JP6920083B2 - 車輪用軸受装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輪用軸受装置に関する。
従来より、車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている(例えば特許文献1)。かかる車輪用軸受装置は、車体に外方部材が固定される。また、外方部材の内側に内方部材が配置され、外方部材と内方部材の両転走面間に複数の転動体が介装されている。こうして、車輪用軸受装置は、転がり軸受構造を構成し、内方部材に取り付けられた車輪を回転自在としているのである。
ところで、このような車輪用軸受装置は、外方部材と内方部材によって形成された環状空間に泥水や砂塵等の異物が侵入すると、転走面や転動体等が損傷して軸受寿命が短くなる。また、環状空間に封入されているグリースが漏出しても、転走面や転動体等が損傷して軸受寿命が短くなる。そのため、泥水や砂塵等の異物の侵入を防止するとともにグリースの漏出を防止すべく、環状空間の両側開口端を塞ぐ一対のシール部材を備えている。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、環状空間の両側開口端を塞ぐ一対のシール部材としてインナー側シール部材(インボード側のシール)とアウター側シール部材(アウトボード側のシール)を備えている。インナー側シール部材は、外方部材の内側に収容された状態で、環状空間のインナー側開口端を塞いでいる。また、アウター側シール部材は、外方部材の内側に収容された状態で、環状空間のアウター側開口端を塞いでいる。そのため、このような車輪用軸受装置においては、外方部材の内側にインナー側シール部材とアウター側シール部材を収容するためのスペースを確保する必要があり、結果として車輪用軸受装置の軸方向長さが長大化してしまうという問題があった。ひいては、軸受剛性の向上を実現しにくく、更に軽量化を実現しにくいという問題があった。
特開2015−224655号公報
軸方向長さを短縮した車輪用軸受装置を提供する。ひいては、軸受剛性の向上を実現することができ、更に軽量化を実現することができる車輪用軸受装置を提供する。
第一の発明は、
内周に外側転走面が形成された外方部材と、
外周に内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材の両転走面間に転動自在に介装される複数の転動体と、
前記複数の転動体のそれぞれを前記内方部材の回転軸を中心に円形にかつ等間隔に保持する保持器と、
前記外方部材と前記内方部材によって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材と、を備える車輪用軸受装置において、
前記アウター側シール部材が芯金と複数のリップを有する弾性部材で構成され、
前記芯金が前記保持器の径方向外側で少なくとも一部が重なるように前記外方部材の外周面に嵌合され、更に前記外方部材のアウター側端面に沿って径方向内側に向けて延びており、
前記弾性部材に形成された全ての前記リップが前記外方部材のアウター側端面よりもアウター側に配置されており、
前記芯金の嵌合部の先端部が外方部材の外周面から離間するように曲げられており、前記先端部を覆うように前記弾性部材が一体的に形成されており、
前記芯金の側板部の先端部が外方部材のアウター側端面から離間するように曲げられており、前記先端部を覆うように前記弾性部材が一体的に形成されており、
前記弾性部材に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部が設けられており、
前記弾性部材に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部が設けられている、としたものである。
第二の発明は、第一の発明に係る車輪用軸受装置において、
前記複数のリップのうち少なくとも一つのリップは、その先端縁が前記内方部材に形成された車輪取付フランジのシール平面部に接触しているメインリップである、としたものである。
第三の発明は、第一の発明に係る車輪用軸受装置において、
前記複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁が前記内方部材に形成された車輪取付フランジのシール平面部に接触又は近接しているグリースリップである、としたものである。
第四の発明は、第一の発明に係る車輪用軸受装置において、
前記内方部材に形成された車輪取付フランジに前記アウター側シール部材の径方向内側まで突出した段差部が形成されており、
前記複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁が前記段差部のシール周面部に接触又は近接しているグリースリップである、としたものである。
第五の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係る車輪用軸受装置において、
前記第一締代部が前記外方部材の外周面を押圧している、としたものである。
第六の発明は、第一から第五のいずれかの発明に係る車輪用軸受装置において、
該第二締代部が前記外方部材のアウター側端面を押圧している、としたものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
第一の発明に係る車輪用軸受装置は、アウター側シール部材が芯金と複数のリップを有する弾性部材で構成されている。そして、芯金が保持器の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材の外周面に嵌合され、更に外方部材のアウター側端面に沿って径方向内側に向けて延びており、弾性部材に形成された全てのリップが外方部材のアウター側端面よりもアウター側に配置されている。かかる車輪用軸受装置によれば、外方部材の内側にアウター側シール部材を収容するためのスペースを確保する必要がなくなり、全てのリップが径方向に並んで配置されるので、軸方向長さを短縮できる。ひいては、同じ外力が掛かっても曲げモーメントが小さくなるので、軸受剛性を向上でき、更に軽量化を実現することができる。
第二の発明に係る車輪用軸受装置において、複数のリップのうち少なくとも一つのリップは、その先端縁が内方部材に形成された車輪取付フランジのシール平面部に接触しているメインリップである。かかる車輪用軸受装置によれば、少なくとも一つのメインリップがシール平面部に接触するので、泥水や砂塵等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
