JP6931806B2 - 冷凍だし巻き卵及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は冷凍だし巻き卵及びその製造方法に関する。より詳細には、解凍時の離水による出汁の滲出ロスが少なく、喫食時、咀嚼したときに内部から出汁(だし)(以下、本明細書において「だし」とひらがな表記する場合がある)が滲出してジューシーな食感を有する冷凍だし巻き卵、及びその製造方法に関する。
従来の冷凍だし巻き卵は、全卵(卵黄と卵白)に調味料及び水を配合した卵含有液を卵焼き器に注加して加熱し、凝固して半固体状になったときにひとまとまりにして奥に寄せておき、これを、同じ卵液を加熱して形成した外層で包み込んでいくことを繰り返して、だし巻き卵を完成させ、これを冷凍凍結させることで製造されている。かかる冷凍だし巻き卵については、従来より、解凍時に離水が発生して出汁が滲出してロスするため、喫食時にパサパサした食感となり、だし巻き卵の美味しさの決め手になるジューシー感が損なわれるという問題がある。
冷凍だし巻き卵に関するものではないものの、一般に、解凍時の離水を解消する方法として、増粘剤を用いる方法が知られている。なお、増粘剤(ゲル化剤)は、卵を使った製品にも多く使用されており、例えば、特許文献1には、2種類以上の色彩、風味及びテクスチャーを楽しむことができる複層卵製品の製造に、ゲル化剤によりゾル化またはゲル化させた調味卵液を用いることが開示されている。また特許文献2には、卵黄液の加熱凝固層と卵白液の加熱凝固層からなる棒状二層加工卵の製造に際して、加熱凝固層の形成にグアーガムやキサンタンガムなどのガム質を含む乳化剤を使用することが記載されている。さらに特許文献3には、喫食時に電子レンジで加熱調理するオムライス様の卵液被覆冷凍食品の製造方法が記載されており、卵含量の異なる2種以上の未凝固卵液で具材を重層被覆した後、冷凍する方法において、前記未凝固卵液に増粘剤を加えて粘性を調整することで、電子レンジでの加熱によっても卵が全体的に均質に凝固し、見た目、食感、及び風味が良好な食品が得られることが記載されている。また、増粘剤の使用を開示するものではないものの、多様な味、食感、色、香り等を有する玉子焼を製造する方法として、特許文献4には、焼成された玉子焼の内部に調味液を注入する方法が記載されている。しかしながら、冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を防止しながら、同時に喫食時のジューシー感を改善増強する方法については知られていない。
特開平5−336927号公報 特開昭59−159758号公報 特開2000−50845号公報 特開2011−229520号公報
本発明は、冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を抑制して出汁の滲出ロスを低減するとともに、喫食時には咀嚼によって出汁が適度に滲出し、良好なジューシー感を有する冷凍だし巻き卵、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、2以上の複数の層構造を有するだし巻き卵の製造にあたり、増粘剤の含有量を異にする少なくとも2種類の卵含有液を用意し、外層の調製に内層よりも増粘剤の含有量が多い卵含有液を用いて、外層内部に内層を包み込むように、順次、卵含有液を加熱処理して、複層だし巻き卵を製造し、これを冷凍処理することで、上記の解凍時の離水抑制という課題と、喫食時の滲出性増大という課題の、一見相反する2つの課題を同時に解決した冷凍だし巻き卵が得られることを見出して、本発明を完成した。
本発明はこれらの知見に基づいて、さらに検討を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)冷凍だし巻き卵
(I−1)増粘剤濃度が異なる2種以上の卵含有液の凝固相を有する冷凍だし巻き卵であって、増粘剤を含まないか若しくは第2の卵含有液よりも低濃度の増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層が、第1の卵含有液よりも高濃度の増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層に内包されてなる、少なくとも2層の複層構造を有する冷凍だし巻き卵。言い換えれば、当該冷凍だし巻き卵は、第1相からなる層の外周囲に第2相からなる層が形成されてなる、少なくとも2層の複層構造を有する。
(I−2)前記増粘剤が、サイリウムシードガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、及びジェランガムよりなる群から選択されるいずれか少なくとも1種である、(I−1)に記載する冷凍だし巻き卵。
(I−3)第2の卵含有液中の増粘剤の含有量が0.2質量%以上であることを特徴とする、(I−1)または(I−2)に記載する冷凍だし巻き卵。
(I−4)第1の卵含有液中の増粘剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する冷凍だし巻き卵。
(II)冷凍だし巻き卵の製造方法
(II−1)下記(A)及び(B)の工程を有する、(I−1)乃至(I−4)のいずれかに記載する冷凍だし巻き卵の製造方法:
(A)少なくとも下記(1)及び(2)の操作を有する加熱処理工程:
(1)前記(I−1)に記載する第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(内層)を形成する工程、
(2)前記(1)で得られた内層を内部に包みこむように、前記(I−1)に記載する第2の卵含有液を加熱して、前記内層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層(外層)を形成する工程;並びに
(B)前記加熱処理工程で製造されただし巻き卵を冷凍処理する工程。
(III)冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を抑制しながら、咀嚼による滲出を増強する方法
(III−1)少なくとも2層の複層構造を有する冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を抑制しながら、喫食時の咀嚼による離水を増強する方法であって、
