化学的定義
定義
特定の官能基および化学用語の定義を以下により詳細に説明する。化学元素は、the Periodic Table of the Elements, CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、75版、内表紙に従って識別され、特定の官能基は一般に、その中に記載されているように定義される。さらに、有機化学の一般的原理、ならびに特定の機能性部分および反応性は、Thomas Sorrell、Organic Chemistry、University Science Books、Sausalito、1999年;SmithおよびMarch、March’s Advanced Organic Chemistry、5版、John Wiley & Sons, Inc.、New York、2001年;Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers, Inc.、New York、1989年;ならびにCarruthers、Some Modern Methods of Organic Synthesis、3版、Cambridge University Press、Cambridge、1987年に記載されている。さらに、例示的なグリカンおよび抗体方法論は、Wongら、US20100136042、US20090317837、およびUS20140051127に記載されており、それらの各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含むことができ、したがって、様々な異性体、例えば、鏡像異性体および/またはジアステレオマーで存在し得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、もしくは幾何異性体の形態であり得、またはラセミ混合物および1種または複数の立体異性体に富む混合物を含めた、立体異性体の混合物の形態であり得る。異性体は、キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、ならびにキラル塩の形成および結晶化を含めた当業者に公知の方法によって混合物から単離することができ、または好適な異性体を不斉合成によって調製することができる。例えば、Jacquesら、Enantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley Interscience、New York、1981年);Wilenら、Tetrahedron、33巻:2725頁(1977年);Eliel,Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw−Hill、NY、1962年);およびWilen,Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions、268頁(E.L. Eliel編、Univ. of Notre Dame Press、Notre Dame、IN、1972年)を参照。本発明は、他の異性体を実質的に含まない個々の異性体としての本明細書に記載の化合物、および代わりに、様々な異性体の混合物としての化合物をさらに包含する。
値の範囲が列挙されている場合、これは、その範囲内の各値およびサブ範囲を包含するように意図されている。例えば、「C1〜6」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1〜6、C1〜5、C1〜4、C1〜3、C1〜2、C2〜6、C2〜5、C2〜4、C2〜3、C3〜6、C3〜5、C3〜4、C4〜6、C4〜5、およびC5〜6を包含するように意図されている。
本発明の実施では、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当該分野の技量の範囲内にある、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を使用する。このような技法については、文献中で十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989);DNA Cloning, Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);論文、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology, Vols.154 and 155(Wuら、eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Antibodies:A Laboratory Manual,by Harlow and Lane s(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988);およびHandbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)を参照のこと。
本明細書で使用される「グリカン」という用語は、多糖またはオリゴ糖を指す。本明細書では、グリカンはまた、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、またはプロテオグリカンなど、複合糖質の炭水化物部分を指すのにも使用される。グリカンは通例、単糖間のO−グリコシド連結だけからなる。例えば、セルロースとは、β−1,4連結D−グルコースから構成されるグリカン(または、より具体的には、グルカン)であり、キチンとは、β−1,4連結N−アセチル−D−グルコサミンから構成されるグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモポリマーの場合も、ヘテロポリマーの場合もあり、直鎖状の場合も、分枝状の場合もある。グリカンは、糖タンパク質内およびプロテオグリカン内の場合と同様に、タンパク質に付着して見出される場合もある。グリカンは一般に、細胞の外部表面上で見出される。真核生物では、O連結型グリカンおよびN連結型グリカンが非常に一般的であるが、原核生物でも、それほど一般的ではないが、見出されうる。N連結型グリカンは、シークオン(sequon)内のアスパラギンのR基窒素(N)に付着して見出される。シークオンとは、Asn−X−Ser配列またはAsn−X−Thr配列[配列中、Xは、プロリン(praline)を除く任意のアミノ酸である]である。
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体またはT細胞受容体の抗原結合性部位に接触する、抗原分子の部分と定義される。
本明細書で使用される「フローサイトメトリー」または「FACS」という用語は、光学的検出デバイスおよび電子的検出デバイスを介した、流体の流れ中に懸濁された粒子または細胞の物理的特性および化学的特性を検討するための技法を意味する。
天然に存在しないまたは「単離」抗体は、その天然環境の構成要素から同定および分離ならびに/または回収された抗体である。その天然環境の夾雑構成要素は、抗体の研究的使用、診断的使用、または治療的使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質を含みうる。一実施形態では、抗体を(1)例えば、ローリー法により決定される通り、抗体の95重量%超まで精製し、一部の実施形態では、99重量%超まで精製するか(2)例えば、スピニングカップ型シークェネーターを使用することにより、N末端のアミノ酸配列もしくは内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製するか、または(3)例えば、クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して、還元条件下もしくは非還元条件下で、SDS−PAGEにより、均質性まで精製する。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離抗体は、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製する。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、重鎖のCH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体のヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含むいくつかの残基の付加により、Fab断片と異なる。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基が、遊離チオール基を保有するFab’のための、本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として作製された。また、抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つの顕著に異なる種類のうちの1つに割り当てることができる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知であり、一般に、例えば、Abbasら、Cellular and Mol. Immunology、4版(2000年)において記載されている。抗体は、抗体の、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的会合または非共有結合的会合により形成される、より大型の融合分子の一部でありうる。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分だけを含み、この場合、部分は、無傷抗体内に存在する場合にその部分と通常関連する機能のうちの少なくとも1つであり、多ければ、これらの大半または全てを保持する。一実施形態では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合性部位を含み、これにより、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含む抗体断片は、FcRnへの結合、抗体半減期のモジュレーション、ADCC機能、および補体への結合など、無傷抗体内に存在する場合にFc領域と通常関連する生物学的機能のうちの少なくとも1つを保持する。一実施形態では、抗体断片は、in vivo半減期が無傷抗体と実質的に同様の一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、in vivoにおける安定性を断片に付与することが可能なFc配列に連結された抗原結合性アームを含みうる。
本発明の特定のアミノ酸配列に関する同一性または相同性は、いずれの保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、必要な場合、最大のパーセント相同性を達成するために、配列をアラインメントしギャップを導入した後の、候補配列中の、特定の残基と同一であるアミノ酸残基の百分率として本明細書で定義される。特定の配列中への、N末端、C末端または内部での伸長、欠失または挿入のいずれも、相同性に影響すると解釈すべきではない。本発明で求められる全ての配列アラインメントは、このような最大相同性アラインメントである。一般に、本発明のポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよび断片と目的の核酸配列との核酸配列相同性は、少なくとも80%>であり、より典型的には、少なくとも85%、90%、91%、92%、92%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および/または100%の増大する相同性であることが好ましい。2つのアミノ酸配列は、それらの配列間に部分的または完全な同一性がある場合、相同である。
「グロボ系列関連障害」という用語は、典型的には、経路の異常な機能もしくは提示により特徴付けられる、またはその経路の異常な機能もしくは提示に寄与される障害を指す、またはこれについて記載する。このような障害の例は、がんを含む過剰増殖疾患を含むがこれらに限定されない。
本明細書で使用される「処置」とは、処置される個体または細胞の自然経過を改変しようとする試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中に実施することができる。処置の望ましい効果は、疾患の発症または再発の防止、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の減殺、炎症および/または組織/器官損傷の防止または低減、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または軽減、および寛解または予後の改善を含む。一部の実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患または障害の発症を遅延させる。
本発明の実施では、そうでないことが指し示されない限りにおいて、当該分野の技量の範囲内にある、分子生物学、微生物学、組換えDNA、および免疫学の従来の技法を使用する。このような技法については、文献中で十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);論文、Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Calos eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology,Vols.154 and 155(Wuら、eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Antibodies:A Laboratory Manual,by Harlow and Lane s(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988);およびHandbook Of Experimental Immunology,Volumes I−IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986)を参照のこと。
本明細書で使用される「グリカン」という用語は、多糖またはオリゴ糖を指す。本明細書では、グリカンはまた、糖タンパク質、糖脂質、糖ペプチド、糖プロテオーム、ペプチドグリカン、リポ多糖、またはプロテオグリカンなど、複合糖質の炭水化物部分を指すのにも使用される。グリカンは通例、単糖間のO−グリコシド連結だけからなる。例えば、セルロースとは、β−1,4連結D−グルコースから構成されるグリカン(または、より具体的には、グルカン)であり、キチンとは、β−1,4連結N−アセチル−D−グルコサミンから構成されるグリカンである。グリカンは、単糖残基のホモポリマーの場合も、ヘテロポリマーの場合もあり、直鎖状の場合も、分枝状の場合もある。グリカンは、糖タンパク質内およびプロテオグリカン内の場合と同様に、タンパク質に付着して見出される場合もある。グリカンは一般に、細胞の外部表面上で見出される。真核生物では、O連結型グリカンおよびN連結型グリカンが非常に一般的であるが、原核生物でも、それほど一般的ではないが、見出されうる。N連結型グリカンは、シークオン内のアスパラギンのR基窒素(N)に付着して見出される。シークオンとは、Asn−X−Ser配列またはAsn−X−Thr配列[配列中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である]である。
本明細書で使用される「抗原」という用語は、免疫応答を誘発することが可能な任意の物質と定義される。
本明細書で使用される「免疫原性」という用語は、免疫原、抗原、またはワクチンが、免疫応答を刺激する能力を指す。
本明細書で使用される「CD1d」という用語は、多様なヒト抗原提示細胞の表面上で発現する、糖タンパク質のCD1(表面抗原分類(cluster of differentiation)1)ファミリーのメンバーを指す。CD1dを提示した脂質抗原は、ナチュラルキラーT細胞を活性化させる。CD1dは、糖脂質抗原が結合する、深い抗原結合溝を有する。樹状細胞上で発現するCD1d分子は、C34など、アルファGalCer類似体を含む糖脂質に結合し、これらを提示しうる。
本明細書で使用される「エピトープ」という用語は、抗体またはT細胞受容体の抗原結合性部位に接触する、抗原分子の部分と定義される。
本明細書で使用される「ワクチン」という用語は、全病原生物(死滅させるかまたは弱毒化した)、またはこのような生物の構成要素であって、生物が引き起こす疾患に対する免疫を付与するのに使用される、タンパク質、ペプチド、または多糖などの構成要素からなる抗原を含有する調製物を指す。ワクチン調製物は、天然、合成、または組換えDNA技術により導出される場合がある。
本明細書で使用される「抗原特異的」という用語は、特定の抗原または抗原の断片を供給する結果として、特異的細胞増殖がもたらされるような細胞集団の特性を指す。
本明細書で使用される「特異的に結合すること」という用語は、結合対(例えば、抗体および抗原)の間の相互作用を指す。多様な場合において、特異的に結合することは、約10〜6モル/リットル、約10〜7モル/リットル、もしくは約10〜8モル/リットル、またはそれ未満のアフィニティー定数により具体化することができる。
「単離」抗体とは、その天然環境の構成要素から同定および分離ならびに/または回収された抗体である。その天然環境の夾雑構成要素は、抗体の研究的使用、診断的使用、または治療的使用に干渉する物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質を含みうる。一実施形態では、抗体を(1)例えば、ローリー法により決定される通り、抗体の95重量%超まで精製し、一部の実施形態では、99重量%超まで精製するか(2)例えば、スピニングカップ型シークェネーターを使用することにより、N末端のアミノ酸配列もしくは内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製するか、または(3)例えば、クーマシーブルーもしくは銀染色を使用して、還元条件下もしくは非還元条件下で、SDS−PAGEにより、均質性まで精製する。抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないので、単離抗体は、組換え細胞内のin situの抗体を含む。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製ステップにより調製する。
本明細書で使用される「実質的に同様」、「実質的に同じ」、「同等」、または「実質的に同等」という語句は、当業者が、その値(例えば、Kd値、抗ウイルス効果など)により測定される生物学的特徴の文脈内では、2つの値の間の差違を、生物学的有意性および/または統計学的有意性がほとんどないかまたはないと考えるような、2つの数値(例えば、一方は、分子と関連し、他方は、基準/比較分子と関連する)の間の、十分に高度の類似性を描示する。前記2つの値の間の差違は、例えば、基準/比較分子についての値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、および/または約10%未満である。
本明細書で使用される「実質的に低減された」または「実質的に異なる」という語句は、当業者が、その値(例えば、Kd値)により測定される生物学的特徴の文脈内では、2つの値の間の差違を、統計学的有意性があると考えるような、2つの数値(一般に、一方は、分子と関連し、他方は、基準/比較分子と関連する)の間の、十分に高度の差違を描示する。前記2つの値の間の差違は、例えば、基準/比較分子についての値の関数として、約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、および/または約50%超である。
「結合アフィニティー」とは一般に、分子(例えば、抗体)の単一の結合性部位と、その結合パートナー(例えば、抗原)との非共有結合的相互作用の総合計の強さを指す。そうでないことが指し示されない限りにおいて、本明細書で使用される「結合アフィニティー」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体および抗原)の間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合アフィニティーを指す。分子Xの、そのパートナーYに対するアフィニティーは一般に、解離定数(Kd)で表すことができる。アフィニティーは、本明細書で記載される方法を含む、当技術分野で公知の一般的な方法により測定することができる。低アフィニティー抗体は一般に、抗原への結合が緩徐であり、たやすく解離する傾向があるのに対し、高アフィニティー抗体は一般に、抗原への結合が迅速であり、結合を長く維持する傾向がある。当技術分野では、結合アフィニティーを測定する様々な方法が公知であり、これらのうちのいずれかを、本発明の目的で使用することができる。具体的な例示的実施形態について、以下で記載する。
一実施形態では、本発明に従う「Kd」または「Kd値」は、以下に記載される通りに、目的の抗体およびその抗原のFabバージョンにより実施される、放射性標識型抗原結合アッセイ(RIA)により測定する。Fabの、抗原に対する、溶液中の結合アフィニティーは、Fabを、未標識抗原の滴定系列の存在下、最小濃度の(125I)標識抗原で平衡化し、次いで、結合した抗原を、抗Fab抗体コーティングプレートで捕捉する(Chenら(1999年)、J. Mol Biol、293巻:865〜881頁)ことにより測定する。アッセイのための条件を確立するには、マイクロタイタープレート(Dynex)を、一晩、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中に5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)でコーティングし、その後、PBS中に2%(w/v)のウシ血清アルブミンで、室温(約23℃)で2〜5時間ブロックする。非吸着性プレート(Nunc;型番269620)内では、100pMまたは26pMの[125I]−抗原を、目的のFabの系列希釈液と混合する(例えば、Prestaら(1997年)、Cancer Res.、57巻:4593〜4599頁における、抗VEGF抗体であるFab−12の評価と符合する)。次いで、目的のFabを、一晩インキュベートするが、インキュベーションを長時間(例えば、65時間)持続させて、平衡への到達を確実にすることができる。その後、室温におけるインキュベーション(例えば、1時間)のために、混合物を、捕捉用プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、8回、PBS中に0.1%のTween−20で洗浄する。プレートを乾燥させたら、150μl/ウェルのシンチレーション剤(MicroScint−20;Packard)を添加し、プレートを、Topcountガンマカウンター(Packard)上で、10分間カウントする。最大結合の20%未満またはそれと等しい結合をもたらす各Fab濃度を、競合的結合アッセイにおける使用のために選択する。別の実施形態によれば、KdまたはKd値は、約10応答単位(RU)において固定化した抗原CM5チップをもちいて、25℃でBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することにより測定する。略述すると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5;BIAcore Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。5μl/分の流量での注射の前に、抗原を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(約0.2μM)に希釈して、約10応答単位(RU)のカップリングタンパク質を達成する。抗原を注射した後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。各実験では、1つのスポットを、タンパク質を固定化させずに活性化させ、エタノールアミンで遮断して、基準の減算のために使用した。動態の測定のために、Fabの2倍の系列希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%のTween 20を伴うPBS(PBST)中、25℃、約25μl/分の流量で注射する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることにより計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算する。例えば、Chen, Y.ら(1999年)、J. Mol Biol、293巻:865〜881頁を参照されたい。オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる106M−1秒−1を超える場合、オン速度は、ストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌式キュベットを伴う8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下、25℃で、PBS、pH7.2中に20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)の増大または減少を測定する、蛍光クエンチング技法を使用することにより決定することができる。
また、本発明に従う「オン速度」または「会合速度(rate of association)」または「会合速度(association rate)」または「kon」も、約10応答単位(RU)において固定化した抗原CM5チップをもちいて、25℃でBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する、上で記載した表面プラズモン共鳴法により決定することができる。略述すると、供給元の指示書に従い、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5;BIAcore Inc.)を、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化させる。5μl/分の流量での注射の前に、抗原を、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.8で、5μg/ml(約0.2μM)に希釈して、約10応答単位(RU)のカップリングタンパク質を達成する。抗原を注射した後、1Mのエタノールアミンを注射して、未反応基を遮断する。動態の測定のために、Fabの2倍の系列希釈液(0.78nM〜500nM)を、0.05%のTween 20を伴うPBS(PBST)中、25℃、約25μl/分の流量で注射する。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、単純な一対一のラングミュア結合モデル(BIAcore Evaluation Software version 3.2)を使用して、会合センサーグラムと解離センサーグラムとを同時に当てはめることにより計算する。平衡解離定数(Kd)は、比koff/konとして計算した。例えば、Chen, Y.ら(1999年)J. Mol Biol、293巻:865〜881頁を参照されたい。しかし、オン速度が、上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる106M−1秒−1を超える場合、オン速度は、ストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)、または撹拌式キュベットを伴う8000シリーズSLM−Aminco分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、漸増濃度の抗原の存在下、25℃で、PBS、pH7.2中に20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の、蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nmのバンドパス)の増大または減少を測定する、蛍光クエンチング技法を使用することにより決定することができる。
本明細書で使用される「ベクター」という用語は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことを意図する。1つの種類のベクターは、さらなるDNAセグメントをライゲーションしうる、環状の二本鎖DNAループを指す「プラスミド」である。別の種類のベクターは、ファージベクターである。別の種類のベクターは、さらなるDNAセグメントを、ウイルスゲノムにライゲーションしうる、ウイルスベクターである。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞内の自律複製が可能である(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクター、およびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、これにより、宿主ゲノムと共に複製されうる。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動的に連結される遺伝子の発現を誘導することが可能である。本明細書では、このようなベクターを、「組換え発現ベクター」(または、単に、「組換えベクター」)と称する。一般に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドは、最も一般に使用されるベクターの形態であるので、本明細書では、「プラスミド」と「ベクター」とを、互換的に使用する場合がある。
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」とは、任意の長さのヌクレオチドポリマーを指し、DNAおよびRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは修飾塩基、および/またはそれらの類似体、あるいはDNAポリメラーゼもしくはRNAポリメラーゼ、または合成反応によりポリマーに組み込まれうる任意の基質、がある。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体などの修飾ヌクレオチドを含みうる。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後で施すことができる。ヌクレオチドの配列は、ヌクレオチド以外の構成要素により中断されうる。ポリヌクレオチドは、標識とのコンジュゲーションによるなど、合成の後でさらに修飾することができる。他の種類の修飾は、例えば、「キャップ」、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つまたは複数の、類似体による置換、例えば、非荷電連結(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート(phosphoamidate)、カルバメートなど)を伴うもの、および荷電連結(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を伴うもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ply−L−リシンなど)などのペンダント部分を含有するもの、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を伴うもの、キレート剤(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾連結(例えば、アルファアノマー核酸など)を伴うものなどのヌクレオチド間修飾のほか、ポリヌクレオチドの非修飾形態を含む。さらに、通常糖内に存在するヒドロキシル基のうちのいずれかを、例えば、ホスホネート基、ホスフェート基により置きかえる、標準的な保護基により保護する、またはさらなるヌクレオチドへのさらなる連結を調製するように活性化させることができ、あるいは固体支持体または半固体支持体にコンジュゲートさせることができる。5’末端および3’末端のOHは、リン酸化する、またはアミンもしくは1〜20個の炭素原子による有機キャッピング基部分で置換することができる。他のヒドロキシルはまた、標準的な保護基に誘導体化することもできる。ポリヌクレオチドはまた、例えば、2’−O−メチルリボース、2’−O−アリルリボース、2’−フルオロリボース、または2’−アジドリボース、炭素環式の糖類似体、α−アノマー糖、アラビノース、キシロース、またはリキソースなどのエピマー糖、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル類似体、およびメチルリボシドなどの塩基性ヌクレオシド類似体を含む、当技術分野で一般に公知の、リボース糖またはデオキシリボース糖の類似の形態も含有しうる。1つまたは複数のホスホジエステル連結を、代替的な連結基で置きかえることができる。これらの代替的な連結基は、ホスフェートを、P(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)[式中、各RまたはR’は、独立に、Hであるか、または、任意選択で、エーテル(−O−)連結、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくはアラルジルを含有する、置換もしくは非置換アルキル(1〜20個のC)である]で置きかえた実施形態を含むがこれらに限定されない。ポリヌクレオチド内の全ての連結は、同一である必要がない。前出の記載は、RNAおよびDNAを含む、本明細書で言及される全てのポリヌクレオチドに当てはまる。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは一般に短く、一般に一本鎖であり、一般に、約200ヌクレオチド未満の長さであるが必ずしもそうではない、一般に合成のポリヌクレオチドを指す。「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」という用語は、相互に除外的ではない。ポリヌクレオチドについての上記の記載は、オリゴヌクレオチドにも同等かつ十分に適用可能である。
「抗体」(Ab)および「免疫グロブリン」(Ig)は、同じ構造的特徴を有する糖タンパク質である。抗体が、特異的抗原に対する結合特異性を呈示するのに対し、免疫グロブリンは、抗体および抗原特異性を一般に欠く他の抗体様分子の両方を含む。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系により産生されるレベルは低く、骨髄腫により産生されるレベルは高い。
「抗体」および「免疫グロブリン」という用語は、最も広い意味で、互換的に使用され、モノクローナル抗体(例えば、全長または無傷のモノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、一価抗体、多価抗体、多特異性抗体(それらが、所望の生物学的活性を呈示する限りにおいて、例えば、二特異性抗体)を含み、また、ある特定の抗体断片(本明細書でより詳細に記載される)も含みうる。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、および/またはアフィニティー成熟抗体でありうる。
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」とは、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。これらのドメインは一般に、抗体の最も可変的な部分であり、抗原結合性部位を含有する。
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分は、抗体間で配列が大幅に異なり、各特定の抗体の、その特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に、均等に配分されているわけではない。可変性は、軽鎖可変ドメイン内および重鎖可変ドメイン内の両方で相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる、3つのセグメント内に濃縮されている。可変ドメインのうちの、より高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)と呼ばれている。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、大部分、ベータシート構造を接続し、場合によって、ベータシート構造の一部を形成するループを形成する、3つのCDRにより接続されたベータシート構成を採用する、4つのFR領域を含む。各鎖内のCDRは、FR領域により、一体に近接して保持され、他の鎖に由来するCDRと共に、抗体の抗原結合性部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、National Institute of Health、Bethesda、Md.(1991年)を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合には直接関わらないが、抗体の、抗体依存性細胞傷害への関与など、多様なエフェクター機能を呈示する。
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる、各々が、単一の抗原結合性部位と、その名称がたやすく結晶化するその能力を反映する残りの「Fc」断片とを伴う、2つの同一の抗原結合性断片を生じさせる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋することがやはり可能な、F(ab’)2断片をもたらす。
「Fv」とは、完全な抗原認識部位および抗原結合性部位を含有する、最小の抗体断片である。2つの鎖によるFv分子種では、この領域は、緊密な非共有結合的会合下にある、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。単鎖によるFv分子種では、1つの重鎖可変ドメインと、1つの軽鎖可変ドメインとは、軽鎖と、重鎖とが、2つの鎖によるFv分子種におけるものと類似の「二量体」構造内で会合しうるように、可撓性のペプチドリンカーにより共有結合的に連結されうる。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、VH−VL二量体の表面上で、抗原結合性部位を規定するのは、この構成においてである。併せて、6つのCDRは、抗原結合特異性を、抗体に付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRだけを含むFvの半分)でもなお、結合性部位全体より小さなアフィニティーではあるが、抗原を認識し、抗原に結合する能力を有する。
Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、重鎖のCH1ドメインのカルボキシ末端において、抗体のヒンジ領域に由来する1つまたは複数のシステインを含むいくつかの残基の付加により、Fab断片と異なる。Fab’−SHとは、定常ドメインのシステイン残基が、遊離チオール基を保有するFab’のための、本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元は、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として作製された。また、抗体断片の他の化学的カップリングも公知である。
任意の脊椎動物種に由来する抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる、2つの顕著に異なる種類のうちの1つに割り当てることができる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知であり、一般に、例えば、Abbasら、Cellular and Mol. Immunology、4版(2000年)において記載されている。抗体は、抗体の、1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合的会合または非共有結合的会合により形成される、より大型の融合分子の一部でありうる。
本明細書では、「全長抗体」、「無傷抗体」、および「全抗体」という用語は、互換的に使用されて、下記で規定される抗体断片ではなく、その実質的な無傷形態にある抗体を指す。用語は特に、Fc領域を含有する重鎖を伴う抗体を指す。
「抗体断片」は、無傷抗体の一部分だけを含み、この場合、部分は、無傷抗体内に存在する場合にその部分と通常関連する機能のうちの少なくとも1つであり、多ければ、これらの大半または全てを保持する。一実施形態では、抗体断片は、無傷抗体の抗原結合性部位を含み、これにより、抗原に結合する能力を保持する。別の実施形態では、抗体断片、例えば、Fc領域を含む抗体断片は、FcRnへの結合、抗体半減期のモジュレーション、ADCC機能、および補体への結合など、無傷抗体内に存在する場合にFc領域と通常関連する生物学的機能のうちの少なくとも1つを保持する。一実施形態では、抗体断片は、in vivo半減期が無傷抗体と実質的に同様の一価抗体である。例えば、このような抗体断片は、in vivoにおける安定性を断片に付与することが可能なFc配列に連結された抗原結合性アームを含みうる。
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体集団から得られた抗体を指す、例えば、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる、または均質なグリコフォームプロファイルのみを含みうる(集団中の糖抗体上に、単一のグリカンまたは単一のグリカンプロファイルのみを有する)可能な天然に存在する変異を除き、同一である。Fc−297位における、2,3−シアリルおよび2,6−シアリルならびに脱フコシル化複合二分岐グリカンを使用することによってエフェクター機能を増強するための均質な抗体組成物の例は、US12/959,351に記載されている。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物ではない抗体の性格を指し示す。このようなモノクローナル抗体は、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的結合性ポリペプチド配列は、単一の標的結合性ポリペプチド配列の、複数のポリペプチド配列からの選択を含む工程により得られたものであることが典型的である。例えば、選択工程は、固有のクローンの、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの選択でありうる。選択された標的結合性配列は、例えば、標的に対するアフィニティーを改善し、標的結合性配列をヒト化し、細胞培養物中のその産生を改善し、in vivoにおけるその免疫原性を低減し、多特異性抗体を創出するなどするように、さらに改変させることができ、改変させた標的結合性配列を含む抗体もまた、本発明のモノクローナル抗体であることを理解されたい。異なる決定基(エピトープ)に指向される異なる抗体を含むことが典型的なポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向される。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は典型的に、他の免疫グロブリンが夾雑していないという点でも有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるものとしての抗体の性格を指し示すものであり、任意の特定の方法による抗体の作製を必要とするとはみなされないものとする。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、以下が挙げられる、種々の技術によって作製され得る;ハイブリドーマ法(例えば、Kohlerら、Nature,256:495(1975);Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T−Cell hybridomas 563−681(Elsevier,N.Y.,1981))、リコンビナントDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature,352:624−628(1991);Marksら、J.Mol.Biol.222:581−597(1992);Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299−310(2004);Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073−1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467−12472(2004);およびLeeら、J.Immunol.Methods 284(1−2):119−132(2004)を参照のこと)、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座、またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を生成するための技術(例えば、WO98/24893;WO96/34096;WO96/33735;WO91/10741;Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovitsら、Nature 362:255−258(1993);Bruggemannら、Year in Immunol.7:33(1993);米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号;Marksら、Bio.Technology 10:779−783(1992);Lonbergら、Nature 368:856−859(1994);Morrison,Nature 368:812−813(1994);Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845−851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996)、およびLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65−93(1995)を参照のこと。
本明細書のモノクローナル抗体は具体的に、重鎖および/または軽鎖の一部分が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖の残りの部分は、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体のほか、それらが、所望の生物学的活性を呈示する限りにおいて、このような抗体の断片(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851〜6855頁(1984年))も含む。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態とは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域に由来する残基を、所望の特異性、アフィニティー、および/または能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物など、非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域に由来する残基で置きかえた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によって、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基を、対応する非ヒト残基で置きかえる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体内またはドナー抗体内で見出されない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体の性能をさらに精緻化するように施す。一般に、ヒト化抗体は、超可変ループのうちの全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうちの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンのFcの少なくとも一部分も含む。さらなる詳細については、Jonesら、Nature 321:522−525(1986);Riechmannら、Nature 332:323−329(1988);およびPresta, Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照のこと。また、以下の総説記事およびその中の参考文献を参照のこと:Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105−115(1998);Harris, Biochem.Soc.Transactions 23:1035−1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428−433(1994)。
本明細書で使用される「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変的であり、かつ/または構造的に規定されたループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つの超可変領域:VH内の3つ(H1、H2、H3)およびVL内の3つ(L1、L2、L3)を含む。多くの超可変領域の描写が本明細書において使用され、包含される。Kabatによる相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づき、最も一般に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年))。これとは別に、Chothiaは、構造ループの位置に言及する(ChothiaおよびLesk、J. Mol. Biol.、196巻:901〜917頁(1987年))。AbMによる超可変領域は、KabatによるCDRと、Chothiaによる構造ループとの折衷を表し、Oxford Molecular製のAbM抗体モデル作製ソフトウェアで使用されている。「contact」超可変領域は、利用可能な複合体結晶構造の解析に基づく。これらの超可変領域の各々に由来する残基を、下記に記述する。
ループ Kabat AbM Chothia Contact
L1 L24−L34 L24−L34 L26−L32 L30−L36
L2 L50−L56 L50−L56 L50−L52 L46−L55
L3 L89−L97 L89−L97 L91−L96 L89−L96
H1 H31−H35B H26−H35B H26−H32 H30−H35B
(Kabat番号付け)
H1 H31−H35 H26−H35 H26−H32 H30−H35
(Chothia番号付け)
H2 H50−H65 H50−H58 H53−H55 H47−H58
H3 H95−H102 H95−H102 H96−H101 H93−H101
超可変領域は、以下の通り:VL内の24〜36または24〜34(L1)、46〜56または50〜56または49〜56(L2)、および89〜97または89〜96(L3)、ならびにVH内の26〜35(H1)、50〜65または49〜65(H2)、および93〜102、94〜102、または95〜102(H3)の「拡張超可変領域」を含みうる。可変ドメイン残基は、Kabatら、前出に従い、これらの定義の各々について番号付けされる。
「フレームワーク」残基または「FR」残基とは、本明細書で規定される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「Kabatによる可変ドメイン残基の番号付け」または「Kabatによるアミノ酸位置の番号付け」という用語、およびこれらの変化形は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991年)で集成された抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについて使用されている番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用すると、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮またはこれらへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸またはさらなるアミノ酸を含有する場合がある。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後における単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)と、重鎖FRの残基82の後における残基の挿入(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82cなど)を含みうる。Kabatによる残基の番号付けは、所与の抗体について、抗体の配列相同性領域における、「標準的な」Kabat番号付け配列とのアラインメントにより決定することができる。
「単鎖Fv」抗体断片または「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、この場合、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖内に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが、抗原への結合に所望の構造を形成することが可能である。scFvの総説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer−Verlag、New York、269〜315頁(1994年)を参照されたい。
「ダイアボディー(diabody)」という用語は、2つの抗原結合性部位を伴う小型の抗体断片であって、同じポリペプチド鎖内で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む断片(VH−VL)を指す。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能とするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補性ドメインと対合し、2つの抗原結合性部位を創出するように強いられる。ダイアボディーについては、例えば、EP404,097;WO93/1161;およびHollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444〜6448頁(1993年)においてより十全に記載されている。
「ヒト抗体」とは、ヒトにより産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有し、かつ/または本明細書で開示される、ヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体についてのこの定義は具体的に、非ヒト抗原結合性残基を含むヒト化抗体を除外する。
「アフィニティー成熟」抗体とは、その1つまたは複数のHVR内の1つまたは複数の改変であって、これらの改変を保有しない親抗体と比較して、抗体の抗原に対するアフィニティーの改善を結果としてもたらす改変を伴う抗体である。一実施形態では、アフィニティー成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル濃度、またはさらにはピコモル濃度のアフィニティーを有する。アフィニティー成熟抗体は、当技術分野で公知の手順により作製される。Marksら、Bio/Technology、10巻:779〜783頁(1992年)は、VHドメインシャフリングおよびVLドメインシャフリングによるアフィニティー成熟について記載している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異は、Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809−3813(1994);Schierら、Gene 169:147−155(1995);Yeltonら、J.Immunol.155:1994−2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.154(7):3310−9(1995);およびHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889−896(1992)によって記載されている。
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体とは、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。ある特定の遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的または完全に阻害する。
本明細書で使用される「アゴニスト抗体」とは、目的のポリペプチドの機能的活性のうちの少なくとも1つを模倣する抗体である。
