JP6937356B2 - 鉄−白金系スパッタリングターゲットおよびその製造方法 - Google Patents

鉄−白金系スパッタリングターゲットおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄−白金系スパッタリングターゲット、より詳しくは磁気記録媒体に好適な鉄−白金系スパッタリングターゲットに関する。加えて、本発明は、鉄−白金系スパッタリングターゲットを製造するための方法にも関する。
磁気記録では、磁性材料の磁気ヒステリシス特徴を使用して、情報を記録媒体に保存する。現在利用可能な磁気記録媒体は、磁気ヘッドの磁化方向に応じて、水平磁気記録(LMR)および垂直磁気記録(PMR)に分けられる。基本的な要件は、磁気記録媒体の安定性が高いことである。しかも、消費者が携帯型記録媒体を必要としているだけでなく、クラウド需要が高まり、近年は生成される情報量が膨大であるため、磁気記録媒体の記録容量に対する需要が増加しつつある。したがって、磁気記録媒体の記録密度を増加させるための方法が、関連分野における研究の中心となっている。水平磁気記録媒体の磁気記録密度は、今や基本的物理限界に近づいているため、超常磁性限界を遅延させ、より高い記録密度を達成することが可能な垂直磁気記録媒体が、この問題を解決するための技術的手法になっている。
加えて、垂直磁気記録技術は、熱アシスト磁気記録(HAMR)技術と組み合わせ可能である。HAMR媒体では、磁気粒子の保磁力を一時的に低減させ、HAMR媒体の記録密度を増加させるために、記録区域の磁気粒子を書き込み中にキュリー温度よりも高温に加熱する。
一般には、垂直磁気記録媒体は、底部から上部への順に、基材、接着層、軟質下層、シード層、中間層、磁気記録層、カバー層、および潤滑層を含む。
HAMR技術では、同じ領域の磁気記録層を繰り返して加熱するため、磁気記録層を準備するためには、高い安定性を有する磁性複合材料が必要とされる。熱アシスト磁気記録媒体の従来型磁気記録層のほとんどの主成分には、一般には、鉄−白金系合金系が選択される。炭素などの非磁性成分を、鉄−白金系合金系に添加することにより、鉄−白金系合金の結晶粒が互いに分離され、磁気カップリング効果が低減される。
しかしながら、磁気記録層は、通常、スパッタリング法により形成される。磁気記録層を、鉄ターゲット、白金ターゲット、および炭素ターゲットの同時スパッタリングにより生産する場合、磁気記録層の組成を制御することが困難になるだけでなく、生産コストが増加することになる。
現行技術では、炭素原料粉末および鉄または白金原料粉末を一緒に焼結することによりスパッタリングターゲットを形成する試みがなされている。しかしながら、炭素原料は凝集することが多く、炭素原料の含有量の割合が高い場合、スパッタリングターゲットの成分を均一に混合することは困難である。さらに、炭素が鉄相に存在して、焼結中に鉄−炭素化合物が形成される場合がある。上述の条件下では両方とも、大量の炭素がスパッタリングターゲットの表面に沈降して、その後のスパッタリングプロセスで異常放電を引き起こすことになり、大量の生成微粒子が、スパッタリングにより形成される磁気記録層に降下し、磁気記録層の品質および歩留にさらに影響を及ぼす場合がある。
国際公開第2012133166号A1
現行技術の欠陥に照らして、本発明の目的は、スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量を低減させ、それによりその後のスパッタリングプロセス中の異常放電の発生確率を低減すること、および微粒子汚染の問題を低減して、スパッタリングにより得られる磁気記録層の品質および歩留を向上させることである。
上述の目的を達成するために、本発明は、鉄(Fe)、白金(Pt)、および炭素(C)を含む、鉄−白金系スパッタリングターゲットであって、炭素は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、15原子パーセント(at%)以上および45at%以下の量であり、鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造は、2μm以下の平均サイズおよび3未満の平均アスペクト比を有する炭素相を有する、鉄−白金系スパッタリングターゲットを提供する。
本発明によると、鉄−白金系スパッタリングターゲット中の炭素含有量ならびに金属組織学的マイクロ構造中の炭素相の平均サイズおよびアスペクト比を調整することにより、全体的な鉄−白金系スパッタリングターゲットの相組成の均一分散を向上させることが有用である。そのため、それにより鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量が効果的に低減され、したがって異常放電の発生確率を低減でき、その後のスパッタリングプロセス中の微粒子汚染の問題も緩和できる。
本発明によると、各炭素相のサイズは、金属組織学的マイクロ構造中の黒色相の中心点を通過する最大長を指し、炭素相の平均サイズは、複数セットのデータの平均値である。
本発明によると、各炭素相のアスペクト比は、まず、金属組織学的マイクロ構造中の黒色相の中心点を通過する最大長を軸として特定し、金属組織学的マイクロ構造中の黒色相の中心点を通過する最小長を幅として特定し、軸と幅との割合関係性(軸/幅)をアスペクト比とする。炭素相の平均アスペクト比は、複数セットのデータの平均である。
好ましくは、鉄は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、20at%以上および70at%以下の量である。
好ましくは、白金は、白金に基づくスパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、10at%以上および40at%以下の量である。より好ましくは、白金は、14at%以上および40at%以下の量である。さらにより好ましくは、白金は、15at%以上および38at%以下の量である。
本発明によると、鉄−白金系スパッタリングターゲット中の炭素のタイプは、これらに限定されないが、三次元四面体構造を有するダイヤモンド、二次元平面構造を有するグラファイト、一次元構造を有するカーボンナノチューブ、またはそれらの任意の組合せであってもよい。好ましくは、炭素はダイヤモンドである。
一部の実施形態では、鉄−白金系スパッタリングターゲットは、磁性結晶粒の分離を増強し、磁気記録層として使用するためのより多くの利点を提供するために、窒化ホウ素(BN)をさらに含む。好ましくは、窒化ホウ素は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの合計量に基づき、0at%よりも多いが10at%以下の量である。
