以下、図1〜6を参照して、本発明に係るステントの第1実施形態について説明する。
図1(a)に示すように、この実施形態のステント10は、複数のメッシュ状の開口35が設けられ、軸方向の両端部31,33が開口した略円筒状をなしたステント本体30を有している。
また、図2に示すように、このステント10は、ステント本体30の内側に内側カバー60が被覆されていると共に、ステント本体30の外側に外側カバー70が被覆された構造をなした、いわゆるカバードステントとなっている。なお、内側カバー60や外側カバー70を被覆させないステントとしてもよく、内側カバー60又は外側カバー70の一方のみを、被覆させたステントとしてもよい。
前記ステント本体30の軸方向の両端部31,33は、軸方向外方に向けて次第に拡径したラッパ状をなしており、管状器官等の体内組織の内周に対する係合力が高められている。なお、ステント本体30の一端部31や他端部33のみを拡径させてもよく、両端部31,33を拡径させずにストレート状としてもよい。また、ステント本体30の軸方向の途中に、拡径した部分を設けて、体内組織の内周に対して係合力を高めてもよい。
なお、以下の説明においては、ステント本体30の一端部31が設けられた端部側を、「ステントの軸方向の一端側」とし、ステント本体30の他端部33が設けられた端部側を、「ステントの軸方向の他端側」とする。
また、このステント10は、メッシュ状に成形された金属筒からなるものである。例えば、金属円筒をレーザー加工やエッチング等で加工して、後述する複数の軸線部40やストラット部50を形成することで、ステント本体30を設けたり、或いは、金属板にレーザー加工等で複数の軸線部40やストラット部50を予め形成しておき、この金属板を円筒状に屈曲させることで、ステント本体30を設けたりしてもよい。すなわち、本発明における「メッシュ状に成形された金属筒」には、加工を施した金属板を筒状に屈曲させて成形されたものも含む意味である。
上記ステント本体30は、常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、バルーンカテーテルの外周に装着しておき、ステント内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型としてもよい。
そして、図1及び図3に示すように、ステント本体30は、ステント10の軸方向の一端側から他端側に向けて連続し、かつ、並列して延びる複数の軸線部40と、隣接する軸線部40,40の間に、軸線部40の延びる方向に沿って所定間隔をおいて配置され、隣接する軸線部40,40どうしを互いに連結するように、両端部53,53が隣接する軸線部40,40に接続された、山形に屈曲した頂部51を有する複数のストラット部50とを備えている。
図3の展開図を併せて参照すると、この実施形態における軸線部40は、ステント10の軸方向の一端側から他端側に向けて、ステント10の軸方向Cに沿って直線状をなすように連続的に延びている。そして、この軸線部40が互いに平行となるように、ステント10の周方向に所定間隔をあけて、複数並列して配置されている。
なお、軸線部としては、ステントの軸方向の一端側から他端側に向けて連続し、かつ、並列して延びていればよく、例えば、螺旋形状をなしていたり、蛇行した屈曲形状をなしていたりしてもよく(これらについては、後述の他の実施形態(図7及び図8参照)で説明する)、特に限定はされない。また、後述する実施形態(図14参照)と同様に、ステントの軸方向の所定位置に設けた後述する「境界」、すなわち、軸線部の延びる方向の所定位置に、所定形状に屈曲した屈曲部を設けてもよい。
更に、前記軸線部40は、ステント10の周方向に3〜24個設けられていることが好ましく、8〜16個設けられていることがより好ましい。また、隣接する軸線部40の間隔(隣接する軸線部の向き合う側辺どうしの間隔)は、外力のない拡張状態で、750〜34000μmとされることが好ましく、1000〜15000μmとされることがより好ましい。
また、軸線部40の延びる方向の所定位置には、X線不透過性のマーカー43が設けられている。ここでは、軸線部40の延びる方向の中央位置に、軸線部40の線幅よりも拡径した円形状の拡径部41が形成されており、該拡径部41にそれよりも縮径した円形状のX線不透過性のマーカー43が固着されている。このマーカー43としては、例えば、Pt、Ti、Pd、Rh、Au、W、Ag、Bi、Ta及びこれらの合金や、BaSO4、Bi、W等の粉末を含有した合成樹脂、ステンレスなどからなる。また、マーカー43の形成位置は、軸方向一端側や他端側に設けたり、並列して配置された軸線部に対して一つおきや2つおきに設けたり、更に、マーカー43の形状は、四角形等であってもよく、マーカー43の位置や形状は、特に限定されない。
