JP6924374B2 - 注射器用ガスケットの製造方法 - Google Patents
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Description
方法に関する。
気密性とは、シリンジバレル内の薬液がガスケットとシリンジバレルとの間から外部へ漏れることなく使用でき、外部からシリンジバレル内への異物の侵入を防げることを意味する。低摺動性とは、注射器使用時に、使用者が片手で無理なく操作用ロッド(押し子)でガスケットを移動させられることを意味する。
ところで、ガスケットとシリンジバレル内周面の気密性を高めると、ガスケットがシリンジバレル内を移動する際の摺動抵抗が大きくなり、操作性が悪化する。そのため、たとえばガスケットの外面を低摩擦材料であるフッ素樹脂フィルムでラミネートし、ガスケットの摺動抵抗を下げる方法がある(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
特許文献2では、ラミネートガスケットにおいて、ガスケットの長さ方向中間部に環状凹部を形成し、環状凹部を境に先端側の外径をr1、後端側の外径をr2とし、r1<r2の関係を満たし、かつ、ガスケット先端周縁部の曲率半径RをR≧0.7mmとしたものが提案されている。
特許文献2に記載の技術では、ガスケットの摺動性は改善されるものの、気密性が低下する虞がある。
請求項1記載の発明は、成形するガスケットの外形を規定する凹部を有する上金型及び下金型を用意する工程、上金型及び下金型を開いた状態で、その間に未加硫ゴムシート、ラミネート用の主フィルム及び保護フィルムを下から上へと順に重ねるように配置する工程、並びに上金型及び下金型を閉じて未加硫ゴムシート、主フィルム及び保護フィルムを加圧することにより成形する成形工程、を含み、前記成形工程では、閉じた上金型及び下金型間でプレスされた未加硫ゴムシート、主フィルム及び保護フィルムは、上金型の凹部内に充填されてガスケットの外形が形成され、その状態で未加硫ゴムシートが加硫成形され、ゴムシートの上面に直接接している主フィルムの下面はゴムシートと加硫接着し、保護フィルムの下面は主フィルムの表面に圧接されて保護フィルムの下面の表面粗さが主フィルムの表面に転写され、さらに、前記成形工程での成形完了後、上金型及び下金型を開いて金型から成形品を取り離す脱型工程、並びに成形品から保護フィルムを除去する保護フィルムの除去工程、を含む、注射器用ガスケットの製造方法である。
注射器用ガスケット1は、弾性材で形成された本体2と、本体2の表面にラミネートされた樹脂フィルム3とを含む。
本体2は、弾性材で形成されておればよく、その素材に関しては特に限定されるものではない。例えば、本体2は、熱硬化性ゴムや、熱可塑性エラストマで形成されてもよい。耐熱性に優れることから、熱硬化性ゴムや、熱可塑性エラストマのうち架橋点を有する動的架橋型熱可塑性エラストマが好ましい。これらのポリマー成分も特に限定されるものではなく、強いて言えば、成形性に優れるエチレン−プロピレン−ジエンゴムやブタジエンゴムが好ましい。また、耐ガス透過性に優れるブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムも好ましい。
この実施形態に係るガスケット1は、シリンジバレルの内周面に気密的、液密的に接する環状凸周面部4(4a、4b)を備えている。環状凸周面部4(4a、4b)は、環状の突部を形成しており、本体2の軸方向に見て、先端側から2つの環状凸周面部4a及び4bが、環状凹部5で隔てられて配置されている。
次に、この実施形態に係るガスケット1の製造方法について説明する。
まず、製造方法の説明に先立ち、係る製造方法を発明するに至った背景事情を説明する。
そこで、発明者らは、ガスケットの表面性状を変える方法として、ラミネートするフィルムの上に保護フィルムを重ねて成形することにより、保護フィルムの表面粗さをラミネートしたフィルムの表面に転写できることを見出し、ガスケット及びその製造方法を発明した。
ガスケット1の製造においては、図2(A)に示すように、対をなす上金型11及び下金型12を用意する。上金型11には、成形するガスケットの外形を規定する凹部11aが一定間隔で複数形成されている。下金型12には、上金型の凹部11aに対応する位置に凸ネジ型12aが複数形成されている。これら上金型11及び下金型12を開いた状態で、その間に未加硫ゴムシート13、ラミネート用の主フィルム14及び保護フィルム15を下から上へと順に重ねるように配置する。(成形開始前)
