以下、図1〜9を参照して、本発明に係るステントの第1実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、この実施形態のステント10は、両端部が開口した略円筒状をなしたステント本体20を有しており、更に図1(b)や図4に示すように、ステント本体20の内側に内側カバー70が被覆され、ステント本体20の外側に外側カバー75が被覆された構造をなした、いわゆるカバードステントとなっている。もちろん、内側カバー70や外側カバー75を被覆させないステントや、一方のカバーのみを被覆させたステントとしてもよい。
図2の展開図を併せて参照すると、前記ステント本体20は、線状のフレーム31を、山部35及び谷部37を形成するように、ジグザグ状に屈曲させて、その両端が連結されて環状になる、複数のストラット部30を有している。そして、これらのストラット部30が、連結部40を介して、ステント10の軸方向に複数連結されることで、ステント本体20が構成されるようになっている。また、この実施形態におけるステント本体20は、常時は拡径した状態となる自己拡張型となっている。
なお、ストラット部としては、ジグザグ状に屈曲し両端が連結されて環状に形成された構造のみならず、所定形状に屈曲した形状をなす枠状体が、ステント周方向に複数並んで連結されて環状に形成された構造としてもよい。
また、ストラット部30の、隣接するフレーム31,31がV字状に屈曲してなるV字突出部分33(図2の二点鎖線で囲った部分)は、各ストラット部30について、その周方向に6〜24個設けることが好ましく、10〜18個設けることがより好ましい。
なお、以下の説明において、ストラット部30における、ステント10の軸方向一端側(図2,3では図中左側を意味する。以下、単に「一端側」ともいう)に屈曲して突出した突出部を山部35とする。また、ストラット部30における、ステント10の軸方向他端側(図2,3では図中右側を意味する。以下、単に「他端側」ともいう)に屈曲して突出した突出部を谷部37とする。更に、以下の説明において、後述するブリッジ部41のフレーム43や、延長線部47、補完フレーム60のフレーム61等における、「一端」や「他端」とは、それぞれステントの軸方向一端側における端部、及び、軸方向他端側における端部を意味する。
図2に示すように、ステント10の一端側の先頭に位置する、ストラット部30の山部35には、所定個おきに(ここでは2個おき)、リング状をなした引き抜き部39が設けられている。これらの複数の引き抜き部39には、ループ状をなした引き抜きワイヤ25が挿通されており(図4参照)、図6に示すように、この引き抜きワイヤ25を鉗子5等で把持して引っ張ることで、体内からステント10を引き抜き可能となっている。なお、図5〜7においては、便宜上ステント本体20のみが示されている。また、引き抜き部39は、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30の、山部35の全てに設けてもよい。
そして、ステント10は、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に、縮径状態で収容されて、同医療用チューブの先端側から、体内へ押し出されて配置されるようになっている。この場合、ステント10は、谷部37が設けられた他端側を押出方向に向けて収容され、他端側から体内に挿入される。そして、ステント10を体内から回収する際には、山部35が向いた前記一端側から引き抜いて回収することになる。
すなわち、本発明における「ステントの他端側」は、ステントを体内に挿入する際の挿入方向側の端部となり、「ステントの一端側」は、ステントを体内から回収する際の引き抜き方向側の端部となる。
図2に示すように、前記連結部40は、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35を、少なくとも3個以上ずつ束ねるように連結する、複数のブリッジ部41と、該ブリッジ部41の、ステント10の一端側に位置する集束部45とを有しており、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、ブリッジ部41に連結されている。
この実施形態におけるブリッジ部41は、4本のフレーム43を有しており、各フレーム43の他端が、各ストラット部30の、ステント10の周方向に隣接して配置された4個の山部35にそれぞれ連結されており、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、ブリッジ部41の各フレーム43の他端に連結された構造となっている。
なお、この実施形態では、ストラット部30の山部35が、ブリッジ部41によって4個ずつ束ねられているが、ブリッジ部41により束ねられる、ストラット部30の山部35の個数は、3個以上であればよい。また、複数本のフレーム43からなるブリッジ部41は、各ストラット部30の周方向に、3〜8個設けられていることが好ましく、3〜5個設けられていることがより好ましい。
また、図2に示すように、このステント10においては、各ブリッジ部41の、ステント10の一端側に位置する集束部45が、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されており、各ストラット部30の谷部37が、連結部40に連結されていないものを有している。