「障害」とは、本発明の抗体による処置から利益を得る任意の状態である。これは、哺乳動物に、問題の障害への素因を与える病理学的状態を含む、慢性障害および急性障害または慢性疾患および急性疾患を含む。本明細書で処置される障害の非限定的な例は、がんを含む。
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖と関連する障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。
本明細書で使用される「腫瘍」とは、悪性であれ、良性であれ、全ての新生物性細胞成長および増殖を指し、全ての前がん性細胞および前がん性組織ならびにがん性細胞およびがん性組織を指す。本明細書で言及される通り、「がん」、「がん性」、「細胞増殖性障害」、「増殖性障害」、および「腫瘍」という用語は、相互に除外的ではない。
「がん」および「がん性」という用語は、典型的には、未調節の細胞成長/増殖によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すか、またはこれについて記載する。がんの例は、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、および白血病を含むがこれらに限定されない。このようながんのより具体的な例は、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん、肺扁平上皮癌、腹膜がん、肝細胞がん、消化器がん、膵臓がん、神経膠芽腫、子宮頸がん(cervical cancer)、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝癌、白血病、および他のリンパ増殖性障害、ならびに多様な種類の頭頸部がんを含む。
本明細書で使用される「処置」とは、処置される個体または細胞の自然経過を改変しようとする試みにおける臨床的介入を指し、予防のために、または臨床病理の経過中に実施することができる。処置の望ましい効果は、疾患の発症または再発の防止、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の減殺、炎症および/または組織/器官損傷の防止または低減、疾患の進行速度の低減、疾患状態の回復または軽減、および寛解または予後の改善を含む。一部の実施形態では、本発明の抗体を使用して、疾患または障害の発症を遅延させる。
「個体」または「対象」は、脊椎動物である。ある特定の実施形態では、脊椎動物は、哺乳動物である。哺乳動物は、農場動物(ウシなど)、競技動物、ペット(ネコ、イヌ、およびウマなど)、霊長動物、マウス、およびラットを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、脊椎動物は、ヒトである。
処置を目的とする「哺乳動物」とは、ヒト、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなど、飼育動物および農場動物、ならびに動物園の動物、競技動物、またはペット動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。ある特定の実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。
「有効量」とは、所望の治療的結果または予防的結果を達成するための、投与量において、かつ必要な時間にわたる、有効な量を指す。
本発明の物質/分子の「治療有効量」は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する物質/分子の能力などの因子に従い変化しうる。治療有効量はまた、物質/分子の任意の毒性効果または有害効果を、治療的に有益な効果が凌駕するときの量でもある。「予防有効量」とは、所望の予防的結果を達成するための、投与量において、かつ必要な時間にわたる、有効な量を指す。予防用量は、対象において、疾患の発症の前またはその早期に使用されるので、予防有効量は、治療有効量未満となることが典型的であろうが、必ずしもそうではない。
本明細書で使用される「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を阻害もしくは防止し、かつ/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。用語は、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、およびLuの放射性同位元素)、化学療法剤(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロランブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤、核酸分解酵素などの酵素およびその断片、抗生剤、ならびに細菌由来、真菌由来、植物由来、または動物由来の低分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素であって、それらの断片および/または改変体を含む毒素、ならびに下記で開示される多様な抗腫瘍剤または抗がん剤を含むことを意図する。他の細胞傷害剤については、下記に記載する。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「化学療法剤」とは、がんの処置において有用な化学化合物である。化学療法剤の例は、チオテパおよびシクロホスファミド(cyclosphosphamide)であるCYTOXAN(登録商標)などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、およびピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、およびウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)、およびトリメチロールメラミン(trimethylolomelamine)を含めたエチレンイミンおよびメチルメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(とりわけ、ブラタシンおよびブラタシノン(bullatacinone));デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ−ラパコン(lapachone);ラパコール(lapachol);コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成類似体であるトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、および9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン合成類似体、カルゼレシン合成類似体、およびビゼレシン合成類似体を含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体である、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン(sarcodictyin);スポンジスタチン(spongistatin);クロランブシル、クロルナファジン(chlomaphazine)、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベンビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、およびラニムスチン(ranimnustine)などのニトロソウレア(nitrosureas);エンジイン抗生剤(例えば、カリケアマイシン、とりわけ、カリケアマイシンガンマ1IおよびカリケアマイシンオメガI1(例えば、Agnew、Chem. Intl. Ed. Engl.、33巻:183〜186頁(1994年)を参照されたい);ジネミシン(dynemicin)Aを含むジネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルチノスタチン発色団、および関連の色素タンパク質である、エンジイン抗生剤(antiobiotic)発色団)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシンであるADRIAMYCIN(登録商標)(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生剤;メトトレキセートおよび5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti−adrenal);フォリン酸(frolinic acid)などの葉酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン(lonidainine);メイタンシンおよびアンサミトシン(ansamitocin)などのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン(losoxantrone);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products、Eugene、Oreg.);ラゾキサン;リゾキシン(rhizoxin);シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(とりわけ、T−2毒素、ベルカリンA(verracurin A)、ロリジンA(roridin A)、およびアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセルであるTAXOL(登録商標)(Bristol−Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、パクリタキセルのCremophor非含有アルブミン操作ナノ粒子製剤であるABRAXANE(商標)(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg、Ill.)、およびドセタキセル(doxetaxel)であるTAXOTERE(登録商標)(Rhone−Poulenc Rorer、Antony、France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチンおよびカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボリン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤であるRFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンによる組み合わせ療法の略号であるCHOP、ならびにオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を5−FUおよびロイコボリンと組み合わせた処置レジメンの略号であるFOLFOXなど、上記のうちの2つまたはそれ超の組み合わせを含む。
医薬製剤
医薬組成物は、投与製剤と適合性の様式で、治療有効量、保護的量および治療的量で、投与される。投与が必要な有効成分の正確な量は、実施者の判断に依存する。しかし、適切な投与量範囲は、当業者により容易に決定可能である。初回投与および追加免疫用量に適したレジメンもまた可変的であるが、その後の投与が後に続く初回投与を含みうる。ワクチンの投与量もまた、投与経路に依存しえ、宿主サイズにしたがって変動する。
当技術分野では、動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウマ)においてモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびにこれらの断片を作製する方法が周知である。例えば、HarlowおよびLane(1988年)、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子のほか、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv(単鎖抗体)、およびdAb(ドメイン抗体;Wardら(1989年)、Nature、341巻、544頁)など、これらの断片を含む。
本明細書で開示される組成物は、本開示を読んだ当業者に同定可能な、さらなる活性剤、担体、ビヒクル、賦形剤、または補助剤と併せて、医薬組成物中に含むことができる。
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含むことが好ましい。このような医薬組成物中で、本明細書で開示される組成物は、「活性剤」とも称する「活性化合物」を形成する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という表現は、医薬品の投与と適合性の、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。また、補助的な活性化合物も、組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、その意図された投与経路と適合性となるように製剤化する。投与経路の例は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与を含む。非経口適用、皮内適用、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素:注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなど、張度を調整するための薬剤を含みうる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、アンプル内、使い捨て型のシリンジ内、またはガラス製もしくはプラスチック製の複数用量バイアル内に封入することができる。
臨床適用
本発明は、対象における増殖性疾患、例えば、がん(例えば、肺がん、大腸がん、膵臓がん、胆管がん、または子宮内膜がん)、良性新生物、または血管新生の処置のために有用な選択され指向された最適化された糖抗体を提供する。
本明細書で記載される組成物は、がんの処置および診断の両方においても使用されうる。当技術分野では、ヒトおよび/または動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウマ)においてモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびにこれらの断片を作製する方法が周知である。例えば、HarlowおよびLane(1988年)、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子のほか、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv(単鎖抗体)、およびdAb(ドメイン抗体;Wardら(1989年)、Nature、341巻、544頁)など、これらの断片を含む。
これらの組成物は、当技術分野で周知の緩衝剤を含む、薬学的に許容される賦形剤などの適切な担体もさらに含みうる。
天然に存在しない抗体および/または単離抗体ならびにポリヌクレオチドもまた提供される。ある特定の実施形態では、単離抗体およびポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。
抗体の抗原結合性ドメインは、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域であって、1つずつが軽(VL)鎖および重(VH)鎖に由来し、いずれもが、3つの超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を提示する、V領域から形成される。Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁(1994年)において記載される通り、可変ドメインは、VHとVLとが、短い可撓性ペプチドを介して共有結合的に連結された、単鎖Fv(scFv)断片として、またはそれらの各々が、定常ドメインに融合し、非共有結合的に相互作用する、Fab断片として、ファージ上に機能的にディスプレイされ得る。本明細書で使用される、scFvをコードするファージクローンおよびFabをコードするファージクローンを、まとめて、「Fvファージクローン」または「Fvクローン」と称する。
VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換えることができ、次いで、これを、Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁(1994年)において記載されている通り、抗原結合性クローンについて検索することができる。免疫化供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とせずに、免疫原に対する高アフィニティー抗体を提供する。代替的に、ナイーブレパートリーをクローニングして、Griffithsら、EMBO J、12巻:725〜734頁(1993年)により記載される通り、免疫化を伴わずに、広範にわたる、非自己抗原に対するヒト抗体と、また自己抗原に対するヒト抗体とによる、単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)により記載されている通り、幹細胞に由来する、再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、高度に可変性のCDR3領域をコードするランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用して、、in vitroにおける再配列を達成することにより、合成で作製することもできる。
糸状ファージを、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合により抗体断片をディスプレイするのに使用する。抗体断片は、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)により記載されている通り、VHドメインとVLドメインとが、同じポリペプチド鎖上で、可撓性のポリペプチドスペーサーにより接続される、単鎖Fv断片として、または、例えば、Hoogenboomら、Nucl. Acids Res.、19巻:4133〜4137頁(1991年)において記載されている通り、一方の鎖が、pIIIに融合し、他方の鎖が、細菌宿主細胞ペリプラズムに分泌され、ここで、Fab−コートタンパク質構造のアセンブリーが、野生型コートタンパク質の一部を取り換えることにより、ファージ表面上にディスプレイされる、Fab断片としてディスプレイすることができる。
抗体可変遺伝子セグメント(VHセグメントおよびVLセグメントを含む)をコードする核酸を、目的の細胞から回収し、増幅した。再配列されたVH遺伝子ライブラリーおよびVL遺伝子ライブラリーの場合、所望のDNAは、Orlandiら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、86巻:3833〜3837頁(1989年)において記載される通り、ゲノムDNAまたはmRNAを、リンパ球から単離した後で、再配列されたVH遺伝子およびVL遺伝子の5’末端および3’末端にマッチするプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を施し、これにより、発現のための、多様なV遺伝子レパートリーを作製することにより得ることができる。V遺伝子は、Orlandiら(1989年)およびWardら、Nature、341巻:544〜546頁(1989年)において記載されている通り、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端におけるバックプライマーと、Jセグメントに基づくフォワードプライマーとにより、cDNAおよびゲノムDNAから増幅することができる。しかし、cDNAから増幅するためには、バックプライマーはまた、Jonesら、Biotechnol.、9巻:88〜89頁(1991年)において記載されている通り、リーダーエクソン、およびSastryら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、86巻:5728〜5732頁(1989年)において記載されている通り、定常領域内のフォワードプライマーに基づく場合がある。相補性を最大化するため、Orlandiら(1989年)、またはSastryら(1989年)において記載されている通り、プライマー内に縮重を組み込むことができる。ある特定の実施形態では、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)による方法において記載されている通り、またはOrumら、Nucleic Acids Res.、21巻:4491〜4498頁(1993年)による方法において記載されている通り、免疫細胞の核酸試料中に存在する、全ての利用可能なVH配置およびVL配置を増幅するために、各V遺伝子ファミリーにターゲティングされたPCRプライマーを使用することにより、ライブラリーの多様性を最大化する。増幅されたDNAを、発現ベクターにクローニングするために、Orlandiら(1989年)において記載されている通り、まれな制限部位を、PCRプライマー内に、一方の端部におけるタグとして、または、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)において記載されている通り、タグ付けされたプライマーを伴う、さらなるPCR増幅により導入することができる。
合成により再配列されたV遺伝子のレパートリーは、in vitroにおいて、V遺伝子セグメントから導出することができる。ヒトVH遺伝子セグメントの大半は、クローニングおよびシークェンシングされ(Tomlinsonら、J. Mol. Biol.、227巻:776〜798頁(1992年)において報告されている)、マッピングされており(Matsudaら、Nature Genet.、3巻:88〜94頁(1993年)において報告されている);HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)において記載されている通り、これらのクローニングされたセグメント(H1ループおよびH2ループの全ての主要なコンフォメーションを含む)を使用して、多様な配列および長さのH3ループをコードするPCRプライマーにより、多様なVH遺伝子レパートリーを作り出すことができる。また、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4457〜4461頁(1992年)において記載される通り、単一の長さの長いH3ループに焦点を当てた、全ての配列多様性を伴うVHレパートリーを作製することもできる。ヒトVκセグメントおよびVλセグメントは、クローニングおよびシークェンシングされており(WilliamsおよびWinter、Eur. J. Immunol.、23巻:1456〜1461頁(1993年)において報告されている)、合成軽鎖レパートリーを作製するのに使用することができる。VHおよびVLのフォールド(fold)の範囲、ならびにL3およびH3の長さに基づく、合成によるV遺伝子レパートリーは、大幅な構造的多様性を有する抗体をコードする。V遺伝子をコードするDNAの増幅の後、HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)による方法に従い、in vitroにおいて、生殖細胞系列のV遺伝子セグメントを再配列することができる。
抗体断片のレパートリーは、VH遺伝子レパートリーと、VL遺伝子レパートリーとを、いくつかの方式で一体に組み合わせることにより構築することができる。各レパートリーは、異なるベクター内で創出することができ、ベクターは、例えば、Hogrefeら、Gene、128巻:119〜126頁(1993年)において記載されている通り、in vitroで、またはin vivoにおけるコンビナトリアル感染、例えば、Waterhouseら、Nucl. Acids Res.、21巻:2265〜2266頁(1993年)において記載されているloxP系により組み換えることができる。in vivoにおける組換え手法では、Fab断片の2本鎖としての性質を利用して、E.coliの形質転換効率により付与される、ライブラリーサイズに対する制限を克服する。ナイーブVHレパートリーと、ナイーブVLレパートリーとは、一方はファージミドへ、他方はファージベクターに、個別にクローニングする。次いで、各細胞が、異なる組み合わせを含有し、ライブラリーサイズが、存在する細胞の数(クローン約1012個)だけにより制限されるように、2つのライブラリーを、ファージミド含有細菌へのファージ感染により組み合わせる。VH遺伝子およびVL遺伝子が、単一のレプリコンに組み換えられ、ファージビリオンに共パッケージングされるように、いずれのベクターも、in vivoにおける組換えシグナルを含有する。これらの巨大ライブラリーは、アフィニティーの良好な(約10−8MのKd−1)多数の多様な抗体をもたらす。
代替的に、レパートリーは、例えば、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:7978〜7982頁(1991年)において記載されている通り、同じベクターに逐次的にクローニングする、または、例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)において記載されている通り、PCRにより一体にアセンブルし、次いで、クローニングすることができる。また、PCRアセンブリーも、VH DNAおよびVL DNAを、可撓性のペプチドスペーサーをコードするDNAと接合して、単鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するのに使用することができる。さらに別の技法では、Embletonら、Nucl. Acids Res.、20巻:3831〜3837頁(1992年)において記載されている通り、「インセルPCRアセンブリー」を使用して、VH遺伝子とVL遺伝子とを、リンパ球内で、PCRにより組み合わせ、次いで、連結された遺伝子のレパートリーをクローニングする。
ライブラリーのスクリーニングは、当技術分野で公知の任意の技法により達成することができる。標的は、吸着プレートのウェルをコーティングし、吸着プレートに固定された宿主細胞上で発現させるのに使用することも、細胞分取で使用することも、ストレプトアビジンコーティングビーズによる捕捉のために、ビオチンにコンジュゲートさせることも、ファージディスプレイライブラリーをパニングするための当技術分野で公知の、他の任意の方法において使用することもできる。
固相に結合したファージは、洗浄し、次いで、例えば、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:7978〜7982頁(1991年)において記載されている通り、酸により、または、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)において記載されている通り、アルカリにより、または、例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)による抗原競合法と類似の手順における、SSEA−3/SSEA−4/GLOBO H抗原の競合により溶出させる。ファージは、単一のラウンドの選択で20〜1,000倍に富化することができる。さらに、富化されたファージは、細菌培養物中で成長させ、さらなるラウンドの選択にかけることができる。
選択の効率は、洗浄時における解離動態、および単一のファージ上の複数の抗体断片が、抗原と同時に係合しうるのかどうかを含む多くの因子に依存する。解離動態が速く(かつ、結合アフィニティーが弱い)抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ、および固相内の抗原の高いコーティング密度を使用することにより保持することができる。高密度は、多価相互作用を介してファージを安定化させるだけでなく、解離したファージの再結合に好適でもある。解離動態が遅く(かつ、結合アフィニティーが良好な)抗体の選択は、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)およびWO92/09690において記載されている通り、長い洗浄および一価ファージディスプレイ、ならびにMarksら、Biotechnol.、10巻:779〜783頁(1992年)において記載されている通り、抗原の低コーティング密度を使用することにより促進することができる。
しかし、選択された抗体のランダム変異(例えば、上で記載したアフィニティー成熟技法の一部において実施される)は、大半が抗原に結合し、少数はより高いアフィニティーを有する多くの変異体をもたらす可能性が高い。SSEA−3/SSEA−4/GLOBO Hを制限すると、まれに、高アフィニティーのファージも競合に耐えない可能性がある。全てのより高いアフィニティーの変異体を保持するため、ファージは、過剰なビオチン化SSEA−3/SSEA−4/GLOBO Hと共にインキュベートすることもできるが、SSEA−3/SSEA−4/GLOBO Hの標的モル濃度アフィニティー定数より低いモル濃度のビオチン化SSEA−3/SSEA−4/GLOBO Hと共にインキュベートすることもできる。次いで、高アフィニティー結合性ファージは、ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズにより捕捉することができる。このような「平衡捕捉」により、抗体を、それらの結合アフィニティーに従い、低アフィニティーの極過剰なファージから、アフィニティーの高さがわずか2倍の変異体クローンの単離を可能とする感度で選択することが可能となる。また、固相に結合したファージの洗浄で使用される条件も、解離動態に基づき弁別するように操作することができる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、ハイブリドーマまたはファージDNA鋳型から、重鎖および軽鎖の目的のコード領域を特異的に増幅するようにデザインされたオリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより)、たやすく単離およびシークェンシングされる。単離されたら、DNAを、発現ベクター内に入れ、次いで、これを、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別途免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内の所望のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体コードDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerraら、Curr. Opinion in Immunol.、5巻:256頁(1993年)およびPluckthun、Immunol. Revs、130巻:151頁(1992年)を含む。
本発明のFvクローンをコードするDNAを、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をコードする公知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は、Kabatら、前出から得ることができる)と組み合わせて、全長重鎖および/もしくは全長軽鎖または部分長重鎖および/もしくは部分長軽鎖をコードするクローンを形成することができる。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域、およびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、この目的のために使用することができ、このような定常領域を、任意のヒト種または動物種から取得し得ることを理解されたい。1つの動物(ヒトなど)種の可変ドメインDNAから導出され、次いで、「ハイブリッド」の全長重鎖および/または全長軽鎖のためのコード配列を形成するように、別の動物種の定常領域DNAに融合させたFvクローンは、本明細書で使用される「キメラ」抗体および「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。一実施形態では、ヒト可変DNAから導出されたFvクローンを、ヒト定常領域DNAに融合させて、全てのヒト全長重鎖および/もしくはヒト全長軽鎖またはヒト部分長重鎖および/もしくはヒト部分長軽鎖のコード配列を形成する。
ナイーブライブラリーにより産生される抗体(天然または合成)は、中程度のアフィニティー(約106〜107M−1のKd−1)のものでありうるが、また、Winterら(1994年)、前出において記載されている通り、アフィニティー成熟も、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することにより、in vitroで模倣することができる。例えば、エラープローンポリメラーゼ(Leungら、Technique、1巻:11〜15頁(1989年)において報告されている)を、Hawkinsら、J. Mol. Biol.、226巻:889〜896頁(1992年)による方法、またはGramら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:3576〜3580頁(1992年)による方法で使用することにより、in vitroにおいて、ランダムに、変異を導入することができる。加えて、アフィニティー成熟は、例えば、目的のCDRにわたり、ランダムな配列を保有するプライマーを伴うPCRを、選択された個々のFvクローン内で使用して、1つまたは複数のCDRをランダムに変異させ、より高いアフィニティーのクローンについてスクリーニングすることにより実施することもできる。WO9607754(1996年3月14日公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域内で変異誘発を誘導して、軽鎖遺伝子のライブラリーを創出するための方法について記載した。別の有効な手法は、Marksら、Biotechnol.、10巻:779〜783頁(1992年)において記載されている通り、非免疫化ドナーから得られた天然に存在するVドメイン改変体のレパートリーを伴うファージディスプレイにより選択されたVHドメインまたはVLドメインを組み換え、数回のラウンドにわたる鎖リシャフリングにより、より高いアフィニティーについてスクリーニングすることである。この技法は、アフィニティーが10−9Mの範囲の抗体および抗体断片の作製を可能とする。
抗体のアフィニティーを生成し評価する他の方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Kohlerら、Nature 256:495(1975);米国特許第4,816,567号;Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986;Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987;Munsonら、Anal.Biochem.,107:220(1980);Engelsら、Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,28:716−734(1989);Abrahmsenら、EMBO J.,4:3901(1985);Methods in Enzymology,vol.44(1976);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)において記載されている。
一般的な方法
抗体の作製は、ハイブリドーマ技法、および結合剤分子についてのファージディスプレイライブラリーのスクリーニングなど、本明細書で記載される方法を含む当技術分野における日常的な技術を使用して達成することができる。当技術分野では、これらの方法が十分に確立されている。
略述すると、本発明の抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、1つまたは複数の所望の活性を伴う合成抗体クローンについてスクリーニングすることにより作製することができる。原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合させた、抗体可変領域の多様な断片(Fv)をディスプレイするファージを含有するファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択する。このようなファージライブラリーを、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングする。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現させるクローンを、抗原に吸着させ、これにより、ライブラリー内の非結合性クローンから分離する。次いで、結合性クローンを抗原から溶出させ、さらなる抗原吸着/溶出サイクルにより、さらに富化することができる。本発明の抗体のうちのいずれかは、適切な抗原スクリーニング手順をデザインして、目的のファージクローンについて選択した後で、目的のファージクローンに由来するFv配列と、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、NIH Publication第91−3242号、Bethesda Md.(1991年)、1〜3巻において記載されている、適切な定常領域(Fc)配列とを使用して、全長抗体クローンを構築することにより得ることができる。
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得ることができる、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる、考えられる天然に存在する変異を除き同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物ではないものとしての抗体の性格を指し示す。
本発明のモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年)により初めて記載されたハイブリドーマ法を含む当技術分野で公知の様々な方法を使用して作製することもでき、代替的に、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)により作製することもできる。
ベクター、宿主細胞、および組換え法
本発明の抗体を組換えにより作製するには、本発明の抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、たやすく単離およびシークェンシングされる。多くのベクターが、利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。宿主細胞は、原核生物由来の細胞または真核生物(一般に、哺乳動物)由来の細胞のいずれかを含むがこれらに限定されない。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域、およびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、この目的のために使用することができ、このような定常領域を、任意のヒト種または動物種から取得し得ることを理解されたい。
原核宿主細胞を使用する抗体の作製
ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技法を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離およびシークェンシングすることができる。代替的に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成器またはPCR技法を使用して合成することもできる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列を、原核宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現させることが可能な組換えベクターに挿入する。利用可能であり、当技術分野で公知の多くのベクターは、本発明の目的で使用することができる。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはこれらの両方)、およびそれが存在する特定の宿主細胞に対するその適合性に応じて、多様な構成要素を含有する。ベクターの構成要素は一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合性部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列を含むがこれらに限定されない。
一般に、宿主細胞に適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主と関連させて使用する。ベクターは通常、複製部位のほか、形質転換された細胞内の表現型による選択を提供することが可能なマーキング配列も保有する。例えば、E.coliは、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換することが典型的である。pBR322は、アンピシリン(Amp)耐性およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、これにより、形質転換された細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物性プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、微生物が内因性タンパク質を発現させるために使用しうるプロモーターも含有しうるか、またはこれを含有するように修飾することができる。特定の抗体を発現させるために使用されるpBR322誘導体の例については、Carterら、米国特許第5,648,237号において詳細に記載されている。
加えて、宿主微生物に適合性のレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターも、形質転換ベクターとして、これらの宿主と関連させて使用することができる。例えば、λGEM(商標)11などのバクテリオファージを、E.coli LE392など、易感染性の宿主細胞を形質転換するのに使用しうる組換えベクターの作製において活用することができる。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成要素の各々をコードする、2つまたはこれを超えるプロモーター−シストロン対を含みうる。プロモーターとは、シストロンに対して上流(5’)に位置する非翻訳の調節配列であって、その発現をモジュレートする。原核生物プロモーターは、誘導的プロモーターと構成的プロモーターとの2つのクラスに分けられることが典型的である。誘導的プロモーターとは、培養条件の変化、例えば、栄養物質の存在もしくは非存在、または温度の変化に応答して、シストロンの高レベルの転写をその制御下で開始するプロモーターである。
様々な潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化を介して、供給源DNAから取り出し、単離されたプロモーター配列を、本発明のベクターに挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。天然のプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を使用して、標的遺伝子の増幅、および/または発現を誘導することができる。一部の実施形態では、異種プロモーターは一般に、天然の標的ポリペプチドのプロモーターと比較して、発現させる標的遺伝子の転写の増大および収量の上昇を可能とするので活用される。
原核宿主を伴う使用に適するプロモーターは、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼプロモーター系およびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターを含む。しかし、細菌内で機能的な他のプロモーター(他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーターなど)も同様に適する。それらのヌクレオチド配列は公表されており、これにより、当業者が、リンカーまたはアダプターを使用して、それらを、標的軽鎖および標的重鎖をコードするシストロンに、作動可能にライゲーションして、必要とされる任意の制限部位を供給することが可能となる(Siebenlistら(1980年)、Cell、20巻:269頁)。
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、発現させたポリペプチドの、膜を横切るトランスロケーションを誘導する、分泌シグナル配列構成要素を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素の場合もあり、ベクターに挿入された標的ポリペプチドDNAの一部の場合もある。本発明の目的で選択されたシグナル配列は、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)シグナル配列であるものとする。異種ポリペプチドにとって天然のシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核宿主細胞のためには、シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPからなる群より選択される、原核生物シグナル配列で置換する。本発明の一実施形態では、発現系のシストロンの両方で使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその改変体である。
別の態様では、本発明に従う免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質内で生じることが可能であり、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。この点で、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、細胞質内で機能的免疫グロブリンを形成するように、発現され、フォールドされ、アセンブルされる。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB株)は、ジスルフィド結合形成に好適な細胞質条件をもたらし、これにより、発現したタンパク質サブユニットの適正なフォールディングおよびアセンブリーを可能とする(ProbaおよびPluckthun、Gene、159巻:203頁(1995年))。
本発明の抗体はまた、分泌され、適正にアセンブルされた、本発明の抗体の収量を最大化するために、発現するポリペプチド構成要素の定量的な比をモジュレートしうる発現系を使用することによって作製することもできる。このようなモジュレーションは、ポリペプチド構成要素について、翻訳強度を同時にモジュレートすることにより、少なくとも一部達成する。
翻訳強度をモジュレートするための1つの技法は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において開示されている。この技法では、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の改変体を活用する。所与のTIRについて、翻訳強度がある範囲にある、一連のアミノ酸配列改変体または核酸配列改変体を創出し、これにより、特異的な鎖の所望の発現レベルについて、この因子を調整するための簡便な手段をもたらすことができる。TIR改変体は、アミノ酸配列を改変させうるコドン変化を結果としてもたらす、従来の変異誘発技法により作り出すことができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIR内の改変は、例えば、シグナル配列の改変と共に、シャイン−ダルガーノ配列の数または間隔の改変を含みうる。変異体のシグナル配列を作り出すための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)コード配列の起始部における「コドンバンク」の作製である。これは、各コドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることにより達成することができ;加えて、ロイシン、セリン、およびアルギニンなど、一部のアミノ酸が、第1の位置および第2の位置を複数有し、これにより、バンクの作製に複雑性を付加しうる。変異誘発のこの方法については、Yansuraら(1992年)、METHODS: A Companion to Methods in Enzymol.、4巻:151〜158頁において詳細に記載されている。
一実施形態では、その中の各シストロンのTIR強度がある範囲にあるベクターのセットを作り出す。この限定的なセットにより、各鎖の発現レベルについての比較のほか、多様なTIR強度の組み合わせの下における、所望の抗体産物の収量についての比較ももたらされる。TIR強度は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において詳細に記載されている通り、レポーター遺伝子の発現レベルを定量化することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRが、本発明の発現ベクター構築物内で組み合わされるように選択される。
本発明の抗体を発現させるのに適する原核宿主細胞は、古細菌およびグラム陰性菌またはグラム陽性菌などの真正細菌を含む。有用な細菌の例は、Escherichia(例えば、E.coli)種、Bacilli(例えば、B.subtilis)種、Enterobacteria種、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)種、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusを含む。一実施形態では、グラム陰性細胞を使用する。一実施形態では、E.coli細胞を、本発明のための宿主として使用する。E.coli株の例は、W3110株(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、2巻(Washington, D.C.: American Society for Microbiology、1987年)、1190〜1219頁;ATCC寄託番号:27,325)、および、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE) degP41 kanR(米国特許第5,639,635号)を有する33D3株を含むその派生株を含む。E.coli 294(ATCC:31,446)、E.coli B、E.coli λ1776(ATCC:31,537)およびE.coli RV308(ATCC:31,608)など、他の株およびそれらの派生株もまた、適する。これらの例は、限定的なものではなく、例示的なものである。当技術分野では、規定された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれかの派生株を構築するための方法が公知であり、例えば、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)において記載されている。細菌の細胞内のレプリコンの複製能力を考慮して、適切な細菌を選択することが、一般に必要である。例えば、E.coli、Serratia、またはSalmonella種は、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410など、周知のプラスミドを使用して、レプリコンを供給する場合に、宿主として使用するのに適しうる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきあり、望ましくは、さらなるプロテアーゼ阻害剤を細胞培養物中に組み込みうる。
抗体の作製
宿主細胞を、上で記載した発現ベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAが、染色体外エレメントとして、または染色体への組込み体により複製可能となるように、DNAを、原核宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、このような細胞に適切な標準的技法を使用してなされる。細胞壁による実質的な障壁を含有する細菌細胞には、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理を一般に使用する。形質転換のための別の方法では、ポリエチレングリコール/DMSOを使用する。さらに別の技法では、電気穿孔が使用される。
本発明のポリペプチドを作製するのに使用される原核細胞は、当技術分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に適する培地中で成長させる。適切な培地の例は、必要な栄養補充物質を加えたルリアブロス(LB)を含む。一部の実施形態では、培地はまた、発現ベクターを含有する原核細胞の増殖を選択的に可能とするように、発現ベクターの構築に基づき選び出される、選択用薬剤も含有する。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現させる細胞を成長させるために、アンピシリンを、培地に添加する。
炭素供給源、窒素供給源、および無機ホスフェート供給源のほかに、また、任意の必要な補充物質も、適切な濃度で、単独、または複合窒素供給源など、別の補充物質または培地との混合物として、含むことができる。任意選択で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、およびジチオトレイトールからなる群より選択される、1つまたは複数の還元剤を含有しうる。
原核宿主細胞は、適切な温度で培養する。E.coliを成長させるには、例えば、成長は、約20℃〜約39℃、約25℃〜約37℃、および約30℃を含むがこれらに限定されない温度範囲で行う。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5〜約9の範囲の任意のpHでありうる。E.coliでは、pHは、約6.8〜約7.4、または約7.0でありうる。
誘導的プロモーターを、本発明の発現ベクター内で使用する場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適する条件下で誘導する。本発明の一態様では、PhoAプロモーターを、ポリペプチドの転写を制御するために使用する。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のためのホスフェート制限培地中で培養する。一実施形態では、ホスフェート制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmonsら、J. Immunol. Methods(2002年)、263巻:133〜147頁を参照されたい)。当技術分野で公知の通り、使用されるベクター構築物に従い、他の様々な誘導剤を使用することができる。
一実施形態では、発現した本発明のポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、ここから回収される。タンパク質の回収は、一般に、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段による微生物の破壊を伴うことが典型的である。細胞を破壊したら、細胞残渣または全細胞は、遠心分離または濾過により除去することができる。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーにより、さらに精製することができる。代替的に、タンパク質を、培養培地に輸送し、その中で単離することもできる。細胞は、培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために、培養上清を、濾過および濃縮することができる。発現させたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウェスタンブロットアッセイなど、一般に公知の方法を使用して、さらに単離および同定することができる。
本発明の一態様では、抗体の作製を、発酵工程により大量に行う。組換えタンパク質の作製のためには、多様な大スケールの流加発酵手順が利用可能である。大スケールの発酵容量は、少なくとも1000リットル、例えば、約1,000〜100,000リットルである。これらの発酵槽では、撹拌用インペラーを使用して、酸素および栄養物質、とりわけ、グルコース(一般的な炭素/エネルギー供給源)を分配する。小スケールの発酵とは一般に、容積が約100リットルを超えず、約1リットル〜約100リットルの範囲にありうる発酵槽内の発酵を指す。
発酵工程では、タンパク質発現の誘導は、細胞を、適切な条件下で、所望の密度、例えば、OD550で約180〜220(この段階では、細胞は、早期定常相にある)まで成長させた後で、開始することが典型的である。当技術分野で公知であり、上で記載した通り、使用されるベクター構築物に従い、様々な誘導剤を使用することができる。細胞は、誘導前に、より短い期間で成長させることができる。細胞は通例、約12〜50時間誘導するが、より長い誘導時間も、より短い誘導時間も、使用することができる。
