以下に、本発明の実施例を説明する。実施例は本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は実施例により限定されるものではない。
《実施例1》
[画像形成部]
図2は本実施例における画像形成装置100の概略構成を示す縦断正面模式図である。この画像形成装置100は、中間転写方式−タンデム定着方式のフルカラー電子写真プリンタである。即ち、このプリンタ100は、パーソナルコンピュータの外部端末200から制御部(CPU)81に入力するプリントジョブに基づいてプリント動作してシートPにフルカラートナー像またはモノカラートナー像を形成することができる。
シートPはプリンタ(画像形成装置)によってトナー像を形成し得る枚葉状の記録媒体(記録材)であり、普通紙、薄紙、厚紙、光沢紙、樹脂シート、封筒、葉書、シール等が含まれる。以下、用紙又は紙と記すが、プリンタ100によって画像形成可能な記録媒体を紙に限定するものではない。
プリントジョブは、画像情報(画像データ)、指定された用紙の種類(紙種)、坪量、サイズ、枚数、部数、レイアウト、後処理などのプリント条件情報が付加された画像形成指示(プリント指示)のことである。
制御部81はプリンタ100の全ての装置制御、プリント動作のシーケンス制御を司る。即ち、制御部81は入力された情報により、画像形成条件を決定し画像形成時に所定の条件で画像形成動作を行う。
Sは操作者(ユーザー)が制御部81に対して各種の情報を入力(登録、設定)するための操作部(UIパネル部:ユーザーインターフェース)である。各種の操作キーを備えた操作入力部Saと、装置の状態などの各種の情報表示と各種操作が可能な情報表示部(タッチパネル:報知部、通達部)Sbを有する。操作部Sは操作者が表示部Sbと操作入力部Saの操作キーを用いて、画像形成開始指令を出すだけでなく、画像の画質、光沢度の設定や給紙カセットにセットする用紙Pの情報入力を行うことができる。
以下の説明において、上流側と下流側は用紙搬送方向に関して上流側と下流側である。図2のプリンタ100の基本的な装置構成は公知に属するからその説明は簡単にとどめる。1はプリンタ本体100Aの内部の画像形成部(画像形成手段)である。画像形成部1は用紙Pに未定着トナー像を形成する。本実施例において画像形成部1は、4つの作像ユニットU(UY・UM・UC・UK)と中間転写ベルトユニット8を有する。
各作像ユニットUは、それぞれ、電子写真感光体ドラム(以下、ドラムと記す)2、帯電器3、レーザースキャナ4、現像器5、1次転写帯電器6、ドラムクリーナ7等の電子写真プロセス機器を有する。なお、図の煩雑を避けるため、作像ユニットUY以外の他の作像ユニットUM・UC・UKにおけるこれらの機器に対する符号の記入は省略した。
各作像ユニットUは、それぞれ、所定の周速度で回転駆動されるドラム2に対して、イエロー(Y)色、マゼンタ(M)色、シアン(C)色、ブラック(K)色のトナー像を形成する。そして、各作像ユニットUのドラム2から所定の周速度で回動する中間転写ベルト(エンドレスベルト:以下、ベルトと記す)9に対して上記4色のトナー像が順次に所定に重畳されて1次転写される。これにより、ベルト9上にY色+M色+C色+K色の4色重畳の未定着トナー像が形成される。
そして、ベルト9と2次転写ローラ11との圧接部である2次転写部(2次転写ニップ部)12に対して用紙Pが所定の制御タイミングで導入される。用紙Pは複数段に配設の給紙カセット13、14、15のうちの、印刷条件などに基づき制御部81が選択した段位の給紙カセットから一枚分離給送される。給送された用紙Pはレジストローラ対17を含む搬送パスaを通って2次転写部12に導入されて挟持搬送されていく。その挟持搬送過程で、ベルト9上の4色重畳の未定着トナー像が用紙Pに対して順次に静電的に2次転写される。
2次転写部12を出た用紙Pはベルト9から順次に分離されて搬送パスbを通って定着装置19に導入される。用紙Pの分離後にベルト9上に残留したトナー及びその他の異物はベルトクリーナ18で除去される。定着装置19はタンデム定着方式として、第1の定着器(第1の定着手段、第1定着装置)19Aと、この定着器19Aよりも下流側(シート搬送方向下流側)に間隔をおいて配設された第2の定着器(第2の定着手段、第2定着装置)19Bの2つの定着器を有している。この定着装置19の詳細については次の[定着装置]の項で詳述する。
2次転写部12から第1の定着器19Aに導入された用紙Pはこの定着器19Aの定着ニップ部(第1のニップ部)N1で挟持搬送されて加熱加圧されることによって担持している未定着トナー像が加熱定着(第1定着)される。
そして、第1の定着器19Aを出た用紙Pは用紙搬送ローラ対(搬送回転体対)20が配設されている搬送パスcを通って第2の定着器19Bに導入される。搬送ローラ対20は、モータM2により回転駆動される。用紙Pはこの定着器19Bの定着ニップ部(第2のニップ部)N2で挟持搬送されて加熱加圧されることによって担持している第1定着済みのトナー像が再度加熱定着(第2定着)される。用紙上の第1定着されたトナー像が第2の定着器19Bで再度加熱加圧されることによって表面の形状が平滑になり、均一な光沢性のある画像が得られる。
