JP2017067103A - 車輪用軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】シールリップの面圧が高まるのを抑制して摩擦抵抗の増加を防ぐとともに、シールリップの異常摩耗を防いでシール性を維持できる車輪用軸受装置の提供を目的とする。【解決手段】車輪用軸受装置1において、インナー側のシール部材7は、外方部材2の内周に嵌合されるシールリング8、および内方部材3の外周に嵌合されるスリンガ9からなり、シールリング8とスリンガ9とを互いに対向配置した状態で、シールリング8とスリンガ9との間に狭い間隙Cが形成されており、シールリング8が芯金81と、この芯金81に加硫接着された少なくとも一つのシールリップ(ラジアルリップ82a)及び他のリップ(ラビリンスリップ82d)が形成された弾性部材(シールゴム82)とを有し、シールリップ(82a)がスリンガ9に接触し、他のリップ(82d)が狭い間隙Cの軸受内側の開口部coを覆う。【選択図】図5
Description
本発明は車輪用軸受装置に関する。詳しくは摩擦抵抗の増加を防ぎ、かつシール性を維持できる車輪用軸受装置に関する。
従来、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持する車輪用軸受装置が知られている。車輪用軸受装置は、外方部材の内側に内方部材が転動体を介して支持されている。車輪用軸受装置は、内部に封入されているグリースが減ったり砂塵等(砂塵のほかに雨水や泥水等を含む)が侵入したりすると、転動体が損傷して軸受寿命が短くなる。このため、車輪用軸受装置は、グリースの漏れを防止するとともに砂塵等の侵入を防止すべく、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端に一対のシール部材を装着している。
ところで、ラジアルリップの代わりにグリースリップを有し、このグリースリップが接触するディフレクタを備えた車輪用軸受装置が提案されている。このような車輪用軸受装置は、内方部材の偏心に対してもグリースの漏れや砂塵等の侵入を防ぐことができる。ひいては、軸受寿命を向上させることができる。例えば、特許文献1に記載の如くである。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、外方部材と、内方部材と、外方部材と内方部材の間に介装される転動体と、外方部材と内方部材との間に形成される環状空間の両端に装着される一対のシール部材とを具備する。一方のシール部材は、外方部材の内周に嵌合されるシールリングと、内方部材の外周に嵌合されるスリンガとで構成されている。そして、シールリングに形成されたアキシアルリップの先端がスリンガに接触した状態となっている。加えて、特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、内方部材の外周に嵌合されるディフレクタを有している。そして、シールリングに形成されたグリースリップの先端がディフレクタに接触した状態となっている。
特許文献1に記載の車輪用軸受装置は、転動体からシール部材までの寸法が小さくなるように構成されている。このような構成では、内方部材につられて転動体が回転すると、転動体によってグリースが押し退けられ、押し退けられたグリースによってグリースリップが押されることとなる。すると、グリースリップの面圧が高まり、摩擦抵抗が増加してしまうという問題があった。また、グリースリップの異常摩耗が進み、シール性が低下してしまうという問題もあった。
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、シールリップの面圧が高まるのを抑制して摩擦抵抗の増加を防ぐとともに、シールリップの異常摩耗を防いでシール性を維持できる車輪用軸受装置の提供を目的とする。
即ち、本発明は、外周に車体取り付けフランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、一端部に車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、前記外方部材と前記内方部材との間に形成される環状空間の両端に装着される一対のシール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、前記一対のシール部材のうちインナー側のシール部材は、前記外方部材の内周に嵌合されるシールリング、および前記内方部材の外周に嵌合されるスリンガからなり、前記シールリングと前記スリンガとを互いに対向配置した状態で、前記シールリングと前記スリンガとの間に狭い間隙が形成されており、前記シールリングが芯金と、この芯金に加硫接着された少なくとも一つのシールリップ及び他のリップが形成された弾性部材とを有し、前記シールリップが前記スリンガに接触し、前記他のリップが前記狭い間隙の軸受内側の開口部を覆うものである。