他の実施形態では、鉄−白金系スパッタリングターゲットは、鉄−白金系スパッタリングターゲットのスパッタリングにより形成される磁気記録層の熱安定性を増強し、磁気記録層の熱遷移温度を低下させるために、これらに限定されないが、銅(Cu)、銀(Ag)、またはそれらの任意の組合せをさらに含む。好ましくは、銅は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの合計量に基づき、0.5at%以上および2at%以下の量である。好ましくは、銀は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの合計量に基づき、0.5at%以上および2at%以下の量である。
本発明によると、鉄−白金系スパッタリングターゲットのスパッタリング表面は、X線回折(XRD)により特徴付けられる。鉄−白金系スパッタリングターゲットは、鉄−白金合金を含む。鉄−白金系スパッタリングターゲットのX線回折パターンでは、鉄−白金合金の格子面(111)が、特徴ピークとして特定され、格子面(111)の特徴ピークは、好ましくは、0.3°未満の半値全幅(FWHM)を有する。したがって、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの鉄−白金合金の格子面(111)の特徴ピークの半値全幅を制御することにより、さらに低減できる。
好ましくは、鉄−白金系スパッタリングターゲットは、これらに限定されないが、直流スパッタリング、高周波スパッタリング、またはマグネトロンスパッタリングに適用してもよい。
加えて、本発明は、鉄−白金系スパッタリングターゲットを製造するための方法をさらに提供する。この方法は、ステップ(A)高エネルギー機械的ミリングにより炭素原料を粉砕して、0.3μmから3μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する粉砕炭素粉末を得るステップ、ステップ(B)粉砕炭素粉末、鉄原料、および白金原料を混合し、機械的に合金化して、鉄−白金系合金粉末を得るステップ、ならびに、ステップ(C)熱間等静圧圧縮成形を含む焼結方法により鉄−白金系合金粉末を焼結して、鉄−白金系スパッタリングターゲットを得るステップを含み、炭素は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、15at%以上および45at%以下の量であり、鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造は、2μm以下の平均サイズおよび3未満の平均アスペクト比を有する炭素相を有する。
高エネルギー機械的ミリングにより炭素原料を前処理するステップおよび全ての原料を混合し、機械的に合金化するステップは両方とも、その後の鉄−白金系スパッタリングターゲットの形成を容易にして、炭素相に特定の範囲内の平均サイズおよび平均アスペクト比を持たせ、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量を効果的に低減する。
本発明によると、ステップ(A)の高エネルギー機械的ミリングは、高エネルギーボールミリングであり、使用される粉砕ボールは、ステンレス鋼ビーズまたはジルコニアビーズ(ZrO)であってもよく、これらに限定されないが、2mmから10mmまでの範囲の粒子サイズを有していてもよい。好ましくは、ステップ(A)の高エネルギー機械的ミリングの粉砕時間は、1時間から10時間まである。
本発明によると、ステップ(A)の炭素原料は、これらに限定されないが、三次元構造を有するダイヤモンド、二次元構造を有するグラファイト、一次元構造を有するカーボンナノチューブ、またはそれらの任意の組合せであってもよい。好ましくは、炭素原料のタイプは、ダイヤモンドである。炭素原料の平均粒子サイズは、微粒子降下、または鉄−白金系スパッタリングターゲットのスパッタリング中の基底層(鉄−白金相など)とドーパント(炭素相など)との導電率の差に起因する異常放電を回避するため、2μmから10μmまでである。好ましくは、炭素原料の平均粒子サイズは、ダイヤモンドの形状の場合は、2μmから5μmまでであり、グラファイトの形状の場合は、2μmから10μmまでである。
本発明によると、ステップ(B)の鉄原料は、これらに限定されないが、99%以上の純度を有する金属鉄、50重量%以上の量の鉄を有する鉄合金、またはそれらの組合せであってもよい。好ましくは、鉄原料は、20μmから80μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する。上記の範囲内の平均粒子サイズを有する鉄原料を選択することにより、鉄−白金系スパッタリングターゲット中の酸素の残留量を低減できる。
本発明によると、ステップ(B)の白金原料は、これらに限定されないが、99%以上の純度を有する金属白金、50重量%以上の量の白金を有する白金合金、またはそれらの組合せであってもよい。好ましくは、白金原料は、白金が鉄相を容易に拡散できるように、1μmから10μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する。
一部の実施形態では、白金原料および鉄原料は、鉄−白金合金であってもよい。
本発明によると、ステップ(B)は、窒化ホウ素をさらに含んでいてもよい。好ましくは、窒化ホウ素は、3.0μm未満の平均粒子サイズを有する。
本発明によると、ステップ(B)は、50μmから150μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する銅原料、5μmから10μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する銀原料、またはそれらの任意の組合せをさらに含んでいてもよい。具体的には、銅原料は、これらに限定されないが、99%以上の純度を有する金属銅、50重量%以上の量の銅を有する銅合金、またはそれらの任意の組合せであってもよい。銀原料は、これらに限定されないが、99%以上の純度を有する金属銀、50重量%以上の量の銀を有する銀合金、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
本発明によると、ステップ(B)の粉砕炭素粉末、鉄原料、および白金原料などは、任意の順序で添加および混合してもよく、同時にもしくは順次に添加してもよく、または材料の全てを一度に添加するか、もしくは分割量で数回に分けて添加する。材料の全てを均一に混合する場合、機械的合金化(高エネルギー機械的ミリングなど)を実施して、鉄−白金系合金粉末を得る。