第2の定着器19Bを出た用紙Pは、片面印刷モードである場合には、フラッパー21により搬送パスdの側に誘導されて片面印刷のフルカラー画像形成物として排出トレイ22へと排出される。
両面印刷モードである場合には、第2の定着器19Bを出た一面目印刷済みの用紙Pはフラッパー21により反転搬送パスeの側に誘導される。そしてスイッチバック搬送パスfで逆送されて両面搬送パスgを経由して再び搬送パスaに入り、表裏反転状態で2次転写部12に所定の制御タイミングにて再導入される。これにより用紙Pの二面目に対するトナー像の形成がなされる。以後は、用紙Pは、片面印刷モードの場合と同様に、搬送パスb、第1の定着器19A、搬送パスc、第2の定着器19B、搬送パスdの経路を搬送されて両面印刷のフルカラー画像形成物としてトレイ22に排出される。
モノカラー画像形成の場合には、その画像形成をするのに必要な作像ユニットUが画像形成動作し、それ以外の作像ユニットはドラム2が空回転するだけで画像形成動作はなされない。搬送パスa乃至gは用紙Pをガイドしながら搬送するための搬送部材で構成されている。搬送部材は、搬送ガイド、搬送ローラ、ベルト搬送装置などである。
[定着装置]
本実施例におけるタンデム定着方式の定着装置19は上記のように上流側と下流側の第1と第2の定着器19Aと19Bを有している。本実施例においてはこの2つの定着器19Aと19Bは互いに構造的に同じものを使用している。そこで、図3により第1の定着器19Aの構成を代表して説明する。図3は定着器19Aの要部の横断面模式図である。この定着器19Aは、大別して、画像面に接触させる定着ローラ(加熱定着部材)40と、定着ローラ40と定着ニップ部N1(N2)を形成する加圧ローラ(加圧部材)41と、これらを収容している装置フレーム43を有する。
定着ローラ40はアルミニウム製円筒の芯金40bの外周面に厚さ3mmの弾性層40c、そしてその外周面に画像面に接触させる50μmの離型層40dを配置して直径80mmに構成されている。弾性層40cはHTV(高温加硫型)シリコンゴム層であり、離型層40dは四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(以下、PFA)を主材料としたチューブで被覆されている。定着ローラ40はその一端部と他端部がそれぞれ装置フレーム43の一端側と他端側の側板間にボールベアリングを介して回転可能に支持されて配設されている。
加圧ローラ41は、アルミニウム製円筒の芯金41bの外周面に厚さ1mmの弾性層41cと、その外周面に離型層41dを配置して直径60mmに構成されている。弾性層41cは定着ローラ40と同様に、HTVシリコンゴム層であり、その離型層41dはPFAチューブで被覆されている。加圧ローラ41は定着ローラ40に対して実質平行に配列されてその一端部と他端部がそれぞれ装置フレーム43の一端側と他端側の側板間にボールベアリングを介して回転可能に支持されて配設されている。
定着ローラ40と加圧ローラ41の回転中心部には各ローラを内側より加熱するためのハロゲンヒータ40aと41aが非回転に配置されている。本例においては、ハロゲンヒータ40aには定格電力1200W、ハロゲンヒータ41aには定格電力400Wのハロゲンヒータを採用した。定着ローラ40と加圧ローラ41の外側にはそれぞれ各ローラの表面温度を検知する温度検知素子42aと42bが配設されている。
定着ローラ40と加圧ローラ41はそれぞれ一方の軸端に固定された歯車(不図示)が歯車機構(不図示)によって相互に連結されている。その歯車機構に対して制御部81で制御されるモータ(駆動源)Mの駆動力が伝達されるようになっている。
加圧ローラ41は制御部81で制御される着脱機構M1により定着ローラ40に対して図3の実線示のように所定の加圧力で圧接した着状態と、2点鎖線示すように定着ローラ40から離間した若しくは加圧力が低減化された脱状態とに状態転換される。制御部81は加圧ローラ41の着脱状態を加圧ローラ着脱判断機構Cからの入力情報により判断可能である。
加圧ローラ41の着状態における定着ローラ40に対する加圧力は総圧力980N(100kgf)としている。これによりそれぞれ弾性層40c・41cを有する定着ローラ40と加圧ローラ41との間に用紙Pの搬送方向に関して所定幅の定着ニップ部(加熱ニップ部)N1(N2)を形成させている。
着脱機構M1の具体的な構成は図には省略したけれども、例えば、モータと、モータにより回転角が制御されるカム軸と、カム軸のカムにより揺動される加圧レバーと、加圧レバーを付勢する加圧バネ等により構成される。加圧ローラ着脱判断機構Cは、例えば、上記着脱機構M1のカムの回転角を検知するフォトセンサを含む機構である。
定着動作は次のとおりである。制御部81はプリント信号に基づいて、着脱機構M1により加圧ローラ41を脱状態から着状態に転換するとともに、モータMを起動させて駆動力を歯車機構に伝達する。これにより、定着ローラ40と加圧ローラ41がそれぞれ矢印R40とR41の方向に所定の周速度にて回転駆動される。
また、ハロゲンヒータ40aと41aに電力が供給される。これにより定着ローラ40と加圧ローラ41がそれぞれ内側から加熱され、定着ローラ40と加圧ローラ41の表面温度がそれぞれ温度検知素子42aと42bで検知される。それらの検知温度情報が制御部81に入力する。制御部81は入力する検知温度情報に基づいて、定着ローラ40と加圧ローラ41の表面温度がそれぞれ所定の設定温度に立ち上げられて維持されるようにハロゲンヒータ40aと41aに対する供給電力を制御(ON/OFF制御)する。
