JP6941208B2 - 酸化ガリウム膜の製造方法および縦型半導体装置の製造方法 - Google Patents
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Description
このような酸化ガリウム系半導体を用いた半導体装置を実現するために用いる下地材料としては、主にサファイア基板が検討されてきた。
さらに、下地材料の特性は低損失な半導体装置を実現するための電気特性上の課題も引き起こしている。例えば、縦型半導体装置では下地材料や、下地材料とチャネル層との間の層の低損失化が要求されている。
このように、これまでに結晶成長技術の実証されているサファイア基板を用いた場合であっても、下地材料等の貼り替えは、実現困難であった。
基板上に、結晶性酸化物半導体層および光吸収層を積層し、該光吸収層に光を照射することで前記光吸収層を分解し、前記結晶性酸化物半導体層と前記基板とを分離することで結晶性酸化物半導体膜を製造する工程を含むことを特徴とする結晶性酸化物半導体膜の製造方法を提供する。
表面が単結晶構造を有する基板と、該基板上に酸化鉄(III)層と酸化ガリウム層とが、ミストCVD法によりこの順に形成されている基体に対し、光を照射することで前記酸化ガリウム層と基板とを前記酸化鉄(III)層で分離し、
該酸化ガリウム層の分離により酸化ガリウム膜を製造することを特徴とする酸化ガリウム膜の製造方法を提供する。
また、酸化ガリウム層等はミストCVD法で成膜するためコスト的にも有利である。
なお、本発明における上記酸化ガリウム層(酸化ガリウム膜)は、含まれる金属の主成分がガリウムである金属酸化物層(膜)を意味し、他の金属成分も含むことができる。
また、上記酸化鉄(III)層も、含まれる金属の主成分が鉄(III)である金属酸化物層を意味し、他の金属成分も含むことができる。
また、本発明の酸化ガリウム膜の製造方法によれば、酸化ガリウム膜、例えば半導体装置(特に縦型の素子)に有用な結晶性酸化ガリウム半導体膜を工業的に有利に製造できる。酸化ガリウム膜を容易に製造でき、しかもコスト面でも有利である。
さらに、本発明の縦型半導体装置の製造方法であれば、工業的に有利に縦型半導体装置を製造することができる。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、基板上に、結晶性酸化物半導体層および光吸収層を積層し、該光吸収層に光を照射することで光吸収層の一部を分解し、結晶性酸化物半導体層と基板とを分離することで結晶性酸化物半導体膜を製造する結晶性酸化物半導体膜の製造方法により、容易に基板から剥離して結晶性酸化物半導体膜を得ることができ、工業的に有利な製造方法であることを見出し、本発明を完成した。
図6に、本発明の結晶性酸化物半導体膜の製造方法において、結晶性酸化物半導体膜を分離する前の基体(基板、光吸収層、結晶性酸化物半導体層)の一例を示す。
基体1200は、基板1201と、光吸収層1202と、結晶性酸化物半導体層1203を有している。以下、各部について詳述する。
(基板)
基板1201は、表面に光吸収層1202、結晶性酸化物半導体層1203を成膜可能であり、これらの層状の膜を支持できるものであれば特に限定されない。該基板1201としては、例えば、サファイア、チタン酸バリウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、スカンジウム酸ジスプロシウム、三酸化二鉄、四酸化三鉄、スカンジウム酸ガドリニウム、タンタル酸リチウム、タンタル酸カリウム、アルミン酸ランタン、ランタンストロンチウムアルミネート、ランタンストロンチウムガレート、アルミニウムタンタル酸ランタンストロンチウム、酸化マグネシウム、スピネル、酸化マンガン、酸化ニッケル、水晶、スカンジウムマグネシウムアルミネート、酸化ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸化スズ、酸化テルル、酸化チタン、YAG、イットリア安定化ジルコニア、イットリウムアルミネート、酸化亜鉛、等の酸化物の他、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、グラファイト、雲母、フッ化カルシウムや、銀、アルミニウム、金、銅、鉄、ニッケル、チタン、タングステン、亜鉛等の金属のなかから選択しても良いが、これに限られるものではない。
なお、ここでいう基板の例としては自立膜等も挙げることができ、自立する酸化ガリウム膜、板状体の酸化ガリウム膜を用いたり、酸化ガリウム膜を有する基板も用いることもできる。
該基板は、多結晶でもアモルファスでも構わないが、単結晶であることが好ましい。
