JP6931523B2 - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、電気電子用部品、自動車用部品、シール材、パッキン、制振部材、チューブ等に用いられる熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を加熱成形して得られる成形体に関する。さらに詳しくは、特に耐熱性及び耐油性が求められる自動車エンジン周辺や高温機器のシール材、パッキン、チューブ等に好適な熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる成形体に関する。
アクリルゴムやアクリル系熱可塑性エラストマーは、耐熱性や耐油性等に優れ、自動車用部品やシール材、パッキン、チューブ等に広く用いられている。
従来、耐熱性の観点からアクリルゴムは加硫工程を経て架橋体として用いられているが、加硫工程の加熱温度が高く、かつ保持時間が長時間必要であり、エネルギー消費が高く経済的ではない。また、成形流動性の優れたアクリル系熱可塑性エラストマーは、例えばガラス転移点が100℃以上の(メタ)アクリル系ブロック系重合体とガラス転移点が0℃未満のアクリル系ブロック重合体を併せ持つ、ブロック共重合体として用いられているが、高温環境下での使用はアクリルゴム架橋体と比べ物性が劣るものである。
特許文献1には、コポリエステルエラストマーは柔軟性が十分ではなく、可塑剤を用いて柔軟化した場合、使用中にこの可塑剤が抽出又は揮散されるという欠点を有しているが、エポキシ基含有(メタ)アクリレート共重合体ゴムを、分子中に2個以上のカルボキシ基または1個以上のカルボン酸無水物基を有する化合物で架橋したものと併用することで、柔軟で優れた耐熱性、耐圧縮永久歪性を与える高応力の熱可塑性エラストマー組成物が得られることが記載されている。
特許文献2には、アクリル系ブロック共重合体(A)5〜95重量部と、増量剤としてのコア・シェル型グラフト共重合体95〜5重量部からなる組成物が開示されており、コア・シェル型グラフト共重合体として、アクリル酸エステルを主成分とする架橋ゴムであるコアに、メタアクリル酸エステルモノマーがグラフトした重合体を主成分とするシェルを有するものが開示されている。
特開平5−25374号公報 特開2005−8861号公報
しかしながら、アクリルゴムには、熱成形した際に残留応力が残りやすく、成形後に応力が解放されて成形体が変形してしまう恐れがあるのに対して、特許文献1で開示されるようなコポリエステルエラストマーと併用する方法では、この成形性の問題は解消されていない。
また、特許文献2の実施例では、特許文献1で開示された組成物よりも高い柔軟性を有する組成物が得られており、さらに可塑剤を併用してもよいことが記載されているが、可塑剤を併用したときの課題やその解決策についての具体的な記載はない。
本発明の課題は、成形性に優れ、柔軟性、及び耐油性に優れる熱可塑性エラストマー組成物、及び該熱可塑性エラストマー組成物を用いて得られる成形体を提供することにある。
本発明は、
〔1〕 (メタ)アクリル系重合体を含むシェル層を有するコアシェルゴム、アクリルゴム、及び可塑剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記コアシェルゴムと前記アクリルゴムの質量比(コアシェルゴム/アクリルゴム)が5/95〜95/5であり、前記可塑剤の溶解度パラメータが18.7(J/cm3)1/2以下であり、前記可塑剤の含有量が、前記コアシェルゴム100質量部に対して、1〜100質量部である、熱可塑性エラストマー組成物、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体
に関する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形体の材料として、成形性に優れ、柔軟性、及び耐油性に優れるという効果を奏するものである。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物(以下、本発明の組成物ともいう)は、(メタ)アクリル系重合体を含有するシェル層を有するコアシェルゴム、アクリルゴム、及び所定の溶解度パラメータを有する可塑剤を含有する。
本発明の組成物において、コアシェルゴムは、シェル層にアクリルゴムが相溶しやすく、アクリルゴムの混合によって組成物の柔軟性が向上する。一方、アクリルゴムは、耐油性に優れており、コアシェルゴムとの混合により、溶融混練時や加熱成形時の応力緩和が起こりやすくなり、残留応力による成形後の変形を抑えることができるため、組成物の成形性が向上する。さらに、溶解度パラメータの低い可塑剤を併用することにより、可塑剤がコアシェルゴムのコア層に取り込まれ、硬度を維持しつつ、耐油性が向上する。
本発明におけるコアシェルゴムは、コア層(最内層)とコア層を覆うシェル層からなるコアシェル構造を有する重合体粒子である。シェル層は複数の層からなっていてもよい。
コア層はゴム状弾性体であることが好ましく、コア層にゴム状弾性を付与する単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、シリコーン系単量体、スチレン系単量体、ニトリル系単量体、共役ジエン系単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等のアルキル基の炭素数が1〜22である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