上記のように定着ローラ40と加圧ローラ41が圧接して回転駆動され、また定着ローラ40と加圧ローラ41が所定の温度に加熱された状態において、2次転写ニップ部12から搬送された未定着トナー像tを担持した用紙Pが定着ニップ部N1に導入される。そして、用紙Pが定着ニップ部N1で挟持搬送されて加熱加圧されることによって担持している未定着トナー像tが加熱定着(第1定着)される。
第2の定着器19Bにおいては、第1の定着器19Aから搬送された第1定着済みの用紙Pが定着ニップ部N2に導入される。そして、用紙Pが定着ニップ部N2で挟持搬送されることによって担持している第1定着済みのトナー像が再度加熱定着(第2定着)される。
第1の定着器19Aと第2の定着器19Bとの間隔(定着ニップ部N1の用紙出口部と定着ニップ部N2の用紙入口部と間の用紙搬送経路長)は用紙Pの最大通紙長さ以上離れている。
そして、第1の定着器19Aと第2の定着器19Bとのとの間、即ち搬送パスcには用紙Pを中継ぎ搬送するための用紙搬送手段(シート搬送手段)となる搬送ローラ対20が設けられている。つまり、搬送ローラ対20は搬送パスcにおいて第1の定着器19Aよりも下流側(シート搬送方向下流側)、第2の定着器19Bよりも上流側(シート搬送方向上流側)に設けられている。
搬送ローラ対20は搬送パスcにおいて間隔をあけて複数対設けられてもよい。ただし、搬送パスcにおいて搬送ローラ対20が複数対設けられている場合には、以下の説明において、搬送速度Vmは、複数の搬送ローラ対のうち、最も第2の定着器19Bに近い側の搬送ローラ対での搬送速度を指すものとする。以下では、搬送ローラ対20とは、第2の定着器19Bと隣り合うように第2の定着器19Bに対しシート搬送方向上流側に位置する搬送ローラ対を指すものとする。
搬送ローラ対20の用紙挟持力は定着ニップ部N1及び定着ニップ部N2の用紙挟持力よりも弱くなるように設定している。これは、搬送ローラ対20と定着ニップ部N1との間、及び搬送ローラ対20と定着ニップ部N2との間で用紙Pが引っ張り合いになるときに、用紙と定着ニップ部がスリップしないようにするためである。本実施例において、搬送ローラ対20は350g/m^2までの厚紙を搬送可能とするため、総圧49N(5.0kgf)に設定した。
[通紙モード]
次に本実施例で使用される通紙モードについて説明する。本実施例では操作者が用途に応じて通紙モードを選べるよう、画像設定として「通常モード」(第1画像形成モード)と「高光沢モード(高グロスモード)」(第2画像形成モード)の2種類持つ。そして、操作者自身が操作部Sを操作して、あるいは外部端末200よりモード選択が可能となっている。
本実施例における通常モードは薄紙から厚紙まで混載した場合でも高生産性で通紙するモードであり、多くの種類の紙に対応可能な設定となっている。
一方、高光沢モードは厚紙、とくに高光沢な厚紙(光沢紙)を通紙した場合、より高光沢かつより均一な光沢画像を出力したいときに使用するモードである。そのため、高光沢モードは、トナーの粘度がほぼ温度変化しない従来よりも高い温度領域で定着させる設定となっている。即ち、高光沢モードは通常モードよりも定着温調が高く設定される。本実施例においては、高光沢モードにおける定着時のトナー溶融粘度は1.2×10^2Pa・s以下である。
厚紙の光沢紙に対して高光沢モードが選択されている場合、薄紙の光沢紙(通常モード)と厚紙の光沢紙(高光沢モード)が混載されたジョブの実行時に、厚紙の光沢紙と薄紙の光沢紙の紙間で定着温調が入る。そのため、高光沢モードが選択される場合には、薄紙から厚紙まで混載されたジョブにおいて通常モードよりも生産性が低下する。
第1の定着器19Aにおいて、定着ローラ40を周方向に見たとき、定着ニップ部N1の通過時に用紙と接触した領域では、用紙に定着ローラ40の熱が奪われる。それに対し、定着ニップ部N1の通過時に加圧ローラ41と接触した場合には(即ち、紙間では)、用紙と接触するほど定着ローラ40の熱は奪われない。この温度ムラは、光沢ムラとして視認される恐れがある。特に、坪量が大きい用紙では紙に奪われる熱量が大きいため、用紙上のトナーに与えられる熱量の差が大きくなる恐れがあり、光沢紙(コート紙)では、この熱量の差が光沢ムラとして視認されやすくなる。
尚、坪量が小さい用紙では、定着ローラ40の周方向に上述の温度ムラが生じても、用紙全体に十分な熱量が与えられるので、このような光沢ムラは視認されない。
そこで、本実施例では、第1の定着器19Aにおいて、光沢ムラが視認される恐れがある用紙に対し、高光沢モードが設定可能である。具体的には、180g/m^2以上の紙のみに適応されるよう設定している。
このとき、光沢を精度よくコントロールする観点から、第2の定着器19Bの設定温度の変更で対応することが望ましい。本実施例においても、第1の定着器19Aの定着ローラ40の設定温度は変更せず、第2の定着器19Bの定着ローラ40の設定温度を変更している。
