本発明に係る苗移植機の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、かつ、容易なもの、或いは実質的に同一のものいわゆる均等の範囲のものが含まれる。
なお、以下では前後、上下、左右の方向基準は、苗移植機1が苗を圃場に植え付ける場合に進む方向を前方とした前後方向、重力が作用する方向を下方とした上下方向、前後方向および上下方向に垂直な方向を左右方向とする。また、左右方向は、前進時における作業者の右手側を右方向とし、左手側を左方向とする。
図1および図2を参照して苗移植機1の概略構成について説明する。図1は、実施形態に係る苗移植機1の一例を示す概略左側面図である。図2は、実施形態に係る苗移植機1の一部を示す概略背面図である。
苗移植機1は、圃場を走行しながら、圃場の表土面(圃場面)に苗を植え付ける。苗移植機1は、走行車体2と、苗植付装置3とを備える。走行車体2は、それぞれ左右一対の前輪4と、後輪5とを備える。なお、走行車体2は、走行時には各車輪(左右一対の前輪4および左右一対の後輪5)が駆動する四輪駆動となる。
走行車体2は、左右方向の中央に配置され、前後方向に延びるメインフレームを備える。また、走行車体2には、エンジンや、動力伝達装置12などが設けられる。
エンジンは、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。エンジンは、走行車体2の左右方向の中央に配置され、作業者が着座する操縦席10の下方に配置される。操縦席は、エンジンカバー11の上方に設けられる。
エンジンからの駆動力は、前輪4や、後輪5に伝達される他に、苗植付装置3の苗植付部31にも伝達され、苗植付部31を駆動するためにも用いられる。
動力伝達装置12は、油圧式無段変速機13と、ベルト式動力伝達機構14とを備える。油圧式無段変速機13は、主変速機であり、静油圧式の無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)である。
ベルト式動力伝達機構14は、エンジンからの動力を油圧式無段変速機13に伝達する。ベルト式動力伝達機構14は、ベルトと、プーリとを備え、エンジンからの動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機13に伝達する。
また、動力伝達装置12は、ミッションケース15を備える。ミッションケース15には、ベルト式動力伝達機構14および油圧式無段変速機13を介してエンジンからの動力が伝達される。ミッションケース15は、メインフレームの前部に取り付けられる。ミッションケース15は、副変速機構を備える。副変速機構は、走行車体2の路上走行時や植付走行時における走行速度や作業速度を切り替える。
ミッションケース15は、副変速機構で変速された動力を、走行用動力および苗植付部31の駆動用動力に分ける。走行用動力は、一部が左右のファイナルケース16を介して前輪4に伝達可能であり、残りが左右の後輪ギヤケース17を介して後輪5に伝達可能である。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けられた植付クラッチに伝達され、植付クラッチによる動力接続時に植付伝動軸によって苗植付部31に伝達される。
メインフレームには、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ18が取り付けられる。フロアステップ18は、一部が格子状に形成されることで、作業者の靴に付いた泥などを圃場に落とすことができる。また、フロアステップ18の後方には後輪5のフェンダを兼ねたリヤステップ19が設けられる。
操縦席10の前方には、操舵用のハンドル20、およびフロンドカバー21が設けられる。
また、ハンドル20の近傍には、操作レバーとしては、走行レバーや副変速レバーなどが配置される。走行レバーは、走行車体2の前後進および走行速度を変更する場合に操作される。また、副変速レバーは、走行車体2の走行速度を、走行する場所(圃場や路上)に応じた速度に切り替える場合に操作される。
フロアステップ18の前部における左右の側方には、予備苗タンク22が設けられる。予備苗タンク22は、補給用の苗を載せておく台であり、フロアステップ18のステップ面から突出した支持軸によって回転自在に支持される。予備苗タンク22は、作業者の手動による回動の他、電動モータなどの駆動部によって回動させることもできる。