そして、図3に示すように、山形に屈曲した形状をなした各ストラット部50は、ステント10の軸方向の所定位置を境界にして、該境界からステント10の軸方向の一端側に配置された各ストラット部50の頂部51の向きと、前記境界からステント10の軸方向の他端側に配置された各ストラット部50の頂部51の向きとが、互いに反対方向となるように構成されている。
なお、この実施形態におけるストラット部50は、頂部51が鋭角状に尖っていると共に、その両側部が次第に拡開した略V字状をなし、両端部53,53が隣接する軸線部40,40にそれぞれ接続されるようになっているが、例えば、頂部51が丸みを帯びた略U字状をなしていてもよく、隣接する軸線部40,40どうしを連結可能であって、頂部を有する山形に屈曲した形状であればよい。
また、この実施形態においては、図3に示すように、ステント10の軸方向の所定位置、ここではステント10の軸方向の中央位置(マーカー43が設けられた位置)を境界として、該境界からステント10の軸方向の一端側(一端部31側)に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の軸方向の一端側に向いていると共に、前記境界からステント10の軸方向の他端側(他端部33側)に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の軸方向の他端側に向いている。
すなわち、ステント10の境界から軸方向一端側に配置された各ストラット部50の頂部51と、前記境界から軸方向他端側に配置された各ストラット部50の頂部51との双方が共に、ステント10の軸方向外方に向けて、かつ、互いに反対方向となるように配置されている。
更に図3に示すように、隣接する軸線部40,40の間に複数のストラット部50が配置された列を、ステント10の周方向に沿って、S1,S2,S3,S4,S5,S6,S7としたときに、各列S1〜S7には、ステント10の軸方向中央位置を境界として軸方向一端側及び軸方向他端側に、複数のストラット部50がほぼ均等な間隔で且つ同じ数だけそれぞれ配置されている(ここでは4個ずつ)。なお、軸方向に隣接するストラット部50どうしの間隔(隣接するストラット部の向き合う辺どうしの間隔)は、外力のない拡張状態で、500〜40000μmとされることが好ましく、1500〜30000μmとされることがより好ましい。
なお、この実施形態では、ステント10の軸方向中央位置を所定位置とし、この位置を境界としたが、前記所定位置は、例えば、ステント10の軸方向一端側寄りの位置としたり、軸方向他端寄りの位置としたりしてもよく、特に限定はされない。
また、ステント10の境界から軸方向一端側又は軸方向他端側にそれぞれ配置されたストラット部50は、軸方向一端側又は軸方向他端側において、それぞれ1〜15個配置されていることが好ましく、4〜10個配置されていることがより好ましい。なお、この実施形態では、ステント中央を境界として軸方向一端側及び他端側に同一個数のストラット部50が配置されているが、例えば、軸方向一端側又は他端側の一方におけるストラット部50の個数を多くし、軸方向一端側又は他端側の他方におけるストラット部50の個数を少なくしてもよい。
更に図3に示すように、所定の軸線部40,40の間に配置された各ストラット部50と、これに対してステント10の周方向において隣接する他の軸線部40,40の間に配置された各ストラット部50とは、軸線部40の延びる方向に対して整合する位置に設けられている。すなわち、このステント10においては、所定の軸線部40と該軸線部40に対して周方向の一方側に隣接する軸線部40との間に配置された各ストラット部50と、前記所定の軸線部40と該軸線部40に対して周方向の他方側に隣接する軸線部40との間に配置された各ストラット部50とは、軸線部40の延びる方向に対して整合する位置に設けられている。ここでは、各列S1〜S7における全てのストラット部50は、軸線部40の延びる方向に対して互いに整合して配置されている。
ただし、所定の軸線部40,40の間に配置された各ストラット部50と、周方向に隣接する他の軸線部40,40の間に配置された各ストラット部50とを、軸線部40の延びる方向に対して位置ずれさせてもよい。すなわち、所定の軸線部40と該軸線部40に対して周方向の一方側に隣接する軸線部40との間に配置された各ストラット部50を、前記所定の軸線部40と該軸線部40に対して周方向の他方側に隣接する軸線部40との間に配置された各ストラット部50に対して、軸線部40の延びる方向に位置ずれして軸線部40に連結された構造としてもよい。例えば、所定の軸線部40,40の配置されたストラット部50の個数を偶数個とし、そのストラット部50の位置を、周方向の一方側又は他方側に隣接する他の軸線部40,40の間に配置されたストラット部50に対して、軸線部40の延びる方向にずらすことにより、ストラット部50を、軸線部40の延びる方向に向けて、交互に千鳥状に配置してもよい。