第三の発明に係る車輪用軸受装置において、複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁がシール平面部に接触又は近接しているグリースリップである。かかる車輪用軸受装置によれば、グリースリップがシール平面部に接触又は近接するので、グリースが漏出するのを防ぐことができる。
第四の発明に係る車輪用軸受装置においては、車輪取付フランジにアウター側シール部材の径方向内側まで突出した段差部が形成されている。そして、複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁が段差部のシール周面部に接触又は近接しているグリースリップである。かかる車輪用軸受装置によれば、グリースリップがシール周面部に接触又は近接するので、グリースが漏出するのを防ぐことができる。また、段差部が環状空間のアウター側開口端を狭めてグリースの移動を制限するので、転動体および転動面の油膜切れを防ぐことができる。更に、グリースの漏出を低減させることもできる。
第五の発明に係る車輪用軸受装置においては、弾性部材に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部が設けられている。そして、第一締代部が外方部材の外周面を押圧している。かかる車輪用軸受装置によれば、外方部材と芯金の嵌合部分に対して一方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材と芯金の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
第六の発明に係る車輪用軸受装置においては、弾性部材に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部が設けられている。そして、第二締代部が外方部材のアウター側端面を押圧している。かかる車輪用軸受装置によれば、外方部材と芯金の嵌合部分に対して他方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材と芯金の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
車輪用軸受装置を示す斜視図。 車輪用軸受装置の構造を示す断面図。 車輪用軸受装置の一部構造を示す断面図。 車輪用軸受装置の一部構造を示す断面図。 車輪用軸受装置の取付構造を示す断面図。 第一実施形態であるアウター側シール部材とハブ輪の形状を示す断面図。 第二実施形態であるアウター側シール部材とハブ輪の形状を示す断面図。 第三実施形態であるアウター側シール部材とハブ輪の形状を示す断面図。
まず、図1から図4を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置1について説明する。図1は、車輪用軸受装置1を示す斜視図である。図2は、車輪用軸受装置1の構造を示す断面図である。図3および図4は、車輪用軸受装置1の一部構造を示す断面図である。
車輪用軸受装置1は、車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材2と、内方部材3と、転動体4と、保持器5と、インナー側シール部材6と、アウター側シール部材7(8・9)と、を備える。なお、本明細書において、「インナー側」とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車体側を表し、「アウター側」とは、車体に取り付けた際の車輪用軸受装置1の車輪側を表す。
外方部材2は、転がり軸受構造の外輪部分を構成するものである。外方部材2は、例えばS53C等の中高炭素鋼で構成されている。外方部材2のインナー側端部における内周には、嵌合面2aが形成されている。また、外方部材2のアウター側端部における外周には、嵌合面2bが形成されている。更に、外方部材2の軸方向中央部における内周には、二つの外側転走面2c・2dが形成されている。外側転走面2cは、後述する内側転走面3cに対向する。外側転走面2dは、後述する内側転走面3dに対向する。なお、外側転走面2c・2dには、例えば高周波焼入れが施され、表面硬度が58〜64HRCの範囲となっている。加えて、外方部材2の外周には、車体取付フランジ2eが一体的に形成されている。車体取付フランジ2eには、複数のボルト穴2fが設けられている。
内方部材3は、転がり軸受構造の内輪部分を構成するものである。内方部材3は、ハブ輪31と内輪32で構成されている。
ハブ輪31は、例えばS53C等の中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪31には、そのインナー側端部から軸方向中央部まで小径段部3aが形成されている。小径段部3aは、ハブ輪31の外径が小さくなった部分を指し、その外周面が回転軸Aを中心とする円筒形状となっている。また、ハブ輪31には、そのインナー側端部からアウター側端部まで貫かれた自在継手取付穴3bが形成されている。自在継手取付穴3bは、ハブ輪31の中心に設けられた貫通穴を指し、その内周面が凹部と凸部が交互に並ぶ凹凸形状(スプライン穴)となっている。更に、ハブ輪31の外周には、内側転走面3cが形成されている。内側転走面3cは、前述した外側転走面2cに対向する。なお、小径段部3aから内側転走面3cを経てシールランド部(後述する車輪取付フランジ3eの基端部分である)までには、例えば高周波焼入れが施され、表面硬度が58〜64HRCの範囲となっている。加えて、ハブ輪31の外周には、車輪取付フランジ3eが一体的に形成されている。車輪取付フランジ3eには、回転軸Aを中心とする同心円上に等間隔で複数のボルト穴3fが設けられ、それぞれのボルト穴3fにはハブボルト33が圧入されている。また、車輪取付フランジ3eには、その径方向内側の外方部材2に対向する位置に、回転軸Aに対して垂直又は所定の角度となる平面が形成されている。かかる平面を「シール平面部3h」とする。
内輪32は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼で構成されている。内輪32の外周には、嵌合面3gが形成されている。また、内輪32の外周には、内側転走面3dが形成されている。内輪32は、ハブ輪31の小径段部3aに嵌合(外嵌)されることにより、ハブ輪31の外周に内側転走面3dを構成する。内側転走面3dは、前述した内側転走面2dに対向する。なお、内輪32は、例えばいわゆるズブ焼入れが施され、芯部まで58〜64HRCの範囲となっている。