以下、第1の定着器19Aの定着ローラ40の設定温度を第1定着温度又は第1定着目標温度、加圧ローラ41の設定温度を第1加圧温度又は第1加圧目標温度と記す。また、第2の定着器19Bの定着ローラ40の設定温度を第2定着温度又は第2定着目標温度、加圧ローラ41の設定温度を第2加圧温度又は第2加圧目標温度と記す。
図4は第2定着温度と厚紙の光沢紙における光沢度の関係を示した図である。横軸は、第1の定着器19A及び第2の定着器19Bによってトナーに与えられる熱量を示している。図5は通常モードと高光沢モードの第1の定着器19Aおよび第2の定着器19Bの温度設定を示す。
本実施例の通常モードは図5に示すように第2定着温度が160℃である。図4に示すようにこの第2定着温度の場合、トナーに与えられる熱量は、グロスに感度がある領域である。上述したように、通常モードでは、薄紙から厚紙までの混載した場合でも高生産性で通紙できるが、グロスが定着器から与えられる熱量に対し感度がある。そのため、例えば、厚紙の光沢紙において第1の定着器19Aでの温度ムラが生じた場合、第2の定着器19Bにて第2定着をしても、そのまま光沢ムラとしてそのまま反映される恐れがある。
一方、高光沢モードは第2定着温度をさらに上げた領域であり、図5に示すように第2定着温度が200℃である。この温度の近傍は、図4に示すように、トナーに与えられる熱量が多少変化してもグロスがほぼ変化しなくなる。これにより、たとえ厚紙により第1の定着器19Aの定着ローラ40の熱が奪われ、第1定着温度に温度ムラが生じたとしても、第2の定着器19Bによりグロスに影響しない程度まで十分な熱を与えることができる。その結果、操作者は厚い高光沢な紙でもより均一なグロスが得ることができる。
次に、通常モードと高光沢モードにおける用紙の各搬送速度について説明する。第1と第2の定着器19Aと19Bでの定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの挟持搬送速度は、定着ニップ部N1とN2のニップ圧が高いため、薄紙から厚紙になるにつれて定着ローラ40の変形量が増加するため速くなる。また、ベタ画像になると定着時に定着ローラ40とトナーとが滑るため、トナーが無い時と比較して遅くなる。そのため、定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度のばらつきが生じる。本実施例ではこのばらつきが0.7%である。
一方、ニップの加圧力が低いとトナーを溶かすことがないため、第1と第2の定着器19Aと19Bの間に配置している搬送ローラ対20による用紙の搬送速度のばらつきは、紙種やトナーの有り無しによらず0.1%以下である。
上記搬送速度のばらつきを考慮して、同一の用紙を搬送する際の搬送速度は、
1)用紙Pの搬送経路上流側に配置される第1の定着器19Aに設けられた定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度をVf、
2)第1の定着器19Aと第2の定着器19Bとの間に設けられた搬送回転体対となる搬送ローラ対20による用紙Pの搬送速度をVm、
3)用紙Pの搬送経路下流側に配置される第2の定着器19Bに設けられた定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度をVs、
としたとき、通常モードでは、Vf<Vm<Vsの関係に設定している。ここで搬送速度とは、用紙先端の速度のことを示している。
本実施例では、Vm<Vsの関係において、その搬送速度差は、Vs/Vm>1.2%としている。ここで、1.2%とは、上述した定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度のばらつき0.7%と、第1および第2の定着器19A、19Bでの定着温度の変動分0.2%と部品のばらつき分0.2%を考慮して設定している。また、Vf<Vmの関係においても、同様にVm/Vf>1.2%とした。
一方、高光沢モードでは、第2定着温度の設定を上げた。そのため、第2定着でのトナーの粘度はさらにやわらかくなる(トナー溶融粘度:1.2×10^2Pa・s以下)。このとき、通常モードの速度関係で通紙をしてしまうと、第2の定着器19Bの定着ニップ部N2は搬送ローラ対20と用紙を少なからず引っ張りあいながら搬送する。そのため、定着ローラ40が少し変形しながら用紙搬送を行うことで、トナー画像が微小に乱れ、画像濃度が変化してしまう。
そこで、本実施例における高光沢モードでは、搬送ローラ対20による用紙Pの搬送速度Vmと第2の定着器19Bに設けられた定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度Vsの関係を、Vm≧Vsとなるように設定している。また、Vf、Vm、Vsの関係が、Vf<Vm≧Vsとなるように設定している。
また、本実施例では、同一の用紙を搬送する際の搬送速度に関し、通常モードと高光沢モードの間で、第2の定着器19Bに設けられた定着ローラ40及び加圧ローラ41による用紙Pの搬送速度Vsを変更する。すなわち、第2の定着器19BでのモータMの回転数を変えることにより、通常モードと高光沢モードの間での用紙Pの搬送速度を変更している。