本発明は、前記他のリップに隣接するように、前記内輪の外周に突出部を一体に設けたものである。
本発明は、前記突出部の外周に案内溝を設け、前記内輪が主回転方向に回転している際に前記シール部材から離間する方向へグリースを案内するものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明によれば、車輪用軸受装置は、シールリングとスリンガとの間に狭い間隙が形成されている。また、シールリングが芯金と、この芯金に加硫接着された少なくとも一つのシールリップ及び他のリップが形成された弾性部材とを有している。そして、シールリップがスリンガに接触し、他のリップがシールリングとスリンガとの間に形成される狭い間隙の軸受内側の開口部を覆っている。これにより、シールリップに掛かるグリースの押力を抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリップの異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
本発明によれば、他のリップに隣接するように、内輪の外周に突出部を一体に設けている。これにより、確実にシールリップに掛かるグリースの押力を抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリップの異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
本発明によれば、突出部の外周に案内溝を設け、内輪が主回転方向に回転している際にシール部材から離間する方向へグリースを案内する。これにより、さらに確実にシールリップに掛かるグリースの押力を抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリングの異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
以下に、図1から図4を用いて、本発明に係る車輪用軸受装置の第一実施形態である車輪用軸受装置1について説明する。
車輪用軸受装置1は、自動車等の懸架装置において車輪を回転自在に支持するものである。車輪用軸受装置1は、外方部材2、内方部材3(ハブ輪4と内輪5)、転動体6、シール部材7(以降「一側シール部材7」とする)、シール部材10(以降「他側シール部材10」とする)を具備する。なお、「一側」とは、車輪用軸受装置1の車体側、即ち、インナー側を表す。また、「他側」とは、車輪用軸受装置1の車輪側、即ち、アウター側を表す。
外方部材2は、内方部材3(ハブ輪4と内輪5)を支持するものである。外方部材2は、略円筒形状に形成されたS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。外方部材2の一側端部には、一側シール部材7が嵌合可能な一側開口部2aが形成されている。外方部材2の他側端部には、他側シール部材10が嵌合可能な他側開口部2bが形成されている。外方部材2の内周面には、環状に外側転走面2cと外側転走面2dとが互いに平行となるように形成されている。但し、外側転走面2dは、外側転走面2cよりもピッチ円直径が大きくなっている。外側転走面2cと外側転走面2dには、高周波焼入れが施され、表面硬さが58〜64HRCの範囲となるように硬化処理されている。なお、外方部材2の外周面には、懸架装置のナックルに取り付けるための車体取り付けフランジ2eが一体に形成されている。
内方部材3は、図示しない車輪を回転自在に支持するものである。内方部材3は、ハブ輪4と内輪5で構成されている。
ハブ輪4は、有底円筒形状に形成されたS53C等の炭素0.40〜0.80wt%を含む中高炭素鋼で構成されている。ハブ輪4の一側端部には、小径段部4aが形成されている。小径段部4aには、内輪5が圧入されている。ハブ輪4の他側端部には、車輪取り付けフランジ4bが一体的に形成されている。車輪取り付けフランジ4bには、円周等配位置にハブボルト4dが設けられている。また、ハブ輪4の外周面には、環状に内側転走面4cが形成されている。ハブ輪4は、小径段部4aから内側転走面4cまで高周波焼入れが施され、表面硬さが58〜64HRCの範囲となるように硬化処理されている。これにより、ハブ輪4は、車輪取り付けフランジ4bに付加される回転曲げ荷重に対して十分な機械的強度と耐久性を有している。なお、内側転走面4cは、外方部材2の外側転走面2dに対向する。
内輪5は、略円筒形状に形成されたSUJ2等の高炭素クロム軸受鋼で構成されている。内輪5の外周面には、環状に内側転走面5aが形成されている。つまり、内輪5は、ハブ輪4の小径段部4aに嵌め込まれ、小径段部4aの外周に内側転走面5aを構成している。内輪5は、いわゆるズブ焼入れが施され、芯部まで58〜64HRCの範囲となるように硬化処理されている。これにより、内輪5は、車輪取り付けフランジ4bに付加される回転曲げ荷重に対して十分な機械的強度と耐久性を有している。なお、内側転走面5aは、外方部材2の外側転走面2cに対向する。