図2及び図3に示すように、この実施形態では、ブリッジ部41を構成する4本のフレーム43の一端どうしが集束することで、ステント10の一端側に集束部45が位置するように設けられている。更にこの実施形態における集束部45は、集束して屈曲して延びる延長線部47を有しており、この延長線部47を介して、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されている。
図3に示すように、この実施形態における延長線部47は、ステント10の周方向一方向及び周方向他方向に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部49,51を有する、屈曲した形状をなしている。具体的に説明すると、この延長線部47は、ステント10の周方向一方向R1側に向けて屈曲し、かつ、ステント10の軸方向Cに対して所定角度で傾いた第1屈曲部49と、ステント10の周方向他方向R2側に向けて屈曲し、かつ、ステント10の軸方向Cに対して、前記第1屈曲部49と同じ方向で傾いた第2屈曲部51とを有しており、略S字状に屈曲した形状をなしている。そして、延長線部47は、第2屈曲部51側の一端が、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されており、第1屈曲部49側の他端が、前記ブリッジ部41の4本のフレーム43が集束された部分に連結されている。また、各屈曲部49,51の頂部49a,51a(ステントの周方向に最も突出した部分)は、円弧状に丸みを帯びた形状となっている。
なお、この実施形態では、連結部40は、集束部45の延長線部47を介して、その一端が、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されているが、該ストラット部30の山部35に連結されていてもよい。また、延長線部としては、例えば、略Z字状をなすように屈曲した形状としてもよく、その屈曲形状は特に限定されない。
更に、この実施形態における集束部45は、屈曲して延びる延長線部47を有しているが、集束部としては、例えば、直線状に延びる延長線部を有し、該延長線部を介して、ステント10の一端側のストラット部30の谷部37又は山部35に連結されていてもよく、また、延長線部を有さずに、集束部自体が、ステント10の一端側のストラット部30の谷部37又は山部35に直接連結されていてもよい(これらについては、後述の実施形態で説明する)。
上記構造をなしたステント10においては、複数のストラット部30が、複数の連結部40を介して連結されることにより、図2に示すように、ステント10の軸方向に隣接するストラット部30,30と、ステント10の周方向に隣接する連結部40,40とで囲まれた空間Sが、ステント本体20に複数形成されるようになっている。
そして、このステント10においては、上記のストラット部30と連結部40とで囲まれた個々の空間Sには、ステント10の周方向に隣接する集束部45,45から、ステント10の他端側に向かって延び、その延出方向の先端61a,62aどうしが、谷部63をなすように連結された、補完フレーム60が設けられており、この補完フレーム60は、その延出方向の基端61b,62b以外は、ストラット部30又は連結部40には連結しない構造とされている。
図3に示すように、この実施形態における補完フレーム60は、ステント10の一端側が広がり、ステント10の他端側に向けて次第に狭くなるように、ステント10の軸方向Cに対して傾斜して配置された、一対のフレーム61,62を有しており、その先端61a,62aどうしが互いに連結されて谷部63をなしている。すなわち、この補完フレーム60は、先端61a,62a側の谷部63をステント10の他端側に向け、基端61b,62b側をステント10の一端側に向けて配置された、略V字形状をなしている。なお、ステント10の周方向一方向R1側にフレーム61が配置され、ステント10の周方向他方向R2側にフレーム62が配置されている。
また、図3に示すように、各フレーム61,62は、ステント10の一端側に向けて凹むような湾曲形状をなしており、その先端61a,62aどうしが互いに連結されることで、谷部63は、その頂部がやや尖った略くちばし形状を呈している。
更に、各フレーム61,62の基端61b,62bは、ステント10の他端側に向けて出っ張るような円弧状をなしており、これらの基端61b,62bが、前記延長線部47の、略S字状をなす2つの屈曲部49,51の頂部49a,51aより、ステント10の他端側寄りの位置にそれぞれ連結されている。
この実施形態では、図3に示すように、一方のフレーム61の基端61bが、所定の集束部45における、第2屈曲部51の頂部51aより、ステント10の他端側寄りの位置に連結されており、他方のフレーム62の基端62bが、フレーム61の基端61bが連結した前記集束部45の、ステント10の周方向他方向R2側に隣接配置された集束部45における、第1屈曲部49の頂部49aより、ステント10の他端側寄りの位置に連結されている。