苗植付装置3は、昇降リンク装置23を介して走行車体2に取り付けられる。昇降リンク装置23は、上リンク23aと、下リンク23bとを備え、各リンク23a、23bがリンクベースフレーム23cにそれぞれ回動自在に連結されることで、走行車体2に対して苗植付装置3を昇降可能に連結する。
また、昇降リンク装置23は、油圧によって伸縮する昇降シリンダによって苗植付装置3を昇降動作させる。
苗植付装置3は、苗タンク30と、苗植付部31と、フロート32とを備える。苗タンク30は、苗載せ面30aを備える。苗載せ面30aは、左右方向において仕切られ、植付条数分設けられる。複数の苗載せ面30aにはそれぞれ土付きのマット状の苗(苗マット)が積載される。苗タンク30は、左右方向に往復動する。
苗植付部31は、2条ごとに1つずつ設けられる。苗植付部31は、植込杆33と、ロータリケース34と、植付伝動ケース35とを備える。
植込杆33は、苗タンク30に積載された苗を圃場に植え付ける。ロータリケース34は、苗植付部31に動力を伝達する植付伝動ケース35に対して回転可能に取り付けられる。植付伝動ケース35は、エンジンから苗植付部31に伝達された動力をロータリケース34に伝達する。
フロート32は、走行車体2の前進に伴い圃場面上を滑走して圃場を整地する。フロート32は、センタフロート、およびサイドフロートを備える。センタフロートは、左右方向における中央部に設けられ、サイドフロートは、左右方向における左右両側部に設けられる。
また、苗移植機1は、薬剤散布装置40を備える。薬剤散布装置40は、病害虫防除のための薬剤をマット状の苗に散布する。薬剤散布装置40は、苗植付装置3の苗タンク30に取り付けられ、苗タンク30と共に左右方向に往復動する。
薬剤散布装置40は、支持装置50を介して苗タンク30に取り付けられる。支持装置50は、苗タンク30の左右端に取り付けられる一対の取付アーム51と、一対の取付アーム51間に設けられた支持部52とを備える。支持部52は、左右方向に延設され、薬剤散布装置40を左右方向に移動可能に支持する。
薬剤散布装置40は、左右方向に移動しながら、ホッパ41に貯留された薬剤をマット状の苗に向けて散布部42から散布する。薬剤散布装置40は、モータなどの駆動部によって駆動され、支持部52に沿って左右方向に移動する。
薬剤散布装置40は、苗タンク30の動きに合わせて左右方向に移動する。薬剤散布装置40は、薬剤を散布する場合には、苗タンク30における左右方向の一端、例えば、右端を薬剤散布開始位置とし、他端、例えば、左端に向けて移動しながら、薬剤を散布する。
以下では、左右方向における一端を右端とし、他端を左端として説明する場合があるが、逆であってもよい。すなわち、左右方向における一端は左端であり、他端は右端であってもよい。
薬剤散布装置40は、苗タンク30が走行車体2における左右方向の中心よりも他端側へ移動する場合に、薬剤散布開始位置に向けて移動する。
薬剤散布装置40は、図3Aに示すように、苗タンク30が走行車体2における左右方向の中心(図3中、一点鎖線)よりも他端(左端)に向けて移動すると、一端(右端)に向けて移動する。図3Aは、薬剤散布装置40の動きを説明するための模式図(その1)である。
これにより、薬剤散布装置40は、図3Bに示すように、苗タンク30が左右方向の他端に位置する場合に、苗タンク30の一端に位置することとなる。図3Bは、薬剤散布装置40の動きを説明するための模式図(その2)である。
薬剤散布装置40は、薬剤散布開始位置から他端に向けて移動しつつ、薬剤を散布する。具体的には、薬剤散布装置40は、苗タンク30が他端から一端に向けて移動し、走行車体2における左右方向の中心よりも一端側に移動した場合に、薬剤散布開始位置から他端に向けて移動を開始し、薬剤の散布を開始する。
薬剤散布装置40は、苗タンク30の左右方向への所定回数の往復動に対し、1回の薬剤散布を行う。所定回数は、予め設定された回数であり、例えば、3回である。薬剤散布装置40は、1回の薬剤散布によって、苗タンク30が所定回数、往復動する際に植え付けられる苗に対し、まとめて薬剤を散布する。