シリコーン系単量体としては、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等が挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
ニトリル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
共役ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
コア層は、前記単量体の重合体であっても、共重合体であってもよいが、耐油性及び耐熱性の向上の観点から、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合体ゴム((メタ)アクリルゴム)、シリコーン系単量体の重合体ゴム(シリコーンゴム)、及び(メタ)アクリル酸エステル系単量体とシリコーン系単量体の共重合体ゴム((メタ)アクリル/シリコーンゴム)からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。これらのうち、さらに好ましいのは、(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合体ゴム((メタ)アクリルゴム)を主成分(60質量%以上、好ましくは80質量%以上)として含有するコア層であり、特に(メタ)アクリル酸ブチル単量体単位が主成分(45質量%以上、好ましくは65質量%以上)である(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合体ゴムは柔軟性に優れるので好ましい。
さらに、コア層は、前記単量体に、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート等の架橋性単量体を共重合した架橋ゴムであってもよい。
コア層のガラス転移温度は、柔軟性の観点から、好ましくは0℃以下、より好ましくは-100〜-5℃、さらに好ましくは-90〜-7℃、さらに好ましくは-40〜-7℃である。
シェル層は、アクリルゴムとの親和性の観点から、(メタ)アクリル系重合体を含む。なお、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリル又はその両方を含む。
(メタ)アクリル系重合体の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられ、本発明では、(メタ)アクリル酸エステル系単量体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のアルキル基の炭素数が1〜22であるアクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン、α-メチルスチレン等の単量体が用いられていてもよい。
さらに、(メタ)アクリル系重合体には、(メタ)アクリル酸グリシジル、無水マレイン酸等の反応性官能基を有する単量体が用いられていてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の含有量は、(メタ)アクリル系重合体を構成する単量体総量中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
(メタ)アクリル系重合体の含有量は、シェル層中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。(メタ)アクリル系重合体以外の重合体としては、アクリル−スチレン系共重合体、アクリル−アクリロニトリル系共重合体、アクリル−スチレン−アクリロニトリル系共重合体等が挙げられる。
コアシェルゴムにおいて、コア層とシェル層の質量比(コア層/シェル層)は、特に限定されないが、柔軟性と成形性の観点から、好ましくは0.05〜5、より好ましくは0.25〜4、さらに好ましくは0.7〜3.0、さらに好ましくは1.0〜2.0である。
コアシェルゴムの市販品としては、例えば、ロームアンドハース社製の「パラロイド(登録商標)」、三菱レイヨン(株)製の「メタブレン(登録商標)」、(株)カネカ製の「カネエース(登録商標)」、アイカ工業(株)製の「スタフィロイド(登録商標)」、(株)クラレ製の「パラフェイス(登録商標)」等が挙げられ、これらの2種以上が用いられていてもよい。
コアシェルゴムの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは4.5〜94質量%、より好ましくは10〜80質量%である。
アクリルゴムは、単量体にアクリル酸エステルが含まれる重合体であり、アクリル酸エステルによりゴム弾性が付与されたものである。
アクリル酸エステルとしては、アクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル等の非架橋性モノマーが好ましく、これらの2種以上が用いられていてもよいが、本発明では、アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。
アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、多い方が柔軟性が高くなるため好ましく、一方で少ない方が耐油性が高くなるという傾向もあるので、求める物性に応じて選択することができるが、一般的な用途で使いやすいバランスをもたらすという観点から、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8である。アクリル酸アルキルエステルのアルキル基の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸-n-プロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等が挙げられる。なお、比較的アルキル基の炭素数が多い炭素数3〜8のアクリル酸アルキルエステルを選択した場合、柔軟性や伸びの物性が向上する一方で、可塑剤の併用によって、耐油性がほとんど低下しないという特殊な効果が得られる。
アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸メトキシエトキシエチル等が挙げられる。
アクリルゴムは、架橋構造を形成するための官能基を有していることが好ましい。この官能基と反応して架橋構造を作ることが可能なものとして、架橋剤や分子末端官能基を有する結晶性エラストマー等を併用することにより、架橋構造が形成され、成形性と耐圧縮永久歪性がさらに向上する。架橋構造を形成するための官能基としては、エポキシ基、カルボキシ基、活性塩素含有基等が挙げられ、これらの中では、エポキシ基及びカルボキシ基が好ましく、エポキシ基がより好ましい。
従って、アクリルゴムには、前記アクリル酸エステルに加えて、架橋構造を形成するための官能性単量体、例えば、非共役ジエン、カルボキシ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、活性水素原子含有単量体等が用いられていることが好ましい。
非共役ジエンとしては、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネン等のアルキリデンノルボルネン等が挙げられる。
カルボキシ基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
エポキシ基含有単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
活性水素原子含有単量体としては、2-クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート等が挙げられる。
アクリル酸エステル及び架橋構造を形成するための官能性単量体以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステルとともに共重合体にゴム弾性を付与する単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等のα-オレフィン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン等が挙げられる。
その他の共重合可能な単量体としては、スチレン、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ビニル等の置換基により置換されたスチレン、アクリロニトリル等のエチレン性不飽和ニトリル、メタクリル酸メチル等のアルキル基の炭素数が1〜8程度のメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸テトラヒドロベンジル、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
好適なアクリルゴムとしては、アルキル基の炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルとエポキシ基又はカルボキシ基含有単量体との共重合体(アクリル酸アルキルエステル:90〜99.95モル%、エポキシ基又はカルボキシ基含有単量体:0.05〜10モル%)、アルキルの炭素数が1〜8であるアクリル酸アルキルエステルとエチレンとエポキシ基又はカルボキシ基含有単量体との共重合体(アクリル酸アルキルエステル:10〜89.95モル%、エチレン:10〜80モル%、エポキシ基又はカルボキシ基含有単量体:0.05〜10モル%)等が挙げられる。
本発明におけるアクリルゴムの、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、好ましくは10〜150、より好ましくは10〜120、さらに好ましくは15〜80である。ムーニー粘度は、JIS K6300により定義されており、成形性に関わる溶融流動性の指標として用いることができる。ムーニー粘度は組成や分子量等様々な要因で変化するが、粘度が小さいほど溶融流動性が良くなる一方、ある程度大きい方が組成物の強度が上がる傾向がある。
アクリルゴムのガラス転移温度は、好ましくは-100〜10℃、より好ましくは-90〜0℃、さらに好ましくは-40〜-10℃である。
アクリルゴムの含有量は、本発明の組成物中、好ましくは2.6〜95.2質量%、より好ましくは20〜90質量%である。
本発明の組成物におけるコアシェルゴムとアクリルゴムの質量比(コアシェルゴム/アクリルゴム)は、成形性の観点から、5/95〜95/5であり、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜85/15である。
可塑剤は、溶解度パラメータ(SP値)が、コアシェルゴムのコア層との相溶性の観点から、18.7(J/cm3)1/2以下であり、好ましくは18.5(J/cm3)1/2以下、より好ましくは18.3(J/cm3)1/2以下であり、耐油性の観点から、好ましくは17.0(J/cm3)1/2以上が、より好ましくは17.5(J/cm3)1/2以上、さらに好ましくは18.2(J/cm3)1/2以上である。