冷凍前のだし巻き卵を、少なくとも、増粘剤を含む第2の卵含有液、及び増粘剤を含まないか若しくは上記第2の卵含有液よりも低い濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液を用いて、下記方法で製造する工程を有することを特徴とする方法:
(1)第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(内層)を形成する工程、
(2)前記で得られた層(内層)を内部に包みこむように、第2の卵含有液を加熱して、前記内層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(外層)を形成する工程。
本発明の冷凍だし巻き卵によれば、解凍時の離水が少ないため出汁の滲出ロスが少なく、また、喫食時には咀嚼により口腔内で出汁が滲出してジューシーな食感を有する、美味しいだし巻き卵を提供することができる。冷凍だし巻き卵は、常温や冷蔵のだし巻き卵よりも長期間保存することができるとともに、喫食時には、湯煎や電子レンジなどで加熱することで簡単にしかも短時間で調理できるため、飲食店または家庭で提供する総菜やお弁当のおかずとして有用である。
本発明の冷凍だし巻き卵の実施態様の1例(2層構造)を示す断面図である。 (A)〜(C)はいずれも本発明の冷凍だし巻き卵の実施態様の1例(4層構造)を示す断面図である。 (A)〜(B)はいずれも本発明の冷凍だし巻き卵の実施態様の1例(4層構造)を示す断面図である。 実験例1の結果を示す図である。 実験例2において、内層を構成する卵含有液中の増粘剤濃度を0.05質量%に固定した被験試料a〜eについての結果を示す図である。 実験例2において、外層を構成する卵含有液中の増粘剤濃度を0.4質量%に固定した被験試料A〜Fについての結果を示す図である。
(I)冷凍だし巻き卵、及びその製造方法
本発明が対象とする冷凍だし巻き卵は、増粘剤濃度が異なる2種以上の卵含有液を用いて製造される。具体的には、増粘剤を含まないか、若しくは後述する第2の卵含有液よりも低い濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層が、当該第1の卵含有液よりも高い濃度で増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層に内包されてなる、少なくとも2層の複層構造を有することを特徴とする。当該だし巻き卵は、言い換えれば、前記第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層の外周囲に、前記第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層が形成されてなる複層構造を有する。
(1)冷凍だし巻き卵の複層構造
このように本発明の冷凍だし巻き卵は、増粘剤濃度が異なる2種以上の卵含有液の凝固相から形成される2層以上の複層構造を有する。制限されないものの、例えば、本発明の冷凍だし巻き卵には、例示として図1にその断面図を示すように、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(符号1)の外周囲に、第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層(符号2)が形成されてなる2層構造を有するものが含まれる。
ここで第1相及び第2相とは、卵含有液が加熱されることで形成された凝固相を意味し、本発明では説明の便宜上、第1の卵含有液の加熱凝固相を「第1相」、第2の卵含有液の加熱凝固相を「第2相」と称する。第1の卵含有液(以下、単に「第1液」とも称する)と第2の卵含有液(以下、単に「第2液」とも称する)の違いは、少なくとも増粘剤の濃度であり、第2液には第1液と比べて高い濃度で増粘剤が含まれている。つまり、第2液及びそれから形成される加熱凝固相(第2相)と、第1液及びそれから形成される加熱凝固相(第1相)とは、増粘剤濃度が、常に「第2の卵含有液および第2相」>「第1の卵含有液および第1相」の関係にある。また、第1の卵含有液および第1相には増粘剤が含まれない場合が包含される。このように、「第1の卵含有液及び第1相」と「第2の卵含有液及び第2相」との関係は、調製する卵含有液中の増粘剤濃度に応じて相対的なものであり、例えば、増粘剤の濃度が異なる2種類の卵含有液を調製した場合、両者を比較して、増粘剤の濃度が高い方が第2の卵含有液となり、濃度が低い方が第1の卵含有液となる。また増粘剤の濃度が異なる3種の卵含有液を調製した場合、当該3種のなかで増粘剤の濃度が最も高い卵含有液が第2の卵含有液となり、それよりも濃度が低い卵含有液は、いずれも前記第2液との関係で第1の卵含有液と位置づけられる。
このような卵含有液の加熱凝固相から形成される複層構造は2層以上であればよく、本発明の効果を奏することを限度として、その層数は特に制限されない。例えば、増粘剤の濃度が相違する2種類の卵含有液を用いて2層以上の複層構造からなる冷凍だし巻き卵を調製する場合について、その一例を挙げると、図2にその断面図を示すように、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる3つの連続層(符号1)の外周囲に、第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる1層(符号2)が形成された4層構造を有するもの(図2(A));第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる2つの連続層(符号1)の外周囲に、第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる2つの連続層(符号2)が形成された4層構造を有するもの(図2(B));第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる1層(符号1)の外周囲に、第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる1層(符号2)が形成され、またその外周囲に、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる1層(符号1)が形成され、さらにその外周囲に、第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる1層(符号2)が形成されてなる4層構造を有するもの(図2(C))を挙げることができる。