また、ステント10の縮径時又は拡径時に、ストラット部30のフレーム31,31が近接離反して、ストラット部30が縮径又は拡径するのに伴って、上記構造をなした補完フレーム60は、谷部63を介して一対のフレーム61,62が近接離反して開閉することで、縮径又は拡径するようになっている。このとき、上述したように、補完フレーム60は、基端61b,62b以外は、ストラット部30又は連結部40に連結しない構造とされているので、連結部40を構成するブリッジ部41の、ステント10の周方向外側に配置されたフレーム43や、ストラット部30のフレーム31に当接しにくくなり、それらへの干渉が抑制されるようなっている。
更に図2や図3に示すように、各補完フレーム60の全ての谷部63は、ステント10の軸方向に隣接するストラット部30の谷部37に対して、ステント10の周方向において整合する位置となるように配置されている。その結果、ステント10の縮径又は拡径時に、補完フレーム60の一対の補完フレーム61,62と、ストラット部30のフレーム31,31とが、ステント10の同一軸線上で開閉するようになっている。また、図3に示すように、補完フレーム60の谷部63と、それに整合する位置のストラット部30の谷部37との最小距離Lは、0.5〜10.0mmであることが好ましく、1.0〜6.0mmであることがより好ましい。
更に図2や図3に示すように、ステント10が拡径した自由状態で、補完フレーム60を構成する一対のフレーム61,62は、ステント10の周方向に隣接して配置されたブリッジ部41,41の間であって、かつ、各ブリッジ部41の、補完フレーム60に隣接するフレーム43に対して、所定のクリアランスが確保されるように配置されている。この実施形態の場合、図3に示すように、一方のフレーム61は、所定のブリッジ部41の、周方向他方向R2側の最も外側寄りのフレーム43に対して、所定のクリアランスをあけて配置されており、他方のフレーム62は、前記ブリッジ部41に対して、ステント10の周方向他方向R2側に隣接配置されたブリッジ部41における、周方向一方向R1側の最も外側寄りのフレーム43に対して、所定のクリアランスをあけて配置されている。
また、図3に示すように、一方のフレーム61に対する、他方のフレーム62の角度θ、すなわち、谷部63を通り且つフレーム61の内周に接する接線M1に対して、谷部63を通り且つフレーム62の内周に接する接線M2がなす角度θは、40〜120°であることが好ましく、50〜90°であることがより好ましい。
なお、この実施形態における補完フレーム60は、ストラット部30と連結部40とで囲まれた個々の空間Sにおいて、ステント10の周方向に隣接する集束部45,45から延設しているが、補完フレームとしては、ステントの周方向に隣接する集束部の間に位置する複数の谷部から延設していてもよく(これについては後述の実施形態で説明する)、また、ステントの周方向に隣接する集束部、及び、ステントの周方向に隣接する集束部の間に位置する複数の谷部から、それぞれ延設していてもよく、特に限定はされない。
更に、補完フレームとしては、上記形状に限定されるものではなく、ステントの他端側に向かって延び、その延出方向の先端どうしが、谷部をなすように連結されていればよく、かつ、ステントの縮径時及び拡径時に、谷部を介して開閉可能とされて、ストラット部や連結部に干渉しにくい構造であればよい。また、この実施形態の補完フレーム60は一対のフレーム61,62からなるものであるが、補完フレームとしては、第1補完フレーム及び第2補完フレームの2つの補完フレームからなる構造としてもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。
なお、この実施形態におけるステント本体20は、金属円筒を、レーザー加工やエッチング等で加工して、複数のストラット部やブリッジ部を形成することで構成されている。ただし、例えば、金属板を加工して、ジグザグ状又は枠状体からなる複数のストラット部やブリッジ部を設け、この金属板を円筒状に屈曲させてステント本体を形成してもよい。
また、上記ステント本体20は、常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、バルーンカテーテル等に装着しておき、ステントの内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型としてもよい。
上記ステント本体20の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などが好ましい。また、ステント本体20の所定位置に、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金や、BaSO4、Bi、W等の粉末を含有した合成樹脂、ステンレスなどからなる、X線不透過性のX線マーカーを設けてもよい。
更に上述したように、ステント本体20の内側に内側カバー70が被覆されていると共に、外側に外側カバー75が被覆されており、両カバー70,75によって、ステント本体20の周方向に設けられたメッシュ状開口(前記空間Sや、ブリッジ部41の複数のフレーム43やストラット部30の複数のフレーム31で囲まれた空間)が塞がれている。これらの内側カバー70及び外側カバー75は、例えば、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されることが好ましい。