なお、この実施形態においては、S1〜S7列のすべてにおいて、境界を介して複数のストラット部50が配置された構造をなしているが、この構造は、ステント10の周方向に沿って一個おきの列に設けたり、二個おきの列に設けたりしてもよく、特に限定はされない。
また、上記ストラット部50は、後述する実施形態(図15参照)と同様に、ステント10の外径方向に突出した形状をなしていてもよい。
更に図2に示すように、複数の軸線部40の軸方向一端部には、リング状をなした引き抜き部37が設けられ、これらの引き抜き部37には、ループ状をなした引き抜きワイヤ39が挿通されており、図6に示すように、この引き抜きワイヤ39を鉗子7等で把持して引っ張ることで、ステント10をカテーテルやシース等の医療用チューブ8内に回収できるようになっている。なお、図1(a)及び図3においては、便宜上、引き抜き部37を省略している。
また、この実施形態においては、図3に示すように、軸線部40の線径(幅)は、ストラット部50の線径(幅)と同一となっているが、軸線部40の線径をストラット部50の線径よりも小さく形成してもよい。この場合、軸線部40の剛性がストラット部50の剛性よりも低くなり、軸線部40が撓みやすくなり、キンクしにくくすることができる。
ステント本体30の材質は、特に限定されないが、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などが好ましい。
更に上述したように、ステント本体30の内側に内側カバー60が被覆されていると共に、ステント本体30の外側に外側カバー70が被覆されている。図2の断面図に示すように、内側カバー60は、ステント本体30の内側を被覆すると共に、その厚さ方向途中に至る部分まで埋設し、外側カバー70は、ステント本体30の外側を被覆すると共に、内側カバー60に埋設されていない部分に至るまで埋設しており、両カバー60,70によって、ステント本体30のメッシュ状の開口35が塞がれている。
また、内側カバー60及び外側カバー70は、例えば、ポリウレタン、シリコーン、天然ゴム、ナイロンエラストマー、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルや、更には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)等のフッ素系樹脂、ポリブタジエン等のオレフィン系ゴム、スチレン系エラストマーなどで形成されることが好ましい。
なお、図5及び図6に示す場合や、後述する図9〜13に示す第4実施形態における、図12及び図13に示す場合においては、便宜上、内側カバー60及び外側カバー70を省略している。
次に、上記構成からなる本発明のステント10の、使用方法の一例について説明する。なお、この使用方法は一例であり、特に限定はされない。
図4に示すように、十二指腸1の下部には、乳頭2が設けられており、この乳頭2から胆管3や膵管4が分岐して伸びている。また、図示しない肝臓により生成される胆汁は、胆管3内を流動し、乳頭2を通過して十二指腸1へと供給されるようになっている。ここでは、乳頭2を通して、胆管3内にステント10を留置する際の手順について説明する。
なお、本発明のステント10は、胆管3以外にも、膵管4や、十二指腸1、食道、気管、大腸、血管等の管状器官や、体腔、その他の体内組織に留置することもでき、適用箇所は特に限定されない。
まず、ステント10を縮径させて、カテーテルやシース等の医療用チューブ8(図6参照)内に収納する。この際には、ステント10の軸方向の一端側又は他端側を、体内に対する医療用チューブ8やステント10の挿入方向に向けて、ステント10を縮径させて、医療用チューブ8内に収納する。この実施形態の場合は、便宜上、他端側を医療用チューブ8の先端側に向けることにする。
この状態で周知の方法によって、図示しない内視鏡のルーメンを通じてガイドワイヤを胆管3に挿入した後、同ガイドワイヤを介して医療用チューブ8を挿入していくことで、ステント10を、軸方向他端側から胆管3内に挿入する。そして、医療用チューブ8の先端部が胆管3の所定位置に到達したら、医療用チューブ8を停止する。その後、プッシャ等を介してステント10の移動を規制しつつ、医療用チューブ8を手前に引くことで、医療用チューブ8の先端からステント10を解放させ、ステント10を拡径させることにより、図4に示すように、ステントの他端側を胆管3内に配置すると共に、ステントの一端側を乳頭2からやや突き出るように配置して、ステント10を留置する。