また増粘剤の濃度が相違する3種類以上の卵含有液を用いて3層以上の複層構造からなる冷凍だし巻き卵を調製する場合について、その一例を挙げると、図3にその断面図を示すように、増粘剤を含まない第1の卵含有液の凝固相(第1相−a)からなる2つの連続層(符号1a)の外周囲に、増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相−b)からなる1層(符号1b)が形成され、その外周囲に、前記増粘剤を含む第1の卵含有液よりも高濃度で増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる1層(符号2)が形成された4層構造を有するもの(図3(A));または、増粘剤を含まない第1の卵含有液の凝固相(第1相−a)からなる1層(符号1a)の外周囲に、増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相−b)からなる1層(符号1b)が形成され、その外周囲に前記増粘剤を含む第1の卵含有液よりも高濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相−c)からなる1層(符号1c)が形成され、さらに外周囲に前記増粘剤を含む第1の卵含有液よりも高濃度で増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる1層(符号2)が形成された4層構造を有するもの(図3(B))を挙げることができる。但し、これらは例示であって、本発明の冷凍だし巻き卵を限定的に拘束するものではない。
本発明の冷凍だし巻き卵の複層構造として好ましくは、2層より多い複層構造であり、制限されないものの、図2(C)で示す複層構造を挙げることができる。
次に、本発明の冷凍だし巻き卵の上記複層構造を形成するための卵含有液について説明する。
(2)第1の卵含有液
本発明の冷凍だし巻き卵の製造に使用される第1の卵含有液は、前述するように、加熱処理によって凝固してだし巻き卵の第1相を形成するものである。当該第1相は、卵含有液から形成される凝固相の間隙にだし汁を弱い力で保持しており、複層構造を有する冷凍だし巻き卵の、主に内側に位置する層の形成に使用される。
第1の卵含有液は、少なくとも卵、だし及び水を原料として調製することができる。卵は経験的に可食性の鳥類の卵であり、好ましくは鶏卵、烏骨鶏の卵、アヒルの卵、うずらの卵、ダチョウの卵などを挙げることができる。好ましくは商業的に入手が容易な鶏卵である。卵含有液の調製には通常、全卵(黄身、白身)が使用されるが、制限されるものではない。卵含有液100質量%中に占める卵の量は、制限されないものの、60〜75質量%の範囲から選択することができる。好ましくは62〜70質量%であり、より好ましくは63〜66質量%である。
第1の卵含有液に配合するだしは、特に制限されず、好みによって適宜設定調製することができる。例えば、鰹だし、昆布だし、椎茸だし、合わせ調味料、醤油、みりん、塩、砂糖、及び酒等を適宜組み合わせ配合して、調製することができる。塩分濃度も制限されないものの、2%以下に設定することが望ましい。
第1の卵含有液には増粘剤を配合しなくてもよいが、後述する第2の卵含有液中の増粘剤濃度を超えない範囲で増粘剤を配合することもできる。本発明で対象とする増粘剤は、食経験のある可食性の増粘剤であればよいが、好ましくは増粘多糖類である。具体的には、好ましくはサイリウムシードガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、及びジェランガムよりなる群から選択されるいずれか少なくとも1種である。これらは1種単独で使用することもできるし、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。より好ましくはサイリウムシードガム、キサンタンガム、及びタマリンドシードガムであり、特に好ましくはサイリウムシードガムである。サイリウムシードガムを用いて卵含有液を調製すると、増粘するものの糸引きせずに液切れがよいため、だし巻き卵を焼成する際に液だれせず、原料ロスが予防できるとともに、調理場や厨房を汚さないという利点がある。増粘剤を配合する場合の、増粘剤濃度の上限は0.4質量%である。好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。実験例4で示すように、第1の卵含有液中の増粘剤濃度を0〜0.1質量%、好ましくは0.05質量%以下に設定することで、解凍時の離水を抑制しながらも、喫食時の咀嚼によるだしの離水(だしの滲出)を大きく低減することなく維持し、解凍してもジューシーな食感を有するだし巻きを得ることができる。
第1の卵含有液に配合する水の含有量は、卵、だし、及び増粘剤を配合して全体が100質量%となる残部であり、通常19〜34質量%の範囲から適宜設定される。
第1の卵含有液には、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記卵、だし、増粘剤及び水以外の成分として、例えば青葱、パセリ、ニラ、納豆、明太子、うなぎかば焼き、チーズ、塩昆布等を配合してもよく、特に制限されない。
(3)第2の卵含有液
本発明の冷凍だし巻き卵の製造に使用される第2の卵含有液は、加熱処理によって凝固してだし巻き卵の第2相を形成するものである。当該第2相は、前述する第1の卵含有液よりも高濃度の増粘剤を含有する卵含有液から形成される加熱凝固相であり、複層構造を有する冷凍だし巻き卵の、主に外側に位置する層の形成に使用される。本発明の効果から想像するに、冷凍だし巻き卵を解凍する際にだしの離水を抑制するためのバリアとして機能していると考えられる。
第2の卵含有液は、少なくとも卵、だし、増粘剤及び水を原料として調製することができる。卵は、前述する第1の卵含有液と同様に、経験的に可食性の鳥類の卵であり、好ましくは鶏卵、烏骨鶏の卵、アヒルの卵、うずらの卵、ダチョウの卵などを挙げることができる。好ましくは商業的に入手が容易な鶏卵である。但し、第1の卵含有液の調製に使用する卵と同じである必要はない。第2の卵含有液100質量%中に占める卵の量は、制限されないものの、60〜75質量%の範囲から選択することができる。好ましくは63〜66質量%であり、より好ましくは62〜70質量%である。
