以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。便宜上、各図には、適宜、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。本実施の形態は、車載用のヘッドアップディスプレイに本発明を適用したものである。
<実施形態1>
図1(a)、(b)は、画像表示装置20の使用形態を模式的に示す図である。図1(a)は、乗用車1の側方から乗用車1の内部を透視した模式図、図1(b)は、乗用車1の内部から走行方向前方を見た図である。
図1(a)に示すように、画像表示装置20は、乗用車1のダッシュボード11の内部に設置される。
図1(a)、(b)に示すように、画像表示装置20は、映像信号により変調されたレーザ光を、ウインドシールド12下側の運転席寄りの投射領域13に投射する。レーザ光は、投射領域13で反射され、運転者2の目の位置周辺の横長の領域(アイボックス領域)に照射される。これにより、運転者2の前方の視界に、虚像として所定の画像30が表示される。運転者2は、ウインドシールド12の前方の景色上に、虚像である画像30を重ね合わせて見ることができる。すなわち、画像表示装置20は、虚像である画像30をウインドシールド12の投射領域13の前方の空間に結像させる。
図1(c)は、画像表示装置20の構成を模式的に示す図である。
画像表示装置20は、照射光生成部21と、ミラー22とを備える。照射光生成部21は、映像信号により変調されたレーザ光を出射する。ミラー22は曲面状の反射面を有し、照射光生成部21から出射されたレーザ光をウインドシールド12に向けて反射する。ウインドシールド12で反射されたレーザ光は、運転者2の目2aに照射される。照射光生成部21の光学系とミラー22は、ウインドシールド12の前方に虚像による画像30が所定の大きさで表示されるように設計されている。
図2は、画像表示装置20の照射光生成部21の構成および照射光生成部21に用いる回路の構成を示す図である。
照射光生成部21は、光源101と、コリメータレンズ102a〜102cと、ミラー103と、ダイクロイックミラー104、105と、走査部106と、補正レンズ107と、可動スクリーン301と、固定スクリーン302と、駆動部300とを備える。
光源101は、3つのレーザ光源101a〜101cを備える。レーザ光源101a〜101cは、それぞれ、赤色波長帯、緑色波長帯および青色波長帯のレーザ光を出射する。本実施形態では、画像30としてカラー画像を表示するために、光源101が3つのレーザ光源101a〜101cを備えている。画像30として単色の画像を表示する場合、光源101は、画像の色に対応する1つのレーザ光源のみを備えていてもよい。レーザ光源101a〜101cは、たとえば、半導体レーザからなっている。
レーザ光源101a〜101cから出射されたレーザ光は、それぞれ、コリメータレンズ102a〜102cによって略平行光に変換される。このとき、レーザ光源101a〜101cから出射されたレーザ光は、それぞれ、図示しないアパーチャによって、円形のビーム形状に整形される。なお、コリメータレンズ102a〜102cに代えて、レーザ光を円形のビーム形状に整形し且つ平行光化する整形レンズを用いてもよい。この場合、アパーチャは省略され得る。
その後、レーザ光源101a〜101cから出射された各色のレーザ光は、ミラー103と2つのダイクロイックミラー104、105によって光軸が整合される。ミラー103は、コリメータレンズ102aを透過した赤色レーザ光を略全反射する。ダイクロイックミラー104は、コリメータレンズ102bを透過した緑色レーザ光を反射し、ミラー103で反射された赤色レーザ光を透過する。ダイクロイックミラー105は、コリメータレンズ102cを透過した青レーザ光を反射し、ダイクロイックミラー104を経由した赤色レーザ光および緑色レーザ光を透過する。ミラー103と2つのダイクロイックミラー104、105は、レーザ光源101a〜101cから出射された各色のレーザ光の光軸を整合させるように配置されている。
走査部106は、ダイクロイックミラー105を経由した各色のレーザ光を反射する。走査部106は、たとえば、MEMS(micro electro mechanical system)ミラーからなっており、ダイクロイックミラー105を経由した各色のレーザ光が入射されるミラー106aを、駆動信号に応じて、Y軸に平行な軸とX軸に平行な軸の周りに回転させる構成を備える。このようにミラー106aを回転させることにより、レーザ光の反射方向が、X−Z平面の面内方向およびY−Z平面の面内方向において変化する。これにより、後述のように、各色のレーザ光によって可動スクリーン301が走査される。
なお、ここでは、走査部106が、2軸駆動方式のMEMSミラーにより構成されたが、走査部106は、他の構成であってもよい。たとえば、Y軸に平行な軸の周りに回転駆動されるミラーと、X軸に平行な軸の周りに回転駆動されるミラーとを組み合わせて走査部106が構成されてもよい。
補正レンズ107は、走査部106によるレーザ光の振り角に拘わらず、各色のレーザ光をZ軸正方向に向かわせるように設計されている。可動スクリーン301および固定スクリーン302は、それぞれ、レーザ光が走査されることにより画像が形成され、入射したレーザ光を運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス領域)に拡散させる作用を有する。
駆動部300は、可動スクリーン301をレーザ光の進行方向に平行な方向(Z軸方向)に往復移動させる。駆動部300の構成は、追って、図3〜図13を参照して説明する。固定スクリーン302は、駆動部300によって移動されない。固定スクリーン302は、駆動部300上の所定の位置に固定される。固定スクリーン302の配置については、追って、図10および図11を参照して説明する。
画像処理回路201は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理ユニットやメモリを備え、入力された映像信号を処理してレーザ駆動回路202、ミラー駆動回路203およびスクリーン駆動回路204を制御する。レーザ駆動回路202は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、レーザ光源101a〜101cの出射強度を変化させる。ミラー駆動回路203は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、走査部106のミラー106aを駆動する。スクリーン駆動回路204は、画像処理回路201からの制御信号に応じて、可動スクリーン301を駆動する。画像表示動作時における画像処理回路201における制御については、追って、図15(b)を参照して説明する。
図3は、駆動部300の構成を示す斜視図である。なお、以下では、XYZ軸により方向を規定する他、便宜上、平面視において、駆動部300の中心に近い方を内側とし、駆動部300の中心から離れた方を外側として構成の説明を行う。
駆動部300は、ホルダ303と、カバー304と、2つのサスペンション305と、支持部材306と、ベース307と、ワッシャー308と、ネジ309と、磁気回路310とを備えている。可動スクリーン301は、ホルダ303に保持され、固定スクリーン302は、カバー304に保持されている。カバー304には、開口304aが形成され、この開口304aから可動スクリーン301が露出している。固定スクリーン302は、開口304aのY軸正側の部分に設置されている。
ホルダ303は、サスペンション305によって、Z軸方向に移動可能に支持されている。支持部材306がベース307に設置され、この支持部材306に、サスペンション305がワッシャー308とネジ309により固定されている。さらに、ベース307には磁気回路310が設置されている。ホルダ303に保持されたコイル(図示せず)に磁気回路310から磁界が印加される。コイルに電流を流すことにより、ホルダ303がZ軸方向に駆動される。
図4は、磁気回路310の構成を示す分解斜視図である。
磁気回路310は、第1のヨーク311と、第1の磁石312a、312bと、第2のヨーク313と、第2の磁石314a、314bとを備えている。
ベース307は、平面視において略長方形の輪郭を有する。ベース307は、磁性体からなっている。ベース307には、開口307aと、4つの突起307bと、8つのボス307cと、9つのネジ穴307dが形成されている。開口307aは、図2に示す補正レンズ107からのレーザ光をZ軸正方向に通すためのものである。突起307bとボス307cは、ベース307上に設置される各部材を所定の位置に位置決めするためのものである。ネジ穴307dは、ベース307上に設置される各部材をネジで固定するためのものである。
