JP6152793B2 - シールリング及びシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents
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Description
このシールリング14aは、それぞれが円環状に形成された芯金17とシール材18とから成る。このうちの芯金17は、金属板製で、外輪2の軸方向外端部内周面に内嵌固定された円筒状の嵌合筒部19と、この嵌合筒部19の軸方向外端部から径方向外方に向けて直角に折れ曲がった円輪部20と、この嵌合筒部19の軸方向内端部から軸方向外側に向けて180度折り返されると共に径方向内方に向けて折れ曲がった内径支持部21とを備える。又、前記シール材18は、ゴムの如きエラストマー等の弾性材製で、前記芯金17に加硫接着により結合固定されており、前記円輪部20の周囲を覆った円輪状の堰部22と、前記内径支持部21の軸方向外側面に支持された基部23と、この基部23から延出する状態で設けられた3本のシールリップ24a、24b、24cとを備える。
前記シール材18の体積が収縮する際、このシール材18のうちで、前記芯金17に接着されていない、例えばシールリップ24a〜24cは、引っ張り応力が生じない状態に変形できる。これに対し、前記芯金17に接着された、例えば堰部22及び基部23は、この様な変形ができない為、当該部分に残留引っ張り応力が発生し、特にこのうちの堰部22のうち、前記芯金17を構成する円輪部20と軸方向に重畳する部分に、大きな残留引っ張り応力が発生する。又、この様にして生じる引っ張り応力は、前記シール材18のうちで、前記芯金17に直接接着された内部側部分よりも、ゴム分子の配向や架橋の影響が加わる表面側部分で局所的に大きくなる傾向がある。又、図11に示した様に、前記シール材18のうちの径方向両端部(図11の上下両端部)は、径方向に関して変形が可能である為、残留引っ張り応力を減少させる事ができるが、このシール材18は、全周に亙り連続する状態で形成されており、円周方向には端部(開放部)が存在しない為、円周方向の引っ張り応力が残留し易くなる。この結果、前記堰部22の表面側部分に、円周方向の大きな残留引っ張り応力が発生し易くなる。
このうちの芯金は、金属板製で全体を円環状とされたもので、嵌合筒部と、円輪部と、内径支持部とを有する。
前記嵌合筒部は、円筒状で、前記外径側軌道輪部材の端部内周面に内嵌固定される。又、前記円輪部は、この嵌合筒部の軸方向片端部から径方向外方に向けて折れ曲がる状態で設けられており、その軸方向他側面が、前記外径側軌道輪部材の端面に、直接又は前記シール材の一部を介して突き当てられる。更に、前記内径支持部は、前記嵌合筒部の軸方向他端部に連続する状態で、この嵌合筒部よりも径方向内方に設けられている。
前記シール材は、堰部と、基部と、少なくとも1本のシールリップとを有する。
前記堰部は、前記円輪部を覆うと共に、前記シールリングの装着状態で、その外周縁部を、前記外径側軌道輪部材の端部外周面よりも径方向外方に突出させる。又、前記基部は、前記内径支持部の軸方向片側面に支持されている。更に、前記シールリップは、この基部から延出する状態で設けられ、前記シールリングの装着状態で、その先端縁を前記内径側軌道輪部材の表面に全周に亙り摺接させる。
特に本発明のシールリングにあっては、前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝(例えば断面半円形又は断面U字形等の断面円弧形の凹溝)を複数(例えば円周方向等間隔複数個所に)形成している。
そして、本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、前記シールリングを、上述した本発明のシールリングとしている。
即ち、本発明の場合には、前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝を複数形成している。この為、この堰部の軸方向片側部分のうちで、円周方向に関して凹溝同士の間に存在する部分を、円周方向に変形(収縮)させ易くできる。従って、前記堰部の軸方向片側部分の円周方向の引っ張り応力を開放する事ができて、この堰部の軸方向片側部分に生じる円周方向の残留引っ張り応力を低減できる。この結果、この堰部にオゾン劣化による亀裂が発生する事を有効に防止できる。
尚、前記各凹溝内は、空気の体積が少ない割に弾性材の表面積が大きいので、オゾン劣化の影響を受けにくく、これら各凹溝が、オゾン劣化の亀裂の起点になる事はない。