本発明のポリペプチドの作製収量および作製品質を改善するために、多様な発酵条件を改変することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの適正なアセンブリーおよびフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を伴う、ペプチジルプロリルcis,trans−イソメラーゼ)など、シャペロンタンパク質を過剰発現させる、さらなるベクターを使用して、宿主原核細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、適正なフォールディングおよび細菌宿主細胞内で産生される異種タンパク質の溶解度を促進することが裏付けられている。Chenら、(1999) J Bio Chem 274:19601−19605;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arieら、(2001)Mol.Microbiol.39:199−210。
発現させた異種タンパク質(とりわけ、タンパク質分解に対して感受性の異種タンパク質)のタンパク質分解を最小化するため、タンパク質分解酵素について欠損する、ある特定の宿主株を、本発明のために使用することができる。例えば、宿主細胞株は、Protease III、OmpT、DegP、Tsp、Protease I、Protease Mi、Protease V、Protease VI、およびこれらの組み合わせなど、公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子内に、遺伝子変異を施すように改変することができる。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Jolyら(1998年)、前出;Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance、2巻:63〜72頁(1996年)において記載されている。
一実施形態では、タンパク質分解酵素について欠損し、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現させるプラスミドで形質転換されたE.coli株を、本発明の発現系内の宿主細胞として使用する。
抗体の精製
一実施形態では、本明細書で作製される抗体タンパク質をさらに精製して、さらなるアッセイのための、実質的に均質な調製物を得、使用する。当技術分野で公知の、標準的なタンパク質精製法を使用することができる。以下の手順:免疫アフィニティーカラム上またはイオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のまたはDEAEなどカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および例えば、Sephadex G−75を使用するゲル濾過は、適切な精製手順を例示するものである。
一態様では、固相上に固定化されたプロテインAを、本発明の抗体産物の免疫アフィニティー精製のために使用する。プロテインAとは、Staphylococcus aureasに由来する、41kDの細胞壁タンパク質であって、抗体のFc領域に、高アフィニティーで結合する(Lindmarkら(1983年)、J. Immunol. Meth.、62巻:1〜13頁)。プロテインAを固定化する固相は、ガラス表面もしくはシリカ表面を含むカラム、またはCPG(controlled pore glass)カラムもしくはケイ酸カラムでありうる。一部の適用では、カラムを、グリセロールなどの試薬でコーティングすると、夾雑物の非特異的付着を防止する可能性が高い。
精製の第1のステップとして、上で記載した細胞培養物に由来する調製物を、プロテインAを固定化した固相に適用して、目的の抗体の、プロテインAへの特異的結合を可能とすることができる。次いで、固相を洗浄すると、固相に非特異的に結合した夾雑物が除去される。最後に、目的の抗体を、固相から、溶出により回収する。
真核宿主細胞を使用する抗体の作製
ベクターの構成要素は一般に、以下:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない。
(i)シグナル配列構成要素
真核宿主細胞における使用のためのベクターはまた、シグナル配列、または、目的の成熟タンパク質もしくは成熟ポリペプチドのN末端において特異的切断部位を有する、他のポリペプチドも含有しうる。選択される異種シグナル配列は一般に、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)異種シグナル配列である。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物シグナル配列のほか、ウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルも利用可能である。
このような前駆体領域のDNAを、リーディングフレーム内で、抗体をコードするDNAにライゲーションする。
(ii)複製起点
一般に、複製起点構成要素は、哺乳動物の発現ベクターに必要とされない。例えば、SV40起点は、初期プロモーターを含有するというだけで使用されうることが典型的である。
(iii)選択遺伝子構成要素
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択用マーカーとも称する、選択遺伝子を含有しうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生剤または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、(b)該当する場合、栄養要求性欠損を補完する、または(c)複合培地から得られない必須の栄養物質を供給する、タンパク質をコードする。
選択スキームの1つの例では、宿主細胞の成長を止める薬物を活用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、これにより、選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例では、薬物である、ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適する選択用マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインIおよびII(例えば、霊長動物メタロチオネイン遺伝子)、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能とする選択用マーカーである。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞はまず、DHFRの競合的アンタゴニストである、メトトレキセート(Mtx)を含有する培養培地中で、形質転換体の全てを培養することにより同定することができる。野生型DHFRを使用する場合に適切な宿主細胞は、例えば、DHFR活性を欠損させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば;ATCC:CRL−9096)を含む。
代替的に、抗体、野生型DHFRタンパク質、およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)など、別の選択用マーカーをコードするDNA配列で形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生剤、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418など、選択用マーカーのための選択用薬剤を含有する培地中の細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
(iv)プロモーター構成要素
発現ベクターおよびクローニングベクターは通例、宿主生物により認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。真核生物のプロモーター配列は、公知である。事実上全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置する、ATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写の始点から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域[配列中、Nは、任意のヌクレオチドでありうる]である。大半の真核生物遺伝子の3’末端は、ポリAテールの、コード配列の3’末端への付加のシグナルでありうる、AATAAA配列である。これらの配列の全ては、真核生物発現ベクターに挿入するのに適する。
哺乳動物宿主細胞内のベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(Adenovirus 2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターに由来するプロモーター、または熱ショックプロモーターに由来するプロモーターにより制御することができるが、このようなプロモーターが、宿主細胞系に適合性があることを条件とする。
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点もまた含有する、SV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して、哺乳動物宿主内でDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の改変については、米国特許第4,601,978号において記載されている。また、単純ヘルペスウイルスに由来するチミジンキナーゼプロモーターの制御下、マウス細胞内の、ヒトβ−インターフェロンcDNAの発現についての、Reyesら、Nature、297巻:598〜601頁(1982年)も参照されたい。代替的に、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートも、プロモーターとして使用することができる。
(v)エンハンサーエレメント構成要素
高等真核生物による、本発明の抗体ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列を、ベクターに挿入することにより増大させうることが多い。今や、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)に由来する、多くのエンハンサー配列が、公知である。しかし、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーを使用することが典型的である。例は、複製起点の後期側(100〜270bp)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントについては、また、Yaniv、Nature、297巻:17〜18頁(1982年)も参照されたい。エンハンサーは、ベクターに、抗体ポリペプチドコード配列の5’または3’の位置にスプライスされる場合もあるが、一般に、プロモーターの5’の部位に位置する。
(vi)転写終結構成要素
真核宿主細胞内で使用される発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含有することが典型的である。このような配列は一般に、真核生物DNAもしくは真核生物cDNA、またはウイルスDNAもしくはウイルスcDNAの5’非翻訳領域、場合によって、3’非翻訳領域から得られる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写される、ヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびその中で開示されている発現ベクターを参照されたい。
(vii)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書のベクター内でDNAをクローニングするかまたは発現させるのに適する宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書で記載される高等真核細胞を含む。培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の繁殖は、日常的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞系(COS−7;ATCC:CRL1651);ヒト胎児腎臓細胞系(293細胞または懸濁培養で成長させるためにサブクローニングされた293細胞;Grahamら、J. Gen Virol.、36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK;ATCC:CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR−(CHO;Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4;Mather、Biol. Reprod.、23巻:243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1;ATCC:CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76;ATCC:CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA;ATCC:CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK;ATCC:CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A;ATCC:CRL1442);ヒト肺細胞(W138;ATCC:CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562;ATCC:CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.、383巻:44〜68頁(1982年));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ細胞系(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗体の作製のための、上で記載した発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養培地中で培養する。
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を作製するのに使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養することができる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。加えて、Hamら、Meth. Enz.、58巻:44頁(1979年)、Barnesら、Anal. Biochem.、102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許再交付第30,985号において記載されている培地のうちのいずれかを、宿主細胞のための培養培地として使用することもできる。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェートなど)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生剤(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(通例マイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、ならびにグルコースもしくは同等のエネルギー供給源を補充することができる。また、他の任意の必要な補充物質も、当業者に公知の適切な濃度で含むことができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に対して既に使用された培養条件であり、当業者に明らかである。
(ix)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内で産生させること、または培地に直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合、最初のステップとして、宿主細胞または溶解させた断片のいずれかである粒子状残渣は一般に、例えば、遠心分離または限外濾過により除去する。抗体を培地に分泌させる場合、このような発現系に由来する上清は一般に、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon限外濾過ユニットまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前出のステップのうちのいずれかに含み、タンパク質分解を阻害することができ、偶発性の夾雑物の成長を防止するために抗生剤が含まれ得る。
細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーは一般に、許容可能な精製技法である。プロテインAなどのアフィニティー試薬の、アフィニティーリガンドとしての適性は、抗体内に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1重鎖、ヒトγ2重鎖、またはヒトγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら、J. Immunol. Meth.、62巻:1〜13頁(1983年))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3のために推奨される(Gussら、EMBO J.、5巻:1567〜1575頁(1986年))。アフィニティーリガンドを付着させるマトリックスは大部分、アガロースであることが多いが、他のマトリックスも利用可能である。CPG(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなど、力学的に安定的なマトリックスは、アガロースに対して達成しうる流量より大きな流量およびアガロースに対して達成しうる加工時間より短い加工時間を可能とする。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製のために有用である。また、イオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリン上のクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂上またはカチオン交換樹脂上(ポリアスパラギン酸カラムなど)のSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿など、タンパク質精製のための他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備的精製ステップの後、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物を、必要に応じて、例えば、pHを約2.5〜4.5の間とする溶出緩衝液を使用し、一般に低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、さらなる精製ステップにかけることができる。
当技術分野では、一般に、研究、検査、および臨床使用における使用のための抗体を調製するための技法および方法論が十分に確立されており、上記とも符合し、かつ/または目的の特定の抗体に適切であると当業者にみなされていることに留意されたい。
活性アッセイ
本発明の抗体は、それらの物理的特性/化学的特性および生物学的機能について、当技術分野で公知の多様なアッセイにより特徴付けることができる。
精製された抗体は、N末端シークェンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ除外高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー、およびパパイン消化を含むがこれらに限定されない、一連のアッセイによりさらに特徴付けることができる。
必要な場合は、抗体を、それらの生物学的活性について解析する。一部の実施形態では、本発明の抗体を、それらの抗原結合活性について調べる。当技術分野で公知であり、本明細書で使用しうる抗原結合性アッセイは、限定せずに述べると、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、およびプロテインAイムノアッセイなどの技法を使用する、任意の直接的結合アッセイまたは競合的結合アッセイを含む。
一実施形態では、本発明は、全てではないが一部のエフェクター機能を有する改変された抗体を想定しており、このことが、この抗体を、抗体のin vivo半減期が重要であるがある特定のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)が不要または有害である多くの適用に望ましい候補にしている。ある特定の実施形態では、抗体のFc活性は、所望の特性だけが維持されることを確実にするために測定される。in vitro細胞傷害アッセイおよび/またはin vivo細胞傷害アッセイが、CDC活性および/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために実施されうる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性をおそらくは欠く)がFcRn結合能を保持することを確実にするために実施されうる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対し、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchおよびKinet、Annu. Rev. Immunol 9巻:457〜92頁(1991年)の464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの例は、米国特許第5,500,362号または米国特許第5,821,337号に記載されている。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的に、または加えて、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynesら、PNAS (USA) 95巻:652〜656頁(1998年)に開示されたものなどの動物モデルにおいて評価されうる。C1q結合アッセイもまた、抗体がC1qに結合できず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために実行されうる。補体活性化を評価するために、例えばGazzano−Santoroら、J. Immunol. Methods 202巻:163頁(1996年)に記載されるようなCDCアッセイが実施されうる。FcRn結合およびin vivoクリアランス/半減期の決定もまた、当技術分野で公知の方法を使用して実施されうる。
抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。ある特定の状況では、全抗体ではなく、抗体断片を使用することが有利である。より小サイズの断片は、急速なクリアランスを可能とし、充実性腫瘍への接近の改善をもたらしうる。
抗体断片を産生するための多様な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解性消化を介して導出した(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods、24巻:107〜117頁(1992年);およびBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照されたい)。しかし、今やこれらの断片は、組換え宿主細胞に直接産生させることができる。Fab抗体断片、Fv抗体断片、およびScFv抗体断片は全て、E.coli内で発現し、E.coliから分泌され、このため、これらの断片の大量の作製が容易に可能となりうる。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。代替的に、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収し、化学的にカップリングさせて、F(ab’)2断片を形成することもできる(Carterら、Bio/Technology、10巻:163〜167頁(1992年))。別の手法に従い、F(ab’)2断片を、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期を延長したFab断片およびF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号において記載されている。当業者には、抗体断片を作製するための他の技法も明らかであろう。他の実施形態では、選択した抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびsFvは、定常領域を欠く無傷の結合部位を伴う唯一の分子種であり、このため、in vivoにおける使用時に非特異的結合を低減するのに適する。sFv融合タンパク質を構築して、sFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおけるエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。Antibody Engineering、Borrebaeck編、前出を参照されたい。例えば、抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載の通り、「直鎖状抗体」でもありうる。このような直鎖状抗体断片は、一特異性であっても二特異性であってもよい。
ヒト化抗体
本明細書で記載される抗体のうちのいずれも、全長抗体またはその抗原結合性断片の場合がある。一部の例では、抗原結合性断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、または単鎖Fv断片である。一部の例では、抗原結合性断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、または単鎖Fv断片である。一部の例では、単離抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または単鎖抗体である。
本明細書で記載される抗体のうちのいずれも、以下:
a)組換え抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体断片、二特異性抗体、一特異性抗体、一価抗体、IgG1抗体、IgG2抗体、または抗体の誘導体であること;b)ヒト抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体、抗原結合性断片、または抗体の誘導体であること;c)単鎖抗体断片、マルチボディー(multibody)、Fab断片、ならびに/またはIgGアイソタイプ、IgMアイソタイプ、IgAアイソタイプ、IgEアイソタイプ、IgDアイソタイプ、および/もしくはこれらのサブクラスの免疫グロブリンであること;d)以下の特徴:(i)がん細胞のADCCおよび/もしくはCDCを媒介すること;(ii)がん細胞のアポトーシスを誘導および/もしくは促進すること;(iii)がん細胞の標的細胞の増殖を阻害すること;(iv)がん細胞の食作用を誘導および/もしくは促進すること;ならびに/または(v)細胞傷害剤の放出を誘導および/もしくは促進することのうちの1つまたは複数を有すること;e)腫瘍特異的炭水化物抗原である、腫瘍関連炭水化物抗原に特異的に結合すること;f)非がん細胞上、非腫瘍細胞上、良性がん細胞上、および/または良性腫瘍細胞上で発現する抗原に結合しないこと;ならびに/またはg)がん幹細胞上および通常のがん細胞上で発現する腫瘍関連炭水化物抗原に特異的に結合すること
のうちの1つまたは複数の特徴を有する。
抗体の、それらのそれぞれの抗原への結合は、特異的であることが好ましい。「特異的」という用語は、結合対の一方のメンバーが、その特異的結合パートナー以外の分子への著明な結合を示さず、例えば、本明細書で指定される分子以外の他の任意の分子との交差反応性が、約30%未満、好ましくは、20%、10%、または1%である状況を指すのに一般に使用される。
抗体は、その標的エピトープに、高アフィニティー(低KD値)で結合するのに適し、KDは、ナノモル濃度単位の範囲またはこれより低値の範囲であることが好ましい。アフィニティーは、例えば、表面プラズモン共鳴など、当技術分野で公知の方法により測定することができる。
例示的な抗体調製物
本明細書で記載されるGlobo HエピトープおよびSSEA−4エピトープに結合することが可能な例示的な抗体は、当技術分野で公知の任意の方法により作製することができる。例えば、HarlowおよびLane(1988年)、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。
宿主動物の免疫化およびハイブリドーマ技術
抗Globo H抗体および抗SSEA−4抗体に対する例示的なポリクローナル抗体は、従来の任意の方法により、血清中の所望の抗体の増大について検討される免疫化哺乳動物から、血液を回収し、血清を血液から分離することにより調製することができる。ポリクローナル抗体は、ポリクローナル抗体を含有する血清を含み、同様に、ポリクローナル抗体を含有する画分は、血清から単離することができる。
ポリクローナル抗体は一般に、宿主動物(例えば、ウサギ、マウス、ウマ、またはヤギ)において、関連抗原およびアジュバントの、複数回の皮下(sc)注射または腹腔内(ip)注射により惹起する。二官能性薬剤または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2などを使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、スカシガイヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシン阻害剤にコンジュゲートさせることは、有用でありうる。
任意の哺乳動物は、所望の抗体を作製するための抗原で免疫化することができる。一般に、Rodentia、Lagomorpha、またはPrimatesの動物を使用することができる。Rodentiaの動物は、例えば、マウス、ラット、およびハムスターを含む。Lagomorphaの動物は、例えば、ウサギを含む。Primatesの動物は、例えば、Macaca fascicularis、アカゲザル、ヒヒ、およびチンパンジーなど、Catarrhini目のサル(旧世界ザル)を含む。
当技術分野では、動物を抗原で免疫化するための方法が公知である。抗原の腹腔内注射または皮下注射は、哺乳動物の免疫化のための標準的な方法である。より具体的には、抗原は、適量のリン酸緩衝食塩水(PBS)、生理食塩水などで希釈し、懸濁させることができる。所望の場合、抗原懸濁液は、フロイント完全アジュバントなど、適量の標準的なアジュバントと混合し、エマルジョンにして、次いで、哺乳動物に投与することができる。動物は、1mgまたは1μgのペプチドまたはコンジュゲート(それぞれ、ウサギ用またはマウス用)を、3容量のフロイント不完全アジュバントと組み合わせることにより、抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫化する。
動物には、力価がプラトーとなるまで、適量のフロイント不完全アジュバントと混合された抗原を、4〜21日ごとに数回投与することにより追加免疫することができる。動物には、フロイント完全アジュバント中に元の量の5分の1〜10分の1のペプチドまたはコンジュゲートを、複数の部位における皮下注射により追加免疫する。7〜14日後、動物から採血し、血清を、抗体力価についてアッセイする。適切な担体はまた、免疫化のためにも使用することができる。上記の免疫化の後で、血清を、標準的な方法により、所望の抗体の量の増大について検討する。好ましくは、動物には、同じ抗原のコンジュゲートを追加免疫するが、異なるタンパク質へ、かつ/または異なる架橋試薬を介してコンジュゲートさせる。コンジュゲートはまた、組換え細胞培養物中で、タンパク質融合体としても作製することができる。また、ミョウバンなどの凝集剤も、免疫応答を増強するのに使用すると適切である。
過去20〜30年間にわたり、ヒトin vivoにおける治療適用のためのキメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体を調製する、多数の方法が開発されている。最もよく使用され、実績のある方法は、ハイブリドーマ法を使用してマウスmAbを調製し、次いで、VHドメインおよびVLドメインのフレームワーク領域、ならびにmAbの定常ドメインを、ヒトVHドメインおよびVLドメインの、最も相同なヒトフレームワーク領域、ならびに望ましいヒトγ免疫グロブリンのアイソタイプおよびサブクラスの定常領域に転換することにより、mAbをヒト化することである。臨床で使用されるXolairなど、多くのmAbは、ヒトγ1アイソタイプおよびヒトγ1サブクラスならびにヒトκアイソタイプおよびヒトκサブクラスのヒト化mAbであり、この方法を使用して調製される。
一部の実施形態では、抗体は、従来のハイブリドーマ技術により作製することができる(Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年))。ハイブリドーマ法では、マウス、または、ハムスターもしくはウサギなど、他の適切な宿主動物を、本明細書の上で記載した通りに免疫化して、免疫化のために使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、またはこれらを産生することが可能なリンパ球を誘発する。代替的に、リンパ球は、in vitroで免疫化することもできる。
モノクローナル抗体を調製するために、免疫細胞を、抗原で免疫化された哺乳動物から回収し、上で記載した、血清中に高レベルの所望の抗体について点検し、細胞融合にかける。細胞融合のために使用される免疫細胞は、脾臓から得ることが好ましい。上記の免疫担当細胞と融合させる、他の好ましい親細胞は、例えば、哺乳動物の骨髄腫細胞、より好ましくは、融合細胞を薬物により選択するための獲得特性を有する骨髄腫細胞を含む。
好ましい骨髄腫細胞は、融合が効率的であり、選択された抗体産生細胞による安定的で高レベルの抗体の産生を支援し、HAT培地などの培地に対して感受性の骨髄腫細胞である。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞系は、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、Calif.USAから入手可能なMOPC−21マウス腫瘍およびMPC−11マウス腫瘍、ならびにAmerican Type Culture Collection、Rockville、Md. USAから入手可能なSP−2細胞に由来するものなどのマウス骨髄腫細胞系である。また、ヒト骨髄腫細胞系およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の作製について記載されている(Kozbor、J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987年))。
上記の免疫担当細胞および骨髄腫細胞は、公知の方法、例えば、Milsteinらによる方法(Galfreら、Methods Enzymol.、73巻:3〜46頁、1981年)に従い融合させることができる。ハイブリドーマ細胞を形成するように、ポリエチレングリコールなど、適切な融合剤を使用して、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させる(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、59〜103頁(Academic Press、1986年))。細胞融合により結果として得られるハイブリドーマは、それらを、HAT培地(ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含有する培地)など、標準的な選択培地中で培養することにより選択することができる。細胞の培養は、典型的にはHAT培地中で数日間〜数週間持続させ、その時間は、所望のハイブリドーマ(非融合細胞)を除き、他の全ての細胞を死滅させるのに十分である。次いで、標準的な限界希釈を実施して、所望の抗体を産生するハイブリドーマ細胞をスクリーニングおよびクローニングする。
このようにして調製されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは非融合親骨髄腫細胞の成長または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含有する、適切な培養培地中に播種し、成長させる。例えば、親骨髄腫細胞が、酵素である、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的にはHGPRT欠損細胞の成長を防止する物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)を含む。
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地を、抗原に指向されるモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降またはin vitro結合アッセイにより決定する。酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、酵素イムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および/または免疫蛍光における吸光度の測定を使用して、本発明の抗体の抗原結合活性を測定することができる。ELISAでは、本発明の抗体を、プレート上に固定化し、本発明のタンパク質をプレートに適用し、次いで、抗体産生細胞の培養上清または精製抗体など、所望の抗体を含有する試料を適用する。次いで、一次抗体を認識し、アルカリホスファターゼなどの酵素で標識された二次抗体を適用し、プレートをインキュベートする。次に、洗浄の後で、p−ニトロフェニルホスフェートなどの酵素基質を、プレートに添加し、吸光度を測定して、試料の抗原結合活性を評価する。この方法では、C末端断片またはN末端断片など、タンパク質の断片を使用することができる。BIAcore(Pharmacia)を使用して、本発明に従う抗体の活性を評価することができる。モノクローナル抗体の結合アフィニティーは、例えば、Munsonら、Anal. Biochem.、107巻:220頁(1980年)のスキャッチャード解析により決定することができる。
上で記載した方法を含む従来の方法のうちのいずれかを適用して、本明細書で記載されるエピトープに結合する抗体を産生するハイブリドーマ細胞を、さらなる特徴付けのために同定および選択することができる。
所望の特異性、アフィニティー、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞を同定した後で、クローンを、限界希釈手順によりサブクローニングし、標準的な方法により成長させる(Goding、Monoclonal Antibodies: Principles and Practice、59〜103頁(Academic Press、1986年))。この目的に適する培養培地は、例えば、D−MEM培地またはRPMI−1640培地を含む。サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなど、従来の免疫グロブリン精製手順により、培養培地、腹水、または血清から適切に分離される。
加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍(ascites tumor)として、in vivoで成長させることもできる。例えば、得られるハイブリドーマは、その後、マウスの腹腔に移植することができ、腹水を採取する。
得られるモノクローナル抗体は、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、プロテインAカラムもしくはプロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、または本発明のタンパク質をカップリングさせたアフィニティーカラムにより精製することができる。本発明の抗体は、本発明のタンパク質を精製および検出するためだけでなく、また、本発明のタンパク質のアゴニストおよびアンタゴニストのための候補としても使用することができる。加えて、この抗体は、本発明のタンパク質と関連する疾患のための、抗体処置へも適用することができる。
組換え技術
このようにして得られたモノクローナル抗体はまた、遺伝子操作技法を使用して、組換えにより調製することもできる(例えば、Borrebaeck C. A. K.およびLarrick J. W.、Therapeutic Monoclonal Antibodies、MacMillan Publishers LTD、United Kingdom刊、1990年を参照されたい)。抗体をコードするDNAを、抗体を産生するハイブリドーマまたは免疫化リンパ球などの免疫細胞からクローニングし、適切なベクターに挿入し、宿主細胞に導入して、組換え抗体を調製することができる。本発明はまた、上で記載したように調製した組換え抗体も提供する。
得られた抗体を、ヒト体内に投与する場合(抗体処置)、免疫原性を低減するために、ヒト抗体またはヒト化抗体が好ましい。例えば、ヒト抗体遺伝子のレパートリーを有するトランスジェニック動物は、タンパク質、タンパク質発現細胞、またはそれらの溶解物から選択される抗原で免疫化することができる。次いで、抗体産生細胞を動物から回収し、骨髄腫細胞と融合させて、タンパク質に対するヒト抗体を調製しうるハイブリドーマを得る。代替的に、抗体を産生する免疫化リンパ球などの免疫細胞は、がん遺伝子により不死化し、モノクローナル抗体を調製するために使用することができる。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、たやすく単離およびシークェンシングすることができる。ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの好ましい供給源としての役割を果たす。単離されたら、DNAを、発現ベクターに入れ、次いで、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別途免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体をコードするDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerraら、Curr. Opinion in Immunol.、5巻:256〜262頁(1993年)およびPluckthun、Immunol. Rev.、130巻:151〜188頁(1992年)を含む。
上で記載したハイブリドーマ細胞により産生される抗体をコードするDNAを、日常的な技術を介して遺伝子改変して、遺伝子操作された抗体を作製することができる。ヒト化抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、および二特異性抗体などの遺伝子操作された抗体は、例えば、従来の組換え技術を介して作製することができる。次いで、例えば、ヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインのコード配列で、相同なマウス配列を置換すること(Morrisonら(1984年)、Proc. Nat. Acad. Sci.、81巻:6851頁)により、または、免疫グロブリンのコード配列へ、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全部または一部を共有結合的に接合することにより修飾することができる。このようにして、標的抗原への結合特異性を有する、「キメラ」抗体または「ハイブリッド」抗体などの遺伝子操作された抗体を調製することができる。
当技術分野では、「キメラ抗体」の作製のために開発された技法が周知である。例えば、Morrisonら(1984年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻、6851頁;Neubergerら(1984年)、Nature、312巻、604頁;およびTakedaら(1984年)、Nature、314巻:452頁を参照されたい。
このような非免疫グロブリンポリペプチドで、抗体の定常ドメインを置換するか、または抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換して、抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位とを含む、キメラ二価抗体を創出することが典型的である。
キメラ抗体またはハイブリッド抗体はまた、架橋剤を伴う方法を含む、合成タンパク質化学において公知の方法を使用して、in vitroで調製することもできる。例えば、免疫毒素は、ジスルフィド交換反応を使用して、またはチオエーテル結合を形成することにより構築することができる。この目的に適する試薬の例は、イミノチオラン(iminothiolate)およびメチル−4−メルカプトブチルイミデートを含む。
当技術分野では、非ヒト抗体をヒト化するための方法が周知である。一般に、ヒト化抗体には、非ヒト供給源に由来する1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称することが多く、これは、「移入」可変ドメインから採取されることが典型的である。ヒト化は、Winterおよび共同研究者らによる方法(Jonesら、Nature、321巻:522〜525頁(1986年);Riechmannら、Nature、332巻:323〜327頁(1988年);Verhoeyenら、Science、239巻:1534〜1536頁(1988年))に従い、齧歯動物CDRまたは齧歯動物CDR配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的に実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体とは、実質的に無傷に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来する対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際は、ヒト化抗体は、一部のCDR残基と、おそらく、一部のFR残基とが、齧歯動物抗体内の類似の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体であることが典型的である。
ヒト化抗体を作製するのに使用される、軽鎖ヒト可変ドメインおよび重鎖ヒト可変ドメインのいずれの選択も、抗原性を低減するのに非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従い、齧歯動物抗体の可変ドメイン配列を、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに照らしてスクリーニングする。次いで、齧歯動物の配列に最も近接するヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として受容する(Simsら、J. Immunol.、151巻:2296頁(1993年);Chothiaら、J. Mol. Biol.、196巻:901頁(1987年))。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定の亜群についての、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carterら、Proc. Natl. Acad Sci. USA、89巻:4285頁(1992年);Prestaら、J. Immnol.、151巻:2623頁(1993年))。
抗原に対する高アフィニティーおよび他の好適な生物学的特性を保持するように抗体をヒト化することは、さらに重要である。この目標を達成するために、好ましい方法に従い、ヒト化抗体を、親配列およびヒト化配列についての三次元モデルを使用する、親配列および多様な概念上のヒト化産物についての解析工程により調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者は、これに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列についての、あり得る三次元コンフォメーション構造を例示および表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示について検討することにより、候補免疫グロブリン配列の機能において推定される残基の役割についての解析、すなわち、候補免疫グロブリンが、その抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基についての解析が可能となる。このようにして、標的抗原に対するアフィニティーの増大など、所望の抗体特徴を達成するように、FR残基は、レシピエント配列および移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は、抗原への結合に対する影響に、直接、かつ、極めて実質的に関与する。
今や、代替的に、免疫化されると、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することもできる。例えば、キメラおよび生殖細胞系列の変異体マウスにおける、抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性の欠失の結果として、内因性抗体産生の完全な阻害がもたらされることが記載されている。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイを、このような生殖細胞系列変異体マウスに導入する結果として、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255〜258頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immuno.、7巻:33頁(1993年)を参照されたい。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーから導出することもできる(Hoogenboomら、J. Mol. Biol.、227巻:381頁(1991年);Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年))。
また、本明細書で記載される抗Globo H抗体および抗SSEA−4抗体(重鎖、軽鎖、またはこれらの両方を含む)をコードする核酸、核酸のうちの1つまたは複数を含む発現ベクターなどのベクター、およびベクターのうちの1つまたは複数を含む宿主細胞のうちのいずれも、本開示の範囲内にある。一部の例では、ベクターは、本明細書で記載される抗Globo H抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。一部の例では、ベクターは、本明細書で記載される抗SSEA−4抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む。他の例では、ベクターは、それらの発現が、単一のプロモーターまたは2つの別個のプロモーターにより制御される場合がある、重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方をコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書ではまた、例えば、このセクションで記載される組換え技術を介して、本明細書で記載される抗Globo H抗体および抗SSEA−4抗体のうちのいずれかを作製するための方法も提供される。
抗体を調製するための他の技術
他の実施形態では、完全ヒト抗体は、特異的なヒト免疫グロブリンタンパク質を発現させるように操作された市販のマウスを使用することにより得ることができる。また、より所望される免疫応答(例えば、完全ヒト抗体)またはより頑健な免疫応答をもたらすようにデザインされたトランスジェニック動物も、ヒト化抗体またはヒト抗体の作製のために使用することができる。このような技術の例は、Amgen,Inc.(Fremont、Calif.)製のXenomouse(登録商標)、ならびにMedarex,Inc.(Princeton、N.J.)製のHuMAb−Mouse(登録商標)およびTC Mouse(商標)である。別の代替法では、抗体は、ファージディスプレイ技術による組換えにより作製することができる。例えば、米国特許第5,565,332号;同第5,580,717号;同第5,733,743号;および同第6,265,150号;ならびにWinterら(1994年)、Annu. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁を参照されたい。代替的に、ファージディスプレイ技術(McCaffertyら(1990年)、Nature、348巻:552〜553頁)を使用して、ヒト抗体および抗体断片を、非免疫化ドナーに由来する免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、in vitroにおいて産生することもできる。
無傷抗体(全長抗体)の抗原結合性断片は、日常的な方法を介して調製することができる。例えば、F(ab’)2断片は、抗体分子のペプシン消化により作製することができ、Fab断片は、F(ab’)2断片のジスルフィド架橋を還元することにより作り出すことができる。
代替的に、本明細書で記載される抗Globo H抗体および抗SSEA−4抗体は、McCaffertyら、Nature、348巻:552〜554頁(1990年);Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年);およびMarksら、J. Mol Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)において記載されている技法を使用して作り出された抗体ファージライブラリー(例えば、単鎖抗体ファージライブラリー)から単離することができる。後続の刊行物は、鎖シャフリングによる高アフィニティー(nM範囲)のヒト抗体の作製(Marksら、Bio/Technology、10巻:779〜783頁(1992年))、ならびに非常に大規模なファージライブラリーを構築するための戦略としての、コンビナトリアル感染およびin vivoにおける組換え(Waterhouseら、Nuc. Acids. Res.、21巻:2265〜2266頁(1993年))について記載している。こうして、これらの技法は、モノクローナル抗体を単離するための、従来のモノクローナル抗体ハイブリドーマ技法に対する実行可能な代替法である。
本明細書で記載される通りに得られた抗体は、均質となるまで精製することができる。例えば、抗体の分離および精製は、一般のタンパク質のために使用される分離法および精製法に従い実施することができる。例えば、抗体は、アフィニティークロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動、およびその他(Antibodies: A Laboratory Manual、HarlowおよびDavid Lane編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年)であるがこれらに限定されないものを、適切に選択し、組み合わせて使用することにより、分離および単離することができる。上記の通りに得られた抗体の濃度は、吸光度の測定、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)などにより決定することができる。アフィニティークロマトグラフィーを除く例示的なクロマトグラフィーは、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィーなど(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual、Daniel R. Marshakら編、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1996年)を含む。クロマトグラフィー手順は、HPLC、FPLCなどの液相クロマトグラフィーにより実行することができる。
