以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、正極と、負極と、非水電解質とを具備する非水電解質電池が提供される。正極は、正極集電体と、正極集電体上に形成された正極層とを含む。正極層は正極活物質を含む。正極活物質は、スピネル型の結晶構造を有し且つ一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるアルミニウム含有マンガン酸リチウムを含む。式中、Mは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn及びGaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0.03≦x<0.22の範囲内にあり、yは0≦y≦0.02の範囲内にあり、0.03≦x+y<0.22の範囲内にある。正極層における正極活物質の含有量は、正極層の重量に対して91重量%以上96重量%未満である。容量C1に対する容量C2の割合が、92%以上99%以下である。容量C1は、非水電解質電池を1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量である。容量C2は、非水電解質電池を2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量である。
鉛蓄電池と並列接続可能な電池は、作動電圧が鉛蓄電池のそれと同等となることが望まれている。鉛蓄電池は、一般的に、6個の鉛蓄電池を直列に接続して構成した組電池として使用される。6直列の鉛蓄電池を含んだ組電池は、劣化状態により電圧範囲が異なるが、通常、11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で使用され得る。
非水電解質電池を5個直列に接続して、6直列の鉛蓄電池を含んだ組電池との優れた電圧適合性を示すことができ且つ高容量の組電池を構成するためには、1個当たり2.3V以上2.7V以下の電圧範囲で高い容量を発現できる非水電解質電池が必要となる。
本発明者らは、このような電池の実現を目指して研究している中で、正極活物質として3.85V(vs.Li/Li+)以上4.25V(vs.Li/Li+)以下の電位範囲に容量を持つリチウムマンガン酸化物を用い、負極活物質として1.50V(vs.Li/Li+)以上1.55V(vs.Li/Li+)以下の電位範囲に容量を持つリチウムチタン酸化物を用いて電池を作製することに着目した。
しかしながら、このようにして作製した非水電解質電池は、リチウムマンガン酸化物の充放電可能な容量が小さく、寿命特性が悪いため、実用化に至らないという課題がある。
本発明者らは、この課題を解決するために研究を続けた結果、第1の実施形態に係る非水電解質電池を実現した。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、以下に説明するように、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲において大きな容量を示すことができ且つ優れた充放電サイクル特性を示すことができる。そのため、第1の実施形態に係る非水電解質電池を5個直列に接続して構成した組電池は、6直列の鉛蓄電池を含んだ組電池の作動電圧範囲と同様の11.5V以上13.5V以下の作動電圧範囲において高い容量を示すことができる。このような組電池は、6直列の鉛蓄電池を含んだ組電池に並列に接続することにより、使用可能な電力量を高くすることができ、鉛蓄電池の負荷の軽減が可能となる。
第1の実施形態に係る非水電解質電池が具備する正極は、スピネル型の結晶構造を有し且つ一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるアルミニウム含有マンガン酸リチウムを含む正極層を含む。このマンガン酸リチウムは、0.03≦x<0.22の範囲内の値をとる添字xで表される量のアルミニウムを含有している。このマンガン酸リチウムは、アルミニウムを上記範囲内の量で含んでいることで結晶構造が安定化し、充放電に伴うリチウムイオンの吸蔵及び放出による結晶構造変化を少なくすることができる。そのおかげで、このマンガン酸リチウムを含んだ正極を具備した第1の実施形態に係る非水電解質電池は、良好な充放電サイクル特性を示すことができる。また、このマンガン酸リチウムは、アルミニウムを上記範囲内の量で含んでいることにより、結晶構造の格子定数が小さくなるため、大電流放電の際、リチウムイオンの優れた受け入れ性を示すことができる。
また、正極層が含むアルミニウム含有マンガン酸リチウムは、アルミニウムを含有していないマンガン酸リチウムに比べて、高い作動電圧を示すことができる。
そして、第1の実施形態に係る非水電解質電池の正極層は、このようなアルミニウム含有マンガン酸リチウムを含んだ正極活物質を、正極層の重量に対して91重量%以上96重量%未満の含有量で含む。正極活物質の含有量が高い正極は、導電率が低いため、大電流放電の際の負荷が大きくなり、劣化が進行しやすい。一方、0.03≦x<0.22の範囲内の値をとる添字xで表される量でアルミニウムを含むマンガン酸リチウムは、先にも説明したが、大電流放電の際にリチウムイオンの優れた受け入れ性を示すことができる。そのため、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、優れた充放電サイクル特性を維持しながら、高いエネルギー密度を発揮することができる。
更に、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、良好な充放電サイクル特性及び高い出力特性を示すことができると共に、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲において大きな容量を示すことができる。具体的には、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、容量C1に対する容量C2の割合が92%以上99%以下である。ここで、容量C1は、非水電解質電池を1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量であり、容量C2は、非水電解質電池を2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量である。
具体例として、図1に、第1の実施形態に係る一例の非水電解質電池の充電曲線を示す。図1では、1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量を容量C1として記載している。また、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量を容量C2として記載している。図1に示した充電曲線では、容量C2の容量C1に対する割合(すなわち、(C2×100)/C1)が95%であり、92%以上99%以下の範囲内にある。
このように、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、容量C1に対する容量C2の割合が92%以上99%以下であるため、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲、言い換えると下限電圧と上限電圧との差が0.4Vである狭い電圧範囲で作動した際にも大きな容量を充放電することができる。
このような第1の実施形態に係る非水電解質電池を5個直列に接続して構成した組電池は、11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で大きな容量を充放電することができる。この組電池は、6直列の鉛蓄電池を含んだ組電池と同様の作動電圧範囲を示すことができるので、鉛蓄電池を含む組電池と並列接続したバッテリーシステムにおいて、鉛蓄電池の負荷を低減することができる。
また、先に説明したように、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、それ自体が、良好な充放電サイクル特性及び高出力特性を示すことができる。
したがって、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。
容量C2(2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量)の容量C1(1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量)に対する割合が92%未満である非水電解質電池の一例は、1.5Vの電圧から2.3Vの電圧まで充電した際の充電容量C1.5-2.3が容量C1に対して大き過ぎる非水電解質電池である。このような非水電解質電池から構成された組電池と鉛蓄電池から構成された組電池とを並列に接続して構成したバッテリーシステムは、高い容量を得ようとして放電すると、バッテリーシステム全体の電圧が、鉛蓄電池の劣化が進行する電圧まで低下し、鉛蓄電池が過放電状態となる。そのため、このようなバッテリーシステムは、高いエネルギー密度と優れた充放電サイクル特性とを両立することができない。
容量C2の容量C1に対する割合が92%未満である他の例の非水電解質電池は、2.7Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量C2.7-3が容量C1に対して大き過ぎる非水電解質電池である。このような非水電解質電池から構成された組電池と鉛蓄電池から構成された組電池とを並列に接続して構成したバッテリーシステムは、大きな電気量が入力されると、バッテリーシステム全体の電圧が、鉛蓄電池の劣化が進行する電圧まで上昇し、鉛蓄電池が過充電状態となる。そのため、このようなバッテリーシステムは、高いエネルギー密度と優れた充放電サイクル特性とを両立することができない。
容量C2の容量C1に対する割合が92%未満である更に他の例の非水電解質電池は、容量C2が小さ過ぎる非水電解質電池であり得る。このような非水電解質電池から構成された組電池と鉛蓄電池から構成された組電池とを並列に接続して構成したバッテリーシステムは、高い容量を得ようとすれば鉛蓄電池が過放電状態となり、大きな電気量が入力されると、鉛蓄電池が過充電状態となる。そのため、このようなバッテリーシステムも、高いエネルギー密度と優れた充放電サイクル特性とを両立することができない。
一方、容量C2の容量C1に対する割合が99%よりも大きい非水電解質電池は、電圧が略均一である充電状態の範囲が広過ぎる。このような非水電解質電池は、充電の際の電圧制御及び放電の際の電圧制御が困難であり、充放電の実施が難しい。例えば、このような非水電解質電池を充電に供すると、充電終止で充電を止めることが難しく、電池の劣化を抑えることができない。
容量C1に対する容量C2の割合は93%以上97%以下であることが好ましく、94%以上96%以下であることがより好ましい。
添字xの値が0.03未満である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるマンガン酸リチウムは、アルミニウムの含有量が少な過ぎるため、充放電サイクルに伴い、結晶構造が大きく変化する。そのため、このようなマンガン酸リチウムは、優れた充放電サイクル特性を実現することができない。一方、添字xの値が0.22以上である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるマンガン酸リチウムは、アルミニウムの含有量が多過ぎるため、エネルギー密度が低い。そのため、このようなマンガン酸リチウムを用いて作製した非水電解質電池は、充放電可能な容量が低下する。また、マンガン酸リチウムが添字xの値が0.22よりも大きくなるようにアルミニウムを含んでも、充放電サイクル特性が更に改善する効果は期待できない。
