JP6152793B2 - シールリング及びシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents

シールリング及びシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット Download PDF

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Description

この発明は、外気に曝らされる環境下で使用されるシールリング、及び自動車の車輪を懸架装置に支持する為のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの改良に関する。
自動車の車輪は、例えば図9に示す様な、シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット1により、懸架装置に対し回転自在に支持する。このシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット1は、外輪2の内径側にハブ3を、複数個の転動体4、4を介して回転自在に支持して成る。このうちの外輪2は、外周面に懸架装置に支持固定する為の静止側フランジ5を、内周面に複列の外輪軌道6、6を、それぞれ設けている。又、前記ハブ3は、ハブ本体7と内輪8とをナット9により組み合わせ固定したもので、外周面に複列の内輪軌道10、10を有する。又、前記各転動体4、4は、これら両内輪軌道10、10と前記両外輪軌道6、6との間に、各列毎に複数個ずつ、それぞれ保持器11、11により保持された状態で転動自在に設けられている。
又、前記ハブ本体7の軸方向外端寄り部分で、前記外輪2の軸方向外端開口部から突出した部分には、特許請求の範囲に記載したフランジに相当する、回転側フランジ12を設けている。この回転側フランジ12には、複数本のスタッド13の基端部を支持固定しており、これら各スタッド13によりこの回転側フランジ12に、車輪を構成するホイールを支持固定できる様にしている。
又、前記外輪2の軸方向外端部内周面と前記ハブ3の軸方向中間部外周面との間に、シールリング14を装着して、これら外輪2の内周面とハブ3の外周面との間に存在し、前記各転動体4、4を設けた内部空間15の軸方向外端開口部を塞いでいる。又、前記外輪2の軸方向内端開口部をカバー16で塞ぐ事により、この軸方向内端開口部から前記内部空間15内への塵芥や雨水等の異物の侵入防止、及びこの内部空間15内に充填したグリースの外部への漏洩防止を図っている。尚、軸方向に関して内とは、車両への組み付け状態で幅方向中央側を言い、同じく外とは、幅方向外側を言う。
尚、図示の例では、前記各転動体4、4として玉を使用しているが、重量の嵩む自動車に組み込む、シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、各転動体として円すいころを使用する場合もある。又、ハブ本体と内輪とを結合固定する為に、図示の様にハブ本体7の軸方向内端部にナット9を螺合固定する構造に代えて、ハブ本体の軸方向内端部を径方向外方に塑性変形させて形成したかしめ部により、このハブ本体に外嵌した内輪の軸方向内端面を抑え付ける事もできる。更に、図示の例は、従動輪(FR車、RR車、MR車の前輪、FF車の後輪)用のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットである為、ハブ本体7が充実体であるが、駆動輪(FR車、RR車、MR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)用のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、ハブ本体の中心部にスプライン孔を、このハブ本体を軸方向に貫通する状態で設ける。
何れの構造の場合も、各転動体を設置した内部空間の軸方向外端開口部のシールに関しては、外輪の軸方向外端部内周面とハブ本体の軸方向中間部外周面との間に設けた、シールリング14により図る。これに対して、前記内部空間の軸方向内端開口部のシールに関しては、従動輪用の場合には、図示の様なカバー16、又は外輪の軸方向内端部内周面と内輪の軸方向内端部外周面との間に設置した組み合わせシールリングにより、駆動輪用の場合には、組み合わせシールリングにより、それぞれ図る。
