JP6925961B2 - オレフィン製造用熱分解管 - Google Patents

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Description

本発明は、エタンやナフサなどの炭化水素原料をオレフィンに熱分解するオレフィン製造用熱分解管に関する。
エチレンやプロピレンなどのオレフィンは、産業において多種多様な用途の化学合成品を製造するために使用されている。オレフィンは、石油由来のエタンやナフサなどの炭化水素を熱分解管(クラッキングチューブ)に流し、700〜900℃に加熱して気相中で熱分解させることにより製造される。前記の製造方法では、高温にするために多量のエネルギーを必要とする。また、原料である炭化水素の熱分解工程では、熱分解管の内表面に炭素(コーク)が析出したり、熱分解管の内表面に浸炭現象が起こったりするなど様々な課題があり、これらの課題を解決し得る高性能の熱分解管の開発が望まれている。
特許文献1には、前記の課題を解決するオレフィン製造用熱分解管が開示されている。
特許文献1に開示されている鋳造製品では、ペロブスカイト型の触媒、特に、バリウム(Ba)、セリウム(Ce)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)などの塩基性酸化物を形成する元素を用いたペロブスカイト型の触媒により構成される触媒層を内表面に設けている。前記の構成により、特許文献1に開示されている鋳造製品は、前記触媒層によって内表面に析出したコークを水素や炭酸ガスに分解させるアンチコーキング機能を有し、内表面へのコークの析出を抑止できるようになっている。
米国特許出願公開第2011/0295051号明細書
オレフィンを製造する際には副生成物が生成される。そこで、副生成物の生成を抑えることが求められている。
本発明は、前記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、副生成物の生成を抑制できるオレフィン製造用熱分解管を提供することにある。
本発明者らは、脱水素化触媒の適正量を確認するための試験を行ったところ、脱水素化触媒の量を増やすと転化率(=生成物mol量/原料mol量)は向上するものの、オレフィン選択率(=オレフィンmol量/生成物mol量)をより向上させることが必要であることが分かった。そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、オレフィンの選択率を向上させるには、助触媒が有効であるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
前記の課題を解決するために、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、耐熱性金属材料からなる管状の母材の内表面に、2B族の金属、3B族の金属、4B族の金属、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つの触媒成分を含む脱水素化触媒と、アルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物からなる群のうち少なくとも1つの助触媒成分を含む助触媒とが担持された構成である。
前記の構成によれば、脱水素化触媒が炭化水素原料の熱分解反応において脱水素化触媒として作用し、助触媒が副生成物の生成反応を抑制する助触媒として作用することができる。その結果、オレフィン製造用熱分解管を用いた熱分解において、エタンやナフサなどの炭化水素原料の脱水素化反応を促進し、且つ副生成物の生成反応を抑制することができる。
前記の課題を解決するために、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、耐熱性金属材料からなる管状の母材の内表面に、金属酸化物皮膜が形成されており、前記金属酸化物皮膜の表面に、2B族の金属、3B族の金属、4B族の金属、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つの触媒成分を含む脱水素化触媒と、アルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物からなる群のうち少なくとも1つの助触媒成分を含む助触媒とが担持された構成である。
前記の構成によれば、母材の内表面に金属酸化物皮膜が形成されているため、金属酸化物皮膜がバリアとなって、酸素、炭素、窒素などが母材内部へ侵入することを防ぐことができる。そして、金属酸化物皮膜が脱水素化触媒と助触媒の優れた担持体として機能する。これにより、脱水素化触媒が炭化水素原料の熱分解反応において触媒として作用し、助触媒が副生成物の生成反応を抑制する助触媒として作用することができる。その結果、オレフィン製造用熱分解管を用いた熱分解において、エタンやナフサなどの炭化水素原料の脱水素化反応を促進し、且つ副生成物の生成反応を抑制することができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記助触媒成分は、Sr、Ba、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つである構成であることが好ましい。
前記の構成によれば、副生成物の生成反応を抑制することができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記触媒成分と前記助触媒成分とのモル比は、1:0.01〜0.4である構成であることが好ましい。
前記の構成によれば、炭化水素原料の転化率の低下を最小限に抑えつつ、副生成物の生成反応を抑制してオレフィンの選択率を高めることができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記触媒成分は、2B族の金属、3B族の金属、および4B族の金属の酸化物からなる群のうち少なくとも1つであり、
かつ、前記触媒成分は、単斜晶または三方晶の結晶構造である構成であることが好ましい。
前記の構成によれば、2B族の金属元素の酸化物、3B族の金属元素の酸化物、および4B族の金属元素の酸化物は、エタンやナフサなどの炭化水素原料の脱水素化反応を促進する触媒として機能する。その結果、オレフィン製造用熱分解管を用いた熱分解において、炭化水素原料の転化率を向上させることができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記金属酸化物皮膜が、Al、Cr、およびMnCrからなる群のうち少なくともいずれか1つからなる構成であることが好ましい。なお、これらの金属酸化物は、バリア機能を有するとともに、脱水素化触媒が担持できる。
前記の構成によれば、酸素、炭素、窒素などが侵入することを防ぐとともに、熱分解管の内表面において脱水素化触媒と助触媒の優れた担持体として機能することができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記管状の母材の内表面の少なくとも一部が、凹部及び/又は凸部を構成していることが好ましい。
前記の構成によれば、伝熱効率を向上することができ、且つ管状の母材の管内の流体を均一に加熱することができる。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、前記触媒成分と前記助触媒成分が、オレフィン製造用熱分解管の管軸方向で、担持量が異なっていてもよい。
本発明のオレフィン製造用熱分解管において、熱分解管を複数接続させたオレフィン製造プラントにおいて、上述したオレフィン製造用熱分解管を部分的に適用していることが好ましい。
前記の構成によれば、上述したオレフィン製造用熱分解管を部分的に適用していることにより、副生成物を抑制してオレフィンを製造することができる。
本発明は、炭化水素原料の熱分解反応における副生成物の生成を抑制することができるオレフィン製造用熱分解管を提供するという効果を奏する。
