JP6941446B2 - ゴム組成物の製造方法及びそれを含む伝動ベルトの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ゴム組成物の製造方法及びそれを含む伝動ベルトの製造方法に関する。
木材等から得られるセルロースナノファイバを含有する複合材料を種々の用途に適用することが検討されている。例えば、特許文献1には、セルロースナノファイバを含有するゴム組成物をベルト、タイヤ、ホース等のゴム製品に用いることが開示されている。
特開2014−125607号公報
本発明の課題は、ゴム組成物におけるセルロース微細繊維の分散性を高めることである。
本発明のゴム組成物の製造方法は、酸化処理パルプ及び液状の解繊助剤を混合して混練するステップと、得られた混練物をゴム成分に加えて更に混練するステップとを含み、前記酸化処理パルプが解繊されて形成されたセルロース微細繊維が前記ゴム成分に分散したゴム組成物を製造するものであり、前記液状の解繊助剤は、共架橋剤及び/又は可塑剤を含む
本発明の伝動ベルトの製造方法は、本発明のゴム組成物の製造方法を含む。
本発明によれば、まず、酸化処理パルプ及び液状の解繊助剤を混合して混練することにより、酸化処理パルプに解繊助剤が馴染んだ状態で酸化処理パルプの解繊が進み、次いで、得られた混練物をゴム成分に加えて更に混練することにより、解繊助剤が馴染んだ酸化処理パルプがゴム成分に分散しながら更にその解繊が促進されてセルロース微細繊維が形成されるので、ゴム成分中での酸化処理パルプの凝集が抑制されることなり、その結果、得られるゴム組成物においてセルロース微細繊維の高い分散性を得ることができる。
Vリブドベルトの斜視図である。 心線と接着ゴム層との界面構造を示す断面図である。 補強布と接着ゴム層との界面構造を示す断面図である。 ローエッジVベルトの斜視図である。 ラップドVベルトの斜視図である。 平ベルトの斜視図である。 歯付ベルトの斜視図である。
以下、実施形態について詳細に説明する。
実施形態に係るゴム組成物の製造方法は、酸化処理パルプ及び液状の解繊助剤を混合して混練するステップと、得られた混練物をゴム成分に加えて更に混練するステップと、得られた未架橋ゴム組成物を架橋させるステップとを含む。そして、これにより酸化処理パルプが解繊されて形成されたセルロース微細繊維がゴム成分に分散したゴム組成物を製造する。なお、本出願における「微細繊維」とは、繊維径が1.0μm以下の繊維を意味する。
このような実施形態に係るゴム組成物の製造方法によれば、まず、酸化処理パルプ及び液状の解繊助剤を混合して混練することにより、酸化処理パルプに解繊助剤が馴染んだ状態で酸化処理パルプの解繊が進み、次いで、得られた混練物をゴム成分に加えて更に混練することにより、解繊助剤が馴染んだ酸化処理パルプがゴム成分に分散しながら更にその解繊が促進されてセルロース微細繊維が形成されるので、ゴム成分中での酸化処理パルプの凝集が抑制されることなり、その結果、得られるゴム組成物においてセルロース微細繊維の高い分散性を得ることができる。
ここで、酸化処理パルプは、植物体から分離したセルロースの集合体であって、そのセルロース分子に酸性官能基が導入されたものである。酸性官能基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基が挙げられる。酸化処理パルプは、セルロース分子中のC6位の水酸基が選択的に酸化されてカルボキシル基が導入されたものが好ましい。なお、かかる選択的なカルボキシル基の導入はTEMPO触媒酸化法により行うことができる。
酸化処理パルプの原料の植物体としては、例えば、木、竹、稲(稲わら)、じゃがいも、サトウキビ(バガス)、水草、海藻等が挙げられる。これらのうち木が好ましい。
酸化処理パルプは、アミン変性、つまり、セルロース分子中に導入された酸性官能基がアミンで中和されて酸性官能基のアニオンとアンモニウムカチオンとが結合して塩を形成したものであってもよい。アミンとしては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、及び第4級アンモニウム化合物が挙げられる。アミンは、これらのうち1種又は2種以上を用いることが好ましい。アミンは、セルロース微細繊維の高い分散性を得る観点から、炭素数8以上のアルキル基を有するものを用いることが好ましい。
解繊助剤としては、例えば、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体(トリメチロールプロパントリメタクリレートなど)、液状ポリマー(液状イソプレン、液状ブタジエンなど)等の一般に共架橋剤として用いられるゴム配合剤が挙げられる。