転動体6は、外方部材2と内方部材3(ハブ輪4と内輪5)の間に介装されるものである。転動体6は、一側ボール列6aと他側ボール列6bを有している。一側ボール列6aと他側ボール列6bは、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼で構成されている。一側ボール列6aと他側ボール列6bには、いわゆるズブ焼入れが施され、芯部まで58〜64HRCの範囲となるように硬化処理されている。一側ボール列6aは、転動体である複数のボールが保持器によって環状に保持されている。他側ボール列6bも、転動体である複数のボールが保持器によって環状に保持されている。但し、他側ボール列6bは、一側ボール列6aよりもピッチ円直径が大きくなっている。一側ボール列6aは、内輪5に形成されている内側転走面5aと、それに対向する外方部材2の外側転走面2cとの間に転動自在に収容されている。他側ボール列6bは、ハブ輪4に形成されている内側転走面4cと、それに対向する外方部材2の外側転走面2dとの間に転動自在に収容されている。このようにして、一側ボール列6aと他側ボール列6bは、外方部材2と内方部材3(ハブ輪4と内輪5)とで複列アンギュラ玉軸受を構成している。なお、車輪用軸受装置1は、複列アンギュラ玉軸受を構成したものであるが、これに限定するものではない。例えば、複列円錐ころ軸受等を構成したものであっても良い。また、車輪用軸受装置1は、ハブ輪4の外周に一側ボール列6aの内側転走面4cが直接形成されている第3世代構造の車輪用軸受装置であるがこれに限定するものではなく、ハブ輪4に一対の内輪5が圧入固定された第2世代構造や、ハブ輪4を備えずに外方部材2である外輪と内方部材である内輪5とから構成される第1世代構造であっても良い。
一側シール部材7は、外方部材2と内方部材3との間に形成される環状空間の開口部に装着されるものである。一側シール部材7は、円環状のシールリング8と円環状のスリンガ9で構成されている。
シールリング8は、外方部材2の内周に嵌合されて外方部材2と一体的に構成される。シールリング8は、芯金81と弾性部材であるシールゴム82とを有する。
芯金81は、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)で構成されている。芯金81は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、芯金81は、円筒状の嵌合部81aと、その一端から内方部材3(内輪5)に向かって延びる円板状の側板部81bとが形成されている。嵌合部81aと側板部81bは、互いに略垂直に交わっており、嵌合部81aは後述するスリンガ9の嵌合部9aに対向する。また、側板部81bは後述するスリンガ9の側板部9bに対向する。なお、嵌合部81aと側板部81bには、弾性部材であるシールゴム82が加硫接着されている。
シールゴム82は、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムで構成されている。シールゴム82には、シールリップであるラジアルリップ82a、内側アキシアルリップ82bおよび外側アキシアルリップ82cが形成されている。
スリンガ9は、内方部材3の外周(内輪5の外周)に嵌合されて内方部材3と一体的に構成される。
スリンガ9は、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)で構成されている。スリンガ9は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略L字状に形成されている。これにより、スリンガ9は、円筒状の嵌合部9aと、その端部から外方部材2に向かって延びる円板状の側板部9bとが形成されている。嵌合部9aと側板部9bは、互いに垂直に交わっており、嵌合部9aは前述した芯金81の嵌合部81aに対向する。また、側板部9bは前述した芯金81の側板部81bに対向する。なお、側板部9bには、磁気エンコーダ9cが設けられている。
一側シール部材7は、シールリング8とスリンガ9とが対向するように配置される。このとき、ラジアルリップ82aは、油膜を介してスリンガ9の嵌合部9aに接触する。また、アキシアルリップ82bは、油膜を介してスリンガ9の側板部9bに接触する。そして、外側アキシアルリップ82cも、油膜を介してスリンガ9の側板部9bに接触する。このようにして、一側シール部材7は、いわゆるパックシールを構成し、グリースの漏れを防止するとともに砂塵等の侵入を防止するのである。