そして、真空雰囲気において上金型11及び下金型12を閉じ、成形を開始する。(図2(B)、成形開始直後)
保護フィルム15を除去した後のガスケット1の表面にラミネートされた主フィルム14の外表面には、保護フィルムの内表面(主フィルム14と当接していた面)の表面粗さが転写されている。
実施例1A、1B、2A、2B、3A、3B、4A、4Bについては、真空プレス成形時に保護フィルムを用いた本発明の製造方法に係る成形を行い、比較例5A、5B、6A、6Bについては、真空プレス成形時に保護フィルムを用いない従来の成形を行った。
実施例1A〜4Bにおいて、保護フィルムは、フィルムBを用いた。フィルムBの表面粗さは、積層時に主フィルムであるフィルムAと対向する面の表面粗さであり、算術平均粗さRaで表して、Ra=0.07またはRa=0.02であるが、これは成形前の表面粗さである。
なお、表面粗さの測定は、下記により行った。
試験機 :レーザーマイクロスコープ[(株)島津製作所製]
試験温度 :室温
倍率 :1000倍
カットオフ値:0.08mm
図3に示すように、シリンジバレル20にテスト液21を封入し、作成したラミネートガスケットを打栓して封をした状態で放置した。
テスト液21:純水
シリンジバレル20:COP製100mLサイズ
放置温度 :40℃
放置時間 :1週間
評価方法 :第1ピーク(第1の環状凸周面部4a)を超えてテスト液が凹部5まで浸入したか否か観察することにより行った。
○ 液無し
Δ 小さな液滴(1mm以下)
× 大きな液滴(1mmを超える)
試験機 :オートグラフ[(株)島津製作所製]
試験温度 :室温
試験速度 :5mm/S
テスト液21:純水
評価方法 :加圧時の荷重を計測する。(図4を参照)
○ 最大荷重:20〜50N
× 最大荷重:上記以外
上記表1に示す試験では、摺動性は、シリンジバレルによってガスケット周面(環状凸周面部4)の表面粗さを変えることが有効というデータを示すことが目的のため、実施例1Aの摺動性40Nを基準にしてそれを1とし、他の実施例1B〜4B及び比較例5A〜6Bは、基準値1に対する比率で示している。
また、上記表1に示す試験結果において、脱型後のガスケットの表面(ラミネートフィルム)に傷が生じている場合は、気密性評価として、傷あり×とした。さらに、成形時にラミネートフィルムに破れが生じた場合は、成形性評価として、破れ×、割れΔとした。
保護フィルムを用いることで、成形性及び気密性が、共に向上していることが理解できる。
上記表1によれば、シリンジバレルAに対するガスケットは、その表面粗さ(環状凸周面部4の表面粗さ)を、算術平均粗さRaで表して、Ra=0.1〜0.11と、比較的大きくするのが望ましい。
本明細書の上記実施形態及び実施例の説明は、注射器用ガスケット1を例にとって説明した。しかし、本発明は、注射器用ガスケット1に限定されるものではなく、表面に樹脂フィルムがラミネートされたゴム製品、例えばゴム栓等に対しても同様に適用できるものである。
2 本体
3 樹脂フィルム
4 環状凸周面部
5 環状凹部
11 上金型
11a 凹部
12 下金型
12a 凸ネジ型
13 未加硫ゴムシート
14 主フィルム
15 保護フィルム
Claims (2)
- 成形するガスケットの外形を規定する凹部を有する上金型及び下金型を用意する工程、
上金型及び下金型を開いた状態で、その間に未加硫ゴムシート、ラミネート用の主フィルム及び保護フィルムを下から上へと順に重ねるように配置する工程、並びに
上金型及び下金型を閉じて未加硫ゴムシート、主フィルム及び保護フィルムを加圧することにより成形する成形工程、を含み、
前記成形工程では、閉じた上金型及び下金型間でプレスされた未加硫ゴムシート、主フィルム及び保護フィルムは、上金型の凹部内に充填されてガスケットの外形が形成され、その状態で未加硫ゴムシートが加硫成形され、ゴムシートの上面に直接接している主フィルムの下面はゴムシートと加硫接着し、保護フィルムの下面は主フィルムの表面に圧接されて保護フィルムの下面の表面粗さが主フィルムの表面に転写され、さらに、
前記成形工程での成形完了後、上金型及び下金型を開いて金型から成形品を取り離す脱型工程、並びに
成形品から保護フィルムを除去する保護フィルムの除去工程、
を含む、注射器用ガスケットの製造方法。 - 前記保護フィルムは、下面の表面粗さが、算術平均粗さRaで表して、Ra=0.02〜0.07の範囲のものを用いる、請求項1に記載の注射器用ガスケットの製造方法。
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