本発明の実施形態1に係るオレフィン製造用熱分解管の構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管の概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管の内表面の拡大図である。 本発明の実施形態1に係るオレフィン製造用熱分解管の変形例としてのオレフィン製造用熱分解管の構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管の概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管の内表面の拡大図である。 本発明の実施形態2に係るオレフィン製造用熱分解管の変形例としてのオレフィン製造用熱分解管の構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管の概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管の内表面の拡大図である。 本発明のオレフィン製造用熱分解管に担持される、触媒実施例および比較例としての脱水素化触媒/助触媒、比較例としての脱水素化触媒、並びに粉末状のα−Alを使用して行ったエタンの熱分解実験におけるエチレンの選択率の時間変化を示すグラフである。 本発明のオレフィン製造用熱分解管に担持される、脱水素触媒/助触媒、比較例としての触媒のエタンの熱分解実験における反応後の外観を示す図である。 本発明のオレフィン製造用熱分解管に担持される、触媒実施例としての脱水素化触媒/助触媒、比較例としての脱水素化触媒、および粉末状のα−Alを使用して行ったエタンの熱分解実験におけるエタンの転化率およびエチレンの選択率の時間変化を示すグラフである。 本発明のオレフィン製造用熱分解管に担持される脱水素化触媒/助触媒、比較例としての助触媒、並びに粉末状のα−Alに対して行ったX線回折分析の結果を示す図である。 (a)は本発明のオレフィン製造用熱分解管に担持される脱水素化触媒/助触媒、およびβ−Gaに対して行ったXANES測定の結果を示す図であり、(b)は(a)の拡大図である。
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1におけるオレフィン製造用熱分解管1Aについて、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Aの構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管1Aの概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管1Aの内表面の拡大図である。
本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Aは、図1の(a)、(b)に示すように、耐熱性金属材料からなる管状の母材2の内表面にAlを含む金属酸化物皮膜としてのアルミナ皮膜3が形成されており、該アルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aと、助触媒5Aとが担持されている。なお、本願ではAlを含む金属酸化物皮膜を「アルミナ皮膜」と呼ぶ。この構成により、本発明の一態様に係るオレフィン製造用熱分解管1Aは、熱分解反応に脱水素化触媒反応が加わることにより、エタンやナフサなどの炭化水素原料からのオレフィン収率を向上させることができる。以下では、オレフィン製造用熱分解管1Aにおける、母材2、アルミナ皮膜3、脱水素化触媒4A、および助触媒5Aについて詳細に説明する。
(母材2)
本実施形態における母材2は、母材2の表面にアルミナ皮膜3が形成された耐熱性金属材料からなる鋳造物である。母材2は、例えば、従来公知の耐熱性金属材料の鋳造物とすればよく、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、およびアルミニウム(Al)を少なくとも含有している耐熱性金属材料からなる鋳造物であることが好ましい。母材2は、従来公知の方法によって製造することができる。
前記管状の母材の内表面の少なくとも一部が、凹部及び/又は凸部を構成していることが好ましい。これにより、伝熱効率を向上することができ、且つ管状の母材の管内の流体を均一に加熱することができる。
(アルミナ皮膜3)
本発明の母材2の内表面に形成されるアルミナ皮膜3は、緻密性が高く、外部から酸素、炭素、窒素の母材2への侵入を防ぐバリアとしての作用を有する。アルミナ皮膜3は、α−Alであることがより好ましい。
また、一般的なオレフィン製造用熱分解管では、母材2の内表面に金属酸化物皮膜が形成されないため、母材2が構成元素としてニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)を含む場合に、そのコークを生成する触媒作用によって熱分解時に炭化水素原料の過剰分解が起こり、母材2の内表面にコークが生成されることがある。仮に母材2の内表面に生成したコークが堆積すると、伝熱抵抗が上昇してしまい、オレフィン熱分解管内の反応温度を維持するためにオレフィン製造用熱分解管の外面の温度が上昇してしまうという問題があった。また、母材2の内表面にコークが堆積すると、ガスが通過する流路の断面積が小さくなるため、圧力損失が増大してしまう。これらの理由のために、従来のオレフィン製造用熱分解管では、堆積したコークを頻繁に除去(デコーキング)する必要があった。
これに対して、本実施形態のオレフィン製造用熱分解管1Aでは、母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されることにより、コークを生成する触媒作用を生じる母材2と炭化水素原料が接触することを低減できるため、内表面にコークが生成することを抑制できる。その結果、デコーキングを行う頻度を低減することができる。
本発明のアルミナ皮膜3は、表面処理工程および第1熱処理工程により形成される。以下に、表面処理工程および第1熱処理工程について詳細に説明する。
<表面処理工程>
表面処理工程は、母材2の、製品使用時に高温雰囲気と接触することとなる対象部位に表面処理を行ない、該部位の表面粗さを調整するための工程である。
母材2の表面処理は、研磨処理を例示することができる。表面処理は、対象部位の表面粗さ(Ra)が0.05〜3.2μmとなるように実施することができる。より望ましくは、表面粗さ(Ra)は0.5〜2.0μmとする。また、このとき表面処理により表面粗さを調整することによって、熱影響部の残留応力や歪みも同時に除去することができる。
<第1熱処理工程>
第1熱処理工程は、表面処理工程後の母材2を酸化性雰囲気下にて加熱処理を施すための工程である。
酸化性雰囲気とは、酸素を3体積%以上含む酸化性ガス、又はスチームやCOが混合された酸化性環境である。また、加熱処理は、900℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で行ない、加熱時間は1時間以上である。
前記のように、アルミニウムを含む母材2に表面処理工程および第1熱処理工程を順に行なうことにより、母材2の内表面にアルミナ皮膜3が安定して形成されたオレフィン製造用熱分解管を得ることができる。
母材2の内表面に形成されるアルミナ皮膜3の厚さは、バリア機能を効果的に発揮するために、0.3μm以上6μm以下に形成することが好適である。アルミナ皮膜3の厚さは、0.3μm未満であると、耐浸炭性が低下する虞があり、また、6μmを越えると、母材2と皮膜との熱膨張係数の差の影響によってアルミナ皮膜3が剥離しやすくなる虞がある。
前記影響を避けるために、アルミナ皮膜3の厚さは、0.3μm以上2.5μm以下とすることがより好適である。
なお、本発明のオレフィン製造用熱分解管1Aの表面をSEM/EDXで調べたとき、アルミナ皮膜3の上にクロム酸化物スケールが一部形成されることがある。その理由として、母材2の表面近くに形成されたクロム酸化物スケールが、Alにより製品表面まで押し上げられるからである。このクロム酸化物スケールは少ない方がよく、製品表面の20面積%未満となるようにして、Alが80面積%以上を占めるようにすることが好適である。
(脱水素化触媒4A)
脱水素化触媒4Aは、オレフィン製造用熱分解管1Aを用いた熱分解反応(例えば、ナフサ、エタンなどの炭化水素原料を、エチレンなどのオレフィンに熱分解させる反応)におけるオレフィンの収率を向上させるための触媒であり、アルミナ皮膜3の表面に担持されている。
脱水素化触媒4Aは、周期表の、2B族の金属元素、3B族の金属元素、4B族の金属元素、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つを含む触媒成分のみによって構成される。より好ましくは、脱水素化触媒4Aは、2B族の金属元素の酸化物、3B族の金属元素の酸化物、および4B族の金属元素の酸化物からなる群のうち少なくとも1つを含む触媒成分のみによって構成される。さらに好ましくは、脱水素化触媒4Aは、Zn酸化物(ZnO)、Ga酸化物(Ga)、Sn酸化物(SnOまたはSnO)、Ge酸化物(GeO)、およびIn酸化物(In)からなる群のうち少なくとも1つを含む触媒成分のみによって構成されている。当該触媒成分は、単斜晶または三方晶の結晶構造であることが好ましい。例えばGa酸化物(Ga)は、α、β、γ、δおよびεの5つの異なる形をとるが、このうちβ(単斜晶)は融点が高く、最も安定しているためである。