転動体(以降「円錐ころ」という)4は、転がり軸受構造の転動部分を構成するものである。円錐ころ4は、例えばSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼若しくはSCr420等の浸炭鋼で構成されている。インナー側の円錐ころ列4Rを構成している円錐ころ4は、後述する保持器5によって円形にかつ等間隔にならべられている。これらの円錐ころ4は、外方部材2の外側転走面2dと内方部材3(内輪32)の内側転走面3dの間に転動自在に介装されている。また、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している円錐ころ4も、後述する保持器5によって円形にかつ等間隔にならべられている。これらの円錐ころ4は、外方部材2の外側転走面2cと内方部材3(ハブ輪31)の内側転走面3cの間に転動自在に介装されている。なお、円錐ころ4は、例えばいわゆるズブ焼入れが施され、芯部まで62〜67HRCの範囲となっている。
保持器5は、円錐ころ4の偏動を制限するものである。保持器5は、例えばPA66等のエンジニアリングプラスチック若しくはPPS等のスーパーエンジニアリングプラスチック、あるいはこれらにグラスファイバー等を含有させたもので構成されている。保持器5は、小径円環部5aと大径円環部5bを複数の柱部5cでつないだテーパ形状の格子体となっている。小径円環部5aは、円錐ころ4の小径側端面4aに沿うので、円錐ころ4の軸方向一側への偏動(図3および図4における矢印X方向へのズレ)を制限する。また、大径円環部5bは、円錐ころ4の大径側端面4bに沿うので、円錐ころ4の軸方向他側への偏動(図3および図4における矢印Y方向へのズレ)を制限する。そして、柱部5cは、互いに隣り合う円錐ころ4と円錐ころ4の間を通り、これらの外周面4cに沿うので、円錐ころ4の周方向への偏動を制限する。なお、保持器5は、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等にカーボンファイバー等を含有させたもので構成されていてもよい。また、冷間圧延鋼板や熱間圧延鋼板、あるいはオーステナイト系ステンレス鋼板で構成されていてもよい。
インナー側シール部材6は、外方部材2と内方部材3の間に形成された環状空間Sのインナー側開口端を密封するものである。但し、インナー側シール部材6については、様々な仕様が存在しており、本願の仕様に限定するものではない。
インナー側シール部材6は、スリンガ61を含んでいる。スリンガ61は、内輪32の嵌合面3gに嵌合(外嵌)される。スリンガ61は、例えばSUS430やSUS304等のステンレス鋼板、あるいはSPCC等の冷間圧延鋼板で構成されている。スリンガ61は、円環状の鋼板がプレス加工によって変形され、軸方向断面が略L字状に折り曲げられた形状となっている。これにより、スリンガ61は、円筒状の嵌合部61aと、その端部から外方部材2に向かって延びる円板状の側板部61bと、が形成されている。
インナー側シール部材6は、シールリング62を含んでいる。シールリング62は、外方部材2の嵌合部2aに嵌合(内嵌)される。シールリング62は、芯金63と弾性部材64で構成されている。芯金63は、例えばSUS430やSUS304等のステンレス鋼板、あるいはSPCC等の冷間圧延鋼板で構成されている。芯金63は、円環状の鋼板がプレス加工によって変形され、軸方向断面が略L字状に折り曲げられた形状となっている。これにより、芯金63は、円筒状の嵌合部63aと、その端部から内輪32に向かって延びる円板状の側板部63bと、が形成されている。なお、嵌合部63aと側板部63bには、弾性部材64が例えば加硫接着により一体的に形成されている。
弾性部材64は、例えばNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムで構成されている。弾性部材64に形成されたリップ64a・64bは、いわゆるメインリップであって、その先端縁がスリンガ61の側板部61bに接触している。また、リップ64cは、いわゆるグリースリップであって、その先端縁がスリンガ61の嵌合部61aに接触している。このようにして、インナー側シール部材6は、泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐとともに、グリースが環状空間Sから漏出するのを防いでいる。
アウター側シール部材7は、外方部材2と内方部材3の間に形成された環状空間Sのアウター側開口端を密封するものである。但し、アウター側シール部材7については、様々な仕様が存在しており、本願の発明に関する部分を除いて仕様を限定するものではない。
アウター側シール部材7は、外方部材2の嵌合面2bに嵌合(外嵌)される。アウター側シール部材7は、芯金72と弾性部材73で構成されている。芯金72は、例えばSUS430やSUS304等のステンレス鋼板、あるいはSPCC等の冷間圧延鋼板で構成されている。芯金72は、円環状の鋼板がプレス加工によって変形され、軸方向断面が略L字状に折り曲げられた形状となっている。これにより、芯金72は、円筒状の嵌合部72aと、その端部からハブ輪31に向かって延びる円板状の側板部72bと、が形成されている。なお、嵌合部72aと側板部72bには、弾性部材73が例えば加硫接着により一体的に形成されている。
弾性部材73は、例えばNBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、HNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、ACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムで構成されている。弾性部材73に形成されたリップ73a・73bは、いわゆるメインリップであって、その先端縁が車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触している。また、リップ73cは、いわゆるグリースリップであって、その先端縁が車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触している。このようにして、アウター側シール部材7は、泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐとともに、グリースが環状空間Sから漏出するのを防いでいるのである。但し、リップ73cについては、その先端縁がシール平面部3hに接触せず、近接しているものであってもよい。
次に、図5を用いて、車輪用軸受装置1を車体に取り付けるための構造について説明する。図5は、車輪用軸受装置1の取付構造を示す断面図である。以下において、「軸方向長さ」とは、広義には図中の寸法Dbを表し、狭義には図中の寸法Dnを表す。