一部の実施形態では、ステップ(B)は、ステップ(B1)粉砕炭素粉末、鉄原料、および白金原料を混合して混合物を得るステップ、およびステップ(B2)混合物を機械的に合金化して、鉄−白金系合金粉末を得るステップを含む。他の実施形態では、ステップ(B1)の混合物は、窒化ホウ素、銀原料、銅原料、またはそれらの任意の組合せをさらに含んでいてもよい。
具体的には、ステップ(B2)の機械的合金化には、高エネルギーボールミリングを採用し、使用される粉砕ボールは、これらに限定されないが、ステンレス鋼ビーズまたはジルコニアビーズ(ZrO)であってもよく、2mmから10mmまでの範囲の粒子サイズを有していてもよい。好ましくは、前述の混合物を機械的に合金化するステップの粉砕時間は、1時間から10時間まである。
好ましくは、ステップ(C)で得られる鉄−白金系スパッタリングターゲット中、鉄は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、20at%以上および70at%以下の量である。好ましくは、白金は、白金に基づくスパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、10at%以上および40at%以下の量である。より好ましくは、白金は、14at%以上および40at%以下の量である。さらにより好ましくは、白金は、15at%以上および38at%以下の量である。
具体的には、ステップ(C)の焼結方法は、熱間等静圧圧縮成形(HIP)のみであってもよく、または熱間等静圧圧縮成形および放電プラズマ焼結(SPS)の組合せであってもよい。
好ましくは、ステップ(C)では、焼結温度は500℃から1300℃までであり、焼結圧力は50MPaから200MPaまでである。
好ましくは、ステップ(C)では、HIPのみを採用する場合、ステップ(C)の焼結温度は500℃から1300℃までであり、焼結圧力は50MPaから200MPaまでである。HIPおよびSPSの組合せを採用する場合、HIPの焼結温度は500℃から1300℃までであり、焼結圧力は50MPaから200MPaまでであり、SPSの焼結温度は600℃から1300℃までであり、焼結圧力は、20MPaから100MPaまでである。
HIPのみを採用する場合、焼結プロセスは、好ましくは1時間〜7時間継続させる。HIPおよびSPSの組合せを採用する場合、HIPは1時間〜3時間継続させ、SPSは0.1時間〜3時間継続させる。
一部の実施形態では、ステップ(C)の焼結は、異なる温度の段階的焼結ステップで実施してもよい。例えば、HIPのみの場合、焼結を、800℃〜1300℃の高温で0.5時間〜5時間継続させ、その後500℃〜800℃のより低温で0.5時間〜2時間継続させる。他の実施形態では、HIPおよびSPSの組合せの場合、HIPの焼結を1時間〜3時間継続させ、SPSの焼結を、800℃〜1300℃の温度で0.1時間〜1時間継続させ、その後600℃〜800℃のより低温で0.5時間〜2時間継続させる。
実施例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる500倍拡大の金属組織学的画像である。 実施例6の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる500倍拡大の金属組織学的画像である。 比較例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる1000倍拡大の金属組織学的画像である。 比較例2の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる500倍拡大の金属組織学的画像である。 比較例4の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる500倍拡大の金属組織学的画像である。 比較例5の鉄−白金系スパッタリングターゲットの、SEMによる500倍拡大の金属組織学的画像である。 実施例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットのXRDパターンである。 比較例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットのXRDパターンである。
鉄−白金系スパッタリングターゲットに対する、原料の組成、前処理および/または混合順序、ならびに焼結パラメーターの影響を検証するため、幾つかの鉄−白金系スパッタリングターゲットを下記に例示し、本発明の実施形態を詳細に記載するものとする。当業者であれば、本明細書の開示から本発明の利点および効果を容易に理解でき、本発明の趣旨から逸脱せずに種々の改変および調整を行って、本発明を遂行または実施できる。
実施例で使用した分析機器は以下の通りである。
1.走査型電子顕微鏡:Hitachi SE−3400
2.エネルギー分散型分光法:HORIBA EMAX450
3.X線回折計:多目的X線回折システム
4.誘導結合型プラズマ発光分析法:Perkinelmer Avio500
実施例で使用した原料は以下の通りである。
1.炭素原料:3μmの平均粒子サイズを有するダイヤモンド粉末
2.炭素原料:10μmの平均粒子サイズを有するグラファイト粉末
3.鉄原料:60μmの平均粒子サイズを有する金属鉄粉末
4.白金原料:7μmの平均粒子サイズを有する金属白金粉末
5.2μmの平均粒子サイズを有する窒化ホウ素
6.銀原料:8μmの平均粒子サイズを有する金属銀粉末
7.銅原料:80μmの平均粒子サイズを有する金属銅粉末
実施例1(E1):鉄−白金系スパッタリングターゲット
ダイヤモンド粉末および5mmの直径を有する複数の粉砕ボールを、ボールミルジャーに入れ、3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、0.5μmの平均粒子サイズを有する粉砕ダイヤモンド粉末を得た。加えて、粉砕ダイヤモンド粉末、金属白金粉末、および金属鉄粉末を、400メッシュのふるいにかけ、使用のために保管した。
次に、全での原料の原子の合計量に基づき、25at%の粉砕ダイヤモンド粉末、30at%の金属白金粉末、および45at%の金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−白金系合金粉末を得た。