なお、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などの酸化物を触媒として使用した場合、熱分解時に炭化水素原料の過剰分解が起こり、アルミナ皮膜の表面にコーク(炭素)が多量に生成されてしまうという虞があるため、好ましくない。
(助触媒5A)
助触媒5Aは、オレフィン製造用熱分解管1Aを用いた熱分解反応(具体的には、ナフサやエタンなど炭化水素原料をオレフィンに熱分解させる反応)における、副生成物の生成反応を抑制してオレフィン選択率を向上させるためのものであり、脱水素化触媒4Aと共に、アルミナ皮膜3の表面に担持されている。副生成物は、炭化水素原料(例えば、エタン)から生成される目的のオレフィン(例えば、エチレン)以外の生成物を意図し、例えば、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、二酸化炭素(CO)等が挙げられる。
助触媒5Aは、アルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物からなる群のうち少なくとも1つの助触媒成分(副生成物の生成反応阻害成分)によって構成される。より好ましくは、助触媒5Aは、Sr、Ba、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つからなる助触媒成分によって構成される。また、助触媒5Aは脱水素化触媒4Aとは異なる物質である。
なお、Ga−0.1Ba触媒/α−Alの詳細を確認したところ、バリウムの添加によってガリウムの価数に変化は見られなかったが、4配位ガリウムと6配位ガリウムの存在比率が変化し、4配位ガリウムが増加することが確認できている。推測ではあるが、助触媒の添加によって副生成物を抑制できる作用に関連があると思われる。
(脱水素化触媒と助触媒との量)
脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとのモル比は、1:0.01〜0.4であることが好ましく、1:0.01〜0.2であることがより好ましく、1:0.05〜0.15であることがさらに好ましい。脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとのモル比がこのような範囲内であることにより、炭化水素原料の転化率が高く、かつ、副生成物の生成反応を抑制してオレフィンの選択率を高めることができる。
なお、脱水素化触媒4Aは、単斜晶または三方晶の結晶構造を形成するものであり、ペロブスカイト構造を形成するものではない。
以上に例示した触媒成分、助触媒成分の構成のうち、触媒成分は、2B族の金属、3B族の金属、および4B族の金属の酸化物からなる群のうち少なくとも1つであり、助触媒成分はアルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物であり、かつ、触媒成分が、単斜晶または三方晶の結晶構造であることが特に好ましい。このような構成とすることにより、オレフィンへの転化率、選択率をより向上させることができる。
脱水素化触媒4Aと助触媒5Bが、オレフィン製造用熱分解管の管軸方向で、担持量が異なっていてもよい。例えば、管の全長に亘る触媒担持が必須ではなく、一部分に担持されていてもよい。
<脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成および担持方法>
次に、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成方法、並びに脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aのアルミナ皮膜3へ担持方法について説明する。脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成方法、並びに脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aのアルミナ皮膜3へ担持方法は、共含浸法または逐次含浸法であることが好ましい。
(共含浸法)
共含浸法における、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成方法、および脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aのアルミナ皮膜3へ担持方法は、第1塗布工程および第2熱処理工程を含んでいる。以下に、第1塗布工程および第2熱処理工程について詳細に説明する。
(a)第1塗布工程
第1塗布工程は、表面処理工程および第1熱処理工程により形成されたアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aを構成する金属元素を含む金属塩と、助触媒5Aを構成する金属元素を含む金属塩との混合水溶液を塗布する工程である。
前記の金属塩としては、例えば硝酸塩や酢酸塩などを用いることができる。
(b)第2熱処理工程
第2熱処理工程は、塗布工程によりアルミナ皮膜3に前記の混合水溶液が塗布された母材2を熱処理する工程である。
第2熱処理工程における熱処理は、大気中または酸化性雰囲気中で行う。第2熱処理工程における熱処理温度は、500〜900℃の範囲であり、熱処理時間は、1〜6時間である。
前記の熱処理条件で第2熱処理工程を実行することにより、金属塩中の金属イオンが酸化され、金属酸化物、すなわち脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aが形成される。その結果、アルミナ皮膜3に脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを担持することができる。
なお、前記の塗布工程において塗布する混合水溶液の各金属塩の濃度を調整することによって、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを適切な濃度(量)でアルミナ皮膜3に担持させることができる。また、熱分解における脱水素化触媒4Aの触媒能を向上させるためには、脱水素化触媒4Aの比表面積は、2〜100m/gであることが好ましい。
このように、本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Aは、耐熱性金属材料からなる管状の母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されており、該アルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとが担持されている。
前記の構成によれば、本発明のオレフィン製造用熱分解管1Aは、母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されている。このため、アルミナ皮膜3(母材2)の表面にコークが生成することを抑制できる。そして、このアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとが担持されている。アルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aが担持されていることにより、脱水素化触媒4Aが、オレフィン製造用熱分解管1Aを用いた熱分解において脱水素化触媒として作用する際に、例えばエタンから脱水素反応によってエチレンを生成させることができる。また、アルミナ皮膜3の表面に、助触媒5Aが担持されていることにより、助触媒5Aが、オレフィン製造用熱分解管1Aを用いた熱分解における副生成物の生成反応を抑制し、オレフィン(例えば、エチレン)選択率を向上させることができる。その結果、熱分解によるエタンやナフサなどの炭化水素原料からのオレフィンの収率を向上させることができるようになっている。