アルミニウム含有マンガン酸リチウムについての一般式における添字xの値は0.1≦x<0.22の範囲内にあることが好ましい。添字xの値がこの範囲内にあると、より優れた充放電サイクル寿命特性を発揮することができる。添字xの値は、0.15≦x<0.22の範囲内にあることがより好ましい。容量の観点からは、添字xの値は、0.15≦x≦0.17の範囲内にあることが好ましい。
正極層が含むアルミニウム含有マンガン酸リチウムは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn及びGaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素Mを更に含むことができる。
アルミニウム含有マンガン酸リチウムにおける金属元素Mの含有量は添字yで表され、添字yは0≦y≦0.02の範囲内にある。さらに、アルミニウム含有マンガン酸リチウムにおけるアルミニウムの含有量を表す添字xと金属元素Mの含有量を表す添字yとの和x+yが、0.03≦x+y<0.22を満たす。和x+yの値が0.22以上である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるマンガン酸リチウムは、アルミニウム及び金属元素Mの合計の含有量が多過ぎるため、エネルギー密度が低い。和x+yは、0.1≦x+y<0.22を満たすことが好ましい。和x+yの値がこの範囲内にあると、より優れた充放電サイクル寿命特性を発揮することができる。和x+yは、0.15≦x+y<0.22を満たすことがより好ましい。容量の観点からは、和x+yは、0.15≦x+y≦0.17の範囲内にあることが好ましい。
正極活物質は、アルミニウム含有マンガン酸リチウム以外の他の正極活物質を含むこともできる。
正極層における正極活物質の含有量が正極層の重量に対して91重量%未満である正極を具備する非水電解質電池は、充放電できる容量が少なく、高いエネルギー密度を示すことができない。一方、正極層における正極活物質の含有量が正極層の重量に対して96重量%以上である正極は、高いエネルギー密度を実現することができるものの、導電剤の量が少なく、高抵抗となる。そのため、このような正極を具備する非水電解質電池は、充放電に伴う劣化が大きく、充放電サイクル特性に劣る。
正極層における正極活物質の含有量は、正極層の重量に対して、93重量%以上96重量%未満であることが好ましい。正極層における正極活物質の含有量がこの範囲内である場合、エネルギー密度とサイクル寿命特性とのより優れたバランスを発揮することができる。正極層における正極活物質の含有量は、正極層の重量に対して、94重量%以上95重量%以下であることがより好ましい。
なお、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、先に説明したように、1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量C1を100%とした場合に、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧までという狭い電圧範囲における充電容量C2が92%以上99%以下である。一方、通常の電池の開発においては、出力及び容量を高めるために、広い電圧範囲で高い容量を示すことができるように設計を行う。そのため、優れた充放電サイクル特性及び高い出力を実現させながら、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧までという狭い電圧範囲で高い容量を得るという着想がなければ、第1の実施形態に係る非水電解質電池を実現することはできない。
具体的には、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、以下に示す実施例に示した方法により製造することができる。
次に、第1の実施形態に係る非水電解質電池をより詳細に説明する。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、正極と、負極と、非水電解質とを具備する。
正極は、正極集電体と、この正極集電体上に形成された正極層とを含む。
正極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅などの金属箔を使用することができる。
正極層は、正極集電体の片面に形成されていてもよいし、正極集電体の両面に形成されていてもよい。正極集電体は、表面に正極層が形成されていない部分を含むことができ、この部分は例えば正極リードとして働くことができる。
正極層は正極活物質を含む。正極活物質は、先に説明したアルミニウム含有マンガン酸リチウムを含む。
先に説明したように、正極活物質は、アルミニウム含有マンガン酸リチウム以外の正極活物質を含むこともできる。すなわち、正極活物質は、第1の正極活物質としてのアルミニウム含有マンガン酸リチウムと、アルミニウム含有マンガン酸リチウム以外の第2の正極活物質を含むことができる。第2の正極活物質としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)及びリチウムコバルト酸化物(例えば、LiCoO2)を挙げることができる。正極層におけるアルミニウム含有マンガン酸リチウムの含有量は、正極層の重量に対して60重量%以上96重量%未満であることが好ましい。正極層におけるアルミニウム含有マンガン酸リチウムの含有量は、70重量%以上96重量%以下であることがより好ましい。
正極層は、導電剤を更に含むことができる。正極層が含むことができる導電剤は、カーボン材料を含むことが好ましい。カーボン材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケチェンブラック、ファーネスブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。正極層は、上記カーボン材料のうち1種若しくは2種以上を含むことができるし、又は他の導電剤を更に含むこともできる。
また、正極層は結着剤を更に含むこともできる。正極層が含むことができる結着剤は、特に限定されない。例えば、結着剤として、スラリー調製用の混合用溶媒によく分散するポリマーを用いることができる。このようなポリマーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン及びポリテトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
正極層における正極活物質の含有量は、先に説明したように、正極層の重量に対して、91重量%以上96重量%未満である。また、正極における導電剤及び結着剤の含有量は、それぞれ正極層の重量に対し、3重量%以上6重量%以下及び1重量%以上3重量%以下であることが好ましい。導電剤及び結着剤をこの範囲内の量で含むことにより、より高い容量を実現することができると共に、正極層の剥がれによるサイクル低下を防ぐことができる。
正極層の密度は、2.6g/cm3以上3.3g/cm3未満であることが好ましい。正極層の密度がこの範囲内にあると、低抵抗で良好なサイクル特性を示すことができる。これは、この範囲内にある密度を有する正極層は、非水電解質を内部に含浸する空隙を十分に有することができると共に、導電パスを十分に保持することができるからである。正極層の密度は、2.8g/cm3以上3.1g/cm3未満であることがより好ましい。
正極は、例えば、以下の方法によって作製することができる。まず、アルミニウム含有マンガン酸リチウムと、任意の他の活物質と、任意の導電剤と、任意の結着剤とを適切な溶媒に投入して、混合物を得る。続いて、得られた混合物を撹拌機に投入する。この撹拌機において、混合物を撹拌して、スラリーを得る。かくして得られたスラリーを、上記正極集電体上に塗布し、これを乾燥させて、次いでプレスすることによって、正極を作製することができる。
負極は、負極集電体と、この負極集電体上に形成された負極層とを含むことができる。
負極集電体としては、例えば、アルミニウム、銅などの金属箔を使用することができる。
負極層は、負極集電体の片面に形成されていてもよいし、又は負極集電体の両面に形成されていてもよい。
負極集電体は、表面に負極活物質含有層が形成されていない部分を含むことができ、この部分は負極リードとして働くことができる。
負極層は、例えば、負極活物質と、導電剤と、結着剤とを含むことができる。
負極層が含むことができる負極活物質は、特に限定されない。例えば、負極活物質としては、黒鉛質材料若しくは炭素質材料(例えば、黒鉛、コークス、炭素繊維、球状炭素、熱分解気相炭素質物、樹脂焼成体など)、カルコゲン化合物(例えば、二硫化チタン、二硫化モリブデン、セレン化ニオブなど)、軽金属(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金、リチウム、リチウム合金など)、チタン酸化物(例えば、スピネル型のチタン酸リチウム)などを挙げることができる。
負極活物質は、リチウム吸蔵及び放出電位が1.5V(vs.Li/Li+)以上であるチタン含有酸化物を含むことが好ましい。このようなチタン含有酸化物としては、例えば、スピネル型のチタン酸リチウム(例えば、Li4Ti5O12)、単斜晶型二酸化チタン(TiO2(B))、及びニオブチタン複合酸化物(例えば、Nb2TiO7)が挙げられる。
負極活物質は、スピネル型の結晶構造を有するチタン酸リチウムを含むことがより好ましい。スピネル型チタン酸リチウムを含む負極は、リチウムの吸蔵放出に伴う体積変化が非常に小さい。そのため、スピネル型チタン酸リチウムを含む負極を具備した非水電解質電池は、更に優れた充放電サイクル特性を示すことができる。
負極層が含むことができる導電剤及び結着剤は、正極層が含むことができるそれらと同様のものを用いることができる。
負極層における各材料の含有量は、それぞれ負極層の重量に対し、負極活物質は89重量%以上97重量%以下、導電剤は2重量%以上8重量%以下、結着剤は1重量%以上3重量%以下であることが好ましい。各材料の含有量がこの範囲内にある負極層は、より優れた容量、ひいてはより高いエネルギー密度を示すことができる。また、負極層の各材料の含有量がこの範囲内にある負極は、導電パスを十分に形成することができると共に、負極層の剥がれを防ぐことができ、これらの結果、より優れた充放電サイクル寿命特性を提供することができる。
負極層の密度は、2.0g/cm3以上3.0g/cm3未満であることが好ましい。負極層の密度がこの範囲内にあると、低抵抗で良好なサイクル特性を示すことができる。これは、この範囲内にある密度を有する負極層は、非水電解質を内部に含浸する空隙を十分に有することができると共に、導電パスを十分に保持することができるからである。
負極は、例えば、以下の手順により作製することができる。まず、負極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合する。かくして得られた混合物を溶媒に投入してスラリーを調製する。このスラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させ、次いでプレスする。かくして、負極を作製することができる。
正極及び負極は、正極層と負極層とを間にセパレータを介在させて対向させて、電極群を形成することができる。セパレータは、特に限定されるものではなく、例えば、微多孔性の膜、織布、不織布、これらのうち同一材または異種材の積層物などを用いることができる。セパレータを形成する材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合ポリマー、エチレン−ブテン共重合ポリマー、セルロースなどを挙げることができる。
このようにして形成される電極群の構造は、特に限定されない。例えば、電極体はスタック構造を有することができる。スタック構造は、先に説明した正極及び負極を間にセパレータを挟んで積層した構造を有する。或いは、電極群は捲回構造を有することができる。捲回構造は、先に説明した正極及び負極を間にセパレータを挟んで積層し、かくして得られた積層体を渦巻状に捲回した構造である。
