以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図2はインクジェット式記録ヘッドの平面図(液体噴射面20a側の平面図)であり、図3は図2のA−A′線断面図であり、図4は図3の要部を拡大した断面図である。
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、記録ヘッド1とも言う)は、流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、本実施形態の配線基板30、コンプライアンス基板45等の複数の部材を備える。
流路形成基板10は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、SiO2、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。この流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12がインクを吐出する複数のノズル開口21が並設される方向に沿って並設されている。以降、この方向を圧力発生室12の並設方向、又は第1の方向Xと称する。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が複数列、本実施形態では、2列設けられている。この圧力発生室12が第1の方向Xに沿って形成された圧力発生室12の列が複数列設された列設方向を、以降、第2の方向Yと称する。さらに、第1の方向X及び第2の方向Yの双方に交差する方向を本実施形態では、第3の方向Zと称する。各図に示した座標軸は第1の方向X、第2の方向Y、第3の方向Zを表しており、矢印の向かう方向を正(+)方向、反対方向が負(−)方向ともいう。なお、本実施形態では、各方向(X、Y、Z)の関係を直交とするが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。
流路形成基板10には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
流路形成基板10の一方面側(配線基板30とは反対側であって−Z方向)には、連通板15とノズルプレート20とが順次積層されている。すなわち、流路形成基板10の一方面に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズル開口21を有するノズルプレート20と、を具備する。
連通板15には、圧力発生室12とノズル開口21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル開口21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル開口21付近のインクで生じるインク中の水分の蒸発による増粘の影響を受け難くなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル開口21とを連通するノズル連通路16の開口を覆うだけでよいので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、コストの削減を図ることができる。なお、本実施形態では、ノズルプレート20のノズル開口21が開口されて、インク滴が吐出される面を液体噴射面20aと称する。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向(連通板15と流路形成基板10との積層方向)に貫通して設けられている。第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。
このような連通板15としては、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、SiO2、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。すなわち、連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10と連通板15との線膨張係数の違いにより反りが生じてしまう。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
ノズルプレート20には、各圧力発生室12とノズル連通路16を介して連通するノズル開口21が形成されている。このようなノズル開口21は、第1の方向Xに並設され、この第1の方向Xに並設されたノズル開口21の列が第2の方向Yに2列形成されている。
このようなノズルプレート20としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。なお、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いることで、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数を同等として、加熱や冷却されることによる反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側(配線基板30側であって+Z方向)には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(連通板15が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。もちろん、振動板50は、特にこれに限定されるものではなく、弾性膜51と絶縁体膜52との何れか一方を設けるようにしてもよく、その他の膜が設けられていてもよい。
流路形成基板10の振動板50上には、本実施形態の圧力発生室12内のインクに圧力変化を生じさせる駆動素子として圧電アクチュエーター150が設けられている。上述したように、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに沿って複数並設され、圧力発生室12の列が第2の方向Yに沿って2列並設されている。圧電アクチュエーター150は、実質的な駆動部である活性部が第1の方向Xに並設されて列を構成し、この圧電アクチュエーター150の活性部の列が第2の方向Yに2列並設されている。すなわち、駆動素子とは、実質的には圧電アクチュエーター150の活性部のことである。また、本実施形態では、駆動素子である圧電アクチュエーター150の活性部が設けられた駆動素子基板は、流路形成基板10に相当する。
圧電アクチュエーター150は、振動板50側から順次積層された第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を有する。圧電アクチュエーター150を構成する第1電極60は、圧力発生室12毎に切り分けられており、圧電アクチュエーター150の実質的な駆動部である活性部毎に独立する個別電極を構成する。
圧電体層70は、第2の方向Yが所定の幅となるように第1の方向Xに亘って連続して設けられている。
圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側(マニホールド100とは反対側)における圧電体層70の端部は、第1電極60の端部よりも外側に位置している。すなわち、第1電極60の端部は圧電体層70によって覆われている。また、圧力発生室12の第2の方向Yのマニホールド100側である他端側における圧電体層70の端部は、第1電極60の端部よりも内側(圧力発生室12側)に位置しており、第1電極60のマニホールド100側の端部は、圧電体層70に覆われていない。
圧電体層70は、第1電極60上に形成される分極構造を有する酸化物の圧電材料からなり、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型酸化物からなることができる。圧電体層70に用いられるペロブスカイト型酸化物としては、例えば、鉛を含む鉛系圧電材料や鉛を含まない非鉛系圧電材料などを用いることができる。
なお、特に図示していないが、圧電体層70には、圧力発生室12間の各隔壁に対応する位置に凹部が形成されていてもよい。これにより、圧電アクチュエーター150を良好に変位させることができる。
第2電極80は、圧電体層70の第1電極60とは反対面側に設けられており、複数の活性部に共通する共通電極を構成する。
このような第1電極60、圧電体層70及び第2電極80で構成される圧電アクチュエーター150は、第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加することで変位が生じる。すなわち両電極の間に電圧を印加することで、第1電極60と第2電極80とで挟まれている圧電体層70に圧電歪みが生じる。そして、両電極に電圧を印加した際に、圧電体層70に圧電歪みが生じる部分(第1電極60と第2電極80とで挟まれた領域)を活性部と称する。これに対して、圧電体層70に圧電歪みが生じない部分を非活性部と称する。また、圧電アクチュエーター150の圧力発生室12に対向して可変可能な部分を可撓部と称し、圧力発生室12の外側の部分を非可撓部と称する。