前記内部空間15内への異物侵入防止と、この内部空間15内に充填したグリースの漏洩防止とを十分に図る為には、この内部空間15の軸方向両端開口部を十分にシールする必要がある。特に、この内部空間15の軸方向外端開口部をシールする為のシールリングに就いては、回転側フランジ12の軸方向内側面に沿って径方向内方に導かれた異物が前記内部空間15内に入り込むのを防止する為に、優れたシール性能を要求される。しかも、この内部空間15の軸方向外端開口部に関しては、図9に示す様な、カバー16によるシールは行えない。
この様な事情に鑑みて従来から、転動体を設置した環状の内部空間の軸方向外端開口部をシールする為のシールリングとして、各種構造のものが考えられている。図10は、特許文献1に記載されたシールリング14aを示している。
このシールリング14aは、それぞれが円環状に形成された芯金17とシール材18とから成る。このうちの芯金17は、金属板製で、外輪2の軸方向外端部内周面に内嵌固定された円筒状の嵌合筒部19と、この嵌合筒部19の軸方向外端部から径方向外方に向けて直角に折れ曲がった円輪部20と、この嵌合筒部19の軸方向内端部から軸方向外側に向けて180度折り返されると共に径方向内方に向けて折れ曲がった内径支持部21とを備える。又、前記シール材18は、ゴムの如きエラストマー等の弾性材製で、前記芯金17に加硫接着により結合固定されており、前記円輪部20の周囲を覆った円輪状の堰部22と、前記内径支持部21の軸方向外側面に支持された基部23と、この基部23から延出する状態で設けられた3本のシールリップ24a、24b、24cとを備える。
上述の様な構成を有する従来構造のシールリング14aの場合、径方向外端部に設けた前記堰部22を、前記外輪2の軸方向外端部外周面よりも径方向外方に突出させている。これにより、この外輪2の外周面に付着した泥水等の水分が、この外輪2の外周面を伝って内部空間15に侵入する事を有効に防止できる(堰き止める事ができる)。
但し、前記シールリング14aの場合、加硫成形時に、加硫反応、揮発性添加剤の拡散、及び冷却等によって、前記シール材18の体積が収縮する事に起因して、次の様な問題を生じる可能性がある。
前記シール材18の体積が収縮する際、このシール材18のうちで、前記芯金17に接着されていない、例えばシールリップ24a〜24cは、引っ張り応力が生じない状態に変形できる。これに対し、前記芯金17に接着された、例えば堰部22及び基部23は、この様な変形ができない為、当該部分に残留引っ張り応力が発生し、特にこのうちの堰部22のうち、前記芯金17を構成する円輪部20と軸方向に重畳する部分に、大きな残留引っ張り応力が発生する。又、この様にして生じる引っ張り応力は、前記シール材18のうちで、前記芯金17に直接接着された内部側部分よりも、ゴム分子の配向や架橋の影響が加わる表面側部分で局所的に大きくなる傾向がある。又、図11に示した様に、前記シール材18のうちの径方向両端部(図11の上下両端部)は、径方向に関して変形が可能である為、残留引っ張り応力を減少させる事ができるが、このシール材18は、全周に亙り連続する状態で形成されており、円周方向には端部(開放部)が存在しない為、円周方向の引っ張り応力が残留し易くなる。この結果、前記堰部22の表面側部分に、円周方向の大きな残留引っ張り応力が発生し易くなる。
又、シール材を形成する弾性材料として、ニトリルゴム等に適宜添加剤を配合したゴム組成物が広く使用されているが、この様なゴム組成物にはオゾン劣化という欠点がある。特に、車輪支持用転がり軸受ユニットに装着されるシールリングに広く使用される、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系加硫ゴムは、引っ張り応力下でオゾンに曝らされると、オゾンとゴム分子とが反応して分子鎖が切断され、応力方向と直角方向の亀裂を発生させ易い。又、オゾンは、車両の排気ガスの多い場所、水銀灯やキセノンランプ等が点灯されている場所で、濃度が高まる事が知られており、道路は、オゾン濃度が高い場所の典型である。
従って、前記シールリング14aのうちの堰部22は、その表面部分に、円周方向の残留引っ張り応力が発生し易いだけでなく、前記シールリング14aの装着状態で外部に露出しオゾンに曝らされ易い事から、径方向(円周方向に対して直角方向)の亀裂が発生し易い、といった問題を生じる可能性がある。