第1のヨーク311は、外側の壁部311aと内側の壁部311bとを備える。壁部311a、311bの互いに向き合う内側面に、それぞれ、第1の磁石312a、312bが装着される。また、第2のヨーク313は、外側の壁部313aと内側の壁部313bとを備える。壁部313a、313bの互いに向き合う内側面に、それぞれ、第2の磁石314a、314bが装着される。
図5(a)〜(c)は、それぞれ、第1のヨーク311および第1の磁石312a、312bの構成を示す正面図、側面図および平面図である。また、図5(d)〜(f)は、それぞれ、第2のヨーク313および第2の磁石314a、314bの構成を示す正面図、側面図および平面図である。
なお、図5(a)〜(c)には、図4のX軸正側の第1のヨーク311と第1の磁石312a、312bの組み合わせが、XYZ軸とともに図示されている。また、図5(d)〜(f)には、図4のY軸負側の第2のヨーク313と第2の磁石314a、314bの組み合わせが、XYZ軸とともに図示されている。図4のX軸負側の第1のヨーク311と第1の磁石312a、312bの組み合わせおよびY軸正側の第2のヨーク313と第2の磁石314a、314bの組み合わせも、図5(a)〜(c)の構成および図5(d)〜(f)の構成と同様である。
図5(a)〜(c)を参照して、第1のヨーク311は、Y軸方向からの側面視において、略U字の形状を有する。すなわち、Y軸方向の中央位置で第1のヨーク311を切断した断面は、略U字状である。第1のヨーク311は、たとえば、平板の展開状態から壁部311a、311bの部分を折り曲げることにより形成される。第1のヨーク311は、Y軸方向に対称な形状である。
図5(c)に示すように、壁部311aは、幅方向(Y軸方向)に分離されており、分離された壁部311aにそれぞれ第1の磁石312aが設置されている。同様に、壁部311bも、幅方向(Y軸方向)に分離され、分離された壁部311aにそれぞれ第1の磁石312aが設置されている。したがって、2つの壁部311aの間には隙間311cがあり、また、2つの壁部311bの間にも隙間311dがある。
X軸方向に見たときの第1の磁石312a、312bの輪郭は、方形形状である。第1の磁石312aは、第1の磁石312bよりもY軸方向の幅が広い。Z軸方向における第1の磁石312aと第1の磁石312bの幅は、互いに同じである。図5(c)に示すように、第1の磁石312aのY軸方向の幅は、壁部311aのY軸方向の幅よりも狭く、第1の磁石312bのY軸方向の幅は、壁部311bのY軸方向の幅よりも広い。第1のヨーク311の底部には、ネジ止めのための孔311eが形成されている。
図5(d)〜(f)を参照して、第2のヨーク313は、X軸方向からの側面視において、略U字の形状を有する。すなわち、X軸方向の中央位置で第2のヨーク313を切断した断面は、略U字状である。第2のヨーク313は、たとえば、平板の展開状態から壁部313a、313bの部分を折り曲げることにより形成される。第2のヨーク313は、X軸方向に対称な形状である。
Y軸方向に見たときの第2の磁石314a、314bの輪郭は、方形形状である。第2の磁石314aは、第2の磁石314bよりもX軸方向の幅が広い。Z軸方向における第2の磁石314aと第2の磁石314bの幅は、互いに同じである。図5(f)に示すように、第2の磁石314aのX軸方向の幅は、壁部313aのX軸方向の幅よりも狭く、第2の磁石314bのX軸方向の幅は、壁部313bのX軸方向の幅と同じである。第2のヨーク313の底部には、ネジ止めのための2つの孔313cが形成されている。
図4に戻り、このように第1の磁石312a、312bが設置された状態で、X軸正側の第1のヨーク311が、ベース307の開口307aのX軸正側に設置され、X軸負側の第1のヨーク311が、ベース307の開口307aのX軸負側に設置される。また、第2の磁石314a、314bが設置された状態で、Y軸正側の第2のヨーク313が、ベース307の開口307aのY軸正側に設置され、Y軸負側の第2のヨーク313が、ベース307の開口307aのY軸負側に設置される。こうして、図6に示すように、磁気回路310がベース307上に設置される。
たとえば、第1の磁石312a、312bは、内側の第1の磁石312bから外側の第1の磁石312aへと磁界が向かうように磁極が調整され、また、第2の磁石314a、314bは、内側の第2の磁石314bから外側の第2の磁石314aへと磁界が向かうように磁極が調整されている。
図7(a)は、ホルダ303、可動スクリーン301およびコイル315の組立て過程を示す斜視図である。
ホルダ303は、樹脂等の比重が小さい材料で一体形成されている。ホルダ303は、X軸方向に対称な形状を有し、且つ、Y軸方向に対称な形状を有している。ホルダ303は、可動スクリーン301が設置される略長方形の内枠303aと、コイル315が設置される略長方形の外枠303bとを備えている。内枠303aは、橋部303cによって外枠303bに接続されている。橋部303cは、内枠303aのY軸方向の中央位置と、外枠303bのY軸方向の中央位置とを繋いでいる。さらに、外枠303bのY軸方向の中央位置に、2つの被支持部303dが、X軸方向に延びるように形成されている。
機械的強度を保ちつつ軽量化を図るため、ホルダ303の内枠303aと被支持部303dには、種々の抜き孔303eが形成されている。また、内枠303aには、レーザ光を通すための開口303fが設けられている。開口303fは、平面視において略長方形の輪郭を有する。開口303fの周囲に段差が設けられている。この段差に、可動スクリーン301の端縁301aが嵌め込まれて、可動スクリーン301がホルダ303の内枠303aに装着される。可動スクリーン301は、接着剤により内枠303aに固定される。
また、外枠303bの4つの角部分には、それぞれ、Z軸負側に突出する円柱状の突起303gが形成されている。これら突起303gにコイル315の内側が嵌め込まれて、コイル315がホルダ303の外枠303bに装着される。コイル315は、接着剤により外枠303bに固定される。コイル315は、Z軸に平行な軸の周りを一方向に回るように構成されている。被支持部303dの上面および下面には、Z軸方向に並ぶ位置に、それぞれ、突部303hが形成されている。さらに、被支持部303dのX軸正側またはX軸負側の側面に、それぞれスケール303iが設置されている。
図7(b)は、ホルダ303およびサスペンション305の組立て過程を示す斜視図である。図7(b)の上側のサスペンション305と下側のサスペンション305は、同じ構造である。下側のサスペンション305と、上側のサスペンション305は、互いに表裏反転された関係にある。ここでは、便宜上、上側のサスペンション305について、構造の説明を行う。
サスペンション305は、可撓性のある金属材料で一体形成されている。サスペンション305は、薄板状のリング形状を有する。サスペンション305の形状は、X軸方向に対称で、且つ、Y軸方向にも対称である。サスペンション305は、開口305aと、X軸方向に延びる一対の板バネ部305bと、Y軸方向に延びる一対の梁部305cとを有する。
板バネ部305bのX軸方向の中央位置、すなわち、X軸方向の対称軸の位置に、Y軸方向に突出する鍔部305dが形成されている。また、板バネ部305bのX軸方向の中央位置には、2つの孔305eと円弧状の切欠き305fが形成されている。板バネ部305bは、X軸方向の中央位置からX軸方向の両端に向かうに従って、Y軸方向の幅が徐々に小さくなっている。これにより、板バネ部305bのバネ定数を保ちながら、板バネ部305bの可動端部の軽量化が図られている。
梁部305cは、Y軸方向の中央位置、すなわち、Y軸方向の対称軸の位置に、X軸方向に突出する鍔部305gが形成されている。また、梁部305cのY軸方向の中央位置には、孔305hが形成されている。梁部305cは、Y軸方向の両端からY軸方向の中央位置に向かうに従って、X軸方向の幅が徐々に小さくなっている。これにより、梁部305cの軽量化が図られている。さらに、梁部305cの外側の端縁と内側の端縁に沿って、Z軸正方向に立ち上げられたリブ部305i、305jが形成されている。これらリブ部305i、305jにより、梁部305cがZ軸方向に撓むことが抑制されている。撓みを抑制することにより、意図しない周波数で振動することを抑制し、意図しない振動が発生した場合においても振幅を小さくすることができる。
上側のサスペンション305は、ホルダ303の被支持部303dの上面に形成された突部303hがサスペンション305の孔305hに嵌め込まれて、ホルダ303に装着される。同様に、下側のサスペンション305は、ホルダ303の被支持部303dの下面に形成された突部303hがサスペンション305の孔305hに嵌め込まれて、ホルダ303に装着される。これらサスペンション305は、接着剤により、ホルダ303の被支持部303dに固着される。