次に、鉄−白金系合金粉末を、金型に均一に充填し、150MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度で3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、コンピューター数値制御(CNC)旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
実施例2〜8(E2〜E8):鉄−白金系スパッタリングターゲット
実施例2〜8で使用した製造方法は、実施例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造と同様だった。実施例2〜8の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々は、まず、鉄原料、白金原料、および粉砕炭素粉末を、下記の表1に示されている組成に従って計量および混合して混合物を得、混合物を実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供し、その後下記の表1に示されている焼結方法および温度に従って焼結することにより調製した。
実施例1〜8の鉄−白金系ターゲットを製造するための方法間の主な違いは、炭素原料のタイプ、各原料の量、焼結方法、および焼結温度だった。実施例2および5で採用した炭素原料は、グラファイト粉末だった。実施例3、4、6、7、および8で採用した炭素原料は、実施例1の炭素原料と同じダイヤモンド粉末だった。
さらに、実施例3および8の焼結ステップは、まず、SPSで0.5時間継続させ、その後HIPで3時間継続させた。SPSおよびHIPの焼結温度を下記の表1に示した。
実施例9〜10(E9〜E10):鉄−白金系スパッタリングターゲット
実施例9および10の鉄−白金系スパッタリングターゲットは、実施例1〜8の鉄−白金系スパッタリングターゲットに採用した鉄原料、白金原料、および炭素原料に加えて、窒化ホウ素をさらに含んでいた。実施例9および10で使用した製造方法は、実施例1の製造方法と同様だった。ダイヤモンド粉末を、まず、実施例1のように高エネルギーボールミリングで処理した。加えて、窒化ホウ素を、400メッシュのふるいにかけ、使用のために保管した。
実施例9および10の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々は、まず、鉄原料、白金原料、粉砕ダイヤモンド粉末、および窒化ホウ素を計量および混合して混合物を得、混合物を実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供して鉄−白金系合金粉末を得、その後鉄−白金系合金粉末を、下記の表1に示されている焼結方法および温度に従って3時間にわたって焼結することにより調製した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。実施例9および10の鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、原料として窒化ホウ素を添加したこと、各原料の量、および焼結温度が、実施例1の製造方法と異なっていた。
実施例11〜14(E11〜E14):鉄−白金系スパッタリングターゲット
実施例11〜14の鉄−白金系スパッタリングターゲットは、実施例1〜8の鉄−白金系スパッタリングターゲットに採用した鉄原料、白金原料、および炭素原料に加えて、銀または銅をさらに含んでいた。実施例11〜14で使用した製造方法は、実施例1の製造方法と同様だった。ダイヤモンド粉末を、まず、実施例1のように高エネルギーボールミリングで処理した。加えて、銀原料または銅原料を140メッシュのふるいにかけ、使用のために保管した。
実施例11〜14の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々は、まず、鉄原料、白金原料、粉砕ダイヤモンド粉末、および銀原料(実施例11および13など)または銅原料(実施例12および14など)を計量および混合して混合物を得、混合物を実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供して鉄−白金系合金粉末を得、その後下記の表1に示されている焼結方法および温度に従って鉄−白金系合金粉末を3時間にわたって焼結することにより調製した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。実施例11〜14の鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、銀原料または銅原料を添加したこと、各原料の量、および焼結温度が、実施例1の製造方法とは異なっていた。
比較例1(CE1):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例1で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例1の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、炭素原料の量、焼結方法、および焼結温度だった。比較例1の製造方法は以下の通りだった。ダイヤモンド粉末を、実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供した。下記の表1に示されている組成に従って鉄原料、白金原料、および粉砕ダイヤモンド粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を、実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供して、鉄−白金系合金粉末を得た。その後、鉄−白金系合金粉末を、1100℃の焼結温度にてホットプレス(HP)で3時間にわたって焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例2(CE2):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例2で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例3の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、比較例2の炭素原料を、高エネルギーボールミリングに供しなかったことだった。比較例2の製造方法は以下の通りだった。高エネルギーボールミリングにより加工しなかったダイヤモンド粉末、金属白金粉末、および金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後400メッシュのふるいにかけた。