第2の卵含有液に配合するだしも、特に制限されず、第1の卵含有液と同様に、好みによって適宜設定調製することができる。第1の卵含有液と同じだしと同量使用することもできるし、また異なるだしを同量または異なる量で使用することもできる。
第2の卵含有液に配合する増粘剤は、前述する第1の卵含有液と同様、食経験のある可食性の増粘剤であればよいが、好ましくは増粘多糖類である。具体的には、好ましくはサイリウムシードガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、及びジェランガムよりなる群から選択されるいずれか少なくとも1種である。これらは1種単独で使用することもできるし、また2種以上を組み合わせて使用することもできる。より好ましくはサイリウムシードガム、キサンタンガム、及びタマリンドシードガムであり、特に好ましくはサイリウムシードガムである。第2の卵含有液の増粘剤濃度は、前述する第1の卵含有液の増粘剤濃度より高くなるように調製される。好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.2〜0.4質量%である。実験例3で示すように、第2の卵含有液中の増粘剤濃度を0.2質量%以上とすることで、解凍時の離水を有意に抑制することができる。
第2の卵含有液に配合する水の含有量は、卵、だし、及び増粘剤を配合して全体が100質量%となる残部であり、通常19〜34質量%の範囲から適宜設定される。
第2の卵含有液には、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記卵、だし、増粘剤及び水以外の成分として、例えば青葱、パセリ、ニラ、納豆、明太子、うなぎかば焼き、チーズ、塩昆布等を配合してもよく、特に制限されない。
(4)冷凍だし巻き卵の製造方法
本発明の冷凍だし巻き卵は下記の(A)加熱処理及び(B)冷凍処理の工程を経て製造することができる:
(A)少なくとも下記(1)及び(2)の操作を有する加熱処理工程:
(1)前記第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(内層)を形成する工程、
(2)前記(1)で得られた内層を内部に包みこむように、前記第2の卵含有液を加熱して、前記内層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層(外層)を形成する工程;並びに
(B)前記加熱処理工程で製造されただし巻き卵を冷凍処理する工程。
(A)加熱処理工程
加熱処理工程は、前述する第1の卵含有液(第1液)及び第2の卵含有液(第2液)をそれぞれ加熱して層状の凝固相を形成する工程である。加熱方法は、第1液及び第2液毎に層状の凝固相(第1相、第2相)が形成できるとともに、第1相からなる層の外周囲を覆うように第2相からなる層が形成できる方法であればよく、その限りにおいて特に制限されない。慣用には卵焼き器と称される鉄製、銅製またはアルミ製などの金属製の専用フライパンを用いて焼成する方法を挙げることができる。また、市販のプラスチック製の「レンジで簡単!!だし巻きたまご」(ダイソー製)を用いて電子レンジを用いて製造することもできる。
なお、本発明の冷凍だし巻き卵は、前述するように少なくとも2層以上の複数の層構造を有する。このため、例えば図1に示すような、一番単純な2層からなるだし巻き卵は、まず第1相からなる層を形成する(1)工程を実施して内層(図1の符号1)を製造した後、次いでその外周囲を覆うように、第2相からなる層を形成する(2)工程を実施して外層(図1の符号2)を製造することで得ることができる。2層より多い複数の層構造を有するだし巻きも、少なくとも一部に前記(1)工程及び(2)工程により製造される上記の層構造を有している。例えば、図2(A)に示す4層構造を有するだし巻き卵は、上記(1)工程を3回繰り返して第1相からなる3つの連続層(内層)(符号1)を製造した後に、当該内層を包みこむように、(2)工程を1回実施して、その外周囲に、第2相からなる層(外層)(符号2)を形成することで製造することができる。また、図2(B)に示す4層構造を有するだし巻き卵は、上記(1)工程を2回繰り返して第1相からなる2つの連続層(内層)(符号1)を製造した後に、当該内層を包みこむように、(2)工程を2回繰り返して実施して、その外周囲に、第2相からなる2つの連続層(外層)(符号2)を形成することで製造することができる。さらに、図2(C)に示す4層構造を有するだし巻き卵は、上記(1)工程を実施して第1相からなる層(内層)(符号1)を製造した後に、当該内層を包みこむように、(2)工程を実施して、その外周囲に、第2相からなる層(外層)(符号2)を形成し、再び、(1)工程を実施して第1相からなる層(符号1)を製造した後に、当該層をなかに包みこむように、(2)工程を実施して、その外周囲に、第2相からなる層(外層)(符号2)を形成することで製造することができる。このように、(1)工程と(2)工程は、複数回、連続または非連続に、繰り返して実施することができる。
斯くして(1)工程と(2)工程を有する焼成工程後、製造されただし巻き卵は、必要に応じて布巾や簀の子などで形を整えた後、必要に応じて粗熱をとって、(B)の冷凍処理工程に供される。なお、冷凍処理工程は、定法に従って行うことができる。制限されないものの、例えばショックフリーズ機能(例えば、ホシザキ株式会社製ブラストチラーHBC-6A3など)を用いてマイナス30℃の冷風をだし巻き卵に吹き付ける等のエアーブラスト方式によって中心部まで完全に凍結させた後に、冷凍装置内に静置することで実施してもよい。
斯くして製造された冷凍だし巻き卵は、必要に応じて、プラスチック製の包装容器等の適当な容器にパッケージングされ、冷凍保存することができる。また必要に応じて真空密閉した後に冷凍保存に供することもできる。なお、冷凍だし巻き卵は、衛生管理されたマイナス20℃の条件で冷凍保存することで、少なくとも12か月間は保存することができる。
(II)解凍時の離水を抑制しながら咀嚼による滲出を増強する方法