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜2により説明する。尚、本例の特徴は、シールリング14bを構成するシール材18aのうちの堰部22aに、オゾン劣化による亀裂が発生するのを防止する為の構造にある。この様なシールリング14bを装着する車輪支持用転がり軸受ユニットに就いては、前記図9に示した構造と同様のものを採用できる他、従来から知られた各種構造を採用できる為、車輪支持用転がり軸受ユニット全体の図示並びに説明は省略し、以下、前記シールリング14bを対象に詳しく説明する。
即ち、本例の場合には、前記堰部22aの軸方向外側面に、放射状の前記各凹溝26、26を複数形成している。この為、この堰部22aの軸方向外側部分のうちで、円周方向に隣り合う凹溝26、26同士の間に存在する前記各変形部27、27を、円周方向に変形(収縮)させ易くできる。より具体的には、これら各変形部27、27の円周方向両端部が、前記各凹溝26、26に開放された状態になる(変形部27、27が円周方向に不連続の状態になる)為、これら各変形許容部27、27は、円周方向に容易に収縮できる。従って、特に円周方向の残留引っ張り応力が発生し易い、前記堰部22aの表面側部分に関して、円周方向の引っ張り応力を開放する事ができ、円周方向の残留引っ張り応力を低減できる。この結果、前記堰部22aにオゾン劣化による亀裂が発生する事を有効に防止できる。又、本例の場合には、前記各凹溝26、26の断面形状を円弧形としている為、前記各変形部27、27が円周方向に変形した場合にも、これら各凹溝26、26の一部に応力が集中する事を防止できて、亀裂等が発生する事を有効に防止できる。
尚、前記各凹溝26、26内は、空気の体積が少ない割にゴムの表面積が大きいので、オゾン劣化の影響を受けにくく、これら各凹溝26、26が、オゾン劣化の亀裂の起点になる事はない。
前記堰部22aにより、前記外輪2の外周面を伝って泥水等の異物が内部空間15に侵入する事を防止できる点を含め、その他の構成及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と同様である。
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図3〜4により説明する。本例の特徴は、シールリング14cを構成するシール材18bのうち、堰部22bの軸方向外側面の径方向中間部(図示の例では径方向中央部)に、周方向凹溝28を全周に亙り設けた点にある。この様な周方向凹溝28は、放射状の凹溝26、26の径方向中間部を円周方向に横切る状態で形成されており、断面形状はやはり円弧形(半円形、半楕円形、U字形等)である。本例の場合には、この様な周方向凹溝28を設ける事により、円周方向に関して前記各凹溝26、26同士の間部分に設けられた変形部27a、27aを、外径側変形部29、29と内径側変形部30、30とに、それぞれ径方向に2分割している。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
本発明の実施の形態の第3例に就いて、図5〜6により説明する。本例の特徴は、シールリング14dを構成するシール材18cのうちで、堰部22cの軸方向外側面の径方向中間部に、軸方向外側に向けて突出した堰部リップ31を全周に亙り設けた点にある。この様な堰部リップ31は、ラビリンスリップ(非接触リップ)であり、その先端縁を、回転側フランジ12(図1、9参照)の軸方向内側面に、微小隙間を介して対向させている。
尚、前記各外径側凹溝32、32と前記各内径側凹溝33、33とは、位相をずらして配置したり、互いに異なる断面形状とする事も可能である。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
本発明の実施の形態の第4例に就いて、図7〜8により説明する。本例の特徴は、上述した実施の形態の第3例の構造に、3本の周方向凹溝28a、28b、28cを追加して形成した点にある。具体的には、シールリング14eを構成するシール材18dのうち、堰部22dの軸方向外側面に形成された堰部リップ31の根元部分の径方向外側及び径方向内側に隣接する部分に、それぞれ周方向凹溝28a、28bを形成している。又、前記堰部22dの軸方向外側面のうちの径方向内寄り部分に、周方向凹溝28cを、内径側凹溝33、33の径方向中間部(図示の例では径方向中央部)を円周方向に横切る状態で形成している。本例の場合には、前記各周方向凹溝28a〜28cの断面形状を全て円弧形とし、互いに同形状としている。又、これら各周方向凹溝28a〜28cを設ける事により、円周方向に関して放射状の凹溝26a、26a同士の間部分に設けられた変形部27b、27bを、外径側変形部29a、29aと、中間変形部34、34と、内径側変形部30a、30aとに、それぞれ径方向に3分割している。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