また、解繊助剤としては、例えば、フタル酸誘導体(DMP、DEP、DBPなど)、イソフタル酸誘導体(DMIPなど)、テトラヒドロフタル酸誘導体(DOTPなど)、アジピン酸誘導体(DBA、DMA、DOAなど)、アゼライン酸誘導体(DOZ、DNHZなど)、セバシン酸誘導体(DBS、DOS、DMSなど)、ドデカン−2−酸誘導体(DODNなど)、マレイン酸誘導体(DBM、DMM、DEMなど)、フマル酸誘導体(DBF、DOFなど)、トリメリット酸誘導体(TOTMなど)、ピロメリット酸誘導体(TOPMなど)、クエン酸誘導体(TEC、TBCなど)、イタコン酸誘導体(MMI,MBI,DMIなど)、オレイン酸誘導体(GMOなど)、リシノール酸誘導体(MAR、BARなど)、ステアリン酸誘導体(BSなど)、スルホン酸誘導体(フェノール系アルキルスルホン酸エステルなど)、リン酸誘導体(TEP、TBPなど)、グルタール酸誘導体(ジアルキルジエチルグルタレートなど)、グリコール誘導体(ポリエチレングリコールなど)、グリセリン誘導体(グリセロールモノアセテートなど)、パラフィン誘導体(塩素化パラフィンなど)、エポキシ誘導体、重合型可塑剤(ポリエステル系、ポリエーテル系など)等の一般に可塑剤として用いられるゴム配合剤が挙げられる。解繊助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。解繊助剤は、ゴム成分と反応性を有するものが好ましい。例えば、ゴム成分がクロロプレンゴムを含有する場合、解繊助剤は、クロロプレンゴムとの反応性を有する例えばトリメチロールプロパントリメタクリレートを含めて用いることが好ましい。また、解繊助剤は、液状ポリマー(液状イソプレン、液状ブタジエンなど)のように、未架橋ゴム組成物の架橋前は可塑化機能を示す一方、架橋後は重合してその可塑化機能を喪失する物質を含むことが好ましい。
酸化処理パルプの解繊助剤に対する質量混合比は、好ましくは1/20以上1/1以下、より好ましくは1/10以上1/5以下である。
酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物は、その他に補強材、架橋剤等を含有していてもよい。
酸化処理パルプ及び解繊助剤を混練する混練手段としては、例えば、回転翼型のブレンダー、ビーズミル等が挙げられる。このように酸化処理パルプ及び解繊助剤を混合して混練しながら酸化処理パルプの解繊を進めると粘土状の混練物が得られる。
この酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物と混練するゴム成分としては、例えば、クロロプレンゴム(CR);エチレン・プロピレン・ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうち1種又は2種以上をブレンドしたものを用いることができる。
酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物とゴム成分とを混練する混練装置としては、例えば、密閉式のニーダーやバンバリーミキサー、開放式のオープンロールが挙げられる。この混練では、まずゴム成分を素練りし、そこに酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物を投入して混練することが好ましい。
セルロース微細繊維の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは2質量部以上10質量部以下である。解繊助剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上60質量部以下、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
このとき、酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物の投入前若しくは投入後、又は、投入と同時に、ゴム配合剤を投入する。ゴム配合剤としては、例えば、補強材、充填材、硫黄や有機化酸化物の架橋剤、加工助剤、加硫促進助剤、共架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤等が挙げられる。ゴム配合剤は、ゴム組成物の用途によって適宜選択すると共に、その配合量を設定する。
このように酸化処理パルプ及び解繊助剤の混練物とゴム成分とを更に混練すると、酸化処理パルプが解繊されてセルロース微細繊維を形成し、そのセルロース微細繊維がゴム成分に分散した未架橋ゴム組成物が得られる。この得られた未架橋ゴム組成物を所定の形状に成形して加熱及び加圧することによりゴム成分を架橋させてゴム組成物を得る。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物に含まれるセルロース微細繊維の繊維径の分布の下限は、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下である。上限は、好ましくは1μm以下、より好ましくは700nm以下、更に好ましくは500nm以下である。セルロース微細繊維の繊維径の分布範囲は、20nm以上1μm以下を含むことが好ましく、20nm以上700nm以下を含むことがより好ましく、20nm以上500nm以下を含むことが更に好ましい。セルロース微細繊維の平均繊維径は、好ましくは3nm以上であり、また、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下である。