車輪用軸受装置1は、パイロット2gと車体取付フランジ2eを用いて車体に取り付けられる。具体的に説明すると、車輪用軸受装置1は、円筒形状であるパイロット2gをナックルNの丸円に嵌め合わせるとともに、車体取付フランジ2eの端面をナックルNの端面に当接させた状態で、ナックルボルト34を介して取り付けられる。このとき、ナックルボルト34は、車体取付フランジ2eのボルト穴2fにアウター側から挿通され、ナックルNのボルト穴Nhに螺合される。あるいは、ナックルNのボルト穴Nhにインナー側から挿通され、車体取付フランジ2eのボルト穴2fに螺合される。
次に、図6を用いて、第一実施形態に係るアウター側シール部材7について詳細に説明する。図6は、第一実施形態であるアウター側シール部材7とハブ輪31の形状を示す断面図である。以下において、「径方向外側」とは、内方部材3の回転軸Aから遠ざかる方向を表す。また、「径方向内側」とは、内方部材3の回転軸Aに近づく方向を表す。
第一実施形態に係るアウター側シール部材7において、芯金72は、円筒状の嵌合部72aを有しており、この嵌合部72aが外方部材2の嵌合面2bに嵌合(外嵌)される。
このとき、嵌合部72aは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合される。換言すると、例えば芯金72を構成している嵌合部72aのインナー側端縁が保持器5を構成している大径円環部5bのアウター側端縁を超えた状態で嵌合される。これは、外方部材2の外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計することで実現可能としたものである。なお、従来品に係る車輪用軸受装置と異なり、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計できるのは、外方部材2の内側にアウター側シール部材7を収容する必要がないためである。
加えて、芯金72は、円板状の側板部72bを有しており、この側板部72bが外方部材2のアウター側端面2hに沿って延びている。このとき、外方部材2は、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離が短く設計されているため、側板部72bは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5のアウター側端部近傍に向けて延びている。より詳細には、保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びている。ここで、「保持器5のアウター側端部近傍に向けて」や「保持器5の大径円環部5b近傍に向けて」は、径方向内側へ延びる側板部72bの大まかな方向を表すものである。これは、外方部材2のアウター側端面2hに沿う側板部72bが、そのまま保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びているのを表すことで、外方部材2のアウター側端面2hと保持器5の大径円環部5bが同一平面若しくは略同一平面となっていることを表している。本車輪用軸受装置1においては、外方部材2のアウター側端面2hが保持器5の大径円環部5bよりも僅かにインナー側に形成された関係となっている。
更に、第一実施形態に係るアウター側シール部材7において、弾性部材73は、リップ73aを有しており、このリップ73aはインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ73aの先端縁が車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触している。なお、リップ73aは、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材73は、リップ73bを有しており、このリップ73bもインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ73bの先端縁が同じくシール平面部3hに接触している。なお、リップ73bも、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材73は、リップ73cを有しており、このリップ73cはインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向内側へ傾くように延びている。そして、リップ73cの先端縁が同じくシール平面部3hに接触又は近接している。なお、リップ73cは、いわゆるグリースリップであり、環状空間Sから外部へ向かう方向に対して締付力が高まるので、主にグリースが環状空間Sから漏出するのを防ぐ機能を果たしている。
以上のように、本車輪用軸受装置1は、アウター側シール部材7が芯金72と複数のリップ73a・73b・73cを有する弾性部材73で構成されている。そして、芯金72が保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合され、更に外方部材2のアウター側端面2hに沿って径方向内側に向けて延びており、弾性部材73に形成された全てのリップ73a・73b・73cが外方部材2のアウター側端面2hよりもアウター側に配置されている。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2の内側にアウター側シール部材7を収容するためのスペースを確保する必要がなくなり、全てのリップ73a・73b・73cが径方向に並んで配置されるので、軸方向長さDb(Dn)を短縮できる。ひいては、同じ外力が掛かっても曲げモーメント(図5における矢印M参照)が小さくなるので、軸受剛性を向上でき、更に軽量化を実現することができる。
また、本車輪用軸受装置1において、複数のリップ73a・73b・73cのうち少なくとも一つのリップ(73a又は/および73b)は、その先端縁が内方部材3に形成された車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触しているメインリップである。かかる車輪用軸受装置1によれば、少なくとも一つのメインリップがシール平面部3hに接触するので、泥水や砂塵等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