図8は、サスペンション305と支持部材306の組立て過程を示す斜視図である。
支持部材306は、樹脂等の非磁性材料により形成されている。支持部材306は、Y軸方向に対称な形状を有する。平面視において、支持部材306の形状は、C字状である。支持部材306の両端には、それぞれ、X軸方向に延びた後、Y軸方向に屈曲する腕部306aが形成されている。腕部306a端部の上面および下面には、それぞれ、円柱状の突部306bと、半円柱状の突部306cと、ネジ穴306dがY軸方向に並んで形成されている。さらに、支持部材306の内側面には、Y軸方向の中央位置に、エンコーダ306eが設置されている。また、支持部材306の上面には、支持部材306をベース307に位置決めするための2つの穴とネジ止めするための3つの穴306fが形成されている。
上側のサスペンション305を支持部材306に装着する場合、腕部306a上面の突部306b、306cが、それぞれ、サスペンション305の外側の孔305eと切欠き305fに嵌められる。この状態で、サスペンション305の内側の孔305eと腕部306a上面のネジ穴306dとが整合する。この状態で、ワッシャー308を介してネジ309が、サスペンション305の内側の孔305eに通されて、ネジ穴306dに留められる。これにより、上側のサスペンション305が支持部材306に固定される。下側のサスペンション305も、同様にして、腕部306aの下面にネジ止めされる。こうして、2つのサスペンション305が、支持部材306に固定される。
こうして、2つのサスペンション305が、支持部材306に固定されると、支持部材306のエンコーダ306eが、ホルダ303のX軸負側の被支持部303dの側面に設置されたスケール303i(図7(a)参照)と対向する。エンコーダ306eは、Z軸方向におけるスケール303iの移動を光学的に検出するためのものである。エンコーダ306eからの検出信号に基づいて、ホルダ303および可動スクリーン301のZ軸方向の位置が検出される。
図9は、支持部材306とベース307の組立て過程を示す斜視図である。
支持部材306は、穴306fがベース307のネジ穴307dの位置に整合するようにベース307上に位置づけられる。このとき、ホルダ303の外枠303bに装着されたコイル315が、第1の磁石312a、312bの間の隙間および第2の磁石314a、314bの間の隙間に挿入される。また、橋部303cが第1のヨーク311の隙間311dに挿入され、被支持部303dが第1のヨーク311の隙間311cに挿入される。これにより、ホルダ303および可動スクリーン301は、磁気回路310の上面よりも低い位置に位置づけられる。この状態で、穴306fを介してネジがベース307のネジ穴307dにネジ止めされる。これにより、支持部材306がベース307に固定される。
図10は、カバー304および固定スクリーン302の組立て過程を示す斜視図である。
カバー304は、磁性体からなっている。カバー304は、X軸方向に対称な形状である。カバー304には、レーザ光を通すための開口304aが形成されている。開口304aは、Y軸正側の部分のX軸方向の幅がその他の部分よりも小さくなっている。固定スクリーン302は、端縁302aが開口304aのY軸正側の部分に嵌め込まれるようにして、開口304aのY軸正側の部分に装着される。固定スクリーン302は、接着剤により、カバー304の下面に固定される。
こうして固定スクリーン302が装着された状態で、カバー304が磁気回路310の上面に重ねられる。カバー304は、磁性体からなっているため、磁気回路310の磁力により、磁気回路310を構成する第1のヨーク311と第2のヨーク313の上面に吸着される。これにより、カバー304の取り付けが完了し、図3に示す駆動部300が構成される。
図11は、駆動部300の構成を示す平面図である。図12は、カバー304を透視した状態の駆動部300の構成を示す平面図である。
図11および図12に示すように、可動スクリーン301と固定スクリーン302は、Y軸方向に並ぶように配置されている。内枠303aの開口303fは、3分の2程度の領域が、可動スクリーン301によって覆われ、残り3分の1程度の領域が開放されている。開口303fの開放された領域が、固定スクリーン302によって覆われている。Z軸負側から入射したレーザ光は、可動スクリーン301を走査した後、固定スクリーン302を走査する。
図13は、磁気回路310とサスペンション305の部分の平面図である。便宜上、図13には、コイル315が破線で示されているが、実際には、コイル315は、外枠303bのZ軸負側に配置されている。
破線の丸の領域A1に示すように、第1のヨーク311の内側の壁部311bの側端面と第2のヨーク313の内側の壁部313bの外側面とが互いに重なりあうように、第1のヨーク311と第2のヨーク313が配置されている。また、この重なり部分において、第1のヨーク311の内側の壁部311bに設置された第1の磁石312bが、第2のヨーク313の内側の壁部313bの側端面まで延びている。この構成により、より効率的に、コイル315に磁界を印加することができる。
すなわち、このように壁部311bと壁部313bとを重ねることにより、第2のヨーク313の内側の壁部313bをコイル315の角付近まで延ばすことができ、且つ、第1の磁石312bをコイル315の角付近まで延ばすことができる。これにより、コイル315の角付近まで磁界を印加できる。さらに、本実施形態では、第1の磁石312aがコイル315の角付近まで延ばされており、また、第2の磁石314aがコイル315の角付近まで延ばされている。これにより、コイル315の角付近まで磁界を印加できる。
このように、コイル315に効率的に磁界が印加されることにより、コイル315に生じる駆動力(ローレンツ力)が高められる。これにより、ホルダ303および可動スクリーン301を迅速に移動させ得る。
また、図13に示すように、板バネ部305bは、可動スクリーン301の長辺に略平行に配置され、長手方向の中央位置においてベース307側に固定され、両端が梁部305cを介してホルダ303に接続されている。このように、板バネ部305bを可動スクリーン301の長辺に略平行に配置することにより、駆動部300をコンパクトに収めながら、板バネ部305bの固定位置P1から両端までの距離L1を長く確保できる。これにより、ホルダ303の駆動時に生じる板バネ部305bの応力が低減され、ホルダ303駆動時の負荷が軽減される。よって、板バネ部305bの変形を防止し耐久性を高めることができる。
図14は、可動スクリーン301および固定スクリーン302に対するレーザ光の走査方法を模式的に示す図である。
可動スクリーン301は、各色のレーザ光が重ねられたビームB1によって、X軸正方向に走査される。可動スクリーン301に対して、予め、ビームB1が通る走査ラインL11〜L1nが、Y軸方向に一定間隔で設定されている。走査ラインL11〜L1nの開始位置と終了位置は、X軸方向において一致している。したがって、走査ラインL11〜L1nを囲む領域は長方形である。
こうして、可動スクリーン301が走査された後、可動スクリーン301のY軸負側に配置された固定スクリーン302がビームB1によってX軸正方向に走査される。固定スクリーン302にも、予め、ビームB1が通る走査ラインL21〜L2mが、Y軸方向に一定間隔で設定されている。走査ラインL21〜L2mの開始位置と終了位置は、X軸方向において一致している。したがって、走査ラインL21〜L2mを囲む領域は長方形である。
映像信号により各色のレーザ光が変調されたビームB1により走査ラインL11〜L1nと走査ラインL21〜L2mが高周波で走査されることにより、画像が構成される。こうして構成された画像が、可動スクリーン301および固定スクリーン302と、ミラー22およびウインドシールド12(図1(c)参照)を介して、運転者2の目2aの位置周辺の領域(アイボックス)に投射される。これにより、運転者2は、ウインドシールド12の前方の空間に、虚像として画像30を視認する。
図15(a)、(b)は、それぞれ、可動スクリーン301の移動範囲D1を模式的に示す図、および、可動スクリーン301の駆動例を示すグラフである。
図15(a)に示すように、本実施形態では、固定スクリーン302が可動スクリーン301に対してZ軸正側およびY軸正側に変位した位置に固定されている。すなわち、固定スクリーン302は、可動スクリーン301よりも、光源101から光学的に離れた位置に配置され、可動スクリーン301の短辺に平行な方向に、可動スクリーン301から離れた位置に配置されている。