本発明は、少なくとも2層の複層構造を有する冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を抑制しながら、咀嚼による滲出を増強する方法を提供する。当該方法は、冷凍前のだし巻き卵を、少なくとも、増粘剤を含む第2の卵含有液、及び増粘剤を含まないか若しくは上記第2の卵含有液よりも低い濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液を用いて、下記方法で製造する工程を有することで実施することができる。
(1)第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(内層)を形成する工程、
(2)前記で得られた層(内層)を内部に包みこむように、第2の卵含有液を加熱して、前記内層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層(外層)を形成する工程。
なお、ここで使用する第1の卵含有液、第2の卵含有液、及びそれに配合する増粘剤は、前記(I)に説明した通りであり、前記(I)の記載を援用することができる。また冷凍前のだし巻き卵を製造する(1)工程及び(2)工程も、(I)に説明した通りであり、前記(I)の記載を援用することができる。
斯くして製造されるだし巻き卵を、前述する冷凍処理工程に供して製造される冷凍だし巻き卵は、増粘剤を含有しない卵含有液で製造された冷凍だし巻き卵と比較して、喫食時に解凍した際に離水が抑制されて、だしの滲出ロスが少なく、また咀嚼した際のだしの滲出性がよく、ジューシーな食感を得ることができる。
以上、本明細書の記載において「を含む」及び「を含有する」の用語は、「からなる」及び「から実質的になる」という意味を包含するものである。
以下、本発明の構成及び効果の理解を助けるために実験例を例示として説明する。但し、本発明は、これらの実験例によって何ら制限されるものではない。なお、以下の実験は、特に言及しないかぎり、いずれも常温(25±5℃)及び大気圧条件で実施した。また、以下の実験において、官能評価は、食品の官能評価に熟練し、だし巻き卵の食感評価について訓練し、パネル間で評価基準(感覚)を統一したパネル複数名で実施した。
実験例1 冷凍だし巻き卵の製造及びその評価(その1)
各種の冷凍だし巻き卵を製造し、解凍時及び喫食時の離水を評価した。
(1)実験方法
(1−1)卵含有液の調製
表1に記載する配合割合で各成分を混合しよく撹拌して、撹拌した卵含有液を1回こし器で漉して、増粘剤の濃度が異なる2種類の卵含有液(卵含有液1a、卵含有液2a)を調製した。ここで全卵は、鶏卵の殻を割って卵黄と卵白とをかき混ぜて調製した。比較例1の冷凍だし巻き卵用に、卵含有液1aと卵含有液2aとを等量の割合で配合した卵含有液3aを調製した。だし(液体)は、有限会社イワイザケドットコム(天満天神MAIDO屋)製「だしまきだし」をストレートで用いた。増粘剤としてサイリウムシードガム(シキボウ株式会社製フードメイドP−100)を用い、あらかじめ40℃前後の水に溶解させ、それにだしを加えて撹拌して、さらにザルで粗漉しした全卵を入れ、充分に撹拌混和したものを使用した。
Figure 0006931806
(1−2)冷凍だし巻き卵の製造
表1に記載した3種類の卵含有液を用いて、下記に記載する工程に従って2種類のだし巻き卵(比較例1:単相だし巻き卵、実施例1:二相だし巻き卵)を製造した。これらのだし巻き卵の加熱焼成には、卵焼き用の長方形の鉄製フライパン(卵焼き器)(内寸16 cm×15cm)を用いた。
(i)単相だし巻き卵(比較例1)の製造には、フライパンに植物油をひき、十分に熱した段階で、卵含有液3a(増粘剤0.2%配合)を50gを入れて、フライパンの全面に延ばし、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、表面を内部に包みこむようにロール状に丸めてフライパンの奥に寄せた(内層の形成)。次いで、同じ卵含有液3aを同量(50g)フライパンに入れ、前記と同様に、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、先に丸めておいた焼成層(内層)を中に包み込むように外周囲に層状に1回巻き(外層)、卵含有液3aの凝固相(第1相)からなる2層構造の単相だし巻き卵(比較例1)を製造した。一方、二相だし巻き卵(実施例1)の製造には、上記と同様にして、卵含有液1a(50g)の凝固相からなる焼成層(内層)を形成した後、次いで卵含有液2aを同量(50g)フライパンに入れて、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、先に丸めておいた焼成層(内層)をその中に包み込むように外周囲に層状に1回巻き(外層)、卵含有液1aの凝固相(第1相)を内層に、卵含有液2aの凝固相(第2相)を外層に有する、2層構造の二相だし巻き卵(実施例1)を製造した。
(ii)次いで製造した単相だし巻き卵(比較例1)、及び二相だし巻き卵(実施例1)を、ホシザキ株式会社製ブラストチラーHBC-6A3のショックフリーズ機能を用いてマイナス30℃の冷風をだし巻き卵に吹き付けるエアーブラスト方式によって約1時間かけて中心部まで完全に凍結させ、さらに1時間、同装置内に静置することで急速凍結し、冷凍だし巻き卵を製造した。次いで、これらをPET/ナイロン/CPP複層袋に入れて真空密封して、マイナス20℃の条件下で14日間冷凍保存した。
(1−3)解凍時の離水の評価
解凍は、冷凍だし巻き卵(比較例1:単相だし巻き卵、実施例1:二相だし巻き卵)を、真空包装した冷凍状態で、そのまま十分量の熱湯中に投入し、10分間茹でることで行った。10分間の茹で工程の後、だし巻き卵の外に流出したドリップの重量を測定し、冷凍前のだし巻き卵の重量(X:初期重量)(100質量%)に対するドリップの重量(Y)の割合から解凍時の離水率(%)を算出した。
[式1]
解凍時の離水率(%)=(Y/X)×100
X:冷凍前のだし巻き卵の重量g
Y:ドリップの重量g
(1−4)喫食時の離水の評価
喫食時の離水率を、インストロン社製物性測定装置インストロン5542型を用いて、だし巻き卵を口腔内で歯で噛んで出汁が滲み出る状況を模して評価した。具体的には、解凍後のだし巻き卵をほぼ中央で切断し、切断部から2〜37mmの位置に直径約35mmの円柱を接触させて荷重が10Nになるまで加圧し、その状態で10秒間静止した。加圧の前後におけるだし巻き卵の重量減少量(g)を、加圧による出汁の滲み出し量(A:喫食時の離水量)とし、加圧前のだし巻き卵の重量(x)(100質量%)に対する離水量の割合から喫食時の離水率(%)を算出した。