非水電解質は、例えば、電極群に含浸され得る。
非水電解質は、非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより調製することができる。
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチルテトラヒドロフランなどを挙げることができる。1種類の非水溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の非水溶媒を混合して調製した混合溶媒を使用してもよい。
電解質は、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)などのリチウム塩を挙げることができる。1種類の電解質の単独で使用してもよいし、2種以上の電解質の混合物を使用してもよい。
電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5mol/L〜3mol/Lとすることが望ましい。電解質の濃度が低過ぎると十分なイオン導電性を得ることができない場合がある。一方、電解質の濃度が高過ぎると、電解質が電解液に完全に溶解できない場合がある。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、上記電極群及び非水電解質を収納するための容器を更に具備することができる。
容器としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄(Fe)、アルミニウム含有ラミネートフィルム、ニッケル(Ni)めっきした鉄、ステンレス鋼(SUS)などを用いることができる。
また、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、上記正極リードに電気的に接続された正極集電タブ、及び、上記負極リードに電気的に接続された負極集電タブを更に具備することもできる。正極集電タブ及び負極集電タブは、上記容器の外に引き出されて、正極端子及び負極端子として働くこともできる。或いは、正極集電タブ及び負極集電タブは、正極端子及び負極端子のそれぞれに接続することもできる。
正極集電タブ、負極集電タブ、正極端子及び負極端子は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成することが望ましい。
<充電容量の測定方法>
次に、非水電解質電池についての、充電容量C2の充電容量C1に対する割合の算出方法を説明する。
まず、測定対象の非水電解質電池を準備する。準備をした非水電解質電池の電圧を、市販のテスター(例えばデジタルマルチメーター DT4281 日置電機)で測定する。
次に、測定対象の非水電解質電池の電圧を1.500Vに調整する。具体的には、先に測定した電圧に応じて、以下の手段で調整を行う。非水電解質電池の電圧が1.499V未満である場合、この非水電解質電池を、25℃の環境温度において、電池電圧が1.500Vに達するまで、0.1Aの定電流値で充電する。一方、非水電解質電池の電圧が1.501Vより高い場合、この非水電解質電池を、25℃の環境温度において、電池電圧が1.500Vに達するまで、0.1Aの定電流値で放電する。電池電圧が1.499V以上から1.501V以下の範囲内である場合は、充電又は放電による電池電圧の調整は行わない。
次に、この非水電解質電池を、電池電圧が3.0Vに達するまで、0.1Aの電流値で充電する。この際に充電された電気量を、測定対象の非水電解質電池の基準レート:1Cとする。
次に、基準レートを測定した非水電解質電池を、同じく25℃の環境温度において、電池電圧が1.5Vになるまで0.2Cレートで放電する。続いて、この非水電解質電池を、同じく25℃の環境温度において、0.2Cレートで電池電圧が3.0Vに達するまで充電する。この充電による非水電解質電池の充電容量及び電圧の変化を、充電曲線として記録する。得られた充電曲線から、1.5Vの電圧から3.0Vの電圧まで充電した際の充電容量C1及び2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量C2を求めることができる。得られた充電容量C1及びC2から、充電容量C1を100%とした際の充電容量C2の割合を算出することができる。
<正極層における正極活物質の含有量の測定方法>
非水電解質電池に含まれている正極層における正極活物質の含有量は、以下の手順で測定することができる。
1.非水電解質電池の解体
まず、事前準備として、電極及び非水電解質に直接触れないように、手袋を着用する。
次に、電池の構成要素が解体時に大気成分や水分と反応することを防ぐために、非水電解質電池をアルゴン雰囲気のグローブボックスに入れる。
このようなグローブボックス内で、非水電解質電池を開く。例えば、正極集電タブ及び負極集電タブのそれぞれの周辺にあるヒートシール部を切断して、非水電解質電池を切り開くことができる。
切り開いた非水電解質電池から、電極群を取り出す。取り出した電極群が正極リード及び負極リードを含む場合は、正負極を短絡させないように注意しながら、正極リード及び負極リードを切断する。
次に、電極群を解体し、正極、負極及びセパレータに分解する。かくして得られた正極及び負極をエチルメチルカーボネートを溶媒として用いて洗浄する。
洗浄後、正極及び負極を真空乾燥に供する。或いは、アルゴン雰囲気下での自然乾燥に供しても良い。
2.熱重量測定(Thermo Gravimetry:TG)
乾燥させた正極から、正極層を、例えばスパチュラを用いて剥がす。
剥がした正極層における正極活物質含有量を、熱重量測定装置(例えば、島津製作所製DTG−60/60H)を用いて、以下の手順で測定する。
まず、測定に供するサンプル重量を測定する。次に、測定室内のエアフローを 100mL/minとし、昇温速度:5℃/min、測定温度範囲:30〜850℃として、熱重量測定を実施する。結着剤(例えばポリマー材料)、導電剤(例えばカーボン材料)は、活物質に比べて燃焼温度が低く、試験開始2時間後の600℃付近までに全て燃焼する。そして、結着剤及び導電剤がそれぞれ燃焼して生じた物質は、エアフローにより、燃焼室から排出される。そのため、試験後のサンプルの重量は、試験前のサンプルの重量に比べ、結着剤及び導電剤の重量だけ減少する。試験後のサンプル重量を試験前のサンプル重量で割ることで、正極層における活物質の含有量を、正極層の重量に対する重量割合として算出することができる。
<負極層における負極活物質の含有量の測定方法>
負極層における負極活物質の含有量は、正極活物質と同様の手順で測定することができる。
例えば、負極層が負極活物質としてチタン酸リチウムを含んでいた場合、熱重量測定後のサンプルの重量は、熱重量測定前のサンプルの重量よりも、結着剤及び導電剤の分のみ減少する。そのため、測定前後の重量により負極層における負極活物質の含有量を負極層に対する重量割合として算出することができる。
<正極活物質及び負極活物質の組成の同定方法>
非水電解質電池に含まれている正極活物質及び負極活物質の組成及び結晶構造は、以下の手順で同定をすることができる。
1.非水電解質電池の解体
非水電解質電池に含まれている正極層における正極活物質の含有量の測定の説明で述べたのと同様の手順で、非水電解質電池を解体し、正極及び負極を取り出し、それぞれ洗浄及び乾燥に供する。
2.誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析
乾燥させた正極から、正極層を、例えばスパチュラを用いて剥がす。
剥がした正極層を酸加熱処理し、結着剤及び導電剤を取り除く。かくして得られた試料に対し、ICP測定を実施する。
測定対象元素は、Li、Al、Mn、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Hf、K、La、Mg、Na、Ni、Pb、Si、Ti、Y、Zn及びZrとする。測定結果から各元素のモル分率を算出することで、正極活物質の全体の組成を同定することができる。
負極活物質についても、同様の測定を行うことで、組成を同定することができる。
3.X線回折(X-ray Diffraction:XRD)測定
乾燥させた正極についてXRD測定を実施する。回折角(2θ)の範囲を10°から90°とし、0.02°ずつX線回折強度を測定する。かくして、XRD測定結果が得られる。
一方、ICP分析による組成の同定結果に基づき、データベースから、活物質組成から推定される活物質の固有ピークのパターンを推定する。
推定したX線パターンと、実測のX線パターンとを比較することにより、正極層に含まれている正極活物質の結晶構造を同定することができる。負極活物質についても、同様の測定を行うことで、組成を同定することができる。
4.走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)観察、エネルギー分散型X線分光法(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy: EDX)及び電子エネルギー損失分光法(Electron Energy−Loss Spectroscopy: EELS)による分析
正極層が複数種類の正極活物質を含んでいる場合、上記XRD測定によって得られる実測のX線パターンは、複数種類の正極活物質に由来するピークを含む。各活物質に由来するピークは、他の活物質に由来するピークと重なる場合もあれば、重ならない場合もある。ピークが重ならない場合は、上記XRD測定及びICP分析により、正極に含まれる各正極活物質の組成及び混合比を知ることができる。
一方、ピークが重なる場合は、SEM観察、EDX分析及びEELS分析により、正極に含まれる各正極活物質の組成及び混合比を決定する。具体的には、以下のとおりである。
まず、乾燥させた正極から、カッターなどで約2cm×2cmの断片を切り出す。切り出した断片の断面に、加速電圧2〜6kVで加速したアルゴンイオンを照射して、平坦な断面を得る。
次に、EDX及びEELSを付属したSEMを用いて、正極断面に含まれる幾つかの活物質粒子の組成を分析する。EDXでは、B〜Uまでの元素の定量分析をすることができる。Liについては、EELSによって定量分析することができる。かくして、正極層に含まれる各正極活物質の組成を知ることができる。
次いで、正極活物質の全体の組成と各正極活物質の組成とから、正極における正極活物質の混合比を知ることができる。
負極層が複数種類の負極活物質を含んでいる場合も、正極活物質についての手順と同様の手順を踏むことにより、各負極活物質の組成及び混合比を知ることができる。
<正極層及び負極層の密度の測定方法>
正極層の密度は、以下の手順で測定することができる。
まず、先に説明した手順で非水電解質電池を解体し、解体した電池から正極を取り出す。次いで、取り出した正極の厚みを、厚み測定機を用いて計量する。次に、裁断機を用いて1cm×1cmサイズに正極を打ち抜き、1cm×1cmサイズの試料を得る。この試料の重量を測定する。
次に、試料から、正極層を剥がす。例えば、試料をN−メチルピロリドンに浸漬することによって、正極層を剥がすことができる。正極層を剥がす溶媒としては、正極集電体を侵食せず且つ正極層を剥がすことができるものであれば、何を使用しても構わない。試料として残った正極集電体の試料の厚さ及び重量を測定する。
次に、正極の厚みから正極集電体の厚みを減じ、正極層の厚みを算出する。また、1cm×1cmサイズの試料の重量から正極集電体の試料の重量を減じ、1cm×1cmのサイズの正極層の重量を算出する。次いで、1cm×1cmのサイズの正極層の重量を正極層の厚みで除することにより、正極層の密度(単位:g/cm3)を算出することができる。
負極層の密度は、正極層の密度を得るための手順と同様の手順で得ることができる。
次に、図面を参照しながら、第1の実施形態に係る非水電解質電池の例を具体的に説明する。
図2は、第1の実施形態に係る一例の非水電解質電池の概略切欠き斜視図である。図3は、図2の非水電解質電池が具備する1つの正極の一部切欠き平面図である。図4は、図2に示すA部の概略断面図である。