なお、本実施形態では、第1塗布工程において、脱水素化触媒4Aを構成する金属元素と、助触媒5Aとを構成する金属元素とを含む混合水溶液をアルミナ皮膜3に塗布し、第2熱処理工程において熱処理することにより、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとをアルミナ皮膜3に担持させていたが、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、これに限られない。例えば、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを予め製造しておき、塗布工程において脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを含むスラリーをアルミナ皮膜3に塗布し、第2熱処理工程において脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを含むスラリーが塗布された母材2を熱処理することによって脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとをアルミナ皮膜3に担持させてもよい。なお、この場合には、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aは、公知のいずれかの方法によって予め製造する。
また、本実施形態では、表面処理工程および第1熱処理工程により母材2の内表面に形成されたアルミナ皮膜3に対して、第1塗布工程および第2熱処理工程を行うことにより、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとをアルミナ皮膜3に担持していたが、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、これに限られない。例えば、表面処理工程を行った後に、第1塗布工程および熱処理工程を行うようにしてもよい。この場合には、熱処理工程において、母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されると共に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとがアルミナ皮膜3に担持される。これにより、熱処理工程を1回行うだけで、母材2の内表面にアルミナ皮膜3を形成すると共に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとをアルミナ皮膜3に担持させることができる。
また、本実施形態では、母材2の内表面に形成されたアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとが担持されている構成であったが、本発明のオレフィン製造用熱分解管1Aはこれに限られない。すなわち、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、バリア機能を有するとともに脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを担持できる、Alとは異なる金属酸化物皮膜(例えば、Cr、MnCrなど)の表面に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとが担持されている構成であってもよい。
(逐次含浸法)
逐次含浸法における、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成方法、および脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aのアルミナ皮膜3へ担持方法は、第2塗布工程、第3熱処理工程、第3塗布工程、および第4熱処理工程を含んでいる。以下に、第2塗布工程、第3熱処理工程、第3塗布工程、および第4熱処理工程について詳細に説明する。なお、共含浸法における、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aの形成方法、および脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aのアルミナ皮膜3へ担持方法において説明した内容と重複する内容についてはその説明を繰り返さない。
(a)第2塗布工程
第2塗布工程は、表面処理工程および第1熱処理工程により形成されたアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液、または助触媒5Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布する工程である。
(b)第3熱処理工程
第3熱処理工程は、第2塗布工程によりアルミナ皮膜3に前記の金属塩水溶液が塗布された母材2を熱処理する工程である。
第3熱処理工程における熱処理の条件は、上述した第2熱処理工程と同様である。
前記の熱処理条件で第3熱処理工程を実行することにより、金属塩中の金属イオンが酸化され、金属酸化物、すなわち脱水素化触媒4Aまたは助触媒5Aが形成される。その結果、アルミナ皮膜3に脱水素化触媒4Aまたは助触媒5Aを担持することができる。
(c)第3塗布工程
第3塗布工程は、第2塗布工程で脱水素化触媒4Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布した場合、第2塗布工程および第3熱処理工程により形成された脱水素化触媒4Aが担持されたアルミナ皮膜3の表面に、助触媒5Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布する工程である。また、第3塗布工程は、第2塗布工程で助触媒5Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布した場合、第2塗布工程および第3熱処理工程により形成された助触媒5Aが担持されたアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布する工程である。
(d)第4熱処理工程
第4熱処理工程は、第3塗布工程により脱水素化触媒4Aまたは助触媒5Aが担持されたアルミナ皮膜3に前記の金属塩水溶液が塗布された母材2を熱処理する工程である。
第4熱処理工程における熱処理の条件は、上述した第2熱処理工程と同様である。
前記の熱処理条件で第4熱処理工程を実行することにより、金属塩中の金属イオンが酸化され、第3塗布工程で助触媒5Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布した場合、助触媒5Aが形成され、第3塗布工程で脱水素化触媒4Aを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を塗布した場合、脱水素化触媒4Aが形成される。その結果、脱水素化触媒4Aが担持されたアルミナ皮膜3に助触媒5Aを担持すること、または助触媒5Aが担持されたアルミナ皮膜3に脱水素化触媒4Aを担持することができる。
<変形例>
次に、実施形態1におけるオレフィン製造用熱分解管1Aの変形例としてのオレフィン製造用熱分解管1A´について、図2を参照しながら説明する。図2は、オレフィン製造用熱分解管1A´の構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管1A´の概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管1A´の内表面の拡大図である。
実施形態1におけるオレフィン製造用熱分解管1Aでは、母材2の内表面にAlを含む金属酸化物皮膜としてのアルミナ皮膜3が形成されており、該アルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒4Aと助触媒5Bとが担持されていた。これに対して、変形例としてのオレフィン製造用熱分解管1A´は、図2の(a)(b)に示すように、耐熱性金属材料からなる管状の母材2の内表面に、直接脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとが担持されている点がオレフィン製造用熱分解管1Aとは異なっている。
本変形例におけるオレフィン製造用熱分解管1A´では、共含浸法または逐次含浸法により、母材2の内表面に脱水素化触媒4Aと助触媒5Aとを担持させることができる。
前記のように、オレフィン製造用熱分解管1A´は、母材2の内表面に脱水素化触媒4Aと、助触媒5Aとが担持されている。これにより、脱水素化触媒4Aがオレフィン製造用熱分解管1A´を用いた熱分解において脱水素化触媒として作用する際に、例えばエタンから脱水素反応によってエチレンを生成させることができる。さらにこの場合、助触媒5Aがオレフィン製造用熱分解管1A´を用いた熱分解において助触媒として作用する際に、副生成物の生成を抑制することにより、エチレン選択率を高めることができる。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Bでは、脱水素化触媒/助触媒の構成が実施形態1における脱水素化触媒4Aおよび助触媒5Aとは異なっている。