薬剤散布装置40は、薬剤を散布しない状態であっても、苗タンク30の左右方向の移動に応じて、左右方向に移動する。薬剤散布装置40は、薬剤を散布しない状態で、苗タンク30が左右方向の端にある場合に、苗タンク30とは反対側の左右方向に位置するように移動する。
具体的には、薬剤散布装置40は、苗タンク30が左右方向の右端にある場合には、苗タンク30の左端に位置するように移動する。また、薬剤散布装置40は、苗タンク30が左右方向の左端にある場合には、苗タンク30の右端に位置するように移動する。
なお、薬剤散布装置40は、苗タンク30の左右方向への移動速度よりも大きい速度で左右方向に移動することができる。
苗タンク30の左右方向への移動は、検出部60によって検出される。検出部60は、図4、および図5に示すように、検出ピン61と、回動部62とを備える。図4は、検出部60を示す概略正面図である。図5は、検出部60を示す概略左側面図である。
検出ピン61は、苗タンク30に設けられ、苗タンク30と共に左右方向に移動する。具体的には、検出ピン61は、苗タンク30の左右方向の中心付近に設けられる。
また、検出ピン61は、苗タンクレール36の外側に設けられる。これにより、苗タンクローラ37との干渉を防止することができる。
回動部62は、ステー63を介して走行車体2に取り付けられる。具体的には、回動部62は、走行車体2の左右方向の中心付近に設けられる。回動部62は、回動軸64を中心に回動可能である。
回動部62は、検出ピン61が当接する突出部64aを備える。苗タンク30の移動に伴い検出ピン61が左右方向に移動すると、回動部62の突出部64aが検出ピン61に当接することで回動部62が回動する。すなわち、回動部62は、苗タンク30が左右方向に移動し、検出ピン61が突出部64aに当接することで、左右方向に回動する。
具体的には、突出部64aは、二叉状となるように2箇所から突出する。例えば、苗タンク30が左方向に向けて移動した場合には、一方の突出部64aに検出ピン61が当接し、回動部62が回動する。このとき、他方の突出部64aは、検出ピン61の通過軌跡上に位置する。
その後、苗タンク30が右方向に向けて移動した場合には、他方の突出部64aに検出ピン61が当接し、回動部62が逆方向に回動する。このとき、一方の突出部64aは、検出ピン61の通過軌跡上に位置する。なお、回動部62の回動は、ストッパーによって回動位置が規制される。
検出部60は、回動部62の回動を検出することで、苗タンク30が左右方向の中心を通過したことを検出する。すなわち、検出部60は、回動部62の回動を検出することで、苗タンク30が左右方向の中心にあることを検出する。
なお、検出ピン61は、苗タンク30の左右方向の中心付近に設けられている。そのため、検出部60は、苗タンク30の左右方向の中心が、回動部62を通過することで、左右方向における苗タンク30の移動回数、すなわち往復回数を検出する。
また、検出部60は、回動部62の回動方向を検出することで、苗タンク30が左右方向のどちらに向けて移動しているかを検出する。具体的には、検出部60は、突出部64aが左方向に回動した場合には、苗タンク30が左端に向けて移動していることを検出する。また、検出部60は、突出部64aが右方向に回動した場合には、苗タンク30が右端に向けて移動していることを検出する。
なお、ステー63は、弾性変形可能な部材によって形成される。これにより、検出部60が誤動した場合、例えば、回動部62がある方向に回動し、ストッパーに当接した反動で、逆方向に回動して停止した状態で検出ピン61が当接した場合に、ステー63が弾性変形することで、検出部60が破損することを防止することができる。
なお、苗タンク30と走行車体2との間には、図6に示すようにバネ70が設けられる。図6は、苗タンク30、および走行車体2の一部を前方から見た概略図である。
バネ70は、左右方向に沿って配置され、一方の端が走行車体2に取り付けられ、もう一方の端が掛け部71(取付部)を介して苗タンク30に取り付けられる。バネ70は、走行車体2を挟んで左右方向に一対設けられる。バネ70は、苗タンク30のローリング動作を抑制するように設けられる。
掛け部71には、複数の溝71aが左右方向に並んで形成される。溝71aは、バネ70を係止可能となるように形成される。すなわち、掛け部71は、バネ70の掛け位置を左右方向に調整可能である。これにより、バネ70による付勢力を調整することができる。