上述したように、圧電アクチュエーター150は、第1電極60を複数の活性部毎に独立して設けることで個別電極とし、第2電極80を複数の活性部に亘って連続して設けることで共通電極とした。もちろん、このような態様に限定されず、第1電極60を複数の活性部に亘って連続して設けることで共通電極とし、第2電極を活性部毎に独立して設けることで個別電極としてもよい。また、振動板50としては、弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター150自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。本実施形態では、圧電アクチュエーター150の活性部は、圧力発生室12に対応して第1の方向Xに並設されており、このように第1の方向Xに並設された活性部の列が、第2の方向Yに2列設けられていることになる。
また、図3及び図4に示すように、圧電アクチュエーター150の第1電極60からは、引き出し配線である個別リード電極91が引き出されている。個別リード電極91は、各列の活性部から第2の方向Yにおいて列の外側に引き出されている。
また、圧電アクチュエーター150の第2電極80からは、引き出し配線である共通リード電極92が引き出されている。本実施形態では、共通リード電極92は、2列の圧電アクチュエーター150のそれぞれの第2電極80に導通している。また、共通リード電極92は、複数の活性部に対して1本の割合で設けられている。
流路形成基板10の圧電アクチュエーター150側の面には、配線基板30が接合されている。配線基板30は、流路形成基板10と略同じ大きさを有する。ここで、本実施形態の配線基板30についてさらに図5〜図8を参照して説明する。なお、図5は図4の要部をさらに拡大した断面図であり、図6は配線基板の第1面側の平面図であり、図7は図6の要部を拡大した図であり、図8は駆動回路の−Z側の平面図であり、図9は配線基板の第2面側の平面図であり、図10は図6のB−B′線断面図である。
配線基板30は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、SiO2、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、配線基板30は、表面の面方位が(110)面に優先配向したシリコン単結晶基板からなる。また、配線基板30の駆動素子である圧電アクチュエーター150とは反対側の面(+Z)を第1面301と称し、配線基板30の圧電アクチュエーター150側の面(−Z)を第2面302と称する。そして、図1及び図3等に示すように、配線基板30の第1面301には、圧電アクチュエーター150を駆動するための信号を出力する駆動回路120が実装されている。すなわち、配線基板30の駆動素子である圧電アクチュエーター150とは反対側の第1面301が駆動回路120側となっている。
駆動回路120には、圧電アクチュエーター150の活性部毎にトランスミッションゲート等のスイッチング素子が設けられており、入力された制御信号に基づいてスイッチング素子を開閉させて、外部から供給された駆動信号(COM)から所望のタイミングで圧電アクチュエーター150の活性部を駆動させる吐出信号を生成する。なお、ここで言う吐出信号とは、駆動素子である圧電アクチュエーター150の活性部を駆動させてノズル開口21からインク滴を吐出させる信号に代表されるものであるが、これに限定されるものではなく、インク滴が吐出しない程度に圧電アクチュエーター150の活性部を駆動させる微振動駆動等のその他の駆動を行わせる信号も含むものである。このような駆動回路120としては、例えば、回路基板や半導体集積回路(IC)を用いることができる。ちなみに、駆動回路120によって圧電アクチュエーター150の各活性部の個別電極である第1電極60には、駆動信号(COM)から生成した吐出信号を供給し、複数の活性部の共通電極である第2電極80には基準電位となるバイアス電圧(VBS)を供給することで、圧電アクチュエーター150の活性部は駆動される。
このような配線基板30は、圧電アクチュエーター150の各列の活性部の並設方向である第1の方向Xが長尺となるように設けられている。すなわち、配線基板30は、第1の方向Xが長手方向となり、第2の方向Yが短手方向となるように配置されている。
また、図4、図5、図6及び図7に示すように、この配線基板30の第1面301には、個別配線31を構成する第1個別配線311と駆動信号配線32と電源配線33とバイアス配線34を構成する第1バイアス配線341とが設けられている。
個別配線31は、一端が駆動回路120に接続されると共に、他端が圧電アクチュエーター150の活性部の個別電極である第1電極60に電気的に接続されて、駆動回路120からの吐出信号を圧電アクチュエーター150の第1電極60に供給するものである。
個別配線31を構成する第1個別配線311は、配線基板30の第1面301の第2の方向Yの両端部のそれぞれに、第1の方向Xに複数並設されている。また、第1個別配線311は、第2の方向Yに沿って延設されており、一端において駆動回路120の各端子と電気的に接続され、他端において第1貫通配線315と電気的に接続されている。
ここで、第1貫通配線315は、配線基板30を厚さ方向である第3の方向Zに貫通して設けられた第1貫通孔303の内部に設けられたものであり、第1面301と第2面302とを中継して第1面301の第1個別配線311と詳しくは後述する第2面302の第2個別配線312とを接続する配線である。第1貫通配線315が設けられた第1貫通孔303は、配線基板30をレーザー加工、ドリル加工、ドライエッチング加工(Bosch法、非Bosch法、イオンミリング)、ウェットエッチング加工、サンドブラスト加工等やこれらの加工方法の組み合わせで形成することができる。このような第1貫通孔303内に第1貫通配線315が充填して形成されている。なお、第1貫通配線315は、銅(Cu)等の金属からなり、電解めっきや無電界めっきなどによって形成することができる。
また、第1貫通配線315は、第2面302で第2個別配線312と接続されている。第2個別配線312は、詳しくは後述するが、圧電アクチュエーター150の活性部の個別電極である第1電極60に接続された個別リード電極91と電気的に接続されている。すなわち、第1個別配線311と第1貫通配線315と第2個別配線312とで構成される個別配線31は、圧電アクチュエーター150の活性部の個別電極である第1電極60と同数設けられている。
また、図6及び図7に示すように、配線基板30の第1面301には、駆動信号配線32が設けられている。駆動信号配線32は、外部配線130から供給された駆動信号(COM)を駆動回路120に供給するためのものである。本実施形態の駆動信号配線32は、配線基板30の第1の方向Xに沿って外部配線130が接続される一端側から他端側に向かって延設されている。また、駆動信号配線32は、本実施形態では、圧電アクチュエーター150の各列に対して第2の方向Yに2本ずつ、合計4本並設されている。
また、図6及び図7に示すように、配線基板30の第1面301には、電源配線33が設けられている。電源配線33は、駆動回路120に電力を供給するものであり、本実施形態では、駆動回路120の高電圧回路用に高圧電力を供給する高圧電源配線331とこれに対応した高圧用グランド配線332と駆動回路120に低電圧回路用に低圧電力を供給する低圧電源配線333とこれに対応した低圧用グランド配線334とを具備する。すなわち、本実施形態では、4種類の電源配線33が設けられている。
このような電源配線33は、配線基板30の第1の方向Xに沿って外部配線130が接続される一端側から他端側に向かって設けられている。また、高圧電源配線331と高圧用グランド配線332と低圧電源配線333と低圧用グランド配線334とは、圧電アクチュエーター150の活性部の列毎に1本ずつ、すなわち、圧電アクチュエーター150の活性部の列毎に4本の合計8本設けられている。このような高圧電源配線331と高圧用グランド配線332と低圧電源配線333と低圧用グランド配線334とは、第2の方向Yに並設されている。また、圧電アクチュエーター150の活性部の各列に対応する駆動信号配線32は、電源配線33に対して一方側、本実施形態では、第2の方向Yにおいて配線基板30の電源配線33よりも外側に配置されている。すなわち、第2の方向Yにおいて配線基板30の中央側に電源配線33が配置され、配線基板30の外側に駆動信号配線32が配置されている。