前記SP値を有する可塑剤としては、フタル酸系可塑剤、脂肪族エステル系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、高分子可塑剤等が挙げられ、これらの2種以上が用いられていてもよい。
フタル酸系可塑剤としては、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジウンデシル(DUP)等が挙げられる。
脂肪族エステル系可塑剤としては、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アゼライン酸ジ-2-エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル(DOS)等が挙げられる。
トリメリット酸系可塑剤としては、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル、トリメリット酸トリイソデシル等のトリメリット酸トリアルキルエステル等が挙げられる。
ピロメリット酸系可塑剤としては、ピロメリット酸-ジ-2-エチルヘキシル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブトキシエチル等が挙げられる。
エポキシ系可塑剤としては、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
高分子可塑剤としては、塩素化パラフィン、ポリエステル系高分子可塑剤、ポリエーテル系高分子可塑剤等が挙げられる。
高分子可塑剤の数平均分子量は、ブリードアウト抑制の観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上であり、柔軟性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下である。
可塑剤の25℃における粘度は、コアシェルゴムのコア層との相溶性の観点から、好ましくは10〜10,000mPa・s、より好ましくは20〜8,000mPa・s、さらに好ましくは50〜6,000mPa・s、さらに好ましくは100〜3,000mPa・sである。
可塑剤の含有量は、多いほど組成物の柔軟性が増すが、コアシェルゴムが吸収しきれない量を加えると組成物からブリードアウトしやすくなる。これらの観点から、可塑剤の含有量は、コアシェルゴム100質量部に対して、1〜100質量部、好ましくは5〜70質量部、より好ましくは10〜50質量部である。
また、本発明の組成物中の可塑剤の含有量は、好ましくは0.05〜49質量%、より好ましくは0.1〜40質量%である。
本発明の組成物は、耐熱性の観点から、さらに、ポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーから選ばれた少なくとも1種の結晶性エラストマーを含有していることが好ましい。アクリルゴムとして架橋点官能基(架橋構造を形成するための官能基)を有するものを用いた場合は、結晶性エラストマーの分子末端官能基とアクリルゴムのゴム架橋点官能基との反応により生成したアクリルゴムと結晶性エラストマーのグラフト体により強固な界面が形成され、耐熱性及び機械的強度がさらに向上する。
本発明では、柔軟性と耐熱性のバランスを取りやすい観点から、ポリエステル系エラストマーが好ましい。
ポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーは、耐熱性と柔軟性を両立する観点から、ハードセグメントとソフトセグメントブロックとを含むブロック共重合体であることが好ましい。
ポリエステル系エラストマーのハードセグメントとしては、ポリエステルブロックが好ましく、芳香族ジカルボン酸化合物と炭素数2〜6のアルキレングリコールの縮合反応により形成された結晶性ポリエステルブロックが好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの酸のアルキルエステル、無水物等が挙げられる。炭素数2〜6のアルキレングリコールとしては、1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
ハードセグメントを構成するブロックの融点は、耐熱性の観点から、160℃を超えることが好ましく、より好ましくは160〜300℃、さらに好ましくは170〜290℃である。
ポリエステル系エラストマーのソフトセグメントとしては、ポリエステル型ポリマーブロック、ポリエーテル型ポリマーブロック、ポリカーボネート型ポリマーブロック等が挙げられ、これらの中では、耐熱老化性の観点から、ポリエステル型ポリマーブロックが好ましい。
ポリエステル型ポリマーブロックとしては、ポリカプロラクトン、ポリエナンラクトン、ポリカプリロラクトン、脂肪族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジオールの縮合反応等より形成されたポリアルキレンエステル等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸化合物と脂肪族ジオールの縮合反応等より形成されたポリアルキレンエステルとしては、ポリブチレンアジペート等が挙げられる。
ソフトセグメントを構成するブロックのガラス転移温度は、柔軟性の観点から、0℃未満であることが好ましく、より好ましくは-100〜-5℃、さらに好ましくは-80〜-10℃である。
ソフトセグメントを構成するブロックの数平均分子量は、柔軟性の観点から、好ましくは400〜6000、より好ましくは500〜4000である。
ポリアミド系エラストマーとしては、ポリアミドからなるハードセグメントと、ポリエーテルからなるソフトセグメントを含むブロック共重合体が好ましい。
ポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントの質量比(ハードセグメント/ソフトセグメント)は、好ましくは20/80〜90/10、より好ましくは30/70〜85/15である。
結晶性エラストマーの融点は、耐熱性及び熱分解防止の観点から、好ましくは160〜300℃、より好ましくは170〜290℃、さらに好ましくは180〜280℃である。
結晶性エラストマーの曲げ弾性率は、組成物の柔軟性の観点から、好ましくは10〜1000MPa、より好ましくは50〜900MPa、さらに好ましくは80〜800MPaである。
結晶性エラストマーの市販品としては「ペルプレン(登録商標)P」および「ペルプレンS」(東洋紡績(株)製商品名)、「ハイトレル(登録商標)」(東レ・デュポン(株)製商品名)、「ローモッド(登録商標)」(日本ジーイープラスチック(株)製商品名)、「ニチゴーポリエスター(登録商標)」(日本合成化学工業(株)製商品名)、「ヌーベラン(登録商標)」(帝人化成(株)製商品名)等がある。ポリアミド系エラストマーの市販品としては「ペバックス(登録商標)」(アルケマ(株)製商品名)、「ダイアミド(登録商標)」(ダイセル・エボニック(株)製商品名)、「UBESTA(登録商標)XPA」(宇部興産(株)製商品名)、「ノバミッド(登録商標)」(DSM(株)製商品名)、「グリラックス(登録商標)」(東洋紡(株)製商品名)、「グリロン(登録商標)」(エムスケミー・ジャパン(株)製商品名)等が挙げられる。
結晶性エラストマーは、融点が高く、通常、本発明の必須構成成分であるコアシェルゴム及びアクリルゴムとは相分離するため、結晶性エラストマーが多すぎると、結晶性エラストマーを海相、コアシェルゴムとアクリルゴムを島相とする海島構造をとりやすく、組成物全体が硬くなる傾向がある。従って、結晶性エラストマーを共連続相又は海島構造の島相とすることで、組成物の柔軟性を損なうことなく、耐熱性を向上させる観点から、結晶性エラストマーの含有量は、コアシェルゴム及びアクリルゴムの合計量100質量部に対して、5〜80質量部、好ましくは10〜70質量部である。
また、本発明の組成物中の結晶性エラストマーの含有量は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
前記の如く、架橋構造を形成するための官能基を有するアクリルゴムは架橋剤の配合により架橋されていることが好ましく、本発明の組成物には、架橋剤が配合されていることが好ましい。
架橋剤は、アクリルゴムが有する架橋構造を形成するための官能基と反応し得る官能基を有する化合物が好ましい。官能基は、1分子中に、2個以上有していることが好ましい。
架橋剤が有する官能基としては、アミノ基、酸無水物基、カルボキシ基、イソシアナート基、エポキシ基、フェノール性水酸基等が挙げられる。
アミノ基を含有する架橋剤としては、トリメチルヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、1,4-ジアミノブタン等の脂肪族ジアミン類;トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ポリアミン類;フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、トルエンジアミン、ジアミノジトリルスルホン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
酸無水物基を有する架橋剤としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
カルボキシ基を有する架橋剤としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、シアヌル酸、ブタンテトラカルボン酸等の低分子量ポリカルボン酸、これらのカルボン酸が重合した高分子ポリカルボン酸、フェノール類等が挙げられる。
なお、酸無水物基又はカルボキシ基を有する架橋剤においては、熱による着色を起こしにくい観点からは、酸無水物基又はカルボキシ基を有する化合物が好ましく、反応時の脱ガスによる発泡や悪臭を起こしにくい観点からは、高分子ポリカルボン酸が好ましい。高分子カルボン酸のなかでも、高分子主鎖に複数のカルボキシ基含有側鎖を有するものは、着色や脱ガスを起こさない点で優れており、主鎖がポリアクリル酸誘導体を含むものはアクリルゴムと混合性が良い点で特に優れている。
高分子ポリカルボン酸の重量平均分子量は、好ましくは500〜200,000、より好ましくは1000〜100,000である。
高分子ポリカルボン酸の含有量は、架橋剤中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは98質量以上である。
イソシアナート基を有する架橋剤としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
エポキシ基を有する架橋剤としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のビスグリシジル化合物等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する架橋剤としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、そのビニル系共重合体等のビニルフェノール型樹脂等が挙げられる。
これらの架橋剤には、公知の架橋促進剤を併用してもよい。