更に、本車輪用軸受装置1において、複数のリップ73a・73b・73cのうち最も径方向内側にあるリップ73cは、その先端縁がシール平面部3hに接触又は近接しているグリースリップである。かかる車輪用軸受装置によれば、グリースリップがシール平面部3hに接触又は近接するので、グリースが漏出するのを防ぐことができる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金72は、嵌合部72aの先端部分72dが嵌合面2bから離間するように曲げられており、この先端部分72dを覆うように弾性部材73が一体的に形成されている。そして、嵌合面2bに接する部分における弾性部材73には、径方向内側へ突出する第一締代部73dが設けられている。これは、弾性部材73による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材73に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部73dが設けられている。そして、第一締代部73dが外方部材2の外周面(嵌合面2b)を押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金72の嵌合部分に対して一方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金72の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金72は、側板部72bの先端部分72eがアウター側端面2hから離間するように曲げられており、この先端部分72eを覆うように弾性部材73が一体的に形成されている。そして、アウター側端面2hに接する部分における弾性部材73には、インナー側へ突出する第二締代部73eが設けられている。これは、弾性部材73による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材73に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部73eが設けられている。そして、第二締代部73eが外方部材2のアウター側端面2hを押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金72の嵌合部分に対して他方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金72の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
次に、図7を用いて、第二実施形態に係るアウター側シール部材8について詳細に説明する。図7は、第二実施形態であるアウター側シール部材8とハブ輪31の形状を示す断面図である。以下において、「径方向外側」とは、内方部材3の回転軸Aから遠ざかる方向を表す。また、「径方向内側」とは、内方部材3の回転軸Aに近づく方向を表す。
車輪取付フランジ3eには、その径方向内側の外方部材2に対向する位置に、回転軸Aに対して垂直又は所定の角度となる平面が形成されている。かかる平面を「シール平面部3h」とする。また、車輪取付フランジ3eには、その径方向内側の保持器5に対向する位置に、アウター側シール部材8の径方向内側まで突出した段差部3iが形成されている。かかる段差部3iの外周面を「シール周面部3j」とする。
第二実施形態に係るアウター側シール部材8は、芯金82と弾性部材83で構成されている。
第二実施形態に係るアウター側シール部材8において、芯金82は、円筒状の嵌合部82aを有しており、この嵌合部82aが外方部材2の嵌合面2bに嵌合(外嵌)される。このとき、嵌合部82aは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合される。換言すると、例えば芯金82を構成している嵌合部82aのインナー側端縁が保持器5を構成している大径円環部5bのアウター側端縁を超えた状態で嵌合される。これは、外方部材2の外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計することで実現可能としたものである。なお、従来品に係る車輪用軸受装置と異なり、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計できるのは、外方部材2の内側にアウター側シール部材8を収容する必要がないためである。
加えて、芯金82は、円板状の側板部82bを有しており、この側板部82bが外方部材2のアウター側端面2hに沿って延びている。このとき、外方部材2は、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離が短く設計されているため、側板部82bは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5のアウター側端部近傍に向けて延びている。より詳細には、保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びている。ここで、「保持器5のアウター側端部近傍に向けて」や「保持器5の大径円環部5b近傍に向けて」は、径方向内側へ延びる側板部82bの大まかな方向を表すものである。これは、外方部材2のアウター側端面2hに沿う側板部82bが、そのまま保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びているのを表すことで、外方部材2のアウター側端面2hと保持器5の大径円環部5bが同一平面若しくは略同一平面となっていることを表している。本車輪用軸受装置1においては、外方部材2のアウター側端面2hが保持器5の大径円環部5bよりも僅かにアウター側に形成された関係となっている。
更に、第二実施形態に係るアウター側シール部材8において、弾性部材83は、リップ83aを有しており、このリップ83aはインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ83aの先端縁が車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触している。なお、リップ83aは、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材83は、リップ83bを有しており、このリップ83bもインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ83bの先端縁が同じくシール平面部3hに接触している。なお、リップ83bも、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材83は、リップ83cを有しており、このリップ83cはアウター側へ向かった後に折り返された形状とされ、アウター側からインナー側へ向かうにつれて径方向内側へ傾くように延びている。そして、リップ83cの先端縁が段差部3iのシール周面部3jに接触又は近接している。なお、リップ83cは、いわゆるグリースリップであり、環状空間Sから外部へ向かう方向に対して締付力が高まるので、主にグリースが環状空間Sから漏出するのを防ぐ機能を果たしている。