なお、上記実施形態では、本発明における「前記一端側の先頭に位置するストラット部を除く各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30以外の、全てのストラット部30を指すものであり、また、本発明における「各ストラット部」とは、引き抜き部39を有するストラット部30を含む、全てのストラット部30を指すものであり、更に本発明における「前記一端側に隣接する前記ストラット部」とは、ある所定のストラット部30に対して、それに隣接する所定のストラット部30を指すものである(例えば、図2においては、紙面右端(軸方向他端側)のストラット部30に対して、その隣に位置する、紙面右端から2つ目のストラット部30を指す)。これは後述する実施形態においても同様である。
次に、上記構成からなる本発明のステント10の、使用方法の一例について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
図8に示すように、十二指腸1の下部には、乳頭2が設けられており、この乳頭2から胆管3や膵管4が分岐して伸びている。また、図示しない肝臓により生成される胆汁は、胆管3内を流動し、乳頭2を通過して十二指腸1へと供給されるようになっている。ここでは、乳頭2を通して、胆管3内にステント10を留置する際の手順について説明する。
なお、本発明のステント10は、胆管3以外にも、膵管4や、食道、気管、大腸、血管等の管状器官や、体腔等の体内に留置することもでき、適用箇所は特に限定されない。
まず、ステント10を縮径させて、カテーテルやシース等の図示しない医療用チューブ内に収容する。この際には、引き抜き部39を有するストラット部30があるステント一端側を手元側に向け、ステント他端側をチューブ先端側に向けて、医療用チューブ内にステント10を縮径させた状態で収容する。
このとき、このステント10は、図2や図3に示すように、前記空間Sに補完フレーム60が設けられており、この補完フレーム60は、その延出方向の基端61b,62b以外は、ストラット部30又は連結部40には連結しない構造とされているので、医療用チューブ内へのステント10を縮径させて収容する際に、図7に示すように、複数のストラット部30が縮径すると共に、補完フレーム60のフレーム61,62が、谷部63を介して互いに近接して折り畳まれるように閉じることで縮径して、補完フレーム60のフレーム61,62の、ストラット部30のフレーム31や、連結部40のブリッジ部41のフレーム43に対する干渉が抑制されつつ、医療用チューブ内にステント10をスムーズに収容することができる。
この状態で周知の方法によって、図示しない内視鏡のルーメンを通じてガイドワイヤを胆管3に挿入した後、同ガイドワイヤを介して医療用チューブを挿入していくことで、ステント10を、その他端側から胆管3内に挿入する。そして、医療用チューブの先端部が胆管3の所定位置に達したら、医療用チューブの挿入を終了する。その後、プッシャ等を介して、医療用チューブの先端からステント10を解放することで、ステント10を拡径させて、図8に示すように、ステント他端側を胆管3内に配置すると共に、ステント一端側を乳頭2からやや突き出るように配置して、ステント10を留置する。
このとき、このステント10においては、図2や図3に示すように、前記空間Sに補完フレーム60が設けられており、この補完フレーム60は、その延出方向の基端61b,62b以外は、ストラット部30又は連結部40には連結しない構造とされているので、補完フレーム60の、ストラット部30や連結部40に対する干渉が抑制されつつ、補完フレーム60のフレーム61,62が、谷部63を介して互いに離反するように開くことで拡径するため、図6に示すように、ステント10を均一な拡張力によって拡径させて留置することができ、また、体内への留置後においても、体内組織(ここでは胆管3の内壁)に対して均一な拡張力が作用するため(すなわち、ストラット部30による拡張力のみならず、補完フレーム60による拡張力が作用する)、体内の所定位置からステント10を位置ずれしにくくさせることができる。
また、この実施形態のステント10においては、ステント10の内側に内側カバー70が配置され、ステント10の外側に外側カバー75が配置されているが、このように、ステント10の内周や外周にカバー70,75を有する場合に、ストラット部30と連結部40とで囲まれた個々の空間Sに補完フレーム60が配置されているので、内側カバー70や外側カバー75のくぼみを抑制して、その内径を維持しやすくすることができ、それによって流体(ここでは胆汁等)を流れやすくすることができる。それと共に、補完フレーム60によって、内側カバー70や外側カバー75が、ステント本体20から剥がれにくくなり、ステント内周や外周に、内側カバー70や外側カバー75を安定して取付けることができる。
上記のようにして、胆管3内に留置されたステント10によって、胆管3が拡径した状態に維持されるが、胆汁等の体液や、癌細胞の増殖等によって、ステント10の内腔が閉塞されたり、或いは、治療が終了したりした場合には、ステント10を体内から回収したい場合がある。