このとき、医療用チューブ8の先端部からステント10を徐々に開放していき、ステント10の位置を確認しつつ留置していく。すなわち、図6に示すように、ステント10の位置をX線不透過性のマーカー43や内視鏡等で確認しながら、医療用チューブ8の先端部から、ステント10の前記境界まで、ステント10を開放していく。このとき、ステント10の留置位置が適切でなく、ステント挿入操作をやり直す必要が生じることがある。
この場合には、図6に示すように、ステント一端側に配置されたループ状の引き抜きワイヤ39を、鉗子7で把持して、ステント10を操作者の手元側に向けて引っ張ったり、或いは、図示しないループ状のスネアを、ステント一端側に引っ掛けて、スネアを介してステントを引っ張ったりして、ステント10を医療用チューブ8内に引き戻すことができる。
このとき、この実施形態においては、ステント10の境界からステント10の軸方向の挿入側(この実施形態では他端側)に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の軸方向の挿入側(この実施形態では他端側)に向いているので(図3参照)、上記のように、ステント10を手元側に引っ張って医療用チューブ8内に再収納する際に、医療用チューブ8の先端部から押出された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の引っ張り方向とは反対方向に向いた状態となるため(図6参照)、ステント10が胆管3の内周等の体内組織に引っ掛かりにくくなり、ステント10を医療用チューブ8内にスムーズに収納することができる。
また、この実施形態においては、軸線部40の延びる方向の所定位置、この実施形態ではストラット部50の向きが変わる境界部に、X線不透過性のマーカー43が設けられているので、X線透視下において、マーカー43の位置を把握することができ、ステント10の留置位置を確認しやすくすることができる。更に、マーカー43の位置を把握することで、医療用チューブ8の先端開口からの、ステント10の開放量を把握することができるので、ステント10の境界から軸方向一端側に向けて配置された最初のストラット部50(マーカー43から数えて左側1個目のストラット部50)の頂部51が、医療用チューブ8の先端開口から飛び出ることを確実に防止することができ、ステント10を医療用チューブ8内に、よりスムーズに再収納することができる。なお、医療用チューブ8の先端開口から、頂部51が軸方向一端側に向いたストラット部50が飛び出ていると、ステント再収納時に、頂部51がチューブ開口周縁に引っ掛かりやすくなり、再収納しにくい。
そして、ステント10を医療用チューブ8から完全に開放して、胆管3の所定位置に留置すると、拡径したステント10の各ストラット部50が、胆管3の内周に係合して、胆管3の所定位置にステント10を留置することができる(図4参照)。
このとき、このステント10においては、図3に示すように、ステント10の軸方向の所定位置を境界にして、境界から軸方向の一端側に配置された各ストラット部50の頂部51の向きと、境界から軸方向の他端側に配置された各ストラット部50の頂部51の向きとが互いに反対方向となるように構成されているので、ステント10が軸方向のどちらの方向(例えば、胆管3の手前側や胆管3の奥側)に移動しようとしても、軸方向の一端側に配置された各ストラット部50、又は、軸方向の他端側に配置された各ストラット部50のいずれかの頂部51が、体内組織(ここでは胆管3の内周)に引っ掛かるので、ステント10の位置ずれを抑制することができる。
また、この実施形態においては、図3に示すように、ステント10の境界からステント10の軸方向の一端側に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の軸方向の一端側に向いていると共に、前記境界からステント10の軸方向の他端側に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント10の軸方向の他端側に向いた構造となっている。
そのため、図5に示すように、隣接する体内組織S1,S2の間(例えば、十二指腸と胆管との間や、胃と肝内胆管との間等)をバイパスするようにステント10を挿入して留置した際に、隣接する体内組織S1,S2が近接する方向に移動するのを、各ストラット部50の頂部51が係合して抑制するので、隣接する体内組織S1,S2どうしが癒着するのを抑制することができる。
また、このステント10は、メッシュ状に成形された金属筒からなるものであるので、ステント10の縮径時及び拡径時におけるショートニングが少なく、留置位置が位置ずれしにくいという性質を有している。これに加えて、軸線部40がステント一端側から他端側に向けて連続して延び、かつ、隣接する軸線部40,40がストラット部50で連結された構造であるので、ステント10の縮径時及び拡径時に、軸線部40が伸び縮みせず、各ストラット部50が、頂部51を境にして、その両側部がパンタグラフのように開閉して、ステント10が縮径又は拡径するため、ステント10のショートニングをより一層少なくして、体内組織の所望位置に精度良く留置することができる。