ここで、虚像として生成される画像30は、可動スクリーン301がZ軸負側(光源101側)にあるほど運転者の視点(目2aの位置)から遠い位置に生成される。固定スクリーン302は可動スクリーン301よりもZ軸正側にあるため、固定スクリーン302による画像は、可動スクリーン301による画像よりも、運転者の視点に近い位置に生成される。また、固定スクリーン302は、移動されないため、固定スクリーン302による画像は、常に、運転者の視点から一定の距離の位置に生成される。
図16は、可動スクリーン301と固定スクリーン302によって生成された画像の表示例を模式的に示す図である。
図16の表示例において、奥行き画像M1は、ナビゲーション機能により乗用車1が道路R1を曲がるべき方向を運転者2に示唆するための矢印であり、鉛直画像M2は、歩行者H1が居ることを運転者2に注意喚起するためのマーキングである。たとえば、奥行き画像M1と鉛直画像M2は、互いに異なる色で表示される。可動スクリーン301と固定スクリーン302によって生成された画像が表示される領域S0は、上側の領域S1と下側の領域S2に区分される。上側の領域S1には、可動スクリーン301によって生成された画像が表示され、下側の領域S2には、固定スクリーン302によって生成された画像が表示される。
図16に示すように、領域S1には、奥行き画像M1や鉛直画像M2等、運転に応じて動的に変化する画像が表示される。領域S2には、車速や外気温等の静的な画像が表示される。上記のように、領域S2には、固定スクリーン302によって生成された画像が表示され、この画像は、運転者の視点(目の位置)からの距離が短い位置(たとえば、2m程度の位置)に表示される。この距離は、通常の運転において運転者が眺める距離(たとえば、数10m〜100m程度)よりもかなり短い。よって、領域S2に表示された静的な画像は、通常の運転動作に支障を及ぼしにくい。また、この画像は、領域S0に下部に配置されており、運転者の視界に掛かりにくい。よって、領域S2に表示された静的な画像は、より一層、通常の運転動作に支障を及ぼしにくい。
図15(b)は、図16に示すような動的な画像を領域S1に表示する際の可動スクリーン301の駆動例を示している。
可動スクリーン301は、時刻t0〜t4を1サイクルとして移動が繰り返される。時刻t0〜t1の間に、可動スクリーン301は、初期位置Ps0から最遠位置Ps1へと移動され、時刻t1〜t4の間に、可動スクリーン301は、最遠位置Ps1から初期位置Ps0へと戻される。可動スクリーン301の移動周期、すなわち、時刻t0〜t4の時間は、たとえば、1/60秒である。可動スクリーン301は、エンコーダ306eの出力を監視しながら、上述のコイル315に印加する電流を変化させることにより、図15(b)に示すように移動される。
時刻t0〜t1は、図16において、奥行き方向に広がる奥行き画像M1を表示するための期間であり、時刻t1〜t4は、図16において、鉛直方向に広がる鉛直画像M2を表示するための期間である。
時刻t0〜t1において、可動スクリーン301は、初期位置Ps0から最遠位置Ps1まで線形に移動される。可動スクリーン301が移動すると、これに伴い、ウインドシールド12前方の虚像が結像する位置が前方に移動する。したがって、奥行き画像M1の奥行き方向の各位置に可動スクリーン301が在るときに、奥行き画像M1に対応する走査ライン上の、奥行き画像M1に対応するタイミングにおいて、レーザ光源101a〜101cを発光させることにより、図16に示すような奥行き画像M1を領域S1に虚像として表示させることができる。
一方、鉛直画像M2は、奥行き方向には変化せず、鉛直方向のみに広がっているため、可動スクリーン301を、鉛直画像M2に対応する位置に固定して、虚像の生成を行う必要がある。図15(b)の停止位置Ps2は、鉛直画像M2の奥行き位置に対応する可動スクリーン301の位置である。可動スクリーン301は、最遠位置Ps1から初期位置Ps0に戻る間に、停止位置Ps2において、時刻t2〜t3の間、停止される。この間に、鉛直画像M2に対応する走査ライン上の、鉛直画像M2に対応するタイミングにおいて、レーザ光源101a〜101cを発光させることにより、ウインドシールド12の投射領域13の前方に、図16に示すような鉛直画像M2を虚像として表示させることができる。
以上の制御は、図2に示す画像処理回路201によって行われる。この制御により、時刻t0〜t4の間に、奥行き画像M1と鉛直画像M2が領域S1に虚像として表示される。上記の制御では、奥行き画像M1の表示タイミングと鉛直画像M2の表示タイミングにずれが生じるが、このずれは極めて短時間であるため、運転者2は、奥行き画像M1と鉛直画像M2を重ねた画像を認識する。こうして、運転者2は、映像信号に基づく画像(奥行き画像M1、鉛直画像M2)を、道路R1および歩行者H1を含む風景に重ねて見ることができる。
なお、図16の例では、鉛直画像M2が1つであったため、図15(b)の工程において、可動スクリーン301の停止位置Ps2が1つに設定されたが、鉛直画像M2が複数あれば、それに応じて、図15(b)の工程において、停止位置が複数設定される。ただし、図15(b)の工程において、時刻t0〜t4の時間は一定であり、時刻t4は不変であるため、停止位置の数の増減に応じて、停止位置前後の可動スクリーン301の移動速度(図15(b)の波形の傾き)が変更されることになる。
ところで、本実施形態では、図16の領域S2に表示される画像が固定スクリーン302で生成されるため、図15(a)に示すように、可動スクリーン301を往復移動させる移動範囲D1を小さくできる。たとえば、図16の領域S2に表示される静的な画像も可動スクリーン301で生成する場合は、図15(c)の比較例に示すように、可動スクリーン301に代えて、Y軸方向における固定スクリーン302の範囲まで幅が拡張された可動スクリーン301’を用いて、この可動スクリーン301’をZ軸方向における固定スクリーン302の位置まで移動させる必要がある。したがって、可動スクリーン301’を往復移動させる移動範囲D2が、実施形態1における移動範囲D1に比べてかなり長くなる。
なお、比較例の構成において、図16の画像を表示する場合、可動スクリーン301’は、図15(d)のように移動される。この場合、可動スクリーン301’は、時刻t0〜t1は、図15(c)の固定スクリーン302に対応する位置Ps1’へと移動される。この間に、図16の領域S1に奥行き画像M1が表示される。その後、可動スクリーン301’は、時刻t1’〜t2’の間、停止され、この間に、図16の領域S2に静的な画像が表示される。さらに、時刻t3’〜t4’の間、可動スクリーン301’が停止され、図16の領域S1に鉛直画像M2が表示される。
図16に示すような奥行き画像M1と鉛直画像M2を表示する場合、可動スクリーン301を60Hz程度で高速に移動させる必要がある。これに対し、実施形態1の構成では、固定スクリーン302を設けることにより、可動スクリーン301の移動範囲D1を大幅に短くすることができる。よって、可動スクリーン301を60Hz程度で高速に移動させる場合であっても、円滑かつ安定的に、可動スクリーン301を移動させることができる。
<実施形態1の効果>
実施形態1によれば、以下の効果が奏される。
コイル315と磁気回路310とを用いてホルダ303が駆動されるため、可動スクリーン301をフレームレートに応じた高い周波数で移動させることができる。また、ホルダ303を支持する板バネ部305bが可動スクリーン301の長辺に略平行に配置されるため、駆動部300をコンパクトに収めながら板バネ部305bの長さを長く確保できる。これにより、ホルダ303駆動時に生じる板バネ部305bの応力を低減でき、ホルダ303駆動時の負荷を軽減できる。よって、板バネ部305bの変形を防止し耐久性を高めることができる。さらに、板バネ部305bは、長手方向に対称な形状を有し、長手方向の中央位置、すなわち、対称軸の位置において、ベース307側に固定され、その両端がホルダ303に接続されている。これにより、ホルダ303駆動時に板バネ部305bの両端に生じる応力を略均等にでき、可動スクリーン301を光軸方向に安定的に移動させることができる。したがって、実施形態1の画像表示装置20によれば、可動スクリーン301を高速かつ安定的に移動させることができる。
図10に示すように、2つの板バネ部305bが光軸方向に並ぶように配置されているため、動作時にホルダ303および可動スクリーン301のZ軸方向以外の動作を抑制できる。また、意図しない周波数の動作を抑制できる。
図7(b)に示すように、板バネ部305bは、中央から両端に向かって次第に幅が小さくなっているため、板バネ部305bのバネ定数を保ちながら、板バネ部305bの可動端部を軽くすることができる。よって、ホルダ303および可動スクリーン301のレスポンス性を高めることができる。