本発明において結晶性酸化物半導体層1203は特に限定されないが、例えば金属酸化物層があげられる。より具体的には、インジウム、アルミニウムおよびガリウムから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含むのが、デバイスに用いた際の放熱性および耐圧性の更なる向上の観点から好ましい。ここでいう主成分とは、金属成分のうち50〜100%含まれることを意味し、他の金属成分を含んでいても良い。該結晶性酸化物半導体層1203は単結晶、多結晶、アモルファスのいずれでも構わないが、単結晶の方が好ましい。膜厚は0.1〜50μmが好ましい。
本発明において光吸収層1202は、外部から照射した光を吸収し、自らが分解する層である。基板1201ないし結晶性酸化物半導体層1203のいずれかと吸収係数もしくはバンドギャップに大きな違いがあることが好ましい。また、結晶成長の観点からは、結晶構造や格子定数が基板1201や結晶性酸化物半導体層1203に近いことが好ましい。結晶性酸化物半導体層1203が、インジウム、アルミニウムおよびガリウムから選ばれる1種または2種以上の元素を含有する結晶性酸化物半導体を主成分として含む場合は、Cr2O3、Ir2O3、Fe2O3、Rh2O3、V2O3、Ti2O3、などの金属酸化物が好適に用いられ、これらを主成分とする混晶でもかまわない。ここでいう主成分とは、金属成分のうち50〜100%含まれることを意味し、他の金属成分を含んでいても良い。該光吸収層1202は単結晶、多結晶、アモルファスのいずれでも構わないが、単結晶の方が好ましい。膜厚は適宜決定されるが1〜500nmが好ましい。
本発明に用いられる基体1200は、基板1201上に、少なくとも光吸収層1202と結晶性酸化物半導体層1203がこの順に形成されている。
この序列が保たれていれば、層間に別の層が形成されていても構わない。すなわち、基板1201と光吸収層1202間、また、光吸収層1202と結晶性酸化物半導体層1203間に、例えば、酸化アルミ、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化クロム、酸化鉄、およびこれらの混晶などが形成されていても構わない。
また、結晶性酸化物半導体膜1203上に別の層が形成されてもかまわない。
後に詳述する本発明における剥離工程において、基体1200に照射する光を、基板1201側または結晶性酸化物半導体層1203側から光吸収層1202にまで届かせられる構造であれば良い。
(剥離)
図6に示すように、例えば結晶性酸化物半導体層1203側から、基体1200に光を照射する(照射光1205)。
照射光1205の光源としては、ハロゲンランプ、低圧放電ランプ、高圧放電ランプ等、いずれを用いても構わないが、レーザーもしくはフラッシュランプは、基体1200、特に光吸収層1202に短時間に高エネルギー密度を与えることができるため好ましい。レーザー光やフラッシュランプの光を用いるのであれば、生産性高く剥離工程を行うことができる。
フラッシュランプは、例えば、基体温度を室温〜300℃として、処理時間を0.01〜1000ミリ秒とできる。フラッシュランプは短時間で大面積に効果的に熱処理ができるので、熱歪、ひび割れ等の発生のおそれがなくなる。
図7、8にこの結晶性酸化物半導体膜の分離の様子を示す。
前者の場合、図7に示すように、光吸収層1202における結晶性酸化物半導体層1203側の部分が照射光1205を吸収して、金属もしくは酸化数が低下した金属酸化物と酸素に分解され、結晶性酸化物半導体層1203が基板1201から剥離されて結晶性酸化物半導体膜1206が製造される。
一方で後者の場合、図8に示すように、光吸収層1202における基板1201側の部分が照射光1205を吸収して、金属もしくは酸化数が低下した金属酸化物と酸素に分解され、結晶性酸化物半導体層1203が光吸収層1202とともに基板1201から剥離されて光吸収層付きの結晶性酸化物半導体膜1206が製造される。付いてきた光吸収層は必要に応じて除去すれば良い。
本発明の結晶性酸化物半導体膜1206は、様々な半導体装置に有用であり、とりわけ、パワーデバイスに有用である。また、半導体装置は、電極が半導体層の片面側に形成された横型の素子(横型デバイス)と、半導体層の表裏両面側にそれぞれ電極を有する縦型の素子(縦型デバイス)に分類することができ、本発明においては、前記結晶性酸化物半導体膜1206を横型デバイスにも縦型デバイスにも好適に用いることができるが、中でも、縦型デバイスに用いることが好ましい。前記半導体装置としては、例えば、ショットキーバリアダイオード(SBD)、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、高電子移動度トランジスタ(HEMT)、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)、静電誘導トランジスタ(SIT)、接合電界効果トランジスタ(JFET)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)または発光ダイオードなどが挙げられる。本発明においては、前記半導体装置が、SBD、MOSFET、SIT、JFETまたはIGBTであるのが好ましく、SBD、MOSFETまたはSITであるのがより好ましい。