本発明の実施形態2におけるオレフィン製造用熱分解管1Bについて、図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Bの構成を示すものであり、(a)はオレフィン製造用熱分解管1Bの概略断面図であり、(b)は(a)におけるオレフィン製造用熱分解管1Bの内表面の拡大図である。
図3の(a)(b)に示すように、本実施形態のオレフィン製造用熱分解管1Bは、アルミナ皮膜3の表面に、触媒成分4Ba、助触媒成分5Ba、および触媒成分4Baと助触媒成分5Baとを担持する担体45Bbとを備える脱水素化触媒/助触媒45Bが担持されていた。脱水素化触媒/助触媒45Bは、脱水素化触媒であり、かつ、助触媒である。
担体45Bbは、脱水素化触媒/助触媒45Bにおいて、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担持される担体である。本実施形態における担体45Bbは、Alから構成されている。担体45Bbは、触媒成分4Baの触媒としての機能を向上させるために、および助触媒成分5Baの助触媒としての機能を向上させるために、比表面積が大きいものであることが好ましい。具体的には、担体45BbとしてのAlの比表面積は、20m/g以上であることが好ましく、40m/g以上であることがより好ましい。これにより、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとを担体45Bbに高分散させることができる。その結果、炭化水素原料をオレフィンに熱分解する熱分解反応において、オレフィン収率を向上させることができる。なお、Alには、γ−Al、δ−Al、θ−Alおよびα−Alの4つの相がある。例えば、γ−Alを熱処理した場合、熱処理温度が上昇するにつれて、(γ−Al)→(δ−Al)→(θ−Al)→(α−Al)の順に相変態し、相変態するにつれて比表面積が減少する。特に、最も高温で相変態するα−Alは、比表面積が15m/g以下となる。したがって、本実施形態における脱水素化触媒/助触媒45Bの担体45Bbは、上述したように比表面積が20m/g以上であることが好ましいが、これは担体45Bbがγ−Al、δ−Alまたはθ−Alを主とした構成であることが好ましいことを意味する。
なお、担体45Bbの出発材料としてγ−Alを用いる場合、γ−Alが熱処理によって徐々に相変態するので、担体45BbとしてのAlは、熱処理前や1300℃以上の高温での熱処理後でない限り単一の相とはなっておらず、γ−Al、δ−Al、θ−Al、及びα−Alが混在していると想定される。そのため、担体45BbとしてのAlの比表面積は、前記の各相が混在状態となっているAlの比表面積の平均値である。
また、担体45Bbは、脱水素化触媒/助触媒45Bの製造において触媒成分4Baと複合酸化物または固溶体を形成し、かつ、助触媒成分5Baと複合酸化物または固溶体を形成するものであってもよい。これにより、炭化水素原料をオレフィンに熱分解する熱分解反応において、触媒成分4Baが凝集することを抑制することができる。その結果、オレフィン収率が高い状態を長期間維持することができるので、オレフィン収率をさらに向上させることができる。具体的には、担体45Bbの少なくとも一部がθ−Alであることが好ましい。
なお、Alと触媒成分4Baとが結合して複合酸化物を形成し、Alと助触媒成分5Baとが結合して複合酸化物を形成することがある。
なお、オレフィン製造用熱分解管1Bは、脱水素化触媒/助触媒45Bに加えて、脱水素化触媒および/または助触媒をさらに担持していてもよい。
<脱水素化触媒/助触媒45Bの製造方法>
次に、脱水素化触媒/助触媒45Bの製造方法について説明する。以下では、(1)担体45Bbの出発材料としてα−Alを用いる場合と、(2)担体45Bbの出発材料としてγ−Alを用いる場合との2通りの脱水素化触媒/助触媒45Bの製造方法について説明する。
(1)担体45Bbの出発材料としてα−Alを用いる場合
(1−1)共含浸法
脱水素化触媒/助触媒45Bは、担体45Bbの出発材料としてのα−Alに、触媒成分4Baを構成する金属元素を含む金属塩(例えば硝酸塩や酢酸塩など)と、助触媒成分5Baを構成する金属元素を含む金属塩とを含む混合水溶液を付着させたのち、熱処理することにより製造することができる。熱処理は、大気中または酸素中で行い、熱処理温度は、500〜1300℃の範囲であり、熱処理時間は、1〜6時間である。前記の条件で熱処理することにより、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担体45Bbとしてのα−Alに担持された脱水素化触媒/助触媒45Bを得ることができる。
(1−2)逐次含浸法
脱水素化触媒/助触媒45Bは、逐次含浸法により製造することもできる。まず、担体45Bbの出発材料としてのα−Alに、触媒成分4Baを構成する金属元素を含む金属塩水溶液、または助触媒成分5Baを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を付着させたのち、熱処理する。次に、付着させていない方の金属塩水溶液を付着させたのち、熱処理する。熱処理条件は、上述した共含浸法と同様である。前記の条件で熱処理することにより、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担体45Bbとしてのα−Alに担持された脱水素化触媒/助触媒45Bを得ることができる。
(2)担体45Bbの出発材料としてγ−Alを用いる場合
(2−1)共含浸法
脱水素化触媒/助触媒45Bは、担体45Bbの出発材料としてのγ−Alに、触媒成分4Baを構成する金属元素を含む金属塩(例えば硝酸塩や酢酸塩など)と、助触媒成分5Baを構成する金属元素を含む金属塩とを含む混合水溶液を付着させたのち(付着工程)、熱処理することにより製造することができる(熱処理工程)。熱処理は、大気中または酸素中で行い、熱処理温度は、500〜1300℃の範囲であり、熱処理時間は、1〜6時間である。前記の条件で熱処理することにより、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担体45BbとしてのAl(γ−Al、δ−Al、θ−Al、またはα−Al)に担持された脱水素化触媒/助触媒45Bを得ることができる。
なお、前記の熱処理温度は、500〜1100℃の範囲であることが好ましい。これは、熱処理温度が500〜1100℃の範囲である場合、熱処理中に、γ−Alがα−Alに完全に相変態することを抑制することができるので、担体としてのAlの比表面積の低下を抑制することができる。その結果、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとを担体としてのAlに高分散させることができる。
また、前記の熱処理温度は、1000〜1100℃の範囲であることがより好ましい。これは、熱処理温度が1000〜1100℃の範囲である場合、熱処理中にγ−Alの少なくとも一部がθ−Alに相変態し、相変態する際にAlの少なくとも一部が触媒成分4Ba(特に、ガリウム酸化物)と結合し、複合酸化物または固溶体を形成するためである。これにより、炭化水素原料をオレフィンに熱分解する熱分解反応において、触媒成分4Baおよび助触媒成分5Baが凝集することを抑制することができる。なお、Alと触媒成分4Baとが結合して複合酸化物を形成し、Alと助触媒成分5Baとが結合して複合酸化物を形成することはあるが、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが結合して複合酸化物を形成しない。
また、前記の熱処理温度は、1000〜1080℃の範囲であることがより好ましい。これは、熱処理温度が1000〜1100℃の範囲である場合、熱処理中におけるγ−Alのθ−Alへの相変態の割合を増加させることができるためである。
(2−2)逐次含浸法
脱水素化触媒/助触媒45Bは、逐次含浸法により製造することもできる。まず、担体45Bbの出発材料としてのα−Alに、触媒成分4Baを構成する金属元素を含む金属塩水溶液、または助触媒成分5Baを構成する金属元素を含む金属塩水溶液を付着させたのち、熱処理する。次に、付着させていない方の金属塩水溶液を付着させたのち、熱処理する。熱処理条件は、上述した共含浸法と同様である。前記の条件で熱処理することにより、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担体45BbとしてのAl(γ−Al、δ−Al、θ−Al、またはα−Al)に担持された脱水素化触媒/助触媒45Bを得ることができる。