尚、本実施例では、搬送速度Vsを変更し、搬送速度Vf、Vmを変更しない構成としているが、搬送速度Vm、Vsの間で、上述の速度関係を満たすような変更であればよい。すなわち、上述の搬送速度の関係を満たすように、搬送速度Vmを変更する(即ち、モータM2の回転数を変更する)構成や、搬送速度VmとVsの両方を変更する構成としてもよい。
尚、用紙Pの搬送速度Vf、Vm、Vsの関係の検証においては、通常モードと高光沢モードで同じ用紙Pを使用する。たとえば、「Canon Coated Two-sided Gloss Cover Paper 270g/m^2」を用いる。また、用紙搬送速度とは、用紙Pの先端がそれぞれのニップ部を通過するときの速度である。
また、本実施例では、180gsm未満の用紙に対しては、高光沢モードは設定されず、上述の通常モードと同様の搬送速度の関係となるように用紙の搬送が制御される。即ち、180gsm未満の用紙が搬送される場合にも、用紙(180gsm未満の用紙)は、Vf<Vm<Vsの関係で搬送される。たとえば、「王子製紙製 OKトップコート+ 84.9g/m^2」を用いる場合、この用紙において、搬送速度はVm<Vsの関係を満たす。
尚、本実施例では、180gsm未満の用紙を搬送する際の搬送ローラ対20の回転速度(即ちモータM2の回転数)は、180gsm以上の用紙を通常モードで搬送する際の搬送ローラ対20の回転速度(即ちモータM2の回転数)と同じとした。また、180gsm未満の用紙を搬送する際の第2の定着器19Bの定着ローラ40の回転速度(即ちモータMの回転数)は、第2の定着器19Bの定着ローラ40の回転速度(即ちモータMの回転数)と同じとした。
即ち、本実施例の通常モードにおけるモータM2の回転数及びモータMの回転数は、高光沢モードが設定可能な用紙Pを通常モードで搬送する場合にもVm<Vsを満たし、180gsm未満の用紙Pを搬送する際にもVm<Vsを満たすような回転数である。
[制御部]
図6は、本実施例のプリンタ100における制御系統の概略ブロック図である。制御部(CPU)81は、定着装置19(19A・19B)の各部(温度検知部89、ヒータI/O部90、モータI/O部91)と着脱判断機構Cと電気的に接続されている。I/O部は入出力回路部である。制御部81によって、用紙Pの搬送速度や、定着ローラ40、加圧ローラ41の表面温度などが制御され、定着装置19(19A・19B)はトナー像を用紙Pに定着することができる。
また、制御部81は、給紙カセット13〜15と、I/F部85、タイマー86とも電気的に接続され、さらにI/F部85を通じて操作部Sと接続されている。制御部81は印刷条件などに基づき複数設けられた給紙カセット13〜15のいずれか1つを選択し、格納されている用紙Pに画像を形成することができる。また、操作部Sは、操作者による操作を受け付けるものであり、例えば液晶タッチパネルなどによって構成されている。なお、操作部Sは、プリンタ100に接続されるパーソナルコンピュータなどの外部端末200であっても良い。
また、制御部81は、コントローラ87と、画像処理部84とも電気的に接続されている。印刷条件などの画像情報88はコントローラ87を通じて制御部81へ送られる。制御部81は受け取った画像情報88を画像処理部84で処理することで画像を形成することができる。
[定着装置の制御]
図7、図8は本実施例における電源ONから画像形成終了までの定着装置19の制御および動作を示すフローチャートである。まず、操作者が坪量250g/m^2のコート紙を「通常モード」の設定をした場合について説明する。
図7を参照して、プリンタ本体の電源MSW(図2)がONされる(S100)。そうすると、制御部81はスタンバイ状態の第1の定着器19Aおよび第2の定着器19Bの定着ローラ40の設定温度Trs1、Trs2、加圧ローラ41の設定温度Tps1、Trs2を設定する(S101)。そして、各定着器のハロゲンヒータ40a、41aに通電を開始する(S102)。本実施例では、Trs1=Trs2=160℃、Tps1=Trs2=100℃とする。
第1及び第2の定着器19A、19Bそれぞれの定着ローラ40の温度Tr1、Tr2(温度検知素子42aの検知温度)、加圧ローラ41の温度Tp1、Tr2(温度検知素子42bの検知温度)がそれぞれ目標温度Trs、Tpsに到達する(S103)。そうすると、制御部81は定着ローラ40を画像形成時よりも遅い速度で回転を開始するよう制御する(S104)。本実施例では、回転速度はVfs=Vss=100mm/sとした。
その後、制御部81は定着装置19(19A、19B)の状態をスタンバイ状態に移行したと判断する。そして、定着器19A、19Bの各温度がTrs1、Trs2、Tps1、Tps2となるように各ハロゲンヒータ40a、41aをON/OFF制御し温調する(S105)。これで制御部81はプリント信号を受信できる状態になったと判断し、プリント信号を受信するまでこの状態で待機させる。
次に、図8を参照して、制御部81はプリント信号を受信したら画像形成を開始する。制御部81はプリント信号を受信すると(S106)、設定されたモードを確認し(S107)、通常モードであれば各目標温度を通常モードの画像形成時温度Trp1、Trp2、Tpp1、Tpp2へ変更する(S108)。本実施例では図5からTrp1=165℃、Trp2=160℃、Tpp1=Tpp2=100℃となる。