抗体は、当技術分野で周知の方法を使用して特徴付けることができる。例えば、1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、または「エピトープマッピング」である。当技術分野では、例えば、HarlowおよびLane、Using Antibodies, a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年の11章において記載されている、抗体−抗原複合体の結晶構造の分解、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイ、および合成ペプチドベースのアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングし特徴付けるための多く方法が公知である。さらなる例では、エピトープマッピングを使用して、抗体が結合する配列を決定することができる。エピトープは、直鎖状エピトープ、すなわち、アミノ酸の単一の連なりの中に含有される直鎖状エピトープ、または単一の連なり(一次構造の直鎖状配列)の中に必ずしも含有されない可能性があるアミノ酸の三次元的相互作用により形成される、コンフォメーショナルエピトープの場合がある。長さを変化させるペプチド(例えば、少なくとも4〜6アミノ酸の長さ)を単離または合成し(例えば、組換えにより)、抗体を伴う結合アッセイのために使用することができる。別の例では、抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列に由来する重複ペプチドを使用し、抗体による結合を決定することにより、体系的スクリーニングで決定することができる。遺伝子断片発現アッセイに従い、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームを、ランダムに、または特異的遺伝子構築により断片化し、発現した抗原の断片の、被験抗体との反応性を決定する。例えば、PCRにより遺伝子断片を作製し、次いで、放射性アミノ酸の存在下、in vitroで、タンパク質に転写および翻訳させることができる。次いで、抗体の、放射性標識された抗原断片への結合を、免疫沈降およびゲル電気泳動により決定する。ある特定のエピトープはまた、ファージ粒子の表面上でディスプレイされるランダムなペプチド配列の大規模ライブラリー(ファージライブラリー)を使用することにより同定することもできる。代替的に、重複ペプチド断片の規定されたライブラリーは、単純な結合アッセイにおいて、試験抗体への結合について調べることができる。
さらなる例では、抗原結合性ドメインに対する変異誘発、ドメインスワッピング実験、およびアラニン走査変異誘発を実施して、エピトープの結合に要請され、十分であり、かつ/または必要な残基を同定することができる。例えば、ドメインスワッピング実験は、候補抗体に対する結合エピトープ内の多様な残基が、近縁であるが抗原的に顕著に異なるタンパク質(ニュートロフィンタンパク質ファミリーの別のメンバーなど)に由来する配列で置きかえられた(スワッピングされた)、標的抗原の変異体を使用して実施することができる。抗体の、変異体の標的タンパク質への結合を評価することにより、特定の抗原断片の、抗体の結合に対する重要性を評価することができる。
代替的に、競合アッセイは、抗体(例えば、本明細書で記載されるMC45抗体)が、他の抗体と同じエピトープに結合するのかどうかを決定するように、同じ抗原に結合することが公知の他の抗体を使用して実施することができる。競合アッセイは、当業者に周知である。
例示的で適切な一般的抗体作製法のさらなる態様
当技術分野では、動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、またはウマ)においてモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびにこれらの断片を作製する方法が周知である。例えば、HarlowおよびLane(1988年)、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New Yorkを参照されたい。「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子のほか、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv(単鎖抗体)、およびdAb(ドメイン抗体;Wardら(1989年)、Nature、341巻、544頁)など、これらの断片を含む。
本明細書で開示される組成物は、本開示を読んだ当業者に同定可能な、さらなる活性剤、担体、ビヒクル、賦形剤、または補助剤と併せて、医薬組成物中に含むことができる。
医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含むことが好ましい。このような医薬組成物中で、本明細書で開示される組成物は、「活性剤」とも称する「活性化合物」を形成する。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という表現は、医薬品の投与と適合性の、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。また、補助的な活性化合物も、組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、その意図された投与経路と適合性となるように製剤化する。投与経路の例は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口(例えば、吸入)投与、経皮(局所)投与、経粘膜投与、および直腸投与を含む。非経口適用、皮内適用、または皮下適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の構成要素:注射用水、食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈液;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;アセテート、シトレート、またはホスフェートなどの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなど、張度を調整するための薬剤を含みうる。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、アンプル内、使い捨て型のシリンジ内、またはガラス製もしくはプラスチック製の複数用量バイアル内に封入することができる。
少なくとも1つの抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体、または抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体をコードする配列を含む、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。ある特定の実施形態では、組成物は、医薬組成物でありうる。本明細書で使用される、組成物は、1つもしくは複数のSSEA−3/SSEA−4/Globo Hに結合する1つもしくは複数の抗体、および/または1つもしくは複数のSSEA−3/SSEA−4/Globo Hに結合する1つもしくは複数の抗体をコードする配列を含む、1つもしくは複数のポリヌクレオチドを含む。これらの組成物は、当技術分野で周知の緩衝剤を含む、薬学的に許容される賦形剤などの適切な担体もさらに含みうる。
単離抗体ならびにポリヌクレオチドもまた提供される。ある特定の実施形態では、単離抗体およびポリヌクレオチドは、実質的に純粋である。
一実施形態では、抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、モノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体の断片(例えば、Fab断片、Fab’−SH断片、およびF(ab’)2断片)が提供される。これらの抗体断片は、酵素的消化など、従来の手段により創出することもでき、組換え技法により作り出すこともできる。このような抗体断片は、キメラ抗体断片、ヒト化抗体断片、またはヒト抗体断片の場合がある。これらの断片は、下記に示される診断目的および治療目的に有用である。
当技術分野では、目的の抗体を得られうる、ファージディスプレイライブラリーを作り出すための様々な方法が公知である。目的の抗体を作り出す1つの方法は、Leeら、J. Mol. Biol.(2004年)、340巻(5号):1073〜93頁において記載されている、ファージ抗体ライブラリーの使用を介する。
本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、1つまたは複数の所望の活性を伴う合成抗体クローンについてスクリーニングすることにより作製することができる。原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合させた、抗体可変領域の多様な断片(Fv)をディスプレイするファージを含有するファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択する。このようなファージライブラリーを、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングする。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現させるクローンを、抗原に吸着させ、これにより、ライブラリー内の非結合性クローンから分離する。次いで、結合性クローンを抗原から溶出させ、さらなる抗原吸着/溶出サイクルにより、さらに富化することができる。本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体のいずれも、適切な抗原スクリーニング手順をデザインして、目的のファージクローンについて選択した後で、目的のファージクローンに由来するFv配列と、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、NIH Publication第91−3242号、Bethesda Md.(1991年)、1〜3巻において記載されている、適切な定常領域(Fc)配列とを使用して、全長抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体クローンを構築することにより得ることができる。
抗体の抗原結合性ドメインは、約110アミノ酸の2つの可変(V)領域であって、1つずつが軽(VL)鎖および重(VH)鎖に由来し、いずれもが、3つの超可変ループまたは相補性決定領域(CDR)を提示する、V領域から形成される。Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁(1994年)において記載される通り、可変ドメインは、VHとVLとが、短い可撓性ペプチドを介して共有結合的に連結された、単鎖Fv(scFv)断片として、またはそれらの各々が、定常ドメインに融合し、非共有結合的に相互作用する、Fab断片として、ファージ上に機能的にディスプレイされ得る。本明細書で使用される、scFvをコードするファージクローンおよびFabをコードするファージクローンを、まとめて、「Fvファージクローン」または「Fvクローン」と称する。
VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により個別にクローニングし、ファージライブラリー内でランダムに組み換えることができ、次いで、これを、Winterら、Ann. Rev. Immunol.、12巻:433〜455頁(1994年)において記載されている通り、抗原結合性クローンについて検索することができる。免疫化供給源に由来するライブラリーは、ハイブリドーマの構築を必要とせずに、免疫原に対する高アフィニティー抗体を提供する。代替的に、ナイーブレパートリーをクローニングして、Griffithsら、EMBO J、12巻:725〜734頁(1993年)により記載される通り、免疫化を伴わずに、広範にわたる、非自己抗原に対するヒト抗体と、また自己抗原に対するヒト抗体とによる、単一の供給源を提供することもできる。最後に、ナイーブライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)により記載されている通り、幹細胞に由来する、再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、高度に可変性のCDR3領域をコードするランダムな配列を含有するPCRプライマーを使用して、、in vitroにおける再配列を達成することにより、合成で作製することもできる。
糸状ファージを、マイナーコートタンパク質pIIIへの融合により抗体断片をディスプレイするのに使用する。抗体断片は、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)により記載されている通り、VHドメインとVLドメインとが、同じポリペプチド鎖上で、可撓性のポリペプチドスペーサーにより接続される、単鎖Fv断片として、または、例えば、Hoogenboomら、Nucl. Acids Res.、19巻:4133〜4137頁(1991年)において記載されている通り、一方の鎖が、pIIIに融合し、他方の鎖が、細菌宿主細胞ペリプラズムに分泌され、ここで、Fab−コートタンパク質構造のアセンブリーが、野生型コートタンパク質の一部を取り換えることにより、ファージ表面上にディスプレイされる、Fab断片としてディスプレイすることができる。
一般に、抗体遺伝子断片をコードする核酸は、ヒトまたは動物から採取された免疫細胞から得られる。抗SSEA−3/SSEA−4/Globo Hクローンに好適なバイアスのかかったライブラリーが所望される場合、対象を、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hで免疫化して、抗体応答を発生させ、脾臓細胞および/もしくは循環B細胞、または他の末梢血リンパ球(PBL)を、ライブラリー構築のために回収する。一実施形態では、抗ヒトSSEA−3/SSEA−4/Globo Hクローンに好適なバイアスのかかったヒト抗体遺伝子断片ライブラリーは、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hによる免疫化から、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hに対するヒト抗体を産生するB細胞がもたらされるように、機能的なヒト免疫グロブリン遺伝子アレイを保有する(かつ、機能的な内因性抗体産生系を欠く)トランスジェニックマウスにおいて、抗ヒトSSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体応答を発生させることにより得る。ヒト抗体産生トランスジェニックマウスの作製については、下記に記載する。
抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H反応性細胞集団についてのさらなる富化は、例えば、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hアフィニティークロマトグラフィーによる細胞の分離、または蛍光色素標識されたSSEA−3/SSEA−4/Globo Hへの細胞の吸着に続く、蛍光活性化細胞分取(FACS)による、SSEA−3/SSEA−4/Globo H特異的抗体を発現させるB細胞を単離するのに適するスクリーニング手順を使用することにより得ることができる。
代替的に、非免疫化ドナーに由来する、脾臓細胞および/もしくはB細胞、または他のPBLの使用から、可能な抗体レパートリーの、より良好な表示がもたらされ、また、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hが抗原性でない任意の動物(ヒトまたは非ヒト)種を使用する、抗体ライブラリーの構築も可能となる。in vitroにおける抗体遺伝子の構築を組み込むライブラリーのためには、幹細胞を対象から採取して、再配列されていない抗体遺伝子セグメントをコードする核酸を得る。目的の免疫細胞は、ヒト種、マウス種、ラット種、ウサギ目種、オオカミ科(luprine)種、イヌ種、ネコ種、ブタ種、ウシ種、ウマ種、およびトリ種など、様々な動物種から得ることができる。
抗体可変遺伝子セグメント(VHセグメントおよびVLセグメントを含む)をコードする核酸を、目的の細胞から回収し、増幅した。再配列されたVH遺伝子ライブラリーおよびVL遺伝子ライブラリーの場合、所望のDNAは、Orlandiら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、86巻:3833〜3837頁(1989年)において記載される通り、ゲノムDNAまたはmRNAを、リンパ球から単離した後で、再配列されたVH遺伝子およびVL遺伝子の5’末端および3’末端にマッチするプライマーによるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を施し、これにより、発現のための、多様なV遺伝子レパートリーを作製することにより得ることができる。V遺伝子は、Orlandiら(1989年)およびWardら、Nature、341巻:544〜546頁(1989年)において記載されている通り、成熟Vドメインをコードするエクソンの5’末端におけるバックプライマーと、Jセグメントに基づくフォワードプライマーとにより、cDNAおよびゲノムDNAから増幅することができる。しかし、cDNAから増幅するためには、バックプライマーはまた、Jonesら、Biotechnol.、9巻:88〜89頁(1991年)において記載されている通り、リーダーエクソン、およびSastryら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA)、86巻:5728〜5732頁(1989年)において記載されている通り、定常領域内のフォワードプライマーに基づく場合がある。相補性を最大化するため、Orlandiら(1989年)、またはSastryら(1989年)において記載されている通り、プライマー内に縮重を組み込むことができる。ある特定の実施形態では、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)による方法において記載されている通り、またはOrumら、Nucleic Acids Res.、21巻:4491〜4498頁(1993年)による方法において記載されている通り、免疫細胞の核酸試料中に存在する、全ての利用可能なVH配置およびVL配置を増幅するために、各V遺伝子ファミリーにターゲティングされたPCRプライマーを使用することにより、ライブラリーの多様性を最大化する。増幅されたDNAを、発現ベクターにクローニングするために、Orlandiら(1989年)において記載されている通り、まれな制限部位を、PCRプライマー内に、一方の端部におけるタグとして、または、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)において記載されている通り、タグ付けされたプライマーを伴う、さらなるPCR増幅により導入することができる。
合成により再配列されたV遺伝子のレパートリーは、in vitroにおいて、V遺伝子セグメントから導出することができる。ヒトVH遺伝子セグメントの大半は、クローニングおよびシークェンシングされ(Tomlinsonら、J. Mol. Biol.、227巻:776〜798頁(1992年)において報告されている)、マッピングされており(Matsudaら、Nature Genet.、3巻:88〜94頁(1993年)において報告されている);HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)において記載されている通り、これらのクローニングされたセグメント(H1ループおよびH2ループの全ての主要なコンフォメーションを含む)を使用して、多様な配列および長さのH3ループをコードするPCRプライマーにより、多様なVH遺伝子レパートリーを作り出すことができる。また、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4457〜4461頁(1992年)において記載される通り、単一の長さの長いH3ループに焦点を当てた、全ての配列多様性を伴うVHレパートリーを作製することもできる。ヒトVκセグメントおよびVλセグメントは、クローニングおよびシークェンシングされており(WilliamsおよびWinter、Eur. J. Immunol.、23巻:1456〜1461頁(1993年)において報告されている)、合成軽鎖レパートリーを作製するのに使用することができる。VHおよびVLのフォールド(fold)の範囲、ならびにL3およびH3の長さに基づく、合成によるV遺伝子レパートリーは、大幅な構造的多様性を有する抗体をコードする。V遺伝子をコードするDNAの増幅の後、HoogenboomおよびWinter、J. Mol. Biol.、227巻:381〜388頁(1992年)による方法に従い、in vitroにおいて、生殖細胞系列のV遺伝子セグメントを再配列することができる。
抗体断片のレパートリーは、VH遺伝子レパートリーと、VL遺伝子レパートリーとを、いくつかの方式で一体に組み合わせることにより構築することができる。各レパートリーは、異なるベクター内で創出することができ、ベクターは、例えば、Hogrefeら、Gene、128巻:119〜126頁(1993年)において記載されている通り、in vitroで、またはin vivoにおけるコンビナトリアル感染、例えば、Waterhouseら、Nucl. Acids Res.、21巻:2265〜2266頁(1993年)において記載されているloxP系により組み換えることができる。in vivoにおける組換え手法では、Fab断片の2本鎖としての性質を利用して、E.coliの形質転換効率により付与される、ライブラリーサイズに対する制限を克服する。ナイーブVHレパートリーと、ナイーブVLレパートリーとは、一方はファージミドへ、他方はファージベクターに、個別にクローニングする。次いで、各細胞が、異なる組み合わせを含有し、ライブラリーサイズが、存在する細胞の数(クローン約1012個)だけにより制限されるように、2つのライブラリーを、ファージミド含有細菌へのファージ感染により組み合わせる。VH遺伝子およびVL遺伝子が、単一のレプリコンに組み換えられ、ファージビリオンに共パッケージングされるように、いずれのベクターも、in vivoにおける組換えシグナルを含有する。これらの巨大ライブラリーは、アフィニティーの良好な(約10−8MのKd−1)多数の多様な抗体をもたらす。
代替的に、レパートリーは、例えば、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:7978〜7982頁(1991年)において記載されている通り、同じベクターに逐次的にクローニングする、または、例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)において記載されている通り、PCRにより一体にアセンブルし、次いで、クローニングすることができる。また、PCRアセンブリーも、VH DNAおよびVL DNAを、可撓性のペプチドスペーサーをコードするDNAと接合して、単鎖Fv(scFv)レパートリーを形成するのに使用することができる。さらに別の技法では、Embletonら、Nucl. Acids Res.、20巻:3831〜3837頁(1992年)において記載されている通り、「インセルPCRアセンブリー」を使用して、VH遺伝子とVL遺伝子とを、リンパ球内で、PCRにより組み合わせ、次いで、連結された遺伝子のレパートリーをクローニングする。
ライブラリーのスクリーニングは、当技術分野で公知の任意の技法により達成することができる。例えば、SSEA−3/SSEA−4/Globo H標的は、吸着プレートのウェルをコーティングし、吸着プレートに固定された宿主細胞上で発現させるのに使用することも、細胞分取で使用することも、ストレプトアビジンコーティングビーズによる捕捉のために、ビオチンにコンジュゲートさせることも、ファージディスプレイライブラリーをパニングするための当技術分野で公知の、他の任意の方法において使用することもできる。
ファージライブラリー試料は、ファージ粒子のうちの少なくとも一部分と吸着剤との結合に適する条件下で、固定化されたSSEA−3/SSEA−4/Globo Hと接触させる。通常、pH、イオン強度、温度などを含む条件は、生理学的条件を模倣するように選択する。固相に結合したファージは、洗浄し、次いで、例えば、Barbasら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、88巻:7978〜7982頁(1991年)において記載されている通り、酸により、または、例えば、Marksら、J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁(1991年)において記載されている通り、アルカリにより、または、例えば、Clacksonら、Nature、352巻:624〜628頁(1991年)による抗原競合法と類似の手順における、SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗原の競合により溶出させる。ファージは、単一のラウンドの選択で約20〜約1,000倍に富化することができる。さらに、富化されたファージは、細菌培養物中で成長させ、さらなるラウンドの選択にかけることができる。
選択の効率は、洗浄時における解離動態、および単一のファージ上の複数の抗体断片が、抗原と同時に係合しうるのかどうかを含む多くの因子に依存する。解離動態が速く(かつ、結合アフィニティーが弱い)抗体は、短い洗浄、多価ファージディスプレイ、および固相内の抗原の高いコーティング密度を使用することにより保持することができる。高密度は、多価相互作用を介してファージを安定化させるだけでなく、解離したファージの再結合に好適でもある。解離動態が遅く(かつ、結合アフィニティーが良好な)抗体の選択は、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)およびWO92/09690において記載されている通り、長い洗浄および一価ファージディスプレイ、ならびにMarksら、Biotechnol.、10巻:779〜783頁(1992年)において記載されている通り、抗原の低コーティング密度を使用することにより促進することができる。
SSEA−3/SSEA−4/Globo Hに対するアフィニティーがわずかに異なる場合でもなお、アフィニティーの異なるファージ抗体の間で選択することは可能である。しかし、選択された抗体のランダム変異(例えば、上で記載したアフィニティー成熟技法の一部において実施される)は、大半が抗原に結合し、少数はより高いアフィニティーを有する多くの変異体をもたらす可能性が高い。SSEA−3/SSEA−4/Globo Hを制限すると、まれに、高アフィニティーのファージも競合に耐えない可能性がある。全てのより高いアフィニティーの変異体を保持するため、ファージは、過剰なビオチン化SSEA−3/SSEA−4/Globo Hと共にインキュベートすることもできるが、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hの標的モル濃度アフィニティー定数より低いモル濃度のビオチン化SSEA−3/SSEA−4/Globo Hと共にインキュベートすることもできる。次いで、高アフィニティー結合性ファージは、ストレプトアビジンコーティング常磁性ビーズにより捕捉することができる。このような「平衡捕捉」により、抗体を、それらの結合アフィニティーに従い、低アフィニティーの極過剰なファージから、アフィニティーの高さがわずか2倍の変異体クローンの単離を可能とする感度で選択することが可能となる。また、固相に結合したファージの洗浄で使用される条件も、解離動態に基づき弁別するように操作することができる。
抗SSEA−3/SSEA−4/Globo Hクローンは、活性が選択されたクローンでありうる。一実施形態では、本発明は、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hリガンドと、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hとの結合は遮断するが、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hリガンドと、第2のタンパク質との結合は遮断しない、抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を提供する。このような抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体に対応するFvクローンは、(1)抗SSEA−3/SSEA−4/Globo Hクローンを、上記のセクションB(I)(2)で記載した通りファージライブラリーから単離し、任意選択で、単離されたファージクローン集団を、適切な細菌宿主内で成長させることにより増幅し;(2)それぞれ遮断活性および非遮断活性が所望される、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hおよび第2のタンパク質を選択し;(3)抗SSEA−3/SSEA−4/Globo Hファージクローンを、固定化されたSSEA−3/SSEA−4/Globo Hに吸着させ;(4)過剰な第2のタンパク質を使用して、第2のタンパク質の結合決定基と重複するかまたは共有される、SSEA−3/SSEA−4/Globo H結合性決定基を認識する、任意の所望されないクローンを溶出させ;(5)ステップ(4)の後で吸着を維持したクローンを溶出させることにより選択することができる。任意選択で、本明細書で記載される選択手順を、1回または複数回繰り返すことにより、所望の遮断/非遮断特性を伴うクローンをさらに富化することもできる。
本発明のFvクローンをコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、ハイブリドーマまたはファージDNA鋳型から、重鎖および軽鎖の目的のコード領域を特異的に増幅するようにデザインされたオリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより)、たやすく単離およびシークェンシングされる。単離されたら、DNAを、発現ベクター内に入れ、次いで、これを、E.coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または別途免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内の所望のモノクローナル抗体の合成を得ることができる。抗体コードDNAの、細菌内の組換え発現についての総説論文は、Skerraら、Curr. Opinion in Immunol.、5巻:256頁(1993年)およびPluckthun、Immunol. Revs、130巻:151頁(1992年)を含む。
本発明のFvクローンをコードするDNAを、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域をコードする公知のDNA配列(例えば、適切なDNA配列は、Kabatら、前出から得ることができる)と組み合わせて、全長重鎖および/もしくは全長軽鎖または部分長重鎖および/もしくは部分長軽鎖をコードするクローンを形成することができる。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域、およびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、この目的のために使用することができ、このような定常領域を、任意のヒト種または動物種から取得し得ることを理解されたい。1つの動物(ヒトなど)種の可変ドメインDNAから導出され、次いで、「ハイブリッド」の全長重鎖および/または全長軽鎖のためのコード配列を形成するように、別の動物種の定常領域DNAに融合させたFvクローンは、本明細書で使用される「キメラ」抗体および「ハイブリッド」抗体の定義に含まれる。一実施形態では、ヒト可変DNAから導出されたFvクローンを、ヒト定常領域DNAに融合させて、全てのヒト全長重鎖および/もしくはヒト全長軽鎖またはヒト部分長重鎖および/もしくはヒト部分長軽鎖のコード配列を形成する。
ナイーブライブラリーにより産生される抗体(天然または合成)は、中程度のアフィニティー(約106〜107M−1のKd−1)のものでありうるが、また、Winterら(1994年)、前出において記載されている通り、アフィニティー成熟も、二次ライブラリーを構築し、ここから再選択することにより、in vitroで模倣することができる。例えば、エラープローンポリメラーゼ(Leungら、Technique、1巻:11〜15頁(1989年)において報告されている)を、Hawkinsら、J. Mol. Biol.、226巻:889〜896頁(1992年)による方法、またはGramら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:3576〜3580頁(1992年)による方法で使用することにより、in vitroにおいて、ランダムに、変異を導入することができる。加えて、アフィニティー成熟は、例えば、目的のCDRにわたり、ランダムな配列を保有するプライマーを伴うPCRを、選択された個々のFvクローン内で使用して、1つまたは複数のCDRをランダムに変異させ、より高いアフィニティーのクローンについてスクリーニングすることにより実施することもできる。WO9607754(1996年3月14日公開)は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域内で変異誘発を誘導して、軽鎖遺伝子のライブラリーを創出するための方法について記載した。別の有効な手法は、Marksら、Biotechnol.、10巻:779〜783頁(1992年)において記載されている通り、非免疫化ドナーから得られた天然に存在するVドメイン改変体のレパートリーを伴うファージディスプレイにより選択されたVHドメインまたはVLドメインを組み換え、数回のラウンドにわたる鎖リシャフリングにより、より高いアフィニティーについてスクリーニングすることである。この技法は、アフィニティーが10−9Mの範囲の抗体および抗体断片の作製を可能とする。
抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を作り出す他の方法
抗体のアフィニティーを生成し評価する他の方法は、当該技術分野において周知であり、例えば、Kohlerら、Nature 256:495(1975);米国特許第4,816,567号;Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986;Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987;Munsonら、Anal.Biochem.,107:220(1980);Engelsら、Agnew.Chem.Int.Ed.Engl.,28:716−734(1989);Abrahmsenら、EMBO J.,4:3901(1985);Methods in Enzymology,vol.44(1976);Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855(1984)において記載されている。
一般的な方法
したがって、本開示の一態様は、Globo H、SSEA3、およびSSEA−4を三重ターゲティングする単離抗体を特徴とする。三重ターゲティング抗体は、Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(Globo H六糖)およびGalβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−3五糖)およびNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−4六糖)に特異的に結合する。一例では、三重ターゲティング抗体は、mAb 651である。
本開示の別の態様は、Globo HおよびSSEA3を二重ターゲティングする単離抗体を特徴とする。二重ターゲティング抗体は、Fucα1→2Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(Globo H六糖)およびGalβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−3五糖)に特異的に結合する。一例では、二重ターゲティング抗体は、mAb 273である。
さらに別の態様では、本開示は、SSEA−4に特異的な単離抗体を特徴とする。抗SSEA−4抗体は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−4六糖)に結合する。一部の例では、抗体は、Neu5Gcα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−4六糖の類似体)に結合することが可能である。抗体は、マウスIgG3(例えば、mAb MC−831−70)ではなく、抗体は、マウスIgM(例えば、抗RM1)ではないことが好ましい。抗体の例は、mAb 45およびmAb 48を含むがこれらに限定されない。
本開示の別の態様は、SSEA−4およびその断片に特異的な単離抗体を特徴とする。抗SSEA−4抗体は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−4六糖)およびNeu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1(SSEA−4六糖の断片)に結合する。一部の例では、抗体は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galβ1に結合することが可能である。一部の例では、抗体は、Neu5Gcα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1(SSEA−4六糖の類似体)に結合することが可能である。一例では、抗体は、mAb 46である。
Globo H、SSEA−3およびSSEA−4を三重ターゲティングする抗体、Globo HおよびSSEA−3を二重ターゲティングする抗体、ならびに抗SSEA−4抗体を開発し、本明細書でこれらを開示した。本開示による抗体は、治療剤中でも、診断においても、研究用ツールとしても使用することができる。
したがって、本開示の一態様は、Fc上に単一の均一なN−グリカンを含むモノクローナル抗体の均質な集団の組成物に関し、構造は、エフェクター細胞機能の有効性を増強するために最適化されたN−グリカン構造である。
好ましい実施形態では、N−グリカンは、Fc領域のAsn−297に付着される。
好ましい実施形態では、N−グリカンは、Sia2(α2−6)Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2の構造からなる。
本明細書で記載される糖抗体は、in vitroで産生されうる。糖抗体は、Fc糖鎖工学によって作り出されうる。ある特定の実施形態では、糖抗体は、哺乳動物細胞培養によって得られたモノクローナル抗体から酵素的または化学酵素的に操作される。
一部の実施形態では、本明細書で記載される糖抗体のFc領域は、対応するモノクローナル抗体中の野生型Fc領域と比較して、FcγRIIAまたはFcγRIIIAに対する結合アフィニティーの増大を呈示する。
一部の実施形態では、本明細書で記載される糖抗体は、野生型免疫グロブリンと比較して、増強された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を呈示する。
一部の実施形態では、糖抗体は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4からなる群より選択される。モノクローナル抗体は、ヒト化、ヒトまたはキメラでありうる。
本明細書で記載される糖抗体は、がん、自己免疫障害、炎症性障害または感染性疾患と関連する抗原に結合しうる。例示的ながん関連抗原は、例えば、Globo−H、SSEA−3、SSEA−4を含みうる。
他の態様では、本明細書で開示される抗体は、グリカンの改変体および誘導体を検出できる。例えば、グリカンの還元性末端は、遊離である、または天然(例えば、SSEA4糖脂質)もしくは非天然(例えば、グリカンアレイを作製するため、または診断目的のためのコンジュゲーションのためのリンカー)であるテールに連結される。これらの誘導体は全て、抗体によって認識されうる。
したがって、ある特定の診断実施形態およびアレイ実施形態では、本発明の抗体は、本明細書で記載されるグリカンだけでなく、その酸化型改変体もまた検出できる。本発明の抗体は、前記酸化型改変体へのコンジュゲーション産物もまた検出できる。
ある特定の態様では、本開示は、Neu5Acα2→3Galβ1→3GalNAcβ1→3Galα1→4Galβ1→4Glcβ1、およびその酸化型改変体、ならびに前記酸化型改変体へのコンジュゲーション産物、およびその酸化型改変体、ならびに前記酸化型改変体へのコンジュゲーション産物に特異的に結合する単離ヒト化モノクローナル糖抗体を提供する;前記酸化型改変体は、グリカンの第一級アルコールの、カルボニルへの転換産物であり、コンジュゲーション産物は、カルボニルの、第一級アミンまたは第二級アミン部分を有するイミンへの転換産物である。
例えば、第一級アルコールを含むグリカンは、当業者に公知の方法によって、酸化型改変体に転換されうる。非限定的な例として、ガラクトース上の第一級アルコールは、グリカンを、酸化剤、例えば、過ヨウ素酸ナトリウム(m−過ヨウ素酸ナトリウム)、または過ヨウ素酸の別の塩(例えば、カリウム、アンモニウム、マンガン、リチウム)と接触させることによって、アルデヒドに転換されうる。グリカン中の糖部分の1つまたは複数が、酸化されうる。酸化剤の濃度は、水または適切な緩衝液中、1マイクロモル濃度、5マイクロモル濃度、10マイクロモル濃度、25マイクロモル濃度、50マイクロモル濃度、100マイクロモル濃度、200マイクロモル濃度、500マイクロモル濃度、750マイクロモル濃度、1ミリモル濃度、5ミリモル濃度、10ミリモル濃度、25ミリモル濃度、50ミリモル濃度、100ミリモル濃度、または500ミリモル濃度でありうる。温度は、摂氏5〜45度、好ましくは摂氏15〜40度、より好ましくは摂氏35〜40度でありうる。反応時間は、10秒間〜20分間、好ましくは30秒間〜10分間でありうる。適切な緩衝液は、食塩水、ホスフェート、CHES、MES、ボレート、アセテート、カーボネート、ホルメート、シトレート、オキサレートを含む、または排除しうる。穏やかに酸性の緩衝液を使用することが好ましい。トリスまたはグリシンまたは遊離糖は、反応において競合するので、これらを含まない緩衝液を使用することが好ましい。転換は、当業者に公知の方法による透析または遠心透析(centrifugal dialysis)によって精製されうる。
コンジュゲーション産物は、当業者に公知の方法によって、参照により本明細書に組み込まれるG. Hermanson、Bioconjugate Techniques、第3版、ISBN: 978−0−12−382239−0、Academic Press、2013年に記載されるように、酸化型産物と、適切なアミン、ヒドラジン、ヒドラジド、またはオキソ−アミンとの反応から形成されうる。非限定的な例として、第一級アミンは、グリカン内のガラクトースの過ヨウ素酸酸化された第一級アルコールから形成された単一のアルデヒド官能基を有するグリカンと反応しうる。正味の産物はイミンである。イミンは、当業者に公知の方法、例えば、シアノ水素化ホウ素還元によってアルコールへと任意選択でさらに還元されて、加水分解に対してより安定なコンジュゲーション産物を形成しうる。一部の態様では、アミン、ヒドラジン、ヒドラジド、またはオキソ−アミンは、コンジュゲーション産物のさらなる修飾のために、アレイ、レポーター分子、またはビオチンにさらに共有結合的に連結されうる。一部の態様では、レポーター分子は、蛍光分子でありうる。一部の態様では、レポーター分子は、放射性標識された分子でありうる。一部の態様では、レポーター分子は、固有のスペクトル特徴(例えば、IRスペクトル、ラマンスペクトル、またはNMRスペクトル)を有する分子でありうる。一部の態様では、アレイは、固体表面、化学修飾された表面、ポリマーコーティングされた表面、ビーズ、ゲル、粒子、またはナノ粒子でありうる。一部の態様では、ナノ粒子は、蛍光性であり得るか、または光ルミネセンスを呈示しうる。一部の態様では、コンジュゲーション産物は、カルボニルの、第一級アミンまたは第二級アミン部分を有するイミンへの転換産物でありうる。
一般に、本発明は、アフィニティー成熟させたSSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を提供する。これらの抗体は、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hに対するアフィニティーおよび特異性を増大させている。このアフィニティーおよび感受性の増大により、本発明の分子を、(a)本発明の分子の感受性の増大、および/または(b)本発明の分子の、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hへの緊密な結合により利益を得る適用および方法のために使用することが可能となる。
一態様では、SSEA4/SSEA3/GloboHは、がん細胞およびがん幹細胞に特異的に発現される3種のグリカンである。これら3種の糖脂質の合成のための重要な酵素であるベータ−3−GalT5のノックダウンは、がん細胞のアポトーシスを引き起こすが、正常細胞のアポトーシスは引き起こさない。抗体、特に、SSEA4に優先的もしくは特異的な糖抗体、および/またはSSEA3/SSEA4/GloboHに同時に対する抗体は、有効ながん治療剤である。別の態様では、3種のグリカンSSEA4/SSEA3/GloboH、特にSSEA3は、がん幹細胞マーカーとして有用である。
一態様では、SSEA4および/または組み合わせでのSSEA4/SSEA3/GloboHは、例えば、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、骨がん(骨肉腫)、皮膚がん、子宮頸がん、卵巣がん、および前立腺がんを含む異なるがんの処置のための治療標的として有用である。
一実施形態では、これらの例示的ながん型の細胞表面上で発現されるSSEA4に対するヒト治療用抗体またはヒト化治療用抗体が提供される。
別の実施形態では、これらの例示的ながん型の細胞表面上で同時に発現されるSSEA3/SSEA4/Globo−Hに対するヒト治療用抗体またはヒト化治療用抗体が提供される。
さらに、本開示は、グロボ系列スフィンゴ糖脂質合成をモジュレートするために有用な抗体および/または結合性断片の産生を誘発しうるSSEA−3/SSEA−4/Globo H関連エピトープ(天然および修飾型)をターゲティングする免疫原性コンジュゲート組成物も対象とする。さらに、本開示は、過剰増殖疾患および/または過剰増殖状態の処置または検出のために本明細書で記載される組成物を使用する方法も対象とする。
一実施形態では、SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、1つまたは複数のSSEA−3/SSEA−4/Globo H活性の部分的または全面的な遮断が所望される、SSEA−3/SSEA−4/Globo H媒介性障害の処置に有用である。一実施形態では、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を使用して、がんを処置する。
本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、質量分析も遺伝子操作も必要とせずに、イムノアッセイ、例えば、サンドイッチアッセイ、免疫沈降、ELISA、または免疫顕微鏡法における、高感度で特異的なエピトープの検出を可能とする。これにより、これらの経路の正常な機能の観察および解明のいずれにおいても、ならびに経路の機能が異常な場合の検出にも、著明な利点がもたらされる。
本発明のSSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体はまた、疾患の発生および発症機序における役割を決定するのにも使用することができる。例えば、上で記載した通り、本発明のSSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を使用して、1つまたは複数の疾患状態と相関しうるTACAが通常一過性で発現するのかどうかを決定することができる。
本発明のSSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を使用して、さらに、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体が特異的でない、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hの正常な活性には干渉せずに、1つまたは複数のSSEA−3/SSEA−4/Globo Hの調節が異常であるか、または機能が異常である疾患を処置することができる。
別の態様では、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、多様な細胞型内および組織内のがん状態を検出するための試薬としても有用性を見出す。
さらに別の態様では、本抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、活性遮断パターンが、本発明の対象の抗体の活性遮断パターンと類似する、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hアンタゴニストを開発するのに有用である。例えば、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を使用して、同じSSEA−3/SSEA−4/Globo Hへの結合特徴、および/またはSSEA−3/SSEA−4/Globo H経路の遮断能を有する他の抗体を決定および同定することができる。
さらなる例として、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を使用して、直鎖状エピトープおよびコンフォメーショナルエピトープを含む、本明細書で例示される抗体と実質的に同じ、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hの抗原決定基に結合する、他の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を同定することができる。
本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体を、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hが関与する生理学的経路に基づくアッセイで使用して、1つまたは複数の結合パートナーの、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hへの結合を遮断するのに、抗体と同様の薬理学的効果を呈示する、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hの低分子アンタゴニストについてスクリーニングすることができる。
抗体の作製は、ハイブリドーマ技法、および結合剤分子についてのファージディスプレイライブラリーのスクリーニングなど、本明細書で記載される方法を含む当技術分野における日常的な技術を使用して達成することができる。当技術分野では、これらの方法が十分に確立されている。
略述すると、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、コンビナトリアルライブラリーを使用して、1つまたは複数の所望の活性を伴う合成抗体クローンについてスクリーニングすることにより作製することができる。原則として、合成抗体クローンは、ファージコートタンパク質に融合させた、抗体可変領域の多様な断片(Fv)をディスプレイするファージを含有するファージライブラリーをスクリーニングすることにより選択する。このようなファージライブラリーを、所望の抗原に対するアフィニティークロマトグラフィーによりパニングする。所望の抗原に結合することが可能なFv断片を発現させるクローンを、抗原に吸着させ、これにより、ライブラリー内の非結合性クローンから分離する。次いで、結合性クローンを抗原から溶出させ、さらなる抗原吸着/溶出サイクルにより、さらに富化することができる。本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体のうちのいずれかは、適切な抗原スクリーニング手順をデザインして、目的のファージクローンについて選択した後で、目的のファージクローンに由来するFv配列と、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、NIH Publication第91−3242号、Bethesda Md.(1991年)、1〜3巻において記載されている、適切な定常領域(Fc)配列とを使用して、全長抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体クローンを構築することにより得ることができる。
一実施形態では、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、モノクローナル抗体である。本発明の範囲内にはまた、本明細書で提供される抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体の、Fab断片、Fab’断片、Fab’−SH断片、およびF(ab’)2断片、ならびにこれらの変化形などの抗体断片も包含される。これらの抗体断片は、酵素的消化など、従来の手段により創出することもでき、組換え技法により作り出すこともできる。このような抗体断片は、キメラ抗体断片、ヒト抗体断片、またはヒト化抗体断片でありうる。これらの断片は、本明細書で示される実験目的、診断目的、および治療目的に有用である。
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団から得ることができる、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる、考えられる天然に存在する変異を除き同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、個別の抗体の混合物ではないものとしての抗体の性格を指し示す。
本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo Hモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256巻:495頁(1975年)により初めて記載されたハイブリドーマ法を含む当技術分野で公知の様々な方法を使用して作製することもでき、代替的に、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号)により作製することもできる。
ベクター、宿主細胞、および組換え法
本発明の抗体を組換えにより作製するには、本発明の抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために、複製可能なベクターに挿入する。抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)、たやすく単離およびシークェンシングされる。多くのベクターが、利用可能である。ベクターの選択は、使用される宿主細胞に部分的に依存する。宿主細胞は、原核生物由来の細胞または真核生物(一般に、哺乳動物)由来の細胞のいずれかを含むがこれらに限定されない。IgG定常領域、IgM定常領域、IgA定常領域、IgD定常領域、およびIgE定常領域を含む、任意のアイソタイプの定常領域を、この目的のために使用することができ、このような定常領域を、任意のヒト種または動物種から取得し得ることを理解されたい。
原核宿主細胞を使用する抗体の作製
ベクターの構築
本発明の抗体のポリペプチド構成要素をコードするポリヌクレオチド配列は、標準的な組換え技法を使用して得ることができる。所望のポリヌクレオチド配列は、ハイブリドーマ細胞などの抗体産生細胞から単離およびシークェンシングすることができる。代替的に、ポリヌクレオチドは、ヌクレオチド合成器またはPCR技法を使用して合成することもできる。得られたら、ポリペプチドをコードする配列を、原核宿主内で異種ポリヌクレオチドを複製し、発現させることが可能な組換えベクターに挿入する。利用可能であり、当技術分野で公知の多くのベクターは、本発明の目的で使用することができる。適切なベクターの選択は、ベクターに挿入される核酸のサイズ、およびベクターで形質転換される特定の宿主細胞に主に依存する。各ベクターは、その機能(異種ポリヌクレオチドの増幅もしくは発現、またはこれらの両方)、およびそれが存在する特定の宿主細胞に対するその適合性に応じて、多様な構成要素を含有する。ベクターの構成要素は一般に、複製起点、選択マーカー遺伝子、プロモーター、リボソーム結合性部位(RBS)、シグナル配列、異種核酸インサート、および転写終結配列を含むがこれらに限定されない。
一般に、宿主細胞に適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主と関連させて使用する。ベクターは通常、複製部位のほか、形質転換された細胞内の表現型による選択を提供することが可能なマーキング配列も保有する。例えば、E.coliは、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を使用して形質転換することが典型的である。pBR322は、アンピシリン(Amp)耐性およびテトラサイクリン(Tet)耐性をコードする遺伝子を含有し、これにより、形質転換された細胞を同定するための容易な手段を提供する。pBR322、その誘導体、または他の微生物性プラスミドもしくはバクテリオファージはまた、微生物が内因性タンパク質を発現させるために使用しうるプロモーターも含有しうるか、またはこれを含有するように修飾することができる。特定の抗体を発現させるために使用されるpBR322誘導体の例については、Carterら、米国特許第5,648,237号において詳細に記載されている。