全ての原料を、混合後3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−白金系合金粉末を得た。鉄−白金系合金粉末を、金型に均一に充填し、まず、60MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度にて0.5時間にわたってSPSにより焼結し、その後150MPaの焼結圧力下1100℃の焼結温度にて3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例3(CE3):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例3で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例5の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、炭素原料の量、焼結方法、および比較例3の炭素原料を、高エネルギーボールミリングに供しなかったことだった。比較例3の製造方法は以下の通りだった。下記の表1に示されている組成に従って、高エネルギーボールミリングにより加工しなかったグラファイト粉末、金属白金粉末、および金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後400メッシュのふるいにかけた。全ての粉末を、混合後3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−白金系合金粉末を得た。鉄−白金系合金粉末を、金型に均一に充填し、1100℃の焼結温度で3時間にわたってHPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例4(CE4):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例4で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例3の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、原料の混合比、混合順序、および焼結温度だった。比較例4の製造方法は以下の通りだった。ダイヤモンド粉末を、実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供した。下記の表1に示されている組成に従って、粉砕ダイヤモンド粉末および金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を、3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−炭素化合物を含む粉末を得た。鉄−炭素化合物を含む粉末を、金属白金粉末に添加し、均一に混合し、まず、60MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度にて0.5時間にわたってSPSにより焼結し、その後150MPaの焼結圧力下900℃の焼結温度にて3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例5(CE5):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例5で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例3の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、原料の混合比、混合順序、および焼結温度だった。比較例5の製造方法は以下の通りだった。ダイヤモンド粉末を、実施例1と同じ高エネルギーボールミリングに供した。下記の表1に示されている組成に従って、粉砕ダイヤモンド粉末および金属白金粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を、3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、粉末混合物を得た。粉末混合物を、金属鉄粉末に添加し、均一に混合し、まず、60MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度にて0.5時間にわたってSPSにより焼結し、その後150MPaの焼結圧力下900℃の焼結温度にて3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例6(CE6):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例6で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例2の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、炭素原料の混合順序、および比較例6の炭素原料を、高エネルギーボールミリングに供しなかったことだった。比較例6の製造方法は以下の通りだった。下記の表1に示されている組成に従って、高エネルギーボールミリングにより加工しなかったグラファイト粉末、および金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を、3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−炭素化合物を含む粉末を得た。鉄−炭素化合物を含む粉末を、金属白金粉末に添加し、均一に混合し、まず、60MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度にて0.5時間にわたってSPSにより焼結し、その後150MPaの焼結圧力下900℃の焼結温度にて3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例7(CE7):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例7で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例2の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、原料の混合順序、および比較例7の炭素原料を高エネルギーボールミリングに供しなかったことだった。比較例7の製造方法は以下の通りだった。下記の表1に示されている組成に従って、高エネルギーボールミリングにより加工しなかったグラファイト粉末、および金属白金粉末をそれぞれ計量し、その後混合して混合物を得た。混合物を、3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、粉末混合物を得た。粉末混合物を、金属鉄粉末に添加し、均一に混合し、まず、60MPaの焼結圧力下800℃の焼結温度にて0.5時間にわたってSPSにより焼結し、その後150MPaの焼結圧力下900℃の焼結温度にて3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