他側シール部材10は、外方部材2と内方部材3との間に形成される環状空間の開口部に装着されるものである。他側シール部材10は、円環状のシールリング11で構成されている。
他側シール部材10は、外方部材2の内周に嵌合されて外方部材2と一体的に構成される。シールリング11は、芯金111と弾性部材であるシールゴム112とを有する。
芯金111は、フェライト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS430系等)やオーステナイト系ステンレス鋼板(JIS規格のSUS304系等)、あるいは、防錆処理された冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)で構成されている。芯金111は、円環状の鋼板がプレス加工によって屈曲され、軸方向断面視で略C字状に形成されている。これにより、芯金111は、円筒状の嵌合部111aと、その一端から内方部材3(ハブ輪4)に向かって延びる円板状の側板部111bとが形成されている。嵌合部111aと側板部111bは、互いに湾曲しながら交わっており、嵌合部111aはハブ輪4の軸面部4gに対向する。また、側板部111bはハブ輪4の曲面部4fおよび側面部4e(車輪取り付けフランジ4bの端面を指す)に対向する。なお、嵌合部111aと側板部111bには、弾性部材であるシールゴム112が加硫接着されている。
シールゴム112は、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、耐熱性に優れたHNBR(水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、耐熱性、耐薬品性に優れたACM(ポリアクリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、あるいはシリコンゴム等の合成ゴムで構成されている。シールゴム112には、シールリップであるラジアルリップ112a、内側アキシアルリップ112bおよび外側アキシアルリップ112cが形成されている。
他側シール部材10は、シールリング11とハブ輪4とが対向するように配置される。このとき、ラジアルリップ112aは、油膜を介してハブ輪4の軸面部4gに接触する。また、アキシアルリップ112bは、油膜を介してハブ輪4の曲面部4fに接触する。そして、外側アキシアルリップ112cも、油膜を介してハブ輪4の側面部4eに接触する。このようにして、他側シール部材10は、グリースの漏れを防止するとともに砂塵等の侵入を防止するのである。
次に、図5を用いて、第一実施形態である車輪用軸受装置1について詳細に説明する。
一側シール部材7は、シールリング8とスリンガ9で環状の狭い間隙Cを構成している。狭い間隙Cは、シールリング8(芯金81の嵌合部81a)とスリンガ9の側板部9b端面との隙間である通路L1、シールリング8(芯金81の側板部81b)とスリンガ9の側板部9bとの隙間である通路L2、シールリング8(芯金81の側板部81b端面)とスリンガ9の嵌合部9aとの隙間である通路L3、で構成されている。つまり、一側シール部材7は、外部と内部をつなぐ空間に通路L1と通路L2と通路L3からなるクランク状の狭い間隙Cを構成しているのである。
このように、一側シール部材7は、狭い間隙Cが砂塵等の侵入を抑制することにより、さらにシール性を向上させている。つまり、さらにグリースの漏れや砂塵等の侵入を防止している。なお、通路L2には、内側アキシアルリップ82bと外側アキシアルリップ82cが配置されており、通路L3には、ラジアルリップ82aが配置されている。このため、砂塵等の侵入を抑制するという狭い間隙Cの機能により、グリースの漏れや砂塵等の侵入を防止するという各リップ82a・82b・82cの機能が相乗的に優位な効果を奏する。
加えて、一側シール部材7は、シールゴム82に他のリップ82d(以降「ラビリンスリップ82d」とする)が形成されている。ラビリンスリップ82dは、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制して面圧が高まるのを防ぐものである。なお、ラビリンスリップ82dは、通路L3の出入口の近傍に配置されている。
ラビリンスリップ82dは、シールゴム82の端部から内輪5へ向かって延び、通路L3の出入口を覆うように配置されている。つまり、ラビリンスリップ82dは、狭い間隙Cの軸受内側の開口部coを覆うように配置されている。また、ラビリンスリップ82dは、基部から先端部に向けて転動体6側へ傾斜している。そして、ラビリンスリップ82dは、その先端部がスリンガ9の嵌合部9a端面から離間した状態となっている。さらに、ラビリンスリップ82dは、その先端部が内輪5の外周面5bからも離間した状態となっている。このため、ラビリンスリップ82dは、グリースの移動を制限し、グリースが狭い間隙Cに入るのを抑制する。ひいては、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。なお、「軸受内側」とは、一側シール部材7よりも転動体6側を意味する。