給紙は、プリンタ100の画像書き出し信号(以下、I−Top信号と称す)(S109)を基準時間として行われる(S110)。給紙が行われると、制御部81はI−TOP信号を基準として、用紙Pが第1の定着器19Aに到着するまえに、第1及び第2の定着器19Aと19Bの加圧ローラ41を着動作させる。即ち、着脱機構M1により定着器19Aと19Bにおける加圧ローラ41をそれぞれ定着ローラ40へ押圧当接させて(S111)、定着ニップ部N1とN2を形成させる。
それとほぼ同時に制御部81は定着装置19(19A、19B)の駆動および第1と第2の定着器19Aと19Bの間に配置した搬送ローラ対20の駆動を画像形成時の速度へと増速させる(S112)。本実施例での画像形成時の速度はVf=470mm/s、Vm=476mm/s、Vs=482mm/sとした(Vf<Vm<Vsの関係)。
プリント終了信号を受信する(S113)と、制御部81は各目標温度をスタンバイ時の温度Trs1、Trs2、Tps1、Trs2へ変更する(S114)。それとほぼ同時に第1及び第2の定着器19Aと19Bの着脱機構M1により両定着器19Aと19Bにおける加圧ローラ41を定着ローラ40から離間させ(S115)、プリント動作が終了する(S116)。
次にユーザーが坪量250g/m^2のコート紙を高光沢モードへと設定した場合について説明する。ただし、スタンバイ動作までは、図7のフローチャートと同じ制御を行うため、再度の説明を割愛する。
図8を参照して、制御部81はプリント信号を受信すると(S106)、モードを確認し(S107)する。高光沢モードであれば(S117)、各目標温度を高光沢モードの画像形成時温度Trp1、Trp2´、Tpp1、Tpp2へ変更し(S118)、Tr2がTrp2´になるまで待機する(S119)。本例では図5からTrp1=165℃、Trp2´=200℃、Tpp1=Tpp2=100℃となる。Tr2がTrp2´に到達すると、制御部81は画像書き出し信号をプリンタへと出す。
給紙は通常モードの場合のS109〜S112と同様に、プリンタ100の画像書き出し信号を基準時間として行われる(S120)。給紙が行われると(S121)、制御部81はI−TOP信号を基準として、用紙Pが第1の定着器19Aの定着ローラ40と加圧ローラ41が形成する定着ニップ部N1に到着するまえに、第1及び第2の定着器19Aと19Bの加圧ローラ41を着動作させる。即ち、着脱機構M1により定着器19Aと19Bにおける加圧ローラ41をそれぞれ定着ローラ40へ押圧当接させて(S122)、定着ニップ部N1とN2を形成させる。
それとほぼ同時に制御部81は定着装置19(19A、19B)の駆動および第1と第2の定着器19Aと19Bの間に配置した搬送ローラ対20の駆動を画像形成時の速度へと増速させる(S123)。本実施例での画像形成時の速度はVf=470mm/s、Vm=476mm/s、Vs=470mm/sとした(Vf<Vm≧Vsの関係)。
プリント終了信号を受信する(S113)と、制御部81は各目標温度を高光沢モード時のスタンバイ時の温度Trs1、Trs2´、Tps1、Trs2へ変更する(S114)。それとほぼ同時に着脱機構M1により加圧ローラ41を定着ローラ40から離間させ(S115)、プリント動作が終了する(S116)。
次に用紙の異なった坪量を混載したジョブ(JOB)を動作させた場合について、図9、図10のフローチャートを用いて説明する。図9、図10のフローチャートは、混載ジョブが投入された場合は、高光沢モードと登録されている給紙カセットの用紙に対しては、高温とVm≧Vsの関係になるように制御して定着する。高光沢モードと登録されていない給紙カセット(通常モード)の用紙に対しては、通常モードの関係になるように制御して定着する。
まず操作者が坪量250g/m^2のコート紙を通常モードの設定にした表紙と坪量120gの普通紙を通常モードの設定にした中紙の混載ジョブを行った場合について図9のフローチャートを用いて説明する。
制御部81は混載ジョブのプリント信号を受信すると、各ページに設定されたジョブ内のモードを確認する。ここで、ジョブ内のモードを確認(図8、図9のフローチャートでは「モード混在」の表記に対応)とは次の意味である。
即ち、ジョブにて各ページに対し指定されている用紙(印刷に使用すべき用紙)が、通常モードに設定されている給紙カセットから給紙される用紙か、高光沢モードが設定されている給紙カセットから給紙される用紙か、を判定するという意味である。この判定は、それぞれのページに対してなされる。尚、通常モードに設定されているとは、180gsm以下の用紙がセットされている給紙カセットである(自動的に通常モードと同じ扱いになる)ものを含む。
通常モードであることを確認すると、各目標温度を通常モードの画像形成時温度Trp1、Trp2、Tpp1、Tpp2へ変更する(図10:S108)。その後は上述の通常モードと同じ動作のため説明は割愛する。
次に、操作者が坪量250g/m^2のコート紙を高グロスモードの設定にした表紙と坪量120gの普通紙を通常モードの設定にした中紙の混載ジョブを行った場合について図10のフローチャートを用いて説明する。