加えて、宿主微生物に適合性のレプリコンおよび制御配列を含有するファージベクターも、形質転換ベクターとして、これらの宿主と関連させて使用することができる。例えば、λGEM(商標)11などのバクテリオファージを、E.coli LE392など、易感染性の宿主細胞を形質転換するのに使用しうる組換えベクターの作製において活用することができる。
本発明の発現ベクターは、ポリペプチド構成要素の各々をコードする、2つまたはこれを超えるプロモーター−シストロン対を含みうる。プロモーターとは、シストロンに対して上流(5’)に位置する非翻訳の調節配列であって、その発現をモジュレートする。原核生物プロモーターは、誘導的プロモーターと構成的プロモーターとの2つのクラスに分けられることが典型的である。誘導的プロモーターとは、培養条件の変化、例えば、栄養物質の存在もしくは非存在、または温度の変化に応答して、シストロンの高レベルの転写をその制御下で開始するプロモーターである。
様々な潜在的宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。選択されたプロモーターは、制限酵素消化を介して、供給源DNAから取り出し、単離されたプロモーター配列を、本発明のベクターに挿入することにより、軽鎖または重鎖をコードするシストロンDNAに作動可能に連結することができる。天然のプロモーター配列および多くの異種プロモーターの両方を使用して、標的遺伝子の増幅、および/または発現を誘導することができる。一部の実施形態では、異種プロモーターは一般に、天然の標的ポリペプチドのプロモーターと比較して、発現させる標的遺伝子の転写の増大および収量の上昇を可能とするので活用される。
原核宿主を伴う使用に適するプロモーターは、PhoAプロモーター、β−ガラクタマーゼプロモーター系およびラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ならびにtacプロモーターまたはtrcプロモーターなどのハイブリッドプロモーターを含む。しかし、細菌内で機能的な他のプロモーター(他の公知の細菌プロモーターまたはファージプロモーターなど)も同様に適する。それらのヌクレオチド配列は公表されており、これにより、当業者が、リンカーまたはアダプターを使用して、それらを、標的軽鎖および標的重鎖をコードするシストロンに、作動可能にライゲーションして、必要とされる任意の制限部位を供給することが可能となる(Siebenlistら(1980年)、Cell、20巻:269頁)。
本発明の一態様では、組換えベクター内の各シストロンは、発現させたポリペプチドの、膜を横切るトランスロケーションを誘導する、分泌シグナル配列構成要素を含む。一般に、シグナル配列は、ベクターの構成要素の場合もあり、ベクターに挿入された標的ポリペプチドDNAの一部の場合もある。本発明の目的で選択されたシグナル配列は、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)シグナル配列であるものとする。異種ポリペプチドにとって天然のシグナル配列を認識およびプロセシングしない原核宿主細胞のためには、シグナル配列を、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、または熱安定性エンテロトキシンII(STII)リーダー、LamB、PhoE、PelB、OmpA、およびMBPからなる群より選択される、原核生物シグナル配列で置換する。本発明の一実施形態では、発現系のシストロンの両方で使用されるシグナル配列は、STIIシグナル配列またはその改変体である。
別の態様では、本発明に従う免疫グロブリンの産生は、宿主細胞の細胞質内で生じることが可能であり、したがって、各シストロン内の分泌シグナル配列の存在を必要としない。この点で、免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、細胞質内で機能的免疫グロブリンを形成するように、発現され、フォールドされ、アセンブルされる。ある特定の宿主株(例えば、E.coli trxB株)は、ジスルフィド結合形成に好適な細胞質条件をもたらし、これにより、発現したタンパク質サブユニットの適正なフォールディングおよびアセンブリーを可能とする(ProbaおよびPluckthun、Gene、159巻:203頁(1995年))。
本発明の抗体はまた、分泌され、適正にアセンブルされた、本発明の抗体の収量を最大化するために、発現するポリペプチド構成要素の定量的な比をモジュレートしうる発現系を使用することによって作製することもできる。このようなモジュレーションは、ポリペプチド構成要素について、翻訳強度を同時にモジュレートすることにより、少なくとも一部達成する。
翻訳強度をモジュレートするための1つの技法は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において開示されている。この技法では、シストロン内の翻訳開始領域(TIR)の改変体を活用する。所与のTIRについて、翻訳強度がある範囲にある、一連のアミノ酸配列改変体または核酸配列改変体を創出し、これにより、特異的な鎖の所望の発現レベルについて、この因子を調整するための簡便な手段をもたらすことができる。TIR改変体は、アミノ酸配列を改変させうるコドン変化を結果としてもたらす、従来の変異誘発技法により作り出すことができる。ある特定の実施形態では、ヌクレオチド配列の変化は、サイレントである。TIR内の改変は、例えば、シグナル配列の改変と共に、シャイン−ダルガーノ配列の数または間隔の改変を含みうる。変異体のシグナル配列を作り出すための1つの方法は、シグナル配列のアミノ酸配列を変化させない(すなわち、変化がサイレントである)コード配列の起始部における「コドンバンク」の作製である。これは、各コドンの第3のヌクレオチド位置を変化させることにより達成することができ;加えて、ロイシン、セリン、およびアルギニンなど、一部のアミノ酸が、第1の位置および第2の位置を複数有し、これにより、バンクの作製に複雑性を付加しうる。変異誘発のこの方法については、Yansuraら(1992年)、METHODS: A Companion to Methods in Enzymol.、4巻:151〜158頁において詳細に記載されている。
一実施形態では、その中の各シストロンのTIR強度がある範囲にあるベクターのセットを作り出す。この限定的なセットにより、各鎖の発現レベルについての比較のほか、多様なTIR強度の組み合わせの下における、所望の抗体産物の収量についての比較ももたらされる。TIR強度は、Simmonsら、米国特許第5,840,523号において詳細に記載されている通り、レポーター遺伝子の発現レベルを定量化することにより決定することができる。翻訳強度の比較に基づき、所望の個々のTIRが、本発明の発現ベクター構築物内で組み合わされるように選択される。
本発明の抗体を発現させるのに適する原核宿主細胞は、古細菌およびグラム陰性菌またはグラム陽性菌などの真正細菌を含む。有用な細菌の例は、Escherichia(例えば、E.coli)種、Bacilli(例えば、B.subtilis)種、Enterobacteria種、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)種、Salmonella typhimurium、Serratia marcescans、Klebsiella、Proteus、Shigella、Rhizobia、Vitreoscilla、またはParacoccusを含む。一実施形態では、グラム陰性細胞を使用する。一実施形態では、E.coli細胞を、本発明のための宿主として使用する。E.coli株の例は、W3110株(Bachmann、Cellular and Molecular Biology、2巻(Washington, D.C.: American Society for Microbiology、1987年)、1190〜1219頁;ATCC寄託番号:27,325)、および、遺伝子型W3110 ΔfhuA (ΔtonA) ptr3 lac Iq lacL8 ΔompTΔ(nmpc−fepE) degP41 kanR(米国特許第5,639,635号)を有する33D3株を含むその派生株を含む。E.coli 294(ATCC:31,446)、E.coli B、E.coli λ1776(ATCC:31,537)およびE.coli RV308(ATCC:31,608)など、他の株およびそれらの派生株もまた、適する。これらの例は、限定的なものではなく、例示的なものである。当技術分野では、規定された遺伝子型を有する上述の細菌のうちのいずれかの派生株を構築するための方法が公知であり、例えば、Bassら、Proteins、8巻:309〜314頁(1990年)において記載されている。細菌の細胞内のレプリコンの複製能力を考慮して、適切な細菌を選択することが、一般に必要である。例えば、E.coli、Serratia、またはSalmonella種は、pBR322、pBR325、pACYC177、またはpKN410など、周知のプラスミドを使用して、レプリコンを供給する場合に、宿主として使用するのに適しうる。典型的には、宿主細胞は、最小量のタンパク質分解酵素を分泌するべきあり、望ましくは、さらなるプロテアーゼ阻害剤を細胞培養物中に組み込みうる。
抗体の作製
宿主細胞を、上で記載した発現ベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養培地中で培養する。
形質転換とは、DNAが、染色体外エレメントとして、または染色体への組込み体により複製可能となるように、DNAを、原核宿主に導入することを意味する。使用される宿主細胞に応じて、形質転換は、このような細胞に適切な標準的技法を使用してなされる。細胞壁による実質的な障壁を含有する細菌細胞には、塩化カルシウムを使用するカルシウム処理を一般に使用する。形質転換のための別の方法では、ポリエチレングリコール/DMSOを使用する。さらに別の技法では、電気穿孔が使用される。
本発明のポリペプチドを作製するのに使用される原核細胞は、当技術分野で公知であり、選択された宿主細胞の培養に適する培地中で成長させる。適切な培地の例は、必要な栄養補充物質を加えたルリアブロス(LB)を含む。一部の実施形態では、培地はまた、発現ベクターを含有する原核細胞の増殖を選択的に可能とするように、発現ベクターの構築に基づき選び出される、選択用薬剤も含有する。例えば、アンピシリン耐性遺伝子を発現させる細胞を成長させるために、アンピシリンを、培地に添加する。
炭素供給源、窒素供給源、および無機ホスフェート供給源のほかに、また、任意の必要な補充物質も、適切な濃度で、単独、または複合窒素供給源など、別の補充物質または培地との混合物として、含むことができる。任意選択で、培養培地は、グルタチオン、システイン、シスタミン、チオグリコレート、ジチオエリトリトール、およびジチオトレイトールからなる群より選択される、1つまたは複数の還元剤を含有しうる。
原核宿主細胞は、適切な温度で培養する。E.coliを成長させるには、例えば、成長は、約20℃〜約39℃、約25℃〜約37℃、および約30℃を含むがこれらに限定されない温度範囲で行う。培地のpHは、主に宿主生物に応じて、約5〜約9の範囲の任意のpHでありうる。E.coliでは、pHは、約6.8〜約7.4、または約7.0でありうる。
誘導的プロモーターを、本発明の発現ベクター内で使用する場合、タンパク質発現は、プロモーターの活性化に適する条件下で誘導する。本発明の一態様では、PhoAプロモーターを、ポリペプチドの転写を制御するために使用する。したがって、形質転換された宿主細胞は、誘導のためのホスフェート制限培地中で培養する。一実施形態では、ホスフェート制限培地は、C.R.A.P培地である(例えば、Simmonsら、J. Immunol. Methods(2002年)、263巻:133〜147頁を参照されたい)。当技術分野で公知の通り、使用されるベクター構築物に従い、他の様々な誘導剤を使用することができる。
一実施形態では、発現した本発明のポリペプチドは、宿主細胞のペリプラズムに分泌され、ここから回収される。タンパク質の回収は、一般に、浸透圧ショック、超音波処理、または溶解などの手段による微生物の破壊を伴うことが典型的である。細胞を破壊したら、細胞残渣または全細胞は、遠心分離または濾過により除去することができる。タンパク質は、例えば、アフィニティー樹脂クロマトグラフィーにより、さらに精製することができる。代替的に、タンパク質を、培養培地に輸送し、その中で単離することもできる。細胞は、培養物から除去し、産生されたタンパク質のさらなる精製のために、培養上清を、濾過および濃縮することができる。発現させたポリペプチドは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)およびウェスタンブロットアッセイなど、一般に公知の方法を使用して、さらに単離および同定することができる。
本発明の一態様では、抗体の作製を、発酵工程により大量に行う。組換えタンパク質の作製のためには、多様な大スケールの流加発酵手順が利用可能である。大スケールの発酵容量は、少なくとも1000リットル、例えば、約1,000〜100,000リットルである。これらの発酵槽では、撹拌用インペラーを使用して、酸素および栄養物質、とりわけ、グルコース(一般的な炭素/エネルギー供給源)を分配する。小スケールの発酵とは一般に、容積が約100リットルを超えず、約1リットル〜約100リットルの範囲にありうる発酵槽内の発酵を指す。
発酵工程では、タンパク質発現の誘導は、細胞を、適切な条件下で、所望の密度、例えば、OD550で約180〜220(この段階では、細胞は、早期定常相にある)まで成長させた後で、開始することが典型的である。当技術分野で公知であり、上で記載した通り、使用されるベクター構築物に従い、様々な誘導剤を使用することができる。細胞は、誘導前に、より短い期間で成長させることができる。細胞は通例、約12〜50時間誘導するが、より長い誘導時間も、より短い誘導時間も、使用することができる。
本発明のポリペプチドの作製収量および作製品質を改善するために、多様な発酵条件を改変することができる。例えば、分泌される抗体ポリペプチドの適正なアセンブリーおよびフォールディングを改善するために、Dsbタンパク質(DsbA、DsbB、DsbC、DsbD、および/またはDsbG)、またはFkpA(シャペロン活性を伴う、ペプチジルプロリルcis,trans−イソメラーゼ)など、シャペロンタンパク質を過剰発現させる、さらなるベクターを使用して、宿主原核細胞を共形質転換することができる。シャペロンタンパク質は、適正なフォールディングおよび細菌宿主細胞内で産生される異種タンパク質の溶解度を促進することが裏付けられている。Chenら、(1999) J Bio Chem 274:19601−19605;Georgiouら、米国特許第6,083,715号;Georgiouら、米国特許第6,027,888号;Bothmann and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17100−17105;Ramm and Pluckthun(2000)J.Biol.Chem.275:17106−17113;Arieら、(2001)Mol.Microbiol.39:199−210。
発現させた異種タンパク質(とりわけ、タンパク質分解に対して感受性の異種タンパク質)のタンパク質分解を最小化するため、タンパク質分解酵素について欠損する、ある特定の宿主株を、本発明のために使用することができる。例えば、宿主細胞株は、Protease III、OmpT、DegP、Tsp、Protease I、Protease Mi、Protease V、Protease VI、およびこれらの組み合わせなど、公知の細菌プロテアーゼをコードする遺伝子内に、遺伝子変異を施すように改変することができる。一部のE.coliプロテアーゼ欠損株が利用可能であり、例えば、Jolyら(1998年)、前出;Georgiouら、米国特許第5,264,365号;Georgiouら、米国特許第5,508,192号;Haraら、Microbial Drug Resistance、2巻:63〜72頁(1996年)において記載されている。
一実施形態では、タンパク質分解酵素について欠損し、1つまたは複数のシャペロンタンパク質を過剰発現させるプラスミドで形質転換されたE.coli株を、本発明の発現系内の宿主細胞として使用する。
抗体の精製
一実施形態では、本明細書で作製される抗体タンパク質をさらに精製して、さらなるアッセイのための、実質的に均質な調製物を得、使用する。当技術分野で公知の、標準的なタンパク質精製法を使用することができる。以下の手順:免疫アフィニティーカラム上またはイオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のまたはDEAEなどカチオン交換樹脂上のクロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、および例えば、Sephadex G−75を使用するゲル濾過は、適切な精製手順を例示するものである。
一態様では、固相上に固定化されたプロテインAを、本発明の抗体産物の免疫アフィニティー精製のために使用する。プロテインAとは、Staphylococcus aureasに由来する、41kDの細胞壁タンパク質であって、抗体のFc領域に、高アフィニティーで結合する(Lindmarkら(1983年)、J. Immunol. Meth.、62巻:1〜13頁)。プロテインAを固定化する固相は、ガラス表面もしくはシリカ表面を含むカラム、またはCPG(controlled pore glass)カラムもしくはケイ酸カラムでありうる。一部の適用では、カラムを、グリセロールなどの試薬でコーティングすると、夾雑物の非特異的付着を防止する可能性が高い。
精製の第1のステップとして、上で記載した細胞培養物に由来する調製物を、プロテインAを固定化した固相に適用して、目的の抗体の、プロテインAへの特異的結合を可能とすることができる。次いで、固相を洗浄すると、固相に非特異的に結合した夾雑物が除去される。最後に、目的の抗体を、固相から、溶出により回収する。
真核宿主細胞を使用する抗体の作製
ベクターの構成要素は一般に、以下:シグナル配列、複製起点、1つまたは複数のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、および転写終結配列のうちの1つまたは複数を含むがこれらに限定されない。
(i)シグナル配列構成要素
真核宿主細胞における使用のためのベクターはまた、シグナル配列、または、目的の成熟タンパク質もしくは成熟ポリペプチドのN末端において特異的切断部位を有する、他のポリペプチドも含有しうる。選択される異種シグナル配列は一般に、宿主細胞により認識およびプロセシングされる(すなわち、シグナルペプチダーゼにより切断される)異種シグナル配列である。哺乳動物細胞の発現では、哺乳動物シグナル配列のほか、ウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルも利用可能である。
このような前駆体領域のDNAを、リーディングフレーム内で、抗体をコードするDNAにライゲーションする。
(ii)複製起点
一般に、複製起点構成要素は、哺乳動物の発現ベクターに必要とされない。例えば、SV40起点は、初期プロモーターを含有するというだけで使用されうることが典型的である。
(iii)選択遺伝子構成要素
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択用マーカーとも称する、選択遺伝子を含有しうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生剤または他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、またはテトラサイクリンに対する耐性を付与する、(b)該当する場合、栄養要求性欠損を補完する、または(c)複合培地から得られない必須の栄養物質を供給する、タンパク質をコードする。
選択スキームの1つの例では、宿主細胞の成長を止める薬物を活用する。異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を付与するタンパク質を産生し、これにより、選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例では、薬物である、ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
哺乳動物細胞に適する選択用マーカーの別の例は、DHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネインIおよびII(例えば、霊長動物メタロチオネイン遺伝子)、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなど、抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能とする選択用マーカーである。
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞はまず、DHFRの競合的アンタゴニストである、メトトレキセート(Mtx)を含有する培養培地中で、形質転換体の全てを培養することにより同定することができる。野生型DHFRを使用する場合に適切な宿主細胞は、例えば、DHFR活性を欠損させたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系(例えば;ATCC:CRL−9096)を含む。
代替的に、抗体、野生型DHFRタンパク質、およびアミノグリコシド3’−ホスホトランスフェラーゼ(APH)など、別の選択用マーカーをコードするDNA配列で形質転換または共形質転換された宿主細胞(特に、内因性DHFRを含有する野生型宿主)は、アミノグリコシド抗生剤、例えば、カナマイシン、ネオマイシン、またはG418など、選択用マーカーのための選択用薬剤を含有する培地中の細胞成長により選択することができる。米国特許第4,965,199号を参照されたい。
(iv)プロモーター構成要素
発現ベクターおよびクローニングベクターは通例、宿主生物により認識され、目的のポリペプチド(例えば、抗体)をコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含有する。真核生物のプロモーター配列は、公知である。事実上全ての真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置する、ATに富む領域を有する。多くの遺伝子の転写の始点から70〜80塩基上流に見出される別の配列は、CNCAAT領域[配列中、Nは、任意のヌクレオチドでありうる]である。大半の真核生物遺伝子の3’末端は、ポリAテールの、コード配列の3’末端への付加のシグナルでありうる、AATAAA配列である。これらの配列の全ては、真核生物発現ベクターに挿入するのに適する。
哺乳動物宿主細胞内のベクターからの抗体ポリペプチドの転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(Adenovirus 2など)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られたプロモーター、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーターもしくは免疫グロブリンプロモーターに由来するプロモーター、または熱ショックプロモーターに由来するプロモーターにより制御することができるが、このようなプロモーターが、宿主細胞系に適合性があることを条件とする。
SV40ウイルスの初期プロモーターおよび後期プロモーターは、SV40ウイルス複製起点もまた含有する、SV40制限断片として簡便に得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期プロモーターは、HindIII E制限断片として簡便に得られる。ウシパピローマウイルスをベクターとして使用して、哺乳動物宿主内でDNAを発現させるための系は、米国特許第4,419,446号において開示されている。この系の改変については、米国特許第4,601,978号において記載されている。また、単純ヘルペスウイルスに由来するチミジンキナーゼプロモーターの制御下、マウス細胞内の、ヒトβ−インターフェロンcDNAの発現についての、Reyesら、Nature、297巻:598〜601頁(1982年)も参照されたい。代替的に、ラウス肉腫ウイルスの長い末端リピートも、プロモーターとして使用することができる。
(v)エンハンサーエレメント構成要素
高等真核生物による、本発明の抗体ポリペプチドをコードするDNAの転写は、エンハンサー配列を、ベクターに挿入することにより増大させうることが多い。今や、哺乳動物遺伝子(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、およびインスリン)に由来する、多くのエンハンサー配列が、公知である。しかし、真核細胞ウイルスに由来するエンハンサーを使用することが典型的である。例は、複製起点の後期側(100〜270bp)にあるSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含む。真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントについては、また、Yaniv、Nature、297巻:17〜18頁(1982年)も参照されたい。エンハンサーは、ベクターに、抗体ポリペプチドコード配列の5’または3’の位置にスプライスされる場合もあるが、一般に、プロモーターの5’の部位に位置する。
(vi)転写終結構成要素
真核宿主細胞内で使用される発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列も含有することが典型的である。このような配列は一般に、真核生物DNAもしくは真核生物cDNA、またはウイルスDNAもしくはウイルスcDNAの5’非翻訳領域、場合によって、3’非翻訳領域から得られる。これらの領域は、抗体をコードするmRNAの非翻訳部分内のポリアデニル化断片として転写される、ヌクレオチドセグメントを含有する。1つの有用な転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である。WO94/11026およびその中で開示されている発現ベクターを参照されたい。
(vii)宿主細胞の選択および形質転換
本明細書のベクター内でDNAをクローニングするかまたは発現させるのに適する宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞を含む本明細書で記載される高等真核細胞を含む。培養物(組織培養物)中の脊椎動物細胞の繁殖は、日常的な手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞系の例は、SV40で形質転換されたサル腎臓CV1細胞系(COS−7;ATCC:CRL1651);ヒト胎児腎臓細胞系(293細胞または懸濁培養で成長させるためにサブクローニングされた293細胞;Grahamら、J. Gen Virol.、36巻:59頁(1977年));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK;ATCC:CCL10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/DHFR−(CHO;Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、77巻:4216頁(1980年));マウスセルトリ細胞(TM4;Mather、Biol. Reprod.、23巻:243〜251頁(1980年));サル腎臓細胞(CV1;ATCC:CCL70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76;ATCC:CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA;ATCC:CCL2);イヌ腎臓細胞(MDCK;ATCC:CCL34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A;ATCC:CRL1442);ヒト肺細胞(W138;ATCC:CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562;ATCC:CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y. Acad. Sci.、383巻:44〜68頁(1982年));MRC 5細胞;FS4細胞;およびヒトヘパトーマ細胞系(Hep G2)である。
宿主細胞は、抗体の作製のための、上で記載した発現ベクターまたはクローニングベクターで形質転換し、プロモーターを誘導するか、形質転換体を選択するか、または所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適するように改変された、従来の栄養培地中で培養する。
(viii)宿主細胞の培養
本発明の抗体を作製するのに使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養することができる。ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、およびダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、宿主細胞の培養に適する。加えて、Hamら、Meth. Enz.、58巻:44頁(1979年)、Barnesら、Anal. Biochem.、102巻:255頁(1980年)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;もしくは同第5,122,469号;WO90/03430;WO87/00195;または米国特許再交付第30,985号において記載されている培地のうちのいずれかを、宿主細胞のための培養培地として使用することもできる。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモンおよび/または他の増殖因子(インスリン、トランスフェリン、または上皮増殖因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびホスフェートなど)、緩衝剤(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生剤(GENTAMYCIN(商標)薬など)、微量元素(通例マイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、ならびにグルコースもしくは同等のエネルギー供給源を補充することができる。また、他の任意の必要な補充物質も、当業者に公知の適切な濃度で含むことができる。温度、pHなどの培養条件は、発現のために選択された宿主細胞に対して既に使用された培養条件であり、当業者に明らかである。
(ix)抗体の精製
組換え技法を使用する場合、抗体は、細胞内で産生させること、または培地に直接分泌させることができる。抗体を細胞内で産生させる場合、最初のステップとして、宿主細胞または溶解させた断片のいずれかである粒子状残渣は一般に、例えば、遠心分離または限外濾過により除去する。抗体を培地に分泌させる場合、このような発現系に由来する上清は一般に、まず、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、Amicon限外濾過ユニットまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤を前出のステップのうちのいずれかに含み、タンパク質分解を阻害することができ、偶発性の夾雑物の成長を防止するために抗生剤が含まれ得る。
細胞から調製される抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製することができ、アフィニティークロマトグラフィーは一般に、許容可能な精製技法である。プロテインAなどのアフィニティー試薬の、アフィニティーリガンドとしての適性は、抗体内に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトγ1重鎖、ヒトγ2重鎖、またはヒトγ4重鎖に基づく抗体を精製することができる(Lindmarkら、J. Immunol. Meth.、62巻:1〜13頁(1983年))。プロテインGは、全てのマウスアイソタイプおよびヒトγ3のために推奨される(Gussら、EMBO J.、5巻:1567〜1575頁(1986年))。アフィニティーリガンドを付着させるマトリックスは大部分、アガロースであることが多いが、他のマトリックスも利用可能である。CPG(controlled pore glass)またはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなど、力学的に安定的なマトリックスは、アガロースに対して達成しうる流量より大きな流量およびアガロースに対して達成しうる加工時間より短い加工時間を可能とする。抗体がCH3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J. T. Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製のために有用である。また、イオン交換カラム上の分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上のクロマトグラフィー、ヘパリン上のクロマトグラフィー、アニオン交換樹脂上またはカチオン交換樹脂上(ポリアスパラギン酸カラムなど)のSEPHAROSE(商標)クロマトグラフィー、等電点電気泳動、SDS−PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿など、タンパク質精製のための他の技法も、回収される抗体に応じて利用可能である。
任意の予備的精製ステップの後、目的の抗体と夾雑物とを含む混合物を、必要に応じて、例えば、pHを約2.5〜4.5の間とする溶出緩衝液を使用し、一般に低塩濃度(例えば、約0〜0.25Mの塩)で実施される、低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにより、さらなる精製ステップにかけることができる。
当技術分野では、一般に、研究、検査、および臨床使用における使用のための抗体を調製するための技法および方法論が十分に確立されており、上記とも符合し、かつ/または目的の特定の抗体に適切であると当業者にみなされていることに留意されたい。
活性アッセイ
本発明の抗体は、それらの物理的特性/化学的特性および生物学的機能について、当技術分野で公知の多様なアッセイにより特徴付けることができる。
精製された抗体は、N末端シークェンシング、アミノ酸解析、非変性サイズ除外高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、質量分析、イオン交換クロマトグラフィー、およびパパイン消化を含むがこれらに限定されない、一連のアッセイによりさらに特徴付けることができる。
必要な場合は、抗体を、それらの生物学的活性について解析する。一部の実施形態では、本発明の抗体を、それらの抗原結合活性について調べる。当技術分野で公知であり、本明細書で使用しうる抗原結合性アッセイは、限定せずに述べると、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素免疫測定アッセイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、ナノ粒子イムノアッセイ、アプタマーイムノアッセイおよびプロテインAイムノアッセイなどの技法を使用する、任意の直接的結合アッセイまたは競合的結合アッセイを含む。
抗体断片
本発明は、抗体断片を包含する。ある特定の状況では、全抗体ではなく、抗体断片を使用することが有利である。より小サイズの断片は、急速なクリアランスを可能とし、充実性腫瘍への接近の改善をもたらしうる。
抗体断片を産生するための多様な技法が開発されている。従来、これらの断片は、無傷抗体のタンパク質分解性消化を介して導出した(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods、24巻:107〜117頁(1992年);およびBrennanら、Science、229巻:81頁(1985年)を参照されたい)。しかし、今やこれらの断片は、組換え宿主細胞に直接産生させることができる。Fab抗体断片、Fv抗体断片、およびScFv抗体断片は全て、E.coli内で発現し、E.coliから分泌され、このため、これらの断片の大量の作製が容易に可能となりうる。抗体断片は、上で論じた抗体ファージライブラリーから単離することができる。代替的に、Fab’−SH断片は、E.coliから直接回収し、化学的にカップリングさせて、F(ab’)2断片を形成することもできる(Carterら、Bio/Technology、10巻:163〜167頁(1992年))。別の手法に従い、F(ab’)2断片を、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含む、in vivo半減期を延長したFab断片およびF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号において記載されている。当業者には、抗体断片を作製するための他の技法も明らかであろう。他の実施形態では、選択した抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185;米国特許第5,571,894号;および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびsFvは、定常領域を欠く無傷の結合部位を伴う唯一の分子種であり、このため、in vivoにおける使用時に非特異的結合を低減するのに適する。sFv融合タンパク質を構築して、sFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかにおけるエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。Antibody Engineering、Borrebaeck編、前出を参照されたい。例えば、抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載の通り、「直鎖状抗体」でもありうる。このような直鎖状抗体断片は、一特異性であっても二特異性であってもよい。
ヒト化抗体
本発明は、ヒト化抗体を包含する。当技術分野では、非ヒト抗体をヒト化するための多様な方法が公知である。例えば、ヒト化抗体は、非ヒト供給源から導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有しうる。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称することが多く、これは、「移入」可変ドメインから採取されることが典型的である。ヒト化は、Winterおよび共同研究者らによる方法(Jonesら(1986年)、Nature、321巻:522〜525頁;Riechmannら(1988年)、Nature、332巻:323〜327頁;Verhoeyenら(1988年)、Science、239巻:1534〜1536頁)に従い、超可変領域配列で、ヒト抗体の対応する配列を置換することにより、本質的に実施することができる。したがって、このような「ヒト化」抗体とは、実質的に無傷に満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種に由来する対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。実際は、ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基と、おそらく、一部のFR残基とが、齧歯動物抗体内の類似の部位に由来する残基で置換されているヒト抗体であることが典型的である。
ヒト化抗体を作製するのに使用される、軽鎖ヒト可変ドメインおよび重鎖ヒト可変ドメインのいずれの選択も、抗原性を低減するのに重要でありうる。いわゆる「ベストフィット」法に従い、齧歯動物抗体の可変ドメイン配列を、公知のヒト可変ドメイン配列の全ライブラリーに照らしてスクリーニングする。次いで、齧歯動物の配列に最も近接するヒト配列を、ヒト化抗体のためのヒトフレームワークとして受容する(Simsら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2296頁;Chothiaら(1987年)、J. Mol. Biol.、196巻:901頁)。別の方法では、軽鎖または重鎖の特定の亜群についての、全てのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワークを使用する。同じフレームワークを、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用することができる(Carterら(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;Prestaら(1993年)、J. Immunol.、151巻:2623頁)。
抗原に対する高アフィニティーおよび他の好適な生物学的特性を保持するように抗体をヒト化することがさらに一般に望ましい。この目標を達成するために、1つの方法に従い、ヒト化抗体を、親配列およびヒト化配列についての三次元モデルを使用する、親配列および多様な概念上のヒト化産物についての解析工程により調製する。三次元免疫グロブリンモデルは、一般に利用可能であり、当業者は、これに精通している。選択された候補免疫グロブリン配列についての、あり得る三次元コンフォメーション構造を例示および表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示について検討することにより、候補免疫グロブリン配列の機能において推定される残基の役割についての解析、すなわち、候補免疫グロブリンが、その抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基についての解析が可能となる。このようにして、標的抗原に対するアフィニティーの増大など、所望の抗体特徴を達成するように、FR残基は、レシピエント配列および移入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、超可変領域の残基は、抗原への結合に対する影響に、直接、かつ、極めて実質的に関与する。
ヒト抗体
本発明のヒト抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローンの可変ドメイン配列を、上で記載した、公知のヒト定常ドメイン配列と組み合わせることにより構築することができる。代替的に、本発明のヒトモノクローナル抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体は、ハイブリドーマ法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の作製のための、ヒト骨髄腫細胞系およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系については、例えば、Kozbor、J. Immunol.、133巻:3001頁(1984年);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51〜63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987年);およびBoernerら、J. Immunol.、147巻:86頁(1991年)により記載されている。
今や、免疫化されると、内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することができる。例えば、キメラおよび生殖細胞系列の変異体マウスにおける、抗体重鎖接合領域(JH)遺伝子のホモ接合性の欠失の結果として、内因性抗体産生の完全な阻害がもたらされることが記載されている。ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイを、このような生殖細胞系列変異体マウスに導入する結果として、抗原チャレンジの際にヒト抗体の産生がもたらされる。例えば、Jakobovitsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:2551頁(1993年);Jakobovitsら、Nature、362巻:255頁(1993年);Bruggermannら、Year in Immunol.、7巻:33頁(1993年)を参照されたい。
遺伝子シャフリングはまた、ヒト抗体を、非ヒト抗体、例えば、齧歯動物抗体から導出するのにも使用することができ、この場合、ヒト抗体は、非ヒト出発抗体と同様のアフィニティーおよび特異性を有する。「エピトープインプリンティング」とも呼ばれるこの方法に従い、上で記載したファージディスプレイ技法により得られる、非ヒト抗体断片の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のいずれかを、ヒトVドメイン遺伝子のレパートリーで置きかえ、非ヒト鎖/ヒト鎖のscFvキメラまたはFabキメラの集団を創出する。抗原による選択の結果として、非ヒト鎖/ヒト鎖のキメラscFvまたはキメラFabが単離され、ここで、ヒト鎖は、初代ファージディスプレイクローン内で、対応する非ヒト鎖を除去したときに破壊された抗原結合性部位を回復する、すなわち、エピトープにより、ヒト鎖パートナーの選択が支配される(刷り込まれる)。残存する非ヒト鎖を置きかえるために工程を繰り返すと、ヒト抗体が得られる(1993年4月1日に公開された、PCT WO93/06213を参照されたい)。従来の、非ヒト抗体の、CDRグラフティングによるヒト化と異なり、この技法は、非ヒト由来のFR残基もCDR残基も有さない、完全ヒト抗体をもたらす。
二特異性抗体
二特異性抗体とは、少なくとも2つの異なる抗原に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態では、二特異性抗体は、ヒトまたはヒト化抗体である。ある特定の実施形態では、結合特異性のうちの一方は、特異的リシン連結を含む、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hに対するものであり、他方は、他の任意の抗原に対するものである。ある特定の実施形態では、二特異性抗体は、2つの異なるリシン連結を有する、2つの異なるSSEA−3/SSEA−4/Globo Hに結合しうる。二特異性抗体は、全長抗体として、または抗体断片(例えば、F(ab’)2二特異性抗体)として調製することができる。
当技術分野では、二特異性抗体を作製するための方法が公知である。従来、二特異性抗体の組換えによる作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、この場合、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello、Nature、305巻:537頁(1983年))。免疫グロブリン重鎖と免疫グロブリン軽鎖とのランダムな取合せのために、これらのハイブリドーマ(クァドローマ)は、そのうちの1つだけが正確な二特異性構造を有する、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生する。通例、アフィニティークロマトグラフィーステップによりなされる、正確な分子の精製は、いくぶん煩瑣であり、産物の収量も低い。同様の手順は、1993年5月13日に公開されたWO93/08829、およびTrauneckerら、EMBO J.、10巻:3655頁(1991年)において開示されている。
異なる実施形態に従い、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を伴う抗体の可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させる。融合は、例えば、ヒンジ領域、CH2領域、およびCH3領域のうちの少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。ある特定の実施形態では、軽鎖の結合に必要な部位を含有する、第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合体のうちの少なくとも1つの中に存在する。免疫グロブリン重鎖融合体と、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖とをコードするDNAを、別個の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に共トランスフェクトする。構築において使用される、等しくない比の3つのポリペプチド鎖から、最適の収量を得る実施形態では、これにより、3つのポリペプチド断片の相互の比率を調整するのに大きな柔軟性がもたらされる。しかし、少なくとも2つの、等しい比のポリペプチド鎖を発現させる結果として、高収量がもたらされる場合、または比が特段の重要性を有さない場合は、ポリペプチド鎖の2つまたは3つ全てのコード配列を、1つの発現ベクター内に挿入することが可能である。
この手法の一実施形態では、二特異性抗体は、一方のアームにおける、第1の結合特異性を伴う、ハイブリッドの免疫グロブリン重鎖と、他方のアームにおける、ハイブリッドの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性をもたらす)とから構成される。免疫グロブリン軽鎖が、二特異性分子の半分だけに存在することにより、容易な分離の方途がもたらされるので、この非対称性構造により、所望の二特異性化合物の、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの分離が容易となることが見出された。この手法は、WO94/04690において開示されている。二特異性抗体を作り出すことのさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology、121巻:210頁(1986年)を参照されたい。
別の手法に従い、抗体分子対の間の界面を操作して、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大化することができる。界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面に由来する、1つまたは複数の小型のアミノ酸側鎖を、より大型の側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置きかえる。大型のアミノ酸側鎖を、より小型の側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置きかえることにより、大型の側鎖と相補的な、同一または同様なサイズの「空隙」を、第2の抗体分子の界面上に創出する。これにより、ホモ二量体など、他の望ましくない最終生成物に対する、ヘテロ二量体の収量を増大させるための機構がもたらされる。
二特異性抗体は、架橋抗体または「ヘテロコンジュゲート」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲート内の抗体のうちの一方をアビジンへ、他方をビオチンにカップリングさせることができる。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を、望ましくない細胞にターゲティングするため(米国特許第4,676,980号)、およびHIV感染の処置のため(WO91/00360、WO92/00373、およびEP03089)に提起されている。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の簡便な架橋法を使用して作製することができる。当技術分野では、適切な架橋剤が周知であり、多数の架橋技法と共に、米国特許第4,676,980号において開示されている。
また、二特異性抗体を、抗体断片から作り出すための技法も、文献に記載されている。例えば、二特異性抗体は、化学連結を使用して調製することができる。Brennanら、Science、229巻:81頁(1985年)は、無傷抗体を、タンパク質分解により切断して、F(ab’)2断片を作り出す手順について記載している。これらの断片を、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、近接のジチオールを安定化させ、分子間ジスルフィドの形成を防止する。次いで、作り出されたFab’断片を、チオニトロ安息香酸(TNB)誘導体に転換する。次いで、Fab’−TNB誘導体のうちの一方を、メルカプトエチルアミンによる還元によって、Fab’−チオールに再転換し、等モル量である他方のFab’−TNB誘導体と混合して、二特異性抗体を形成する。作製された二特異性抗体は、酵素を選択的に固定化するための薬剤として使用することができる。
近年の進展は、二特異性抗体を形成するように、化学的にカップリングさせうる、Fab’−SH断片の、E.coliからの直接的回収を容易としている。Shalabyら、J. Exp. Med.、175巻:217〜225頁(1992年)は、完全ヒト化二特異性抗体であるF(ab’)2分子の作製について記載している。各Fab’断片を、E.coliから個別に分泌させ、in vitroにおいて、指向性化学的カップリングにかけて、二特異性抗体を形成する。このようにして形成された二特異性抗体は、HER2受容体を過剰発現する細胞、および正常ヒトT細胞に結合すること、ならびにヒト細胞傷害性リンパ球の、ヒト乳房腫瘍標的に対する溶解活性を誘発することが可能であった。
また、二特異性抗体断片を、組換え細胞培養物から直接、作製および単離するための多様な技法も記載されている。例えば、二特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して作製されている(Kostelnyら、J. Immunol.、148巻(5号):1547〜1553頁(1992年))。Fosタンパク質およびJunタンパク質に由来するロイシンジッパーペプチドを、2つの異なる抗体のFab’部分に、遺伝子融合により連結した。抗体のホモ二量体を、ヒンジ領域において還元して、単量体を形成し、次いで、これを再度酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体のホモ二量体を作製するためにも活用することができる。Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:6444〜6448頁(1993年)により記載されている「ダイアボディー」技術は、二特異性抗体断片を作製するための代替的な機構を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメインの間の対合を可能とするには短すぎるリンカーにより、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された、重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVHドメインおよびVLドメインは、別の断片の相補的なVLドメインおよびVHドメインと対合することを強いられ、これにより、2つの抗原結合性部位を形成する。また、単鎖Fv(sFv)二量体の使用により、二特異性抗体断片を作製するための別の戦略も、報告されている。Gruberら、J. Immunol.、152巻:5368頁(1994年)を参照されたい。
二価を超える抗体が想定されている。例えば、三特異性抗体を調製することができる(Tuttら、J. Immunol.、147巻:60頁(1991年))。
多価抗体
多価抗体は、抗体が結合する抗原を発現させる細胞により、二価抗体より速く内部化(および/または異化)されうる。本発明の抗体は、3つまたはこれを超える抗原結合性部位を伴う多価抗体(IgMクラス以外の抗体である)(例えば、四価抗体)の可能性があり、これは、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現により、たやすく作製することができる。多価抗体は、二量体化ドメインおよび3つまたはこれを超える抗原結合性部位を含みうる。二量体化ドメインは、例えば、Fc領域またはヒンジ領域を含む(またはこれらからなる)。この状況では、抗体は、Fc領域と、Fc領域に対してアミノ末端側にある、3つまたはこれを超える抗原結合性部位とを含む。一実施形態では、多価抗体は、例えば、3つ〜約8つ、または4つの抗原結合性部位を含む(またはこれらからなる)。多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(例えば、2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、ポリペプチド鎖は、2つまたはこれを超える可変ドメインを含む。例えば、ポリペプチド鎖は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fc[配列中、VD1は、第1の可変ドメインであり、VD2は、第2の可変ドメインであり、Fcは、Fc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1およびX2は、アミノ酸またはポリペプチドを表し、nは、0または1である]を含みうる。例えば、ポリペプチド鎖は、VH−CH1−可撓性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖;またはVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含みうる。本明細書の多価抗体は、少なくとも2つ(例えば、4つ)の軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含みうる。本明細書の多価抗体は、例えば、約2つ〜約8つの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含みうる。本明細書で想定される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意選択で、CLドメインをさらに含む。