尚、上述の様なオゾン劣化による問題を解消する為に、例えば特許文献2には、融点が55〜70℃程度のワックス類を、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴム100重量部に対して、0.5〜2重量部程度添加する技術が開示されている。しかしながら、この様にゴムの組成を工夫した場合にも、使用時の軸受内部温度の上昇によって、低融点のワックス類がゴム材料から次第に抜け出ていく可能性がある。この為、長期的には、ワックス類を添加するだけでは、オゾン劣化による亀裂の発生を有効に防止する事は困難であり、亀裂が進展して、シールリップ(例えばサイドリップ)の根元部分にまで達した場合には、シールリップによる緊迫力が低下し、必要とされるシール性能が得られなくなる可能性がある。
特開2012−97817号公報 特開2002−372061号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、シールリングを構成するシール材のうちで、使用状態でオゾンに曝らされ易い部分に配置される堰部に、オゾン劣化による亀裂が発生するのを有効に防止できる構造を実現する。
本発明のシールリング及びシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットのうち、本発明のシールリングは、外気に曝らされる環境下で、使用時に回転する内径側軌道輪部材の外周面と使用時にも回転しない外径側軌道輪部材の内周面との間に存在する内部空間の端部開口を塞ぐ為に使用されるものであり、芯金と、この芯金に加硫接着された弾性材製のシール材とを備える。
このうちの芯金は、金属板製で全体を円環状とされたもので、嵌合筒部と、円輪部と、内径支持部とを有する。
前記嵌合筒部は、円筒状で、前記外径側軌道輪部材の端部内周面に内嵌固定される。又、前記円輪部は、この嵌合筒部の軸方向片端部から径方向外方に向けて折れ曲がる状態で設けられており、その軸方向他側面が、前記外径側軌道輪部材の端面に、直接又は前記シール材の一部を介して突き当てられる。更に、前記内径支持部は、前記嵌合筒部の軸方向他端部に連続する状態で、この嵌合筒部よりも径方向内方に設けられている。
前記シール材は、堰部と、基部と、少なくとも1本のシールリップとを有する。
前記堰部は、前記円輪部を覆うと共に、前記シールリングの装着状態で、その外周縁部を、前記外径側軌道輪部材の端部外周面よりも径方向外方に突出させる。又、前記基部は、前記内径支持部の軸方向片側面に支持されている。更に、前記シールリップは、この基部から延出する状態で設けられ、前記シールリングの装着状態で、その先端縁を前記内径側軌道輪部材の表面に全周に亙り摺接させる。
特に本発明のシールリングにあっては、前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝(例えば断面半円形又は断面U字形等の断面円弧形の凹溝)を複数(例えば円周方向等間隔複数個所に)形成している。
上述した様な本発明のシールリングを実施する場合には、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記堰部の軸方向片側面に、軸方向片側に向けて突出する、非接触リップ又は接触リップである堰部リップを、前記各凹溝を円周方向に横切る状態で設ける。
又、本発明のシールリングを実施する場合には、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記堰部の軸方向片側面に、周方向凹溝を1乃至複数形成する。
これに対し、本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットは、内周面に外輪軌道を有し、懸架装置に支持された状態で回転しない、外径側軌道輪部材である外輪と、外周面のうちでこの外輪軌道と対向する部分に内輪軌道を有し、この外輪と同心に配置された、内径側軌道輪部材である、例えばハブ本体と内輪とを組み合わせて構成されるハブと、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体(例えば玉又はころ)と、このハブの外周面のうちで、前記外輪の軸方向外端開口部よりも軸方向外方に突出した部分に設けられた、前記ハブに対し車輪を支持固定する為のフランジと、前記外輪の内周面とこのハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向外端開口部を塞ぐシールリングとを備える。