[式2]
加圧(喫食)による離水重量(A)
=加圧前のだし巻き卵の重量(x)−加圧後のだし巻き卵の重量(y)
加圧時(喫食時)の離水率(%)=(A/x)×100
A:加圧による離水重量g
x:加圧前のだし巻き卵の重量g
(2)実験結果
解凍時の離水率(図中、「解凍時」)と加圧時の離水率(図中、「加圧時」)を、図4に示す。図4に示すように、増粘剤濃度が異なる卵含有液1aと卵含有液2aで製造した二相だし巻き卵(実施例1)のほうが、増粘剤の総量が0.2%で同量で同一の卵含有液で製造した単相だし巻き卵(比較例1)よりも、解凍時の離水は抑制されている一方で、加圧時の離水量(喫食時の滲出量)は多いことが確認された。このことから、増粘剤を含まない卵含有液と増粘剤を含む卵含有液を用意し、増粘剤を含まない卵含有液の凝固相(第1相)から形成した層(内層)を内部に含むように、その外周囲を増粘剤を含む卵含有液の凝固相(第2相)から形成した層(外層)で包み込んで、増粘剤濃度が異なる少なくとも2種の相からなる複層構造とすることで、解凍離水が抑制されて、解凍時の滲出ロスが低減されるとともに、喫食時にはジューシーな食感を有する、冷凍だし巻き卵が得られることが確認された。またパネル5名を用いた官能評価試験によっても同様の結果が得られた。
実験例2 冷凍だし巻き卵の製造及びその評価(その2)
種々の増粘剤濃度を有する卵含有液を用いて、内層と外層の2層からなる冷凍だし巻き卵を製造し、解凍時及び喫食時の離水を評価した。なお、本実験例でも増粘剤として実験例1と同じくサイリウムシードガムを用いた。
(1)実験方法
(1−1)冷凍だし巻き卵の製造
表2に記載するように、内層を構成する卵含有液1中の増粘剤濃度を0.05質量%に固定し(鶏卵(全卵)66%、出汁6%、増粘剤0.05%、水にて100%に調製)、外層を構成する卵含有液2中の増粘剤濃度を0.05〜0.4質量%と変えて(鶏卵(全卵)66%、出汁6%、増粘剤0.05〜0.4%、水にて100%に調製)、実験例1と同様の方法により、冷凍だし巻き卵を製造した。当該冷凍だし巻き卵は、卵含有液1の凝固相(第1相)から形成された内層と、卵含有液2の凝固相(第2相)から形成された外層からなる二層構造の冷凍だし巻き卵a〜eである。これらの冷凍だし巻き卵のうち、冷凍だし巻き卵b〜eは、内層と外層が増粘剤濃度(内層<外層)の異なる卵含有液の凝固相(二相)から形成されており、本発明の冷凍だし巻き卵(実施例2b〜2e)として製造したのに対して、冷凍だし巻き卵aは、内層と外層が増粘剤濃度が同じ卵含有液の凝固相(単相)から形成されており、比較例(比較例2a)として製造した。
Figure 0006931806
また、表3に記載するように、外層を構成する卵含有液2中の増粘剤濃度を0.4質量%に固定し(鶏卵(全卵)66%、出汁6%、増粘剤0.4%、水にて100%に調製)、内層を構成する卵含有液1中の増粘剤濃度を0〜0.4質量%と変えて(鶏卵(全卵)66%、出汁6%、増粘剤0〜0.4%、水にて100%に調製)、実験例1と同様の方法により、卵含有液1の凝固相(第1相)から形成された内層と卵含有液2の凝固相(第2相)から形成された外層からなる二層構造の冷凍だし巻き卵を製造した。これらの冷凍だし巻き卵のうち、冷凍だし巻き卵A〜Eは、内層と外層とが増粘剤濃度の異なる卵含有液(内層<外層)の凝固相(二相)から形成されており、本発明の冷凍だし巻き卵(実施例2A〜2E)として設定したのに対して、冷凍だし巻き卵Fは、内層と外層が増粘剤濃度が同じ卵含有液の凝固相(単相)から形成されており、比較例(比較例2F)として設定した。
Figure 0006931806
(1−2)解凍時及び喫食時の離水の評価
上記で製造した各種の冷凍だし巻き卵(被験試料a〜e、及び被験試料A〜F)を真空包装した状態で、十分量の熱湯の中に投入し、10分間茹でて解凍した。茹で工程の後、実験例1と同様に、だし巻き卵の外に流出したドリップの重量を測定し、冷凍前のだし巻き卵の重量(100質量%)に対するドリップの重量の割合から解凍時の離水率(%)を算出した。また、実験例1と同様に、解凍後のだし巻き卵を物性測定装置インストロン5542型を用いて加圧し、加圧の前後におけるだし巻き卵の重量減少量から、加圧による出汁の滲み出し量(A:喫食時の離水量)を求め、加圧時(喫食時)の離水率(%)を算出した。
(2)実験結果
内層を構成する卵含有液中の増粘剤濃度を0.05質量%に固定した被験試料a〜eについての結果を図5に、外層を構成する卵含有液中の増粘剤濃度を0.4質量%に固定した被験試料A〜Fについての結果を図6に、それぞれ示す。
図5に示すように、内層と外層が同じ増粘剤濃度の卵含有液の凝固相(単相)から形成された被験試料a(比較例2a)は、解凍時の離水が多く、解凍による滲出ロスが大きいのに対して、内層よりも外層の増粘剤濃度を高め二相構造とすることで、解凍時の離水が抑制され解凍による滲出ロスが低減できることが確認された(実施例2b〜2e)。特に外層の増粘剤濃度を0.2質量%以上にすることで解凍時の離水率を有意に低下できることが確認された(実施例2c〜2e)。
また図6より、内層相の増粘剤濃度を0とすることで、解凍時の離水を顕著に抑制しながらも、加圧時の離水率を大きく、つまり喫食時の滲出性・ジューシー感を高めることができることが確認された(実施例2A)。内層の増粘剤の濃度を上げると、解凍時の離水率は一旦増加するものの、増粘剤の濃度が高くなるにつれて抑制する傾向が認められた(実施例2B〜2E、比較例2F)。一方、加圧時の離水率(喫食時の滲出性・ジューシー感)は、内層の増粘剤の濃度が高くなるにつれて低くなり、0.2質量%以上になると、かなり低下した。このことから、内層の増粘剤濃度を0.1質量%以下にすることで、解凍時の離水率を抑制するとともに、加圧時の離水率(喫食時の滲出性・ジューシー感)を高く維持できると考えられる(実施例2A〜2C)。なおパネル5名による官能評価試験では、内層の増粘剤濃度が0の場合、喫食時にジューシー感の後にカスカス感が少しあったが(実施例2A)、0.1%以下となる濃度で増粘剤を配合することで、喫食時にジューシー感を強く感じることができることが確認された(実施例2B〜2C)。