図6及び図7に示すように、配線基板30の第1面301には、バイアス配線34を構成する第1バイアス配線341が設けられている。バイアス配線34は、外部配線130から供給されたバイアス電圧(VBS)を圧電アクチュエーター150の活性部の共通電極である第2電極80に供給するものである。
第1バイアス配線341は、第1の方向Xにおいて配線基板30の外部配線130が接続される一端部側に第1の方向Xに沿って設けられており、駆動信号配線32や電源配線33よりも短い長さを有する。すなわち、第1バイアス配線は、駆動回路120に接続することなく、直接圧電アクチュエーター150の共通電極である第2電極80に接続すればよいため、第1の方向Xにおいて駆動回路120が実装された領域に達しない長さで設けられている。本実施形態では、第1バイアス配線341は、第2の方向Yにおいて電源配線33の駆動信号配線32とは反対側、すなわち、電源配線33よりも配線基板30の内側である中央側に配置されている。また、本実施形態では、第1バイアス配線341は、各圧電アクチュエーター150に対して1本ずつ、合計2本設けられている。
このような駆動信号配線32と電源配線33とは、図4に示すように、それぞれ配線基板30の第1面301に設けられた第1溝304内に埋め込まれた第1埋設配線35と、第1埋設配線35を覆うように設けられた第1接続配線36と、を具備する。
ここで、第1埋設配線35が設けられた第1溝304は、配線基板30の表面の(110)面に垂直な第1の(111)面と、第1の(111)面に相対向して(110)面に垂直な第2の(111)面と、で形成された内壁面を有する。このような第1溝304は、配線基板30を、水酸化カリウム水溶液(KOH)や水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)することで高精度に形成することができる。また、本実施形態では、第1溝304の内壁面である第1の(111)面と、第2の(111)面とは、第1の方向Xに沿った直線状となるように配置されている。このように、第1溝304の内壁面を第1の方向Xに沿った直線状となるように形成することで、第1溝304及び第1埋設配線35を第1の方向Xに亘って長尺に且つ省スペースに形成することができる。ちなみに、例えば、圧電アクチュエーター150の活性部の並設方向と配線基板30の第1の(111)面及び第2の(111)面の面方向とを異ならせてもよい。また、本実施形態では、第1溝304及び第1埋設配線35を直線状に沿って設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、第1溝304及び第1埋設配線35が延設方向の途中で屈曲していてもよい。
このように形成された第1溝304は、横断面が矩形状となっている。もちろん、第1溝304は、異方性エッチングによって形成したものに限定されず、レーザー加工、ドリル加工、ドライエッチング加工(Bosch法、非Bosch法(RIE法)、イオンミリング)、サンドブラスト加工等やこれらの加工方法の組み合わせで形成してもよい。
そして、本実施形態では、このような第1溝304を第2の方向Yに同じ間隔で複数個、本実施形態では、各圧電アクチュエーター150の活性部の列に対して6個ずつ、合計12個設けるようにした。具体的には、第1溝304は、圧電アクチュエーター150の各列に対して駆動信号配線32の2個と、電源配線33用の4個との合計6個が設けられている。もちろん、第1溝304の駆動信号配線32及び電源配線33に対応する数及び位置は特にこれに限定されず、1個であってもよく、また、2個以上の複数個であってもよい。
この第1溝304内に第1埋設配線35が埋め込まれている。すなわち、第1埋設配線35は、第1溝304内に充填されて形成されている。第1埋設配線35は、銅(Cu)等の金属からなり、例えば、電解めっき、無電界めっき、導電性ペーストの印刷などの方法によって形成することができる。また、第1埋設配線35は、第1貫通配線315とめっきによって同時に形成することも可能である。このように、第1埋設配線35と第1貫通配線315とを同時に形成することで、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
第1接続配線36は、各第1埋設配線35を覆うように積層されている。この第1接続配線36は、第2の方向Yにおいて第1埋設配線35の幅よりも若干広い幅を有するが、第2の方向Yで互いに隣り合う駆動信号配線32及び電源配線33が互いに短絡しないように間隔を空けて配置されている。なお、本実施形態の駆動信号配線32や電源配線33は、1本の第1埋設配線35と1本の第1接続配線36とによって構成されている。
このような第1接続配線36としては、特に図示していないが、例えば、第1埋設配線35側に設けられたチタン(Ti)等の密着層と、密着層上に設けられた金(Au)等の導電層とを積層したものを用いることができる。もちろん、その他の導電性材料で形成された層が積層されていてもよい。また、第1接続配線36は、例えば、スパッタリング法等によって形成することができる。なお、第1接続配線36は、例えば、第1個別配線311と同時に形成することもできる。このように、第1接続配線36と第1個別配線311とを同時に形成することで、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
また、上記の密着層と導電層を埋設配線のマイグレーション、酸化に対しての保護膜とすることもできる。また、上記の導電層を、他の駆動回路基板に形成されたバンプやフレキシブルテープ(FPC)、COF(Chip on Film/Flex)との接合面とすることもできる。
また、第1接続配線36は図6、図7及び図10に示すように、第1の方向Xにおいて、第1埋設配線35の端部の外側まで延設され、配線基板30の第1の方向Xの端部近傍まで設けられている。このように、配線基板30の第1の方向Xの一端部まで延設された第1接続配線36にFPC等の外部配線130が電気的に接続される。外部配線130が接続された駆動信号配線32には駆動信号(COM)が供給され、電源配線33には電源が供給され、第1バイアス配線341には、バイアス電圧(VBS)が供給される。そして、第1個別配線311と駆動信号配線32と電源配線33とは、第1面301において駆動回路120の各端子(図示なし)と電気的に接続されている。なお、特に図示していないが、配線基板30の第1面301には、駆動回路120を制御するための、クロック信号(CLK)、ラッチ信号(LAT)、チェンジ信号(CH)、画素データ(SI)、設定データ(SP)等の制御信号を外部配線130から供給するための配線が設けられており、外部配線130と配線とが電気的に接続されていると共に、配線と駆動回路120の各端子とが電気的に接続されている。
ここで、第1埋設配線35は、銅(Cu)等の金属を電解めっき、無電界めっき、導電性ペーストの印刷などの方法によって第1溝304内に形成した後、配線基板30の第1面301の表面をケミカルメカニカルポリッシング(CMP)等によって研磨することで平坦化されている。このとき、シリコンからなる配線基板30と銅(Cu)等の金属からなる第1埋設配線35との異種材料を同時に研磨することになるため、図5に示すように、第1埋設配線35は、配線基板30の第1面301の表面よりも削られて後退する。つまり、第1埋設配線35の第1面301側の表面は、第1面301よりも削られてΔhだけ凹んでしまう。そして、配線基板30の第1面301に配線基板30の表面と第1埋設配線35の表面とに亘って第1接続配線36を形成すると、第1接続配線36は略同じ厚みで形成されるため、第1埋設配線35の表面を覆う第1接続配線36、すなわち、駆動信号配線32や電源配線33の表面には、第1埋設配線35の凹みに沿った凹みが形成される。これに対して、第1埋設配線35を覆わない第1接続配線36、すなわち、第1個別配線311の表面には、凹みが形成されない。したがって、駆動回路120に接続される第1個別配線311の第1面301からの表面高さh1と、駆動回路120に接続される第1接続配線36の第1面301からの表面高さh2との間に差Δhが生じる。つまり、第1埋設配線35を有する駆動信号配線32及び電源配線33と第1バンプ電極121(駆動回路120)とが接続された接続部の界面は、第1個別配線311と第1バンプ電極121(駆動回路120)とが接続された接続部の界面よりも、配線基板30側に位置する。
このような第1個別配線311と駆動信号配線32及び電源配線33とに駆動回路120を実装する際に、金バンプなどの金属のみで形成された金属バンプを用いると、金属バンプは変形し難いことから、第1個別配線311と駆動信号配線32及び電源配線33との表面の差Δhを吸収するまで、駆動回路120及び配線基板30に反りを生じさせる必要がある。すなわち、駆動回路120及び配線基板30を反らせて表面の差Δhを吸収するには、駆動回路120を配線基板30に向かって高い荷重で押圧しなくてはならない。