図13に示すように、第1のヨーク311の内側の壁部311bの側端面と第2のヨーク313の内側の壁部313bの外側面とが互いに重なりあうように第1のヨーク311と第2のヨーク313が配置され、第1のヨーク311の内側の壁部311bに設置された第1の磁石312bが、第2のヨーク313の内側の壁部313bの側端面まで延びている。これにより、コイル315の角付近まで磁界を印加でき、コイル315に生じる駆動力を高めることができる。よって、ホルダ303および可動スクリーン301をより高速に移動させることができる。
なお、図17に示すように、第1のヨーク311の内側の壁部311bの外側面と第2のヨーク313の内側の壁部313bの側端面とが互いに重なりあうように第1のヨーク311と第2のヨーク313が配置され、第2のヨーク313の内側の壁部313bに設置された第2の磁石314bが、第1のヨーク311の内側の壁部313bの側端面まで延びるように磁気回路310が構成されてもよい。この場合も、上記実施形態1と同様、コイル315の角付近まで磁界を印加でき、コイル315に生じる駆動力を高めることができる。
ベース307が磁性体からなっており、第1のヨーク311および第2のヨーク313がベース307の上面に設置されている。これにより、第1のヨーク311および第2のヨーク313が設置されたベース307の部分が磁路となって、第1のヨーク311および第2のヨーク313において磁束が飽和しにくくなる。よって、第1のヨーク311および第2のヨーク313を薄くすることができ、その結果、駆動部300の外形を小さくすることができる。
図12に示すように、外枠303bから外方に延びる被支持部303dが、第1のヨーク311の壁部311a、311bの間の隙間311c、311dを通って、板バネ部305bの端部に接続されている。また、内枠303aと外枠303bとを繋ぐホルダ303の橋部303cが、第1のヨーク311の内側の壁部311bの間の隙間311dを通るように構成されている。このため、図10に示すように、第1のヨーク311の内側の壁部311bと第2のヨーク313の内側の壁部313bとで囲まれた領域に、内枠303aを配置でき、ホルダ303を磁気回路310の高さの範囲内に収めることができる。よって、Z軸方向における駆動部300の寸法を小さくすることができる。また、内枠303aと被支持部303dとを橋部303cで直線的に接続できるため、磁気回路310を乗り越えるように橋部303cを構成する場合に比べて、橋部303cの体積を小さくできる。このため、ホルダ303を軽くすることができ、ホルダ303および可動スクリーン301のレスポンス性を高めることができる。
なお、図18に示すように、第2のヨーク313の内側の壁部313bをX軸方向に分離させて隙間311fを設けるとともに、X軸方向における内枠303aの中間位置とX軸方向における外枠303bの中間位置とを接続する橋部303jをさらに設け、この橋部303jを隙間311fに通すように構成してもよい。この場合、壁部313bに設置される第2の磁石314aも2つに分離される。さらに、図18の構成において、橋部303cが省略されてもよく、これに伴い、第1のヨーク311の内側の2つの壁部311bが一体化され、2つの第1の磁石312bが一体化されてもよい。この構成によっても、実施形態1の構成と同様の効果が奏され得る。なお、橋部303cや被支持部303d等のホルダ303の一部が磁気回路310を横切る位置は、図12または図18に示す位置に限られるものではなく、他の位置であってもよい。また、橋部303cの数も適宜変更可能である。
磁気回路310の上部に設置されるカバー304が磁性体からなっているため、第1のヨーク311および第2のヨーク313に重ねられたカバー304の部分が磁路となって、第1のヨーク311および第2のヨーク313において磁束が飽和しにくくなる。よって、第1のヨーク311および第2のヨーク313を薄くすることができ、その結果、駆動部300の外形を小さくすることができる。
図3に示すように、駆動部300は、可動スクリーン301と固定スクリーン302とを備えており、可動スクリーン301を駆動して動的な奥行き画像が表示され、固定スクリーン302によって静的な画像が表示される。これにより、図15(a)〜(d)を参照して説明したとおり、動的な画像とともに静的な画像をも可動スクリーン301で表示する比較例の場合に比べて、可動スクリーン301の移動範囲D1(振り幅)を狭めることができ、可動スクリーン301をより円滑かつ迅速に移動させることができる。また、図15(a)、(c)に示すように、実施形態1の構成では、可動スクリーン301のY軸方向のサイズが比較例の可動スクリーン301’よりも小さくなる。このため、可動スクリーン301が軽くなり、可動スクリーン301のレスポンス性を高めることができる。
図15(a)に示すように、固定スクリーン302は、可動スクリーン301の移動範囲D1の外側で、且つ、可動スクリーン301に対して光軸方向に垂直な方向に変位した位置に固定されている。これにより、固定スクリーン302によって生成される画像の結像位置および配置位置を、可動スクリーン301よって生成される画像から分離でき、両画像の視認性を高めることができる。
図15(a)に示すように、固定スクリーン302は、可動スクリーン301よりも、光源101から光学的に離れた位置に配置されている。これにより、固定スクリーン302により生成される静的な画像を運転者の視点(目の位置)に近づけることができ、静的な画像が通常の運転動作に支障を及ぼすことを防ぐことができる。
図12に示すように、固定スクリーン302は、可動スクリーン301の短辺に平行な方向に、可動スクリーン301から離れた位置に配置されている。これにより、図16に示すように、固定スクリーン302により生成された静的な画像を、領域S0に下部に配置でき、静的な画像が運転者の視界に掛かりにくくすることができる。
図10に示すように、固定スクリーン302は、カバー304に装着されているため、簡便に駆動部300に固定することができる。また、カバー304は、可動スクリーン301からの光が通過する開口304aを備え、固定スクリーン302は、開口304aの、可動スクリーン301からの光が通過しない領域に配置される。これにより、固定スクリーン302を通った光の光路と、可動スクリーン301を通った光の光路とを接近させることができ、運転者の視野において、固定スクリーン302の画像と可動スクリーン301の画像を円滑に並べて配置できる。なお、可動スクリーン301からの光が通過する開口304aと、固定スクリーン302が装着される開口は必ずしも繋がってなくてもよく、開口304aの形状、大きさも適宜変更され得る。
<実施形態2>
上記実施形態1に比べて、実施形態2は、駆動部300の構成が異なっている。また、実施形態2では、固定スクリーン302が省略され、図15(b)の比較例と同様、可動スクリーン301のみを備えている。その他の構成は、上記実施形態1と同様である。以下、実施形態2に係る駆動部300の構成について説明する。
図19は、駆動部300の構成を示す斜視図である。
駆動部300は、ホルダ321と、カバー322と、4つの板バネ323と、ワッシャー324と、ネジ325と、ベース326と、支持部材327と、ワッシャー328と、ネジ329と、支持部材330と、エンコーダ331と、磁気回路332とを備えている。可動スクリーン301は、ホルダ321に保持されている。カバー322には、開口322aが形成され、この開口322aから可動スクリーン301が露出している。また、カバー322には、開口322aからX軸方向およびY軸方向に延びる切欠き322bが形成されている。
ホルダ321は、板バネ323によって、Z軸方向に移動可能に支持されている。板バネ323の端部が、ワッシャー324とネジ325によりホルダ321に固定されている。支持部材327がベース326に設置され、この支持部材327に、板バネ323がワッシャー328とネジ329により固定されている。さらに、ベース326には磁気回路332が設置されている。ホルダ321に保持されたコイル(図示せず)に磁気回路332から磁界が印加される。コイルに電流を流すことにより、ホルダ321がZ軸方向に駆動される。
図20は、磁気回路332の構成を示す分解斜視図である。
磁気回路332は、第1のヨーク333と、第1の磁石334a、334bと、第2のヨーク335と、第2の磁石336a、336bとを備えている。
ベース326は、平面視において略正方形の輪郭を有する。ベース326は、磁性体からなっている。ベース326には、開口326aと、複数のボス326bと、複数のネジ穴326cと、抜き孔326dが形成されている。開口326aは、図2に示す補正レンズ107からのレーザ光をZ軸正方向に通すためのものである。ボス326bは、ベース326上に設置される各部材を所定の位置に位置決めするためのものである。ネジ穴326cは、ベース326上に設置される各部材をネジで固定するためのものである。抜き孔326dは、ベース326上に各部材を設置する際に、ベース326の裏側からドライバー等のジグを挿入するためのものである。
