される(図10参照)。ゲートトレンチ5は、側面3と、底面4とにより規定される。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11とにより構成される。底面4は、ドリフト領域11により構成される。側面3と、底面4を含む平面との間の角度θ1は、たとえば45°以上65°以下である。次に、マスク51が第1主面1から除去される。
次に、ゲート絶縁膜81を形成する工程が実施される。たとえば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11と、コンタクト領域18とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素基板10が、酸素を含む雰囲気中において、たとえば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、第1主面1と、側面3および底面4に接するゲート絶縁膜81が形成される。
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板10に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板10が、たとえば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
NOアニール後、雰囲気ガスとしてアルゴン(Ar)を用いるArアニールが行われてもよい。Arアニールの加熱温度は、たとえば上記NOアニールの加熱温度以上である。Arアニールの時間は、たとえば1時間程度である。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域における界面準位の形成がさらに抑制される。なお、雰囲気ガスとして、Arガスに代えて窒素ガスなどの他の不活性ガスが用いられてもよい。
次に、ゲート電極を形成する工程が実施される。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、たとえばLP−CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
次に、層間絶縁膜83が形成する工程が実施される。具体的には、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接するように層間絶縁膜83が形成される。層間絶縁膜83は、たとえば、CVD法により形成される。層間絶縁膜83は、たとえば二酸化珪素を含む材料である。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に形成されてもよい。
次に、コンタクト電極を形成する工程が実施される。たとえば、層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81に開口部が形成されるようにエッチングが行われることにより、当該開口部にソース領域13およびコンタクト領域18が層間絶縁膜83およびゲート絶縁膜81から露出する。次に、第1主面1においてソース領域13およびコンタクト領域18に接するコンタクト電極61が形成される。コンタクト電極61は、たとえばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61は、たとえばTi、AlおよびSiを含む材料から構成される。
次に、合金化アニールが実施される。ソース領域13およびコンタクト領域18と接するコンタクト電極61が、たとえば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、コンタクト電極61の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13とオーミック接合するコンタクト電極61が形成される。コンタクト電極61は、コンタクト領域18とオーミック接合してもよい。
次に、ドレイン電極を形成する工程が実施される。たとえばスパッタリング法により、第2主面2と接するドレイン電極70が形成される。ドレイン電極70は、たとえばNiSiまたはTiAlSiを含む材料から構成されている。以上により、本実施形態に係るMOSFET100(図1)が完成する。
なお上記実施の形態では、n型を第1導電型とし、かつp型を第2導電型して説明したが、p型を第1導電型とし、かつn型を第2導電型としてもよい。また上記実施の形態では、炭化珪素半導体装置としてMOSFETを例に挙げて説明したが、炭化珪素半導体装置は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などであってもよい。さらに上記各不純物領域におけるp型不純物の濃度およびn型不純物の濃度は、たとえばSCM(Scanning Capacitance Microscope)またはSIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などにより測定可能である。またp型領域とn型領域との境界面(つまりPN界面)の位置は、たとえばSCMまたはSIMSなどにより特定することができる。
次に、本実施形態に係るMOSFETの作用効果について説明する。
本実施形態に係るMOSFET100によれば、第4不純物領域14は、第2主面2と平行な方向において、側端面52よりもゲートトレンチ5に向かって延在する張り出し部41を含んでいる。これにより、チャネル領域およびゲートトレンチ5の下部に対して電界が侵入することを抑制することができる。そのため、ゲート絶縁膜81の底部における電界集中を緩和することができる。
また本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に垂直な断面において、ドリフト領域11とボディ領域12と側面3とが接する第1位置Aと、第2主面2に最も近い側端面52の第2位置Bとを通る直線Lは、第4不純物領域14および第6不純物領域16の各々から離間しており、かつ第4不純物領域14と第6不純物領域16との間に位置している。これにより、チャネル領域からの電流をドリフト領域11全体に効率的に拡散させることができる。結果として、MOSFET100のオン抵抗を低減することができる。
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第5不純物領域15と第6不純物領域16とは、第2導電型を有する半導体領域19によって接続されていてもよい。これにより、第5不純物領域15と第6不純物領域16とを同電位にすることができる。結果として、MOSFET100のスイッチング特性を向上させることができる。
さらに本実施形態に係るMOSFET100によれば、第2主面2に垂直な断面において、直線Lは、側面3に対して垂直であってもよい。これにより、チャネル領域からの電流をドリフト領域11全体にさらに効率的に拡散させることができる。結果として、MOSFET100のオン抵抗をさらに低減することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。