なお、上述した触媒成分および助触媒成分は、金属塩水溶液で行う場合で記載したが、金属化合物を懸濁させたスラリーを用い、熱処理を行ってもよい。また、上述した触媒成分および助触媒成分は、熱プラズマにより金属化合物を気化させた後に凝縮させて粒子を生成する方法や金属化合物のスラリーをスプレードライする方法を用いて製造してもよい。また、触媒成分、助触媒成分、およびアルミナ皮膜を溶射法により製造してもよい。溶射法は、触媒成分および助触媒成分を高温のガス炎またはプラズマ環境中にて、溶融または半溶融状態の微粒子として、母材の内表面に高速で吹き付けることで皮膜を形成する方法である。
<脱水素化触媒/助触媒45Bの担持方法>
次に、脱水素化触媒/助触媒45Bのアルミナ皮膜3へ担持方法について説明する。脱水素化触媒/助触媒45Bのアルミナ皮膜3へ担持方法は、第4塗布工程および第5熱処理工程を含んでいる。以下に、第4塗布工程および第5熱処理工程について詳細に説明する。
(a)第4塗布工程
第4塗布工程は、実施形態1で説明した、表面処理工程および第1熱処理工程により形成されたアルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒/助触媒45Bを含むスラリーを塗布する工程である。
(b)第5熱処理工程
第5熱処理工程は、第4塗布工程によりアルミナ皮膜3に脱水素化触媒/助触媒45Bを含むスラリーが塗布された母材2を熱処理する工程である。
第5熱処理工程における熱処理は、大気中または酸素中で行う。第5熱処理工程における熱処理温度は、500〜900℃の範囲であり、熱処理時間は、1〜6時間である。
前記の熱処理条件で第3熱処理工程を実行することにより、アルミナ皮膜3に脱水素化触媒/助触媒45Bを担持することができる。
次に、アルミナ皮膜3に担持された脱水素化触媒/助触媒45Bの特徴について説明する。
なお、前記の塗布工程において塗布するスラリーにおける脱水素化触媒/助触媒45Bの濃度を調整することによって、脱水素化触媒/助触媒45Bを適切な濃度(量)でアルミナ皮膜3に担持させることができる。また、熱分解における脱水素化触媒/助触媒45Bの触媒能および助触媒能を向上させるためには、脱水素化触媒4Bの比表面積は、大きい方が好ましいが、2〜200m/gであればよく、10〜150m/gであってもよく、20〜100m/gであってもよい。さらに、担体45BbとしてのAlの大半がθ−Alとなる構成となるため、脱水素化触媒/助触媒45Bの比表面積は、40〜100m/gとなり得る。
以上のように、本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Bは、耐熱性金属材料からなる管状の母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されており、該アルミナ皮膜3の表面に、脱水素化触媒/助触媒45Bが担持されている。
前記の構成によれば、本発明のオレフィン製造用熱分解管1Bは、アルミナ皮膜3の表面に、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとを担体45Bbに担持した脱水素化触媒/助触媒45Bが担持されるので、アルミナ皮膜3の表面積を大きくすることができる。その結果、炭化水素の熱分解反応に加えて、炭化水素の触媒成分との反応箇所を増加させることができ、エタンやナフサなどの炭化水素原料からのオレフィン収率を向上させることができるようになっている。また、助触媒成分との接触面積を増加させることができ、副生成物の生成反応を抑制してオレフィン選択率を向上させることにより、エタンやナフサなどの炭化水素原料からのオレフィン収率を向上させることができるようになっている。
なお、本実施形態におけるオレフィン製造用熱分解管1Bでは、触媒成分4Baと助触媒成分5Baとが担持される担体45BbはAlから構成されていた。しかし、本発明のオレフィン製造用熱分解管はこれに限られず、担体として、SiO、TiO、ZrO、MgO、Laやこれらを含む複合酸化物などを用いてもよい。ただし、表面積の点からAlであることがより好ましい。
また、本実施形態では、表面処理工程および第1熱処理工程により母材2の内表面に形成されたアルミナ皮膜3に対して、第4塗布工程および第5熱処理工程を行うことにより、脱水素化触媒4Bと助触媒5Bとをアルミナ皮膜3に担持していたが、本発明のオレフィン製造用熱分解管は、これに限られない。例えば、表面処理工程後の母材2の内表面に、触媒成分4Baを構成する金属元素を含む金属塩と、助触媒成分5Baを構成する金属元素を含む金属塩とを含む混合水溶液を付着させたAlを塗布し、熱処理工程を行うようにしてもよい。この場合には、熱処理工程において、母材2の内表面にアルミナ皮膜3が形成されると共に、金属塩中の金属が酸化されることにより金属酸化物(触媒成分4Ba)および金属化合物(助触媒成分5Ba)がAlに担持した脱水素化触媒/助触媒45Bがアルミナ皮膜3に担持される。これにより、熱処理工程を1回行うだけで、母材2の内表面にアルミナ皮膜3を形成すると共に、脱水素化触媒4Bと助触媒5Bとをアルミナ皮膜3に担持させることができる。
また、図2に示すオレフィン製造用熱分解管1A´の構成と、図3に示すオレフィン製造用熱分解管1Bの構成と組み合わせた例として、本発明の一態様のオレフィン製造用熱分解管は、耐熱性金属材料からなる管状の母材2の内表面に直接脱水素化触媒/助触媒45Bが担持されている構成であってもよい。
また、オレフィン製造用熱分解管は、鋳造体の内表面に皮膜を形成する構成であるタイプ以外に、流体撹拌や表面積の増大の目的のためにオレフィン製造用熱分解管の内面にフィンなどの突部を設けるタイプも存在する。本発明の一実施形態のオレフィン製造用熱分解管は、上述した内面に前記突部が設けられたオレフィン製造用熱分解管に、脱水素化触媒4Aおよび助触媒5A、または脱水素化触媒/助触媒45Bが担持されている構成であってもよい。これにより、本発明の一実施形態のオレフィン製造用熱分解管は、オレフィン収率を高めることができる。
〔オレフィン製造プラント〕
熱分解管を複数接続させたオレフィン製造プラントにおいて、上述した本発明の一態様に係るオレフィン製造用熱分解管を部分的に適用したオレフィン製造プラントも本発明の一態様である。これにより、上述したオレフィン製造用熱分解管を部分的に適用していないオレフィン製造プラントよりも副生成物の生成反応を抑制することができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
(i)第1実施例
以下に、本発明のオレフィン製造用熱分解管において用いられる脱水素化触媒/助触媒の実施例について説明する。
触媒実施例1および2、並びに比較例3〜6では、触媒成分と助触媒成分とを支持する支持体としての粉末状のα−Alに、触媒成分としての酸化ガリウム(Ga)と、助触媒成分としての各金属酸化物とを支持させた脱水素化触媒/助触媒を使用した。支持体としてのα−Alに触媒成分と助触媒成分とを支持させることにより、触媒成分と助触媒成分とが、実施形態2における担体45Bbに担持した環境と近似する環境とした。
触媒実施例1および2、および比較例1〜6において使用した粉末状のα−Alは、触媒学会参照触媒であるJRC−ALO−6を使用した。
<脱水素化触媒/助触媒の製造方法>
触媒実施例1における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と硝酸バリウム(Ba(NO)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、バリウム(Ba)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Ba触媒/α−Al」と呼ぶ。
触媒実施例2における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と硝酸ストロンチウム(Sr(NO)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、ストロンチウム(Sr)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Sr触媒/α−Al」と呼ぶ。
比較例2における脱水素化触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga触媒/α−Al」と呼ぶ。