更に、ステントの一端側から他端側に向けて連続して並列に伸びる複数の軸線部40を有しているので、上述したように、ステント回収時や位置修正時等の際に、ステント10が引っ張られた場合であっても、ステント10全体の構造を変形させにくくして、保形性能を高めることができる。なお、ステントが線材を編み組みした構造である場合や、軸線部を有しない構造の場合、ステントの引っ張り時にステント構造が変形しやすいという問題がある。
図7には、本発明に係るステントの第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント10Aは、軸線部の配置が前記実施形態と異なっている。図7の展開図に示すように、この実施形態における軸線部40Aは、ステント10Aの軸方向の一端側から他端側に向けて、ステント10Aの軸方向Cに対して螺旋形状をなすように連続的に延びており、これが互いに平行となるように複数並列して設けられている。
また、図7に示すように、所定の軸線部40A,40Aの間に配置された各ストラット部50は、周方向の一方側又は他方側に隣接する他の軸線部40A,40Aの間に配置された各ストラット部50に対して、軸線部40Aの延びる方向(螺旋状に延びる方向)に位置ずれして軸線部40Aに連結されている。
なお、図7に示すように、ステント10Aの軸方向Cに対する、各軸線部40Aの角度θは、10〜80°であることが好ましく、20〜70°であることがより好ましい。
そして、この実施形態においては、軸線部40Aは、ステント10Aの軸方向に対して螺旋形状をなすように設けられているので、軸線部が直線状に延びるものと比べて(第1実施形態)、ステント10Aが曲がるときの柔軟性を高めることができ、例えば、ステント10Aを収納した医療用チューブを屈曲した管状器官に進行させる際や、屈曲した管状器官にステント10Aを留置する際に、ステント10Aをキンク(折れ曲がり)しにくくさせることができる。
図8には、本発明に係るステントの第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント10Bは、前記第2実施形態と同様に、軸線部40Bがステント10Bの軸方向Cに対して螺旋形状をなすように連続的に延びていると共に、各軸線部40Bが蛇行して延びた形状をなしている。
すなわち、隣接して配置された軸線部40B,40Bは、互いの間隔が広がる部分L1と、互いの間隔が狭まる部分L2とが、軸線部40Bの延びる方向に向けて、交互に繰り返されるように屈曲して、蛇行したような形状に形成されている。
また、各軸線部40Bは、間隔が広がる部分L1を構成する第1線状部44と、間隔が狭まる部分L2を構成する第2線状部45と、両線状部44,45の端部どうしを連結する斜めに延びる斜線状部46とから構成されている。
各ストラット部50は、その両端部53,53が、軸線部40B,40Bの、斜線状部46,46に連結されており(図8参照)、ステント10Bが縮径して、各ストラット部50の両側部が閉じた状態において、軸線部40B,40Bの、互いに間隔が広がる部分L1の内側に、各ストラット部50がそれぞれ配置されるようになっている。
また、この実施形態のように、軸線部が蛇行している場合における「軸線部の延びる方向」とは、少なくとも、隣接する軸線部における、互いの間隔が広がる部分L1を形成する線分(ここでは第1線状部44)が延びる方向を意味し、この線分を含むものであれば、本実施形態の軸線部に含まれ、例えば、軸線部がジグザグ状に蛇行するような、ステントの周方向に延びる線分を有するものも含まれる。なお、この実施形態では、互いの間隔が広がる部分L1を形成する第1線状部44と、互いに間隔を狭まる部分L2を形成する第2線状部45との延びる方向が同一向きとなっている。
更に、図8においてはステント10Bの展開図が示されているが、ステント10Bが筒状をなしている場合は、隣接して配置された軸線部40B,40Bの、互いの間隔が広がる部分L1と、互いの間隔が狭まる部分L2とが、軸線部40Bの延びる方向に対して直交する方向に交互に設けられた構造となっている。
なお、このステント10Bにおいては、ステント10Bの周方向中央に配置された軸線部40Bの、延びる方向の中央にマーカー43が配置されているが、並列して配置された他の軸線部40Bにマーカー43を設けて、ステント10Bの周方向に複数個のマーカー43を配置してもよく、特に限定はない。