2 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 静止側フランジ
6 外輪軌道
7 ハブ本体
8 内輪
9 ナット
10 内輪軌道
11 保持器
12 回転側フランジ
13 スタッド
14、14a〜14e シールリング
15 内部空間
16 カバー
17、17a 芯金
18、18a〜18d シール材
19、19a 嵌合筒部
20、20a 円輪部
21、21a 内径支持部
22、22a〜22d 堰部
23、23a 基部
24a〜24f シールリップ
25 厚肉部
26、26a 凹溝
27、27a、27b 変形部
28、28a〜28c 周方向凹溝
29 外径側変形部
30 内径側変形部
31 堰部リップ
32 外径側凹溝
33 内径側凹溝
34 中間変形部
Claims (4)
- 外気に曝らされる環境下で、使用時に回転する内径側軌道輪部材の外周面と使用時にも回転しない外径側軌道輪部材の内周面との間に存在する内部空間の端部開口を塞ぐ為に使用されるものであり、
芯金と、この芯金に加硫接着された弾性材製のシール材とを備え、
このうちの芯金は、金属板製で全体を円環状とされたもので、前記外径側軌道輪部材の端部内周面に内嵌固定される円筒状の嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向片端部から径方向外方に向けて折れ曲がり、その軸方向他側面を前記外径側軌道輪部材の端面に直接又は前記シール材の一部を介して突き当てられる円輪部と、前記嵌合筒部の軸方向他端部に連続する状態でこの嵌合筒部よりも径方向内方に設けられた内径支持部とを有するものであり、
前記シール材は、前記円輪部を覆うと共に、その外周縁部が前記外径側軌道輪部材の端部外周面よりも径方向外方に突出する堰部と、前記内径支持部の軸方向片側面に支持された基部と、この基部から延出する状態で設けられ、その先端縁を前記内径側軌道輪部材の表面に全周に亙り摺接させる少なくとも1本のシールリップとを有するものである、シールリングであって、
前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝が複数形成されている事を特徴とするシールリング。 - 前記堰部の軸方向片側面に、軸方向片側に向けて突出する堰部リップが、前記各凹溝を円周方向に横切る状態で設けられている、請求項1に記載したシールリング。
- 前記堰部の軸方向片側面に、周方向凹溝が形成されている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したシールリング。
- 内周面に外輪軌道を有し、懸架装置に支持された状態で回転しない、外径側軌道輪部材である外輪と、外周面のうちでこの外輪軌道と対向する部分に内輪軌道を有し、この外輪と同心に配置された、内径側軌道輪部材であるハブと、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、このハブの外周面のうちで、前記外輪の軸方向外端開口部よりも軸方向外方に突出した部分に設けられた、前記ハブに対し車輪を支持固定する為のフランジと、前記外輪の内周面とこのハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向外端開口部を塞ぐシールリングとを備えた、
シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットであって、
前記シールリングが、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したシールリングである事を特徴とするシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
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