第1のヨーク333は、外側の壁部333aと内側の壁部333bとを備える。壁部333a、333bの互いに向き合う内側面に、それぞれ、第1の磁石334a、334bが装着される。また、第2のヨーク335は、外側の壁部335aと内側の壁部335bとを備える。壁部335a、335bの互いに向き合う内側面に、それぞれ、第2の磁石336a、336bが装着される。
なお、実施形態2では、実施形態1と異なり、第1のヨーク333の外側の壁部333aが2つに分離されていない。このため、壁部333aには、1つの第1の磁石334aが設置される。また、実施形態2では、実施形態1と異なり、第2のヨーク335の内側の壁部335bが2つに分離されており、これら2つの壁部335bに、それぞれ第2の磁石336bが設置される。なお、実施形態1と同様、第1のヨーク333は、Y軸方向に対称な形状であり、第2のヨーク335は、X軸方向に対称な形状である。
第1の磁石334a、334bが設置された状態で、X軸正側の第1のヨーク333が、ベース326の開口326aのX軸正側に設置され、X軸負側の第1のヨーク333が、ベース326の開口326aのX軸負側に設置される。また、第2の磁石336a、336bが設置された状態で、Y軸正側の第2のヨーク335が、ベース326の開口326aのY軸正側に設置され、Y軸負側の第2のヨーク335が、ベース326の開口326aのY軸負側に設置される。こうして、図21に示すように、磁気回路332がベース326上に設置される。
図22は、ホルダ321、可動スクリーン301およびコイル337の組立て過程を示す斜視図である。
ホルダ321は、樹脂等の比重が小さい材料で一体形成されている。ホルダ321は、X軸方向に対称な形状を有している。ホルダ321は、可動スクリーン301が設置される略長方形の内枠321aと、コイル337が設置される略長方形の外枠321bとを備えている。内枠321aは、4つの橋部321cによって外枠321bに接続されている。X軸方向に並ぶ2つの橋部321cは、内枠321aのY軸方向の中央位置と、外枠321bのY軸方向の中央位置とを繋いでいる。また、Y軸方向に並ぶ2つの橋部321cは、内枠321aのX軸方向の中央位置と、外枠321bのX軸方向の中央位置とを繋いでいる。さらに、外枠321bの4つの角からそれぞれ放射状に延びるように、4つの被支持部321dが形成されている。
なお、実施形態1と異なり実施形態2では、内枠321aが外枠321bに対して高さ方向(Z軸正方向)に変位して設けられている。また、上記実施形態1と同様、外枠321bはX−Y平面に平行に配置されるが、上記実施形態1と異なり、内枠321aは、X−Y平面に平行な面に対して傾いた状態で配置されている。
内枠321aには、レーザ光を通すための開口321eが設けられている。開口321eは、平面視において略長方形の輪郭を有する。開口321eの周囲に複数の壁321fが設けられている。この壁321fの内側に、可動スクリーン301の端縁301aが嵌め込まれて、可動スクリーン301が内枠321aに装着される。端縁301aは、可動スクリーン301のその他の部分よりも肉厚となっている。可動スクリーン301は、接着剤により内枠321aに固定される。
また、外枠321bの下面には、Z軸負側に突出する鍔状の突起321gが複数形成されている。これら突起321gにコイル337の内側が嵌め込まれて、コイル337が外枠321bに装着される。コイル337は、接着剤により外枠321bに固定される。コイル337は、Z軸に平行な軸の周りを一方向に回るように構成されている。
被支持部321dの端部には、XY平面に平行な2つの鍔部321hが互いに向き合うように形成されている。これら鍔部321hのZ軸方向に並ぶ位置に、それぞれ、ネジ孔321iが形成されている。さらに、Y軸方向に並ぶ2つの被支持部321dを接続する梁部321jが形成され、この梁部321jのY軸方向の中央位置の外側面にスケール321kが設置されている。
図23は、ホルダ321、板バネ323および支持部材327の組立て過程を示す斜視図である。図23の4つの板バネ323は、全て同じ構造である。Y軸正側の2つの板バネ323と、Y軸負側の2つの板バネ323は、互いに表裏反転された関係にある。ここでは、便宜上、Y軸負側の上側の板バネ323について、構造の説明を行う。なお、図23では、便宜上、図19に示す板バネ323固定用のワッシャー324およびネジ325とワッシャー328およびネジ329の図示が省略されている。
板バネ323は、可撓性の金属材料で一体形成されている。板バネ323の形状は、X軸方向に対称である。板バネ323のX軸方向の中央位置、すなわち、X軸方向の対称軸の位置に、2つの孔323a、323bと円弧状の切欠き323cが形成されている。また、板バネ323の両端に、孔323dが形成されている。板バネ323は、X軸方向の中央位置からX軸方向の両端に向かうに従って、Y軸方向の幅が徐々に小さくなっている。これにより、板バネ323のバネ定数を保ちながら、板バネ323の可動端部の軽量化が図られている。
支持部材327は、樹脂等の非磁性材料により一体形成されている。支持部材327は、X軸方向に対称な形状を有する。支持部材327の上面には、X軸方向の中央位置に、ネジ穴327aと円柱状の2つの突部327bがY軸方向に並ぶように形成されている。さらに、支持部材327の上面には、中央からX軸方向の端部に進むに従って高さが低くなる2つの傾斜面327cが形成されている。なお、支持部材327の下面にも、上面と同様、ネジ穴327aおよび2つの突部327bと2つの傾斜面327cが形成されている。ネジ穴327a、突部327bおよび傾斜面327cが形成された支持部材327の部分は、Z軸方向に対称な形状となっている。
4つの板バネ323は、図23の一点鎖線の矢印に示すように、それぞれ、孔323dがホルダ321側のネジ孔321iに合わされた状態で、ワッシャー324およびネジ325(図19参照)により、ホルダ321にネジ止めされる。また、4つの板バネ323は、図23の一点鎖線の矢印に示すように、それぞれ、孔323aと切欠き323cが支持部材327の突部327bに嵌められ、孔323bがネジ穴327aに合わされる。この状態で、ワッシャー328を介してネジ329(図19参照)がネジ穴327aに留められる。これにより、板バネ323がホルダ321に固定される。
図24は、ベース326に対する支持部材327、330とエンコーダ331の組立て過程を示す斜視図である。便宜上、図24では、磁気回路332が省略されている。
支持部材327は、ベース326のY軸正側の端部中央位置とY軸負側の端部中央位置に置かれて、ベース326の裏側からベース326にネジ止めされる。さらに、エンコーダ331が設置された支持部材330が、ベース326のX軸負側の端部中央位置に置かれて、ベース326の裏側からベース326にネジ止めされる。なお、ここでは、便宜上、ホルダ321、板バネ323および支持部材327を先に組み立てた後、支持部材327をベース326に組み付ける流れで説明を行ったが、先に支持部材327をベース326に設置した後、板バネ323を支持部材327に固定し、その後、ホルダ321を板バネ323の端部に固定してもよい。
こうして、ホルダ321がベース326に支持されると、支持部材330のエンコーダ331が、ホルダ321のX軸負側のスケール321kと対向する。上記実施形態1と同様、エンコーダ331は、Z軸方向におけるスケール321kの移動を光学的に検出するためのものである。
図25は、カバー322が装着される前の駆動部300の構成を示す斜視図である。
上述の組み立てによって、図25に示す構造体が構成される。その後、図19に示すカバー322が磁気回路332の上面に重ねられる。このとき、カバー322の開口322aにホルダ321の内枠321aが通され、また、カバー322の切欠き322bにホルダ321の橋部321cが通される。カバー322は、磁性体からなっているため、磁気回路332の磁力により、磁気回路332を構成する第1のヨーク333と第2のヨーク335の上面に吸着される。これにより、カバー322の取り付けが完了し、図19に示す駆動部300が構成される。
図26は、カバー322を取り外した状態の駆動部300の構成を示す平面図である。
実施形態1と同様、破線の丸の領域A1において、第1のヨーク333の内側の壁部333bの側端面と第2のヨーク335の内側の壁部335bの外側面とが互いに重なりあうように、第1のヨーク333と第2のヨーク335が配置されている。また、この重なり部分において、第1のヨーク333の内側の壁部333bに設置された第1の磁石334bが、第2のヨーク335の内側の壁部335bの側端面まで延びている。この構成により、上記実施形態1と同様、より効率的に、コイル337に磁界を印加することができる。