基体200は、基板201と、酸化鉄(III)層202と、酸化ガリウム層203を有している。以下、各部について詳述する。
(基板)
基板201は、表面に酸化鉄(III)層202、酸化ガリウム層203を成膜可能であり、これらの層状の膜を支持できるもので、かつ、少なくとも表面が単結晶構造を有するものであれば特に限定されない。該基板201としては、単結晶基板又は表面に単結晶薄膜を有する基板を用いることができる。
例えば、基板として、サファイア、チタン酸バリウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化銅、スカンジウム酸ジスプロシウム、三酸化二鉄、四酸化三鉄、スカンジウム酸ガドリニウム、タンタル酸リチウム、タンタル酸カリウム、アルミン酸ランタン、ランタンストロンチウムアルミネート、ランタンストロンチウムガレート、アルミニウムタンタル酸ランタンストロンチウム、酸化マグネシウム、スピネル、酸化マンガン、酸化ニッケル、水晶、スカンジウムマグネシウムアルミネート、酸化ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、酸化スズ、酸化テルル、酸化チタン、YAG、イットリア安定化ジルコニア、イットリウムアルミネート、酸化亜鉛、等の酸化物の他、シリコン、ゲルマニウム、シリコンカーバイド、グラファイト、雲母、フッ化カルシウムや、銀、アルミニウム、金、銅、鉄、ニッケル、チタン、タングステン、亜鉛等の金属のなかから、単結晶基板を選択しても良いし、上記の材料から選択した基板の表面に単結晶膜を形成したものを用いることもできるが、これに限られるものではない。
なお、ここでいう基板の例としては自立膜等も挙げることができ、自立する単結晶酸化ガリウム膜、板状体の単結晶酸化ガリウム膜を用いたり、単結晶酸化ガリウム膜を有する基板も用いることもできる。
前述したように、本発明において酸化ガリウム層203とは、酸化ガリウムを主成分とする層であり、金属の主成分がガリウムである金属酸化物膜を意味する。ここでいう主成分とは、金属成分のうち50〜100%がガリウムであることを意味し、他の金属成分を含んでいても良い。該酸化ガリウム層203は単結晶、多結晶、アモルファスのいずれでも構わないが、単結晶の方が好ましい。膜厚は0.1〜50μmが好ましい。
前述したように、本発明において酸化鉄(III)層202とは、酸化鉄(III)を主成分とする層であり、金属の主成分が鉄(III)である金属酸化物膜を意味する。ここでいう主成分とは、金属成分のうち50〜100%が鉄(III)であることを意味し、他の金属成分を含んでいても良い。該酸化鉄(III)層202は単結晶、多結晶、アモルファスのいずれでも構わないが、単結晶の方が好ましい。
なお膜厚は1〜500nmが好ましい。このような膜厚であれば、酸化ガリウム膜の結晶性を維持しながら、剥離効果をより一層容易に得ることができる。
本発明に用いられる基体200は、基板201上に、少なくとも酸化鉄(III)層202と酸化ガリウム層203がこの順に形成されている。
この序列が保たれていれば、層間に別の層が形成されていても構わない。すなわち、基板201と酸化鉄(III)層202間、また、酸化鉄(III)層202と酸化ガリウム層203間に、例えば、酸化アルミ、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化クロム、酸化鉄、およびこれらの混晶などが形成されていても構わない。
また、酸化ガリウム層203上に別の層が形成されてもかまわない。
後に詳述する本発明における剥離工程において、基体200に照射する光を、基板201側または酸化ガリウム層203側から酸化鉄(III)層202にまで届かせられる構造であれば良い。
(成膜装置)
図2に、本発明に係る成膜方法に使用可能な成膜装置101の一例を示す。成膜装置101は、原料溶液をミスト化してミストを発生させるミスト化部120と、ミストを搬送するキャリアガスを供給するキャリアガス供給部130と、ミストを熱処理して基板上に成膜を行う成膜部140と、ミスト化部120と成膜部140とを接続し、キャリアガスによってミストが搬送される搬送部109とを有する。また、成膜装置101は、成膜装置101の全体又は一部を制御する制御部(図示なし)を備えることによって、その動作が制御されてもよい。