実験例3 冷凍だし巻き卵の製造及びその評価(その3)
各種の冷凍だし巻き卵を製造し、解凍時の離水及び喫食時の食感を評価した。
(1)実験方法
(1−1)卵含有液の調製
表4に記載する配合割合で各成分を混合し良く撹拌して、1回こし器で漉して、3種類の卵含有液を調製した。ここで全卵は、鶏卵の殻を割って卵黄と卵白とをかき混ぜて調製した。だし(液体)は、実験例1および実験例2と同一の「だしまきだし」を用いた。増粘剤として実験例1及び2と同様にサイリウムシードガムを用い、あらかじめ40℃前後の水に溶解させ、それにだしを加えて撹拌して、さらにザルで粗漉しした全卵を入れ、充分に撹拌混和したものを使用した。
Figure 0006931806
(1−2)冷凍だし巻き卵の製造
表4に記載した3種類の卵含有液を用いて、表5に記載する工程に従って4層からなる6種類のだし巻き卵を製造した(実施例3−1〜3−3、比較例3−1及び3−2、対照例)。だし巻き卵の加熱焼成には、実験例1と同様に卵焼き用の長方形の鉄製フライパンを用いた。実施例3−1の冷凍だし巻き卵を例にして具体的に説明すると、フライパンに植物油をひき、十分に熱した段階で、卵含有液1a(増粘剤無配合)を75グラムを入れて、フライパンの全面に延ばし、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、表面を内部に包みこむようにロール状に丸めてフライパンの奥に寄せた(1層の形成)。次いで、同じ卵含有液1aを同量フライパンに入れ、前記と同様に、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、先に丸めておいた焼成層(1層)を中に包み込むように外周囲に層状に1回巻き(2層)、再びフライパンの奥に寄せた(2層の形成)。これを3回合計繰り返して、卵含有液1aの凝固相(第1相)からなる3層を連続して形成した。次いで、同フライパンに卵含有液2b(増粘剤0.3%配合)を75グラム入れて、箸でさっと混ぜて表面が半熟になり底面がほぼ焼けた時点で、上記で調製した卵含有液1aの凝固相(第1相)から形成された3層物(焼成卵)を中に包み込むように、層状に1回巻き(4層の形成)、布巾で形を整えて、だし巻き卵とした。同様に、表5に記載するように、使用する卵含有液を変えて、実施例3−2及び3−3、比較例3−1及び3−2、並びに対照例のだし巻き卵を各々製造した。
次いで製造した実施例3−1〜3−3のだし巻き卵、及び比較例3−1〜3−2のだし巻き卵を、焼成後、ホシザキ株式会社製ブラストチラーHBC-6A3のショックフリーズ機能を用いてマイナス30℃の冷風をだし巻き卵に吹き付けるエアーブラスト方式によって約1時間かけて中心部まで完全に凍結させ、さらに1時間、同装置内に静置することで急速凍結し、冷凍だし巻き卵を製造した。次いで、これらをPET/ナイロン/CPP複層袋に入れて真空密封して、マイナス20℃の条件下で14日間冷凍保存した。
(1−3)解凍時の離水と解凍だし巻き卵の食感の評価
冷凍から14日後、沸騰させ、加熱し続けた湯に冷凍だし巻き卵(袋入り)を入れて15分間湯煎し、解凍した。
袋内に流出した出汁の量から、冷凍だし巻き卵(実施例1〜3、比較例1〜2)の解凍によって生じた離水量を目視により確認した。
さらに、これらの解凍だし巻き卵をパネル5名に食してもらい、解凍だし巻き卵の柔らかさとジューシー感(食感)を、比較例3−2と対照例のだし巻き卵の柔らかさとジューシー感(食感)との対比で、下記の基準によりそれぞれ評価してもらった。なお、対照例のだし巻き卵は官能評価試験の直前に焼成して準備した。
[官能評価基準]柔らかさ、ジューシー感、総合的な美味しさ
4:対照例のだし巻き卵と同等。
3:対照例よりはやや劣るものの、比較例3−2の解凍だし巻き卵よりは有意によい。
2:比較例3−2の解凍だし巻き卵よりは有意によいが、対照例よりは劣る。
1:比較例3−2の解凍だし巻き卵よりはややよい。
0:比較例3−2の解凍だし巻き卵と同等
(2)実験結果
結果を表5に合わせて記載する。
Figure 0006931806
実施例3−1〜3−3はいずれも増粘剤含有量が異なる2種類の卵含有液から調製された二種類の相からなる4層構造を有する冷凍だし巻き卵である。具体的には、実施例3−1の冷凍だし巻き卵は、増粘剤を0.3質量%含む卵含有液の加熱凝固相(第2相)からなる1層(外層)が、増粘剤を含まない卵含有液の加熱凝固相(第1相)からなる3つの連続層(内層)を内部に包み込んでなる二相からなる4層構造を有している。また実施例3−2の冷凍だし巻き卵は、増粘剤を0.3質量%含む卵含有液の加熱凝固相(第2相)からなる1層(外層)が、増粘剤を0.1質量%含む卵含有液の加熱凝固相(第1相)からなる3つの連続層(内層)を内部に包み込んでなる二相からなる4層構造を有している。さらにまた実施例3−3の冷凍だし巻き卵は、増粘剤を0.3質量%含む卵含有液の加熱凝固相(第2相)からなる2つの連続層(外層)が、増粘剤を0.1質量%含む卵含有液の加熱凝固相(第1相)からなる2つの連続層(内層)を内部に包み込んでなる二相からなる4層構造を有している。一方、比較例3−1の冷凍だし巻き卵は、増粘剤を0.3質量%含む卵含有液の加熱凝固相から形成された4つの連続層からなり、比較例2の冷凍だし巻き卵は、増粘剤を含まない卵含有液の加熱凝固相から形成された4つの連続層からなり、いずれも同一の卵含有液から形成された単相からなる複層構造を有している。
表5に示すように、実施例3−1〜3−3の冷凍だし巻き卵は、対照例のだし巻き卵よりは劣るものの、比較例3−1及び比較例3−2の冷凍だし巻き卵よりも、ジューシーさ、柔らかさ及び美味しさが格段に良好であった。
実験例4 冷凍だし巻き卵の製造及びその評価(その4)
(1)冷凍だし巻き卵の製造
各種の冷凍だし巻き卵を製造し、解凍時の離水及び喫食時の食感を評価した。具体的には、各増粘剤毎に、表6に記載する卵含有液1b及び卵含有液2bを用いて(増粘剤として、各々サイリウムシードガム、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、またはタマリンドシードガムを使用)、表7に記載する工程に従って、実験例3と同様にして、2相からなる4層構造を有する5種類のだし巻き卵を製造した(実施例4−1〜4−5)。
Figure 0006931806