制御部81は混載ジョブのプリント信号を受信すると、各ページに設定されたジョブ内のモードを確認する。ここで異なるモードが設定されていることを確認すると、各ページに応じた温度を設定しながら動作させることになる(S301)。まず、表紙のモードと現在定着装置19が待機しているモードが同じかどうかを確認する。本実施例では通常モードで待機していた場合について説明する。表紙とモードが違う場合、各目標温度を高光沢モードの画像形成時温度Trp1、Trp2´、Tpp1、Tpp2へ変更し、Tr2がTrp2´になるまで待機する。
Tr2がTrp2´に到達すると、制御部81は表紙の画像書き出し信号をプリンタへと出し、上述の高光沢モードと同じ画像形成動作を開始する(S303、S304)。表紙の通紙を終えると、制御部81は、中紙のモードを確認する(S302)。中紙が通常モードであることを確認すると、各目標温度を通常モードの画像形成時温度Trp1、Trp2、Tpp1、Tpp2へ変更し、Tr2がTrp2になるまで待機する。Tr2がTrp2に到達すると、制御部81は中紙の画像書き出し信号をプリンタへと出し、上述の通紙モードと同じ画像形成動作を行う(S303、S304)。
このように用紙通紙中の各搬送速度Vf、Vm、Vsをモードに応じて設定する。これにより、高光沢モードにおいて搬送ローラ対20と第2の定着器19Bの定着ニップ部N2で用紙を引っ張りあうことがなくなるため、用紙の引っ張り合いによる濃度段差の発生を防ぐことができた。
上記の実施例1をまとめると要するに次の通りである。タンデム定着、高光沢モードで設定が変わるのは、第2の定着器19Bである。通常モード又は高光沢モードは、プリンタ100の給紙カセット13〜15ごとに操作者が操作部Sを操作して操作部経由で設定できる。
1)まず、操作者が給紙カセット13〜15にセットした用紙の坪量/紙種を登録する。
2)所定の坪量以上(本実施例では180gsm以上)の用紙がセットされた給紙カセットに対してのみ、高光沢モードの選択が可能になる。すなわち、所定の坪量未満(本実施例では180gsm未満)の用紙がセットされた給紙カセットに対しては、高光沢モードが選択できない。所定の坪量未満(本実施例では180gsm未満)の用紙がセットされた給紙カセットの用紙に対しては、自動的に通常モードになる。
3)操作者は、操作部Sから180gsm以上の用紙がセットされた給紙カセットに対して通常モード又は高光沢モードを選択する。すなわち、給紙カセット毎に、予めモードが選択される。尚、180gsm以上の用紙がセットされた給紙カセットに対し、操作部を介して高光沢モードの指示が入力されない場合には、通常モードに設定されたとみなす構成としてもよい。
4)その後、ジョブが投入された場合、高光沢モードと登録されている給紙カセットの用紙に対しては、上述の高光沢モードの関係になるように(即ち、Vm≧Vs、且つ、第2定着温度が通常モードよりも高温)制御して定着する。高光沢モードと登録されていない給紙カセット(通常モード)の用紙に対しては、通常モードの関係になるように制御して定着する。尚、混載ジョブの場合も同様である。
例えば、給紙カセットに登録される紙種が同じ「コート紙」でも、銘柄によってグロス段差の出やすさに違いがある。本実施例1のように、給紙カセット毎に登録することは、高光沢モードに伴う生産性の低下というデメリットを最小限に抑えられる。
例えば、通常モードに設定されている給紙カセットの用紙と高光沢モードに設定されている給紙カセットとの混載ジョブの場合には、モードの切り替えが生じる紙間において、モードの切り替えがない場合よりも紙間を広げる。そして、その間において、第2定着温度の温度調整制御が必要となるためである。
《実施例2》
実施例1では給紙カセット13〜15毎のセット用紙の坪量/紙種を操作者に登録させる構成であるが、装置全体の設定としてまとめて設定させても構わない。この場合、どの用紙(給紙カセット)に高光沢モードが設定されるかは、制御部81が判断する。具体的には次のとおりである。
1)装置全体の設定として、操作者は、操作部Sから通常モード又は高光沢モードを選択する。
2)操作者が給紙カセットにセットした用紙の坪量/紙種を登録する。
3)その後、ジョブが投入された場合、1)で高光沢モードが選択されている場合、180gsm以上の用紙に対しては、実施例1に示した高光沢モードに示す関係になるように制御して、定着する。即ち、Vm≧Vs、且つ、第2定着温度が通常モードよりも高温の関係になるように制御して、定着する。180gsm未満の用紙、且つ、第2の定着器19Bを通す用紙(一例としては紙種がコート紙)に対しては、通常モードの関係になるように制御して定着する。1)で通常モードが選択されている場合、第2の定着器19Bを使用する場合には、坪量に依らず通常モードの関係となるように制御する。
尚、混載ジョブの場合も同様である。また、1)と2)の順番は前後しても構わない。
本実施例2においては、給紙カセット毎に用紙の坪量/紙種を登録しなくていいので、操作者の手間が削減できる。
《実施例1、2に係るその他の構成》
実施例1、2では、第1の定着器19Aを通る用紙Pはすべて第2の定着器19Bに導入される構成としたが、バイパスルートを設ける構成としてもよい。