このため、本実施形態では、図4及び図5に示すように、駆動回路120の配線基板30側の面に第1バンプ電極121を設け、第1バンプ電極121を介して駆動回路120の各端子(図示なし)と第1個別配線311と駆動信号配線32と電源配線33とをそれぞれ電気的に接続するようにした。
ここで、第1バンプ電極121は、例えば、弾性を有する樹脂材料で形成された第1コア部122と、第1コア部122の表面の少なくとも一部を覆う第1配線である第1バンプ配線123と、を有する。
第1コア部122は、弾性を有し、絶縁性を有する材料、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などの感光性絶縁樹脂や熱硬化性絶縁樹脂等の樹脂で形成されている。
また、第1コア部122は、駆動回路120と配線基板30とを接続する前において、ほぼ蒲鉾状に形成されている。ここで、蒲鉾状とは、駆動回路120に接する内面(底面)が平面であると共に、非接触面である外面側が湾曲面となっている柱状形状をいう。具体的に、ほぼ蒲鉾状とは、横断面がほぼ半円状、ほぼ半楕円状、ほぼ台形状であるものなどが挙げられる。
そして第1コア部122は、駆動回路120と配線基板30とが相対的に近接するように押圧されることで、その先端形状が第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33の表面形状に倣うように弾性変形している。これにより、駆動回路120や配線基板30に反りやうねりがあっても、第1コア部122がこれに追従して変形することにより、第1バンプ電極121と第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33とを確実に接続することができる。
第1コア部122は、第1の方向Xに沿って直線状に連続して形成されている。そして、この第1コア部122は、第2の方向Yに複数並設されている。本実施形態では、駆動回路120の第2の方向Yの両端部のそれぞれに設けられた第1コア部122が、第1個別配線311と接続される第1バンプ電極121を構成する。また、駆動回路120の第2の方向Yの中央側に設けられた第1コア部122が、駆動信号配線32や電源配線33と接続される第1バンプ電極121を構成する。このような第1コア部122は、フォトリソグラフィー技術やエッチング技術によって形成することができる。
第1バンプ配線123は、第1コア部122の少なくとも表面の一部を被覆している。このような第1バンプ配線123は、例えば、Au、TiW、Cu、Cr(クロム)、Ni、Ti、W、NiV、Al、Pd(パラジウム)、鉛フリーハンダなどの金属や合金で形成されており、これらの単層であっても、複数種を積層したものであってもよい。そして、第1バンプ配線123は、第1コア部122の弾性変形によって第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33の表面形状に倣って変形しており、第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33のそれぞれと電気的に接合されている。すなわち、第1埋設配線35を有さない第1個別配線311と、第1埋設配線35を有する駆動信号配線32及び電源配線33の間で段差Δhが生じても、第1コア部122の弾性変形によってこの段差Δhを吸収して、駆動回路120の端子と第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33とを確実に接続することができる。すなわち、樹脂で形成された第1コア部122を有する第1バンプ電極121は、金バンプなどの金属のみで形成された金属バンプに比べて変形し易いため、駆動回路120や配線基板30の反りによって段差Δhを吸収する必要がなく、駆動回路120や配線基板30が反る前に第1バンプ電極121の第1コア部122を変形させることにより段差Δhを吸収することができる。したがって、駆動回路120を配線基板30に押し当てる荷重を金属バンプに比べて低くすることができ、駆動回路120及び配線基板30の反りを低減することができる。このような第1コア部122としては、駆動回路120や配線基板30が反るよりも先に変形する弾性を有する材料であるのが好ましい。つまり、第1コア部122は、駆動回路120や配線基板30よりもヤング率が低い材料を用いるのが好ましい。
また、駆動回路120や配線基板30に反りを生じながら実装することによる残留応力を低減することができるため、後工程の熱処理などによって高い残留応力による剥離や実装不良が発生するのを抑制することができる。
ちなみに、低い荷重で駆動回路120と配線基板30とを接続する方法として、半田接続などの溶接や、異方性導電性接着剤(ACP、ACF)を介在させる方法なども挙げられるが、溶接や異方性導電性接着剤では、高密度な配線の接続を行うことができない。特に、第1個別配線311は、圧電アクチュエーター150の活性部の数だけ設けられているため、圧電アクチュエーター150の活性部の高密度化に伴い、高密度に配置される傾向にあるが、このような第1個別配線311と駆動回路120の端子とを溶接や異方性導電性接着剤では隣り合う配線が短絡することなく接続するのは困難である。本実施形態では、第1コア部122と第1バンプ配線123とを有する第1バンプ電極121を用いることで、高密度に配置された配線にも接続することが可能となるため、圧電アクチュエーター150の活性部の高密度化を実現することができる。
なお、本実施形態では、駆動回路120と配線基板30との間に接着層124を設け、接着層124によって駆動回路120と配線基板30とを接合することで、第1バンプ電極121と第1個別配線311、駆動信号配線32及び電源配線33との接続状態を維持するようにした。
また、図8に示すように、第1バンプ電極121のうち、第1個別配線311に接続されるものを第1バンプ電極121A、駆動信号配線32に接続されるものを第1バンプ電極121B、電源配線33に接続されるものを第1バンプ電極121Cとすると、駆動信号配線32及び電源配線33に接続される第1バンプ電極121B、121Cは、駆動信号配線32及び電源配線33の長手方向である第1の方向Xに沿って、所定の間隔で複数箇所に設けられている。これにより、1つの駆動信号配線32及び電源配線33に対して複数箇所で駆動回路120と接続することができ、駆動回路120の長手方向である第1の方向Xにおける電圧降下を抑制することができる。ちなみに、本実施形態では、駆動信号配線32に接続される第1バンプ電極121Bの数の方が、電源配線33のうちの1本に接続される第1バンプ電極121Cの数よりも多い。
このように、本実施形態では、配線基板30の第1面301に駆動回路120を実装するため、配線基板30の第1面301上に余分なスペースを確保することができない。すなわち、配線基板30の第1面301と駆動回路120との間のスペースは、第1バンプ電極121の高さによって決まる。記録ヘッド1の第1バンプ電極121の高さは、例えば20μm以下である。このような構成であっても、第1埋設配線35を有する駆動信号配線32、電源配線33及び第1バイアス配線341を設けることで、第1面301上の狭いスペースに、横断面積が大きく電気抵抗値が低い配線を配置することができる。ちなみに、駆動信号配線32及び電源配線33として第1埋設配線35を設けない場合、すなわち、配線基板30の第1面301に第1溝304を設けずに、各配線を設けた場合、第1面301上のスペースに制限があることから、配線を高く形成することができず、配線の横断面積が小さくなって、電気抵抗値が高くなってしまう。また、配線の電気抵抗値を小さくするために、配線の幅を広げると、配線基板30が大型化、特に第2の方向Yに大型化してしまう。さらに、配線基板30に第1溝304を設けずに、厚さの比較的厚い配線を形成する場合、フォトリソグラフィー法の制限によって配線を高精度及び高密度にパターニングするのが困難であり、厚さの比較的薄い配線しか形成することができない。本実施形態では、第1埋設配線35は、第1溝304によってその厚さが決定されると共に、第1溝304によってそのパターンが形成されるため、表面のみに配線を形成する場合に較べて、比較的厚い、例えば10μm〜50μm程度の厚さの第1埋設配線35を40μm〜50μmのピッチで高密度に形成することができる。したがって、第1埋設配線35の横断面積を増大させて電気抵抗値を低減することができる。また、第1埋設配線35は、内壁面が第1の(111)面及び第2の(111)面で形成された第1溝304内に埋め込まれているため、第1埋設配線35の横断面は矩形状となる。したがって、駆動回路基板として(100)面のシリコン単結晶基板を用いた場合に較べて、横断面積を増大させて、電気抵抗値をさらに低減することができる。すなわち、(100)面にシリコン単結晶基板を異方性エッチングして第1溝304を形成すると、開口幅が底面に行くにしたがって狭くなる、所謂、台形状の断面形状となってしまう。このため、断面が台形状の第1溝304内に埋め込んだ第1埋設配線35の横断面積が小さくなり、電気抵抗値が高くなってしまう。このように第1埋設配線35の横断面積を増大させることができるため、第1埋設配線35の第2の方向Yの幅を狭くしても電気抵抗値が著しく高くなるのを抑制することができる。したがって、第1埋設配線35を高密度に配置して配線基板30の小型化を図ることができる。