図2〜図4に示す第1の例の非水電解質電池1は、図2及び図4に示す電極群2と、図2及び図4に示す容器3と、図2及び図4に示す正極集電タブ4と、図2に示す負極集電タブ5とを具備している。
図2及び図4に示す電極群2は、複数の正極6と、複数の負極7と、1枚のセパレータ8とを備える。
正極6は、図3及び図4に示すように、正極集電体61と、この正極集電体61の両面に形成された正極層62とを備えている。また、図3及び図4に示すように、正極集電体61は表面に正極層62が形成されていない部分63を含んでおり、この部分63は正極リードとして働く。図3に示すように、正極リード63は、正極層62よりも幅の狭い狭小部となっている。
負極7は、図4に示すように、負極集電体71と、この負極集電体71の両面に形成された負極層72とを備えている。また、図示はしていないが、負極集電体71は表面に負極活物質含有層72が形成されていない部分を含んでおり、この部分は負極リードとして働く。
図4に示すように、セパレータ8は九十九折にされている。九十九折にされたセパレータ8の互いに対向する面によって規定される空間には、正極6又は負極7がそれぞれ配置されている。それにより、正極6と負極7とは、図4に示すように、正極層62と負極層72とがセパレータ8を間に介在させて対向するように積層されている。かくして、電極群2が形成されている。
電極群2の正極リード63は、図4に示すように、電極群2から延出している。これらの正極リード63は、図4に示すように、1つにまとめられて、正極集電タブ4に接続されている。また、図示はしていないが、電極群2の負極リードも電極群2から延出している。これらの負極リードは、図示していないが、1つにまとめられて、図2に示す負極集電タブ5に接続されている。
このような電極群2は、図2及び図4に示すように、容器3に収納されている。
容器3は、アルミニウム箔31とその両面に形成された樹脂フィルム32及び33とからなるアルミニウム含有ラミネートフィルムから形成されている。容器3を形成するアルミニウム含有ラミネートフィルムは、折り曲げ部3dを折り目として、樹脂フィルム32が内側を向くように折り曲げられて、電極群2を収納している。また、容器3は、図2及び図4に示すように、その周縁部3bにおいて、正極集電タブ4を挟み込んでいる。同様に、容器3は、周縁部3cにおいて、負極集電タブ5を挟み込んでいる。それにより、正極集電タブ4及び負極集電タブ5は、容器3から、互いに反対の向きに延出している。
容器3は、正極集電タブ4及び負極集電タブ5を挟み込んだ部分を除くその周縁部3a、3b及び3cが、互いに対向した樹脂フィルム32の熱融着によりヒートシールされている。
また、非水電解質電池1では、正極集電タブ4と樹脂フィルム32との接合強度を向上させるために、図4に示すように、正極集電タブ4と樹脂フィルム32との間に絶縁フィルム9が設けられている。また、周縁部3bにおいて、正極集電タブ4と絶縁フィルム9とが熱融着によりヒートシールされており、樹脂フィルム32と絶縁フィルム9とが熱融着によりヒートシールされている。同様に、図示していないが、負極集電タブ5と樹脂フィルム32との間にも絶縁フィルム9が設けられている。また、周縁部3cにおいて、負極集電タブ5と絶縁フィルム9とが熱融着によりヒートシールされており、樹脂フィルム32と絶縁フィルム9とが熱融着によりヒートシールされている。すなわち、図2〜図4に示す非水電解質電池1では、容器3の周縁部3a、3b及び3cの全てが熱シールされている。
容器3は、図示していない非水電解質を更に収納している。非水電解質は、電極群2に含浸されている。
図2〜図4に示す非水電解質電池1では、図2に示すように、電極群2の最下層に複数の正極リード63をまとめている。同様に、図示していないが、電極群2の最下層に複数の負極リードをまとめている。しかしながら、例えば図5に示すように、電極群2の中段付近に複数の正極リード63及び複数の負極リード73を、それぞれ1つにまとめて、正極集電タブ4及び負極集電タブ5のそれぞれに接続することもできる。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、正極層が、スピネル型の結晶構造を有し且つ一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるアルミニウム含有マンガン酸リチウムを、正極層の重量に対して91重量%以上96重量%未満の含有量で含む。また、容量C1に対する容量C2の割合が92%以上99%以下である。この非水電解質電池は、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧までの電圧範囲で高い容量を示すことができると共に、優れた充放電サイクル特性及び高エネルギー密度を示すことができる。このような非水電解質電池を用いて構成した組電池は、鉛蓄電池を含んだ電池との電圧適合性に優れる。よって、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、組電池が提供される。この組電池は、電気的に直列に接続された5個の非水電解質電池を具備する。5個の非水電解質電池の各々は、第1の実施形態に係る非水電解質電池である。
第1の実施形態に係る非水電解質電池は、先に説明したように、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧までの電圧範囲で高い容量を示すことができると共に、優れた充放電サイクル特性及び高エネルギー密度を示すことができる。したがって、第1の実施形態に係る非水電解質電池を5個直列に電気的に接続して構成した第2の実施形態に係る組電池は、鉛蓄電池を含んだ組電池の作動電圧範囲と同様の11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で高い容量を示すことができ、且つ優れた充放電サイクル寿命を示すことができる。このような第2の実施形態に係る組電池を鉛蓄電池を含んだ組電池に並列に接続することにより、使用可能な電力量を高くすることができ、鉛蓄電池の負荷の軽減が可能となる。また、第1の実施形態に係る非水電解質電池の正極は、先に説明したように、大電流放電の際、リチウムイオンの優れた受け入れ性を示すことができる。したがって、第2の実施形態に係る組電池は、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。
次に、第2の実施形態に係る一例の組電池を図面を参照しながら具体的に説明する。
図6は、第2の実施形態に係る一例の組電池を具備する一例の電池パックの概略斜視図である。図7は、図6の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
図6及び図7に示す電池パック20は、複数個の単電池21を備える。単電池21は、正極集電タブ4及び負極集電タブ5が容器から同じ向きに延出していること以外は図2〜図4を参照しながら説明した第1の実施形態に係る一例の扁平型非水電解質電池1と同用の構造を有する。
複数の単電池21は、外部に延出した正極集電タブ4及び負極集電タブ5が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結することにより組電池23を構成している。これらの単電池21は、図7に示すように電気的に直列に接続されている。すなわち、この組電池23は、第2の実施形態に係る組電池の一例の組電池である。
プリント配線基板24は、単電池21の正極集電タブ4及び負極集電タブ5が延出する側面に対向して配置されている。プリント配線基板24には、図7に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、組電池23と対向するプリント配線基板24の面には組電池23の配線との不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極集電タブ4に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極集電タブ5に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板24に形成された配線32及び33を通して保護回路26に接続されている。
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件の一例とは、例えば、サーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件の他の例とは、例えば、単電池21の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは組電池23全体について行われる。個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図6及び図7の電池パック20の場合、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35が接続されている。これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
プリント配線基板24は、組電池23の充放電を制御するように構成された制御回路(図示しない)を更に具備することもできる。制御回路は、例えば、組電池23を11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させるように構成されている回路であり得る。
正極端子6及び負極端子5が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収納容器37内に収納される。すなわち、収納容器37の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート36が配置され、短辺方向の反対側の内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収納容器37の上面に取り付けられている。
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
第2の実施形態に係る組電池は、直列に電気的に接続され且つ各々が第1の実施形態に係る非水電解質電池である5個の非水電解質電池を具備する。従って、例えば、第2の実施形態に係る組電池を鉛蓄電池を含んだ組電池と並列に接続することにより、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、バッテリーシステムが提供される。バッテリーシステムは、第1の電池ユニットと、第1の電池ユニットに電気的に並列に接続された第2の電池ユニットと、制御回路とを具備する。第1の電池ユニットは、鉛蓄電池を含む。第2の電池ユニットは、第2の実施形態に係る組電池を含む。制御回路は、第2の電池ユニットを11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させるように構成されている。
第1の電池ユニットは、1つ又は複数の鉛蓄電池を含むことができる。複数の鉛蓄電池を含む場合、これらの鉛蓄電池は、直列に、並列に又はこれらの組み合わせの接続形態で、電気的に接続されることができる。すなわち、第1の電池ユニットは、複数の鉛蓄電池を含む組電池でもよい。
例えば、第1の電池ユニットが直列に電気的に接続された6個の鉛蓄電池から構成された組電池を含んでいる場合、第1の電池ユニットと第2の電池ユニットとは、同様の作動電圧範囲を示すことができる。このような第1の電池ユニットを含むバッテリーシステムは、例えば第1の電池ユニットと第2の電池ユニットとの電圧を適合させるための部材なしでも構成することもできる。
第2の電池ユニットが含む第2の実施形態に係る組電池は、先に説明したように、鉛蓄電池を含んだ組電池の作動電圧範囲と同様の11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で高い容量を示すことができ、且つ優れた充放電サイクル寿命を示すことができる。