なお、ここで、本発明でいうミストとは、気体中に分散した液体の微粒子の総称を指し、霧、液滴等と呼ばれるものを含む。
酸化鉄(III)層202用の原料溶液(水溶液)104aには、少なくとも鉄を含んでいれば特に限定されない。すなわち、鉄の他、例えば、ガリウム、インジウム、アルミニウム、バナジウム、チタン、クロム、ロジウム、イリジウム、ニッケル及びコバルトから選ばれる1種又は2種以上の金属を含んでもよい。前記金属を錯体又は塩の形態で、水に溶解又は分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩などが挙げられる。また、上記金属を、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸等に溶解したものも塩の水溶液として用いることができる。溶質濃度は0.001〜1mol/Lが好ましい。
この酸化ガリウム層203用の原料溶液104aには、導電性を制御するためにドーパントが含まれていてもよい。このドーパントは特に限定されない。例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、バナジウム又はニオブ等のn型ドーパント、又は、銅、銀、スズ、イリジウム、ロジウム等のp型ドーパントなどが挙げられる。
ミスト化部120では、原料溶液104aをミスト化してミストを発生させる。ミスト化手段は、原料溶液104aをミスト化できさえすれば特に限定されず、公知のミスト化手段であってよいが、超音波振動によるミスト化手段を用いることが好ましい。より安定してミスト化することができるためである。超音波の周波数は1〜3MHzが好ましいが、ミスト化できればこれに限られない。
搬送部109は、ミスト化部120と成膜部140とを接続する。搬送部109を介して、ミスト化部120のミスト発生源104から成膜部140の成膜室107へと、キャリアガスによってミストが搬送される。搬送部109は、例えば、供給管109aとすることができる。供給管109aとしては、例えば石英管や樹脂製のチューブなどを使用することができる。
成膜部140では、ミストを加熱し熱反応を生じさせて、基板110(すなわち、図1における基板201)の表面の一部又は全部に成膜を行う。成膜部140は、例えば、成膜室107を備え、成膜室107内には基板110が設置されており、該基板110を加熱するためのホットプレート108を備えることができる。ホットプレート108は、図2に示されるように成膜室107の外部に設けられていてもよいし、成膜室107の内部に設けられていてもよい。また、成膜室107には、基板110へのミストの供給に影響を及ぼさない位置に、排ガスの排気口112が設けられてもよい。
後述するが、成膜の際には先に酸化鉄(III)層を所定の時間成膜した後、引き続いて酸化ガリウム層を成膜する。
キャリアガス供給部130は、キャリアガスを供給するキャリアガス源102aを有し、キャリアガス源102aから送り出されるキャリアガス(以下、「主キャリアガス」という)の流量を調節するための流量調節弁103aを備えていてもよい。また、必要に応じて希釈用キャリアガスを供給する希釈用キャリアガス源102bや、希釈用キャリアガス源102bから送り出される希釈用キャリアガスの流量を調節するための流量調節弁103bを備えることもできる。
主キャリアガスの流量および希釈用キャリアガスの流量は成膜室や基板の大きさによって適宜決められるが、通例1〜20L/分であり、好ましくは2〜10L/分である。
次に、以下、図2を参照しながら、ミストCVD法による成膜方法の一例を説明する。まず、原料溶液104aをミスト化部120のミスト発生源104内に収容し、基板110をホットプレート108上に直接又は成膜室107の壁を介して設置し、ホットプレート108を作動させる。
(剥離)
図1に示すように、例えば酸化ガリウム層203側から、基体200に光を照射する(照射光205)。
照射光205の波長は、600nm以下の光を含んでいることが好ましい。このような波長の光を用いることで、より確実に照射光205を酸化鉄(III)層202に吸収させることができ、剥離効率をより向上させることができる。
フラッシュランプは、例えば、基体温度を室温〜300℃として、処理時間を0.01〜1000ミリ秒とできる。フラッシュランプの波長としては、ランプである以上ある程度の波長域があるのは避けられないが、700nm以下の波長域でピーク強度を有するものが望ましい。この波長域に合致するランプ光源としては、キセノンランプによる加熱が一般的である。フラッシュランプは短時間で大面積に効果的に熱処理ができるので、熱歪、ひび割れ等の発生のおそれがなくなる。