そして、本発明のシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、前記シールリングを、上述した本発明のシールリングとしている。
上述の様な構成を有する本発明のシールリング及びシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットによれば、シールリングを構成するシール材のうちで、使用状態でオゾンに曝らされ易い部分に配置される堰部に、オゾン劣化による亀裂が発生するのを有効に防止できる。
即ち、本発明の場合には、前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝を複数形成している。この為、この堰部の軸方向片側部分のうちで、円周方向に関して凹溝同士の間に存在する部分を、円周方向に変形(収縮)させ易くできる。従って、前記堰部の軸方向片側部分の円周方向の引っ張り応力を開放する事ができて、この堰部の軸方向片側部分に生じる円周方向の残留引っ張り応力を低減できる。この結果、この堰部にオゾン劣化による亀裂が発生する事を有効に防止できる。
尚、前記各凹溝内は、空気の体積が少ない割に弾性材の表面積が大きいので、オゾン劣化の影響を受けにくく、これら各凹溝が、オゾン劣化の亀裂の起点になる事はない。
本発明の実施の形態の第1例を示す、図9のA部に相当する部分の拡大断面図。 同じく図1の左側から見た状態で示す堰部の部分正面図。 本発明の実施の形態の第2例を外輪及びハブを省略して示す図1と同様の図。 同じく図2と同様の図。 本発明の実施の形態の第3例を示す、図3と同様の図。 同じく図2と同様の図。 本発明の実施の形態の第4例を示す、図3と同様の図。 同じく図2と同様の図。 本発明の対象となるシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。 従来構造のシールリングを示す、図9のA部に相当する部分の拡大断面図。 シール材が収縮する態様を説明する為に示す模式図。
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜2により説明する。尚、本例の特徴は、シールリング14bを構成するシール材18aのうちの堰部22aに、オゾン劣化による亀裂が発生するのを防止する為の構造にある。この様なシールリング14bを装着する車輪支持用転がり軸受ユニットに就いては、前記図9に示した構造と同様のものを採用できる他、従来から知られた各種構造を採用できる為、車輪支持用転がり軸受ユニット全体の図示並びに説明は省略し、以下、前記シールリング14bを対象に詳しく説明する。
前記シールリング14bは、それぞれが円環状に形成された芯金17aとシール材18aとから構成されている。このうちの芯金17aは、ステンレス鋼板等の金属板製で、外輪2の軸方向外端部内周面に内嵌固定された円筒状の嵌合筒部19aと、この嵌合筒部19aの軸方向外端部から径方向外方に向けてほぼ直角に折れ曲がった円輪部20aと、この嵌合筒部19aの軸方向内端部から軸方向外側に向けて略U字形に180度折り返されると共に、径方向内方に向けて折れ曲がった内径支持部21aとを備える。又、前記シールリング14bの装着状態(嵌合筒部19aを外輪2の軸方向外端部内周面に内嵌固定した状態)で、前記円輪部20aの外周縁部は、この外輪2の軸方向外端部外周面よりも径方向外方に突出しており、この円輪部20aの軸方向内側面は、前記外輪2の軸方向外端面に対して、前記シール材18aの一部(後述する堰部22a)を介して突き当てられている。
前記シール材18aは、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系加硫ゴム製(又は、その水素化物に、カーボンブラック等の補強材、架橋系薬剤や可塑剤等を配合したゴム組成物)で、前記芯金17aに、加硫接着により結合固定されている。又、前記シール材18aは、前記円輪部20aの周囲を覆った円輪平板状の堰部22aと、前記内径支持部21aの軸方向外側面に支持された基部23aと、この基部23aから延出する(基端部を連続させる)状態で設けられた3本の接触式のシールリップ24d、24e、24fとを備える。前記堰部22aは、前記円輪部20aの軸方向両側面及び外周縁部をそれぞれ覆っており、このうちの円輪部20aの軸方向内側面を覆った部分の外径側半部に、内径側半部に比べて軸方向厚さ寸法が少しだけ厚くなった、円輪状の厚肉部25が設けられている。