このように、車輪用軸受装置1は、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。そして、ラジアルリップ82aの面圧(ラジアルリップ82aがスリンガ9の嵌合部9aを押し付ける荷重)を下げるのである。そのため、車輪用軸受装置1は、シールリング8とスリンガ9の摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、内方部材3(ハブ輪4と内輪5)が回転する際の摩擦抵抗を低減することができる。
以上のように、第一実施形態である車輪用軸受装置1は、シールリング8とスリンガ9との間に狭い間隙Cが形成されている。また、シールリング8が芯金81と、この芯金81に加硫接着された少なくとも一つのシールリップ(ラジアルリップ82a)及び他のリップ(ラビリンスリップ82d)が形成された弾性部材(シールゴム82)とを有している。そして、シールリップ(ラジアルリップ82a)がスリンガ9に接触し、他のリップ(ラビリンスリップ82d)がシールリング8とスリンガ9との間に形成される狭い間隙Cの軸受内側の開口部coを覆っている。これにより、シールリップ(ラジアルリップ82a)に掛かるグリースの押力Fを抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリップ(ラジアルリップ82a)の異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
次に、図6を用いて、第二実施形態である車輪用軸受装置1について詳細に説明する。
第二実施形態である車輪用軸受装置1においても、シールリング8とスリンガ9で狭い間隙Cを構成している。また、シールリング8は、ラビリンスリップ82dを有している。ラビリンスリップ82dは、狭い間隙Cの軸受内側の開口部coを覆うように配置されている。
内輪5は、その外周に突出部5Tが設けられている。具体的に説明すると、内輪5は、転動体6からシール部材7の間で、その外周から外方部材2へ向かって突出部5Tが設けられている。そして、かかる突出部5Tは、ラビリンスリップ82dに隣接した状態となっている。このため、突出部5Tは、グリースの移動を制限し、グリースが狭い間隙Cに入るのを抑制する。ひいては、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。
このように、車輪用軸受装置1は、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。そして、ラジアルリップ82aの面圧(ラジアルリップ82aがスリンガ9の嵌合部9aを押し付ける荷重)を下げるのである。そのため、車輪用軸受装置1は、シールリング8とスリンガ9の摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、内方部材3(ハブ輪4と内輪5)が回転する際の摩擦抵抗を低減することができる。
以上のように、第二実施形態である車輪用軸受装置1は、他のリップ(ラビリンスリップ82d)に隣接するように、内輪5の外周に突出部5Tを一体に設けている。これにより、確実にシールリップ(ラジアルリップ82a)に掛かるグリースの押力Fを抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリップ(ラジアルリップ82a)の異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
なお、第二実施形態である車輪用軸受装置1は、ラジアルリップ82aと突出部5Tをともに構成要件としているが、これに限定するものではない。例えば、ラジアルリップ82aを構成要件とせず、突出部5Tのみを構成要件としても良い。
次に、図7を用いて、第三実施形態である車輪用軸受装置1について詳細に説明する。
第三実施形態である車輪用軸受装置1においても、シールリング8とスリンガ9で狭い間隙Cを構成している。また、シールリング8は、ラビリンスリップ82dを有している。ラビリンスリップ82dは、狭い間隙Cの軸受内側の開口部coを覆うように配置されている。さらに、内輪5は、その外周に突出部5Tが設けられている。突出部5Tは、ラジアルリップ82aに隣接した状態となっている。
突出部5Tは、その外周に案内溝5sが設けられている。具体的に説明すると、突出部5Tは、シール部材7側の端部から転動体6側の端部まで、その外周に回転軸方向Aに対して所定角度となる案内溝5sが設けられている。そして、かかる案内溝5sは、シール部材7側の端部を基準として反主回転方向Dへねじれる螺旋状となっている。このため、案内溝5sは、内輪5が主回転方向Dに回転している際にシール部材7から離間する方向へグリースを案内し、グリースが狭い間隙Cに入るのを抑制する。ひいては、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。