すなわち、第1の定着器19Aと第2の定着器19Bの間に搬送路の分岐を設ける。一方は、図2に示すように第1の定着器19Aから第2の定着器19Bに用紙Pが導入される搬送路(タンデム定着ルート、搬送パスc及び用紙搬送ローラ対20を含む)とする。もう一方は、第1の定着器19Aを出た用紙Pが第2の定着器19Bを迂回して図2に示すフラッパー21による搬送路の分岐点に導入される搬送路(バイパスルート)とする。
この場合、光沢性が重視される光沢紙(坪量に依らずすべてのコート紙)や坪量の大きい非コート紙(例えば、150g/m^2以上の普通紙)では、第1の定着器19Aから第2定着器19Bへと導入される。坪量の小さい用紙では、第1の定着器19Aから第2の定着器19Bを迂回する搬送路(バイパスルート)へと導入される。
このような構成の場合、上述の実施例1、2の高光沢モードは、第2の定着器19Bを使用する用紙に対して適用される。すなわち、実施例1のまとめの前記2)項〜4)項に係る構成は、第2の定着器19Bを通過させるべき用紙がセットされているカセットに対して適用される。また、実施例2のまとめの前記3)項に係る構成は、第2の定着器19Bを通過させるべき用紙がセットされているカセットに対して適用される。
《実施例3》
本実施例1、2ではタンデム式の定着装置19(19A、19B)について述べたが、シングル定着装置においても2次転写部−定着部の用紙の引っ張りあいにより同様の課題が発生する。ゆえに本実施例2では転写ニップ部12、定着装置の定着ニップ部Nの各搬送速度をモードによって変更させた制御を行ったものである。実施例1と同様の構成については同符号をつけて、説明を割愛する。
図11は本実施例における画像形成装置(プリンタ)100の構成概略図である。本実施例2における転写ニップ部12の用紙搬送速度V1に対して、シングル定着装置19Sの定着ニップ部Nの用紙搬送速度V2との関係を、V1<V2に設定している。即ち、転写ニップ部12の用紙挟持力を定着装置19Sの定着ニップ部Nの用紙挟持力と同等以上に設定している。
このような設定にすることにより、薄紙搬送時に用紙に対して適正な張力を付与することが可能となり、薄紙のループの発生を抑えることができる。また、転写ニップ部Nの用紙挟持力が定着ニップ部Nのそれよりも大きくなっているため、用紙と転写ニップ部12の間でのスリップによる画像不良が発生することはない。
このような構成においても、上述の高光沢モードなどの従来よりも高い温度領域で定着動作を行うと、同様の濃度段差が発生してしまう。しかし、実施例1と同様、モードに応じて搬送速度の関係を切り替えることで、従来よりも高い温度領域で発生する濃度段差を抑えることができた。
なお、実施例1、2では発熱体であるハロゲンヒータ40aについて1種類の配光分布を持つものを使用したが、複数の配光分布を持たせるよう複数のハロゲンヒータをそれぞれの発熱体として内蔵しても良い。
さらにまた、実施例1、2における用紙搬送速度について、各搬送速度の速度関係に準ずる範囲であれば、坪量に応じて変更しても良い。
以上の説明における画像形成装置は、未定着のトナー画像を用紙に定着する装置のみには限られない。例えば、半定着済みのトナー画像を用紙に定着させる装置や、定着済みの画像に対して加熱処理を施す装置であってもよい。したがって、画像形成装置における定着装置19は、例えば、画像の光沢や表面性を調節する表面加熱装置であってもよい。
《クレーム対応図》
図1の(a)、(b)は請求項1に係る発明のクレーム対応図である。CPU81は、
1)シートPにトナー像tを形成する第1の画像形成モード(通常モード)と、
2)定着手段50の定着設定の変更により第1の画像形成モードよりも定着トナー像のグロスを高めたトナー像tを形成する第2の画像形成モード(高光沢モード)と、
を選択的に実行可能な実行手段である。
第1の画像形成モードと第2の画像形成モードの選択は、使用者により、操作部Cあるいは外部端末200からなされる。
50はシートPをニップ部Nで挟持搬送しながらシート上のトナー像tを加熱定着する定着手段であり、実施例1、2におけるタンデム式の定着装置19の第2の定着器19B、もしくは実施例3におけるシングル定着装置19Sがこれに該当する。
51は定着手段50よりもシート搬送方向上流側に設けられ、シートをニップ部で挟持搬送する搬送手段であり、実施例1、2における搬送ローラ対20がこれに該当する。もしくは実施例3における2次転写ニップ部12を形成しているベルト9と2次転写ローラ11との転写手段がこれに該当する。
91は定着手段50のシート搬送速度を変更する定着速度変更手段であり、図6におけるモータI/O部91がこれに該当する。
ここで、搬送手段51によるシート搬送速度をVA、定着手段50によるシート搬送速度をVBとする。制御手段としてのCPU81は、搬送手段51と定着手段50のシート搬送速度の関係が第1の画像形成モード(通常モード)が選択されたときはVA<VBになるよう定着速度変更手段51を制御する。第2の画像形成モード(高光沢モード)が選択されたときはVA≧VBになるよう定着速度変更手段51を制御する。
この構成によれば、使用者が設定したモードに応じて搬送手段51と定着手段50のシート搬送速度を切り替えることで、それぞれのトナー粘度に適切な搬送速度関係を実現することができる。そのため、前述の濃度段差の発生を防ぎつつ、薄紙などと搬送性に起因する画像不良を発生させることなく混載が可能となる画像形成装置を提供することができる。