また、実施形態1と同様、板バネ323は、可動スクリーン301の長辺に略平行に配置され、長手方向の中央位置においてベース326側に固定され、両端がホルダ321に接続されている。このように、板バネ323を可動スクリーン301の長辺に略平行に配置することにより、駆動部300をコンパクトに収めながら、板バネ323の固定位置P1から両端までの距離L1を長く確保できる。これにより、ホルダ321の駆動時に生じる板バネ323の応力が低減され、ホルダ321駆動時の負荷が軽減される。これにより、板バネ323の変形を防止し耐久性を高めることができる。
<実施形態2の効果>
実施形態2の構成によっても、実施形態1と同様の効果が奏され得る。
なお、実施形態2では、図26に示すように、第1のヨーク333の外側の壁部333aと第2のヨーク335の外側の壁部335aとの間の隙間、および、第1のヨーク333の外側の壁部333aに設置された第1の磁石334aと第2のヨーク335の外側の壁部335aに設置された第2の磁石336aとの間の隙間を介して、外枠321bの4つの角部が、それぞれ板バネ323の端部に接続されている。このため、上記実施形態1に比べて、ホルダ321に捻れが生じにくくなり、ホルダ321および可動スクリーン301をより安定的に移動させることができるため、意図しない周波数でホルダ321および可動スクリーン301が振動することを抑制することができる。
また、実施形態2では、図25に示すように、内枠321aが、磁気回路332の上端よりも高く位置づけられるように、外枠321bに対して高さ方向に変位して設けられている。これにより、上記実施形態1に比べて、第1のヨーク333の内側の壁部333bと第2のヨーク335の内側の壁部335bを、ベース326の中心側に寄せることができ、磁気回路332をコンパクトにすることができる。
また、実施形態2では、図26に示すように、第1のヨーク333の内側の壁部333bおよび第2のヨーク335の内側の壁部335bが、それぞれ幅方向に分離され、内枠321aと外枠321bとを繋ぐ橋部321cが、分離された第1のヨーク333の内側の壁部333bの間の隙間333cおよび分離された第2のヨーク335の内側の壁部335bの間の隙間335cを通っている。これにより、橋部321cの体積を抑制でき、ホルダ321の軽量化を図ることができる。よって、ホルダ321および可動スクリーン301のレスポンス性を高めることができる。また、図25に示すように、外枠321bから橋部321cが斜めに立ち上げられているため、図19に示すように、カバー322に切欠き322bを設けることにより、カバー322で磁気回路332を覆うことができる。
なお、図26に示す4つの橋部321cは、可動スクリーン301を安定的に支持できる限りにおいて、何れか1つまたは複数個を省略してもよい。また、橋部321cが磁気回路332を横切る位置は、図26に示す位置に限られるものではなく、他の位置であってもよい。また、橋部321cの数も適宜変更可能である。
図27に示すように、支持部材327を第2のヨーク335の外側の壁部335aにネジ327dで固定してもよい。また、図27に示すように、スケール321kを梁部321jの内側面に設置し、エンコーダ331を第2のヨーク335の外側の壁部335aに設置してもよい。これにより、平面視における駆動部300の外形を小さくすることができる。
<実施形態3>
上記実施形態2では、図23に示すように、中央から端部に向かうに伴って次第に幅が狭くなる板バネ323を用いてホルダ321が支持された。これに対し、本実施形態3では、それぞれ可動スクリーン301を短辺方向に挟む2対の板バネ323のうち少なくとも1対に、板バネ323の幅方向に蛇行する伸縮構造が設けられる。
図28(b)〜(d)それぞれ、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3の構成を示す平面図である。図28(a)には、実施形態2で用いた板バネ323が併せて示されている。
図28(b)〜(d)に示すように、実施形態3で用いる板バネ323−1〜323−3には、中央両側に、クランク形状の伸縮構造323e〜323gが形成されている。伸縮構造323e〜323gは、それぞれ、板バネ323にY軸正側およびY軸負側から切り欠きC1を設けることにより形成されている。板バネ323−1〜323−3は、何れも長手方向に対称な形状である。板バネ323−2の伸縮構造323fは、板バネ323−1の伸縮構造323eに比べて、幅が狭くなっている。また、板バネ323−3の伸縮構造323gは、板バネ323−2の伸縮構造323fに比べて、蛇行部分の長さが長くなっている。
このように、伸縮構造323e〜323gを設けることにより、板バネ323−1〜323−3は、実施形態2の板バネ323に比べて、Z軸方向に曲がりやすくなり、且つ、Y−Z平面に平行な方向に捻れやすくなる。また、伸縮構造323e〜323fの相違により、板バネ323−1〜323−3の中では、板バネ323−3が最も曲がりやすくなり、次に、板バネ323−2が曲がりやすくなる。
図29(a)、(b)は、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3の反力特性および応力特性を示す図である。図29(a)、(b)には、実施形態2に係る板バネ323の反力特性および応力特性が併せて示されている。図29(a)において、横軸は、板バネ323、323−1〜323−3の曲げ量(中央部に対する端部の変位量)であり、縦軸は、端部に掛かる反力である。また、図29(b)において、横軸は、板バネ323、323−1〜323−3の曲げ量(中央部に対する端部の変位量)であり、縦軸は、板バネ323、323−1〜323−3に掛かる最大応力である。
図中のType0が実施形態2に係る板バネ323の特性を示し、Type1〜Type3が、それぞれ、板バネ323−1〜323−3の特性を示している。ここでは、板バネ323および板バネ323−1〜323−3は、それぞれ、全長が72.8mm、厚みが0.2mmであり、材料BeCuからなっている。板バネ323および板バネ323−1〜323−3において、中央部(固定部)と端部(支持部)を除いた2箇所の板バネとしての有効長は、それぞれ、29.1mmである。
図29(a)に示すように、実施形態2に係る板バネ323では、曲げ量の増加に伴い急激に反力が高まっている。このため、板バネ323を用いて可動スクリーン301の往復移動に必要な曲げ量を得ようとすると、板バネ323に大きな反力が生じ、駆動部300に大きな駆動力が必要となる。たとえば、実施形態2に係る板バネ323では、1mmの曲げ量(可動スクリーン301の移動量)を得ようとすると、4Nの駆動力が必要となる。また、このように反力が急激に高まり、反力特性の直線性が低下すると、可動スクリーン301の駆動制御が難しくなる。
これに対し、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3では、図29(a)に示すように、実施形態2に係る板バネ323に比べて、曲げ量の増加に伴う反力の増加が緩やかになっており、反力特性の直線性が高まっている。このため、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3では、1mmの曲げ量(可動スクリーン301の移動量)を得るために、駆動力を2N以下に抑制でき、特に、板バネ323−2、323−3では、駆動力を1.5N程度まで抑制できる。また、板バネ323−1〜323−3では、反力特性の直線性が向上したため、可動スクリーン301の駆動制御を容易に行い得る。
他方、図29(b)に示すように、板バネ323−1〜323−3では、伸縮構造323e〜323g部分の面積が低下するため、実施形態2の板バネ323に比べて最大応力が高くなる。ここで、最大応力が高くなるほど、板バネ323−1〜323−3の反復変形時の応力集中により、板バネ323−1〜323−3が破断するまでの寿命が短くなる。このため、板バネ323−1〜323−3の曲げ量に対する最大応力は、なるべく小さいことが好ましい。
たとえば、板バネ323−1では、1mmの曲げ量(可動スクリーン301の移動量)を得ようとすると、300N/mm2を超える応力が生じる。これに対し、板バネ323−2、323−3では、1mmの曲げ量(可動スクリーン301の移動量)を得る場合の応力が、200N/mm2程度に抑制される。これにより、たとえば、反復変形の回数が1010回を超える程度まで、板バネ323−2、323−3の寿命を延ばすことができる。したがって、長寿命化を図るためには、板バネ323−1よりも、板バネ323−2、323−3を用いることが好ましい。
以上から、図28(b)〜(c)に示す板バネ323−1〜323−3を用いることにより、より小さい駆動力で安定的に、可動スクリーン301を往復移動させ得る。特に、板バネ323−2、323−3を用いることにより、可動スクリーン301の駆動制御をより容易かつ安定的に行うことができ、且つ、板バネ323−2、323−3の寿命をより長くできる。