セルロース微細繊維の繊維径の分布は、ゴム組成物の試料を凍結粉砕した後、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察すると共に、50本のセルロース微細繊維を任意に選択して繊維径を測定し、その測定結果に基づいて求められる。また、セルロース微細繊維の平均繊維径は、その任意に選択した50本のセルロース微細繊維の繊維径の数平均として求められる。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物におけるJISK6253:2012に基づいてタイプAデュロメータを用いて測定されるゴム硬さは、好ましくはA45以上A80以下、より好ましくはA50以上A70以下である。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物におけるJISK6251:2010に基づいて測定される列理方向の引張強さTBは、好ましくは15MPa以上、より好ましくは20MPa以上である。実施形態に係るゴム組成物におけるJISK6251:2010に基づいて測定される列理方向の切断時伸びEBは、好ましくは500%以上、より好ましくは700%以上である。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物におけるJISK6394:2007に基づいて、動歪1.0%及び周波数10Hzとして測定される25℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(25℃)は、好ましくは6.0MPa以上、より好ましくは6.5MPa以上である。120℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(120℃)は、好ましくは5.0MPa以上、より好ましくは5.5MPa以上である。25℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(25℃)に対する100℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(120℃)の比(E’(120℃)/E’(25℃))は、好ましくは0.80以上1.20以下、より好ましくは0.85以上1.10以下である。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物におけるJISK6394:2007に基づいて、動歪1.0%及び周波数10Hzとして測定される25℃での列理方向の損失正接tanδ(25℃)は、好ましくは0.070以下、より好ましくは0.065以下である。120℃での列理方向の損失正接tanδ(120℃)は、好ましくは0.065以下、より好ましくは0.060以下である。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物は、伝動ベルト、タイヤ、ホース等のゴム製品に用いることができ、これらのうち特に伝動ベルトへの適用に好適である。
図1は、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物を用いたゴム製品の一例としてのVリブドベルトB(伝動ベルト)を示す。このVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。VリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700mm以上3000mm以下、ベルト幅が10mm以上36mm以下、及びベルト厚さが4.0mm以上5.0mm以下である。
VリブドベルトBは、ベルト内周側のプーリ接触部分を構成する圧縮ゴム層11とベルト外周側の接着ゴム層12との積層体で構成されたベルト本体10を備える。ベルト本体10の接着ゴム層12の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線13が埋設されている。また、接着ゴム層12の表面、つまり、ベルト背面には、補強布14が貼設されている。圧縮ゴム層11の厚さは例えば1.0mm以上3.6mm以下であり、接着ゴム層12の厚さは例えば1.0mm以上2.5mm以下である。
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0mm以上3.0mm以下、基端間の幅が1.0mm以上3.6mm以下である。Vリブ数は例えば3個以上6個以下である(図1では6個)。接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されている。
圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12のそれぞれは、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋剤により架橋したゴム組成物で形成されている。そして、実施形態に係るゴム組成物の製造方法をVリブドベルトBの製造方法に含めることにより、圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12のうちの少なくとも一方を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することができる。このようにVリブドベルト10を構成する圧縮ゴム層11及び接着ゴム層12のうちの少なくとも一方を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することにより、セルロース微細繊維の分散性が高いことから、その優れた補強性能を得ることができる。
心線13は、例えば、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線13の直径は例えば0.5mm以上2.5mm以下であり、断面における相互に隣接する心線13中心間の寸法は例えば0.05mm以上0.20mm以下である。心線13は、ベルト本体10の接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬された後に加熱されるRFL接着処理及びゴム糊に浸漬された後に乾燥されるゴム糊接着処理が施されている。これらの接着処理により心線13と接着ゴム層12との間には、図2に示すように、RFL水溶液による内側のRFL接着層16、及びゴム糊によるゴム組成物で形成された外側のゴム糊接着層17が介設されることとなるが、実施形態に係るゴム組成物の製造方法をVリブドベルトBの製造方法に含めることにより、そのうちゴム糊接着層17を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することができる。このように心線13と接着ゴム層12との間のゴム糊接着層17を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することにより、セルロース微細繊維の分散性が高いことから、その高い補強性能に起因して高い接着性能を得ることができる。
補強布14は、例えば、ポリエステル繊維(PET)、ナイロン繊維、綿などで形成された織布等で構成されている。補強布14の厚さは例えば0.4mm以上0.8mm以下である。補強布14は、ベルト本体10の接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬された後に加熱されるRFL接着処理、薄い第1ゴム糊に浸漬された後に乾燥される第1ゴム糊接着処理、及び接着ゴム層12側となる表面に濃い第2ゴム糊がコーティングされた後に乾燥される第2ゴム糊接着処理が施されている。この接着処理により補強布14と接着ゴム層12との間には、図3に示すように、RFL水溶液によるRFL接着層18、第1ゴム糊によるゴム組成物で形成された第1ゴム糊接着層191、及び第2ゴム糊によるゴム組成物で形成された第2ゴム糊接着層192が介設されることとなるが、実施形態に係るゴム組成物の製造方法をVリブドベルトBの製造方法に含めることにより、そのうち第1及び/又は第2ゴム糊接着層191,192を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することができる。このように補強布14と接着ゴム層12との間の第1及び/又は第2ゴム糊接着層191,192を形成するゴム組成物を、実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物で構成することにより、セルロース微細繊維の分散性が高いことから、その高い補強性能に起因して高い接着性能を得ることができる。
実施形態に係る製造方法によって得られるゴム組成物は、図1のVリブドベルトBのみならず、図4Aに示すローエッジVベルトB、図4Bに示すラップドVベルトB、図4Cに示す平ベルトB、及び図4Dに示す歯付ベルトBのベルト本体10を形成するゴム組成物、心線13とベルト本体10との間の接着層を形成するゴム組成物、補強布14とベルト本体10との間の接着層を形成するゴム組成物を構成することができ、それによりセルロース微細繊維による高い補強性能或いは高い接着性能を得ることができる。
(酸化処理パルプ)
<酸化処理パルプA>
ソフトブリーチクラフトパルプを0.1Mの塩酸とイオン交換水とで十分に洗浄した。その洗浄したパルプ(固形分13質量%)400gを4000mlのイオン交換水と混合し、それに2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルラジカル(TEMPO)0.78g及びNaBr5.0gを添加して1時間撹拌した。撹拌したパルプ混合液に2Mの次亜塩素酸ナトリウム水溶液125mlを加え、pHをモニタリングしながらpHが10.0を維持するように0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下し、pHの変動が無くなった時点で滴下を終了してそのまま1時間撹拌した。以上の操作によって、TEMPO酸化触媒法により、パルプに含まれるセルロース分子中のC6位の水酸基を選択的にカルボキシル基に酸化した。このパルプ混合液を濾過し、濾物をイオン交換水で十分に洗浄した後、100℃の温度雰囲気下で24時間乾燥させた。得られたTEMPO酸化処理パルプを酸化処理パルプAとした。