この場合には、図9に示すように、例えば、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、鉗子5を十二指腸1内に挿入し、該鉗子5で、ステント一端側に設けたループ状の引き抜きワイヤ25を把持して、図6に示すように、鉗子5を操作者の手元側に向けて引っ張る。なお、ループ状のスネアを、ステント一端側に引っ掛けて、同スネアを介してステントを引っ張ってもよく、ステントを引っ張る手段は特に限定されない。
このとき、図2に示すように、連結部40は、ステント10の一端側の先頭に位置する、引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の山部35を、少なくとも3個以上ずつ束ねるように連結する、複数のブリッジ部41を有しており、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、ブリッジ部41に連結された構造となっている。
そのため、上記のように、ステント10をその一端側から引っ張ると、ステント10の一端側の先頭に位置するストラット部30を通じて、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35が、連結部40の、山部35を複数個ずつ束ねるブリッジ部41を介して引っ張られる。
その結果、図6に示すように、各ストラット部30における山部35どうしが収束して、ステント10が縮径されやすくなると共に、ステント10の一端側の先頭に位置する引き抜き部39を有するストラット部30を除く、各ストラット部30の全ての山部35は、全てブリッジ部41に連結されているため、ステント10の一端側に突出した突出部が、独立して存在しなくなり、各ストラット部30の複数の山部35を、胆管3等の体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができると共に、補完フレーム60も、先端61a,62a側の谷部63をステント10の他端側に向けた構造としたことで、体内の内壁に引っ掛かりにくくすることができるため、体内からステント10をスムーズに抜き出すことができる。なお、この実施形態の場合、胆管3から抜き出されたステント10は、図示しない内視鏡のルーメンを通じて、体内から回収することができる。
また、この実施形態においては、図2に示すように、集束部45は、集束して屈曲して延びる延長線部47を有しており、この延長線部47を介して、ステント10の一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されているので、延長線部47がない場合に比べて、ステント10の屈曲時に、連結部40においてキンクしにくくすることができる。更に、ステント10の軸方向に隣接するストラット部30,30と、ステント10の周方向に隣接する連結部40,40とで囲まれて画成された広い空間Sを、屈曲して延びる延長線部47によって、より広い範囲で埋めることができ、ステント10の内周や外周にカバー70,75を有する場合の、それらのカバー70,75の凹みを、より確実に防止することができる。
更に、この実施形態においては、図3に示すように、延長線部47は、ステント10の周方向一方向R1及び周方向他方向R2に屈曲する、少なくとも2つの屈曲部49,51を有する、屈曲した形状をなしており、これらの屈曲部49,51の頂部49a,51aに対して、ステント10の他端側寄りの位置に、補完フレーム60のフレーム61,62延出方向の基端61b,62bがそれぞれ連結されているので、カテーテルやシース等の医療用チューブ内にステント10を収容すべく縮径させる際に、補完フレーム60を、ストラット部30や連結部40に、より干渉しにくくして、ステント10を縮径させやすくすることができる。また、延長線部47を長く確保することができるので、その柔軟性を高めて、連結部40をよりキンクしにくくすることができ、その結果、管状器官等が屈曲している場合でも、屈曲した管状器官に柔軟に対応して、ステント10を適宜屈曲させて、その内腔を保持しつつ留置することができると共に、ステント留置後に、癌細胞等の増殖等により、ステント10が圧迫されて屈曲した場合でも、連結部40をキンクしにくくして、ステント内腔の狭窄を防止することができる。
図10には、本発明に係るステントの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この第2実施形態のステント10Aは、ブリッジ部41の、ステント10Aの一端側に設けた集束部45の構造が、前記実施形態と異なっている。
すなわち、図10に示すように、この実施形態のステント10Aにおける集束部45は、ブリッジ部41の4本のフレーム43の一端どうしが集束して、かつ、ステント10Aの軸方向Cに沿って平行に延びる直線状に延びる延長線部47Aを有している。この直線状の延長線部47Aの一端が、ステント10Aの一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されており、延長線部47Aの他端が、ブリッジ部41の4本のフレーム43が集束された部分に連結されている。
なお、補完フレーム60は、一方のフレーム61の基端61bが、所定の集束部45における延長線部47Aの一端と、ストラット部30の谷部37との連結部分に連結されており、他方のフレーム62の基端62bが、前記集束部45の、ステント10Aの周方向他方向R2側に隣接配置された集束部45における延長線部47Aの一端と、ストラット部30の谷部37との連結部分に連結されている。