以上のように、本車輪用軸受装置1は、アウター側シール部材8が芯金82と複数のリップ83a・83b・83cを有する弾性部材83で構成されている。そして、芯金82が保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合され、更に外方部材2のアウター側端面2hに沿って径方向内側に向けて延びており、弾性部材83に形成された全てのリップ83a・83b・83cが外方部材2のアウター側端面2hよりもアウター側に配置されている。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2の内側にアウター側シール部材8を収容するためのスペースを確保する必要がなくなり、全てのリップ83a・83b・83cが径方向に並んで配置されるので、軸方向長さDb(Dn)を短縮できる。ひいては、同じ外力が掛かっても曲げモーメント(図5における矢印M参照)が小さくなるので、軸受剛性を向上でき、更に軽量化を実現することができる。
また、本車輪用軸受装置1において、複数のリップ83a・83b・83cのうち少なくとも一つのリップ(83a又は/および83b)は、その先端縁が内方部材3に形成された車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触しているメインリップである。かかる車輪用軸受装置1によれば、少なくとも一つのメインリップがシール平面部3hに接触するので、泥水や砂塵等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
更に、本車輪用軸受装置1においては、車輪取付フランジ3eにアウター側シール部材8の径方向内側まで突出した段差部3iが形成されている。そして、複数のリップ83a・83b・83cのうち最も径方向内側にあるリップ83cは、その先端縁が段差部3iのシール周面部3jに接触又は近接しているグリースリップである。かかる車輪用軸受装置1によれば、グリースリップがシール周面部3jに接触又は近接するので、グリースが漏出するのを防ぐことができる。また、段差部3iが環状空間Sのアウター側開口端を狭めてグリースの移動を制限するので、円錐ころ4および転動面(外側転走面2c・内側転走面3c)の油膜切れを防ぐことができる。更に、グリースの漏出を低減させることもできる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金82は、嵌合部82aの先端部分82dが嵌合面2bから離間するように薄肉加工がなされており、この先端部分82dを覆うように弾性部材83が一体的に形成されている。そして、嵌合面2bに接する部分における弾性部材83には、径方向内側へ突出する第一締代部83dが設けられている。これは、弾性部材83による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材83に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部83dが設けられている。そして、第一締代部83dが外方部材2の外周面(嵌合面2b)を押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金82の嵌合部分に対して一方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金82の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金82は、側板部82bの先端部分82eがアウター側端面2hから離間するように曲げられており、この先端部分82eを覆うように弾性部材83が一体的に形成されている。そして、アウター側端面2hに接する部分における弾性部材83には、インナー側へ突出する第二締代部83eが設けられている。これは、弾性部材83による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材83に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部83eが設けられている。そして、第二締代部83eが外方部材2のアウター側端面2hを押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金82の嵌合部分に対して他方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金82の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
更に加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金82は、嵌合部82aの一端から径方向外側へ向かった後に折り返されており、この折返部分82fを弾性部材83が覆っている。こうして、アウター側シール部材8には、径方向外側へ突出した堰部84が形成されている。堰部84は、外方部材2を伝って流れる泥水や車体から流れ落ちた泥水等がリップ83a・83b・83cまで到達するのを低減している。
次に、図8を用いて、第三実施形態に係るアウター側シール部材9について詳細に説明する。図8は、第三実施形態であるアウター側シール部材9とハブ輪31の形状を示す断面図である。以下において、「径方向外側」とは、内方部材3の回転軸Aから遠ざかる方向を表す。また、「径方向内側」とは、内方部材3の回転軸Aに近づく方向を表す。
車輪取付フランジ3eには、その径方向内側の外方部材2に対向する位置に、回転軸Aに対して垂直又は所定の角度となる平面が形成されている。かかる平面を「シール平面部3h」とする。また、車輪取付フランジ3eには、その径方向内側の保持器5に対向する位置に、アウター側シール部材8の径方向内側まで突出した段差部3iが形成されている。かかる段差部3iの外周面を「シール周面部3j」とする。
第三実施形態に係るアウター側シール部材9は、芯金92と弾性部材93で構成されている。