制御装置は、苗移植機1を構成する上述した構成要素をそれぞれ制御するものである。制御装置は、一例として、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有する構成とすることができる。制御装置には、スイッチや、センサなど接続される。制御装置は、例えば、エンジンを制御するエンジン制御や、薬剤散布装置40を制御する薬剤散布制御などを実行する。
次に、実施形態に係る開始位置移動処理について図7を参照し説明する。図7は、開始位置移動処理を説明するフローチャートである。
苗移植機1は、苗タンク30の往復回数が所定回数となるか否かを判定する(S100)。苗移植機1は、検出部60によって苗タンク30の往復回数が所定回数となるか否かを判定する。具体的には、苗移植機1は、苗タンク30が他端を開始位置として所定回数となったか否かを判定する。
なお、苗タンク30の往復回数が所定回数となっている場合には、苗タンク30は、走行車体2の左右方向の中心から、他端に向けて移動していることを意味する。
苗移植機1は、苗タンク30の往復回数が所定回数ではない場合には、今回の処理を終了する。
苗移植機1は、苗タンク30の往復回数が所定回数になった場合には、薬剤散布装置40を左右方向の一端である薬剤散布開始位置に向けて移動させる(S101)。
苗移植機1は、苗タンク30の往復回数をリセットする(S102)。
次に、実施形態に係る苗移植機1の効果について説明する。
苗移植機1は、薬剤散布装置40によって苗タンク30に載置されたマット状の苗に薬剤を散布する。薬剤散布装置40は、左右方向の一端である薬剤散布開始位置から他端に向けて移動しつつ、マット状の苗に薬剤を散布する。また、薬剤散布装置40は、苗タンク30が走行車体2における左右方向の中心よりも他端側へ移動する場合に、薬剤を散布しない状態で薬剤散布開始位置に向けて移動する。
これにより、苗移植機1は、薬剤散布装置40が薬剤散布開始位置に移動する際に、左右方向のバランス性を向上させることができる。そのため、苗移植機1は、例えば、薬剤散布装置40によって薬剤の散布を開始する際に、走行車体2の他端側が高くなることを抑制し、他端側における苗の植え付け不良が発生することを抑制することができる。従って、苗移植機1は、苗の植え付け精度を向上させることができる。
また、薬剤散布装置40は、苗タンク30が他端から一端に向けて移動し、走行車体2における左右方向の中心よりも一端側に移動した場合に、薬剤散布開始位置から他端に向けて移動しつつ、薬剤の散布を開始する。
これにより、苗移植機1は、薬剤の散布開始時に走行車体2の左右方向のバランス性が低下することを抑制し、苗の植え付け精度を向上させることができる。
また、薬剤散布装置40は、薬剤を散布しない状態で、苗タンク30が左右方向に移動し、苗タンク30が左右方向の一端、または他端に位置する場合には、左右方向の他端、または一端に位置するように移動する。
これにより、苗移植機1は、薬剤を散布しない状態であっても、左右方向のバランス性を向上させることができる。そのため、苗移植機1は、苗の植え付け精度を向上させることができる。
また、検出部60は、苗タンク30に取り付けられた検出ピン61と、走行車体2に取り付けられ検出ピン61が接触すると回動する回動部62とを備える。回動部62は、走行車体2における左右方向の中心に設けられる。
これにより、苗タンク30が、走行車体2における左右方向の中心を通過することを検出することができ、薬剤散布装置40の左右方向の移動を正確に制御することができる。そのため、苗移植機1は、左右方向のバランス性を向上させることができ、苗の植え付け精度を向上させることができる。
また、苗移植機1は、走行車体2と苗タンク30とに取り付けられるバネ70の取り付け位置を変更可能な掛け部71を苗タンク30に設ける。
これにより、苗移植機1は、苗タンク30のローリング動作を抑制するバネ70の付勢力を調整することができる。
上記した苗移植機1は、以下の構成を有してもよい。
苗移植機1は、散布部42に対してホッパ41を伸縮可能としてもよい。苗移植機1は、例えば、散布部42とホッパ41とを蛇腹によって接続する。これにより、ホッパ41を伸ばして薬剤を補充する場合、雨天時などに、屋根の下で薬剤を補充する場合に、他の散布装置を誤って取り付けることを抑制することができる。