そして、この実施形態においては、隣接する軸線部40B,40Bは、互いの間隔が広がる部分L1と、互いの間隔が狭まる部分L2とが、軸線部40Bの延びる方向に向けて交互に繰り返されるように屈曲して形成されているので、軸線部40Bの延びる長さを長く確保することができ、体内組織との接触面積を大きく確保して、所定位置にしっかりと留置することができる。また、軸線部40Bが軸方向成分だけでなく、周方向成分を持つことになるので、ステント10Bを拡径させて、体内組織(胆管3等)を拡張させたときの保持力を高めることができる。更にステント10Bを縮径させたときに、ストラット部50が、隣接する軸線部40B,40Bの、互いの間隔が広がる部分L1の内側に配置されるので、ステント10Bをより縮径させやすくすることができる。
図9〜13には、本発明に係るステントの第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント20は、前記第1実施形態に対して、各ストラット部50の頂部51の向きが、逆向きの構造となっている以外は、すべて同様の構造をなしている。したがって、ステント本体30の構造や態様、軸線部40の構造や態様、ストラット部50の構造や態様、ステント本体30の材質、ステント10がカバーで覆われた構造、ステント10の使用方法等は、すべて第1実施例のステント10と同様である。すなわち、上記の第1実施形態の説明において、「ステント10」という文言は、「ステント20」と読み替えることができる。
すなわち、図11に示すように、この第4実施形態のステント20は、ステント20の軸方向の所定位置、ここではステント20の軸方向の中央位置(マーカー43が設けられた位置)を境界にして、該境界からステント20の軸方向の一端側(一端部31側)に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント20の軸方向の他端側に向いていると共に、前記境界からステント20の軸方向の他端側(他端部33側)に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント20の軸方向の一端側に向いた構造をなしている。
言い換えると、ステント20の境界から軸方向一端側に配置された各ストラット部50の頂部51と、前記境界から軸方向他端側に配置された各ストラット部50の頂部51との双方が共に、ステント20の軸方向内方に向けて、かつ、互いに反対方向となるように配置されている。
なお、後述する第5〜第8実施形態も、第4実施形態と同様に、前記第1〜第3実施形態に対して、各ストラット部50の頂部51の向きが、逆向きの構造となっている。
そして、この第4実施形態のステント20は、例えば、図12に示すような箇所に留置することができる。すなわち、図12に示すように、十二指腸1の下部からは乳頭2を介して胆管3や膵管4が分岐して伸びており、また、肝臓5により生成される胆汁は、肝内胆管3aを介して胆管3(総胆管)へと供給されるようになっている。
この実施形態のステント20は、乳頭2を迂回して胆汁を十二指腸1へと供給するために、十二指腸1と胆管3との間にステント20を留置してバイパスしたり(内瘻を造成する)、或いは、胆汁を胃6へ供給するために、胃6と肝内胆管3aとの間にステント20を留置してバイパスしたりすることができる。
例えば、十二指腸1と胆管3との間にステント20をバイパスする場合には、ステント20を医療用チューブ内に収容後、穿刺針で十二指腸1や胆管3を穿刺して、それらにガイドワイヤを架け渡し、その後、ダイレータ等で穿刺孔を拡径させる。そして、ガイドワイヤを介して医療用チューブを挿入し、その先端部を胆管3内に留置した後、プッシャ等でチューブ先端からステント20を解放することで、十二指腸1と胆管3との間にステント20をバイパスすることができる(図12参照)。
一方、胃6と肝内胆管3aとの間にステント20をバイパスする場合も、上記と類似した手順で行うことができる。すなわち、穿刺針で胃6や肝内胆管3aを穿刺して、それらにガイドワイヤを架け渡した後、ダイレータ等で穿刺孔を拡径させる。そして、ガイドワイヤを介して医療用チューブを挿入し、その先端部を肝内胆管3a内に留置した後、プッシャ等でチューブ先端からステント20を解放することで、胃6と肝内胆管3aとの間にステント20をバイパスすることができる(図12参照)。
なお、図13には、十二指腸1と胆管3との間にステント20をバイパスさせた場合、及び、胃6と肝内胆管3aとの間にステント20をバイパスさせた場合の、拡大した概略説明図が記載されている。