比較例3における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と酢酸スズ(CSn)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、スズ(Sn)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Sn触媒/α−Al」と呼ぶ。
比較例4における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と硝酸セリウム(Ce(NO・6HO)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、セリウム(Ce)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Ce触媒/α−Al」と呼ぶ。
比較例5における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と7モリブデン酸6アンモニウム((NHMo24・4HO)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、モリブデン(Mo)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Mo触媒/α−Al」と呼ぶ。
比較例6における脱水素化触媒/助触媒は、支持体としてのα−Alに、硝酸ガリウム(Ga(NO・nHO,n=7〜9)と硝酸マンガン(Mn(NO・6HO)との混合水溶液を塗布し、大気中において1050℃で3時間焼成することにより製造した。このとき、ガリウム(Ga)の量が、ガリウム(Ga)とα−Alとの合計量に対して5重量%となるように調製した。また、マンガン(Mn)の量が、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.2倍となるように調製した。焼成後の脱水素化触媒/助触媒は、350〜500mmに粒径を調整した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.2Mn触媒/α−Al」と呼ぶ。
<エタンの熱分解実験>
次に、上述の方法により得られた、Ga−0.2Ba触媒/α−Al、Ga−0.2Sr触媒/α−Al、Ga−0.2Sn触媒/α−Al、Ga−0.2Ce触媒/α−Al、Ga−0.2Mo触媒/α−Al、Ga−0.2Mn触媒/α−Al、Ga触媒/α−Al、およびα−Alを使用して行ったエタン(C)の熱分解実験について説明する。
エタンの熱分解実験は、まず、試料(Ga−0.2Ba触媒/α−Al、Ga−0.2Sr触媒/α−Al、Ga−0.2Sn触媒/α−Al、Ga−0.2Ce触媒/α−Al、Ga−0.2Mo触媒/α−Al、Ga−0.2Mn触媒/α−Al、Ga触媒/α−Al、またはα−Al)100mgと、不活性な固体であるSiC392mgとを混合した混合物を、石英管(内径4mm、長さ180mm)に30mmの高さで充填した。次に、石英管を管状炉に挿入し、700℃まで炉内の温度を上昇させた。次に、石英管にガスを供給し、石英管内でエタンの熱分解反応を行った。原料流量は、エタン(C):18.1mL/分、水蒸気(HO):24.7mL/分、N:98.0mL/分とした。石英管から流出するガスのうち、水素(H)および窒素(N)をTCGガスクロマトグラフ(Shimadzu、GC−8A)、エタン(C)、エチレン(C)、一酸化炭素(CO)、およびメタン(CH)をメタナイザーをとりつけたFIDガスクロマトグラフ(Shimadzu、GC−8A)を用いて分析し、エチレン(C)の選択率(mol%)を算出した。
比較例1では、脱水素化触媒と助触媒とを支持させていない粉末状のα−Alを使用した。
触媒実施例1および2、並びに比較例1〜6の実験結果を図4に示す。図4は、触媒実施例1および2、比較例3〜6の脱水素化触媒/助触媒、比較例2の脱水素化触媒、並びに比較例1としての粉末状のα−Alを使用して行ったエタンの熱分解実験におけるエチレンの選択率の時間変化を示すグラフである。当該グラフから、以下に示す選択率評価基準に従って、エチレンの選択率の評価を行った。エチレンの選択率の評価結果を図4に併せて示した。
(選択率評価基準)
A:Ga触媒/α−Alよりもエチレンの選択率が上回っている。
B:Ga触媒/α−Alのエチレンの選択率と同程度である。
C:Ga触媒/α−Alよりもエチレンの選択率が下回っている。
図4に示すように、触媒実施例1および2の脱水素化触媒/助触媒は、比較例3〜6の脱水素化触媒/助触媒、比較例2の脱水素化触媒、並びに比較例1としての粉末状のα−Alよりもエチレンの選択率が高かった。すなわち、助触媒成分としてバリウム(Ba)またはストロンチウム(Sr)を含む助触媒が、エタンの熱分解反応において、副生成物の生成を抑制する助触媒として機能することが確認できた。
また、助触媒成分としてスズ(Sn)、セリウム(Ce)、モリブデン(Mo)、またはマンガン(Mn)を含む助触媒を使用した比較例3〜6では、助触媒を支持させていない脱水素化触媒を使用した比較例2と比べて、選択率が低かった。さらに、セリウム(Ce)、モリブデン(Mo)、またはマンガン(Mn)を含む助触媒を使用した比較例4〜6では、脱水素化触媒および助触媒を支持させていない粉末状のα−Alを使用した比較例1と比べて、選択率が低かった。すなわち、助触媒成分としてスズ(Sn)を含む助触媒は、エタンの熱分解反応において、副生成物の生成を抑制する助触媒として機能が小さいことが確認できた。また、セリウム(Ce)、モリブデン(Mo)、またはマンガン(Mn)を含む助触媒は、エタンの熱分解反応において、副生成物の生成を抑制する助触媒として機能しないことが確認できた。
なお、エタンの熱分解試験において、反応前後の脱水素化触媒/助触媒の色に違いがあることが確認できた。反応後のGa−0.2Ba触媒/α−Alの外観と、Ga触媒/α−Alとの外観とを比較した写真を図5に示した。図5の右のサンプルが反応後のGa−0.2Ba触媒/α−Alであり、図5の左のサンプルが反応後のGa触媒/α−Alである。反応前は助触媒の有無に関わらず白色であったが、反応後にはGa−0.2Ba触媒/α−Alは白色、Ga触媒/α−Alは黒色であった。これに加えて今回の反応系も考慮すると、助触媒を支持させていないGa触媒/α−Alのみ炭素が触媒上に析出しているものと推察された。
したがって、本発明によって副生成物の抑制が達成されたことにより、脱水素化触媒能の長期安定性という更なる効果を得ることができたものと考えられる。
(ii)第2実施例
以下に、本発明のオレフィン製造用熱分解管において用いられる脱水素化触媒のさらなる実施例について説明する。ここでは、脱水素化触媒/助触媒の触媒実施例としての触媒実施例1および3〜8、助触媒の比較例としての比較例2、並びに比較例1としての粉末状のα−Alについて説明する。
<脱水素化触媒/助触媒の製造方法>
以下に触媒実施例3〜5における脱水素化触媒/助触媒の製造方法について説明する。
触媒実施例3における脱水素化触媒/助触媒は、バリウム(Ba)の量を、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.01倍とした以外は触媒実施例1と同様にして調製した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.01Ba触媒/α−Al」と呼ぶ。
触媒実施例4における脱水素化触媒/助触媒は、バリウム(Ba)の量を、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.1倍とした以外は触媒実施例1と同様にして調製した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.1Ba触媒/α−Al」と呼ぶ。
触媒実施例5における脱水素化触媒/助触媒は、バリウム(Ba)の量を、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で0.33倍とした以外は触媒実施例1と同様にして調製した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−0.33Ba触媒/α−Al」と呼ぶ。
<エタンの熱分解実験>
次に、上述の方法により得られた、Ga−0.01Ba触媒/α−Al、Ga−0.10Ba触媒/α−Al、Ga−0.2Ba触媒/α−Al、Ga−0.33Ba触媒/α−Al、およびGa触媒/α−Alを使用して、第1実施例と同様にしてエタン(C)の熱分解実験を行った。エチレン(C)の選択率(mol%)に加えて、エタン(C)の転化率(mol%)も算出した。