また、苗移植機1は、走行車体2の前端の下方に設けられた標準ウェイトの下部であり、かつ牽引フック80よりも上方に追加ウェイト81を備える。追加ウェイト81は、標準ウェイトに平行に設けられる。追加ウェイト81は、図8に示すように、左右方向に並んで設けられる。図8は、苗移植機1の前端付近を示す平面図である。
また、追加ウェイト81は、図9に示すように、ウェイト部材81aの両端に上下方向に延びる取付部81bを設けてもよい。図9は、追加ウェイト81の変形例を示す斜視図である。取付部81bには、上下方向の両端に取付孔81cが形成される。追加ウェイト81は、図10に示すように、2つの追加ウェイト81の取付孔81cにボルトを挿入し、ナットで締めることで、複数の追加ウェイト81を連結させることができる。図10は、2つの追加ウェイト81を連結する一例を示す斜視図である。
これにより、追加ウェイト81の数を変更することができる。これにより、追加ウェイト81の数を調整し、前後方向、および左右方向における苗移植機1のバランスを調整することができる。
なお、追加ウェイト81は、図11に示すように、ウェイト部材81aの大きさ、例えば、径が異なる追加ウェイト81を連結してもよい。図11は、2つの追加ウェイト81を連結する一例を示す斜視図である。これにより、苗移植機1のバランスをさらに調整することができる。
また、追加ウェイト81は、図12に示すように、複数の挿入孔82aを有する取付部82を有してもよい。複数の挿入孔82aには、ウェイト部材81aの数を変更することができる。図12は、追加ウェイト81の変形例を示す斜視図である。
また、追加ウェイト81は、図13に示すように、挿入孔82aの径が異なる取付部82を有してもよい。追加ウェイト81は、異なる径のウェイト部材81aを挿入孔82aに取り付けることができる。図13は、追加ウェイト81の変形例を示す斜視図である。
また、苗移植機1は、図1に示すように、予備苗タンク22を走行車体2に支持する予備苗タンク支持ステー200に、ハンガーウェイト90を備える。ハンガーウェイト90は、取付ステー91を介して予備苗タンク支持ステー200に取り付けられる。
なお、取付ステー91は、予備苗タンク支持ステー200に脱着可能である。また、取付ステー91には、斜め方向に沿って複数の取付孔91aが形成され、ハンガーウェイト90の取り付け位置を調整することができる。具体的には、ハンガーウェイト90の取り付け位置を、前後方向、および上下方向に調整することができる。
ハンガーウェイト90は、予備苗タンク22と、フロアステップ18との間に設けられる。これにより、枕時で旋回する場合などに、ハンガーウェイト90と畦との接触を防止し、枕時での旋回を容易に行うことができる。また、ハンガーウェイト90を取り付けた状態であっても、フロアステップ18の脱着に影響がなく、整備性、および作業性を向上させることができる。
また、ハンガーウェイト90は、図8に示すように、左右方向における予備苗タンク22の最内位置よりも内側に位置しないよう設けられる。これにより、ハンガーウェイト90を取り付けた場合であっても、作業者がフロアステップ18を移動する場合に、ハンガーウェイト90にぶつからずに移動することができる。
また、苗移植機1は、操縦席10の後方、具体的には、操縦席10と、苗植付装置3との間に圃場に肥料を散布する施肥装置を設けてもよい。この場合、エンジンの駆動力が施肥装置に伝達されて、施肥装置が駆動し、施肥装置から圃場に肥料が散布される。
また、苗移植機1は、施肥装置への動力伝達状態を切り替える施肥クラッチを備える。施肥クラッチは、後輪ギヤケースの前方に設けられ、図14に示すように、前方側に泥よけカバー100が設けられる。図14は、泥よけカバー100を示す概略右側面図である。
泥よけカバー100は、断面が略L字状となるように形成され、角部100aが下端に位置するように配置される。これにより、施肥クラッチに泥が付着することを抑制することができる。また、泥による走行抵抗を小さくすることができる。
また、泥よけカバー100は、左右方向の両端が開口するように形成される。これにより、泥よけカバー100に入った泥を左右方向から排出することができる。
また、苗移植機1は、図15に示すように、畦クラッチレバー110の操作位置を検出する畦クラッチスイッチ111が畦クラッチステー112を介して支持枠113に取り付けられる。図15は、畦クラッチスイッチ111の取り付け例を示す図である。畦クラッチレバー110は、例えば、操縦席10の側方に設けられる。