抗体改変体
一部の実施形態では、本明細書で記載される抗体のアミノ酸配列修飾が想定される。例えば、アミノ酸配列修飾は、抗体の結合アフィニティーおよび/または他の生物学的特性を改善するのに望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列改変体は、適切なヌクレオチド変化を抗体核酸に導入することにより、またはペプチド合成により調製する。このような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換を含む。最終構築物が、所望の特徴を保有するという条件で、欠失、挿入、および置換の任意の組み合わせを作製して、最終的な構築物に到達することができる。アミノ酸改変は、配列を作製するときに、対象抗体のアミノ酸配列内に導入することができる。
変異誘発に好ましい位置である、抗体のある特定の残基または領域の同定に有用な方法は、CunninghamおよびWells (1989年)、Science、244巻:1081〜1085頁により記載されている通り、「アラニン走査変異誘発」と呼ばれる。本明細書では、標的残基の残基または基を同定し(例えば、Arg、Asp、His、Lys、およびGluなどの荷電残基)、アミノ酸の抗原との相互作用に影響を及ぼすように、中性アミノ酸または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置きかえる。次いで、置換の部位において、または置換の部位に代えて、さらなる改変体または他の改変体を導入することにより、置換に対する機能的な感受性を実証するアミノ酸位置を精緻化する。したがって、アミノ酸配列の変化形を導入するための部位は、あらかじめ決定するが、変異自体の性質は、あらかじめ決定する必要がない。例えば、所与の部位における変異の性能を解析するには、アラニン走査またはランダム変異誘発を、標的コドンまたは標的領域において施し、発現させた免疫グロブリンを、所望の活性についてスクリーニングする。
アミノ酸配列の挿入は、長さが1残基〜100またはこれを超える残基を含有するポリペプチドの範囲の、アミノ末端融合体および/またはカルボキシル末端融合体のほか、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入を含む。末端挿入の例は、N末端メチオニル残基を伴う抗体、または細胞傷害性ポリペプチドに融合させた抗体を含む。抗体分子の他の挿入改変体は、抗体のN末端またはC末端の、酵素への融合体(例えば、ADEPTの場合)、または抗体の血清中半減期を延長するポリペプチドへの融合体を含む。
別の種類の改変体は、アミノ酸置換改変体である。これらの改変体は、抗体分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基を、異なる残基で置きかえている。置換変異誘発のために、最も大きな関心の対象となる部位は、超可変領域を含むが、また、FRの改変も想定される。保存的置換を、「好ましい置換」の表題の下に、表Aに示す。このような置換が、生物学的活性の変化を結果としてもたらす場合は、表Aで「例示的置換」と名指されるか、またはアミノ酸クラスに言及して、下記でさらに記載される、より実質的な変化を導入し、産物をスクリーニングすることができる。
表A
元の例示的な好ましい
残基置換
Ala (A) Val; Leu; Ile Val
Arg (R) Lys; Gln; Asn Lys
Asn (N) Gln; His; Asp, Lys; Arg Gln
Asp (D) Glu; Asn Glu
Cys (C) Ser; Ala Ser
Gln (Q) Asn; Glu Asn
Glu (E) Asp; Gln Asp
Gly (G) Ala Ala
His (H) Asn; Gln; Lys; Arg Arg
Ile (I) Leu; Val; Met; Ala; Leu
Phe; ノルロイシン
Leu (L) ノルロイシン; Ile; Val; Ile
Met; Ala; Phe
Lys (K) Arg; Gln; Asn Arg
Met (M) Leu; Phe; Ile Leu
Phe (F) Trp; Leu; Val; Ile; Ala; Tyr Tyr
Pro (P) Ala Ala
Ser (S) Thr Thr
Thr (T) Val; Ser Ser
Trp (W) Tyr; Phe Tyr
Tyr (Y) Trp; Phe; Thr; Ser Phe
Val (V) Ile; Leu; Met; Phe; Leu
Ala; ノルロイシン
抗体の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)例えば、シートコンフォメーションもしくはヘリックスコンフォメーションとしての置換エリア内のポリペプチド骨格の構造;(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性;または(c)側鎖のかさを維持することに対するそれらの効果が著明に異なる置換を選択することにより達成する。アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性(A. L. Lehninger、Biochemistry、2版、73〜75頁、Worth Publishers、New York(1975年)):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(O)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
に従い群分けすることができる。
代替的に、天然に存在する残基は、一般的な側鎖特性に基づく群:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性の親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向性に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe
に分けることができる。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを、別のクラスのメンバーと交換することを伴う。また、このような置換残基を、保存的置換部位へ、または残りの(非保存的な)部位に導入することもできる。
1つの種類の置換改変体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、さらなる開発のために選択される、結果として得られる改変体では、生物学的特性は、それらが作り出された親抗体と比べて修飾されている(例えば、改善されている)。このような置換改変体を作り出すための簡便な方途は、ファージディスプレイを使用するアフィニティー成熟を伴う。略述すると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6〜7カ所の部位)を変異させて、各部位における全ての可能なアミノ酸置換を作り出す。このようにして作り出された抗体は、糸状ファージ粒子から、各粒子内にパッケージングされたファージコートタンパク質(例えば、M13の遺伝子III産物)のうちの少なくとも一部との融合体としてディスプレイされる。次いで、ファージディスプレイされた改変体を、本明細書で開示される通り、それらの生物学的活性(例えば、結合アフィニティー)についてスクリーニングする。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、走査変異誘発(例えば、アラニン走査)を実施して、抗原への結合に著明に寄与する超可変領域残基を同定することができる。代替的に、または加えて、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析して、抗体と抗原との接触点を同定することも有益でありうる。このような接触残基および隣接残基は、本明細書で詳述される技法を含む、当技術分野で公知の技法に従う置換のための候補である。このような改変体を作り出したら、改変体のパネルを、本明細書で記載される技法を含む、当技術分野で公知の技法を使用するスクリーニングにかけ、1つまたは複数の関連アッセイにおいて優れた特性を伴う抗体を、さらなる開発のために選択することができる。
抗体のアミノ酸配列改変体をコードする核酸分子は、当技術分野で公知の様々な方法により調製する。これらの方法は、天然供給源(天然に存在するアミノ酸配列改変体の場合)からの単離、またはオリゴヌクレオチド媒介型(または部位指向)変異誘発、PCR変異誘発、および抗体の、以前に調製された改変体もしくは非バージョンに対する、カセット型変異誘発による調製を含むがこれらに限定されない。
1つまたは複数のアミノ酸修飾を、本発明の抗体のFc領域内に導入し、これにより、Fc領域改変体を作り出すことが望ましい場合がある。Fc領域改変体は、ヒンジシステインのアミノ酸位置を含む、1つまたは複数のアミノ酸位置におけるアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のFc領域)を含みうる。
イムノコンジュゲート
別の態様では、本発明は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、細菌由来、真菌由来、植物由来、もしくは動物由来の酵素的に活性な毒素、またはこれらの断片)、または放射性同位元素(すなわち、放射性コンジュゲート)などの細胞傷害剤にコンジュゲートさせた抗体を含む、イムノコンジュゲートまたは抗体−薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。
細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤、すなわち、がんの処置において、腫瘍細胞を死滅させるかまたは阻害する薬物を局所送達するために、抗体−薬物コンジュゲートを使用すること(SyrigosおよびEpenetos(1999年)、Anticancer Research、19巻:605〜614頁;Niculescu−DuvazおよびSpringer(1997年)、Adv. Drg Del. Rev.、26巻:151〜172頁;米国特許第4,975,278号)により、薬物部分の、腫瘍へのターゲティング送達、および腫瘍細胞内の蓄積が可能となり、この場合、これらの薬剤(drug agent)をコンジュゲートさせずに全身投与すれば、許容不可能なレベルの毒性が、消失が求められる腫瘍細胞のほか、正常細胞にも結果としてもたらされうる(Baldwinら(1986年)、Lancet(1986年3月15日):603〜05頁;Thorpe(1985年)、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」、Monoclonal Antibodies ‘84: Biological And Clinical Applications、A. Pincheraら(編)、475〜506頁)。こうして、毒性を最小としながら、有効性を最大とすることが探索される。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体のいずれも、これらの戦略において有用であると報告されている(Rowlandら(1986年)、Cancer Immunol. Immunother.、21巻:183〜87頁)。これらの方法で使用される薬物は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、およびビンデシンを含む(Rowlandら(1986年)、前出)。抗体−毒素コンジュゲート内で使用される毒素は、ジフテリア毒素などの細菌毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシンなどの低分子毒素(Mandlerら(2000年)、Jour. of the Nat. Cancer Inst.、92巻(19号):1573〜1581頁;Mandlerら(2000年)、Bioorganic & Med. Chem. Letters、10巻:1025〜1028頁;Mandlerら(2002年)、Bioconjugate Chem.、13巻:786〜791頁)、メイタンシノイド(EP1391213;Liuら(1996年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、93巻:8618〜8623頁)、およびカリケアマイシン(Lodeら(1998年)、Cancer Res.、58巻:2928頁;Hinmanら(1993年)、Cancer Res.、53巻:3336〜3342頁)を含む。毒素は、それらの細胞傷害効果および細胞増殖抑制効果を、チューブリンへの結合、DNAへの結合、またはトポイソメラーゼの阻害を含む機構により及ぼしうる。一部の細胞傷害薬は、大型の抗体またはタンパク質受容体のリガンドにコンジュゲートさせると、不活性であるか活性がより低い傾向がある。
抗体の誘導体
本発明の抗体は、当技術分野で公知であり、たやすく利用可能な、さらなる非タンパク質性部分を含有するように、さらに修飾することができる。一実施形態では、抗体の誘導体化に適する部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ−1,3−ジオキソラン、ポリ−1,3,6−トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド(prolypropylene)/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物を含むがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中のその安定性のために、製造において有利でありうる。ポリマーは、任意の分子量であることが可能であり、分枝状であっても非分枝状であってもよい。抗体に付着させるポリマーの数は変更し得、1つを超えるポリマーを付着させる場合、ポリマーは、同じ、または、異なる分子の場合がある。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数および/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体の誘導体が規定された条件下の治療で使用されるのかどうかなどを含むがこれらに限定されない検討項目に基づき決定することができる。
別の実施形態では、放射線への曝露により選択的に加熱されうる、抗体と非タンパク質性部分とのコンジュゲートが提供される。一実施形態では、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(Kamら、Proc. Natl. Acad. Sci.、102巻:11600〜11605頁(2005年))。放射線は、任意の波長のものであることが可能であり、通常の細胞には有害でないが、非タンパク質性部分を、抗体−非タンパク質性部分に近位の細胞が死滅する温度まで加熱する波長を含むがこれらに限定されない。
医薬製剤
本発明の抗体を含む治療用製剤は、所望の程度の純度を有する抗体を、任意選択の、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、16版、Osol, A.編(1980年))と、水溶液、凍結乾燥製剤、または他の乾燥製剤の形態で混合することにより、保管用に調製する。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、ホスフェート、シトレート、ヒスチジン、および他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリシンなどのアミノ酸;単糖、二糖、および、グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;スクロース、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
本明細書の製剤はまた、処置される特定の適応症に対する必要に応じて、1つを超える活性化合物であって、互いに対して有害な影響を及ぼし合わない相補的活性を伴う活性化合物を含むがこれらに限定されない活性化合物も含有しうる。このような分子は、意図される目的に有効な量で組み合わせの中に適切に存在する。
有効成分はまた、例えば、コアセルベーション技法により、または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)内、またはマクロエマルジョン中の、ヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル内またはゼラチンマイクロカプセル内およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に捕らえることもできる。このような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、16版、Osol, A.編(1980年)において開示されている。
in vivoにおける投与のために使用される製剤は、滅菌製剤でなければならない。これは、滅菌濾過膜を介する濾過によりたやすく達成される。
持続放出調製物を調製することができる。適切な持続放出調製物の例は、本発明の免疫グロブリンを含有する固体の疎水性ポリマーによる半透性マトリックスを含み、このマトリックスは、成型品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。持続放出マトリックスの例は、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸−グリコール酸コポリマーと、酢酸ロイプロリドとから構成される注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン−酢酸ビニルおよび乳酸−グリコール酸などのポリマーが、100日間超にわたり分子の放出を可能とするのに対し、ある特定のヒドロゲルは、タンパク質を放出する期間が短い。封入された免疫グロブリンは、長時間体内にとどまる場合、37℃の水分に曝露される結果として、変性または凝集し、生物学的活性の喪失および可能な免疫原性の変化を結果としてもたらす場合がある。関与する機構に応じた、安定化のための妥当な戦略を案出することができる。例えば、凝集機構は、チオ−ジスルフィド交換を介する、分子間S−S結合の形成であることがわかっていれば、安定化は、スルフヒドリル残基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥させ、水分含量を制御し、適切な添加剤を使用し、特異的なポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成することができる。
使用
本発明の抗体は、例えば、in vitro、ex vivo、およびin vivoにおける治療法において使用することができる。本発明の抗体は、in vitro、ex vivo、および/またはin vivoにおける特異的抗原活性を、部分的または完全に遮断するアンタゴニストとして使用することができる。さらに、本発明の抗体の少なくとも一部は、他の種に由来する抗原活性を中和しうる。したがって、本発明の抗体を使用して、例えば、抗原を含有する細胞培養物中、ヒト対象、または、本発明の抗体が交差反応する抗原を有する他の哺乳動物対象(例えば、チンパンジー、ヒヒ、マーモセット、カニクイザル、およびアカゲザル、ブタ、またはマウス)における特異的抗原活性を阻害することができる。一実施形態では、本発明の抗体は、抗原活性を阻害するように、抗体を抗原と接触させることにより、抗原活性を阻害するために使用することができる。一実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質分子である。
一実施形態では、本発明の抗体は、抗原活性が有害である障害を患う対象において、抗原を阻害するための方法であって、対象における抗原活性を阻害するように、対象に、本発明の抗体を投与するステップを含む方法において使用することができる。一実施形態では、抗原は、ヒトタンパク質分子であり、対象は、ヒト対象である。代替的に、対象は、本発明の抗体が結合する抗原を発現させる哺乳動物でありうる。なおさらに、対象は、抗原を導入した(例えば、抗原の投与により、または抗原導入遺伝子の発現により)哺乳動物でありうる。本発明の抗体は、ヒト対象に、治療目的で投与することができる。さらに、本発明の抗体は、抗体が交差反応する抗原を発現させる非ヒト哺乳動物(例えば、霊長動物、ブタ、またはマウス)に、獣医学的目的で、またはヒト疾患の動物モデルとして、投与することもできる。後者に関して、このような動物モデルは、本発明の抗体の治療有効性の評価(例えば、投与量および投与の時間経過についての検査)に有用でありうる。本発明の抗体を使用して、SSEA−3/SSEA−4/Globo HおよびSSEA−3/SSEA−4/Globo H化タンパク質(SSEA−3/SSEA−4/Globo Hated protein)の異常な発現および/または活性と関連する疾患、障害、または状態であって、がん、筋障害、ユビキチン経路関連の遺伝子障害、免疫/炎症性障害、神経障害、および他のユビキチン経路関連障害を含むがこれらに限定されない疾患、障害、または状態を処置するか、阻害するか、進行を遅延させるか、再発を防止する/遅延させるか、回復させるか、または防止することができる。
一態様では、本発明の遮断抗体は、SSEA−3/SSEA−4/Globo Hに特異的である。
ある特定の実施形態では細胞傷害剤とコンジュゲートさせた本発明の抗体を含むイムノコンジュゲートを、患者に投与する。一部の実施形態では、イムノコンジュゲート、および/またはそれが結合する抗原は、それらの細胞表面上にSSEA−3/SSEA−4/Globo Hと関連する1つまたは複数のタンパク質を発現させる細胞により内部化され、結果として、それが会合する標的細胞の殺滅におけるイムノコンジュゲートの治療有効性の増大をもたらす。一実施形態では、細胞傷害剤は、標的細胞内の核酸をターゲティングするか、またはこれに干渉する。このような細胞傷害剤の例は、本明細書で言及される化学療法剤(メイタンシノイドまたはカリケアマイシンなど)、放射性同位元素、またはリボヌクレアーゼもしくはDNAエンドヌクレアーゼのうちのいずれかを含む。
本発明の抗体は、治療において、単独で、または他の組成物と組み合わせて使用することができる。例えば、本発明の抗体は、別の抗体および/またはアジュバント/治療剤(例えば、ステロイド)と共に共投与することができる。例えば、本発明の抗体は、処置スキームにおいて、例えば、がん、筋障害、ユビキチン経路関連の遺伝子障害、免疫/炎症性障害、神経障害、および他のユビキチン経路関連障害を含む、本明細書で記載される疾患のうちのいずれかの処置において、抗炎症剤および/または消毒薬と組み合わせることができる。上で言及された、このような組み合わせ療法は、組み合わせ投与(2つまたはこれを超える薬剤が、同じ製剤中または個別の製剤中に含まれる場合)と、個別投与とを含み、個別投与の場合、本発明の抗体の投与は、1つまたは複数の補助療法の投与の前、および/またはこれらの後で施すことができる。
本発明の抗体(および補助療法剤)は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、および鼻腔内、ならびに、局所的処置に所望の場合、病変内投与を含む任意の適切な手段により投与することができる。非経口注入は、筋内投与、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または皮下投与を含む。加えて、抗体は、特に、抗体の用量を減じるパルス注入により投与するのに適する。投薬は、任意の適切な経路によって、例えば、投与が短期であるのか、長期であるのかに部分的に応じて、静脈内または皮下注射などの注射を介することが可能である。
抗体の調製および投与では、本発明の抗体の結合標的の位置を考慮する場合がある。結合標的が、細胞内分子である場合、本発明のある特定の実施形態は、結合標的が位置する細胞に導入される抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、本発明の抗体は、細胞内でイントラボディー(intrabody)として発現させることができる。本明細書で使用される「イントラボディー」という用語は、Marasco、Gene Therapy、4巻:11〜15頁(1997年);Kontermann、Methods、34巻:163〜170頁(2004年);米国特許第6,004,940号および同第6,329,173号;米国特許出願公開第2003/0104402号;ならびにPCT公開第WO2003/077945号において記載されている通り、細胞内で発現し、標的分子に選択的に結合することが可能な、抗体またはその抗原結合性部分を指す。イントラボディーの細胞内発現は、所望の抗体またはその抗原結合性部分をコードする核酸(その抗体または抗原結合性断片をコードする遺伝子と通常関連する、野生型のリーダー配列および分泌シグナルを欠く)を、標的細胞に導入することによりなされる。核酸を細胞に導入する、任意の標準的な方法であって、微量注射、遺伝子銃注射、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム、および、目的の核酸を保有するレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびワクシニアベクターによるトランスフェクションを含むがこれらに限定されない方法を使用することができる。SSEA−3/SSEA−4/Globo Hへの細胞内結合、および1つまたは複数のSSEA−3/SSEA−4/Globo H媒介性細胞内経路のモジュレーションが可能な、1つまたは複数のイントラボディーを発現させるように、本発明の抗SSEA−3/SSEA−4/Globo H抗体の全部または一部分をコードする、1つまたは複数の核酸を、標的細胞に送達することができる。
別の実施形態では、内部化抗体が提供される。抗体は、抗体の細胞への送達を増強するある特定の特徴を保有する場合もあり、このような特徴を保有するように修飾される場合もある。当技術分野では、これを達成するための技法が公知である。例えば、抗体のカチオン化は、その細胞への取込みを容易とすることが公知である(例えば、米国特許第6,703,019号を参照されたい)。また、リポフェクションまたはリポソームも、抗体を細胞に送達するのに使用することができる。抗体断片を使用する場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性断片が一般に有利である。例えば、抗体の可変領域配列に基づき、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子をデザインすることができる。このようなペプチドは、化学合成する、かつ/または組換えDNA技術により作製することができる。例えば、Marascoら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻:7889〜7893頁(1993年)を参照されたい。
モジュレーターポリペプチドの、標的細胞への侵入は、当技術分野で公知の方法により増強することができる。例えば、HIV TatまたはAntennapediaホメオドメインタンパク質に由来する配列など、ある特定の配列は、異種タンパク質の、細胞膜を横切る効率的な取込みを誘導することが可能である。例えば、Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1999年)、96巻:4325〜4329頁を参照されたい。
結合標的が脳内に位置する場合、本発明のある特定の実施形態は、血液脳関門を越える抗体またはその抗原結合性断片を提供する。ある特定の神経変性疾患は、抗体または抗原結合性断片が、脳にたやすく導入されうるような、血液脳関門の透過性の増大と関連する。血液脳関門が無傷のままである場合は、物理的方法、脂質ベースの方法、ならびに受容体およびチャネルベースの方法を含むがこれらに限定されない、血液脳関門を横切って分子を輸送するための、当技術分野で公知のいくつかの手法が存在する。
抗体または抗原結合性断片を、血液脳関門を横切って輸送する、物理的方法は、血液脳関門を全体として迂回する方法、または血液脳関門内に開口部を創出する方法を含むがこれらに限定されない。迂回法は、脳への直接的注射(例えば、Papanastassiouら、Gene Therapy、9巻:398〜406頁(2002年)を参照されたい)、間質内注入/対流増強型送達(例えば、Boboら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻:2076〜2080頁(1994年)を参照されたい)、および送達デバイスの脳内への植込み(例えば、Gillら、Nature Med.、9巻:589〜595頁(2003年);およびGliadel Wafers(商標)、Guildford Pharmaceuticalを参照されたい)を含むがこれらに限定されない。関門内に開口部を創出する方法は、超音波(例えば、米国特許公開第2002/0038086号を参照されたい)、浸透圧(例えば、高張性マンニトールの投与による(Neuwelt, E. A.、Implication of the Blood−Brain Barrier and its Manipulation、1および2巻、Plenum Press、N.Y.(1989年)))、例えば、ブラジキニンまたは透過剤A−7による透過処理(例えば、米国特許第5,112,596号、同第5,268,164号、同第5,506,206号、および同第5,686,416号を参照されたい)、および血液脳関門を夾叉するニューロンの、抗体または抗原結合性断片をコードする遺伝子を含有するベクターによるトランスフェクション(例えば、米国特許公開第2003/0083299号を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。
抗体または抗原結合性断片を、血液脳関門を横切って輸送する、脂質ベースの方法は、抗体または抗原結合性断片を、血液脳関門の血管内皮上の受容体に結合する抗体または抗原結合性断片にカップリングさせたリポソーム内に封入する方法(例えば、米国特許出願公開第20020025313号を参照されたい)、および抗体または抗原結合性断片を、低密度リポタンパク質粒子(例えば、米国特許出願公開第20040204354号を参照されたい)またはアポリポタンパク質E(例えば、米国特許出願公開第20040131692号を参照されたい)でコーティングする方法を含むがこれらに限定されない。
抗体または抗原結合性断片を、血液脳関門を横切って輸送する、受容体およびチャネルベースの方法は、グルココルチコイド遮断剤を使用して、血液脳関門の透過性を増大させる方法(例えば、米国特許出願公開第2002/0065259号、同第2003/0162695号、および同第2005/0124533号を参照されたい);カリウムチャネルを活性化させる方法(例えば、米国特許出願公開第2005/0089473号を参照されたい)、ABC薬物輸送体を阻害する方法(例えば、米国特許出願公開第2003/0073713号を参照されたい);抗体をトランスフェリンでコーティングし、1つまたは複数のトランスフェリン受容体の活性をモジュレートする方法(例えば、米国特許出願公開第2003/0129186号を参照されたい)、および抗体をカチオン化する方法(例えば、米国特許第5,004,697号を参照されたい)を含むがこれらに限定されない。
本発明の抗体組成物は、「医薬品の製造および品質管理に関する基準(good medical practice)」に準拠する方式で、製剤化、投薬および投与される。この文脈で検討される因子は、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与法、投与のスケジュール指定、および医療従事者に公知の他の因子を含む。抗体は、問題の障害を防止または処置するのに現在使用されている、1つまたは複数の薬剤と共に製剤化する必要はないが、任意選択で、これらと共に製剤化される。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する本発明の抗体の量、障害または処置の種類、および上で論じた他の因子に依存する。これらは、一般に、本明細書で記載される通り同じ投与量および投与経路で、または本明細書で記載される投与量の約1〜99%で、または経験的/臨床的に適切であると決定される任意の投与量および任意の経路で使用される。
疾患を防止または処置するために、本発明の抗体の適切な投与量(単独で、または、化学療法剤など、他の薬剤と組み合わせて使用する場合)は、処置される疾患の種類、抗体の種類、疾患の重症度および経過、抗体が予防目的で投与されるのか、治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の臨床歴および抗体への応答、ならびに主治医の判断に依存する。抗体は、患者に一度に、または一連の処置にわたり投与するのに適する。疾患の種類および重症度に応じて、抗体約1μg/kg〜15mg/kg(例えば、0.1mg/kg〜10mg/kg)が、例えば、1回または複数回の個別投与によるのであれ、連続注入によるのであれ、患者に投与するための初期の候補投与量でありうる。典型的な毎日の1回分の投与量は、上で言及した因子に応じて、約1μg/kg〜100mg/kgまたはこれを超える範囲でありうる。数日間またはこれを超えて長期にわたる繰返し投与では、状態に応じて、処置は一般に、疾患症状の所望される抑制が生じるまで持続される。1つの例示的な抗体の投与量は、約0.05mg/kg〜約10mg/kgの範囲である。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg、または10mg/kgのうちの1つまたは複数の用量(またはこれらの任意の組み合わせ)を、患者に投与することができる。このような用量は、間欠的に、例えば、毎週または3週間ごとに(例えば、患者が抗体の、約2〜約20用量、または例えば、約6用量を受けるように)投与することができる。初期の高負荷用量に続き、1回または複数回の低用量を投与することができる。例示的な投薬レジメンは、初期負荷用量約4mg/kgに続いて、毎週の維持用量約2mg/kgの抗体を投与することを含む。しかし、他の投与レジメンも、有用でありうる。この治療の進捗状況は、従来の技法およびアッセイにより、容易にモニタリングされる。
製品
本発明の別の態様では、上で記載した障害の処置、防止、および/または診断に有用な材料を含有する製品が提供される。製品は、容器、および容器上における標識もしくはパッケージ添付文書、または容器と関連する標識もしくはパッケージ添付文書を含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成することができる。容器は、それ自体で、または別の組成物と組み合わされると、状態を処置、防止、および/または診断するのに有効な組成物を保持し、滅菌アクセスポートを含みうる(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で穿刺可能な止栓を有するバイアルの場合がある)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本発明の抗体である。標識またはパッケージ添付文書は、組成物が、選択した状態を処置するために使用されることを指し示す。さらに、製品は、(a)組成物がその中に含有された第1の容器であって、組成物が本発明の抗体を含む、容器と;(b)組成物がその中に含有された第2の容器であって、組成物がさらなる細胞傷害性またはこれ以外の治療剤を含む、容器とを含みうる。本発明のこの実施形態における製品は、組成物を使用して、特定の状態を処置しうることを指し示す、パッケージ添付文書もさらに含みうる。代替的に、または加えて、製品は、静菌性注射用水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液など、薬学的に許容される緩衝液を含む第2の(または第3の)容器もさらに含みうる。製品は、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業上のおよび使用者の観点から望ましい他の材料もさらに含む。
医薬組成物および製剤
本明細書で記載される抗体を調製した後で、「凍結乾燥前の製剤(pre−lyophilized formulation)」を作製することができる。製剤を調製するための抗体は、本質的に純粋であることが好ましく、本質的に均質であることが所望される(すなわち、夾雑タンパク質などを含まない)。「本質的に純粋な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づき、少なくとも約90重量%のタンパク質、好ましくは、少なくとも約95重量%を含む組成物を意味する。「本質的に均質な」タンパク質とは、組成物の総重量に基づき、少なくとも約99重量%のタンパク質を含む組成物を意味する。ある特定の実施形態では、タンパク質は、抗体である。
凍結乾燥前の製剤中の抗体の量は、所望の用量容量、投与方式などを考慮に入れて決定する。選択したタンパク質が、無傷抗体(全長抗体)である場合、約2mg/mL〜約50mg/mL、好ましくは、約5mg/mL〜約40mg/mLであり、最も好ましくは、約20〜30mg/mLが、例示的な出発タンパク質濃度である。タンパク質は一般に、溶液中に存在する。例えば、タンパク質は、pH緩衝溶液中に、pH約4〜8で、好ましくは、約5〜7で存在しうる。例示的な緩衝剤は、ヒスチジン、ホスフェート、トリス、シトレート、スクシネート、および他の有機酸を含む。緩衝剤濃度は、例えば、緩衝剤および製剤(例えば、再構成製剤)の所望の等張性に応じて、約1mM〜約20mM、または約3mM〜約15mMでありうる。下記で裏付けられる通り、ヒスチジンは、凍結乾燥保護特性を有しうるので、好ましい緩衝剤は、ヒスチジンである。スクシネートは、別の有用な緩衝剤であることが示された。
凍結乾燥保護剤(lyoprotectant)を、凍結乾燥前の製剤に添加する。好ましい実施形態では、凍結乾燥保護剤は、スクロースまたはトレハロースなどの非還元糖である。凍結乾燥前の製剤中の凍結乾燥保護剤の量は一般に、再構成すると、結果として得られる製剤が等張性となるような量である。しかしまた、高張性の再構成製剤も、適切でありうる。加えて、凍結乾燥保護剤の量は、凍結乾燥時に、許容不可能な量のタンパク質の分解/凝集が生じるほどに少なすぎてはならない。凍結乾燥保護剤が、糖(スクロースまたはトレハロースなど)であり、タンパク質が、抗体である場合、例示的な、凍結乾燥前の製剤中の凍結乾燥保護剤濃度は、約10mM〜約400mM、好ましくは、約30mM〜約300mM、最も好ましくは、約50mM〜約100mMである。
タンパク質と凍結乾燥保護剤との比は、タンパク質と凍結乾燥保護剤との各組み合わせについて選択する。タンパク質濃度が高い等張性の再構成製剤を作り出すための、選択したタンパク質としての抗体、および凍結乾燥保護剤としての糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)の場合、凍結乾燥保護剤と抗体とのモル比は、1モルの抗体に対して約100〜約1500モルの凍結乾燥保護剤、好ましくは、1モルの抗体に対して約200〜約1000モルの凍結乾燥保護剤、例えば、1モルの抗体に対して約200〜約600モルの凍結乾燥保護剤でありうる。
本発明の好ましい実施形態では、凍結乾燥前の製剤に、界面活性剤を添加することが望ましいことが見出されている。代替的に、または加えて、界面活性剤は、凍結乾燥製剤および/または再構成製剤に添加することもできる。例示的な界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20または80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);Triton;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム(sodium laurel sulfate);オクチルグリコシドナトリウム;ラウリルスルホベタイン、ミリスチルスルホベタイン、リノレイルスルホベタイン、またはステアリルスルホベタイン;ラウリルサルコシン、ミリスチルサルコシン、リノレイルサルコシン、またはステアリルサルコシン;リノレイルベタイン、ミリスチルベタイン、またはセチルベタイン;ラウロアミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、リノレアミドプロピルベタイン、ミリストアミドプロピルベタイン、パルミドプロピル(palnidpropyl)ベタイン、またはイソステアラミドプロピルベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピルジメチルアミン、パルミドプロピルジメチルアミン、またはイソステアラミドプロピルジメチルアミン;ココイルメチルタウリンナトリウム(sodium methyl cocoyl taurate)またはオレオイルメチルタウリン二ナトリウム(disodium methyl oleyl−taurate);ならびにMONAQUAT(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.、Paterson、N.J.)、ポリエチレングリコール(polyethyl glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropyl glycol)、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics、PF68など)などの非イオン性界面活性剤を含む。添加される界面活性剤の量は、界面活性剤により、再構成されるタンパク質の凝集を低減し、再構成後における粒子状物質の形成を最小化するような量である。例えば、界面活性剤は、凍結乾燥前の製剤中に、約0.001〜0.5%の量で、好ましくは、約0.005〜0.05%で存在しうる。
本発明のある特定の実施形態では、凍結乾燥保護剤(スクロースまたはトレハロースなど)と、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)との混合物を、凍結乾燥前の製剤の調製物中で使用する。増量剤により、その中に過剰なポケットなどを伴わずに、均一な凍結乾燥ケーキの作製を可能とすることができる。
それらが、製剤の所望の特徴に有害な影響を及ぼさないという条件で、Remington’s Pharmaceutical Sciences、16版、Osol, A.編(1980年)において記載されているものなど、他の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤を、凍結乾燥前の製剤(および/または凍結乾燥製剤および/または再構成製剤)中に含むことができる。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、使用される投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり、さらなる緩衝化剤;防腐剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;EDTAなどのキレート化剤;金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);ポリエステルなどの生体分解性ポリマー;ならびに/またはナトリウムなどの塩形成対イオンを含む。
本明細書で記載される医薬組成物および製剤は、安定的であることが好ましい。「安定的な」製剤/組成物とは、その中の抗体が、保管時に、その物理的および化学的な安定性および完全性を本質的に保持する製剤/組成物である。当技術分野では、タンパク質の安定性を測定するための多様な解析技法が利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery、247〜301頁、Vincent Lee編、Marcel Dekker, Inc.、New York、N.Y.刊(1991年);およびJones, A.、Adv. Drug Delivery Rev.、10巻:29〜90頁(1993年)において総説されている。安定性は、選択された温度で、選択された期間にわたり測定することができる。
in vivoにおける投与のために使用される製剤は、滅菌製剤でなければならない。これは、凍結乾燥および再構成の前に、または凍結乾燥および再構成の後で、滅菌濾過膜を介する濾過によりたやすく達成される。代替的に、混合物全体の無菌性は、タンパク質を除く成分を、例えば、約120℃で約30分間、オートクレーブにかけることにより達成することができる。
タンパク質、凍結乾燥保護剤、および他の任意選択の構成要素を一体に混合した後で、製剤を凍結乾燥させる。Hull50(登録商標)(Hull、USA)フリーズドライヤーまたはGT20(登録商標)(Leybold−Heraeus、Germany)フリーズドライヤーなど、多くの異なるフリーズドライヤーが、この目的で利用可能である。フリーズドライは、製剤を凍結させ、その後、一次乾燥に適する温度で、凍結させた内容物から、氷を昇華させることにより達成する。この条件下で、生成物温度は、製剤の共融点または崩壊温度を下回る。一次乾燥のための保管温度は、約50〜250mTorrの範囲であることが典型的である適切な圧力で、約−30〜25℃の範囲となる(一次乾燥時に、生成物が凍ったままである条件で)ことが典型的である。主に、製剤、サイズ、および試料を保持する容器の種類(例えば、ガラスバイアル)、ならびに液体の容量により、乾燥に要請される時間が指示され、これは、数時間〜数日間(例えば、40〜60時間)の範囲でありうる。二次乾燥段階は、容器の種類およびサイズ、ならびに使用されるタンパク質の種類に主に依存して、約0℃〜40℃で実行することができる。しかし、本明細書では、二次乾燥ステップは、必要でない場合もあることが見出された。例えば、凍結乾燥のうちの全水除去期を通した保管温度は、約15〜30℃(例えば、約20℃)でありうる。二次乾燥に要請される時間および圧力は、例えば、温度および他のパラメータに依存して、適切な凍結乾燥ケーキを生成する時間および圧力である。二次乾燥時間は、生成物中に所望される残りの水分レベルにより指示され、少なくとも約5時間(例えば、10〜15時間)を要することが典型的である。圧力は、一次乾燥ステップ中に使用される圧力と同じでありうる。フリーズドライ条件は、製剤およびバイアルサイズに応じて変化しうる。
場合によって、移出ステップを回避するために、タンパク質製剤は、タンパク質の再構成が実行される容器内で凍結乾燥させることが望ましい場合がある。この場合の容器は、例えば、3、5、10、20、50、または100ccのバイアルでありうる。一般的な提案として、凍結乾燥は、その水分含量が約5%未満、好ましくは、約3%未満である凍結乾燥製剤を結果としてもたらす。
所望の段階において(代表的に、タンパク質を患者に投与するとき)、再構成製剤中のタンパク質濃度が、少なくとも50mg/mL、例えば、約50mg/mL〜約400mg/mL、より好ましくは、約80mg/mL〜約300mg/mL、最も好ましくは、約90mg/mL〜約150mg/mLとなるように、凍結乾燥製剤を、希釈剤で再構成し得る。再構成製剤中のこのような高タンパク質濃度は、再構成製剤の皮下送達を意図する場合に特に有用であると考えられる。しかし、静脈内投与など、他の投与経路では、再構成製剤中のより低濃度のタンパク質が所望でありうる(例えば、再構成製剤中に約5〜50mg/mLまたは約10〜40mg/mLのタンパク質)。ある特定の実施形態では、再構成製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の製剤中の濃度より著明に高濃度である。例えば、再構成製剤中のタンパク質濃度は、凍結乾燥前の製剤の濃度の約2〜40倍(time)、好ましくは、3〜10倍(time)、最も好ましくは、3〜6倍(time)(例えば、少なくとも3倍(fold)または少なくとも4倍(fold))でありうる。
再構成は一般に、完全な湿潤化(hydration)を確実にするように、約25℃の温度で行うが、所望に応じて、他の温度も使用することができる。再構成に要請される時間は、例えば、希釈剤の種類、賦形剤およびタンパク質の量に依存する。例示的な希釈剤は、滅菌水、静菌性注射用水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝食塩水)、滅菌生理食塩溶液、リンゲル液、またはデキストロース溶液を含む。希釈剤は、任意選択で、防腐剤を含有する。例示的な防腐剤については、上で記載しており、ベンジルアルコールまたはフェノールアルコールなど、芳香族アルコールが好ましい防腐剤である。使用される防腐剤の量は、異なる防腐剤濃度を、タンパク質に対する適合性について評価し、防腐剤の有効性試験を行うことにより決定する。例えば、防腐剤が、芳香族アルコール(ベンジルアルコールなど)である場合、防腐剤は、約0.1〜2.0%、好ましくは、約0.5〜1.5%であるが、最も好ましくは、約1.0〜1.2%の量で存在しうる。好ましくは、再構成製剤は、バイアル1つ当たり、6000個未満の粒子を有し、これらは、>10μmのサイズである。
治療適用
本明細書では、このような処置を必要とする対象に、本明細書で記載される1つまたは複数の抗体を含む、治療有効量の組成物を投与するステップを含む治療法について記載する。
ある特定の実施形態では、処置される対象は、哺乳動物である。ある特定の実施形態では、対象は、ヒトである。ある特定の実施形態では、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの家畜化された動物である。ある特定の実施形態では、対象は、イヌまたはネコなどのコンパニオン動物である。ある特定の実施形態では、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの家畜動物である。ある特定の実施形態では、対象は、動物園の動物である。別の実施形態では、対象は、齧歯動物、イヌ、または非ヒト霊長動物などの研究用動物である。ある特定の実施形態では、対象は、トランスジェニックマウスまたはトランスジェニックブタなどの非ヒトトランスジェニック動物である。
一部の実施形態では、処置を必要とする対象(例えば、ヒト患者)は、がんを伴うか、がんを有することが疑われるか、またはがんの危険性があると診断される。がんの例は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頚がん、卵巣がん、および前立腺がんを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、がんは、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、または膵臓がんである。一部の好ましい実施形態では、がんは、脳がんまたは多形性神経膠芽腫(GBM)がんである。
好ましい実施形態では、抗体は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現させるがん細胞をターゲティングすることが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がん細胞上のGlobo HおよびSSEAをターゲティングすることが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がんにおけるSSEAをターゲティングすることが可能である。
したがって、抗体は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する三重ターゲティング抗体である。一部の実施形態では、抗体は、Globo HおよびSSEA−3に対する二重ターゲティング抗体と、抗SSEA−4抗体との混合物である。一部の実施形態では、抗体は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する三重ターゲティング抗体と、抗SSEA−4抗体との混合物である。一部の実施形態では、抗体は、抗Globo H抗体と、抗SSEA−3抗体と、抗SSEA−4抗体との混合物である。一部の実施形態では、抗体は、抗Globo H抗体と、抗SSEA−4抗体との混合物である。一部の実施形態では、抗体は、抗SSEA−4抗体である。
処置は、腫瘍サイズの低減、悪性細胞の消失、転移の防止、再発の防止、播種性がんの軽減もしくは殺滅、生存の延長、および/または腫瘍のがんへの進行までの時間の延長を結果としてもたらす。
一部の実施形態では、処置は、さらなる治療を、前記対象に、抗体の前記投与の前、前記投与の間、または前記投与の後に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、さらなる治療は、化学療法剤による処置である。一部の実施形態では、さらなる治療は、放射線療法である。
本発明の方法は、初期腫瘍を処置および防止し、これにより、より進行した病期への進行を防止し、その結果として、進行がんと関連する罹患率および死亡率の低減をもたらすのに特に有利である。本発明の方法はまた、例えば、原発性腫瘍を除去した後でも遷延する休眠腫瘍である、腫瘍の再発もしくは腫瘍の再成長、または、腫瘍の発生を低減もしくは防止するのにも有利である。
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、例えば、がんが、Globo H、SSEA−3、および/またはSSEA−4の発現の増大により特徴付けられる場合、がんの処置または防止に有用である。一部の実施形態では、がんは、がん幹細胞を含む。一部の実施形態では、がんは、前がん、および/または悪性がん、および/または治療抵抗性がんである。一部の実施形態では、がんは、脳がんである。
本発明の方法では、がんは、例えば、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、肺がん、腎細胞がん、神経膠腫(例えば、退形成性星状細胞腫、退形成性乏突起星状細胞腫(anaplastic oligoastrocytoma)、退形成性希突起神経膠腫、多形性神経膠芽腫(GBM))、腎臓がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、軟組織肉腫、カルチノイド癌、頭頸部がん、黒色腫、および卵巣がんなどの充実性腫瘍でありうる。一実施形態では、がんは、脳がんまたはGBMである。本明細書で開示される方法を実施するために、本明細書で記載される少なくとも1つの抗体を含有する、上で記載した有効量の医薬組成物/製剤を、処置を必要とする対象(例えば、ヒト)に、例えば、ボーラスとして、もしくはある期間にわたる連続注入による静脈内投与、筋内経路、腹腔内経路、脳脊髄内経路、皮下経路、関節内経路、滑液包内経路、髄腔内経路、経口経路、吸入経路、または局所経路などの適切な経路を介して、投与することができる。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む、液体製剤のための市販の噴霧器は、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧することができ、凍結乾燥粉末は、再構成の後で噴霧することができる。代替的に、抗体は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を使用してエアゾール化する、または凍結乾燥および粉砕された粉末として吸入することもできる。
本明細書で記載される方法により処置される対象は、哺乳動物、より好ましくは、ヒトでありうる。哺乳動物は、農場動物、競技動物、ペット、霊長動物、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、およびラットを含むがこれらに限定されない。処置を必要とするヒト対象は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頚がん、卵巣がん、および前立腺がんを含むがこれらに限定されないがんを有するか、これらの危険性があるか、またはこれらを有することが疑われるヒト患者でありうる。がんを有する対象は、日常的な医学的検査により同定することができる。
本明細書で使用される「有効量」とは、単独で、または1つもしくは複数の他の活性剤と組み合わせて、対象に治療効果を付与するのに要請される各活性剤の量を指す。当業者により認識されている通り、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、個々の患者のパラメータであって、医療従事者の知見および専門知識の範囲内にある、年齢、身体の状態、サイズ、性別、および体重、処置の持続期間、併用療法(存在する場合)の性格、具体的な投与経路などの因子を含むパラメータに応じて変化する。これらの因子は、当業者に周知であり、日常的な実験だけで対処することができる。個々の構成要素またはそれらの組み合わせの最大用量、すなわち、確かな医学的判断に従う、最も高い安全用量を使用することが一般に好ましい。しかし、当業者は、患者が、医学的理由、心理的理由、または事実上他の任意の理由で、より低い用量または耐容可能な用量を主張することを理解する。
半減期など、経験的な検討項目は一般に、投与量の決定に寄与する。例えば、ヒト化抗体または完全ヒト抗体など、ヒト免疫系に適合性の抗体を使用し、抗体の半減期を延長し、抗体が宿主の免疫系に攻撃されることを防止することができる。投与頻度は、治療の経過にわたり決定および調整することができ、一般に、がんの処置、および/または抑制、および/または回復、および/または遅延に基づくが必ずしもそうではない。代替的に、本明細書で記載される抗体の持続的連続放出製剤は、適切でありうる。当技術分野では、持続放出を達成するための、多様な製剤およびデバイスが公知である。