一方、図4に示すように、第1バイアス配線341は、配線基板30に設けられた第2貫通配線345に電気的に接続されている。第2貫通配線345は、配線基板30を第1面301と第2面302とを連通するように第3の方向Zに貫通して設けられた第2貫通孔307内に形成されている。これにより第2貫通配線345と第1バイアス配線341とは、電気的に接続されている。なお、第2貫通配線345は、上述した第1貫通配線315と同様に銅(Cu)等の金属を電界めっき、無電界めっき等によって形成することができる。また、第1埋設配線35と、第2貫通配線345とを同時に形成することで、第1埋設配線35と第2貫通配線345とを一体的に連続して形成することも可能である。つまり、第1埋設配線35、第1貫通配線315及び第2貫通配線345を同時に形成することでさらに製造工程を簡略化してコストを低減することができる。なお、第2貫通配線345は、第1の方向Xにおいて外部配線130と接続される一端側のみに形成されている。
また、配線基板30の第2面302には、図4及び図9に示すように、個別配線31を構成する第2個別配線312とバイアス配線を構成する第2バイアス配線342とが設けられている。
第2個別配線312は、第1貫通配線315に電気的に接続されると共に、流路形成基板10に設けられた個別リード電極91に電気的に接続されており、駆動回路120からの吐出信号を第1バンプ電極121と第1個別配線311と第1貫通配線315と第2個別配線312と個別リード電極91とを介して圧電アクチュエーター150の活性部の個別電極である第1電極60に供給する。
具体的には、第2個別配線312は、配線基板30の第2の方向Yの両端部のそれぞれに、第1の方向Xに亘って複数並設されている。また、第2個別配線312は、第2の方向Yに沿って延設されており、一端において第1貫通配線315の端部を覆うことで第1貫通配線315と電気的に接続されている。すなわち、個別配線31は、第1面301に設けられた第1個別配線311と第1貫通配線315と第2面302に設けられた第2個別配線312とを含む。また、第2個別配線312は、詳しくは後述する第2バンプ電極39によって流路形成基板10に設けられた個別リード電極91と電気的に接続されている。
第2バイアス配線342は、図4及び図10に示すように、第2貫通配線345に電気的に接続されると共に、流路形成基板10に設けられた共通リード電極92に電気的に接続されたものであり、外部配線130から供給されたバイアス電圧(VBS)を第1バイアス配線341と第2貫通配線345と第2バイアス配線342と共通リード電極92とを介して圧電アクチュエーター150の活性部の共通電極である第2電極80に供給する。すなわち、圧電アクチュエーター150にバイアス電圧(VBS)を供給するバイアス配線34は、第1面301に設けられた第1バイアス配線341と第2貫通配線345と第2バイアス配線342とを具備する。また、第2バイアス配線342は、第1の方向Xに沿って延設されており、圧電アクチュエーター150の列毎に1本、合計2本が第2の方向Yに並設されている。
このように第2面302にバイアス配線34を構成する第2バイアス配線342を設けることで、第1面301に第1の方向Xに亘ってバイアス配線34を設ける必要がなく、第1面301に第1の方向Xに亘ってバイアス配線34を設けるスペースが不要となって配線基板30の小型化を図ることができる。つまり、バイアス配線34の主要部分である第2バイアス配線342を第1面301に比べてスペースに余裕のある第2面302に設けることで、配線基板30の大型化を抑制して、小型化を図ることができる。
ここで、第2個別配線312と第2バイアス配線342とは、第2バンプ電極39を介してそれぞれ個別リード電極91と共通リード電極92とに電気的に接続されている。
なお、第2バイアス配線342は、第2の方向Yで並設された第2個別配線312の間に延設されており、この延設された部分において、図4及び図9に示すように第2バンプ電極39を介して流路形成基板10に設けられた共通リード電極92と接続されている。
ここで、第2バンプ電極39は、上述した駆動回路120に設けられた第1バンプ電極121と同様に、弾性を有する樹脂材料からなる第2コア部391と、第2コア部391の表面の少なくとも一部を覆う第2配線である第2バンプ配線392と、を有する。
第2コア部391は、上述した駆動回路120の第1バンプ電極121を構成する第1コア部122と同様の材料を用いて同様の断面形状で形成されている。このような第2コア部391は、第1の方向Xに直線状に連続して配置されている。また、第2コア部391は、第2の方向Yにおいて、圧電アクチュエーター150の活性部の2列の外側のそれぞれに1本ずつの計2本と、圧電アクチュエーター150の活性部の2列の間に1本と、の合計3本が設けられている。そして、2列の圧電アクチュエーター150の活性部の外側に設けられた各第2コア部391が、第2個別配線312を個別リード電極91に接続するための第2バンプ電極39を構成する。また、圧電アクチュエーター150の活性部の2列の間に設けられた第2コア部391が、第2バイアス配線342と2列の圧電アクチュエーター150の共通リード電極92とを接続するための第2バンプ電極39を構成する。
また、第2個別配線312を個別リード電極91に接続するための第2バンプ電極39を構成する第2バンプ配線392は、本実施形態では、第2個別配線312を第2コア部391上まで延設することで、第2個別配線312を第2バンプ配線392として用いている。
同様に、第2バイアス配線342を共通リード電極92に接続するための第2バンプ電極39を構成する第2バンプ配線392は、本実施形態では、第2バイアス配線342を第2コア部391上まで延設することで、第2接続配線38を第2バンプ配線392として用いている。もちろん、第2個別配線312及び第2接続配線38と第2バンプ配線392とを別の配線として、両者の一部を積層することで電気的に接続するようにしてもよい。
なお、第2バイアス配線342は、第1の方向Xに沿って所定の間隔で複数箇所において第2コア部391上まで延設されている。つまり、第2バイアス配線342と共通リード電極92を接続する第2バンプ電極39は、第1の方向Xに亘って所定の間隔で複数設けられている。このような第2バイアス配線342は、上述のように、第2貫通配線345を介して第1面301の第1バイアス配線341と電気的に接続されている。このため、第1の方向Xに亘ってバイアス配線34の電気抵抗値を実質的に低下させることができる。すなわち、バイアス配線34を配線基板30の第1面301に、長手方向である第1の方向Xに亘って設けることなく、第2面302にバイアス配線34の一部である第2バイアス配線342を複数設けることで、第1の方向Xに亘ってバイアス配線34の電気抵抗値を低下させることができるため、バイアス配線34の電流容量不足による電圧降下を抑制することができる。
さらに、第2バイアス配線342は、第2バンプ電極39を介して共通リード電極92と第2の方向Yの複数箇所で電気的に接続されている。このため、第2電極80の第1の方向Xにおける電圧降下が抑制され、各活性部へのバイアス電圧の印加ばらつきを抑制することができる。
また、流路形成基板10と配線基板30とは、接着層300によって接着されており、これにより、第2バンプ電極39を構成する第2バンプ配線392である第2個別配線312及び第2バイアス配線342と個別リード電極91及び共通リード電極92とは互いに当接した状態で固定されている。
このように流路形成基板10と配線基板30とを接合する接着層300によって、流路形成基板10と配線基板30との間には、内部に圧電アクチュエーター150が配置された空間である保持部160が形成されている。