エポキシ基を有するアクリルゴムに好適な架橋剤としては、アミノ基を含有する架橋剤、酸無水物基を有する架橋剤、カルボキシ基を有する架橋剤、フェノール性水酸基を有する架橋剤等が好ましい。
カルボキシ基を有するアクリルゴムに好適な架橋剤としては、アミノ基を有する架橋剤等が挙げられる。アミノ基を含有する架橋剤のなかでは、ヘキサメチレンジアミン及び4,4’-メチレンジアニリンが好ましく、4,4’-メチレンジアニリンがより好ましい。これらの架橋剤は、1,3-ジフェニルグアニジン等の架橋促進剤とともに用いられることが好ましい。
アミノ基を有するアクリルゴムに好適な架橋剤としては、エポキシ基を有する架橋剤等が挙げられる。エポキシ基を有する架橋剤のなかでは、ビスグリシジル化合物が好ましい。
架橋剤の配合量は、アクリルゴム100質量部に対して、好ましくは0.1〜12質量部、より好ましくは0.2〜8質量部、さらに好ましくは0.5〜7質量部である。
本発明の組成物は、少なくとも、コアシェルゴム、アクリルゴム、及び可塑剤、さらに必要に応じて、架橋剤、結晶性エラストマー、その他の添加剤等の添加剤を含有する原料混合物を、加熱条件下で混練して得られる。
本発明の組成物に必要に応じて配合される他の添加剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、ガラスファイバー等の充填材、公知の難燃剤、酸化防止剤等の安定剤、着色剤、滑剤等が挙げられる。
混練時の加熱温度は、原料混合物が混ざり合う温度であれば特に限定されないが、160〜300℃程度が好ましい。なお、アクリルゴムを架橋剤により動的架橋する場合は、170〜300℃の温度で混練することが好ましい。
混練には、ニーダーや一般的な溶融押出機を用いることができ、混練状態の向上のため、単軸の押出機を使用することが好ましい。押出機への供給は、各種成分を直接押出機に供給しても良く、予めヘンシェルミキサー等の混合装置を用いて各種成分を混合したものを一つのホッパーから供してもよいし、二つのホッパーにそれぞれの成分を仕込みホッパー下のスクリュー等で定量しながら供してもよい。
本発明の組成物は、混練して得られたものを直接成形体に成形して利用する他に、用途に応じて、最終製品として利用される成形体にする前に、いったんペレット、粉体、シート等の中間製品とすることができる。例えば、押出機によって溶融混合してストランドに押出し、冷水中で冷却しつつカッターによって円柱状や米粒状等のペレットに切断される。得られたペレットは、通常、射出成形、押出成形、プレス成形等の成形方法によって所定のシート状成形品や金型成形品とすることができる。
本発明の組成物のA硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは95以下、より好ましくは10〜90、さらに好ましくは20〜80である。
また、本発明の組成物のD硬度は、柔軟性の観点から、好ましくは60以下、より好ましくは1〜55、さらに好ましくは5〜45である。
本発明の組成物を、常法に従って、適宜加熱成形することにより、成形体が得られる。
加熱成形時の温度は、特に限定されないが、成形性の観点から、通常、150〜300℃程度が好ましい。
本発明の組成物を用いた成形体の製造に用いられる装置には、組成物を溶融成形することができる任意の成形機を用いることができる。例えば、ニーダー、押出成形機、射出成形機、プレス成形機、ブロー成形機、ミキシングロール等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を成形して得られる成形体は、高い耐熱性及び耐油性が求められる自動車エンジン周辺や高温機器のシール材、パッキン、チューブ等にも好適に用いることができる。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用した原料の各種物性は、以下の方法により測定した。
<コアシェルゴム>
〔単量体組成〕
ガスクロマトグラフ質量分析計(アジレントテクノロジー(株)製ガスクロマトグラフ 7890A、日本電子(株)製質量分析計 Jms-Q1000GC K9)を用い、550℃で試料を加熱分解し、熱分解物の質量分析を行うことで単量体組成を解析する。ただし、この測定方法ではシリコーン成分の含有量は検出されないため、表中の単量体組成はシリコーン成分を除く値である。
〔コア層のガラス転移温度(Tg)〕
180℃に加熱されたバッチ式ニーダー「プラストグラフEC50型」(ブラベンダー社製)にコアシェルゴム50gを投入し60r/minで10分間混練した後、溶融樹脂を得る。その後、180℃に加熱された、コアシェルゴム混練物を、180℃に加熱された熱プレス装置「TB-50-2」(東邦マシナリー(株)製、50t油圧プレス)を用い、厚さ2mm×幅100mm×長さ150mmの型枠内で、5MPaで加圧して2分間加熱し、型枠ごと水冷された冷却板に挟んで5MPaで3分間冷却プレス加工を施し、プレスシートを作製する。
プレスシートより幅12mm×長さ30mmの短冊状のテストピースを裁断し、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社 RSA-II型)のトーションモード(10gf負荷)、周波数 10Hz、昇温速度 5℃/min、温度 -80〜150℃の設定で各サンプルの粘弾性特性を測定する。
Tgは粘弾性測定における損失正接(Tanδ)のピーク値とし、コアシェルゴムでは一般的に、低温側からコア層のTg、そしてシェル層のTgが観測されるため、低温側のTgをコア層のTgとして観測する。
<アクリルゴム>
〔単量体組成〕