比較例8(CE8):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例8で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造は、実施例1の製造と同様だった。比較例8の鉄−白金系スパッタリングターゲットは、下記の表1に示されている組成に従って、鉄原料、白金原料、および粉砕ダイヤモンド粉末を計量および混合して混合物を得ることにより調製した。実施例1および比較例8の鉄−白金系ターゲットの製造方法間の主な違いは、比較例8の粉砕ダイヤモンド粉末が、原料全ての原子の合計量に基づき60at%の量であり、比較例8の焼結温度が1000℃だったということだった。
比較例9(CE9):鉄−白金系スパッタリングターゲット
比較例9で使用した鉄−白金系スパッタリングターゲットの製造方法は、実施例5の製造方法と実質的に同じだった。主な違いは、原料の混合順序、および比較例9の炭素原料を高エネルギーボールミリングに供しなかったことだった。比較例9の製造方法は以下の通りだった。高エネルギーボールミリングにより加工しなかったグラファイト粉末、金属白金粉末、および金属鉄粉末をそれぞれ計量し、その後400メッシュのふるいにかけた。全ての原料を、混合後3時間にわたって高エネルギーボールミリングに供して、鉄−白金系合金粉末を得た。鉄−白金系合金粉末を、金型に均一に充填し、1100℃の焼結温度で3時間にわたってHIPにより焼結した。最後に、CNC旋盤加工を実施して、165mmの直径および4mmの厚さを有するパイの形の鉄−白金系スパッタリングターゲットを得た。
分析1:鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造
分析1−1:金属組織学的マイクロ構造中の各相の分散パターンおよび形態学的特徴の観察
試料片は、10mm×10mmであり、それぞれ、実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの中心から0.5半径の部分からワイヤーカットにより得た。
実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの試料片の各々の金属組織学的マイクロ構造を、適切な拡大率でSEMにより撮影した。本明細書では、炭素原料としてダイヤモンド粉末を使用することにより得た鉄−白金系スパッタリングターゲット(実施例1など)、および炭素原料としてグラファイト粉末を使用することにより得た鉄−白金系スパッタリングターゲット(実施例6など)を、例として取り上げた。実施例1および6の鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造のSEM画像を、それぞれ図1および2に示した。加えて、比較例1、2、4、および5の鉄−白金系スパッタリングターゲットのSEM画像を、それぞれ図3〜6に示した。実施例2の金属組織学的組成を、エネルギー分散型分光計(EDS)により分析した。黒色相の組成は、100at%炭素(C)だった。灰色相の組成は、46.21at%鉄(Fe)−53.79at%白金(Pt)だった。試料片の相全体の組成は、41.92at%Fe−35.55at%Pt−22.53at%Cだった。
図1、2、3を図6と比較すると、炭素原料のタイプに関わらず、炭素原料を高エネルギーボールミリングにより前処理し、その後鉄−白金系スパッタリングターゲットをHIPにより得た限り、実施例1および6などの得られた鉄−白金系スパッタリングターゲットの黒色相は、均一な微細な点のパターンで分散していた。対照的に、比較例1においてホットプレス成型により得られたか、または比較例2においてあらかじめ炭素原料を高エネルギーボールミリングしない方法により得られたかの鉄−白金系スパッタリングターゲットの場合いずれも、それらの黒色相(炭素相)は、粗パターンで分散していた。
加えて、比較例4および5では、炭素原料、鉄原料、および白金原料を、同時には高エネルギーボールミリングにより加工しなかった。それらの鉄−白金系スパッタリングターゲットの炭素相は、著しく不均一な分散パターンだった。さらに、比較例4では、まず、炭素原料および鉄原料を一緒に高エネルギーボールミリングした。より多量の鉄−炭素化合物が生成され、焼結後の鉄−白金系スパッタリングターゲットには多数の細孔が形成された。比較例5では、まず高エネルギーボールミリングにより炭素原料および白金原料を粉砕することにより、焼結後の鉄−白金系スパッタリングターゲットの細孔数は大幅に低減されたが、焼結後の鉄−白金系スパッタリングターゲットには、炭素化合物の細長い粗黒色相が生成された。
分析1−2:金属組織学的マイクロ構造中の炭素相の平均サイズ
実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの試料片の金属組織学的マイクロ構造を、画像分析ソフトウェアImage−Pro Plusによりそれぞれ分析した。5000倍拡大の金属組織学的画像を、SEMにより撮影した。1つの試料片の3つの異なる領域を無作為に選択して、3つの金属組織学的画像を得た。3つの金属組織学的画像の炭素相のサイズを、上記画像分析ソフトウェアにより分析し、ソフトウェアにより計算して、鉄−白金系スパッタリングターゲットの炭素相の平均サイズを表す平均サイズを得た。結果を、下記の表1に示した。
分析1−3:金属組織学的マイクロ構造中の炭素相のアスペクト比
実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの試料片の金属組織学的マイクロ構造を、画像分析ソフトウェアImage−Pro Plusによりそれぞれ分析した。5000倍拡大の金属組織学的画像を、SEMにより撮影した。1つの試料片の3つの異なる領域を無作為に選択して、3つの金属組織学的画像を得た。3つの金属組織学的画像の各々の炭素相のアスペクト比を、上記画像分析ソフトウェアの内蔵「アスペクト」機能により分析し、ソフトウェアにより計算して、鉄−白金系スパッタリングターゲットの炭素相のアスペクト比の平均を表すアスペクト比の平均を得た。結果を、下記の表1に示した。