このように、車輪用軸受装置1は、ラジアルリップ82aに掛かるグリースの押力Fを抑制する。そして、ラジアルリップ82aの面圧(ラジアルリップ82aがスリンガ9の嵌合部9aを押し付ける荷重)を下げるのである。そのため、車輪用軸受装置1は、シールリング8とスリンガ9の摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、内方部材3(ハブ輪4と内輪5)が回転する際の摩擦抵抗を低減することができる。
以上のように、第三実施形態である車輪用軸受装置1は、突出部5Tの外周に案内溝5sを設け、内輪5が主回転方向Dに回転している際にシール部材7から離間する方向へグリースを案内する。これにより、さらに確実にシールリップ(ラジアルリップ82a)に掛かるグリースの押力Fを抑制して面圧が高まるのを防ぐので、摩擦抵抗を低減することができる。ひいては、シールリップ(ラジアルリップ82a)の異常摩耗を防いで、シール性を向上させることができる。
なお、第三実施形態である車輪用軸受装置1は、ラジアルリップ82aと案内溝5sが設けられた突出部5Tをともに構成要件としているが、これに限定するものではない。例えば、ラジアルリップ82aを構成要件とせず、案内溝5sが設けられた突出部5Tのみを構成要件としても良い。また、案内溝5sの代わりにグリースを掻く、フィンブレードを設けたものであっても良い。
1 車輪用軸受装置
2 外方部材
3 内方部材
4 ハブ輪
5 内輪
6 転動体
7 一側シール部材
8 シールリング
81 芯金
82 シールゴム
82a ラジアルリップ(シールリップ)
82b 内側アキシアルリップ
82c 外側アキシアルリップ
82d ラビリンスリップ(他のリップ)
9 スリンガ
91 芯金
C 狭い間隙
co 開口部
L1 通路
L2 通路
L3 通路
2 外方部材
3 内方部材
4 ハブ輪
5 内輪
6 転動体
7 一側シール部材
8 シールリング
81 芯金
82 シールゴム
82a ラジアルリップ(シールリップ)
82b 内側アキシアルリップ
82c 外側アキシアルリップ
82d ラビリンスリップ(他のリップ)
9 スリンガ
91 芯金
C 狭い間隙
co 開口部
L1 通路
L2 通路
L3 通路
Claims (3)
- 外周に車体取り付けフランジを一体に有し、内周に複列の外側転走面が一体に形成された外方部材と、
一端部に車輪を取り付けるための車輪取り付けフランジを一体に有し、外周に軸方向に延びる小径段部が形成されたハブ輪、およびこのハブ輪の前記小径段部に圧入された少なくとも一つの内輪からなり、外周に前記複列の外側転走面に対向する複列の内側転走面が形成された内方部材と、
前記外方部材と前記内方部材のそれぞれの転走面間に転動自在に収容された複列の転動体と、
前記外方部材と前記内方部材との間に形成される環状空間の両端に装着される一対のシール部材と、を備えた車輪用軸受装置において、
前記一対のシール部材のうちインナー側のシール部材は、前記外方部材の内周に嵌合されるシールリング、および前記内方部材の外周に嵌合されるスリンガからなり、前記シールリングと前記スリンガとを互いに対向配置した状態で、前記シールリングと前記スリンガとの間に狭い間隙が形成されており、
前記シールリングが芯金と、この芯金に加硫接着された少なくとも一つのシールリップ及び他のリップが形成された弾性部材とを有し、
前記シールリップが前記スリンガに接触し、
前記他のリップが前記狭い間隙の軸受内側の開口部を覆う、車輪用軸受装置。 - 前記他のリップに隣接するように、前記内輪の外周に突出部を一体に設けた、請求項1に記載の車輪用軸受装置。
- 前記突出部の外周に案内溝を設け、前記内輪が主回転方向に回転している際に前記シール部材から離間する方向へグリースを案内する、請求項2に記載の車輪用軸受装置。
Priority Applications (1)
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JP2015190491A JP2017067103A (ja) | 2015-09-28 | 2015-09-28 | 車輪用軸受装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2015-09-28 JP JP2015190491A patent/JP2017067103A/ja active Pending
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