次いで製造した実施例4−1〜4−5のだし巻き卵を、ホシザキ株式会社製ブラストチラーHBC-6A3のショックフリーズ機能を用いてマイナス30℃の冷風をだし巻き卵に吹き付けるエアーブラスト方式によって約1時間かけて中心部まで完全に凍結させ、さらに1時間、同装置内に静置することで急速凍結し、冷凍だし巻き卵を製造した。次いで、これらをPET/ナイロン/CPP複層袋に入れて真空密封して、マイナス20℃の条件下で14日間冷凍保存した。
(2)解凍時の離水と解凍だし巻き卵の食感の評価
冷凍から14日後、沸騰させ、加熱し続けた湯に冷凍だし巻き卵(袋入り)を入れて15分間湯煎し、解凍した。
袋内に流出した出汁の量から、冷凍だし巻き卵(実施例4−1〜4−5)の解凍によって生じた離水量を目視により確認した。
さらに、これらの解凍だし巻き卵をパネル6名に食してもらい、解凍だし巻き卵の柔らかさとジューシー感(食感)を、実験例3に記載する方法で調製した比較例3−2と対照例のだし巻き卵の柔らかさとジューシー感(食感)との対比で、下記の基準によりそれぞれ評価してもらった。なお、対照例のだし巻き卵は官能試験直前に焼成して準備した。
[官能評価基準]柔らかさ、ジューシー感、総合的な美味しさ
4:対照例のだし巻き卵と同等。
3:対照例よりはやや劣るものの、比較例3−2の解凍だし巻き卵よりは有意によい。
2:比較例3−2の解凍だし巻き卵よりは有意によいが、対照例よりは劣る。
1:比較例3−2の解凍だし巻き卵よりはややよい。
(2)実験結果
結果を表7に合わせて記載する。
Figure 0006931806
この結果から、増粘剤としてサイリウムシードガム、タマリンドシードガム、キサンタンガム、カラギーナン、及びジェランガムの順にジューシーで美味しいだし巻き卵が製造でき、これらを含む卵含有液は、本発明の冷凍だし巻き卵の製造に有効に使用できることが確認された。特にサイリウムシードガムを含有する卵含有液は曳糸性が少ないため、取り扱い易く、まただし巻き卵の製造に、原料をロスすることなく、また調理場を汚すことなく使用できるという利便性が認められた。
一般にだし巻き卵は、卵液を複数回に分けて層状に加熱焼成して製造されることから、手間や時間を要する。これに対して、冷凍だし巻き卵は、常温で放置するか湯煎して解凍することで、手間なく簡便に製造することができるため、大量にだし巻き卵を提供する必要がある飲食店や総菜販売店に有用であるほか、一般消費者が家庭で作るお弁当用の冷凍総菜としても有用である。また、だし巻き卵は、卵を使用しているため、一般に長持ちしないが、冷凍だし巻き卵は、喫食するまで、冷凍された安定な状態で、一定期間保存することが可能であり、喫食時に必要分解凍して使用できるため、利便性が高い。
1.第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層
1a.増粘剤を含まない第1の卵含有液の凝固相(第1相−a)からなる2つの連続層
1b.増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相−b)からなる1層
1c.増粘剤を含む第1の卵含有液よりも高濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相−c)からなる1層
2.第1の卵含有液よりも高濃度で増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層

Claims (6)

  1. 増粘剤濃度が異なる2種以上の卵含有液の凝固相を有する冷凍だし巻き卵であって、
    増粘剤を含まないか若しくは第2の卵含有液よりも低濃度の増粘剤を含む第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層が、第1の卵含有液よりも高濃度の増粘剤を含む第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層に内包されてなる、少なくとも2層の複層構造を有する冷凍だし巻き卵。
  2. 前記増粘剤が、サイリウムシードガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、及びジェランガムよりなる群から選択されるいずれか少なくとも1種である、請求項1に記載する冷凍だし巻き卵。
  3. 第2の卵含有液中の増粘剤の含有量が0.2質量%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載する冷凍だし巻き卵。
  4. 第1の卵含有液中の増粘剤の含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載する冷凍だし巻き卵。
  5. 下記(A)及び(B)の工程を有する、請求項1乃至4のいずれかに記載する冷凍だし巻き卵の製造方法:
    (A)少なくとも下記(1)及び(2)の操作を有する加熱処理工程:
    (1)請求項1に記載する第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層を形成する工程、
    (2)前記で形成された層をなかに包みこむように、請求項1に記載する第2の卵含有液を加熱して、前記層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層を形成する工程;並びに
    (B)前記加熱処理工程で製造されただし巻き卵を冷凍処理する工程。
  6. 少なくとも2層の複層構造を有する冷凍だし巻き卵について、解凍時の離水を抑制しながら、喫食時の咀嚼による離水を増強する方法であって、
    冷凍前のだし巻き卵を、少なくとも、増粘剤を含む第2の卵含有液、及び増粘剤を含まないか若しくは上記第2の卵含有液よりも低い濃度で増粘剤を含む第1の卵含有液を用いて、下記方法で製造する工程を有することを特徴とする方法:
    (1)第1の卵含有液を加熱して、第1の卵含有液の凝固相(第1相)からなる層(内層)を形成する工程、
    (2)前記で得られた層(内層)を内部に包みこむように、第2の卵含有液を加熱して、前記内層の外周囲に第2の卵含有液の凝固相(第2相)からなる層(外層)を形成する工程。
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