このように第2個別配線312と第2バイアス配線342とを個別リード電極91と共通リード電極92とに第2バンプ電極39によって接続することで、配線基板30と流路形成基板10との接続時の荷重を低減して、配線基板30及び流路形成基板10の反りを低減することができる。また、上述のように、駆動回路120を配線基板30に実装する際に第1バンプ電極121を用いることで、配線基板30と流路形成基板10との間の第2バンプ電極39がつぶれるように変形するのを抑制することができる。つまり、駆動回路120を配線基板30に実装する際に、金バンプなどの金属のみで形成された金属バンプを用いた場合、駆動回路120を実装する際の荷重が高くなることから、配線基板30と流路形成基板10との間の第2バンプ電極39がつぶれるように変形してしまう。第2バンプ電極39がつぶれるように変形すると、第2バンプ電極39が互いに隣り合う個別リード電極91に接触するなどの短絡が生じてしまう虞がある。また、第2バンプ電極39がつぶれるように変形すると、圧電アクチュエーター150と配線基板30との間隔が短くなり、圧電アクチュエーター150が配線基板30に当接することによって圧電アクチュエーター150の変形が阻害される虞がある。また、第2バンプ電極39がつぶれるように変形すると、圧電アクチュエーター150と配線基板30の第2面302に設けられた配線との距離が近くなり、配線と圧電アクチュエーター150の電極とが接触することや、放電により絶縁破壊が発生する虞がある。
本実施形態では、第1バンプ電極121を用いて駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を低くすることができるため、第2バンプ電極39がつぶれるように変形するのを抑制することができる。したがって、圧電アクチュエーター150と配線基板30との距離を保つことができ、つぶれた第2バンプ電極39が互いに隣り合う個別リード電極91等に接触して短絡するのを抑制することができる。また、配線基板30が圧電アクチュエーター150の変形を阻害するのを抑制することができる。さらに、圧電アクチュエーター150と配線基板30の第2面302に設けられた配線とが接触することや、放電により絶縁破壊が発生するのを抑制することができる。
ちなみに、第2バンプ電極39の変形を抑制するために、駆動回路120を配線基板30に実装してから配線基板30と流路形成基板10とを接合する方法も考えられるものの、駆動回路120は高価であるため、駆動回路120を先に実装した配線基板30と流路形成基板10との接合不良が生じると歩留まりが低下しコストが高くなってしまう。また、流路形成基板10は、配線基板30を接合することでハンドリングを向上した状態で異方性エッチング(ウェットエッチング)などの加工が行われるため、配線基板30に先に駆動回路120が実装されていると、流路形成基板10の加工が困難になる。したがって、製造工程の簡略化やコストを鑑みると配線基板30と流路形成基板10とを接合した後に、配線基板30に駆動回路120を実装する必要があり、このような順番の製造工程では第2バンプ電極39の変形が生じ易い。本実施形態では、配線基板30と流路形成基板10とを接合した後に、駆動回路120を第1バンプ電極121によって配線基板30に実装することで、第2バンプ電極39の変形を抑制することができる。
また、本実施形態では、第2バンプ電極39の数は、第1バンプ電極121の数よりも多いのが好ましい。このように第2バンプ電極39の数を、第1バンプ電極121の数よりも多くすることで、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重が複数の第2バンプ電極39に分散されるため、1つの第2バンプ電極39に印加される荷重を低減して、第2バンプ電極39の変形をさらに抑制することができる。
また、図4に示すように、配線基板30と流路形成基板10との積層方向である第3の方向Zにおいて、第2バンプ電極39の高さH2は、第1バンプ電極121の第1コア部122の高さH1よりも高いのが好ましい。これにより、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重によって第2バンプ電極39がつぶれるように変形したとしても、第2バンプ電極39の変形による影響、すなわち、上述した第2バンプ電極39が互いに隣り合う個別リード電極91に接触することによる短絡、圧電アクチュエーター150の変形の阻害、配線基板30の第2面302の配線と圧電アクチュエーター150の電極とが接触による短絡や放電による絶縁破壊を抑制することができる。
また、第2バンプ電極39の各々の個別リード電極91及び共通リード電極92との接続面積は、第1バンプ電極121の各々の駆動回路120との接続面積よりも大きいことが好ましい。すなわち、第2バンプ電極39の各々の個別リード電極91及び共通リード電極92との接続長は、第1バンプ電極121の各々の駆動回路120との接続長よりも大きい。これにより、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を、第2バンプ電極39の比較的広い接触面積で支えることができ、第2バンプ電極39の変形を抑制することができる。
このように、第2個別配線312と第2バイアス配線342とを個別リード電極91と共通リード電極92とに接続する第2バンプ電極39は、第1の方向Xに並設された列が、第2の方向Yに3列設けられている。つまり、圧電アクチュエーター150の活性部が第1の方向Xに並設された列の各々に対して、第2バンプ電極39が第1の方向Xに並設された列が、第2の方向Yに2列設けられている。このような第2バンプ電極39に対して、第1バンプ電極121は、第2の方向Yにおいて、第2バンプ電極39の列の間に設けられている。すなわち、第3の方向Zから平面視した際に、第1バンプ電極121は、第2の方向Yにおいて、第2バンプ電極39の列の間に配置されている。したがって、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を、第1バンプ電極121の両側の第2バンプ電極39によって支えることができ、荷重の偏りによる第2バンプ電極39の偏った変形などを抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態では、液体としてインクを噴射するノズル開口21に連通する流路である圧力発生室12内のインクに圧力変化を生じさせる駆動素子である圧電アクチュエーター150の活性部を有する駆動素子基板である流路形成基板10と、圧電アクチュエーター150の活性部を駆動する信号を出力する駆動回路120と、圧電アクチュエーター150の活性部とは反対側の第1面301が駆動回路120側、第2面302が流路形成基板10側となる配線基板30と、を備え、配線基板30は第1面301側に駆動回路120と接続されて圧電アクチュエーター150の活性部の個別電極である第1電極60に接続される個別配線31の第1個別配線311と配線基板30の第1溝304内に埋設された第1埋設配線35とを具備し、第1埋設配線35における駆動回路120との接続部は、第1個別配線311における駆動回路120との接続部よりも配線基板30側の界面を有しており、第1個別配線311と第1埋設配線35とのそれぞれは、弾性を有する第1コア部122と第1コア部122の一部を覆う第1配線である第1バンプ配線123とを有する第1バンプ電極121によって駆動回路120と電気的に接続されており、配線基板30の第2面302には、弾性を有する第2コア部391と第2コア部391の一部を覆う第2配線である第2バンプ配線392とを有する第2バンプ電極39によって圧電アクチュエーター150の活性部と電気的に接続されている。
このように、弾性を有する第1コア部122を有する第1バンプ電極121は、金バンプなどの金属のみで形成された金属バンプに比べて変形し易いため、駆動回路120を配線基板30に押し当てる荷重を金属バンプに比べて低くすることができる。したがって、駆動回路120及び配線基板30の反りを低減することができる。また、駆動回路120や配線基板30の反りを抑制することができるため、高い残留応力が残るのを抑制して、残留応力による剥離や実装不良が発生するのを抑制することができる。
また、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を低下させることができるため、配線基板30と流路形成基板10とを接続する弾性を有する第2コア部391を有する第2バンプ電極39がつぶれるように変形するのを抑制することができる。これにより、第2バンプ電極39が変形することによる配線の短絡や、放電による絶縁破壊や配線基板30が圧電アクチュエーター150の変位を阻害するのを抑制することができる。
また、第1埋設配線35は、駆動回路120に駆動信号を供給する駆動信号配線32であることが好ましい。これによれば、第1面301の狭いスペースに横断面積が大きく、電気抵抗値が低い駆動信号配線32を設けることができる。また、駆動信号配線32を高密度に配置することができ、配線基板30を第1面301の面内方向に小型化することができる。
また、第1埋設配線35は、駆動回路120に電源を供給する電源配線33であることが好ましい。これによれば、第1面301の狭いスペースに横断面積が大きく、電気抵抗値が低い電源配線33を設けることができる。また、電源配線33を高密度に配置することができ、配線基板30を第1面301の面内方向に小型化することができる。