そして、この実施形態においては、ステント20の軸方向の所定位置を境界にして、該境界からステント20の軸方向の一端側に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント20の軸方向の他端側に向いていると共に、前記境界からステント20の軸方向の他端側に配置された各ストラット部50の頂部51が、ステント20の軸方向の一端側に向いた構造をなしているので、上述したように、隣接する体内組織の間(例えば、十二指腸1と胆管3との間や、胃6と肝内胆管3aとの間等)をバイパスするようにステント20を留置した際に、例えば臓器の蠕動運動などによって、隣接する体内組織が互いに離反する方向に移動するのを、各ストラット部50の頂部51が各体内組織に係合して抑制するため、ステント20がバイパスする体内組織から抜けてしまうことを抑制することができる。
図14には、本発明に係るステントの第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント20Aは、軸方向の所定位置である境界に、所定形状に屈曲した屈曲部47が設けられている。図14に示すように、この実施形態の場合は、ステント20Aの境界である、各軸線部40の延びる方向の中央に、略U字状に屈曲したU字状屈曲部48が、その屈曲部分をステント20の周方向側に向けて、軸線部40の延びる方向に沿って交互に反対方向に配置されて、蛇行するような構造をなしており、該屈曲部47の途中部分にX線不透過性のマーカー43が固着されている。なお、屈曲部としては、上記形状に限らず、略S字状に屈曲していたり、V字状に屈曲していたりしてもよく、特に限定はされない。
この実施形態では、ステント20Aの境界に、所定形状に屈曲した形状をなした屈曲部47が設けられているので、例えば、胃6(図12参照)が蠕動する等して、隣接した体内組織が互いに近接する方向に移動しても、屈曲部47が適宜伸び縮みすることによって、その移動を吸収して、各ストラット部50の頂部51と体内組織との係合を維持して、ステント20Aが体内組織から外れることを防止することができる。また、屈曲部47によってステント20Aをキンクしにくくさせることができる。なお、この実施形態の屈曲部47を有する形状は、図1〜8に示した実施形態のステントにも適用することができる。
図15には、本発明に係るステントの第6実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント20Bは、各ストラット部50が、ステント20Bの外径方向に突出した形状をなしている。具体的には、各ストラット部50の頂部51が、ステント20Bの外径方向から離れるように突出した形状となっている。
そして、この実施形態においては、各ストラット部50が、ステント20Bの外径方向に突出した形状をなしているので、その頂部51を体内組織の内壁に、よりしっかりと係合させることでき、ステント20Bの位置ずれを、より効果的に抑制することができる。
図16には、本発明に係るステントの第7実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント20Cは、その軸線部40Aが、ステント20Cの軸方向の一端側から他端側に向けて、ステント20Cの軸方向Cに対して螺旋形状をなすように連続的に延びており、これが互いに平行となるように複数並列して設けられた構造をなしている(図7の第2実施形態と同様の構造)。したがって、この実施形態では、前記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図17には、本発明に係るステントの第8実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
この実施形態のステント20Dは、軸線部40Bがステント20Dの軸方向Cに対して螺旋形状をなすように連続的に延びていると共に、各軸線部40Bが蛇行して延びた形状をなしている(図8の第3実施形態と同様の形状)。
なお、この実施形態では、前記第3実施形態と同様に、軸線部が蛇行している場合における「軸線部の延びる方向」とは、少なくとも、隣接する軸線部における、互いの間隔が広がる部分を形成する線分が、延びる方向を意味している。更に、図17はステント20D展開図が示されているが、ステント20Dが筒状をなしている場合は、隣接して配置された軸線部40B,40Bの、互いの間隔が広がる部分L1と、互いの間隔が狭まる部分L2とが、軸線部40Bの延びる方向に対して直交する方向に交互に設けられた構造となっている。また、このステント20Dにおいては、ステント20Dの周方向中央に配置された軸線部40Bの、延びる方向の中央にマーカー43が配置されているが、並列した配置された他の軸線部40Bにマーカー43を設けて、ステント20Dの周方向に複数個のマーカー43を配置してもよく、特に限定はない。そして、この実施形態では、前記第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。