一例では、本明細書で記載される抗体の投与量は、抗体の1回または複数回の投与を施された個体において、経験的に決定することができる。個体には、抗体の投与量を漸増させて施す。抗体の有効性を評価するために、日常的な実施に従い、疾患(例えば、がん)の指標を追跡することができる。
一般に、本明細書で記載される抗体のうちのいずれかを投与するための、初期候補投与量は、約2mg/kgでありうる。本開示の目的で、典型的な毎日の投与量は、上で言及した因子に応じて、約0.1μg/kg〜3μg/kg〜30μg/kg〜300μg/kg〜3mg/kg〜30mg/kg〜100mg/kgまたはこれ超のうちのいずれかの範囲でありうる。数日間またはこれを超えて長期にわたる繰返し投与では、状態に応じて、症状の所望の抑制が生じるまで、またはがんもしくはその症状を緩和するのに十分な治療レベルが達成されるまで、処置を持続する。例示的な投薬レジメンは、約2mg/kgの初期用量、それに続く約1mg/kgの抗体の毎週の維持用量、またはそれに続く隔週の約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかし、他の投与レジメンも、実施者が達成したいと望む薬物動態的減衰のパターンに応じて有用でありうる。例えば、1週間に1〜4回の投薬が想定される。一部の実施形態では、約3μg/mg〜約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kg、および約2mg/kgなど)の範囲の投薬を使用することができる。一部の実施形態では、投薬頻度は、毎週1回、2週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごと、もしくは10週間ごと;または毎月1回、2カ月ごと、もしくは3カ月ごと、またはこれより長い間隔である。この治療の進捗状況は、従来の技法およびアッセイにより、容易にモニタリングされる。投薬レジメン(使用される抗体を含む)は、時間をわたり変化しうる。
本開示の目的で、本明細書で記載される抗体の適切な投与量は、使用される特異的抗体(またはその組成物)、がんの種類および重症度、抗体が予防目的で投与されるのか、治療目的で投与されるのか、以前の治療、患者の臨床歴および抗体への応答、ならびに主治医の判断に依存する。本明細書で記載される抗体の投与は、あらかじめ選択された期間にわたり本質的に持続的な場合もあり、例えば、がんの発症の前に、発症時に、または発症の後における、間隔を置いた一連の用量の場合もある。
本明細書で使用される「処置すること」という用語は、1つまたは複数の活性剤を含む組成物の、がん、がんの症状、またはがんに対する素因を有する対象への、がん、がんの症状、またはがんに対する素因を治癒させるか、治すか、緩和するか、軽減するか、変化させるか、修復するか、回復するか、改善するか、またはこれに影響を及ぼすことを目的とする適用または投与を指す。
がんを緩和することは、がんの発症もしくは進行を遅延させること、またはがんの重症度を軽減することを含む。がんを緩和することは必ずしも、治癒結果を必要としない。本明細書で使用される、がんの発症を「遅延させること」とは、がんの進行を延期し、妨害し、遅らせ、妨げ、安定化させ、かつ/または先送りすることを意味する。この遅延は、処置されるがんおよび/または個体の履歴に応じて、時間の長さが変化するものである場合がある。がんの発症を「遅延させる」かもしくは緩和するか、またはがんの発病(onset)を遅延させる方法とは、方法を使用しない場合と比較して、所与の時間枠内における、がんの1つまたは複数の症状の発症の可能性(危険性)を低減し、かつ/または所与の時間枠内における、症状の程度を軽減する方法である。このような比較は、統計学的に有意な結果をもたらすのに十分な多数の対象を使用する臨床研究に基づくことが典型的である。
がんの「発症」または「進行」とは、がんの初期症状発現および/またはその後の進行を意味する。がんの発症は、検出可能な場合があり、当技術分野で周知の、標準的な臨床的技法を使用して評価することができる。しかし、発症とはまた、検出不能でありうる進行も指す。本開示の目的で、発症または進行とは、症状の生物学的経過を指す。「発症」は、発生、再発、および発病を含む。本明細書で使用される、がんの「発病」または「発生」は、初期発病および/または再発を含む。
医薬の技術分野における当業者に公知である、従来の方法を使用して、処置される疾患の種類または疾患の部位に応じて、医薬組成物を対象に投与することができる。この組成物はまた、他の従来の経路を介して投与することもでき、例えば、経口、非経口、吸入スプレーにより、局所、直腸、鼻、口腔、膣、または植込み式レザバーを介して投与することもできる。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病変内、および頭蓋内の注射技法または注入技法を含む。加えて、医薬組成物は、対象に、1カ月、3カ月、もしくは6カ月のデポ注射用の材料および方法、または生体分解性の材料および方法などを使用する、注射用デポ投与経路を介して投与することもできる。
注射用組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、エタノール、およびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)など、多様な担体を含有しうる。静脈内注射のためには、水溶性抗体を、点滴法により投与することができ、これにより、抗体と生理学的に許容される賦形剤とを含有する医薬製剤を注入する。生理学的に許容される賦形剤は、例えば、5%のデキストロース、0.9%の食塩水、リンゲル液、または他の適切な賦形剤を含みうる。筋内調製物、例えば、抗体の適切な可溶性塩形態の滅菌製剤は、注射用水、0.9%の食塩水、または5%のグルコース溶液などの医薬賦形剤中に溶解され、投与され得る。
診断適用
本明細書では、対象におけるがんを診断するための方法であって、(a)GM3、GM2、GM1、GD1、GD1a、GD3、GD2、GT1b、A2B5、LeX、sLeX、LeY、SSEA−3、SSEA−4、Globo H、TF、Tn、sTn、CD44、CD24、CD45、CD90、CD133からなるマーカーのパネルの発現を検出する、1つまたは複数のモノクローナル抗体を含む組成物を、対象から得られた細胞試料または組織試料に適用するステップと;(b)モノクローナル抗体の、細胞試料または組織試料への結合についてアッセイするステップと;(c)結合を、正常対照と比較して、対象におけるがんの存在を決定するステップとを含む方法が記載される。
検出および診断のためのがんの例は、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、子宮頚がん、卵巣がん、および前立腺がんを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、がんは、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、または膵臓がんである。
一部の実施形態では、マーカーは、GM2、GM1、GD1a、GT1b、A2B5、Tf、Tn、Globo H、SSEA3、SSEA4、CD24、CD44、およびCD90からなる。一部の実施形態では、組成物は、GM2、GM1、GD1a、GT1b、A2B5、Tf、Tn、Globo H、SSEA3、SSEA4、CD24、CD44、およびCD90を検出することが可能な複数のモノクローナル抗体を含む。
一部の実施形態では、抗体は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現させるがん細胞を検出することが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がん細胞上のGlobo HおよびSSEAを検出することが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がんにおけるSSEAを検出することが可能である。一部の実施形態では、がんは、脳がんまたは多形性神経膠芽腫(GBM)がんであり、抗体は、抗SSEA−4モノクローナル抗体である。
Globo H、SSEA−3、および/またはSSEA−4に特異的なモノクローナル抗体を、単独で、または組み合わせで、in vitroおよびin vivoの診断アッセイのために使用して、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現させるがん細胞(例えば、本明細書で指し示される、GBM、ある特定の充実性腫瘍細胞、および造血系がん細胞)を検出することができる。例えば、試料(例えば、血液試料または組織生検材料)を、患者から得、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に対する三重ターゲティング抗体、または抗SSEA−4抗体と組み合わせたGlobo H/SSEA−3二重ターゲティング抗体と接触させ、患者試料中の、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現させるがん細胞の存在を、抗体の結合を検出することにより決定することができる。抗体の結合は、直接(例えば、抗体自体を標識する場合)、または、二次抗体など、第2の検出剤を使用することにより検出することができる。検出可能な標識は、本発明の抗体と、直接的に、または、例えば、キレート剤もしくはリンカーを介して、間接的に会合させることができる。
一部の実施形態では、Globo H、SSEA−3、および/またはSSEA−4に特異的なモノクローナル抗体を、がんを有するか、またはがんを有することが疑われる個体に由来する生物学的試料と接触させ、試料中の細胞に結合する抗体を決定し、このとき、抗体の結合が通常より高度または低度であれば、個体ががんを有することが指し示される。一部の実施形態では、生物学的試料は、血液試料または血液画分(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球、白血球)である。一部の実施形態では、生物学的試料は、例えば、公知の腫瘍の境界を決定するように、組織試料(生検材料)、例えば、疑わしい腫瘍部位、または罹患していることが公知の組織に由来する。一部の実施形態では、生物学的試料は、炎症部位から得られる。
生検は、組織、すなわち、非流体細胞型から試料を得るように実施することが典型的である。適用される生検技法は、評価される組織型(例えば、乳房、皮膚、結腸、前立腺、腎、肺、膀胱、リンパ節、肝、骨髄、気道、または肺)に依存する。がんの場合、技法はまた、他の因子の中で、腫瘍のサイズおよび種類(例えば、固体、懸濁物、または血液)にも依存する。生検技法は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine、Kasperら編、16版、2005年、70章、および第V部の全体において論じられている。
試料中の細胞に結合する抗体を検出する任意の方法を、本診断アッセイのために使用することができる。当技術分野では、例えば、フローサイトメトリー、蛍光顕微鏡法、ELISAなど、抗体の結合を検出する方法が周知である。一部の実施形態では、方法は、決定するステップの前に、生物学的試料を、検出のために調製するステップを含む。例えば、細胞の亜集団(例えば、白血球)を、個体に由来する試料の残余(例えば、他の血液構成要素)から分離することもでき、より容易な検出のために、組織中の細胞を懸濁させることもできる。
一部の実施形態では、試料中の、Globo H/SSEA−3/SSEA−4を発現させる細胞の百分率を決定し、対照、例えば、がんを有することが公知の個体もしくは個体群に由来する試料(陽性対照)、またはがんを有さないことが公知の個体もしくは個体群に由来する試料(正常対照、非疾患対照、または陰性対照)と比較する。一部の実施形態では、対照は、所与の組織について確立される、Globo H/SSEA−3/SSEA−4発現の標準的な範囲である。Globo H/SSEA−3/SSEA−4を発現させる細胞の百分率が正常より高いかもしくは低いこと、または発現レベルが高いかももしくは低いことから、個体ががんを有することが指し示される。
一実施形態では、血液試料または組織試料など、生物学的試料中のGlobo H、SSEA−3、およびSSEA−4を検出するキットが提供される。例えば、対象におけるがんの診断を確認するために、生検を実施して、組織学的検査のための組織試料を得ることができる。代替的に、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4の存在を検出するのに、血液試料を得ることもできる。ポリペプチドを検出するためのキットは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に特異的に結合する、例えば、本明細書で開示される抗体のうちのいずれかの、1つまたは複数の抗体を含むことが典型的である。さらなる実施形態では、抗体を標識する(例えば、蛍光標識、放射性標識、または酵素標識により)。
一実施形態では、キットは、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に特異的に結合する、1つまたは複数の抗体の使用手段を開示する指示材料を含む。指示材料は、電子形態(コンピュータ用ディスケットまたはコンパクトディスクなど)で書かれ得るか、または視覚的(ビデオファイルなど)であり得る。キットはまた、キットがデザインされる特定の適用を容易とするさらなる構成要素も含みうる。したがって、例えば、キットは加えて、標識を検出する手段(酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するフィルターセット、二次抗体などの適切な二次標識など)も含有しうる。キットは加えて、緩衝剤、および特定の方法を実施するために日常的に使用される他の試薬も含みうる。当業者には、このようなキットおよび適切な内容物が周知である。
当技術分野では、細胞表面マーカーの存在または非存在を決定する方法が周知である。例えば、抗体は、酵素、磁気ビーズ、コロイド状の磁気ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、または薬物を含むがこれらに限定されない、他の化合物にコンジュゲートさせることができる。抗体はまた、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、または免疫組織化学アッセイなどであるがこれらに限定されないイムノアッセイにおいても活用することができる。抗体はまた、蛍光活性化細胞分取(FACS)のためにも使用することができる。FACSでは、他のより精緻なレベルの検出の中では、複数の有色チャネル、小角および鈍角の光散乱検出チャネル、ならびにインピーダンスチャネルを使用して、細胞を分離または分取する(米国特許第5,061,620号を参照されたい)。これらのアッセイでは、本明細書で開示される、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4に結合するモノクローナル抗体のうちのいずれかを、使用することができる。したがって、抗体は、限定せずに述べると、ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学、ウェスタンブロット、または免疫沈降を含む、従来のイムノアッセイにおいて使用することができる。
腫瘍を病期分類し、かつ/またはその予後を決定するための方法
本開示の別の態様は、ヒト患者における腫瘍を病期分類し、かつ/またはその予後を決定するための方法であって、(a)SSEA−3、SSEA−4、およびGlobo Hからなるマーカーの発現を検出する、1つまたは複数の抗体を含む組成物を、患者から得られた細胞試料または組織試料に適用するステップと;(b)モノクローナル抗体の、細胞試料または組織試料への結合についてアッセイするステップと;(c)被験試料中のマーカーの発現レベルを、基準試料中のレベルと比較するステップと;(d)患者における腫瘍の病期および/または予後を、ステップ(c)で同定された転帰に基づき決定するステップとを含む方法を特徴とする。
一部の実施形態では、がんは、脳がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、結腸がん、または膵臓がんである。一部の好ましい実施形態では、がんは、脳がんまたはGBMである。
一部の実施形態では、抗体は、Globo H、SSEA−3、およびSSEA−4を発現させるがん細胞を検出することが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がん細胞上のGlobo HおよびSSEAを検出することが可能である。一部の実施形態では、抗体は、がんにおけるSSEAを検出することが可能である。一部の実施形態では、がんは、脳がんまたは多形性神経膠芽腫(GBM)がんであり、抗体は、抗SSEA−4モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、がんが、脳がんまたはGBMである場合、抗体は、抗SSEA−4である。
一部の実施形態では、提供されたグリカンコンジュゲート、免疫原性組成物は、聴神経腫瘍、腺癌、副腎がん、肛門がん、血管肉腫(angiosarcoma)(例えば、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma))、虫垂がん、良性単クローン性高ガンマグロブリン血症、胆道がん(biliary cancer)(例えば、胆管癌)、膀胱がん、乳がん(例えば、乳房の腺癌、乳房の乳頭癌、乳腺がん(mammary cancer)、乳房の髄様癌)、脳がん(例えば、髄膜腫;神経膠腫、例えば、星状細胞腫、希突起神経膠腫;髄芽腫)、気管支がん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん(例えば、子宮頸部腺癌)、絨毛癌、脊索腫、頭蓋咽頭腫、結腸直腸がん(例えば、結腸がん、直腸がん、結腸直腸腺癌)、上皮癌、上衣腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)(例えば、カポジ肉腫、多発性特発性出血性肉腫(multiple idiopathic hemorrhagic sarcoma))、子宮内膜がん(例えば、子宮がん、子宮肉腫)、食道がん(例えば、食道の腺癌、バレット腺癌(Barrett’s adenocarinoma))、ユーイング肉腫、眼がん(例えば、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫)、家族性過好酸球増加症、胆嚢がん、胃がん(例えば、胃腺癌)、消化管間質腫瘍(GIST)、頭頸部がん(例えば、頭頸部扁平上皮癌、口腔がん(例えば、口腔扁平上皮癌(OSCC)、咽頭(throat)がん(例えば、喉頭がん、咽頭(pharyngeal)がん、上咽頭がん、中咽頭がん))、造血性がん(例えば、白血病、例えば、急性リンパ性白血病(ALL)(例えば、B細胞ALL、T細胞ALL)、急性骨髄性白血病(AML)(例えば、B細胞AML、T細胞AML)、慢性骨髄性白血病(CML)(例えば、B細胞CML、T細胞CML)、および慢性リンパ性白血病(CLL)(例えば、B細胞CLL、T細胞CLL);リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫(HL)(例えば、B細胞HL、T細胞HL)および非ホジキンリンパ腫(NHL)(例えば、B細胞NHL、例えば、びまん性大細胞型リンパ腫(DLCL)(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL))、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯B細胞リンパ腫(例えば、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫(nodal marginal zone B−cell lymphoma)、脾臓辺縁帯B細胞リンパ腫(splenic marginal zone B−cell lymphoma))、縦隔原発B細胞性大細胞型リンパ腫(primary mediastinal B−cell lymphoma)、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(すなわち、「ワルデンシュトレームマクログロブリン血症」)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫および原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫;ならびにT細胞NHL、例えば、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫(precursor T−lymphoblastic lymphoma)/白血病、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)(例えば、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)(例えば、菌状息肉症(mycosis fungiodes)、セザリー症候群)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫(extranodal natural killer T−cell lymphoma)、腸症型T細胞リンパ腫(enteropathy type T−cell lymphoma)、皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫);上記1つまたは複数の白血病/リンパ腫の混合;ならびに多発性骨髄腫(MM))、重鎖病(例えば、アルファ鎖病、ガンマ鎖病、ミュー鎖病)、血管芽細胞腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(inflammatory myofibroblastic tumor)、免疫球性アミロイドーシス(immunocytic amyloidosis)、腎臓がん(例えば、ウィルムス腫瘍としても知られる腎芽腫、腎細胞癌)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、悪性へパトーマ)、肺がん(例えば、気管支原性癌、小細胞肺がん(SCLC)、非小細胞肺がん(NSCLC)、肺の腺癌)、平滑筋肉腫(LMS)、肥満細胞症(例えば、全身性肥満細胞症)、骨髄異形成症候群(MDS)、中皮腫、骨髄増殖性障害(MPD)(例えば、真性赤血球増加症(PV)、本態性血小板増加症(ET)、骨髄線維症(MF)としても知られる原発性骨髄線維症(AMM)、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性好中球性白血病(CNL)、好酸球増加症候群(HES))、神経芽細胞腫、神経線維腫(例えば、神経線維腫症(NF)1型または2型、神経鞘腫症)、神経内分泌がん(例えば、胃腸膵神経内分泌腫瘍(gastroenteropancreatic neuroendoctrine tumor)(GEP−NET)、カルチノイド腫瘍)、骨肉腫、卵巣がん(例えば、嚢胞腺癌、卵巣胎児性癌、卵巣腺癌)、乳頭腺癌、膵臓がん(例えば、膵臓腺癌(pancreatic andenocarcinoma)、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、島細胞腫瘍)、陰茎がん(例えば、陰茎および陰嚢のパジェット病)、松果体腫、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNT)、前立腺がん(例えば、前立腺腺癌)、直腸がん、横紋筋肉腫、唾液腺がん、皮膚がん(例えば、扁平上皮癌(SCC)、角化棘細胞腫(KA)、黒色腫、基底細胞癌(BCC))、小腸がん(例えば、虫垂がん)、軟組織肉腫(例えば、悪性線維性組織球腫(MFH)、脂肪肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)、軟骨肉腫、線維肉腫、粘液肉腫)、皮脂腺癌、汗腺癌、滑膜腫、精巣がん(例えば、セミノーマ、精巣胎児性癌)、甲状腺がん(例えば、甲状腺の乳頭癌、甲状腺乳頭癌(PTC)、甲状腺髄様がん)、尿道がん、膣がんおよび外陰部がん(例えば、外陰部のパジェット病)を含むがこれらに限定されないがんを処置または診断するのに有用である。ある特定の実施形態では、提供されたグリカンコンジュゲート、免疫原性組成物またはワクチンは、脳がん、肺がん、乳がん、口腔がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、胆管がん、膵臓がん、結腸がん、腎臓がん、骨がん、皮膚がん、子宮頸がん、卵巣がん、および前立腺がんを処置するために有用である。
本明細書で記載される処置方法を実施するために、本明細書で記載されるグリカン組成物のいずれかの有効量が、上記のように、適切な経路を介して処置を必要とする対象に投与されうる。ヒト対象などの対象は、がんを有するか、がんを有することが疑われるか、またはがんに対して感受性の患者でありうる。一部の実施形態では、グリカンコンジュゲートまたは免疫原性組成物の量は、がんの成長の阻害および/または腫瘍量(tumor mass)の低減をもたらす応答を誘発するのに十分である。他の実施形態では、グリカン組成物の量は、標的がんの発病を遅延させるまたはがんを発症する危険性を低減させるのに有効でありうる。有効量を達成するために必要な提供されたグリカン組成物の正確な量は、例えば、対象の種、年齢、および全身状態、副作用または障害の重症度、特定の化合物の正体、投与様式などに依存して、対象ごとに変動する。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日ごと、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに、送達されうる。ある特定の実施形態では、所望の投与量は、複数回の投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれを超える回数の投与)を使用して送達されうる。
ある特定の実施形態では、70kgの成人への1日に1回または複数回の投与のための、提供されたグリカン組成物の有効量は、単位剤形当たり、約0.0001mg〜約3000mg、約0.0001mg〜約2000mg、約0.0001mg〜約1000mg、約0.001mg〜約1000mg、約0.01mg〜約1000mg、約0.1mg〜約1000mg、約1mg〜約1000mg、約1mg〜約100mg、約10mg〜約1000mg、または約100mg〜約1000mgの化合物を含みうる。
ある特定の実施形態では、提供されたグリカン組成物は、所望の治療効果を得るために、1日に1回または複数回で、1日当たり対象の体重1kg当たり約0.001mg〜約100mg、約0.01mg〜約50mg、好ましくは約0.1mg〜約40mg、好ましくは約0.5mg〜約30mg、約0.01mg〜約10mg、約0.1mg〜約10mg、より好ましくは約1mg〜約25mgを送達するのに十分な投与量レベルで、経口または非経口投与されうる。
本明細書で記載される用量範囲は、成体への提供されたグリカンコンジュゲート、免疫原性組成物またはワクチンの投与のためのガイダンスを提供することを理解されたい。例えば、小児または青年に投与すべき量は、医療従事者または当業者によって決定されえ、成体に投与される量よりも低いまたはそれと同じでありうる。
提供されたグリカン組成物は、1つまたは複数のさらなる治療的活性剤と組み合わせて投与されうることもまた理解されたい。提供されたグリカンコンジュゲート、免疫原性組成物またはワクチンは、それらのバイオアベイラビリティを改善する、それらの代謝を低減および/もしくは修飾する、それらの排泄を阻害する、ならびに/または体内でのそれらの分布を修飾するさらなる治療的活性剤と組み合わせて投与されうる。使用される治療は、同じ障害に対する所望の効果を達成しうる、および/または異なる効果を達成しうることもまた理解されたい。
提供されたグリカン組成物は、1つまたは複数のさらなる治療的活性剤と同時発生的に、その前に、またはその後に投与されうる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量でおよび/またはタイムスケジュールで投与される。この組み合わせにおいて活用されるさらなる治療的活性剤は、単一の組成物中で一緒に投与されうる、または異なる組成物中で別々に投与されうることをさらに理解されたい。レジメンにおいて使用する特定の組み合わせは、本発明の化合物と、さらなる治療的活性剤および/または達成すべき所望の治療効果との適合性を考慮に入れる。一般に、組み合わせ中で活用されるさらなる治療的活性剤は、それらが個々に活用されるときのレベルを超えないレベルで活用されると予測される。一部の実施形態では、組み合わせ中で活用されるレベルは、個々に活用されるレベルよりも低い。
ある特定の実施形態では、提供されたグリカン組成物は、本明細書で記載される1つまたは複数のさらなる医薬品剤(pharmaceutical agent)と組み合わせて投与される。ある特定の実施形態では、さらなる医薬品剤は、抗がん剤である。抗がん剤は、生物療法的抗がん剤(biotherapeutic anti−cancer agent)ならびに化学療法剤を包含する。
例示的な生物療法的抗がん剤は、インターフェロン、サイトカイン(例えば、腫瘍壊死因子、インターフェロンα、インターフェロンγ)、ワクチン、造血成長因子、モノクローナル血清療法、免疫賦活薬および/または免疫調節剤(例えば、IL−1、2、4、6、または12)、免疫細胞増殖因子(例えば、GM−CSF)および抗体(例えば、HERCEPTIN(トラスツズマブ)、T−DM1、AVASTIN(ベバシズマブ)、ERBITUX(セツキシマブ)、VECTIBIX(パニツムマブ)、RITUXAN(リツキシマブ)、BEXXAR(トシツモマブ))を含むがこれらに限定されない。
例示的な化学療法剤は、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、およびメゲストロール)、LHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン(goscrclin)およびロイプロリド)、抗アンドロゲン薬(例えば、フルタミドおよびビカルタミド)、光線力学的治療(例えば、ベルテポルフィン(vertoporfin)(BPD−MA)、フタロシアニン、光感受性物質Pc4、およびデメトキシ−ヒポクレリンA(demethoxy−hypocrellin A)(2BA−2−DMHA))、窒素マスタード(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、トロホスファミド、クロランブシル、エストラムスチン、およびメルファラン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン(BCNU)およびロムスチン(CCNU))、アルキルスルホネート(例えば、ブスルファンおよびトレオスルファン)、トリアゼン(例えば、ダカルバジン、テモゾロミド)、白金含有化合物(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、タキソイド(例えば、パクリタキセルまたはパクリタキセル等価物、例えば、ナノ粒子アルブミン結合型パクリタキセル(Abraxane)、ドコサヘキサエン酸結合型パクリタキセル(DHA−パクリタキセル、Taxoprexin)、ポリグルタミン酸結合型パクリタキセル(PG−パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、CT−2103、XYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)ANG1005(3分子のパクリタキセルに結合したAngiopep−2)、パクリタキセル−EC−1(erbB2認識ペプチドEC−1に結合したパクリタキセル)、およびグルコース−コンジュゲート化パクリタキセル、例えば、2’−パクリタキセルメチル2−グルコピラノシルスクシネート(2’−paclitaxel methyl 2−glucopyranosyl succinate);ドセタキセル、タキソール)、エピポドフィリン(epipodophyllin)(例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、テニポシド、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン(camptoirinotecan)、イリノテカン、クリスナトール(crisnatol)、マイトマイシンC(mytomycin C))、代謝拮抗剤、DHFR阻害剤(例えば、メトトレキセート、ジクロロメトトレキセート、トリメトレキセート、エダトレキセート)、IMPデヒドロゲナーゼ阻害剤(例えば、ミコフェノール酸、チアゾフリン、リバビリン、およびEICAR)、リボヌクレオチド(ribonuclotide)レダクターゼ阻害剤(例えば、ヒドロキシウレアおよびデフェロキサミン)、ウラシル類似体(例えば、5−フルオロウラシル(5−FU)、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラルチトレキセド(ratitrexed)、テガフール−ウラシル、カペシタビン)、シトシン類似体(例えば、シタラビン(araC)、シトシンアラビノシド、およびフルダラビン)、プリン類似体(例えば、メルカプトプリンおよびチオグアニン)、ビタミンD3類似体(例えば、EB 1089、CB 1093、およびKH 1060)、イソプレニル化阻害剤(例えば、ロバスタチン)、ドーパミン作動性神経毒(例えば、1−メチル−4−フェニルピリジニウムイオン)、細胞周期阻害剤(例えば、スタウロスポリン)、アクチノマイシン(例えば、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン)、ブレオマイシン(例えば、ブレオマイシンA2、ブレオマイシンB2、ペプロマイシン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ペグ化リポソームドキソルビシン、イダルビシン、エピルビシン、ピラルビシン、ゾルビシン、ミトキサントロン)、MDR阻害剤(例えば、ベラパミル)、Ca2+ ATPase阻害剤(例えば、タプシガルジン)、イマチニブ、サリドマイド、レナリドミド、チロシンキナーセ阻害剤(例えば、アキシチニブ(AG013736)、ボスチニブ(SKI−606)、セジラニブ(RECENTIN(商標)、AZD2171)、ダサチニブ(SPRYCEL(登録商標)、BMS−354825)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、イマチニブ(Gleevec(登録商標)、CGP57148B、STI−571)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、TYVERB(登録商標))、レスタウルチニブ(CEP−701)、ネラチニブ(HKI−272)、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、セマキサニブ(semaxanib)(セマキシニブ、SU5416)、スニチニブ(SUTENT(登録商標)、SU11248)、トセラニブ(toceranib)(PALLADIA(登録商標))、バンデタニブ(ZACTIMA(登録商標)、ZD6474)、バタラニブ(PTK787、PTK/ZK)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ニロチニブ(TASIGNA(登録商標))、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標))、エベロリムス(AFINITOR(登録商標))、アレムツズマブ(CAMPATH(登録商標))、ゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標))、テムシロリムス(TORISEL(登録商標))、ENMD−2076、PCI−32765、AC220、乳酸ドビチニブ(dovitinib lactate)(TKI258、CHIR−258)、BIBW 2992(TOVOK(商標))、SGX523、PF−04217903、PF−02341066、PF−299804、BMS−777607、ABT−869、MP470、BIBF 1120(VARGATEF(登録商標))、AP24534、JNJ−26483327、MGCD265、DCC−2036、BMS−690154、CEP−11981、チボザニブ(AV−951)、OSI−930、MM−121、XL−184、XL−647、および/またはXL228)、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(VELCADE))、mTOR阻害剤(例えば、ラパマイシン、テムシロリムス(CCI−779)、エベロリムス(RAD−001)、リダフォロリムス、AP23573(Ariad)、AZD8055(AstraZeneca)、BEZ235(Novartis)、BGT226(Norvartis)、XL765(Sanofi Aventis)、PF−4691502(Pfizer)、GDC0980(Genetech)、SF1126(Semafoe)およびOSI−027(OSI))、オブリメルセン、ゲムシタビン、カルミノマイシン、ロイコボリン、ペメトレキセド、シクロホスファミド、ダカルバジン、プロカルバジン(procarbizine)、プレドニゾロン、デキサメタゾン、カンパテシン(campathecin)、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、アミノプテリン、メトプテリン(methopterin)、ポルフィロマイシン、メルファラン、ロイロシジン(leurosidine)、ロイロシン(leurosine)、クロランブシル、トラベクテジン、プロカルバジン、ディスコデルモリド、カルミノマイシン、アミノプテリン、およびヘキサメチルメラミンを含むがこれらに限定されない。
そうでないと定義されない限りにおいて、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で記載される方法および材料と類似または同等な任意の方法および材料が、本発明の実施および検査において使用されうるが、好ましい方法および材料が本明細書に記載される。本明細書中で具体的に言及される全ての刊行物および特許は、本発明に関連して使用されうる刊行物中で報告されている化学物質、細胞系、ベクター、動物、機器、統計解析および方法論を記載および開示することを含む全ての目的のために、参照により組み込まれる。本明細書中で引用される全ての参考文献は、当該分野の技量レベルを示すものと解釈すべきである。先行発明を理由として、本発明がそのような開示に先行する資格がないことの承認として解釈すべきものは、本明細書中には存在しない。
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を裏付けるために含まれる。以下の実施例に開示される技法は、本発明者らが発見した技法が、本発明の実施において良好に機能することを示し、したがって、その実施のための好ましい様式を構成すると解釈されうることを、当業者は理解すべきである。しかし、本開示の観点から、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、開示された特定の実施形態において多くの変化がなされ、類似または同様の結果がなおも得られうることを理解すべきである。
(実施例1)
最適化された普遍的Fcグリカンの例示的な構造
治療用抗体のために最適化された普遍的Fcグリカンのグリカン構造は、Sia2(α2−6)Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2(図1)である。
図1.治療用抗体の最適化された普遍的Fcグリカンの構造。
(実施例2)
Fc領域に最適化された普遍的グリカンを有する均質な抗体の調製のための例示的な一般的手順。
本開示は、Fc領域に最適化された普遍的グリカンを有する均質な抗体の集団を作製するための、例示的な改善された方法であって、(a)モノクローナル抗体を、α−フコシダーゼおよび少なくとも1種のエンドグリコシダーゼと接触させ、これにより、単一のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を有する脱フコシル化抗体を得るステップと、(b)普遍的グリカンを抗体のFc領域のGlcNAcに付加して、図1に示される最適化されたグリカン形態を有する均質な抗体を形成するステップとを含む方法を提供する(図2)。
図2.その治療活性の改善のためにFc領域に最適化された普遍的グリカンを有する均質な抗体の調製のための一般的戦略を参照のこと。
エンドグリコシダーゼを使用して、N−グリカン中のオリゴ糖の可変部分をトリミングする。本明細書で使用するエンドグリコシダーゼの例は、EndoA、EndoF、EndoF1、EndoF2、EndoH、EndoM、EndoS、およびそれらの改変体を含むがこれらに限定されない。
(実施例3)
モノクローナル抗体媒介性の抗ウイルス性治療剤を増強するための、Fc領域に普遍的グリカンを有する均質な抗体の調製。
そのADCC効果を増大させるためにFc領域に普遍的グリカンを有する均質な抗インフルエンザウイルス抗体の調製のための例示的な方法。
赤血球凝集素(HA)の保存されたストーク(stalk)領域をターゲティングする広く中和性のモノクローナル抗体は、その機能を誘発するように、抗体FcとFc受容体との相互作用によって促進されうる。本明細書で開示される一般的な戦略および方法を使用することによって、最適化された普遍的グリカンを有する均質な抗体の調製のために、抗インフルエンザウイルス抗体FI6を、その裏付けられたADCC効果に基づいて選択し、(HA)のストーク領域をターゲティングする他の抗インフルエンザウイルス抗体F10を選択した。簡潔に述べると、FI6抗体およびF10抗体を、文献に報告された方法(ref)によって調製した。自家製の不均一なモノクローナル抗体FI6またはF10を、出発物質として使用し、エンドグリコシダーゼendo Sで修飾して、GlcNAc−Fucの二糖mAbとGlcNAcの単糖mAbとの混合物を得た。その後、均質な単糖mAbを、フコシダーゼの適用によって得たか;または単糖種を、Endo Sとフコシダーゼとの組み合わせをワンステップで用いて得た。
リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.0、0.125mL)中のFI6/F10(0.25mg)を、Endo S(12.5μg)およびBfFucH(0.25mg)と共に、37℃で22時間インキュベートした。LC−MS解析およびSDS−PAGE解析は、重鎖上のN−グリカンの完全な切断を示した。反応混合物を、リン酸ナトリウム緩衝液(20mM、pH7.0)であらかじめ平衡化したプロテインA−アガロース樹脂(0.1mL)のカラム上でのアフィニティークロマトグラフィーに供した。カラムを、リン酸ナトリウム緩衝液(20mM、pH7.0、1.0mL)で洗浄した。結合したIgGを、グリシン−HCl(50mM、pH3.0、1.0mL)で放出させ、溶出画分を、トリス−Cl緩衝液(1.0M、pH8.3)で即座に中和した。Fc断片を含有する画分を合わせ、遠心濾過(Amicon Ultra遠心分離フィルター、Millipore、Billerica、MA)によって濃縮して、均質なモノ−GlcNAc抗体(0.193mg)を得た。産物をトリプシン処理し、糖ペプチドであるTKPREEQYNSTYRおよびEEQYNSTYRを、ナノスプレーLC/MSを使用して解析して、グリカン操作FI6/F10のグリコシル化パターンを確認した。
鶏卵卵黄からのシアリルグリカン(SCT)の単離は、一部の修飾を伴う、公開された方法に従った。簡潔に述べると、鶏卵卵黄のエタノール抽出を遠心分離し、濾過し、endo Mで処理し、反応が完了した後で、SCTを、ゲル濾過およびイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、精製されたSCTを凍結乾燥させて、純粋なSCT産物を白色粉末として得た(82%)。
水(60.0μL)中SCT(Sia2Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc)(3.0mg)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)(6.3mg)およびEt3N(9.0μL)の溶液を、4℃で1時間撹拌した。反応混合物を、0.05%の水性Et3Nによって溶出させるSephadex G−25カラム上でのゲル濾過クロマトグラフィーに供した。産物(SCTオキサゾリン)を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させて、白色粉末(2.6mg、収率87.4%)を得た。
SCTオキサゾリンを、50mMのトリス緩衝液(pH7.8)中のグリコシンターゼ(glycosynthase)とモノ−GlcNAc Fi6またはF10との混合物に添加し、室温で1時間インキュベートした。反応混合物を、プロテインAアフィニティーカラムと、その後のアニオン交換カラムcapto Qとによって精製して、所望の産物である最適化された均質な抗インフルエンザウイルス抗体FI6−MまたはF10−Mを回収した。産物をトリプシン処理し、糖ペプチドであるTKPREEQYNSTYRおよびEEQYNSTYRを、ナノスプレーLC/MSを使用して解析して、FI6−MまたはF10−Mのグリコシル化パターンを確認した。
(実施例4)
FI6/F10および糖鎖工学FI6−M/F10−MのADCCアッセイ。抗インフルエンザウイルス抗体の増強されたADCC結果を裏付けた図3を参照のこと。
抗ウイルス性抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の増強は、グリカン修飾を有する抗インフルエンザモノクローナル抗体FI6およびF10を用いて裏付けられる。ヒトHEK293T細胞に、細胞表面上に全長Cal/09 HAを発現するようにプラスミドを一過性にトランスフェクトし、インフルエンザウイルス感染細胞を模倣させた。これらの細胞を、健康なドナーから単離した新たに調製されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)と、1:20または1:50の感染細胞とPBMCとの比で混合した。次いで、グリカン修飾ありおよびグリカン修飾なしの、異なる濃度の抗体FI6およびF10を、混合物中に添加した。5時間後、FI6およびF10誘導性のADCCの結果を、HEK293T細胞溶解(LDH放出)によってモニタリングした。結果は、グリカン修飾を有する抗体FI6およびF10によって誘導されたADCCが、1.5〜3倍増強されることを示している。
(実施例5)
ADCCアッセイのための例示的な方法および材料
(実施例)
抗ステムモノクローナル抗体FI6およびF10
F10抗体発現プラスミドおよびFI6抗体発現プラスミドを、ポリエチレンイミンを使用することによってHEK293F細胞にトランスフェクトし、Freestyle 293発現培地(Invitrogen)中で培養した。7日間のインキュベーション後、上清を遠心分離によって回収し、抗体を、プロテインAビーズ(Roche Diagnostics)によって精製した。抗体を、PBS緩衝液中でのSuperdex 200(GE Healthcare)上でのゲル濾過クロマトグラフィーによってさらに精製した。
(実施例6)
in vitro抗体依存性細胞傷害(ADCC)アッセイ
HEK293T細胞に、pVax−Cal/09赤血球凝集素(HA)発現プラスミドを48時間トランスフェクトした。HA発現HEK293T細胞を、トリプシン処理し、96ウェルU底プレート中に、50ulのDMEM培地(Gibco)中に1ウェル当たり5,000細胞で播種した。
末梢血単核細胞(PBMC)を、健康なボランティアから得た全血のFicoll−Paque分離によって調製し、ADCCアッセイにおいてエフェクター細胞として使用した。簡潔に述べると、全血を、等容量のHBSSで希釈し、Ficoll−Paque plus(GE Healthcare)上に重ね、400gで40分間遠心分離した。PBMC細胞を採取し、HBSSで2回洗浄し、50/1のエフェクター対標的比を使用してHA発現HEK293T細胞と混合した。
PBMCとHA発現HEK293T細胞との混合物を、異なる濃度の抗体FI6およびF10で処理し、37℃で5時間インキュベートした。
5時間のインキュベーション後、ADCCを、cytoTox96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assayキット(Promega)を使用して、放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を測定することによってモニタリングした。
(実施例7)
モノクローナル抗体媒介性の抗がん治療剤を増強するための、Fc領域に普遍的グリカンを有する均質な抗体の調製
代表的例:
市販のRituxan(登録商標)およびHerceptin(登録商標)を、Fc領域に普遍的グリカンを有する均質な抗インフルエンザウイルス抗体の調製のために以前に記載された同じ方法の後、出発物質として使用した。Fc領域に最適化された普遍的グリカンSia2(α2−6)Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc2を有する均質なRituxan(登録商標)およびHerceptin(登録商標)を得ることができる。同じ方法を使用して、本発明者らは、異なるグリカンを有する抗体の活性の比較のために、それらのFc領域に異なるグリカン形態を有する異なる均質なRituxan(登録商標)抗体およびHerceptin(登録商標)抗体もまた調製した。
均質な抗CD20抗体の生物学的特徴
Fc上でのグリコシル化は、ADCC、CDCおよび循環半減期を含む、多様な免疫グロブリンエフェクター媒介性機能に影響しうる。ADCC増強は、治療用抗体薬物の有効性を改善するための重要な戦略である。これは、より低い薬物コストの利益を目的として、有効な薬物投与量を低下させうる。本明細書で記載される均質な抗CD20抗体は、機能的特性によって特徴付けられうる。抗CD20 GAbは、ヒトCD20発現細胞に対するアポトーシスを含む細胞成長阻害活性を有する。一部の実施形態では、抗CD20 GAbは、その親抗体と比較して、より強力な細胞成長阻害活性を呈示する。
(実施例8)
抗CD20糖抗体のADCC活性
本発明に従う均質な抗体のADCC活性は、親抗体のADCC活性と比較して、少なくとも8倍増大した、好ましくは少なくとも15倍、より好ましくは少なくとも35倍増大したADCC活性、好ましくは少なくとも50倍増大したADCC活性、好ましくは少なくとも60倍増大したADCC活性、最も好ましくは少なくとも80倍増大したADCC活性である。
本発明の均質な抗体のADCC溶解活性は、例えば、SKBR5、SKBR3、LoVo、MCF7、OVCAR3および/またはKato IIIなどの標的がん細胞系を使用して、親抗体と比較して測定されうる。
本明細書で記載される多数の抗CD20 GAb、特にGAb101、およびGAb104は、その親抗体であるリツキシマブと比較して、増強されたADCC活性を呈示した。本発明の均質な抗体は、B細胞またはB細胞によって産生される抗体が関与するB細胞媒介性の悪性腫瘍および免疫学的疾患に対する治療剤として、優れた効果を呈示でき、本発明の目的は、治療剤の開発において抗CD20 GAbを使用することである。
(実施例9)
抗CD20糖抗体のCDC活性
本明細書で記載される均質な抗体は、驚くべきことに、CDCに影響を与えることなしに改善されたADCCを提供することが可能である。例示的なCDCアッセイは、実施例に記載されている。例示的な実施形態では、糖抗体のADCCは増大するが、補体依存性細胞傷害(CDC)などの他の免疫グロブリン型エフェクター機能は、類似のままである、または顕著には影響を受けない。
FcγRIIIと抗CD20糖抗体との結合
FcγRIIIAを、HEK−293細胞系中にトランスフェクトして、組換えタンパク質を発現させた。分泌されたFcγRIIIA組換えタンパク質を精製し、次いで、HBS−EP緩衝液中に系列濃度(200nM、100nM、50nM、25nM、および12.5nM)になるように希釈した。抗CD20 GAb 101、102、104、105、106、107、108、109、110および111の各々を、10mg/mlの濃度になるようにHBS−EP緩衝液中に希釈し、次いで、抗ヒトFabドメイン抗体をあらかじめ固定化したCM5チップに捕捉した。FcγRIIIAの系列滴定を、30ml/分の流量で注射し、結合させた。単一サイクルの動態データを、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して1:1結合モデルに当てはめて、平衡定数(Ka/Kd)を測定した。結果を図6Aおよび6Bに示す。
図6Aおよび6Bは、抗CD20 GAbおよびリツキシマブの例示的なFcγRIIIA結合を列挙する。FcγRIIIA結合は、当技術分野で公知のアッセイを使用して測定されうる。例示的なアッセイは、実施例に記載されている。Fc受容体結合は、抗CD20 GAb対リツキシマブの相対比として決定されうる。例示的な実施形態におけるFc受容体結合は、少なくとも1.2倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍もしくは20倍、30倍、40倍、50倍、100倍またはそれ超、増大する。
リツキシマブと比較して、結合データは、抗CD20 GAb、特にGAb101およびGAb104が、標的分子であるCD20に対するより強い結合アフィニティーを呈示することを示した。
合わせると、抗CD20 GAb、特にGAb101、およびGAb104は、リツキシマブと比較して、増強されたADCC活性およびより強いFcγRIIIA結合アフィニティーを呈示した。本発明の均質な抗体は、単独で、または好ましくは、2つもしくはそれ超のそのような抗体を含む組成物中でのいずれかで、そして化学療法などの他の処置と任意選択で組み合わせて、優れた臨床応答を提供しうる。ADCC増強抗CD20糖抗体は、B細胞リンパ腫および他の疾患に対する代替的治療剤を提供しうる。それらの増大したエフェクター機能は、それらがより低い濃度でおよびより低い頻度で投薬され、これにより、抗体毒性および/または抗体寛容の発達の可能性を低減させうることを意味するので、本発明の糖抗体は、現在の投与経路および現在の治療レジメンを改変させるために使用されうる。さらに、それらの改善されたエフェクター機能は、組換え宿主系において産生された対応する抗CD20モノクローナル抗体による処置に対して以前には耐性または難治性であった臨床適応症を処置するための新たな手法をもたらす。
(実施例10)
Bリンパ腫細胞への結合
Rituxan−SCT(GAb101)およびRituxanモノ−GlcNAcの、Ramos細胞、Raji細胞およびSU−DHL−4細胞への結合活性を検討したところ、結果は、これらが共にリツキシマブと類似の結合活性を有することを示した(図7〜9)。
(実施例11)
Bリンパ腫細胞に対するCDC
Rituxan−SCT(GAb101)およびRituxanモノ−GlcNAcの、Ramos細胞、Raji細胞およびSU−DHL−4細胞に対するCDC効果を調べた。Ramos細胞で見られた比較CDCプロファイル(GAb101によって増強され、Riruxan−GlcNAcによって低減される)が、他のBリンパ腫細胞系SU−DHL−4で確認された(図10〜12)。異なる細胞継代を使用して2回目に実施した場合、再現性のある結果が得られた。
(実施例11)
図13.ヒトB細胞の枯渇を参照のこと。
ヒトB細胞の枯渇を、ヒト血液から新たに調製したヒトPBMC細胞を使用して実施した。マイクロプレート上で培養した、RPMI 1640−5%FBS中2×106個の細胞を、異なる濃度の、抗CD20 GAbであるRituxan−SCT、Rituxan−GlcNAcおよびリツキシマブと共に、37℃で4時間、15%自家血漿の非存在下または存在下でインキュベートした。洗浄の後で、細胞を、抗CD2−PEおよび抗CD19−FITCを用いて氷上で5分間染色した。B細胞枯渇を、CD19+CD2−B細胞に基づいてFACSで解析した(図13)。図13.異なる均質な抗体によるヒトB細胞の枯渇を参照のこと。
(実施例12)
Bリンパ腫細胞への結合。
抗体の結合を、CD20+Bリンパ腫細胞系(Ramos、Raji、および)において精査し、フローサイトメトリーで解析した。マイクロプレート上2×105/ウェルの、1%ウシ胎仔血清を含有するPBS中の細胞を、異なる濃度の目的の抗体と共に、氷上で1時間インキュベートする。細胞を洗浄し、PBS緩衝液中に再懸濁し、検出用ヤギ抗hIgG−Fcγ−PEと共に氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、FACSでの解析に供する。
(実施例13)
FcRIIIa発現CHO細胞への結合。
抗体依存性細胞傷害(ADCC)の誘導と相関することが公知の前駆事象である、FcRIIIa受容体(CD16a)への抗体の結合を、高アフィニティーCD16a(158Val)でトランスフェクトしたCHO細胞において精査し、フローサイトメトリーで解析した。マイクロプレート上1×105/ウェルの、1%ウシ胎仔血清を含有するPBS中の細胞を、異なる濃度の目的の抗体と共に、氷上で1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、PBS緩衝液中に再懸濁し、検出用ヤギ抗hIgG−Fcγ−PEと共に氷上で30分間インキュベートする。細胞を洗浄し、FACSでの解析に供する。