また、第2バンプ電極39は、第1バンプ電極121よりも多いことが好ましい。このように第2バンプ電極39の数を、第1バンプ電極121の数よりも多くすることで、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重が複数の第2バンプ電極39に分散されるため、1つの第2バンプ電極39に印加される荷重を低減して、第2バンプ電極39の変形をさらに抑制することができる。
また、配線基板30と流路形成基板10との積層方向である第3の方向Zにおいて、第2バンプ電極39の第2コア部391の高さは、第1バンプ電極121の第1コア部122の高さよりも高いことが好ましい。これにより、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重によって第2バンプ電極39がつぶれるように変形したとしても、第2バンプ電極39の変形による影響、すなわち、上述した第2バンプ電極39が互いに隣り合う個別リード電極91に接触することによる短絡、圧電アクチュエーター150の変形の阻害、配線基板30の第2面302の配線と圧電アクチュエーター150の電極とが接触による短絡や放電による絶縁破壊を抑制することができる。
また、第2バンプ電極39の各々の圧電アクチュエーター150の活性部との接続面積は、第1バンプ電極121の各々の駆動回路120との接続面積よりも大きいことが好ましい。これによれば、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を、第2バンプ電極39の比較的広い接触面積で支えることができ、第2バンプ電極39の変形を抑制することができる。
また、圧電アクチュエーター150の活性部が第1の方向Xに並設された列を具備し、圧電アクチュエーター150の活性部の列に対して、第2バンプ電極39が第1の方向Xに並設された列が、第1の方向Xに交差する第2の方向Yに2列以上設けられており、第1バンプ電極121は、第2の方向Yにおいて、第2バンプ電極39の列の間に設けられていることが好ましい。これによれば、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を、第1バンプ電極121の両側の第2バンプ電極39によって支えることができ、荷重の偏りによる第2バンプ電極39の偏った変形などを抑制することができる。
図1〜図3に示すように、このような流路形成基板10、配線基板30、連通板15及びノズルプレート20の接合体には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100を形成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、配線基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、ケース部材40は、配線基板30側に流路形成基板10及び配線基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、配線基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。また、ケース部材40には、凹部41の第2の方向Yの両側に凹形状を有する第3マニホールド部42が形成されている。この第3マニホールド部42と、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18とによって本実施形態のマニホールド100が構成されている。
ケース部材40の材料としては、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。ちなみに、ケース部材40として、樹脂材料を成形することにより、低コストで量産することができる。
連通板15のノズルプレート20側の面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45が、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18のノズルプレート20側の開口を封止している。このようなコンプライアンス基板45は、本実施形態では、封止膜46と、固定基板47と、を具備する。封止膜46は、可撓性を有する薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やステンレス鋼(SUS)等により形成された厚さが20μm以下の薄膜)からなり、固定基板47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の硬質の材料で形成される。この固定基板47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する封止膜46のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部49となっている。
ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入路44が設けられている。また、ケース部材40には、配線基板30が露出し、外部配線が挿通される接続口43が設けられており、接続口43に挿入された外部配線130が配線基板30の各配線、すなわち、駆動信号配線32と電源配線33と第1バイアス配線341とに接続されている。
このような構成の記録ヘッド1では、インクを噴射する際に、インクが貯留された液体貯留手段から導入路44を介してインクを取り込み、マニホールド100からノズル開口21に至るまで流路内部をインクで満たす。その後、駆動回路120からの信号に従い、圧力発生室12に対応する各圧電アクチュエーター150に電圧を印加することにより、圧電アクチュエーター150と共に振動板50をたわみ変形させる。これにより、圧力発生室12内の圧力が高まり所定のノズル開口21からインク滴が噴射される。
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係る駆動回路基板の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の部材には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図11に示すように、本実施形態では、配線基板30の第1面301には、上述した実施形態1と同様に、第1個別配線311と駆動信号配線32と電源配線33と第1バイアス配線341とが設けられている。
また、配線基板30の第2面302には、第2バイアス配線342が設けられている。第2バイアス配線342は、配線基板30の第2面302に設けられた第2溝306に埋設された第2埋設配線37と、第2埋設配線37を被覆する第2接続配線38と、を具備する。
第2溝306は、本実施形態では、第1面301に設けられた第1溝304と第3の方向Zにおいて相対向する位置に設けられている。すなわち、本実施形態の各第2溝306は、第2の方向Yの位置が各第1溝304と同じ位置で、且つ第1溝304と同じ幅で設けられている。また、第2溝306は、第1の方向Xに亘って第1の方向Xに沿って直線状に設けられている。このような第2溝306は、圧電アクチュエーター150の活性部の列毎にそれぞれ6個、合計12個設けられている。
このような第2溝306は、上述した第1溝304と同様に、配線基板30の表面の結晶方位である(110)面に垂直な第1の(111)面と、第1の(111)面に相対向して(110)面に垂直な第2の(111)面とで内壁面が形成されている。すなわち、第2溝306は、第1溝304と同様にアルカリ溶液を用いた異方性エッチング(ウェットエッチング)によって高精度に形成することができる。また、第1溝304と第2溝306とは、異方性エッチングによって同時に形成することが可能である。
この第2溝306内に、第2埋設配線37が埋め込まれている。すなわち、第2埋設配線37は、圧電アクチュエーター150の活性部の列毎に6本、合計12本設けられている。このような第2埋設配線37は、上述した第1溝304内に埋設された第1埋設配線35と同様に、銅(Cu)等の金属からなり、例えば、電解めっき、無電界めっき、導電性ペーストの印刷などの方法によって形成することができる。
第2接続配線38は、第2埋設配線37を覆うように積層されている。本実施形態の第2バイアス配線342では、第2接続配線38は複数の第2埋設配線37を連続して覆うように積層されている。すなわち、1つの第2接続配線38が圧電アクチュエーター150の活性部の列毎に設けられた6本の第2埋設配線37の全てを覆うように設けられている。