ガスクロマトグラフ質量分析計(アジレントテクノロジー(株)製ガスクロマトグラフ 7890A、日本電子(株)製質量分析計 Jms-Q1000GC K9)を用い、550℃で試料を加熱分解し、熱分解物の質量分析を行うことで単量体組成を解析する。
〔ムーニー粘度〕
JIS K6300で規定される方法に準拠して100℃で予備加熱1分間の後、回転開始後4分経過後のムーニー粘度(ML1+4)測定する。
〔ガラス転移温度(Tg)〕
構成する単量体成分のホモポリマーのTgを組成に応じて加重平均して算出する。
<可塑剤>
〔SP値〕
SP値は、濁点的定法により直接測定することもできるが、分子構造から推算することの方が一般的に受け入れられており、R.F.Fedorsにより著された「Polymer Engineering and Science」14(2),147(1974)に記載の計算方法によって、算出する。具体的には、下記式(1)に示す計算方法により、SP値((cal/cm3)1/2)を算出し、1(cal/cm3)1/2を2.05(J/cm3)1/2に換算する。
Figure 0006931523
δ:SP値((cal/cm3)1/2
ΔEvap:各原子団のモル蒸発熱(cal/mol)
V:各原子団のモル体積(cm3/mol)
〔粘度〕
JIS Z8803に準拠し、B型粘度計を用いて25℃で測定する。
〔高分子可塑剤の数平均分子量〕
テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)の測定を行い、ポリスチレン(PS)分子量標準の測定結果から、数平均分子量を算出する。
<架橋剤>
〔高分子ポリカルボン酸の重量平均分子量〕
テトラヒドロフラン(THF)を溶離液として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法(GPC)の測定を行い、ポリスチレン(PS)分子量標準の測定結果から、重量平均分子量を算出する。
〔酸価〕
JIS K2501に準拠し、架橋剤を、キシレンとジメチルホルムアミドを等量比で混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定し、水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から、酸価を算出する。
<結晶性エラストマー>
〔融点〕
示差走査熱量測定(DSC)装置を用い、JIS K 7121で規定される方法に準拠して10℃/minで昇温して得られる融解ピークの温度を融点とする。融解ピークが複数表れる場合は、より低い温度で表れる融解ピークを融点とする。
〔曲げ弾性率〕
ASTM D790規格に従い、射出成形で得られた127mm×12.7mm、厚さ3.2mmの試験片を、温度23℃、相対湿度50%で40時間置いた後、オートグラフを用いて1.4mm/minの速度で垂直の変位を加え、荷重−たわみ曲線から曲げ弾性率を算出する。
実施例1〜16及び比較例1〜8
〔熱可塑性エラストマー組成物(プレスシート)の作製〕
180℃に加熱されたバッチ式ニーダー「プラストグラフEC50型」(ブラベンダー社製)に、表6〜12に示す組成比(質量比)の原料成分を合計で54g投入し、60r/minの回転数で混合物を180〜210℃で溶融混練した。混練時間10分で、溶融状態の混練物を全量取り出し、室温(25℃)で冷却して、組成物を得た。
各組成物を180℃に加熱された熱プレス装置「TB-50-2」(東邦マシナリー(株)製、50t油圧プレス)を用い、厚さ2mm×幅100mm×長さ150mmの型枠内で、5MPaで加圧して2分間加熱し、型枠ごと水冷された冷却板に挟んで5MPaで3分間冷却プレス加工を施し、プレスシートを作製した。
こうして得られたプレスシートの厚さ×幅×長さを測定して記録した。組成物の成形性は溶融流動性と応力歪の緩和速度によって大きく影響される。まず、流動性が良好であれば、加熱プレスされた組成物は型枠の隅々にまでいきわたって型枠の寸法通りの成形品が得られるはずであり、流動性が悪い場合は成形品は型枠の寸法からは外れたものとなる。また、成形品に応力歪が残っていると、その解放に伴って、金型から取り出した成形品が変形を起こす。本発明の組成物の構成成分のうち、アクリルゴムは応力緩和が非常に遅く、なおかつガラス転移温度が低いので、成形した後で、徐々に応力が解放され、成形品の変形が起きる。そこで、この変形の度合いを成形性の評価として用いた。厚さ2mmの金型で成形した成形品を、金型から外して、23℃で24時間静置した成形品10個の最大厚み(測定しやすい厚み)を測定して、その平均値を算出し、以下の評価基準に従って、成形性を評価した。結果を表6〜12に示す。
〔成形性の評価基準〕
◎:成形品の厚みが1.8mm以上2.6mm以下
○:成形品の厚みが2.6mmを超えて3.0mm以下
×:成形品の厚みが3.0mmを超える
実施例及び比較例で使用した原料成分の詳細を表1〜5に示す。
Figure 0006931523
Figure 0006931523
Figure 0006931523
Figure 0006931523
Figure 0006931523
実施例及び比較例で得られた組成物について、下記の評価を行った。結果を表6〜12に示す。
(1) 柔軟性
〔A硬度〕
プレスシートを恒温恒湿室(温度23℃、相対湿度50%)に24時間以上静置し、シートの状態を安定させた。2mm厚さのプレスシートを3枚重ね、JIS K7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じて、A硬度を測定した。
〔D硬度〕