図30(a)は、ホルダ321を支持する4つの板バネとして実施形態2に係る板バネ323を用いた場合の周波数応答特性を示す図、図30(b)〜(d)は、それぞれ、ホルダ321を支持する4つの板バネとして実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3を用いた場合の周波数応答特性を示す図である。図30(a)〜(d)には、シミュレーションに基づく周波数応答特性が示されている。
図30(a)〜(d)を参照すると、実施形態2に係る板バネ323(Type0)を用いた場合に比べて、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3(Type1〜3)を用いた場合は、不要共振の振幅が抑制されていることが分かる。よって、実施形態3に係る板バネ323−1〜323−3を用いることにより、上述の効果、すなわち、安定的に、可動スクリーン301を往復移動させ得るとの効果が得られることが分かる。特に、板バネ323−3(Type3)を用いることにより、不要共振の振幅を顕著に抑制でき、且つ、周波数応答特性の直線性を高めることができる。これにより、板バネに設ける伸縮構造は、ホルダ321の変位による板バネの変形に、より円滑に追従可能なように、より幅狭で且つ長く形成することが好ましいと言える。すなわち、伸縮構造は、より柔らかくなるように構成することが好ましい。
なお、図30(d)に示した板バネ323−3(Type3)の周波数応答特性では、2000Hzの周波数付近にゲインの変動が生じている。他方、上記のように可動スクリーン301を60Hz程度の周波数で駆動する場合、可動スクリーン301の停止動作や起動動作等、種々の複雑な制御動作を安定的に行うためには、サーボ系の制御帯域を2000Hz程度まで確保しておくことが好ましい。このため、2000Hz付近に生じているゲインの変動は、解消することが好ましい。
この課題に対し、本願発明者らは、上記実施形態2における、ホルダ303を支持する4つの板バネのうち、Z軸正側の一対の板バネの座屈剛性と、Z軸負側の一対の板バネの座屈剛性とを、互いに相違させることを検討した。具体的には、Z軸正側の一対の板バネとして図28(a)〜(d)の何れか1つの板バネを用い、Z軸負側の一対の板バネとして図28(a)〜(d)の他の1つの板バネを用いることを検討した。
ここで、座屈剛性とは、図28(a)〜(d)の各板バネにおいて、X軸正方向またはX軸負方向の外力(圧縮または引っ張り)に対する変形し難さを示すもので、(荷重/変形量)で表すことができる。
図31(a)〜(c)は、それぞれ、実施形態3に係る駆動部300の構成を示す斜視図である。図31(a)〜(c)では、支持部材327を破線で示して、板バネの中央付近が透視された状態となっている。
図31(a)の構成では、Z軸正側の一対の板バネとZ軸負側の一対の板バネが、何れも、図28(d)の板バネ323−3となっている。これに対し、図31(b)の構成では、Z軸正側の一対の板バネが図28(a)の板バネ323となっており、Z軸負側の一対の板バネが図28(d)の板バネ323−3となっている。また、図31(c)の構成では、Z軸正側の一対の板バネが図28(d)の板バネ323−3となっており、Z軸負側の一対の板バネが図28(a)の板バネ323となっている。
したがって、図31(a)の構成では、Z軸正側の一対の板バネの座屈剛性と、Z軸負側の一対の板バネの座屈剛性とが、互いに同じとなっている。これに対し、図31(b)、(c)の構成では、Z軸正側の一対の板バネの座屈剛性と、Z軸負側の一対の板バネの座屈剛性とが、互いに相違している。
図32(a)〜(c)は、それぞれ、図31(a)〜(c)に示した駆動部300の周波数応答特性(実測値)を示す図である。図32(a)〜(c)には、各駆動部300のゲイン特性が示されている。
図32(a)を参照すると、2000Hzのやや手前において、ゲインの変動が生じている。このように、ゲインに変動が生じると、駆動部300の制御が不安定になる虞がある。
これに対し、図32(b)を参照すると、図32(a)の場合に比べて、2000Hz付近のゲインの変動が抑制されている。また、図32(c)を参照すると、2000Hz付近のゲインの変動がさらに顕著に抑制されて、ピーク状の大きな変動が見られない。
以上から、Z軸正側の一対の板バネとZ軸負側の一対の板バネに互いに異なる板バネを用いて座屈剛性を相違させることにより、2000Hz付近までの帯域において、駆動部300のゲインを安定化させ得ることが確認できた。
なお、このような作用は、以下の理由により達成されるものと考察される。
まず、図31(a)の構成では、Z軸正側の一対の板バネ323−3とZ軸負側の一対の板バネ323−3とは、構成が同一であり、座屈剛性が同じであるため、略同じ位相で振幅し、同じ共振周波数で共振する。この場合、上下の板バネ323−3とこれら板バネ323−3に挟まれた被支持部321dとで構成される共振系において、上下の板バネ323−3における共振モードが強められ、大きな振幅が生じる。これにより、図32(a)に示すように、2000Hz付近において、大きなゲインの変動が生じたものと考えられる。
これに対し、図31(b)の構成では、Z軸正側の一対の板バネ323とZ軸負側の一対の板バネ323−3とは、構成が異なっており、座屈剛性が相違するため、共振点が互いに相違する。このため、上下の板バネ323、323−3とこれら板バネ323、323−3で挟まれた被支持部321dとで構成される共振系において、上下の板バネ323、323−3における共振モードが強められることが起こりにくく、大きな振幅が生じることが抑制される。これにより、図32(b)に示すように、2000Hz付近において、大きなゲインの変動が抑制されたものと考えられる。
同様に、図31(c)の構成においても、Z軸正側の一対の板バネ323−3とZ軸負側の一対の板バネ323とは、構成が異なっており、座屈剛性が相違するため、共振点が互いに相違する。このため、図32(b)と同様、2000Hz付近において、大きなゲインの変動が抑制されたものと考えられる。
以上から、Z軸正側の一対の板バネとZ軸負側の一対の板バネの座屈剛性を相違させることにより、ゲインの変動を抑制できると考えられる。なお、図31(b)、(c)には、図28(a)、(d)の板バネ323、323−3の組み合わせを示したが、座屈剛性が異なる他の板バネの組み合わせであってもよい。たとえば、図28(b)、(d)の板バネ323−1、323−3の組み合わせや、図28(b)、(c)の板バネ323−1、323−2の組み合わせによっても、同様の効果が得られることが想定され得る。この他、図28(b)〜(d)以外のクランク形状の伸縮構造を有する板バネを用いてもよい。
なお、板バネの対の数は、必ずしも2つでなくてもよく、3対以上の板バネがZ軸方向に配置されてもよい。この場合も、これら板バネの少なくとも1つに伸縮構造を形成して、反力の低減と、周波数応答の改善を図ることが好ましい。また、図28(b)〜(d)では、伸縮構造が、板バネの中央両側の中央側近位置に形成されたが、この位置から端部側にずれた位置に伸縮構造を配置してもよい。
<その他の変更例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、また、本発明の適用例も、上記実施の形態の他に、種々の変更が可能である。
たとえば、上記実施形態1、2では、ホルダ303、321が樹脂で形成されたが、ホルダ303、321が、樹脂と軽量合金(たとえば、マグネシウム合金等)によるハイブリッド構造とされてもよい。この場合、渦電流の発生を抑制するため、少なくともコイル315、337と直接接触する部分は樹脂により構成し、好ましくは、コイル315、337に近接する部分も樹脂により構成する。ホルダ303、321は、軽量合金で形成する部分に樹脂で形成する部分をインサート成形することにより形成される。こうすると、軽量合金によりホルダ303、321の軽量化を図りながら機械的強度を保つことができ、樹脂により、電気的な障害を抑制できる。
また、上記実施形態1、2では、本発明を乗用車1に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用した例を示したが、本発明は、車載用に限らず、他の種類の画像表示装置にも適用可能である。
また、画像表示装置20および照射光生成部21の構成は、図1(c)および図2に記載された構成に限られるものではなく、適宜、変更可能である。また、可動スクリーン301を移動させる駆動部300の構成も、実施形態1、2示した構成に限られるものではなく、適宜、変更可能である。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。