第3の実施形態に係るバッテリーシステムが具備する制御回路は、この第2の電池ユニットを11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させるように構成されている。第2の電池ユニットは第1の電池ユニットに並列に接続されているので、制御回路は、第1の電池ユニットも11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させることができる。
第3の実施形態に係るバッテリーシステムでは、鉛蓄電池を含んだ第1の電池ユニットに並列に接続された第2の電池ユニットが、バッテリーシステム全体で使用可能な電力量を高くすることができると共に、第1の電池ユニットが含んだ鉛蓄電池の負荷を軽減することができる。また、第2の実施形態に係る組電池が含む第1の実施形態に係る非水電解質電池の正極は、先に説明したように、大電流放電の際、リチウムイオンの優れた受け入れ性を示すことができる。よって、第3の実施形態に係るバッテリーシステムでは、大電流の入力を第2の電池ユニットが引き受けることができる。これらの結果、第3の実施形態に係るバッテリーシステムは、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができる。
次に、第2の実施形態に係るバッテリーシステムの一例を、図面を参照しながら、具体的に説明する。
図8は、第2の実施形態に係るバッテリーシステムの概略回路図である。
図8に示すバッテリーシステム100は、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120を具備する。
第1の電池ユニット110は、複数の鉛蓄電池から構成された組電池である。第2の電池ユニット120は、図6及び図7を参照しながら説明した組電池23を含んでいる。第2の電池ユニット120の公称電圧は、第1の電池ユニット110のそれと同様である。
図8に示すバッテリーシステム100では、第1の電池ユニット110と第2の電池ユニット120とが、回路開閉手段130を介して並列に接続されている。
回路開閉手段130は、図示しない半導体スイッチを備える。半導体スイッチは、金属−酸化物−半導体接合電界効果トランジスタ(MOS−FET)を含み、これを介する電子の通電及びその遮断の切り替えを行うことができる。半導体スイッチを介する電子の通電及びその遮断の切り替えは、電気制御手段(ECU)131によって制御される。
第1の電池ユニット110の端子間電圧は、図示しないセンサによりモニタされ、その情報が電子制御手段131へと送られる。
図8に示すバッテリーシステム100は、電気負荷140及びオルタネータ150を更に具備している。電気負荷140及びオルタネータ150は、回路開閉手段130を介して、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120に並列接続されている。
オルタネータ150は、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換する交流発電機である。オルタネータ150は、図示しない整流器に交流電流を送ることができる。この整流器は、受け取った交流電流を直流電流に変換して、この直流電流をバッテリーシステム100に流す働きを有する。オルタネータ150からの送電電圧は、図示しないセンサによりモニタされ、その情報が電子制御手段131に送られる。
図8に示すバッテリーシステムは、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120に対する制御手段160を更に具備している。制御手段160は、例えば、第2の電池ユニット120の端子間電圧をモニタする手段(図示しない)を含むことができる。例えば、第2の電池ユニット120の端子間電圧が第1の電池ユニット110の使用可能電圧範囲から外れた場合、制御手段160は、回路開閉手段130に接続された電子制御手段131に信号を送り、半導体スイッチを「遮断」状態にして、第1の電池ユニット110と第2の電池ユニット120との間の通電を防ぐことができる。
また、制御手段160は、第2の電池ユニット120を11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させるように構成された制御回路(図示せず)を具備している。
図8に示すバッテリーシステム100は、例えば、自動車用バッテリーシステムである。
自動車用バッテリーシステムであるバッテリーシステム100では、電気負荷140は、例えば、空調設備及び照明設備を含む。
自動車用バッテリーシステムであるバッテリーシステム100では、オルタネータ150が、自動車のエンジンに機械的に接続されている。また、オルタネータ150は、制動系統にも接続されており、自動車の制動の際に生じるエネルギーを回生エネルギーに変換することができる。
次に、自動車用バッテリーシステムであるバッテリーシステム100における送電の例を説明する。
(1)エンジン作動時
自動車のエンジンが作動している間、オルタネータ150が発電を行い、かくして生じた電気が、図示しない整流器により直流に変換され、電気負荷140に送られる。
エンジンの作動中、オルタネータ150からの送電電圧が第1の電池ユニット110によって許容される範囲内にある場合、電子制御手段131は、半導体スイッチの状態をオルタネータ150と第1の電池ユニット110との間で「通電」状態にし、オルタネータ150で生じた電気を第1の電池ユニット110に送る。
エンジンの作動中、オルタネータ150からの送電電圧が第1の電池ユニット110によって許容される範囲から外れている場合、電子制御手段131は、半導体スイッチの状態をオルタネータ150と第1の電池ユニット110との間で「遮断」状態にし、オルタネータ150からの第1の電池110への送電を遮断する。
同様に、エンジンの作動中、オルタネータ150からの送電電圧が第2の電池ユニット120によって許容される範囲内にある場合、電子制御手段131は、半導体スイッチの状態をオルタネータ150と第2の電池ユニット120との間で「通電」状態にし、オルタネータ150で生じた電気を第2の電池ユニット120に送る。
エンジンの作動中、オルタネータ150からの送電電圧が第2の電池ユニット120によって許容される範囲から外れている場合、電子制御手段131は、半導体スイッチの状態をオルタネータ150と第2の電池ユニット120との間で「遮断」状態にし、オルタネータ150からの第2の電池120への送電を遮断する。
なお、エンジンの作動中、オルタネータ150からの送電電圧が第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120の何れにも許容される範囲内にある場合、オルタネータ150からの電気は、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120の両方に流れる。この場合、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120のうちより大電流を受け入れることができる方の電池ユニット、具体的には第2の電池ユニット120に優先的に流れる。それにより、第1の電池ユニット110への電気負荷を小さくすることができる。
(2)自動車制動時
自動車が制動されると、オルタネータ150は、エンジン作動時よりも大きな電流を瞬間的にバッテリーシステム100に流す。この際、電子制御手段131は、半導体スイッチの状態をオルタネータ150と第2の電池120との間で「通電」状態にする一方で、オルタネータ150と第1の電池ユニット110との間で「遮断」状態にする。
バッテリーシステム100では、第2の電池ユニット120は、急速充放電が可能な非水電解質電池1の組電池である。そのため、第2の電池ユニット120は、自動車の制動時にオルタネータ150で生じた大電流を受け入れることができる。
第1の電池ユニット110が含む鉛蓄電池は、大電流での電気エネルギーが入力されると、劣化しやすい傾向がある。しかしながら、バッテリーシステム100では、以上のように、自動車制動時に入力される大電流は、優れた入力特性を示すことができる非水電解質電池1を含む第2の電池ユニット120が引き受けることができる。そのため、バッテリーシステム100は、制動時に得られたエネルギーを効率よく回生できながらも、鉛蓄電池を含む第1の電池ユニット110の劣化、ひいてはバッテリーシステム100全体の劣化を防ぐことができる。
(3)エンジン停止時
エンジン停止時は、オルタネータ150は発電しないので、オルタネータ150からの送電は行われない。その代わりに、第1の電池ユニット110又は第2の電池ユニット120が、電気負荷140への送電を担う。この際、制御手段160が、電子制御手段131に信号を送って回路開閉手段130を制御して、第1の電池ユニット110及び第2の電池ユニット120のそれぞれの電圧を使用可能電圧範囲内に維持することができる。
以上では、自動車用バッテリーシステムを例に挙げて説明したが、第3の実施形態に係るバッテリーシステムは、他の用途にも使用することができる。他の用途としては、例えば、フォークリフト等の動力機械が挙げられる。第3の実施形態に係るバッテリーシステムが具備する制御回路は、用途に応じて様々な形態をとることができる。
第2の実施形態に係る組電池は、先に説明したように、鉛蓄電池を含んだ組電池と並列に接続することにより、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる組電池である。よって、第3の実施形態に係るバッテリーシステムは、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができる。
[実施例]
以下に実施例を説明する。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順により、図2〜図4に示して説明した一例の非水電解質電池と同様の構造を有する、実施例1の非水電解質電池を作製した。
[正極の作製]
正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.2Mg0.01O4)の粉末を準備した。この正極活物質は、元素MがMgであり、x=0.2、y=0.01である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表される複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAl及びMgにより置換された複合酸化物ということができる。
また、導電剤としてのアセチレンブラック及びグラファイトと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。
次に、活物質粉末、アセチレンブラック、グラファイト及びPVdFをN−メチルピロリドンに添加して混合し、スラリーを調製した。添加した材料の重量比は、活物質粉末:アセチレンブラック:グラファイト:PVdF=93重量%:2重量%:2重量%:3重量%とした。
次に、得られたスラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。この際、アルミニウム箔に、スラリーを塗布しない部分を残した。次に、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスした。最後に、スラリーを塗布しなかった部分を打ち抜いて図3に示すような正極リードとしての狭小部を成形した。かくして、密度が2.8g/cm3である正極層を有する正極を作製した。
[負極の作製]
負極活物質として、スピネル型チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)の粉末を準備した。また、導電剤としてのアセチレンブラック及びグラファイトと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。