A硬度と同様に、JIS K7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験法」に準じて、D硬さを測定した。
(2) 機械的強度〔引張破壊応力と引張破壊ひずみ〕
プレスシートから、型抜機を用いてJIS K7113に記載の3号試験片(長さ20mm)を作製し、(株)島津製作所製の引張試験機(オートグラフ AG-50kND型)を用いて、23℃の温度環境下、200mm/minの速度で試験片を引っ張った。試験片破断時の応力(MPa)と伸び率(破断時の試験片の長さ(mm)/20(mm)×100、%)をそれぞれ引張破壊応力と引張破壊ひずみとして記録した。
(3) 耐油性〔膨潤率〕
JIS K6258に準拠し、70℃の日本サン石油(株)製のIRM903オイルにプレスシートを24時間浸漬して、浸漬前後のプレスシートの質量を測定し、膨潤率(浸漬後に増加した質量/浸漬前の質量×100、%)を算出した。オイルによる試験片の膨潤が全くなかった場合は0%となり、膨潤が大きいほど数字は大きくなるため、膨潤率の値は0%以上で、値が小さいほど耐油性に優れることを示す。膨潤率は、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
(4) 耐圧縮永久歪性〔圧縮永久歪率〕
プレスシートから、直径29mmの円形打ち抜き刃を用いて直径29mm×厚さ2mmの円形サンプルを打ち抜いた。この円形サンプルを6枚重ね、圧縮により厚さ12.5mmに調整した試験片を用いて、JIS K 6262に準拠した方法により、70℃、24時間環境下での圧縮永久歪率(CS)を測定した。
Figure 0006931523
Figure 0006931523
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Figure 0006931523
Figure 0006931523
Figure 0006931523
表6から、比較例1のコアシェルゴムは、成形性はよいものの耐油性が不十分であり、比較例2の架橋したアクリルゴムは、柔軟性は良好であるものの、成形性に欠けていることが分かる。また、比較例3のように両者を併用することにより、それぞれの欠点が補われているが、さらに実施例1のように可塑剤を併用することで、耐油性が向上している。
表7はコアシェルゴムの種類を変更した場合の結果を示しており、実施例2〜5はいずれも対応する比較例に比べて耐油性が向上するとともに柔軟性が向上しているが、コアシェルゴムのコア層/シェル層が1以上の実施例3及び実施例5では、可塑剤を併用しない比較例5及び7に比べて、耐油性と柔軟性の両方が著しく向上している。
表8から、アクリルゴムが、非架橋性モノマーとしてアクリル酸ブチルを含まず、アクリル酸エチルのみを含む実施例1が、実施例6と対比して、より耐油性に優れていることが分かる。
表9から、コアシェルゴムとアクリルゴムを同量で併用した実施例1は、実施例7、8と対比して、成形性に優れ、また、柔軟性と耐油性のバランスもよいことが分かる。
表10から、可塑剤を配合することで耐油性が向上することに加えて、SP値が18.7(J/cm3)1/2以下の可塑剤を選択することで、より一層耐油性の向上が顕著である。
表11から、可塑剤の増量とともに耐油性も向上することが分かる。
表12から、実施例3と実施例15、16の対比により、結晶性エラストマーを使用することで、高温下でも耐圧縮永久歪性と耐油性が向上し、架橋剤を併用することで、さらに耐油性が向上することが分かる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、電気電子用部品、自動車用部品、シール材、パッキン、制振部材、チューブ等の各種成形品に用いられる。

Claims (6)

  1. (メタ)アクリル系重合体を含むシェル層と(メタ)アクリル酸ブチルが単量体単位の83質量%以上である(メタ)アクリル酸エステル系単量体の重合体ゴムを含むコア層を有するコアシェルゴム、アクリルゴム(ただし、コアシェル構造をもつものを除く)、及び可塑剤を含有する熱可塑性エラストマー組成物であって、前記コアシェルゴムと前記アクリルゴムの質量比(コアシェルゴム/アクリルゴム)が5/95〜95/5であり、前記可塑剤の溶解度パラメータが18.7(J/cm3)1/2以下であり、前記可塑剤の含有量が、前記コアシェルゴム100質量部に対して、1〜100質量部である、熱可塑性エラストマー組成物。
  2. さらに、ポリエステル系エラストマー及びポリアミド系エラストマーから選ばれた少なくとも1種の結晶性エラストマーを含有する、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 架橋剤の配合によりアクリルゴムが架橋されている、請求項2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 架橋剤が、重量平均分子量が500〜200,000の高分子ポリカルボン酸を含有する、請求項3記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 架橋剤の配合量が、アクリルゴム100質量部に対して0.1〜12質量部である、請求項3又は4記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 請求項1〜5いずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形体。
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