分析2:鉄−白金系スパッタリングターゲット中のFe−Pt相の格子面(111)の特徴ピークのFWHM
金属組織学的マイクロ構造の各々の観察が完了した後、実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系ターゲットの試料片の各々を、#60、#120、#240、#320、#600、#1000、#1500、#2000、および#4000番の紙やすりで順に研磨した。研磨は、研磨跡を除去するために90回転させることによるクロス研磨モードで実施した。紙やすり#4000で研磨した後、実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの試料片が準備された。
次に、実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの結晶構造を、XRDにより、0.04°のステップサイズおよび20〜100°の2θ測定範囲の条件下で分析した。X線回折パターンでは、各結晶面に対応する特徴ピークの強度は、試料片の表面の結晶粒の結晶方位と正に相関する。その後、XRDパターンにおけるFe−Pt相の格子面(111)の特徴ピークのFWHMを、ソフトウェアJadeにより分析した。結果を、下記の表1に示した。
図7に示されているように、実施例1のXRDパターンにおける41.181°の最強シグナルを有する特徴ピークは、Fe−Pt相の格子面(111)を表していた。加えて、図8には、下から上に、PtFeの標準試料、Fe1.28Pt0.72の標準試料、FePtの標準試料、FeC、および比較例1のXRDパターンを示した。
図7および8の比較によると、図7のFe−Pt相を表す格子面(111)のシグナルおよびその特徴ピークは、幅狭く、ヘテロ相は少数だった。それに比べて、図8のFe−Pt相を表わす格子面(111)のシグナルはより弱く、その特徴ピークはより幅広かった。これは、比較例1の鉄−白金系スパッタリングターゲットが、種々の合金相を有していたことを意味する。
分析3:鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量
30mm×30mm×3mmの試料片を、実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系ターゲットの各々からワイヤーカットにより得た。実施例1〜14および比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの試料片の各々を、#80、#240、#400、#800、#1500、#2500、および#4000番の紙やすりで順に、研磨跡を除去するために90度回転させることによるクロス研磨モードで研磨し、#4000番の紙やすりで研磨した5分後、アルコール溶液に入れ、超音波洗浄機で洗浄した。
次に、洗浄した試料片の各々を、100mlの超純水に入れ、超音波洗浄機により10分間25℃で振動させ、その後、誘導結合型プラズマ発光分析法析(ICP−OES)により検出した。振動後の超純水中の炭素の量は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量を表していた。結果を、下記の表1に示した。
Figure 0006937356

Figure 0006937356
結果および考察
実施例1〜14および比較例1〜9の分析1−2、1−3、および分析3の結果に照らして、実施例1〜14の各々では、炭素原料の量およびその適切な前処理を制御し、炭素原料、鉄原料、および白金原料を、同時に機械的合金化処理に供し、鉄−白金系合金粉末をHIPにより焼結した。さらに、実施例1〜14の各々では、炭素の量を、45at%以下の範囲内に制御し、鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造中の炭素の相を、2μm以下の平均サイズ、および3未満の平均アスペクト比を有するように制御した。そのため、実際に、実施例1〜14の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々の表面の炭素沈降量は、比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々の表面の炭素沈降量よりも低かった。
さらに、実施例1〜14の鉄−白金系スパッタリングターゲットの各々における炭素沈降量に関する分析3の結果によると、鉄−白金合金の格子面(111)の特徴ピークのFWHMは、鉄−白金系スパッタリングターゲットのX線回折パターンでは0.3°未満であった。対照的に、鉄−白金合金の格子面(111)の特徴ピークのFWHMは全て、比較例1〜9の鉄−白金系スパッタリングターゲットのX線回折パターンでは0.3°よりも大きかった。
さらに、実施例1、6〜8の各々の鉄−白金系スパッタリングターゲットの炭素は、25at%の量であった。実施例5の鉄−白金系スパッタリングターゲットの炭素は、15at%の量であった。分析3において、実施例1、6〜8の炭素沈降量の結果を、実施例5の結果と比べると、炭素原料としてダイヤモンド粉末を選択した実施例1、6〜8の炭素沈降量は、実施例1、6〜8の鉄−白金系スパッタリングターゲットがより大きな炭素含有量を有する場合でさえ、炭素原料としてグラファイト粉末を選択した実施例5の炭素沈降量よりも少なかった。。したがって、炭素原料としてのダイヤモンド粉末は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量を低減する。
さらに、分析3において、実施例1〜8の炭素沈降量の結果を、実施例9および10の結果と比較すると、実施例9および10の鉄−白金系スパッタリングターゲットは、窒化ホウ素を含んでいた。鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量はさらに低減された。
分析3における比較例1〜9の炭素沈降量の結果によると、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量は、まず炭素原料を高エネルギー機械的ミリングの処理に供することにより、さらに低減できる。しかしながら、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の炭素沈降量は、炭素原料の量が同時に適切な範囲内に制御されない限り(比較例8など)、焼結方法がHIPを含まない限り(比較例1など)、または炭素原料、鉄原料、および白金原料が、同時に機械的に合金化できない限り(比較例4および5など)、許容可能な品質レベルに適合するまで低減されないだろう。