そして、前記シールリング14bの装着状態で、前記堰部22aのうち、前記円輪部20aの軸方向内側面を覆った部分の内径側半部を、前記外輪2の軸方向外端面に弾性的に当接させると共に、前記厚肉部25の内周縁部をこの外輪2の軸方向外端縁部外周面に全周に亙り弾性的に当接させている。又、前記各シールリップ24d〜24fは、それぞれの先端縁を、ハブ3の軸方向中間部外周面又は回転側フランジ12の軸方向内側面に、全周に亙り摺接させている。尚、図1、及び後述する図3、5、7には、各シールリップ24d〜24fの自由状態での形状を示している。
特に本例の場合には、前記堰部22aの軸方向外側面に、放射状の凹溝26、26を、円周方向等間隔に全周に亙り形成している。又、これら各凹溝26、26を、前記堰部22aの軸方向外側面の径方向全幅に亙り形成する事で、これら各凹溝26、26の径方向端部を、前記堰部22aの内周縁部及び外周縁部にそれぞれ開口させている。又、これら各凹溝26、26の断面形状は、円弧形(半円形、半楕円形、U字形等)で、この様な断面形状は径方向に亙り変化しない。又、前記各凹溝26、26の溝深さDは、前記堰部22aの径方向外端部の軸方向厚さ寸法Xの1/10〜1/3倍程度である{D=(1/10〜1/3)X、図示の例はD=(1/5)X}。本例の場合には、前記各凹溝26、26を形成する事により、前記堰部22aの軸方向外側部分(軸方向外側面から軸方向厚さDの範囲)のうちで、円周方向に関してこれら各凹溝26、26同士の間部分に、変形部27、27を形成している。
以上の様な構成を有する本例の場合には、前記シールリング14bを構成するシール材18aのうちで、使用状態でオゾンに曝らされ易い部分に配置される前記堰部22aに、オゾン劣化による亀裂が発生するのを有効に防止できる。
即ち、本例の場合には、前記堰部22aの軸方向外側面に、放射状の前記各凹溝26、26を複数形成している。この為、この堰部22aの軸方向外側部分のうちで、円周方向に隣り合う凹溝26、26同士の間に存在する前記各変形部27、27を、円周方向に変形(収縮)させ易くできる。より具体的には、これら各変形部27、27の円周方向両端部が、前記各凹溝26、26に開放された状態になる(変形部27、27が円周方向に不連続の状態になる)為、これら各変形許容部27、27は、円周方向に容易に収縮できる。従って、特に円周方向の残留引っ張り応力が発生し易い、前記堰部22aの表面側部分に関して、円周方向の引っ張り応力を開放する事ができ、円周方向の残留引っ張り応力を低減できる。この結果、前記堰部22aにオゾン劣化による亀裂が発生する事を有効に防止できる。又、本例の場合には、前記各凹溝26、26の断面形状を円弧形としている為、前記各変形部27、27が円周方向に変形した場合にも、これら各凹溝26、26の一部に応力が集中する事を防止できて、亀裂等が発生する事を有効に防止できる。
尚、前記各凹溝26、26内は、空気の体積が少ない割にゴムの表面積が大きいので、オゾン劣化の影響を受けにくく、これら各凹溝26、26が、オゾン劣化の亀裂の起点になる事はない。
前記堰部22aにより、前記外輪2の外周面を伝って泥水等の異物が内部空間15に侵入する事を防止できる点を含め、その他の構成及び作用効果に就いては、前述した従来構造の場合と同様である。
[実施の形態の第2例]
本発明の実施の形態の第2例に就いて、図3〜4により説明する。本例の特徴は、シールリング14cを構成するシール材18bのうち、堰部22bの軸方向外側面の径方向中間部(図示の例では径方向中央部)に、周方向凹溝28を全周に亙り設けた点にある。この様な周方向凹溝28は、放射状の凹溝26、26の径方向中間部を円周方向に横切る状態で形成されており、断面形状はやはり円弧形(半円形、半楕円形、U字形等)である。本例の場合には、この様な周方向凹溝28を設ける事により、円周方向に関して前記各凹溝26、26同士の間部分に設けられた変形部27a、27aを、外径側変形部29、29と内径側変形部30、30とに、それぞれ径方向に2分割している。
上述の様な構成を有する本例の場合には、前記各変形部27a、27aを、前記周方向凹溝28を挟んで径方向に2分割している為、前記堰部22bの径方向幅寸法が大きい場合にも、前記各変形部27a、27a(外径側変形部29及び内径側変形部30)を、それぞれ径方向に変形させ易くする事ができる。この為、径方向に関する引っ張り応力を効果的に開放する事ができる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