<酸化処理パルプB>
酸化処理パルプAを作製するのと同様の操作で濾物を得た後、その濾物を4000mlのイオン交換水に加えて撹拌した。撹拌したパルプ混合液にpHをモニタリングしながらpHが2.0になるまで1Mの塩酸を滴下し、パルプに含まれるセルロース分子中に導入されたカルボキシル基のNaをプロトン化した。このパルプ混合液を濾過し、濾物をイオン交換水で十分に洗浄した。
濾物をイオン交換水とイソプロピルアルコールとを1:1の体積割合で混合した4000mlの混合液に加えて撹拌した。撹拌したパルプ混合液にpHをモニタリングしながらpHが7.0になるまでn−オクチルアミン(東京化成工業社製)を滴下し、パルプに含まれるセルロース分子中に導入されたカルボキシル基をアミンで中和して変性させた。このパルプ混合液を濾過し、濾物をイオン交換水で十分に洗浄した。この操作を複数回繰り返した後、100℃の温度雰囲気下で24時間乾燥させた。得られたアミン変性TEMPO酸化処理パルプを酸化処理パルプBとした。
(ゴム組成物)
以下の実施例1〜4及び比較例1〜4のゴム組成物を作製した。それぞれの構成は表1にも示す。
<実施例1>
酸化処理パルプA30g及び解繊助剤Aとしてパラフィン誘導体(サンパー2280 日本サン石油社製)270gを粉砕機(アブソルートブレンダー 大阪ケミカル社)に投入し、粉砕機のカッターを10000rpmで回転させて酸化処理パルプA及び解繊助剤Aの粘土状の混練物を得た。
ゴム成分のクロロプレンゴム(ショウプレンGS 昭和電工社製)をオープンロールで素練りし、そこにゴム成分100質量部に対して上記混練物を20質量部(酸化処理パルプA及びその解繊物2質量部並びに解繊助剤A18質量部)投入して混練した。その後、加硫促進助剤の酸化亜鉛及び酸化マグネシウムをゴム成分100質量部に対してそれぞれ5質量部及び4質量部を投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を調製した。この未架橋ゴム組成物を、成形温度170℃及び成形時間20分としてプレス成形により架橋させてシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を実施例1とした。
<実施例2>
酸化処理パルプAの代わりに酸化処理パルプBを用いたことを除いて実施例1と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を実施例2とした。
<実施例3>
解繊助剤Aの代わりに解繊助剤Bとしてクロロプレンゴムと反応性を有するトリメチロールプロパントリメタクリレート(ライトエステルTMP 共栄社化学社製)を用いたことを除いて実施例1と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を実施例3とした。
<実施例4>
解繊助剤Aの代わりに解繊助剤Bを用いたことを除いて実施例2と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を実施例4とした。
<比較例1>
ゴム成分のクロロプレンゴムをオープンロールで素練りし、そこにゴム成分100質量部に対して、酸化処理パルプA2質量部、解繊助剤A18質量部、酸化亜鉛5質量部、及び酸化マグネシウム4質量部を投入して混練することにより未架橋ゴム組成物を調製した。この未架橋ゴム組成物を、成形温度170℃及び成形時間20分としてプレス成形により架橋させてシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を比較例1とした。
<比較例2>
酸化処理パルプAの代わりに酸化処理パルプBを用いたことを除いて比較例1と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を比較例2とした。
<比較例3>
解繊助剤Aの代わりに解繊助剤Bを用いたことを除いて比較例1と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を比較例3とした。
<比較例4>
解繊助剤Aの代わりに解繊助剤Bを用いたことを除いて比較例2と同様の構成のシート状のゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を比較例4とした。
Figure 0006941446
(試験方法)
実施例1〜4及び比較例1〜4のそれぞれについて、JISK6253:2012に基づいて、タイプAデュロメータを用いてゴム硬さを測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜4のそれぞれについて、JISK6251:2010に基づいて、列理方向の引張強さTB及び切断時伸びEBを測定した。