第三実施形態に係るアウター側シール部材9において、芯金92は、円筒状の嵌合部92aを有しており、この嵌合部92aが外方部材2の嵌合面2bに嵌合(外嵌)される。このとき、嵌合部92aは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合される。換言すると、例えば芯金92を構成している嵌合部92aのインナー側端縁が保持器5を構成している大径円環部5bのアウター側端縁を超えた状態で嵌合される。これは、外方部材2の外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計することで実現可能としたものである。なお、従来品に係る車輪用軸受装置と異なり、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離を短く設計できるのは、外方部材2の内側にアウター側シール部材9を収容する必要がないためである。
加えて、芯金92は、円板状の側板部92bを有しており、この側板部92bが外方部材2のアウター側端面2hに沿って延びている。このとき、外方部材2は、外側転走面2cからアウター側端面2hまでの距離が短く設計されているため、側板部92bは、アウター側の円錐ころ列4Rを構成している保持器5のアウター側端部近傍に向けて延びている。より詳細には、保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びている。ここで、「保持器5のアウター側端部近傍に向けて」や「保持器5の大径円環部5b近傍に向けて」は、径方向内側へ延びる側板部92bの大まかな方向を表すものである。これは、外方部材2のアウター側端面2hに沿う側板部92bが、そのまま保持器5の大径円環部5b近傍に向けて延びているのを表すことで、外方部材2のアウター側端面2hと保持器5の大径円環部5bが同一平面若しくは略同一平面となっていることを表している。本車輪用軸受装置1においては、外方部材2のアウター側端面2hが保持器5の大径円環部5bよりも僅かにアウター側に形成された関係となっている。
更に、第三実施形態に係るアウター側シール部材9において、弾性部材93は、リップ93aを有しており、このリップ93aはインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ93aの先端縁が車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触している。なお、リップ93aは、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材93は、リップ93bを有しており、このリップ93bもインナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、リップ93bの先端縁が同じくシール平面部3hに接触している。なお、リップ93bも、いわゆるメインリップであり、外部から環状空間Sへ向かう方向に対して締付力が高まるので、主に泥水や砂塵等の異物が環状空間Sに侵入するのを防ぐ機能を果たしている。
加えて、弾性部材93は、リップ93cを有しており、このリップ93cはアウター側へ向かった後に折り返された形状とされ、アウター側からインナー側へ向かうにつれて径方向内側へ傾くように延びている。そして、リップ93cの先端縁が段差部3iのシール周面部3jに接触又は近接している。なお、リップ93cは、いわゆるグリースリップであり、環状空間Sから外部へ向かう方向に対して締付力が高まるので、主にグリースが環状空間Sから漏出するのを防ぐ機能を果たしている。
以上のように、本車輪用軸受装置1は、アウター側シール部材9が芯金92と複数のリップ93a・93b・93cを有する弾性部材93で構成されている。そして、芯金92が保持器5の径方向外側で少なくとも一部が重なるように外方部材2の外周面に嵌合され、更に外方部材2のアウター側端面2hに沿って径方向内側に向けて延びており、弾性部材93に形成された全てのリップ93a・93b・93cが外方部材2のアウター側端面2hよりもアウター側に配置されている。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2の内側にアウター側シール部材9を収容するためのスペースを確保する必要がなくなり、全てのリップ93a・93b・93cが径方向に並んで配置されるので、軸方向長さDb(Dn)を短縮できる。ひいては、同じ外力が掛かっても曲げモーメント(図5における矢印M参照)が小さくなるので、軸受剛性を向上でき、更に軽量化を実現することができる。
また、本車輪用軸受装置1において、複数のリップ93a・93b・93cのうち少なくとも一つのリップ(93a又は/および93b)は、その先端縁が内方部材3に形成された車輪取付フランジ3eのシール平面部3hに接触しているメインリップである。かかる車輪用軸受装置1によれば、少なくとも一つのメインリップがシール平面部3hに接触するので、泥水や砂塵等の異物が侵入するのを防ぐことができる。
更に、本車輪用軸受装置1においては、車輪取付フランジ3eにアウター側シール部材9の径方向内側まで突出した段差部3iが形成されている。そして、複数のリップ93a・93b・93cのうち最も径方向内側にあるリップ93cは、その先端縁が段差部3iのシール周面部3jに接触又は近接しているグリースリップである。かかる車輪用軸受装置1によれば、グリースリップがシール周面部3jに接触又は近接するので、グリースが漏出するのを防ぐことができる。また、段差部3iが環状空間Sのアウター側開口端を狭めてグリースの移動を制限するので、円錐ころ4および転動面(外側転走面2c・内側転走面3c)の油膜切れを防ぐことができる。更に、グリースの漏出を低減させることもできる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金92は、嵌合部92aの一端から円弧状に折り返されており、この折返部分92dを覆うように弾性部材93が一体的に形成されている。そして、嵌合面2bに接する部分における弾性部材93には、径方向内側へ突出する第一締代部93dが設けられている。これは、弾性部材93による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材93に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部93dが設けられている。そして、第一締代部93dが外方部材2の外周面(嵌合面2b)を押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金92の嵌合部分に対して一方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金92の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金92は、側板部92bの先端部分92eがアウター側端面2hから離間するように曲げられており、この先端部分92eを覆うように弾性部材93が加硫接着されている。そして、アウター側端面2hに接する部分における弾性部材93には、インナー側へ突出する第二締代部93eが設けられている。これは、弾性部材93による締付力の向上を目的としている。