[実施の形態の第3例]
本発明の実施の形態の第3例に就いて、図5〜6により説明する。本例の特徴は、シールリング14dを構成するシール材18cのうちで、堰部22cの軸方向外側面の径方向中間部に、軸方向外側に向けて突出した堰部リップ31を全周に亙り設けた点にある。この様な堰部リップ31は、ラビリンスリップ(非接触リップ)であり、その先端縁を、回転側フランジ12(図1、9参照)の軸方向内側面に、微小隙間を介して対向させている。
又、前記堰部リップ31を設けた事に伴って、放射状の凹溝26a、26aを、この堰部リップ31よりも径方向外側の外径側凹溝32、32と、この堰部リップ31よりも径方向内側の内径側凹溝33、33とに分断している。このうちの外径側凹溝32、32は、前記堰部22cの軸方向外側面のうち、前記堰部リップ31の径方向外側に設けられた平坦面部に、この堰部リップ31の外周縁部の根元部分から放射状に形成されている。これに対し、前記各内径側凹溝33、33は、前記堰部22cの軸方向外側面のうち、前記堰部リップ31の径方向内側に設けられた、前記シールリング14dを圧入する際に工具により押圧する平坦面部に、前記堰部リップ31の内周縁部の根元部分から放射状に形成されている。又、前記各外径側凹溝32、32と前記各内径側凹溝33、33とは、互いに同位相に形成されており、断面形状も同じである。本例の場合には、前記堰部リップ31を設ける事により、円周方向に関して前記各凹溝26a、26a同士の間部分(外径側凹溝32、32同士の間部分及び内径側凹溝33、33同士の間部分)に形成された変形部27b、27bが、その径方向中間部で、前記堰部リップ31によって円周方向に連続した状態となる。
上述の様な構成を有する本例の場合にも、前記各変形部27b、27bの円周方向両端部が、前記各凹溝26a、26a(外径側凹溝32及び内径側凹溝33)に開放された状態となる為、前記各変形部27b、27bを、円周方向に容易に変形させる事ができる。従って、前記堰部22cにオゾン劣化による亀裂が発生する事を有効に防止できる。
尚、前記各外径側凹溝32、32と前記各内径側凹溝33、33とは、位相をずらして配置したり、互いに異なる断面形状とする事も可能である。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
[実施の形態の第4例]
本発明の実施の形態の第4例に就いて、図7〜8により説明する。本例の特徴は、上述した実施の形態の第3例の構造に、3本の周方向凹溝28a、28b、28cを追加して形成した点にある。具体的には、シールリング14eを構成するシール材18dのうち、堰部22dの軸方向外側面に形成された堰部リップ31の根元部分の径方向外側及び径方向内側に隣接する部分に、それぞれ周方向凹溝28a、28bを形成している。又、前記堰部22dの軸方向外側面のうちの径方向内寄り部分に、周方向凹溝28cを、内径側凹溝33、33の径方向中間部(図示の例では径方向中央部)を円周方向に横切る状態で形成している。本例の場合には、前記各周方向凹溝28a〜28cの断面形状を全て円弧形とし、互いに同形状としている。又、これら各周方向凹溝28a〜28cを設ける事により、円周方向に関して放射状の凹溝26a、26a同士の間部分に設けられた変形部27b、27bを、外径側変形部29a、29aと、中間変形部34、34と、内径側変形部30a、30aとに、それぞれ径方向に3分割している。
上述の様な構成を有する本例の場合には、前記両周方向凹溝28a、28bにより、前記堰部リップ31を、前記各凹溝26a、26a同士の間部分に設けられた変形部27b、27bから径方向に独立(分離)させる事ができる。この為、これら各変形部27b、27b(特に堰部リップ31の径方向近傍に存在する部分)の円周方向に関する変形が、この堰部リップ31に伝わる事を防止できる。従って、この堰部リップ31が、径方向に波打つ様に変形する事を有効に防止できる。
又、前記各変形部27b、27bを、前記各周方向凹溝28a〜28cにより、径方向に3分割している為、前記堰部22dの径方向幅寸法が大きい場合にも、前記各変形部27b、27b(外径側変形部29a、中間変形部34、及び内径側変形部30a)を、それぞれ径方向に変形させ易くする事ができる。この為、径方向に関する引っ張り応力を効果的に開放する事ができる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