このような第2接続配線38は、第1接続配線36と同様に、第2埋設配線37側に設けられたチタン(Ti)等の密着層と、密着層上に設けられた金(Au)等の導電層とを積層したものを用いることができる。もちろん、第2接続配線38として、その他の導電性材料で形成された層が積層されていてもよい。なお、第2接続配線38は、第2個別配線312と同時に形成することができる。これにより、製造工程を簡略化してコストを低減することができる。
このような第2埋設配線37と第2接続配線38とによって第2バイアス配線342が形成されている。
また、特に図示していないが、上述した実施形態と同様に第1バイアス配線341と接続された第2貫通配線345は、第2溝306の底面において第2埋設配線37と接続されている。これにより、バイアス配線34は、第1バイアス配線341と第2貫通配線345と第2バイアス配線342とを有する。
このように第2面302にバイアス配線34を構成する第2バイアス配線342を設けることで、第1面301に第1の方向Xに亘ってバイアス配線34を設ける必要がなく、第1面301に第1の方向Xに亘ってバイアス配線34を設けるスペースが不要となって配線基板30の小型化を図ることができる。つまり、バイアス配線34の主要部分である第2バイアス配線342を第1面301に比べてスペースに余裕のある第2面302に設けることで、配線基板30の大型化を抑制して、小型化を図ることができる。
そして、配線基板30の第2面302に設けられた第2バイアス配線342は、本実施形態では、第2溝306内に設けられた第2埋設配線37を有するため、高さの低い保持部160内に電気抵抗値の低い第2バイアス配線342を設けることができる。すなわち、配線基板30の第2面302に第2溝306を設けずに、第2バイアス配線342を設ける場合、保持部160の高さに制限があることから、配線を高く形成することができず、配線の横断面積が小さくなって、電気抵抗値が高くなってしまう。また、第2バイアス配線342の電気抵抗値を低くするために、第2バイアス配線342の幅を広げると、配線基板30や流路形成基板10が第2の方向Yに大型化してしまう。さらに、配線基板30に第2溝306を設けずに、厚さの比較的厚い配線を形成する場合、フォトリソグラフィー法の制限によって配線を高精度及び高密度にパターニングするのが困難であり、厚さの比較的薄い配線しか形成することができない。さらに、配線を厚く形成すると配線と圧電アクチュエーター150とが近くなり、配線と圧電アクチュエーター150の電極とが接触することや、放電により絶縁破壊が発生する虞がある。本実施形態では、第2埋設配線37は、第2溝306によってその厚さが決定されると共に、第2溝306によってパターンが形成されるため、表面のみに配線を形成する場合に較べて、比較的厚い、例えば20μm〜40μm程度の厚さの第2埋設配線37を40μm〜50μmのピッチで高密度に形成することができる。したがって、第2埋設配線37の横断面積を増大させて第2バイアス配線342の電気抵抗値を低下させることができる。また、第2埋設配線37の横断面積を増大させることができるため、第2埋設配線37の第2の方向Yの幅を狭くしても電気抵抗値が著しく高くなるのを抑制することができる。したがって、第2埋設配線37を高密度に配置して配線基板30及び流路形成基板10の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、1本の第2バイアス配線342は、複数、具体的には6本の第2埋設配線37を有する。したがって、第2バイアス配線342は複数の第2埋設配線37によってバイアス電圧(VBS)が外部配線130から供給される第1の方向Xの一端部から他端部までの電気抵抗値を効果的に低下させることができる。
このような実施形態2の記録ヘッド1においても、駆動回路120と配線基板30との接続に上述した実施形態1と同様の第1バンプ電極121を用いることで、駆動回路120を配線基板30に押し当てる荷重を金属バンプに比べて低くすることができる。したがって、駆動回路120及び配線基板30の反りを低減することができる。また、駆動回路120や配線基板30の反りを抑制することができるため、高い残留応力が残るのを抑制して、残留応力による剥離や実装不良が発生するのを抑制することができる。
また、駆動回路120を配線基板30に実装する際の荷重を低下させることができるため、配線基板30と流路形成基板10とを接続する第2バンプ電極39がつぶれるように変形するのを抑制することができる。これにより、第2バンプ電極39が変形することによる配線の短絡や、放電による絶縁破壊や配線基板30が圧電アクチュエーター150の変位を阻害するのを抑制することができる。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した各実施形態では、バイアス配線34を構成する第2バイアス配線342を配線基板30の第2面302に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第2バイアス配線342を第1面301のみに設けるようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、駆動信号配線32を配線基板30の第1面301のみに形成したが、特にこれに限定されず、駆動信号配線32の一部を第2面302にも形成するようにしてもよい。また、第2面302に駆動信号配線32の一部を設ける際には、駆動信号配線32は、第2埋設配線37を有するものであってもよい。
また、上述した各実施形態では、駆動信号配線32と電源配線33とが第1埋設配線35を有する構成を例示したが、特にこれに限定されず、駆動信号配線32と電源配線33との何れか一方のみが第1埋設配線35を有するものであってもよい。
また、上述した各実施形態では、配線基板30の第2面302に第2バンプ電極39を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、流路形成基板10に第2バンプ電極39を設けるようにしてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、2列の圧電アクチュエーター150に対して1つの駆動回路120を設けたが、特にこれに限定されない。例えば、1列の圧電アクチュエーター150の列毎に駆動回路120を設けてもよく、1列の圧電アクチュエーター150の列に対して、第1の方向Xで2つ以上に分割された複数の駆動回路120を設けるようにしてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、第2バンプ配線392を共通リード電極92に接続する第2バンプ電極39は、2つの第2バンプ配線392から引き出された第2接続配線38を1つの第2コア部391の表面の一部を覆うように設けたが、特にこれに限定されず、例えば、第2バンプ配線392毎に第2コア部391を設けるようにしてもよい。また、第2バンプ配線392用の第2バンプ電極39の第2コア部391と、第2個別配線312用の第2バンプ電極39の第2コア部391とを共通化してもよい。
さらに、上述した各実施形態では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる駆動素子として、薄膜型の圧電アクチュエーター150を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、駆動素子として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
なお、実施形態の記録ヘッド1は、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。図12は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
図示するように、インクジェット式記録装置Iにおいて、記録ヘッド1は、インク供給手段を構成するカートリッジ2が着脱可能に設けられ、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラーに限られずベルトやドラム等であってもよい。
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置Iは、液体貯留手段であるカートリッジ2がキャリッジ3に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、例えば、インクタンク等の液体貯留手段を装置本体4に固定して、貯留手段と記録ヘッド1とをチューブ等の供給管を介して接続してもよい。また、液体貯留手段がインクジェット式記録装置に搭載されていなくてもよい。
さらに、本発明は、広くヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。