Bリンパ腫細胞に対する補体依存性細胞傷害(CDC)。抗体によって誘導されるCDC効果を、CD20+Bリンパ腫細胞系(RamosおよびSKW6.4)において精査し、フローサイトメトリーで解析した。マイクロプレート上2.0×105/ウェルの、RPMI 1640培養培地中の細胞を、異なる濃度の目的の抗体と共に、氷上で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、RPMI 1640中10%のヒト血清と共に37℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、PI試薬を用いて暗中で5分間インキュベートした。CDCによる細胞死を、FACSで解析した。
Bリンパ腫細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)。糖抗体によって誘導されるADCC効果を、新たに調製されたヒトPBMCをエフェクター細胞として使用して、CD20含有Bリンパ腫細胞系(RamosおよびSKW6.4)において精査し、結果をフローサイトメトリーで解析した。PBS−0.1%BSA中の標的B細胞を、まず、CFSEを用いて37℃で5分間標識した。洗浄の後で、RPMI 1640培地中のCFSE標識細胞を、異なる濃度の目的の糖抗体、およびPBMCエフェクター細胞と共に、マイクロプレート上で37℃で4時間インキュベートした。標的細胞とエフェクター細胞との比を25:1に設定した。得られた混合物を、PI試薬を用いて暗中で5分間染色した。ADDCによる細胞死を、FACSで解析した。
ヒトB細胞の枯渇。ヒトB細胞の枯渇を、ヒト血液から新たに調製したヒトPBMC細胞を使用して実施した。マイクロプレート上で培養した、RPMI 1640−5%FBS中2×106の細胞を、異なる濃度の目的の抗体と共に、37℃で4時間、15%自家血漿の非存在下または存在下でインキュベートした。洗浄の後で、細胞を、抗CD2−PEおよび抗CD19−FITCを用いて氷上で5分間染色した。B細胞枯渇を、CD19+CD2−B細胞に基づいてFACSで解析した。
グリカン操作戦略による、均質なHerceptin(登録商標)の調製。
異なるグリカン修飾された均質なHerceptin(登録商標)を調製するための方法。
均質な抗HER2抗体の生物学的特徴
Fc上でのグリコシル化は、ADCC、CDCおよび循環半減期を含む、多様な免疫グロブリンエフェクター媒介性機能に影響しうる。ADCC増強は、治療用抗体薬物の有効性を改善するための重要な戦略である。これは、より低い薬物コストの利益を目的として、有効な薬物投与量を低下させる可能性を有する。本明細書で記載される均質な抗HER2糖抗体は、機能的特性によって特徴付けられうる。抗HER2 GAbは、HER2発現細胞に対するアポトーシスを含む細胞成長阻害活性を有する。一部の実施形態では、抗HER2 GAbは、その親抗体と比較して、より強力な細胞成長阻害活性を呈示する。
抗HER2糖抗体のADCC活性
本発明に従う糖抗体のADCC活性は、親抗体のADCC活性と比較して、少なくとも3倍増大した、好ましくは少なくとも9倍、より好ましくは少なくとも10倍増大したADCC活性、好ましくは少なくとも12倍増大したADCC活性、好ましくは少なくとも20倍増大したADCC活性、最も好ましくは少なくとも30倍増大したADCC活性である。
本発明の糖抗体のADCC溶解活性は、SKBR5、SKBR3、LoVo、MCF7、OVCAR3および/またはKato IIIなどの標的がん細胞系を使用して、親抗体と比較して測定されうる。
表3は、トラスツズマブと比較した、抗HER2 GAbの例示的な増強されたADCC活性を列挙する。例示的なアッセイは実施例に記載されている。
本明細書で記載される多数の抗HER2 GAb、特にGAb101、およびGAb104は、その親抗体であるリツキシマブと比較して、増強されたADCC活性を呈示する。本発明の糖抗体は、HER2陽性疾患に対する治療剤として、優れた効果を呈示しうることが想定され、本発明の目的は、治療剤の開発において抗HER2 GAbを使用することである。
抗HER2糖抗体のCDC活性
本明細書で記載される糖抗体は、驚くべきことに、CDCに影響を与えることなしに改善されたADCCを提供することが可能である。例示的なCDCアッセイは、実施例に記載されている。例示的な実施形態では、糖抗体のADCCは増大するが、補体依存性細胞傷害(CDC)などの他の免疫グロブリン型エフェクター機能は、類似のままである、または顕著には影響を受けない。
FcγRIIIと抗HER2糖抗体との結合
図15は、抗HER2 GAbおよびリツキシマブの例示的なFcγRIIIA結合を列挙する。
FcγRIIIA結合は、当技術分野で公知のアッセイを使用して測定されうる。例示的なアッセイは、実施例に記載されている。Fc受容体結合は、抗HER2 GAb対トラスツヅマブの相対比として決定されうる。例示的な実施形態におけるFc受容体結合は、少なくとも2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍もしくは20倍、30倍、40倍、50倍またはそれ超、増大する。
トラスツヅマブと比較して、結合データは、抗HER2 GAb、特にGAb101およびGAb104が、標的分子であるHER2に対するより強い結合アフィニティーを呈示することを示した。
合わせると、抗HER2 GAb、特にGAb101、およびGAb104は、トラスツヅマブと比較して、増強されたADCC活性およびより強いFcγRIIIA結合アフィニティーを呈示する。本発明の糖抗体は、単独で、または好ましくは、2つもしくはそれ超のそのような抗体を含む組成物中でのいずれかで、そして化学療法などの他の処置と任意選択で組み合わせて、優れた臨床応答を提供しうることが企図される。ADCC増強抗HER2糖抗体は、HER2陽性疾患に対する代替的治療剤を提供しうることが企図される。それらの増大したエフェクター機能は、それらがより低い濃度でおよびより低い頻度で投薬され、これにより、抗体毒性および/または抗体寛容の発達の可能性を低減させうることを意味するので、本発明の糖抗体は、現在の投与経路および現在の治療レジメンを改変させるために有利に使用されうる。さらに、それらの改善されたエフェクター機能は、組換え宿主系において産生された対応する抗HER2モノクローナル抗体による処置に対して以前には耐性または難治性であった臨床適応症を処置するための新たな手法をもたらす。
モノクローナル抗体媒介性の抗炎症治療剤を増強するための、Fc領域に普遍的グリカン(SCT)を有する均質な抗体の調製。
siaa2,6Gal構造を有するFc領域は、抗炎症活性を増大させうる。ここで、本発明者らは、その抗炎症活性を改善するためにFc領域にSCTグリカンを有する均質なHumiraを調製する。
抗TNFαのN−グリコシル化の解析のための一般的手順
本発明者らは、糖ペプチド前駆体に適用された衝突誘導性解離(CID)エネルギーにわたってオリゴ糖由来の断片イオン(オキソニウムイオン)の収量をモニタリングするための質量分析法を開発した。オキソニウムイオン法の多重反応モニタリング(MRM)は、今後のバイオシミラー治療剤の日常的な品質管理解析に対する規制上の要件を満たすことができる。
5ugのアダリムマブ(Humira(登録商標))(Abbvieから購入した)を、25ulの2Mグアニジン−HCl中に溶解させ、ジチオトレイトール(DTT)を、5mMの最終濃度になるように添加した。110℃で10分間のインキュベーション後、還元されたシステイン残基を、10mMのヨードアセトアミド(IAA)中で37℃で1時間アルキル化した。5mMのDTTを添加して、過剰なIAAをRTで10分間クエンチする。産物を、50mMの重炭酸アンモニウム中で15倍希釈し、その後、スピンカラム(10kDaタンパク質MWカットオフ)で微量遠心分離した。トリプシン消化を、1:25(w/w)の酵素:タンパク質比を使用して37℃で4時間実施した。試料を、LC−MS/MS解析のために−20℃で冷凍した。
計装
m/z 204オキソニウムイオン(HexNAc)モニタリングによる糖ペプチド定量化を、Aglient 1200 HPLCシステムと共に4000 QTrap三連四重極型質量分析計(AB Sciex)を使用して実施した。糖ペプチドの微小不均一性の相対的定量化のために、全ての可能なグリカン組成を網羅する前駆イオンm/zをin−silicoで導き出し、単一の定量遷移(quantitative transition)を、各前駆イオン(Q3 m/z=204)についてモニタリングした。
MSデータ解析
獲得した生データを、Analyst 1.5(AB Sciex)で処理した。各遷移の質量クロマトグラムを積分し、ピーク面積によって定量化した。各構成要素の百分率組成を、合わせた全ての構成要素の合計に対して計算した。
抗TNFα抗体Humira−SCTの調製
鶏卵卵黄からのシアリル糖ペプチド(SGP)の単離は、公開された方法に従った。簡潔に述べると、鶏卵卵黄のフェノール抽出を遠心分離し、濾過し、Sephadex G−50、Sephadex G−25、DEAE−Toyoperarl 650M、CM−Sephadex C−25およびSephadex G−25を含むクロマトグラフィーカラムによって精製した。リン酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH6.0、5mM)中のシアリル糖ペプチド(SGP)(52mg)溶液を、Endo M(53μg)と共に37℃でインキュベートした。7時間後、反応混合物を、水によって溶出させるSephadex G−25カラム上でのゲル濾過クロマトグラフィーに供した。産物を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させて、産物(グリカン−101)を白色粉末(30mg、収率82%)として得た。
水中グリカン−101(Sia2(α2−6)Gal2GlcNAc2Man3GlcNAc)(30mg)、2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムクロリド(DMC)(62.7mg)およびEt3N(89μL)の溶液を、4℃で1時間撹拌した。反応混合物を、Sephadex G−25カラム上でのゲル濾過クロマトグラフィーに供し、0.05%の水性Et3Nによって溶出させた。産物(SCTオキサゾリン)を含有する画分を合わせ、凍結乾燥させて、白色粉末を得た。
SCTオキサゾリンを、50mMのトリス緩衝液(pH7.8)中のエンドグリコシダーゼとGAb Humira−GlcNAcとの混合物に添加し、室温で1時間インキュベートした。反応混合物を、プロテインAアフィニティーカラムと、その後のアニオン交換カラムcapto Qとによって精製して、所望の産物である抗TNFα GAb101を回収した。産物をトリプシン処理し、糖ペプチドであるTKPREEQYNSTYRおよびEEQYNSTYRを、ナノスプレーLC/MSを使用して解析して、Humira−SCTのグリコシル化パターンを確認した。
抗TNFαの結合アフィニティー
158アミノ酸を含有するヒト組換えTNF−α(MW=17.5kDa)を、E.coli(PROSPEC)中で産生し、精製した。組換えヒトTNF−αタンパク質を滴定し、50nM、25nM、12.5nM、6.25nM、および3.125nMの系列希釈を、HBS−EP緩衝液中で調製した。アダリムマブならびに抗TNFα GAb 200および401を、10μg/mlの濃度になるようにHBS−EP緩衝液中に希釈し、次いで、抗ヒトFcドメイン抗体をあらかじめ固定化したCM5チップに捕捉した。次いで、分析物としての組換えヒトTNF−アルファの系列濃度を、30μl/分の流量で注射し、チップ上の捕捉された抗体に結合させた。結合の後で、抗体−分析物複合体を、50μl/分の流量で、再生緩衝液である10mMのグリシン−HCl pH1.5によって洗浄した。CM5チップを、さらなる使用のために、PBS pH7.4中で4℃で維持した。単一サイクルの動態データを、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して1:1結合モデルに当てはめて、平衡定数(Ka/Kd)を測定した。
(実施例13)
抗SSEA−4モノクローナル抗体の作製
SSEA−4に特異的なmAbを開発するために、ハイブリドーマ方法論を使用した。6〜8週齢の雌BALB/cマウスを、SSEA−4ワクチンにより、3回皮下免疫化した。3回の免疫化は、2週間間隔で施した。各ワクチン接種は、2μgのSSEA−4を含有した。全ての血清は、4,000×gで10分間の遠心分離により得た。血清学的応答は、グリカンマイクロアレイにより解析した。最終追加免疫は、2μgのSSEA−4により、腹腔内に施し、3日後、免疫化されたマウスに由来する脾臓細胞を、ハイブリドーマを作り出すために使用した。
所望の抗原結合活性を伴う抗体を分泌するハイブリドーマ細胞は、以下の通りにスクリーニングした。0.1M、pH9.6の炭酸緩衝液中に4μg/mLのニュートラアビジンと共に、4℃で一晩インキュベートすることにより、マイクロタイタープレートをコーティングした。ウェルを、pH=7.3のPBS中に1%のBSAで、1時間ブロックし、4μg/mLのSSEA−4−ビオチンと共に、1時間インキュベートした。抗血清は、37℃で1時間、多様な希釈率でインキュベートした。洗浄の後で、リガンドと結合した抗体を、1:10,000のHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG抗体またはHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgM抗体(Jackson ImmunoResearch)により検出し、37℃で1時間インキュベートした後で、TMB基質を伴うインキュベーションを施した。ODは、450nmで決定した。陽性クローンを、さらなる特徴付けのために選択した。本研究では、3つの例示的なクローンである、45、46、および48を、SSEA−4に特異的に結合するものとして同定した。マウスモノクローナルのアイソタイプ解析(isotyping)には、IsoQuick Strips and Kits(Sigma;I9535)を使用した。ハイブリドーマ培地を、反応バイアルに添加する。ストリップが直立していることを確実にして、ストリップを、試料に挿入する。試料は、ストリップを伝って上行する。ストリップを5分間発色させてから、最終的な解釈を施す。
mAb 45、mAb 46、およびmAb 48のVH遺伝子セグメントおよびVL遺伝子セグメントを、PCRにより、抗体を分泌するハイブリドーマクローンから増幅した。このようにして得られた遺伝子セグメントをシークェンシングして、mAb 45、mAb 46、およびmAb 48のVH配列およびVL配列を決定した。
(実施例14)
キメラ抗体の作製
mAb 273およびmAb 651のVH遺伝子セグメントおよびVL遺伝子セグメントを、PCRにより、抗体を分泌するハイブリドーマクローンから増幅した。このようにして得られた遺伝子セグメントをシークェンシングして、mAb 273およびmAb 651のVH配列およびVL配列を決定した。重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、ヒトIgG1抗体発現ベクターにクローニングした。VHでは、酵素部位BsiWIおよびApaIを使用し、VLでは、酵素部位BsPEIおよびNheIを使用した。ベクターは、293F細胞またはCHO−S細胞のいずれかに、一過性にトランスフェクトした。組換えキメラAbは、結合アッセイおよび補体依存性腫瘍細胞溶解アッセイのためのさらなる研究のために精製した。
mAb 46およびmAb 48のVH遺伝子セグメントおよびVL遺伝子セグメントを、PCRにより、抗体を分泌するハイブリドーマクローンから増幅した。このようにして得られた遺伝子セグメントをシークェンシングして、mAb 46およびmAb 48のVH配列およびVL配列を決定した。重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、ヒトIgG1抗体発現ベクターにクローニングした。VHでは、酵素部位BsiWIおよびApaIを使用し、VLでは、酵素部位BsPEIおよびNheIを使用した。ベクターは、293F細胞またはCHO−S細胞のいずれかに、一過性にトランスフェクトした。組換えキメラAbは、結合アッセイおよび補体依存性腫瘍細胞溶解アッセイのためのさらなる研究のために精製した。
(実施例15)
フローサイトメトリーによるがん細胞への抗体の結合解析
mAb 273および抗SSEA−4(mAb 45、mAb 46およびmAb 48)のがん細胞系への結合を検討した。細胞(1×105)を、多様な濃度の抗体を含有する100μLのFACS緩衝液(1%BSA/PBS溶液)中に再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を、649標識ヤギ抗マウス抗体(1:100;Jackson ImmunoResearch)と共に氷上で30分間インキュベートし、その後、FACSCaliburシステム(BD Biosciences)で解析した。乳がん細胞MCF−7を、mAb 273で染色した。膵臓がん細胞(HPACおよびBxPC3)および乳がん細胞MCF−7を、mAb 45で染色した。膵臓がん細胞(HPACおよびBxPC3)および乳がん細胞MCF−7を、mAb 46で染色した。膵臓がん細胞(HPACおよびBxPC3)および乳がん細胞MCF−7を、mAb 48で染色した。
本発明者らはまた、グリカンアレイを、MC45、MC48、およびMC813−70の、表面上のSSEA−4六糖に対する解離定数を決定するのにも使用したが、MC45、MC48、およびMC813についてのKd値を下記に示す。これらの結果は、これらのmAbが、SSEA−4に対して高度に特異的であることを示した。
(実施例16)
例示的なmAb 46およびmAb 48が、SSEA−4を発現させる細胞に対するCDCを媒介する能力について検討した。Homo sapiens膵臓腺癌細胞(BxPC3)を、補体の供給源としてのウサギ血清の存在下で検討した。細胞死は、生存度プローブである7−AADを添加することにより評価した。FACScanフローサイトメーターを使用して、7−AAD測定の結果に基づき、比溶解百分率を計算した。抗体は、40μg/mLで約20%の殺滅活性を示した。mAb 46およびmAb 48は、SSEA−4を発現させる細胞に対するCDCを媒介することに成功した。
(実施例15)
例示的なファージディスプレイのバイオパニング手順
クローン2.5×1010個を含有する、ファージディスプレイされたヒトナイーブscFvライブラリー(Luら、2011年)から、PEGコンジュゲートカルボキシルDynabeads(Invitrogen)により、室温(RT)で1時間、非特異的結合を減算し(subtract)、その後、SSEA−4−PEGを固定化したDynabeadsと共に、4℃で1時間インキュベートした。PBSまたは0.01%のTween 20を含有するPBS(PBST0.01)による洗浄の後で、SSEA−4−PEG−Dynabeadsに結合したファージを、E−coli TG1細胞での、37℃で0.5時間の感染により回収した。感染細胞の一部は、系列希釈して、力価を決定し、他の細胞は、M13KO7ファージによりレスキューし、増幅した。レスキューされたファージ力価を決定した後で、次のラウンドのバイオパニングを実施した。バイオパニングの第4のラウンドおよび第5のラウンドにおいて、ファージクローンをランダムに選択して、ELISAスクリーニングのために培養した。
選択されたファージクローンのELISAスクリーニング
抗原認識を検出するために、マイクロウェルプレート(Nunc)を、それぞれ、0.2μg/mlのSSEA−4−BSA、Globo H−BSA、SSEA−3−BSA、およびBSAでコーティングした。選択されたファージクローンを、3%のBSAを含有するPBS中に1:2で希釈し、各ウェルに添加した。プレートを、RTで1時間インキュベートし、PBST0.1で洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートマウス抗M13ファージ抗体(GE Healthcare)と共にインキュベートした。プレートを再度洗浄し、OPDおよびH2O2を添加した。3NのHClによる反応の終結の後で、マイクロプレートリーダー(Model 680;BioRad)を使用して490nmを使用して、吸光度を測定した。本発明者らは、ファージミドを、ELISA陽性ファージクローンから抽出して、自動シークェンシングにより、scFvコード領域を同定した。
抗SSEA−4ヒトIgGの構築および発現
選択されたscFvのVH領域を、AgeI部位およびNheI部位により、ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるpcDNA5−FRT−Gamma1にクローニングした。選択されたscFvのVL領域を、AgeI部位およびEcoRV部位により、ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるp−Kappa−HuGsにクローニングした。両方のプラスミドを、FreeStyle293細胞(Invitrogen)にトランスフェクトし、血清非含有培地中、37℃で1週間持続的にインキュベートして、ヒト抗体を作製した。
抗SSEA−4ヒトIgGの精製
培養培地を回収し、遠心分離し、孔サイズを0.45μmとする膜で濾過した。次いで、抗SSEA−4ヒトIgGを精製するために、上清を、プロテインGカラムクロマトグラフィー(GE healthcare)にかけた。溶離液をPBSにより透析した後で、通例通り、クーマシーブルー染色を伴うSDS−PAGE解析により、抗体について検討した。抗体の濃度は、Bradford試薬(Thermo Scientific)および分光光度計により評価した。
MC48のヒト化
GenBank受託Q9UL73およびAY577298の2つのヒト遺伝子は、それぞれ、MC48 VHおよびMC48 VLと最も類似するものであった。本発明者らは、Q9UL73遺伝子の修飾フレームワーク(FR)1〜FR4からなる第1のヒト化MC48(hMC48)VH、および受託AY577298由来の4つのFRからなる第1のhMC48 VL、PDB由来の1YY8に従うVHによる第2のhMC48 FRに対し、第1の配列と同じである第2のhMC48 VL、ならびにQ9UL73遺伝子のFR1、2、および4を修飾する第3のhMC48 VH配列、ならびにヒトAY577298遺伝子へFR2およびFR4を変化させる第3のhMC48 VLを含む、3つのMC48配列をヒト化した。これらのヒト化配列の全ては、MC48のVHおよびVLのうちの、保存されたCDR1〜CDR3であった。
ヒト化MC48改変体の単鎖可変断片(scFv)の構築
ヒト化MC48配列(VH−GGGGSGGGGSGGGGS−VL(配列番号115))のscFv形態を遺伝子合成し(Genomics)、Sfi IおよびNot I(Fermentas)で切り出した。ゲル抽出の後、消化された産物を、pCANTAB−5Eファージミド(GE Healthcare)にクローニングした。
ヒト化MC48(hMC48)scFvファージクローンの作製
hMC48改変体ファージミドを、TG1 E−coliに形質転換し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%のグルコースを含有する2×YT培地(BD Pharmingen)中に回収し、M13KO7ヘルパーファージ(NEB)により、37℃で1時間レスキューした。1,500×gで10分間の遠心分離の後で、これらのペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを含有する2×YT培地中で、一晩再懸濁させて、scFvファージを作り出した。
ELISAによる、hMC48 scFvファージクローンについての結合アッセイ
SSEA−4−BSAを、ELISAプレート上、0.2μg/mlの濃度でコーティングした。洗浄およびブロッキングの後で、系列希釈されたファージを、RTで1.5時間インキュベートした。洗浄の後で、1:1000に希釈されたHRPコンジュゲート抗M13抗体(GE Healthcare)を、RTで1時間添加した。次いで、液体基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を発色させ、3NのHClで停止させた。光学密度は、450nmで測定した。
結果
SSEA−4に結合するファージディスプレイされたscFvの同定
SSEA−4に結合する抗体を同定するため、本発明者らは、本発明者らによる以前の報告(Luら、2011年)で記載した通りに確立された、2.5×1010のメンバーを含有するファージディスプレイされたヒトナイーブscFvライブラリーを使用した。まず、このライブラリーから、Dynabeads結合性ファージを取り除き、次いで、SSEA−4−PEGコンジュゲートDynabeadsにより、SSEA−4結合性ファージについて選択した。バイオパニング時において、本発明者らは、PBSおよび0.01%のTween20を含有するPBS(PBST0.01)の2つの緩衝液系を使用した。5ラウンドにわたるアフィニティー選択の後、第5のラウンドのファージ回収は、PBS系およびPBST0.01系のそれぞれにおいて、第1のラウンドの約55倍および約80倍増大した(図22Aおよび22B)。ファージクローンをランダムに選択し、ELISAにより、SSEA−4結合について調べた(図23A〜23D)。本発明者らは、SSEA−4−BSAには特異的に結合するが、BSA対照タンパク質には特異的に結合しない7つのクローンを見出した。8つの個々のクローン全てをシークェンシングすることにより、本発明者らは、顕著に異なるヒトVHコード領域およびヒトVLコード領域を含有する、2つの固有の抗SSEA−4ファージクローン(p1−52およびp2−78)を同定した。
2つのファージクローンの特異性および結合アフィニティーを検討するため、本発明者らは、SSEA−4−BSA、Globo H−BSA、およびSSEA−3−BSAを含む、グロボ系列グリカンに対する同じファージ力価を使用して、比較ELISAを実施した(図24)。p2−78ファージクローンは、SSEA−4−BSAおよびSSEA−3−BSAに対する強い結合、ならびにGlobo H−BSAに対するわずかに弱い結合を示した。しかし、本発明者らは、p1−52ファージクローンの、SSEA−4−BSAに対する結合活性は、非常に弱いことを見出した。したがって、本発明者らは、さらなる研究のために、p2−78クローンに焦点を当てた。
SSEA−4に対する完全ヒト抗体(hAb)を確立するため、本発明者らは、p2−78 scFvのVHコード配列およびVLコード配列を、それぞれ、ヒトIgG1骨格に分子操作した。抗SSEA−4 p2−78 hAbは、FreeStyle 293発現系を使用して作製し、次いで、プロテインGセファロースカラムを通して精製した。本発明者らは、クーマシーブルー染色を伴うSDS−PAGE解析により、抗体の純度について検討した(図25A)。結果は、抗体の純度レベルが、95%を超えることを示す。その後、本発明者らは、ELISAを実施して、p2−78 hAbの、グロボ系列グリカンに対する結合活性について精査した(図25B)。本発明者らは、p2−78 hAbは、SSEA−4およびSSEA−3には結合するが、Globo Hには結合しないことを見出し、このことからp2−78のヒトIgGバージョンが、SSEA−4の結合エピトープを認識する、その親scFvバージョンの活性を保持することが裏付けられる。
本発明者らは、203の異なるグリカンを含有するグリカンアレイを使用して、p2−78 hAbの特異性をさらに確認した。結果は、p2−78 hAbが、SSEA4、シアリル−SSEA4、SSEA4Gc、およびGb5(SSEA3)を認識することを示した(図26BおよびC)。興味深いことに、p2−78 hAbはまた、GloboHも認識し、ELISAアッセイからの結果と類似した。市販のIgM抗体であるMC631を、陽性対照として使用した(図26A)。
ヒト化MC48 mAbの開発
非ヒト化マウスmAbは、臨床状況では、それらの血清中半減期が短く、ヒトエフェクター機能を誘発することができず、ヒト抗マウス抗体(HAMA)応答をもたらすこと(LoBuglioら、1989年)を含む、ある特定の制限を有しうる。したがって、mAbは、それらのCDRを、ヒトIg分子のVH FRおよびVL FRにグラフティングすることにより、ヒト化することができる(Roguskaら、1994年)。
ヒト化MC48を開発するため、本発明者らは、ハイブリドーマ細胞に由来するMC48のVH可変領域およびVL可変領域をシークェンシングした(表17−0)。MC48のVH可変領域およびVL可変領域の、NCBI IgBLASTデータベースを用いたアラインメントの後で、本発明者らは、MC48のFRを修飾し、第1、第2、第3、および第4のヒト化MC48配列を作り出した(表17−1〜17−4)。次に、本発明者らは、これらのヒト化MC48配列に従い、ファージディスプレイされるscFvフォーマットを構築し、作り出した。ヒト化MC48ファージクローンの結合活性を決定するため、本発明者らは、SSEA−4−BSAをコーティングする固体ベースのELISAを実行した(図27A〜29B)。本発明者らは、ヒト化MC48 scFvファージが、SSEA−4を、用量依存的に認識しうることを見出した。データは、第4のヒト化MC48 scFvファージが、マウスmAb MC48と比較して、その結合アフィニティーを維持することを示した。
(実施例16)
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ。
例示的なヒト化MC 48がSSEA−4発現細胞のCDCを媒介する能力を検討する。Homo sapiensの乳癌細胞または膵臓癌細胞を、一晩の成長のために96ウェルプレートの各ウェルに播種し、その後アッセイした。次いで、細胞を、補体の供給源としてのウサギ血清(1:5希釈;Life Technologies)の存在下で、RPMI中に系列希釈した濃度のヒト化MC 48またはヒトIgG1アイソタイプ対照と共にインキュベートした。細胞死は、生存度プローブである7−AADを添加することにより評価する。FACScanフローサイトメーターを使用して、7−AAD測定の結果に基づき、比溶解百分率を計算する。抗体は、アイソタイプ対照と比較して、10μg/mLで顕著な殺滅活性を示す。示されるように、ヒト化MC48−4は、SSEA−4発現細胞のCDCを首尾よく媒介する。
(実施例17)
材料および方法
MC41、第1のhMC41、第2のhMC41および第3のhMC41ファージクローンの例示的な単鎖可変断片(scFv)の構築
MC41、第1のhMC41、第2のhMC41および第3のhMC41配列のscFv形態(VH−GGGGSGGGGSGGGGS−VL)を遺伝子合成し(Genomics)、Sfi IおよびNot I(Fermentas)で切り出した。ゲル抽出の後、消化された産物を、pCANTAB−5Eファージミド(GE Healthcare)にクローニングした。hMC41改変体ファージミドを、TG1 E−coliに形質転換し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%のグルコースを含有する2×YT培地(BD Pharmingen)中に回収し、M13KO7ヘルパーファージ(NEB)により、37℃で1時間レスキューした。1,500×gで10分間の遠心分離の後で、これらのペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを含有する2×YT培地中で、一晩再懸濁させて、scFvファージを作り出した。
有効性の裏付け:ELISAによる、MC41 scFvファージクローンおよびhMC41 scFvファージクローンまたはIgGについての結合アッセイ
SSEA−4−BSAを、ELISAプレート上、0.2μg/mlの濃度でコーティングした。洗浄およびブロッキングの後で、系列希釈されたファージまたはIgGを、RTで1.5時間インキュベートした。洗浄の後で、1:1000に希釈されたHRPコンジュゲート抗M13抗体(GE Healthcare)、1:2000に希釈されたHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体またはHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体を、RTで1時間添加した。次いで、液体基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を発色させ、3NのHClで停止させた。光学密度は、450nmで測定した。
有効性の裏付け:MC41のヒト化
2つのヒト遺伝子IGHJ4*08およびIGKV6−21*02は、MC41のVHおよびVLと最も類似するものであった。したがって、本発明者らは、MC41のヒト化のために、これら2つの遺伝子からFRを選択する。全てのヒト化MC41中のVHおよびVLのCDR1〜CDR3は保存した。
有効性の裏付け:抗SSEA−4ヒト化IgGの構築および発現
選択されたscFvのVH領域を、AgeI部位およびNheI部位により、ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるpcDNA5−FRT−Gamma1にクローニングした。ヒト化MC41のVL領域を、AgeI部位およびEcoRV部位により、ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるp−Kappa−HuGsにクローニングした。両方のプラスミドを、FreeStyle293細胞(Invitrogen)にトランスフェクトし、血清非含有培地中、37℃で1週間持続的にインキュベートして、ヒト化抗体を作製した。
有効性の裏付け:抗SSEA−4ヒト化IgGの精製
培養培地を回収し、遠心分離し、孔サイズを0.45μmとする膜で濾過した。次いで、抗SSEA−4ヒト化IgGを精製するために、上清を、プロテインGカラムクロマトグラフィー(GE healthcare)にかけた。溶離液をPBSにより透析した後で、通例通り、クーマシーブルー染色を伴うSDS−PAGE解析により、抗体について検討した。抗体の濃度は、Bradford試薬(Thermo Scientific)および分光光度計により評価した。
有効性の裏付け:グリカンアレイによるchMC41およびhMC41の結合特異性
グリカンアレイスライドを、1%BSAで45分間ブロックし、次いで、系列希釈したchMC41 IgGまたはhMC41 IgGと共にRTでもう45分間インキュベートした。洗浄の後で、ロバ抗ヒトIgG Fcγ−F674を、第2の抗体として、RTで40分間使用した。最後に、スライドを洗浄し、乾燥させ、その後波長674nmでスキャンした。
有効性の裏付け:抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイ
HPAC(5×103細胞)膵臓がん細胞を、96ウェルプレート中に播種し、約80%コンフルエントになるまで培養した。次いで、これらの細胞を、PBMC(エフェクター、E)と一緒に、抗体chMC41、hMC41、MC813、NHIgGまたはNMIgGと共に37℃で16時間インキュベートした。処理の後で、LDH発現レベルを、CytoTox−ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay Kit(Promega)によって検出した。反応を、560nmの励起波長および590nmの発光波長を用いて蛍光によって読み取った(Molecular Device、SpectraMax M5)(図21A)。
有効性の裏付け:補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ
HPAC(5×103細胞)膵臓がん細胞系を、約80%コンフルエントになるまで一晩培養し、抗体chMC41、hMC41、MC813、NHIgGまたはNMIgG、およびウサギ補体(20%)(Low−Tox−Mウサギ補体、Cedarlane)を含有する混合物と、37℃で16時間反応させた。次いで、細胞生存度を、ADCCアッセイの手順と同じ手順に従って、CytoTox−ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay Kit(Promega)によって測定した(図21B)。
有効性の裏付け:ヒト化MC41 mAbの開発
マウスmAbは、それらの短い血清半減期、ヒトエフェクター機能を誘発できないこと、およびヒト抗マウス抗体(HAMA)応答の生成を含む、限定的な臨床使用を有する(LoBuglioら、1989年)。従って、mAbは、それらのCDRをヒトIg分子のVHおよびVLのFRにグラフティングすることによってヒト化すべきである(Roguskaら、1994年)。
MC41のVH可変領域およびVL可変領域の、NCBI IgBLASTデータベースまたはIMGTデータベースを用いたアラインメント後、本発明者らは、第1、第2および第3のヒト化MC41配列を作り出した。次に、本発明者らは、これらのヒト化MC41配列に従い、ファージディスプレイされるscFvフォーマットを構築し、作り出した。ヒト化MC41ファージクローンの結合活性を決定するため、本発明者らは、SSEA−4−BSAをコーティングする固体ベースのELISAを実行した(図27A〜29B)。本発明者らは、第2および第3のヒト化MC41 scFvファージが、SSEA−4を、用量依存的に認識しうるのに対し、第1のMC41 scFvは、SSEA−4に対する結合活性を喪失することを見出した(図27A〜29B)。無傷のヒト化MC41 IgGによる結合活性を評価するために、本発明者らは、第1、第2、第3のヒト化MC41、およびキメラMC41(chMC41)の無傷のIgGを構築した。ELISA結果は、第2および第3のヒト化MC41が、用量依存的パターンで、SSEA−4と反応しうるが(図30A)、BSAとは反応しない(図30B)ことを示しており、同じ結果がchMC41について観察された。第2および第3のヒト化MC41の結合アフィニティーは、マウスMC41と比較して維持された。本発明者らは、第2のヒト化IgGをhMC41と命名した。chMC41およびhMC41の結合特異性を決定するために、グリカンアレイを実施した。キメラMC41およびヒト化MC41は、市販のSSEA4抗体(MC813)よりも特異的な結合を示した。これらは、SSEA4またはグリコリル修飾SSEA4のみを認識した(図19A、19B、31A〜32B)。
有効性の裏付け:chMC41およびhMC41のADCCおよびCDC。
chMC41およびhMC41のエフェクター機能を裏付けるため、ADCCアッセイおよびCDCアッセイを実施した。HPAC膵臓がん細胞系を使用して、chMC41、hMC41、陽性対照MC813または陰性対照NHIgGおよびNMIgGのADCC活性およびCDC活性を評価した(図34A〜35B)。データは、hMC41のエフェクター機能がchMC41と類似していることを示した。興味深いことに、ヒト化MC41は、その元の活性を維持するだけでなく、ADCCおよびCDCを介した、MC813よりも強いがん細胞殺滅活性もまた示した(図35Aおよび35B)。
参考文献
LoBuglio, A.F., Wheeler, R.H., Trang, J., Haynes, A., Rogers, K., Harvey, E.B., Sun, L., Ghrayeb, J., and Khazaeli, M.B. (1989). Mouse/human chimeric monoclonal antibody in man: kinetics and immune response. Proc Natl Acad Sci U S A 86, 4220−4224.
Roguska, M.A., Pedersen, J.T., Keddy, C.A., Henry, A.H., Searle, S.J., Lambert, J.M., Goldmacher, V.S., Blattler, W.A., Rees, A.R., and Guild, B.C. (1994). Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing. Proc Natl Acad Sci U S A 91, 969−973.
(実施例18)
有効性の裏付け:材料および方法
ファージディスプレイのバイオパニング手順
クローン2.5×1010個を含有する、ファージディスプレイされたヒトナイーブscFvライブラリー(Luら、2011年)から、PEGコンジュゲートカルボキシルDynabeads(Invitrogen)により、室温(RT)で1時間、非特異的結合を減算し(subtract)、その後、SSEA−4−PEGを固定化したDynabeadsと共に、4℃で1時間インキュベートした。PBSまたは0.01%のTween 20を含有するPBS(PBST0.01)による洗浄の後で、SSEA−4−PEG−Dynabeadsに結合したファージを、E−coli TG1細胞での、37℃で0.5時間の感染により回収した。感染細胞の一部は、所定の力価に系列希釈し、他の細胞は、M13KO7ファージによりレスキューし、増幅した。レスキューされたファージ力価を決定した後で、次のラウンドのバイオパニングを実施した。バイオパニングの第4のラウンドおよび第5のラウンドにおいて、ファージクローンをランダムに選択して、ELISAスクリーニングのために培養した。
選択されたファージクローンのELISAスクリーニング
抗原認識を検出するために、マイクロウェルプレート(Nunc)を、それぞれ、0.2μg/mlのSSEA−4−BSA、Globo H−BSA、SSEA−3−BSA、およびBSAでコーティングした。選択されたファージクローンを、3%のBSAを含有するPBS中に1:2で希釈し、各ウェルに添加した。プレートを、RTで1時間インキュベートし、PBST0.1で洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートマウス抗M13ファージ抗体(GE Healthcare)と共にインキュベートした。プレートを再度洗浄し、OPDおよびH2O2を添加した。3NのHClによる反応の終結の後で、マイクロプレートリーダー(Model 680;BioRad)を使用して490nmを使用して、吸光度を測定した。本発明者らは、ファージミドを、ELISA陽性ファージクローンから抽出して、自動シークェンシングにより、scFvコード領域を同定した。
有効性の裏付け:抗SSEA−4ヒトIgGの構築および発現
選択されたscFvのVH領域を、AgeI部位およびNheI部位により、ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるpcDNA5−FRT−Gamma1にクローニングした。選択されたscFvのVL領域を、AgeI部位およびEcoRV部位により、ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖のシグナルペプチド領域および定常領域を含有する修飾発現ベクターであるp−Kappa−HuGsにクローニングした。両方のプラスミドを、FreeStyle293細胞(Invitrogen)にトランスフェクトし、血清非含有培地中、37℃で1週間持続的にインキュベートして、ヒト抗体を作製した。
有効性の裏付け:抗SSEA−4ヒトIgGの精製
培養培地を回収し、遠心分離し、孔サイズを0.45μmとする膜で濾過した。次いで、抗SSEA−4ヒトIgGを精製するために、上清を、プロテインGカラムクロマトグラフィー(GE healthcare)にかけた。溶離液をPBSにより透析した後で、通例通り、クーマシーブルー染色を伴うSDS−PAGE解析により、抗体について検討した。抗体の濃度は、Bradford試薬(Thermo Scientific)および分光光度計により評価した。
有効性の裏付け:MC48およびMC41のヒト化
GenBank受託Q9UL73およびAY577298の2つのヒト遺伝子は、それぞれ、MC48 VHおよびMC48 VLと最も類似するものであった。本発明者らは、Q9UL73遺伝子の修飾フレームワーク(FR)1〜FR4からなる第1のヒト化MC48(hMC48)VH、および受託AY577298由来の4つのFRからなる第1のhMC48 VL、PDB由来の1YY8に従うVHによる第2のhMC48 FRに対し、第1の配列と同じである第2のhMC48 VL、ならびにQ9UL73遺伝子のFR1、2、および4を修飾する第3のhMC48 VH配列、ならびにヒトAY577298遺伝子へFR2およびFR4のみを変化させる第3のhMC48 VLを含む、3つのMC48配列をヒト化した。これらのヒト化配列の全ては、MC48のVHおよびVLのうちの、保存されたCDR1〜CDR3であった。他の2つのヒト遺伝子IGHJ4*08およびIGKV6−21*02は、MC41のVHおよびVLと最も類似するものであった。したがって、本発明者らは、MC41のヒト化のために、これら2つの遺伝子からFRを選択する。全てのヒト化MC48およびヒト化MC41中のVHおよびVLのCDR1〜CDR3は保存した。
有効性の裏付け:ヒト化MC48ファージクローンおよびヒト化MC41ファージクローンの単鎖可変断片(scFv)の構築
ヒト化MC48(hMC48)およびヒト化MC41(hMC41)配列のscFv形態(VH−GGGGSGGGGSGGGGS−VL)を遺伝子合成し(Genomics)、Sfi IおよびNot I(Fermentas)で切り出した。ゲル抽出の後、消化された産物を、pCANTAB−5Eファージミド(GE Healthcare)にクローニングした。hMC48およびhMC41改変体ファージミドを、TG1 E−coliに形質転換し、100μg/mlのアンピシリンおよび2%のグルコースを含有する2×YT培地(BD Pharmingen)中に回収し、M13KO7ヘルパーファージ(NEB)により、37℃で1時間レスキューした。1,500×gで10分間の遠心分離の後で、これらのペレットを、100μg/mlのアンピシリンおよび50μg/mlのカナマイシンを含有する2×YT培地中で、一晩再懸濁させて、scFvファージを作り出した。
有効性の裏付け:ELISAによる、hMC48 scFvファージクローンおよびhMC41 scFvファージクローンまたはIgGについての結合アッセイ
SSEA−4−BSAを、ELISAプレート上、0.2μg/mlの濃度でコーティングした。洗浄およびブロッキングの後で、系列希釈されたファージまたはIgGを、RTで1.5時間インキュベートした。洗浄の後で、1:1000に希釈されたHRPコンジュゲート抗M13抗体(GE Healthcare)、1:2000に希釈されたHRPコンジュゲート抗ヒトIgG抗体またはHRPコンジュゲート抗マウスIgG抗体を、RTで1時間添加した。次いで、液体基質である3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を発色させ、3NのHClで停止させた。光学密度は、450nmで測定した。
有効性の裏付け:グリカンアレイによるp2−78 hAb、chMC41およびhMC41の結合特異性
グリカンアレイスライドを、1%BSAで45分間ブロックし、次いで、系列希釈したp2−78 hAb、chMC41 IgGまたはhMC41 IgGと共にRTでもう45分間インキュベートした。洗浄の後で、ロバ抗ヒトIgG Fcγ−F674が、RTで40分間第2の抗体であった。最後に、スライドを洗浄し、乾燥させ、その後波長674nmでスキャンした。
有効性の裏付け:抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)アッセイ
HPAC、BxPC3またはPL45(5×103細胞)膵臓がん細胞を、96ウェルプレート中に播種し、約80%コンフルエントになるまで培養した。次いで、これらの細胞を、PBMC(エフェクター、E)と一緒に、抗体hMC48、hMC41またはNHIgGと共に37℃で16時間インキュベートした。処理の後で、LDH発現レベルを、CytoTox−ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay Kit(Promega)によって検出した。反応を、560nmの励起波長および590nmの発光波長を用いて蛍光によって読み取った(Molecular Device、SpectraMax M5)。
有効性の裏付け:補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ
HPAC、BxPC3またはPL45(5×103細胞)膵臓がん細胞系を、約80%コンフルエントになるまで一晩培養し、抗体hMC48、hMC41またはNHIgG、およびウサギ補体(10%および20%)(Low−Tox−Mウサギ補体、Cedarlane)を含有する混合物と、37℃で16時間反応させた。次いで、細胞生存度を、ADCCアッセイの手順と同じ手順に従って、CytoTox−ONE(商標)Homogeneous Membrane Integrity Assay Kit(Promega)によって測定した。
有効性の裏付け:
SSEA−4に結合するファージディスプレイされたscFvの同定
SSEA−4に結合する抗体を同定するため、本発明者らは、本発明者らによる以前の報告(Luら、2011年)で記載した通りに確立された、2×1010のメンバーを含有するファージディスプレイされたヒトナイーブscFvライブラリーを使用した。まず、このライブラリーを、Dynabeads結合性ファージによって取り出し、次いで、SSEA−4−PEGコンジュゲートDynabeadsにより、SSEA−4結合性ファージを選択した。バイオパニング時において、本発明者らは、PBSおよび0.01%のTween20を含有するPBS(PBST0.01)の2つの緩衝液系を使用した。5ラウンドにわたるアフィニティー選択の後、第5のラウンドのファージ回収は、PBS系およびPBST0.01系のそれぞれにおいて、第1のラウンドと比較して約55倍および約80倍増大した(図22Aおよび22B)。ファージクローンをランダムに選択し、ELISAにより、SSEA−4結合について調べた(図23A〜23D)。本発明者らは、SSEA−4−BSAには特異的に結合するが、BSA対照タンパク質には特異的に結合しない7つのクローンを見出した。8つの個々のクローン全てをシークェンシングすることにより、本発明者らは、顕著に異なるヒトVHコード領域およびヒトVLコード領域を含有する、2つの固有の抗SSEA−4ファージクローン(p1−52およびp2−78)を同定した。
2つのファージクローンの特異性および結合アフィニティーを検討するため、本発明者らは、SSEA−4−BSA、Globo H−BSA、およびSSEA−3−BSAを含む、グロボ系列グリカンに対する同じファージ力価を使用して、比較ELISAを実施した(図24)。p2−78ファージクローンは、SSEA−4−BSAおよびSSEA−3−BSAに対する強い結合、ならびにGlobo H−BSAに対するよりわずかな結合を示した。しかし、本発明者らは、p1−52ファージクローンの、SSEA−4−BSAに対する結合活性は、非常に弱いことを見出した。したがって、本発明者らは、さらなる研究のために、p2−78クローンに焦点を当てた。
SSEA−4に対する完全ヒト抗体(hAb)を確立するため、本発明者らは、p2−78 scFvのVHコード配列およびVLコード配列を、それぞれ、ヒトIgG1骨格に分子操作した。抗SSEA−4 p2−78 hAbは、FreeStyle 293発現系を使用して作製し、次いで、プロテインGセファロースカラムを通して精製した。本発明者らは、クーマシーブルー染色を伴うSDS−PAGE解析により、抗体の純度について検討した(図25A)。結果は、抗体の純度レベルが、95%を超えることを示す。その後、本発明者らは、ELISAを実施して、p2−78 hAbの、グロボ系列グリカンに対する結合活性について精査した(図25B)。本発明者らは、p2−78 hAbは、SSEA−4およびSSEA−3には結合するが、Globo Hには結合しないことを見出し、このことからp2−78のヒトIgGバージョンが、SSEA−4の結合エピトープを認識する、その親scFvバージョンの活性を保持することが裏付けられる。
本発明者らは、203の異なるグリカンを含有するグリカンアレイを使用して、p2−78 hAbの特異性をさらに確認した。結果は、p2−78 hAbが、SSEA4、シアリル−SSEA4、SSEA4Gc、およびGb5(SSEA3)を認識することを示した(図26BおよびC)。興味深いことに、p2−78 hAbはまた、Globo Hもわずかに認識し、ELISAアッセイからの結果と類似した。市販のIgM抗体であるMC631を、陽性対照として使用した(図26A)。
有効性の裏付け:ヒト化MC48およびMC41 mAbの開発
マウスmAbは、それらの短い血清半減期、ヒトエフェクター機能を誘発できないこと、およびヒト抗マウス抗体(HAMA)応答の生成を含む、限定的な臨床使用を有する(LoBuglioら、1989年)。従って、mAbは、それらのCDRをヒトIg分子のVHおよびVLのFRにグラフティングすることによってヒト化すべきである(Roguskaら、1994年)。
MC48およびMC41のVH可変領域およびVL可変領域の、NCBI IgBLASTデータベースまたはIMGTデータベースを用いたアラインメント後、本発明者らは、第1、第2、第3および第4のヒト化MC48配列、ならびに第1、第2および第3のヒト化MC41配列を作り出した。次に、本発明者らは、これらのヒト化MC48およびMC41配列に従い、ファージディスプレイされるscFvフォーマットを構築し、作り出した。ヒト化MC48およびMC41ファージクローンの結合活性を決定するため、本発明者らは、SSEA−4−BSAをコーティングする固体ベースのELISAを実行した(図27A〜29B)。本発明者らは、第3および第4のヒト化MC48配列、ならびに第2および第3のヒト化MC41 scFvファージが、SSEA−4を、用量依存的に認識しうるのに対し、第1および第2のヒト化MC48配列、ならびに第1のMC41 scFvは、SSEA−4に対する結合活性を喪失することを見出した(図27A〜29B)。データは、第4のヒト化MC48 scFvファージクローン、および第3のヒト化MC41 scFvファージクローンの結合アフィニティーが、マウスmAb MC48またはMC41と比較して維持されたことを示した。無傷のヒト化MC41 IgGによる結合活性を評価するために、本発明者らは、第1、第2、第3のヒト化MC41、およびキメラMC41(chMC41)の無傷のIgGを構築した。ELISA結果は、第2および第3のヒト化MC41が、用量依存的パターンで、SSEA−4と反応しうるが(図30A)、BSAとは反応しない(図30B)ことを示しており、同じ結果がchMC41について観察された。本発明者らは、第2のヒト化IgGをhMC41と命名した。chMC41およびhMC41の結合特異性を決定するために、グリカンアレイを実施した。キメラMC41およびヒト化MC41は、市販のSSEA4抗体(MC813)よりも特異的な結合を示した。これらは、SSEA4またはグリコリル修飾SSEA4のみを認識した(図31Aおよび31B)。
有効性の裏付け:hMC48、chMC41およびhMC41のADCCおよびCDC試験。
hMC48、およびchMC41のエフェクター機能を調査するため、ADCCアッセイおよびCDCアッセイを実施した。HPAC、BxPC3およびPL45膵臓がん細胞系を使用して、10μg/mlの濃度においてhMC48またはNMIgGのADCC活性およびCDC活性を評価した(図33Aおよび33B)。さらにHPAC細胞を、chMC41、陽性対照MC813または陰性対照NHIgGで処理した(図34Aおよび34B)。データは、chMC41のエフェクター機能がhMC48より優れていることを示した。興味深いことに、ヒト化MC41は、その元の活性を維持するだけでなく、ADCCおよびCDCを介した、MC813よりも強いがん細胞殺滅活性もまた示した(図35Aおよび35B)。
(実施例19)
MC41対MC48の結合
hMC41およびhMC48のSSEA−4への結合能を、ELISAによって検討した。結果は、SSEA−4へのhMC41の結合が、hMC48よりもかなり良かったことを示した。ヒト化MC41は、hMC48と比較して、より高い結合最大およびより小さいKd(hMC41およびhMC48について、それぞれ0.2μg/mlおよび4.6μg/ml)値を有する(図36)。
参考文献
LoBuglio, A.F., Wheeler, R.H., Trang, J., Haynes, A., Rogers, K., Harvey, E.B., Sun, L., Ghrayeb, J., and Khazaeli, M.B. (1989). Mouse/human chimeric monoclonal antibody in man: kinetics and immune response. Proc Natl Acad Sci U S A 86, 4220−4224.
Lu, R.−M., Chang, Y.−L., Chen, M.−S., and Wu, H.−C. (2011). Single chain anti−c−Met antibody conjugated nanoparticles for in vivo tumor−targeted imaging and drug delivery. Biomaterials 32, 3265−3274.
Roguska, M.A., Pedersen, J.T., Keddy, C.A., Henry, A.H., Searle, S.J., Lambert, J.M., Goldmacher, V.S., Blattler, W.A., Rees, A.R., and Guild, B.C. (1994). Humanization of murine monoclonal antibodies through variable domain resurfacing. Proc Natl Acad Sci U S A 91, 969−973.