そして、この実施形態においても、前記実施形態と同様に、上記のような直線状の延長線部47Aを設けたことによって、ステント10Aの屈曲時に、連結部40においてキンクしにくくすることができると共に、前記空間Sをより広い範囲で埋めて、ステント内周や外周のカバー70,75の凹みを、より確実に防止することができる。
図11には、本発明に係るステントの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この第3実施形態のステント10Bは、前記第1実施形態や第2実施形態と異なり、延長線部を有しない構造となっている。具体的に説明すると、このステント10Bにおける連結部40は、ブリッジ部41の4本のフレーム43の一端どうしが集束してなる集束部45を有しており、この集束部45自体が、ステント10Bの一端側のストラット部30の谷部37に直接連結されている。なお、補完フレーム60は、一方のフレーム61の基端61bが、所定の集束部45とストラット部30の谷部37との連結部分に連結されており、他方のフレーム62の基端62bが、前記集束部45の、ステント10の周方向他方向R2側に隣接配置された集束部45と、ストラット部30の谷部37との連結部分に連結されている。そして、このステント10Bにおいても、前記実施形態と同様の作用効果を奏する。
図12には、本発明に係るステントの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この第4実施形態のステント10Cは、前記実施形態と比べて、補完フレームの構造が異なっている。
すなわち、この補完フレーム60Cは、ステント10Cの一端側の先頭に位置するストラット部30を除く各ストラット部30の、ステント10Cの周方向に隣接する集束部45,45の間に位置する、複数の谷部37,37から延設しており、かつ、第1補完フレーム65と、該第1補完フレーム65の外側に配置される第2補完フレーム67とからなっている。
より具体的に説明すると、第1補完フレーム65及び第2補完フレーム67は、前記補完フレーム60と同様に、略V字状をなすフレーム61,62を有している。また、第1補完フレーム65の、一対のフレーム61,62のなす角度θ1は、第2補完フレーム67の、一対のフレーム61,62のなす角度θ2よりも大きく、かつ、第1補完フレーム65の各フレーム61,62の長さは、第2補完フレーム67の各フレーム61,62の長さよりも短く形成されており、第1補完フレーム65がステント10Cの軸方向一端側に配置され、第2補完フレーム67が、第1補完フレーム65よりも、ステント10Cの軸方向基端側に配置された構造となっている。更に、第1補完フレーム65の谷部63、及び、第2補完フレーム67の谷部63は、ステント10Cの周方向において整合する位置に配置されており、ステント10Cの縮径又は拡径時に、両補完フレーム65,67の一対のフレーム61,62が同一の軸線上で開閉するようになっている。
また、各ストラット部30は、ステント10Cの一端側の4個の山部35が、ブリッジ部41の4本のフレーム43に連結されており、これらのフレーム43が連結されたストラット部30の、ステント10Cの他端側の3個の谷部37について、ステント10Cの周方向一方向R1側の谷部37に、第1補完フレーム65及び第2補完フレーム67の一方のフレーム61の基端61bが連結されており、1個の谷部37を挟んで、ステント10Cの周方向他方向R2側の谷部37に、第1補完フレーム65及び第2補完フレーム67の他方のフレーム62の基端62bが連結されている。このように、第1補完フレーム65及び第2補完フレーム67は、その基端61b,62bが、ストラット部30の同一の谷部37,37にそれぞれ連結されているので、図12に示すように、第1補完フレーム65の一対のフレーム61,62と、第2補完フレーム67の一対のフレーム61,62とで囲まれた枠状構造をなしている。
また、集束部45は、図10に示す第2実施形態と同様に、ブリッジ部41の4本のフレーム43の一端どうしが集束して直線状に延びる延長線部47Aを有しており、その一端が、ステント10Cの一端側に隣接するストラット部30の谷部37に連結されているが、この延長線部47Aは、ストラット部30の、第1補完フレーム65や第2補完フレーム67が連結されてない谷部37に対して、ステント10Cの周方向に整合する位置に配置されている。
そして、この実施形態においては、補完フレーム60Cは、第1補完フレーム65と、この第1補完フレーム65の外側に配置される第2補完フレーム67とからなるので、医療用チューブ内にステント10Cを収容した後、体内の所定位置で拡径させる際に、第1補完フレーム65及び第2補完フレーム67が拡径するため、ステント10Cをより均一な拡張力で拡径させることができると共に、留置後における体内組織に対する拡張力をより均一に作用させることができるため、ステント10Cを体内の所定位置からより一層位置ずれしにくくさせることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。