このように、本車輪用軸受装置1においては、弾性部材93に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部93eが設けられている。そして、第二締代部93eが外方部材2のアウター側端面2hを押圧している。かかる車輪用軸受装置1によれば、外方部材2と芯金92の嵌合部分に対して他方から水分が浸入するのを防ぐことができる。ひいては、外方部材2と芯金92の嵌合部分が腐食するのを防ぐことができる。
更に加えて、本車輪用軸受装置1において、芯金92は、嵌合部92aの一端からアウター側へ折り返されるとともに、その末端が径方向外側へ折り曲げられており、この折返部分92dや折曲部分92fを弾性部材93が覆っている。こうして、アウター側シール部材9には、径方向外側へ突出した堰部94が形成されている。堰部94は、外方部材2を伝って流れる泥水や車体から流れ落ちた泥水等がリップ93a・93b・93cまで到達するのを低減している。
更に加えて、本車輪用軸受装置1においては、最も径方向外側にラビリンスリップ93fが形成されている。ラビリンスリップ93fは、インナー側からアウター側へ向かうにつれて径方向外側へ傾くように延びている。そして、ラビリンスリップ93fは、シール平面部3hの径方向外側端部からハブボルト33の座面まで緩やかに傾斜する傾斜面3kに対して小さな隙間をあけて沿っている。従って、堰部94は、外方部材2を伝って流れる泥水や車体から流れ落ちた泥水等がリップ93a・93b・93cまで到達するのを更に低減している。
本願における車輪用軸受装置1は、車体取付フランジ2eを有している外方部材2と、ハブ輪31に一つの内輪32が嵌合されている内方部材3と、で構成された内方部材回転仕様の第3世代構造としているが、これに限定するものではない。例えば、内方部材としてハブ輪と自在継手が連結されており、車体取付フランジを有している外方部材と、ハブ輪と自在継手の嵌合体である内方部材と、で構成された第4世代構造であってもよい。
本発明は、各実施形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 車輪用軸受装置
2 外方部材
2c 外側転走面
2d 外側転走面
3 内方部材
3c 内側転走面
3d 内側転走面
3e 車輪取付フランジ
3h シール平面部
3i 段差部
3j シール周面部
4 転動体
5 保持器
5a 小径円環部
5b 大径円環部
5c 柱部
6 インナー側シール部材
7 アウター側シール部材
72 芯金
73 弾性部材
73a リップ(メインリップ)
73b リップ(メインリップ)
73c リップ(グリースリップ)
73d 第一締代部
73e 第二締代部
S 環状空間

Claims (7)

  1. 内周に外側転走面が形成された外方部材と、
    外周に内側転走面が形成された内方部材と、
    前記外方部材と前記内方部材の両転走面間に転動自在に介装される複数の転動体と、
    前記複数の転動体のそれぞれを前記内方部材の回転軸を中心に円形にかつ等間隔に保持する保持器と、
    前記外方部材と前記内方部材によって形成された環状空間のアウター側開口端を塞ぐアウター側シール部材と、を備える車輪用軸受装置において、
    前記アウター側シール部材が芯金と複数のリップを有する弾性部材で構成され、
    前記芯金が前記保持器の径方向外側で少なくとも一部が重なるように前記外方部材の外周面に嵌合され、更に前記外方部材のアウター側端面に沿って径方向内側に向けて延びており、
    前記弾性部材に形成された全ての前記リップが前記外方部材のアウター側端面よりもアウター側に配置されており、
    前記芯金の嵌合部の先端部が外方部材の外周面から離間するように曲げられており、前記先端部を覆うように前記弾性部材が一体的に形成されており、
    前記芯金の側板部の先端部が外方部材のアウター側端面から離間するように曲げられており、前記先端部を覆うように前記弾性部材が一体的に形成されており、
    前記弾性部材に一体的に形成され、径方向内側へ突出する第一締代部が設けられており、
    前記弾性部材に一体的に形成され、インナー側へ突出する第二締代部が設けられている、
    ことを特徴とする車輪用軸受装置。
  2. 前記複数のリップのうち少なくとも一つのリップは、その先端縁が前記内方部材に形成された車輪取付フランジのシール平面部に接触しているメインリップである、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  3. 前記複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁が前記内方部材に形成された車輪取付フランジのシール平面部に接触又は近接しているグリースリップである、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  4. 前記内方部材に形成された車輪取付フランジに前記アウター側シール部材の径方向内側まで突出した段差部が形成されており、
    前記複数のリップのうち最も径方向内側にあるリップは、その先端縁が前記段差部のシール周面部に接触又は近接しているグリースリップである、ことを特徴とする請求項1に記載の車輪用軸受装置。
  5. 前記第一締代部が前記外方部材の外周面を押圧している、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
  6. 該第二締代部が前記外方部材のアウター側端面を押圧している、ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
  7. 前記転動体が円錐ころであり、前記保持器がエンジニアリングプラスチックで形成されたもので小径円環部と大径円環部と複数の柱部からなり、前記芯金が前記大径円環部を越えて径方向外側で重なるように前記外方部材の外周面に嵌合されている、ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車輪用軸受装置。
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