図4、5にこの酸化ガリウム層の分離の様子を示す。
前者の場合、図4に示すように、酸化鉄(III)層202における酸化ガリウム層203側の部分が照射光205を吸収して、鉄と酸素に分解され、もしくは溶解し再凝固する際多結晶化して密着強度が低下し、酸化ガリウム層203が基板201から剥離されて酸化ガリウム膜206が製造される。
一方で後者の場合、図5に示すように、酸化鉄(III)層202における基板201側の部分が照射光205を吸収して、鉄と酸素に分解され、もしくは溶解し再凝固する際多結晶化して密着強度が低下し、酸化ガリウム層203が酸化鉄(III)層202とともに基板201から剥離されて酸化鉄(III)層付きの酸化ガリウム膜206が製造される。付いてきた酸化鉄(III)層は必要に応じて除去すれば良い。
本発明の酸化ガリウム膜の製造方法に基づいて、図2−3に示す成膜装置101を用いて、まず、基板(c面サファイア基板)上に酸化鉄(α−Fe2O3)/酸化ガリウム(α−Ga2O3)積層体の成膜を行った。
酸化鉄(III)層形成: 35%塩化水素酸溶液を体積比2%で混合した水溶液に、鉄アセチルアセトナートを0.05mol/Lとなるよう混合したものを原料溶液104aとした。
得られた原料溶液104aをミスト発生源104内に収容した。次に、基板110として4インチ(直径100mm)のc面サファイア基板を、成膜室107内のホットプレート108上に戴置し、ホットプレート108を作動させて温度を550℃に昇温した。
以降は上記酸化鉄(III)層成膜と概ね同様の手続きで成膜を行った。具体的には、得られた原料溶液104aをミスト発生源104内に収容した。続いて、流量調節弁103a、103bを開いてキャリアガス源102a、希釈用キャリアガス源102bからキャリアガスとして窒素ガスを成膜室107内に供給し、成膜室107の雰囲気をキャリアガスで十分に置換するとともに、主キャリアガスの流量を2L/分に、希釈用キャリアガスの流量を5L/minにそれぞれ調節した。
実施例1において、酸化鉄(III)層の成膜時間を15分としたものを4試料用意した。これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価、レーザー照射を行った。膜厚解析の結果、酸化鉄(III)層は平均で0.23μm、酸化ガリウム層は平均で1.1μmであった。X線回折によるα−Ga2O3ピークのロッキングカーブ半値幅は11〜14秒と良好であった。得られた1試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射により酸化ガリウム層を容易に剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例1において、酸化鉄(III)層を形成しない、すなわち、酸化ガリウム層だけの基体を作製した。これ以外は実施例1と同じ条件で成膜、評価を行い、レーザー照射を行った。膜厚解析の結果、酸化ガリウム層は1.2μmであった。X線回折によるα−Ga2O3ピークのロッキングカーブ半値幅は13秒と良好であったが、レーザー照射しても試料に何ら変化は見られず、酸化ガリウム層を剥離することはできず、酸化ガリウム膜を得ることはできなかった。
実施例2で得た1試料に対し、基体に照射するレーザー波長を1064nmとした。レーザー照射により酸化ガリウム層を剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2で得た1試料に対し、フラッシュランプとしてハロゲンランプを10ミリ秒照射した。ランプ照射により酸化ガリウム層を剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2で得た1試料に対し、フラッシュランプとしてキセノンランプを1ミリ秒照射した。ランプ照射により酸化ガリウム層を剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2において、酸化ガリウム層の代わりにInGaO層を成膜した。これ以外は実施例2と同じ条件で成膜、レーザー照射を行った。得られた試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射によりInGaO層を容易に剥離でき、InGaO膜が得られたことを確認できた。
以上のように、基板と結晶性酸化物半導体層であるInGaO層間に光吸収層である酸化鉄(III)層を介在させることで、光照射によりInGaO層を容易に剥離してInGaO膜を得ることができる。