実施例1〜4及び比較例1〜4のそれぞれについて、JISK6394:2007に基づいて、動歪1.0%及び周波数10Hzとして、25℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(25℃)及び損失正接tanδ(25℃)、並びに120℃での列理方向の貯蔵たて弾性係数E’(120℃)及び損失正接tanδ(120℃)を測定した。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
表1によれば、実施例1〜4は、比較例1〜4とゴム硬さに大差は見られないものの、比較例1〜4よりも引張強さTB及び切断時伸びEBが著しく高いことが分かる。また、実施例1〜4は、比較例1〜4よりも貯蔵たて弾性係数E’(25℃)及びE’(120℃)が高く且つ損失正接tanδ(25℃)及びtanδ(120℃)が低いことが分かる。これらの結果は、実施例1〜4が比較例1〜4よりもセルロース微細繊維の分散性が高いことによるものであると考えられる。
また、酸化処理パルプAを用いた実施例1よりもアミン変性した酸化処理パルプBを用いた実施例2の方が各特性が優れる傾向が認められる。実施例3及び4の対比でも同様である。
更に、解繊助剤としてパラフィン誘導体を用いた実施例1よりも解繊助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレートを用いた実施例3の方が各特性が優れる傾向が認められる。実施例2及び4の対比でも同様である。
本発明は、ゴム組成物の製造方法及びそれを含む伝動ベルトの製造方法の技術分野について有用である。
B Vリブドベルト,ローエッジVベルト,ラップドVベルト,平ベルト,歯付ベルト
10 ベルト本体
11 圧縮ゴム層
12 接着ゴム層
13 心線
14 補強布
15 Vリブ
16 RFL接着層
17 ゴム糊接着層
18 RFL接着層
191 第1ゴム糊接着層
192 第2ゴム糊接着層

Claims (10)

  1. 酸化処理パルプ及び液状の解繊助剤を混合して混練するステップと、得られた混練物をゴム成分に加えて更に混練するステップとを含む、前記酸化処理パルプが解繊されて形成されたセルロース微細繊維が前記ゴム成分に分散したゴム組成物の製造方法であって、
    前記液状の解繊助剤は、共架橋剤及び/又は可塑剤を含むゴム組成物の製造方法
  2. 請求項1に記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記酸化処理パルプがアミン変性されたものであるゴム組成物の製造方法。
  3. 請求項に記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記アミンが炭素数8以上のアルキル基を有するゴム組成物の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記液状の解繊助剤は、前記共架橋剤であるアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、及び液状ポリマーのうちの1種又は2種以上を含むゴム組成物の製造方法。
  5. 請求項4に記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記ゴム成分がクロロプレンゴムを含有するとともに、前記液状の解繊助剤の前記共架橋剤が、前記メタクリル酸誘導体のトリメチロールプロパントリメタクリレートを含むゴム組成物の製造方法
  6. 請求項4又は5に記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記液状の解繊助剤の前記共架橋剤が、前記液状ポリマーの液状イソプレン又は液状ブタジエンを含むゴム組成物の製造方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記液状の解繊助剤は、前記可塑剤であるフタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、セバシン酸誘導体、ドデカン−2−酸誘導体、マレイン酸誘導体、フマル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、ピロメリット酸誘導体、クエン酸誘導体、イタコン酸誘導体、オレイン酸誘導体、リシノール酸誘導体、ステアリン酸誘導体、スルホン酸誘導体、リン酸誘導体、グルタール酸誘導体、グリコール誘導体、グリセリン誘導体、パラフィン誘導体、及びエポキシ誘導体のうちの1種又は2種以上を含むゴム組成物の製造方法。
  8. 請求項7に記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記ゴム成分がクロロプレンゴムを含有するとともに、前記液状の解繊助剤の前記可塑剤が前記パラフィン誘導体を含むゴム組成物の製造方法
  9. 請求項1乃至8のいずれかに記載されたゴム組成物の製造方法において、
    前記酸化処理パルプの前記解繊助剤に対する質量混合比が1/20以上1/1以下であるゴム組成物の製造方法。
  10. 請求項1乃至いずれかに記載されたゴム組成物の製造方法を含む伝動ベルトの製造方法。
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