次に、活物質粉末、アセチレンブラック、グラファイト及びPVdFをN−メチルピロリドンに添加して混合し、スラリーを調製した。添加した材料の重量比は、活物質粉末:アセチレンブラック:グラファイト:PVdF=89重量%:4重量%:4重量%:3重量%とした。
得られたスラリーを厚さが11μmであるアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した。この際、アルミニウム箔に、スラリーを塗布しない部分を残した。次に、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスした。最後に、正極と同様に、スラリーを塗布しなかった部分を打ち抜いて、負極リードとしての狭小部を成形した。かくして、密度が2.0g/cm3である負極層を有する負極を作製した。
[電極群の作製]
厚さが30μmの帯状の微多孔膜セパレータを準備した。このセパレータを九十九折にし、図4を参照しながら説明したように、正極と負極とセパレータとを積層した。この際、複数の正極リードと複数の負極リードが積層体から互いに反対方向に延出するようにした。最後に、得られた積層体に対して図示していない巻き止めテープを貼り、電極群とした。
[電極群への正極集電タブ及び負極集電タブの接続]
正極集電タブと負極集電タブとをアルミニウムを用いて作製した。続いて、複数の正極の正極リードを1つにまとめて、正極集電タブに接続した。同様に、複数の負極の負極リードを1つにまとめて、負極集電タブに接続した。このようにして、正極集電タブ及び負極集電タブを、正極と負極とからの集電をそれぞれ簡便に行える様、電極群から互いに反対の向きに延出するように設置した。
[容器の作製]
容器としてアルミニウム含有ラミネートフィルムを用いた。まず、アルミニウム含有ラミネートフィルムを上記電極群が納まる形状に成型した。このように成形したアルミニウム含有ラミネートフィルム内に、図2及び図4を参照しながら先に説明したように電極群を収納した。この際、図4に示すように、容器の1つの周縁部において、樹脂フィルムによって正極集電タブを挟み込んだ。同様に、容器3の他の1つの周縁部において、樹脂フィルムによって負極集電タブを挟み込んだ。正極集電タブと樹脂フィルムとの間、及び、負極集電タブと樹脂フィルムとの間には、絶縁フィルムを配した。
続いて、周縁部において対向した樹脂フィルム32を一部を残して熱融着して固定した。同時に、1つの周縁部において、樹脂フィルムとこれに対向した絶縁フィルムとを熱融着して固定し、且つ正極集電タブとこれに対向した絶縁フィルム9を熱融着して固定した。同様に、1つの周縁部において、樹脂フィルムとこれに対向した絶縁フィルムとを熱融着して固定し、且つ負極集電タブとこれに対向した絶縁フィルムとを熱融着して固定した。かくして注液前セルを作製した。
[非水電解質の注液]
非水電解質には、非水溶媒としてエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとを1:1で混合したものを用い、電解質として2mol/lの六フッ化リン酸リチウムを用いた。この非水電解質を先に説明した注液前セルに注入した。非水電解質の注液は、容器3の周縁部のうち熱融着させずに残しておいた部分を介して行った。
[非水電解質電池の作製]
最後に、容器の周縁部のうち熱融着させずに残しておいた部分を熱融着させた。かくして、実施例1の非水電解質電池を作製した。
[初期状態への調整]
次に、実施例1の非水電解質電池を25℃環境下において初充電に供した。充電条件は、0.2Cレートで、電池電圧が2.8Vとなるまで行った。その後、実施例1の非水電解質電池を、環境温度50℃にて50時間にわたって保管することで、エージングを行った。エージング後、実施例1の非水電解質電池を、25℃の環境温度において、電池電圧が1.5Vに達するまで0.2Cレートで放電した。ついで、この非水電解質電池を、充電率50%まで充電し、初期状態とした。
<充電容量C1及び充電容量C2、並びに体積エネルギー密度の測定>
初期状態に調整した実施例1の非水電解質電池を、25℃の環境温度において、電池電圧が1.5Vに達するまで電流値0.1Aで放電した。次いで、実施例1の非水電解質電池を、電池電圧が3.0Vに達するまで0.1Aで充電した。この際の充電容量を基準としてCレートを算出した。
続いて、実施例1の非水電解質電池を、電池電圧が1.5Vに達するまで0.2Cレートで放電した。続いて、実施例1の非水電解質電池を、電池電圧が3.0Vに達するまで0.2Cレートで充電した。この充電による実施例1の非水電解質電池の充電容量及び電圧の変化を、充電曲線として記録した。図1は、実施例1の非水電解質電池の充電曲線である。
得られた充電曲線から、1.5Vの電圧から3.0Vの電圧まで充電した際の充電容量C1及び2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量C2を求めた。実施例1の非水電解質電池について、充電容量C1を100%とした際、充電容量C2の割合は95%であった。また、得られた充電曲線から、体積エネルギー密度を求めた。実施例1の非水電解質電池の体積エネルギー密度は、124(Wh/l)であった。
<充放電サイクル試験>
充電容量を測定した実施例1の非水電解質電池を、以下の手順で充放電サイクル試験に供した。まず、実施例1の非水電解質電池を、25℃温度環境において、0.2Cレートで1.5Vの電圧に到達するまで放電した。続いて、実施例1の非水電解質電池を、40℃温度環境において、10Cレートで電池電圧が2.7Vに達するまで充電した。次に、実施例1の非水電解質電池を、10Cレートで電池電圧が1.5Vに達するまで放電した。この充電及び放電のセットを1回の充放電サイクルとした。この充放電サイクルを、実施例1の非水電解質電池に対して、1000回繰り返して実施した。
1000回の充放電サイクルを行った後、実施例1の非水電解質電池を、25℃の温度環境において、電池電圧が1.5Vに達するまで0.2Cレートで放電した。次いで、実施例1の非水電解質電池を、電池電圧が3.0Vに達するまで0.2Cレートで充電した。この際の充電容量Ca.c.を測定した。
充電容量Ca.c.の先に測定した充電容量C1に対する割合を、サイクル容量維持率として算出した。実施例1の非水電解質電池についてのサイクル容量維持率は、95%であった。
(実施例2)
実施例2では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の非水電解質電池を作製した。
実施例2では、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.9Al0.1O4)の粉末を用いた。この正極活物質は、x=0.1、y=0である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表すことができる複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAlにより置換された複合酸化物ということができる。
実施例2の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例2の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は95%であり、エネルギー密度は133(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は93%であった。
(実施例3)
実施例3では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の非水電解質電池を作製した。
実施例3では、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.95Al0.05O4)の粉末を用いた。この正極活物質は、x=0.05、y=0である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表すことができる複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAlにより置換された複合酸化物ということができる。
実施例3の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例3の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は96%であり、エネルギー密度は138(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は90%であった。
(実施例4)
実施例4では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の非水電解質電池を作製した。
実施例4では、正極活物質として、実施例1で用いたものと同様のスピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.20Mg0.01O4)の粉末と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)の粉末とを、75重量%:25重量%の比で混合した混合物を用いた。
実施例4の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例4の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は93%であり、エネルギー密度は137(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は95%であった。
(実施例5)
実施例5では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の非水電解質電池を作製した。
実施例5では、正極活物質として、実施例1で用いたものと同様のスピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.20Mg0.01O4)の粉末と、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)の粉末とを、75重量%:25重量%の比で混合した混合物を用いた。
実施例5の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例5の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は92%であり、エネルギー密度は142(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は90%であった。
(実施例6)
実施例6では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の非水電解質電池を作製した。
実施例6では、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びコバルト含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.2Co0.01O4)の粉末を準備した。この正極活物質は、元素MがCoであり、x=0.2、y=0.01である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表される複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAl及びCoにより置換された複合酸化物ということができる。
実施例6の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例6の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は95%であり、エネルギー密度は123(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は94%であった。