本発明を実施する場合に、シール材を構成する堰部の軸方向片側面(軸方向外側面)に形成する放射状の凹溝の数、及び断面形状は、図示の構造に限定されず、弾性材の種類や、シールリングの使用環境等に応じて、適宜変更できる。例えば、凹溝の断面形状を、径方向に関して相似形とし、凹溝の断面積が径方向外側に向かう程大きくなる(又は小さくなる)形状としたり、円周方向に関する幅寸法(開口幅)が、径方向外方に向かう程大きくなる(又は小さくなる)様な形状とする事もできる。
1 シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット
2 外輪
3 ハブ
4 転動体
5 静止側フランジ
6 外輪軌道
7 ハブ本体
8 内輪
9 ナット
10 内輪軌道
11 保持器
12 回転側フランジ
13 スタッド
14、14a〜14e シールリング
15 内部空間
16 カバー
17、17a 芯金
18、18a〜18d シール材
19、19a 嵌合筒部
20、20a 円輪部
21、21a 内径支持部
22、22a〜22d 堰部
23、23a 基部
24a〜24f シールリップ
25 厚肉部
26、26a 凹溝
27、27a、27b 変形部
28、28a〜28c 周方向凹溝
29 外径側変形部
30 内径側変形部
31 堰部リップ
32 外径側凹溝
33 内径側凹溝
34 中間変形部

Claims (4)

  1. 外気に曝らされる環境下で、使用時に回転する内径側軌道輪部材の外周面と使用時にも回転しない外径側軌道輪部材の内周面との間に存在する内部空間の端部開口を塞ぐ為に使用されるものであり、
    芯金と、この芯金に加硫接着された弾性材製のシール材とを備え、
    このうちの芯金は、金属板製で全体を円環状とされたもので、前記外径側軌道輪部材の端部内周面に内嵌固定される円筒状の嵌合筒部と、この嵌合筒部の軸方向片端部から径方向外方に向けて折れ曲がり、その軸方向他側面を前記外径側軌道輪部材の端面に直接又は前記シール材の一部を介して突き当てられる円輪部と、前記嵌合筒部の軸方向他端部に連続する状態でこの嵌合筒部よりも径方向内方に設けられた内径支持部とを有するものであり、
    前記シール材は、前記円輪部を覆うと共に、その外周縁部が前記外径側軌道輪部材の端部外周面よりも径方向外方に突出する堰部と、前記内径支持部の軸方向片側面に支持された基部と、この基部から延出する状態で設けられ、その先端縁を前記内径側軌道輪部材の表面に全周に亙り摺接させる少なくとも1本のシールリップとを有するものである、シールリングであって、
    前記堰部の軸方向片側面に、放射状の凹溝が複数形成されている事を特徴とするシールリング。
  2. 前記堰部の軸方向片側面に、軸方向片側に向けて突出する堰部リップが、前記各凹溝を円周方向に横切る状態で設けられている、請求項1に記載したシールリング。
  3. 前記堰部の軸方向片側面に、周方向凹溝が形成されている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したシールリング。
  4. 内周面に外輪軌道を有し、懸架装置に支持された状態で回転しない、外径側軌道輪部材である外輪と、外周面のうちでこの外輪軌道と対向する部分に内輪軌道を有し、この外輪と同心に配置された、内径側軌道輪部材であるハブと、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けられた複数個の転動体と、このハブの外周面のうちで、前記外輪の軸方向外端開口部よりも軸方向外方に突出した部分に設けられた、前記ハブに対し車輪を支持固定する為のフランジと、前記外輪の内周面とこのハブの外周面との間に存在する内部空間の軸方向外端開口部を塞ぐシールリングとを備えた、
    シールリング付車輪支持用転がり軸受ユニットであって、
    前記シールリングが、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載したシールリングである事を特徴とするシールリング付車輪支持用転がり軸受ユニット。
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