上記から、鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造中の炭素量および炭素相を適正に制御することにより、本発明は、鉄−白金系スパッタリングターゲットの相組成の分散均一性を向上させるだけでなく、鉄−白金系スパッタリングターゲットの表面の黒色炭素粒子の沈降を抑制して、鉄−白金系スパッタリングターゲットのスパッタリング中の異常放電の発生確率を低減させ、フィルム層への粒子降下の問題を緩和して、ターゲットをスパッタリングすることにより形成される磁気記録層の品質および歩留を向上させる。
上記に記載されている実施形態は、本発明の説明例に過ぎず、本明細書の特許請求の範囲を限定することは意図されていない。特許請求しようとする保護範囲は特許請求の範囲に基づき、上記に記載されている特定の実施形態に限定されない。

Claims (13)

  1. 鉄(Fe)、白金(Pt)、および炭素(C)を含む鉄−白金系スパッタリングターゲットであって、
    前記炭素は、前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、15at%以上および45at%以下の量であり、
    前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造は、2μm以下の平均サイズおよび3未満の平均アスペクト比を有する炭素相を有し、
    前記鉄−白金系スパッタリングターゲットは、鉄−白金合金を含み、前記鉄−白金系スパッタリングターゲットのX線回折パターンは、前記鉄−白金合金の格子面(111)の特徴ピークを有し、前記格子面(111)の前記特徴ピークは、0.3°未満の半値全幅(FWHM)を有する、
    鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  2. 前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、前記鉄は、20at%以上および70at%以下の量であり、前記白金は、10at%以上および40at%以下の量である、請求項1に記載の鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  3. 前記炭素は、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンナノチューブ、またはそれらの任意の組合せである、請求項1または2に記載の鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  4. 前記炭素はダイヤモンドである、請求項3に記載の鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  5. 前記鉄−白金系スパッタリングターゲットは、窒化ホウ素をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  6. 前記鉄−白金系スパッタリングターゲットは、銅、銀、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の鉄−白金系スパッタリングターゲット。
  7. 鉄(Fe)、白金(Pt)、および炭素(C)を含む鉄−白金系スパッタリングターゲットを製造するための方法であって、
    ステップ(A)高エネルギー機械的ミリングにより炭素原料を粉砕して、0.3μmから3μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する粉砕炭素粉末を得るステップ、
    ステップ(B)前記粉砕炭素粉末、鉄原料、および白金原料を混合し、機械的に合金化して、鉄−白金系合金粉末を得るステップ、ならびに
    ステップ(C)熱間等静圧圧縮成形を含む焼結方法により前記鉄−白金系合金粉末を焼結して、前記鉄−白金系スパッタリングターゲットを得るステップを含み、
    前記炭素は、前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、15at%以上および45at%以下の量であり、
    前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの金属組織学的マイクロ構造は、2μm以下の平均サイズおよび3未満の平均アスペクト比を有する炭素相を有する、
    方法。
  8. 前記鉄−白金系スパッタリングターゲットの原子の合計量に基づき、前記鉄は、20at%以上および70at%以下の量であり、前記白金は、10at%以上および40at%以下の量である、請求項に記載の方法。
  9. 前記ステップ(B)において、前記鉄原料は、20μmから80μmまでの範囲の平均粒子サイズを有し、前記白金原料は、1μmから10μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する、請求項またはに記載の方法。
  10. 前記ステップ(B)は、ステップ(B1)前記粉砕炭素粉末、前記鉄原料、および前記白金原料を混合して混合物を得るステップ、およびステップ(B2)前記混合物を機械的に合金化して、前記鉄−白金系合金粉末を得るステップを含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記ステップ(B)は、3.0μm未満の平均粒子サイズを有する窒化ホウ素、50μmから150μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する銅原料、5μmから10μmまでの範囲の平均粒子サイズを有する銀原料、またはそれらの任意の組合せをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記ステップ(C)の焼結方法は、放電プラズマ焼結(SPS)をさらに含む、請求項11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記ステップ(C)において、焼結温度は、500℃から1300℃までであり、焼結圧力は、50MPaから200MPaまでである、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
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