(実施例7)
実施例7では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の非水電解質電池を作製した。
実施例7では、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びチタン含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.2Ti0.01O4)の粉末を準備した。この正極活物質は、元素MがTiであり、x=0.2、y=0.01である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表される複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAl及びTiにより置換された複合酸化物ということができる。
実施例7の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。実施例7の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は95%であり、エネルギー密度は124(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は93%であった。
(比較例1)
比較例1では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の非水電解質電池を作製した。
比較例1では、正極活物質として、スピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.7Al0.3Mg0.1O4)の粉末を準備した。この正極活物質は、元素MがMgであり、x=0.3、y=0.1である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表される複合酸化物である。この複合酸化物は、マンガン酸リチウムLiMn2O4のMnの一部がAl及びMgにより置換された複合酸化物ということができる。
比較例1の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。比較例1の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は95%であり、エネルギー密度は99(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は96%であった。
(比較例2)
比較例2では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の非水電解質電池を作製した。
比較例2では、正極活物質として、実施例1で用いたものと同様のスピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.20Mg0.01O4)の粉末と、コバルト酸リチウム(LiCoO2)の粉末とを、50重量%:50重量%の比で混合した混合物を用いた。
比較例2の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。比較例2の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は75%であり、エネルギー密度は140(Wh/l)であり、容量維持率は89%であった。
(比較例3)
比較例3では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の非水電解質電池を作製した。
比較例3では、正極活物質として、実施例1で用いたものと同様のスピネル型の結晶構造を有するアルミニウム及びマグネシウム含有マンガン酸リチウム(LiMn1.79Al0.20Mg0.01O4)の粉末と、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)の粉末とを、50重量%:50重量%の比で混合した混合物を用いた。
比較例3の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。比較例3の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は36%であり、エネルギー密度は146(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は85%であった。
(比較例4)
比較例4では、正極を作製するためのスラリーの調製方法を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の非水電解質電池を作製した。
比較例4では、活物質(LiMn1.79Al0.2Mg0.01O4)の粉末80重量%と、アセチレンブラック8重量%と、グラファイト8重量%と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%とを、N−メチルピロリドンに添加し、これらを混合して、正極を作製するためのスラリーを調製した。
比較例4の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。比較例4の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は95%であり、エネルギー密度は57(Wh/l)であり、サイクル容量維持率は94%であった。
(比較例5)
比較例5では、用いた正極活物質を変更したこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の非水電解質電池を作製した。
比較例5では、正極活物質として、マンガン酸リチウムLiMn2O4を用いた。この正極活物質は、x=0、y=0である一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表される複合酸化物である。
比較例5の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行った試験と同様の試験に供した。比較例5の非水電解質電池について、充電容量C2の充電容量C1に対する割合は97%であり、エネルギー密度は142(Wh/l)であり、1000サイクル後の充電容量は36%であった。
以下の表1及び表2に、実施例1〜7、並びに比較例1〜5の非水電解質電池の作製条件と特性結果をまとめて示す。なお、以下の表1において、「LMO」はスピネル型の結晶構造を有するアルミニウム含有マンガン酸リチウム(金属元素Mを含むものも含む)を示しており、「LCO」はコバルト酸リチウムを示しており、「NCM」はリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を示している。
表2に示した結果から、実施例1〜7の非水電解質電池は、それぞれ、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲で充電できる充電容量C2が、1.5V以上3V以下の電圧範囲で充電できる充電容量C1を100%とした場合に、92%以上99%以下の範囲内にあったことが分かる。また、実施例1〜7の非水電解質電池は、それぞれ、120(Wh/l)以上という高いエネルギー密度を示すことができ、且つ1000サイクル経過後も90%以上の容量を維持することができたことが分かる。すなわち、実施例1〜7の非水電解質電池は、それぞれ、高エネルギー密度及び優れた寿命特性を示すことができたことに加え、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲で大きな容量を充電できたことが分かる。
これは、実施例1〜7の非水電解質電池のそれぞれにおいて、正極活物質のマンガン酸リチウムにおけるAlの含有量についての添字xの値が0.03≦x<0.22の範囲内にあることにより構造が安定化したこと及び正極層における正極活物質の含有量が91重量%以上96重量%未満であるおかげで、充放電サイクルにおける劣化が低減されたこと、並びに正極活物質のマンガン酸リチウムにおけるAlの含有量についての添字xの値が0.03≦x<0.22の範囲内にあり、元素Mの含有量についての添字yの値が0≦y≦0.02の範囲内にあり、且つ添字x及びyの値の和が0.03≦x+y<0.22の範囲内にあるおかげで、マンガン酸リチウムの高いエネルギー密度が担保できたことが原因の少なくとも一部にあると考えられる。
このような実施例1〜7の非水電解質電池のそれぞれを5個直列に接続して組電池を構成し、この組電池を鉛蓄電池に並列に接続することで、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。以下に、実施例1の非水電解質電池を用いた具体例を、実施例8として示す。
一方、比較例1の非水電解電池は、エネルギー密度が、99(Wh/l)であり、実施例1〜7の非水電解質電池のそれぞれのエネルギー密度より著しく低かった。これは、比較例1では、マンガン酸リチウムのアルミニウム含有量が多過ぎた結果であると考えられる。また、表1及び表2から、アルミニウムの含有量を表す添字xの値を0.3と多くした比較例1の非水電解質電池はサイクル容量維持率は96%であり、この値は、実施例1〜7の非水電解質電池のそれとあまり差が無いことが分かる。つまり、添字xの値は0.22未満とすることが望ましいことが分かる。
比較例2の非水電解質電池は、エネルギー密度が140(Wh/l)と高かった。これは、正極活物質の重量の50%がLiCO2であったからであると考えられる。しかしながら、比較例2の非水電解質電池は、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲で充電できる容量C2の割合が75%しかなかった。以下の比較例6において詳細に説明するが、この非水電解質電池を5直列して構成した組電池を鉛蓄電池と並列に接続して構成したバッテリーシステムは、鉛蓄電池への負担が大きくなる。
比較例3の非水電解質電池は、エネルギー密度は146(Wh/l)と高かった。これは、正極活物質の重量の50%がLiNiCoMnO2であったからであると考えられる。しかしながら、比較例3の非水電解質電池は、2.3V以上2.7V以下の電圧範囲で充電できる容量C2の割合が36%の充電容量しかなかった。以下の比較例7において詳細に説明するが、この非水電解質電池を5直列して構成した組電池を鉛蓄電池と並列に接続して構成したバッテリーシステムは、鉛蓄電池への負担が大きくなる。
比較例4の非水電解質電池は、正極層における正極活物質の含有量が正極層の重量に対して80%と低かったため、エネルギー密度が57(Wh/l)と低かった。
比較例5の非水電解質電池は、正極活物質として、アルミニウム又は元素Mを含んでいないマンガン酸リチウムLiMn2O4(一般式LiMn2-xAlxMyO4において、添字x及びyの値が共に0である)を正極活物質として用いた。比較例5の非水電解質電池では、充放電サイクルを繰り返し行ったことにより、正極活物質の結晶構造が変化し、その結果、1000サイクル後の容量が初期容量の36%まで低下してしまったと考えられる。
(実施例8)
実施例8では、以下の手順で実施例8の組電池を作製した。
まず、実施例1と同様の手順で、それぞれが実施例1の非水電解質電池と同様である5個の非水電解質電池を作製した。作製した5個の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行ったのと同様の手順で、初期状態に調整した。
次に、5個の非水電解質電池を電気的に直列に接続した。かくして、実施例8の組電池を作製した。
(比較例6)
比較例6では、以下の手順で比較例6の組電池を作製した。