実施例2において、酸化鉄(III)層の代わりに酸化クロム層を成膜した。これ以外は実施例2と同じ条件で成膜、評価、レーザー照射を行った。X線回折により、α−Ga2O3が形成されたことが確認できた。得られた試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射により酸化ガリウム層を容易に剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2において、酸化鉄(III)層の代わりに酸化バナジウム層を成膜した。これ以外は実施例2と同じ条件で成膜、評価、レーザー照射を行った。X線回折により、α−Ga2O3が形成されたことが確認できた。得られた試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射により酸化ガリウム層を容易に剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2において、酸化鉄(III)層の代わりに酸化チタン層を成膜した。これ以外は実施例2と同じ条件で成膜、評価、レーザー照射を行った。X線回折により、α−Ga2O3が形成されたことが確認できた。得られた試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射により酸化ガリウム層を容易に剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
実施例2において、基板をc面サファイア基板の代わりにタンタル酸リチウム基板とした。これ以外は実施例2と同じ条件で成膜、評価、レーザー照射を行った。X線回折により、α−Ga2O3が形成されたことが確認できた。得られた試料に対しレーザー照射を行ったところ、レーザー照射により酸化ガリウム層を容易に剥離でき、酸化ガリウム膜が得られたことを確認できた。
以上のように、基板と酸化ガリウム層間に光吸収層を介在させることで、光照射により酸化ガリウム層を容易に剥離して酸化ガリウム膜を得ることができる。
102b…希釈用キャリアガス源、 103a…流量調節弁、
103b…流量調節弁、 104…ミスト発生源、
104a…原料溶液、 105…容器、 105a…水、 106…超音波振動子、
107…成膜室、 108…ホットプレート、 109…搬送部、
109a…供給管、 110…基板、 112…排気口、 116…超音波発振器、
120…ミスト化部、 130…キャリアガス供給部、 140…成膜部、
200…基体、 201…基板、 202…酸化鉄(III)層、
203…酸化ガリウム層、 205…照射光、 206…剥離した酸化ガリウム膜、
1200…基体、 1201…基板、 1202…光吸収層、
1203…結晶性酸化物半導体層、 1205…照射光、
1206…剥離した結晶性酸化物半導体膜。
Claims (7)
- 酸化ガリウム膜の製造方法であって、
表面が単結晶構造を有する基板と、該基板上に酸化鉄(III)層と酸化ガリウム層とが、ミストCVD法によりこの順に形成されている基体に対し、前記酸化ガリウム層側から光を照射することで前記酸化ガリウム層と基板とを前記酸化鉄(III)層で分離し、
該酸化ガリウム層の分離により酸化ガリウム膜を製造することを特徴とする酸化ガリウム膜の製造方法。 - 前記酸化鉄(III)層の厚みを、1〜500nmとすることを特徴とする請求項1に記載の酸化ガリウム膜の製造方法。
- 前記照射する光として、波長が600nm以下の光を含むものとすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化ガリウム膜の製造方法。
- 前記照射する光を、レーザー光とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化ガリウム膜の製造方法。
- 前記照射する光を、フラッシュランプの光とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化ガリウム膜の製造方法。
- 前記基板の直径を、50mm以上とすることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の酸化ガリウム膜の製造方法。
- 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の酸化ガリウム膜の製造方法により製造した酸化ガリウム膜を用いて縦型半導体装置を製造することを特徴とする縦型半導体装置の製造方法。
Priority Applications (8)
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