畦クラッチスイッチ111は、畦クラッチレバー110が引き上げられた場合に畦クラッチレバー110に当接する接触部114が畦クラッチレバー110の操作方向に対し傾斜するように設けられる。
そのため、畦クラッチレバー110が引き上げられた場合に、畦クラッチレバー110が上端まで引き上げられる前に接触部114が畦クラッチレバー110に当接する。
例えば、畦クラッチレバー110が上端位置まで引き上げられた時に接触するように、接触部114が畦クラッチレバー110の操作方向に対して直交する方向に設けられた場合には、畦クラッチレバー110の引き上げを正確に検出できないおそれがある。
また、接触部114が畦クラッチレバー110の操作方向に対して直交する方向に設け、上端位置よりも低い位置で畦クラッチレバー110に当接するように設けられた場合には、畦クラッチレバー110が上端位置まで引き上げられると、接触部114などが破損するおそれがある。
これに対し、接触部114が畦クラッチレバー110の操作方向に対し傾斜するように設けることで、畦クラッチレバー110の引き上げを正確に検出し、破損を抑制することができる。
畦クラッチステー112は、図16に示すように、支持枠113の取付面113aに取り付けられる。図16は、畦クラッチステー112、および支持枠113を示す斜視図である。畦クラッチステー112は、2箇所設けられた孔112aにボルトが挿入され、ナット、座金などを用いて支持枠113に取り付けられる。なお、支持枠113にはボルトが挿入される孔が形成されており、支持枠113の孔112aは、ボルトの径よりも大きい。そのため、支持枠113の個体差に応じて微調整を行い、畦クラッチステー112を取り付けることができる。
畦クラッチステー112は、2枚のプレート112b、112cを溶接して構成される。具体的には、畦クラッチステー112は、支持枠113に取り付けられるプレート112bの上に、畦クラッチスイッチ111を取り付けるプレート112cを重ねて溶接されて構成される。これにより、畦クラッチスイッチ111を取り付けるプレート112cと、支持枠113との間に隙間ができ、畦クラッチスイッチ111をプレート112cに取り付けるネジの締め付け性を安定させることができる。
また、畦クラッチステー112には、支持枠113の取付面113aに形成されて畦クラッチレバー110が挿入される長孔113bの上部となる位置に、曲げ部112dが形成される。これにより、作業者が畦クラッチレバー110を操作した場合に、畦クラッチスイッチ111などに作業者の指が接触することを抑制することができ、怪我や、畦クラッチスイッチ111の故障を抑制することができる。
また、畦クラッチスイッチ111と、リヤステップ19との間に、長孔を有するカバーを設けてもよい。これにより、作業者が畦クラッチレバー110を操作した場合に、畦クラッチスイッチ111などに作業者の指が接触することを抑制することができ、怪我や、畦クラッチスイッチ111の故障を抑制することができる。
なお、支持枠113付近にボディアースを設けることが望ましい。これにより、作業性を向上させることができる。
また、苗移植機1は、苗タンク30に、図17に示すように苗押さえ部120を設ける。図17は、苗押さえ部120を斜め後方から見た斜視図である。苗押さえ部120は、苗タンク30に載置されたマット状の苗のずれを抑制する。
苗押さえ部120は、伸縮可能である。なお、図17の苗押さえ部120は、伸びた状態を示している。苗押さえ部120は、伸びた状態から、図18に示すように、下端側を上方に移動させて縮んだ状態とすることができる。図18は、縮んだ状態の苗押さえ部120を示す斜視図である。
苗押さえ部120を伸縮可能とすることで、薬剤散布装置40の下方側における作業を容易に行うことができる。
また、苗押さえ部120は、回動可能である。苗押さえ部120は、上端付近に設けた回動軸120aを中心に回動させることができる。これにより、縮んだ状態の苗押さえ部120を回動させることで、薬剤散布装置40の下方側における作業などを容易に行うことができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。