まず、比較例2と同様の手順で、それぞれが比較例2の非水電解質電池と同様である5個の非水電解質電池を作製した。作製した5個の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行ったのと同様の手順で、初期状態に調整した。
次に、5個の非水電解質電池を電気的に直列に接続した。かくして、比較例6の組電池を作製した。
(比較例7)
比較例7では、以下の手順で比較例7の組電池を作製した。
まず、比較例3と同様の手順で、それぞれが比較例3の非水電解質電池と同様である5個の非水電解質電池を作製した。作製した5個の非水電解質電池を、実施例1の非水電解質電池に対して行ったのと同様の手順で、初期状態に調整した。
次に、5個の非水電解質電池を電気的に直列に接続した。かくして、比較例7の組電池を作製した。
<0.5C充電試験及び0.5C放電試験>
実施例8、比較例6及び比較例7のそれぞれの組電池を、以下の手順に従う充電試験及び放電試験に供した。また、以下に示すように、鉛蓄電池を準備し、この鉛蓄電池も同様に充電試験及び放電試験に供した。これらの充放電試験は、25℃の温度環境において行った。
(1)鉛蓄電池の準備
公称容量が70Ahである鉛蓄電池を準備した。
準備した鉛蓄電池を、1.0Aの電流値で、電圧が11.5Vに達するまで放電した。電圧が11.5Vに達したら、放電を停止した。
(2)組電池の試験前処理
実施例8、比較例6及び比較例7のそれぞれの組電池を、1.0Aの電流値で、電圧が11.5Vに達するまで放電した。電圧が11.5Vに達したら、放電を停止した。
(3)0.5Cレート充電試験(70.0Aを1Cとした)
次いで、実施例8の組電池を、電流値35.0Aで、電圧が13.5Vに達するまで定電流(Constant Current:CC)充電した。電圧が13.5Vに到達してから、実施例8の組電池を、電流値が1.0Aに減衰するまで定電圧(Constant Voltage:CV)充電した。上記CC充電及びCV充電で得られた充電曲線を、図9に符号(1)を付した曲線として示す。
また、比較例6及び比較例7の組電池、並びに鉛蓄電池を、実施例8の組電池に対して行ったのと同様のCC充電及びCV充電に供した。比較例6及び比較例7の組電池、並びに鉛蓄電池の上記CC充電及びCV充電で得られた充電曲線を、図9に、符号(2)、(3)及び(4)を付した曲線としてそれぞれ示す。
(4)0.5Cレート放電試験(70.0Aを1Cとした)
充電試験後の実施例8の組電池を、電流値35.0Aで電圧が11.5Vに達するまで定電流(Constant Current:CC)放電した。電圧が、11.5Vに到達したら、放電を停止した。このCC放電で得られた放電曲線を、図10に符号(1)を付した曲線として示す。
また、充電試験後の比較例6及び比較例7の組電池、並びに鉛蓄電池を、実施例8の組電池に対して行ったのと同様のCC放電に供した。比較例6及び比較例7の組電池、並びに鉛蓄電池の上記CC放電で得られた放電曲線を、図10に、符号(2)、(3)及び(4)を付した曲線としてそれぞれ示す。
なお、先に説明したように、この放電試験では、実施例8、比較例6及び7の組電池と同様に、0.5Cレート充電試験後の状態、すなわち電圧が13.5Vである鉛蓄電池を用いた。しかしながら、図10では、鉛蓄電池の放電曲線(4)が12.4Vの電圧から始まっている。これは、鉛蓄電池は、抵抗が大きいため、13.5Vの電圧から0.5CでCC放電すると直ちに電圧降下(IRドロップ)が起きて、12.4Vまで電圧が落ち、それから放電が始まったからである。一方、実施例8、比較例6及び7のそれぞれの組電池は、抵抗が非常に小さいため、電圧降下の影響を確認できなかった。そのため、実施例8、比較例6及び7のそれぞれの組電池の充電曲線(1)〜(3)のそれぞれは、各組電池の充電直前の電圧と同様の電圧である13.5V付近から始まっている。
<エネルギー密度及び容量割合の確認>
0.5Cでの充放電試験後の実施例8の組電池を、25℃の環境温度において、電池電圧が15.0Vに達するまで0.2Cレートで充電した。ここで、1Cレートとしては、実施例1の非水電解質電池の容量測定で得られた充電容量を基準としてCレートを算出した電流値を用いた。次に、実施例8の組電池を、25℃の環境温度において、組電池の電圧が7.5Vに達するまで0.2Cレートで放電した。
次に、実施例8の組電池を、組電池の電圧が15.0Vに達するまで0.2Cレートで充電した。この際の充電曲線を記録した。
記録した充電曲線から、電圧を7.5Vから15.0Vまで変化させた際の充電容量Cm1を積算により算出した。この充電容量Cm1を初期充電容量とした。また、記録した充電曲線から、電圧を11.5Vから13.5Vまで変化させた際の充電容量Cm2を積算により算出した。これらの結果に基づいて、実施例8の組電池のエネルギー密度及び充電容量Cm2の初期充電容量Cm1に対する割合を算出した。
実施例8の組電池のエネルギー密度は、112Wh/lであった。実施例8の組電池の充電容量Cm2の充電容量Cm1に対する割合は、93%であった。
同様の試験を、比較例6及び7の組電池に対しても行った。比較例6の組電池のエネルギー密度は、122Wh/lであった。比較例6の組電池の充電容量Cm2の充電容量Cm1に対する割合は、73%であった。比較例6の組電池のエネルギー密度は、130Wh/lであった。比較例6の組電池の充電容量Cm2の充電容量Cm1に対する割合は、35%であった。
<充放電サイクル試験>
エネルギー密度及び容量割合の測定を行った後の実施例8の組電池を、40℃の温度環境においた。この環境下で、実施例8の組電池を、組電池の電圧が13.5Vに達するまで10Cレートで充電した。次いで、実施例8の組電池を、組電池の電圧が7.5Vに達するまで10Cレートで放電した。
この充電及び放電のセットを1回の充放電サイクルとした。この充放電サイクルを、実施例8の組電池に対して、1000回繰り返して実施した。
1000回の充放電サイクルを行った後、実施例8の組電池を、25℃の温度環境において、組電池の電圧が15.0Vに達するまで0.2Cレートで充電した。この際の充電容量Cm3を測定した。
この充電容量Cm3の先に測定した初期充電容量Cm1に対する割合を、サイクル容量維持率として算出した。実施例8の組電池のサイクル容量維持率は、95%であった。
同様の充放電サイクル試験を、比較例6及び7の組電池に対しても行った。比較例6の組電池のサイクル容量維持率は90%であった。比較例7の組電池のサイクル容量維持率は86%であった。
[考察]
図9から明らかなように、鉛蓄電池は、12.4V付近の電圧から充電が開始された。一方、実施例8の組電池は、12.4Vよりも低い電圧で充電が開始された。また、図9から明らかなように、実施例8の組電池の充電曲線(1)は、充電作動電圧が鉛蓄電池のそれよりも低い部分が大きい。このような充電曲線(1)を示すことができる実施例8の組電池を鉛蓄電池と並列に接続して構成したバッテリーシステムでは、充電の際に、鉛蓄電池への負荷を低減することができる。
他方、図9から明らかなように、比較例6の組電池の充電曲線(2)及び比較例7の組電池の充電曲線(3)の各々は、充電作動電圧が鉛蓄電池のそれよりも低い部分を含んでいない。そのため、比較例6及び7の組電池のそれぞれを鉛蓄電池と並列に接続して構成したバッテリーシステムでは、充電の際に鉛蓄電池への負荷を低減する効果が小さい。
また、先にも説明したが、図10から明らかなように、鉛蓄電池は、12.4V付近の電圧から放電が開始された。実施例8の組電池は、図10から明らかなように、鉛蓄電池が放電開始となる電圧よりも高い電圧領域において、大きな放電容量を示すことができる。このような実施例8の組電池を鉛蓄電池に並列に接続して構成したバッテリーシステムでは、放電の際にも、鉛蓄電池への負荷を低減することができる。比較例6及び7の組電池も、鉛蓄電池が放電開始となる電圧よりも高い電圧領域において放電をすることができるが、その領域における放電容量は実施例8の組電池のそれよりも小さい。
つまり、実施例8の組電池は、比較例6及び7のそれぞれの組電池よりも、充電及び放電の何れに際しても、鉛蓄電池をアシストする効果が高い。
更に、以下の表3に、鉛蓄電池単独、鉛蓄電池と実施例8、比較例6及び7のそれぞれの組電池とを並列に接続して構成したバッテリーシステムについての、充電電力量及び放電電力量を示す。これらの電力量は、先に説明した0.5Cレート充電試験及び0.5Cレート放電試験の結果から見積もった値である。
表3から明らかなように、実施例8の組電池は、鉛蓄電池に電気的に並列に接続することで、比較例6及び7の組電池よりも、充電電力量及び放電電力量が大きなバッテリーシステムを提供することができる。
また、比較例6及び7の組電池を用いて作製したバッテリーシステムでは、実施例8の組電池を用いて作製したバッテリーシステムと同様の充電電力量及び放電電力量を得るために作動電圧範囲を広くすると、鉛蓄電池の劣化が進んでしまうことが予想される。
そして、先に説明した充放電サイクル試験の結果から明らかなように、実施例8の組電池は、比較例6及び7の組電池よりも、優れた寿命特性を示すことができる。
以上に説明した少なくとも一つの実施形態及び実施例に係る非水電解質電池では、正極層が、スピネル型の結晶構造を有し且つ一般式LiMn2-x-yAlxMyO4で表されるアルミニウム含有マンガン酸リチウムを、正極層の重量に対して91重量%以上96重量%未満の含有量で含む。また、容量C1に対する容量C2の割合が92%以上99%以下である。この非水電解質電池は、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧までの電圧範囲で高い容量を示すことができると共に、優れた充放電サイクル特性及び高エネルギー密度を示すことができる。このような非水電解質電池を用いて構成した組電池は、鉛蓄電池を含んだ電池との電圧適合性に優れる。よって、第1の実施形態に係る非水電解質電池は、高いエネルギー密度及び優れた充放電サイクル特性を示すことができるバッテリーシステムを実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載した発明を付記する。
[1] 正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極層とを含み、前記正極層は、スピネル型の結晶構造を有し且つ一般式LiMn 2-x-y Al x M y O 4 (式中、Mは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn及びGaからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素であり、xは0.03≦x<0.22の範囲内にあり、yは0≦y≦0.02の範囲内にあり、x+yは0.03≦x+y<0.22の範囲内にある)で表されるアルミニウム含有マンガン酸リチウムを含む正極活物質を含み、前記正極層における前記正極活物質の含有量が前記正極層の重量に対して91重量%以上96%重量未満である正極と、
負極と、
非水電解質と
を具備し、
容量C1に対する容量C2の割合が92%以上99%以下であり、ここで、前記容量C1は、1.5Vの電圧から3Vの電圧まで充電した際の充電容量であり、前記容量C2は、2.3Vの電圧から2.7Vの電圧まで充電した際の充電容量であることを特徴とする非水電解質電池。
[2] 前記負極が、スピネル型の結晶構造を有するチタン酸リチウムを含むことを特徴とする[1]に記載の非水電解質電池。
[3] 前記正極層の密度が、2.6g/cm 3 以上3.3g/cm 3 未満であることを特徴とする[2]に記載の非水電解質電池。
[4] 電気的に直列に接続された5個の非水電解質電池を具備し、
前記5個の非水電解質電池の各々が、[1]に記載の非水電解質電池であることを特徴とする組電池。
[5] 鉛蓄電池を含む第1の電池ユニットと、
前記第1の電池ユニットに電気的に並列に接続され且つ[4]に記載の組電池を含む第2の電池ユニットと、
前記第2の電池ユニットを11.5V以上13.5V以下の電圧範囲で充放電させるように構成されている制御回路と
を具備することを特徴とするバッテリーシステム。