触媒実施例1および3〜5、比較例1および2の実験結果を図6に示す。図6の(a)は、触媒実施例1および3〜5、比較例2の脱水素化触媒、並びに比較例1としての粉末状のα−Alを使用して行ったエタンの熱分解実験におけるエタンの転化率の時間変化を示すグラフである。当該グラフから、以下に示す転化率評価基準に従って、エタンの転化率の評価を行った。なお、エタンの転化率は、±0.1程度の測定誤差を含む。
(転化率評価基準)
A:Ga触媒/α−Alの転化率と同程度である。
B:Ga触媒/α−Alのエタンの転化率が下回っている。
C:Ga触媒/α−Alよりもエタンの転化率が大きく下回っている。
図6の(b)は、触媒実施例1および3〜5、比較例2の脱水素化触媒、並びに比較例1としての粉末状のα−Alを使用して行ったエタンの熱分解実験におけるエチレンの選択率の時間変化を示すグラフである。当該グラフから、上述した転化率及び選択率評価基準に従って、エチレンの選択率の評価を行った。
エタンの転化率およびエチレンの選択率の評価結果を表1に示す。
Figure 0006925961
図6および表1に示すように、触媒実施例1および3〜5の脱水素化触媒/助触媒は、比較例2の脱水素化触媒よりもエチレンの選択率が高かった。これにより、脱水素化触媒に助触媒を加えると、その量がわずかであってもエチレンの選択率を高める効果があり、モル比が1:0.33までその効果があることが確認できた。また、触媒実施例3および4の脱水素化触媒/助触媒は、触媒実施例1および5の脱水素化触媒/助触媒よりもエタン転化率が高かった。すなわち、前記触媒成分と前記助触媒成分とのモル比が、1:0.01〜0.2、より好ましくは1:0.01〜0.15であるとき、エタンの転化率が高く、且つエチレンの選択率が高いことが確認できた。前記触媒成分と前記助触媒成分とのモル比が当該範囲であれば、エタンの転化率が高く、且つエチレンの選択率が高くなるため、エチレンの収率もより向上する。
(iii)第3実施例
以下に、本発明のオレフィン製造用熱分解管において用いられる脱水素化触媒のさらなる実施例について説明する。ここでは、脱水素化触媒/助触媒の触媒実施例としての触媒実施例1、3および6、助触媒の比較例としての比較例2、並びに比較例1としての粉末状のα−Alについて説明する。
<脱水素化触媒/助触媒の製造方法>
以下に触媒実施例6における脱水素化触媒/助触媒の製造方法について説明する。
触媒実施例6における脱水素化触媒/助触媒は、バリウム(Ba)の量を、ガリウム(Ga)の量に対して、モル比で1倍とした以外は触媒実施例1と同様にして調製した。以下では、前記の方法で得られた試料を「Ga−Ba触媒/α−Al」と呼ぶ。
<X線回折分析>
触媒実施例1、3および6における脱水素化触媒/助触媒、比較例における助触媒、並びに比較例1における脱水素化触媒および助触媒を支持させていない粉末状のα−Alに対してX線回折分析を行った。
触媒実施例1、3および6における脱水素化触媒/助触媒、比較例7における助触媒、並びに比較例1における脱水素化触媒および助触媒を支持させていない粉末状のα−Alに対して行ったX線回折分析の結果を図7に示す。図7に示すように、触媒実施例1、3および6における脱水素化触媒/助触媒、比較例7における助触媒、並びに比較例1における脱水素化触媒および助触媒を支持させていない粉末状のα−Alでは、●で示すα−Alのピークが見られた。また、触媒実施例1およびにおける脱水素化助触媒および助触媒、並びに比較例7における助触媒では、△で示すBaAlのピークが見られた。すなわち、触媒実施例1、3および6における助触媒成分は、脱水素化触媒とは独立して(複合酸化物を形成せずに)、α−Alを主とする担体に酸化バリウムが担持されていた。
(iv)第4実施例
<XANES測定>
触媒実施例4におけるGa−0.1Ba触媒/α−Al、比較例2におけるGa触媒/α−Al、およびβ−Gaに対してXANES測定を行った。Ga−0.1Ba触媒/α−Al、およびGa触媒/α−Alは、エタンの熱分解実験前後のXANES測定を行った。
Ga−0.1Ba触媒/α−Al、Ga触媒/α−Al、およびβ−Gaに対してXANES測定を行った結果を図8に示す。図8の(a)は、エタンの熱分解実験前のGa−0.1Ba触媒/α−Al(Ga−0.1Ba/α−Al_fresh)、エタンの熱分解実験後のGa−0.1Ba触媒/α−Al(Ga−0.1Ba/α−Al_aft)、エタンの熱分解実験前のGa/α−Al(Ga/α−Al_fresh)、エタンの熱分解実験後のGa触媒/α−Al(Ga/α−Al_aft)、およびβ−Gaに対してXANES測定を行った結果を示す図である。図8の(b)は、図8の(a)の拡大図である。
図8の(b)に、4配位Gaおよび6配位Gaの由来のピーク位置を示す。いずれの触媒であっても、ピークの立ち上がりがβ−Gaと同じであったため、Ga−0.1Ba触媒/α−Al、およびGa触媒/α−AlのGaは3価で存在していることが分かった。また、Ga−0.1Ba触媒/α−Al_freshと、Ga触媒/α−Al_freshとを比較すると、4配位Ga由来のピークは変わらなかった。しかしながら、Ga−0.1Ba触媒/α−Al_freshの6配位Ga由来のピークはGa触媒/α−Al_freshよりも減少した。それゆえ、Baの有無により4配位Gaと6配位Gaとの存在比が変化することが示唆された。
本発明は、エタンやナフサなどの炭化水素原料をオレフィンに熱分解する熱分解管に利用することができる。
1A、1A´、1B オレフィン製造用熱分解管
2 母材
3 アルミナ皮膜(金属酸化物皮膜)
4A 脱水素化触媒
4Ba 触媒成分
5A 助触媒
5Ba 助触媒成分
45B 脱水素化触媒/助触媒
45Bb 担体

Claims (10)

  1. 耐熱性金属材料からなる管状の母材の内表面に、3B族の金属およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つの触媒成分である脱水素化触媒と、アルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物からなる群のうち少なくとも1つの助触媒成分を含む助触媒とが担持されていることを特徴とするオレフィン製造用熱分解管。
  2. 耐熱性金属材料からなる管状の母材の内表面に、金属酸化物皮膜が形成されており、
    前記金属酸化物皮膜の表面に、3B族の金属およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つの触媒成分である脱水素化触媒と、アルカリ土類金属およびアルカリ土類金属化合物からなる群のうち少なくとも1つの助触媒成分を含む助触媒とが担持されていることを特徴とするオレフィン製造用熱分解管。
  3. 前記助触媒成分は、Sr、Ba、およびこれらの化合物からなる群のうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  4. 前記触媒成分と前記助触媒成分とのモル比は、1:0.01〜0.4であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  5. 前記触媒成分は、3B族の金属の酸化物からなる群のうち少なくとも1つであり、
    かつ、前記触媒成分は、単斜晶または三方晶の結晶構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  6. 前記3B族の金属はガリウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  7. 前記金属酸化物皮膜が、Al、Cr、およびMnCrからなる群のうち少なくともいずれか1つからなることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  8. 前記管状の母材の内表面の少なくとも一部が、凹部及び/又は凸部を構成していることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  9. 前記触媒成分と前記助触媒成分が、オレフィン製造用熱分解管の管軸方向で、担持量が異なっていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管。
  10. 熱分解管を複数接続させたオレフィン製造プラントにおいて、
    請求項1〜いずれか1項に記載のオレフィン製造用熱分解管を部分的に適用していることを特徴とするオレフィン製造プラント。
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