以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
図1(a)は、本発明の実施形態に係る筆記装置100を示す図である。図1(b)は、図1(a)のIB−IB線に沿った断面図である。
図1(a)に示すように、筆記装置100は、筆記具1と、検出部10と、コントローラー11と、情報処理装置21とを備える。なお、導出用検出部31については後述する。
筆記具1は、使用者によって把持及び操作される。そして、筆記具1は、使用者の操作に応じて、シート33(例えば、紙)の筆記面33aに接触して、筆記面33aに記号及び/又は図形を形成する(例えば、記す)。
具体的には、筆記具1は、軸体3と、筆記部5と、操作部7とを含む。軸体3は、略筒状である。軸体3は筆記部5を収容する。操作部7が使用者によって操作されると、筆記部5が軸体3から繰り出され、筆記部5の先端部が軸体3から露出する。筆記部5の先端部9は、使用者の操作に応じて、筆記面33aに接触して、筆記面33aに記号及び/又は図形を形成する。筆記部5の先端部9は、筆記具1の先端部を構成する。従って、筆記具1の先端部に、筆記部5の先端部9と同じ符号「9」を付する場合がある。本実施形態では、筆記具1はシャープペンシルであり、筆記部5は黒鉛のような芯であり、操作部7はノックボタンである。
検出部10は、軸体3の外面に対向するように軸体3の外面に配置される。検出部10は、軸体3に作用する把持力を検出し、把持力を表す把持力信号SGを出力する。把持力は、使用者が軸体3を把持したときに軸体3に作用する力を示す。使用者が筆記を行うと、把持力が変化するため、把持力は、筆記に応じた物理量の一例である。
具体的には、検出部10は、複数の圧力検出部G(本実施形態では、3個の圧力検出部G)を含む。圧力検出部Gの各々は、圧力検出部Gに加えられる圧力を検出する。使用者が筆記を行うと、圧力検出部Gに加えられる圧力が変化するため、圧力は、筆記に応じた物理量の一例である。圧力検出部Gの各々は、略平面状である。
圧力検出部Gは、本実施形態では、圧力センサーである。圧力センサーは、例えば、高分子圧膜フィルム型圧力センサー、静電容量型圧力センサー、又は導電性ゴム型圧力センサーである。
高分子圧膜フィルム型圧力センサーはセンサー部を含む。センサー部に圧力が加えられると、センサー部の電気抵抗が変化する。例えば、圧力が大きい程、電気抵抗が減少する。従って、高分子圧膜フィルム型圧力センサーは、圧力の変化を電気抵抗の変化として検出し、電気抵抗に対応する電気信号を圧力信号として出力する。静電容量型圧力センサーはセンサー部を含む。センサー部に圧力が加えられると、センサー部の静電容量が変化する。従って、静電容量型圧力センサーは、圧力の変化を静電容量の変化として検出し、静電容量に対応する電気信号を圧力信号として出力する。導電性ゴム型圧力センサーはセンサー部を含む。センサー部はゴムを含む。センサー部に圧力が加えられると、ゴムが変位し、ゴムの電気抵抗が変化する。従って、導電性ゴム型圧力センサーは、圧力の変化を電気抵抗の変化として検出し、電気抵抗に対応する電気信号を圧力信号として出力する。
3個の圧力検出部Gは、それぞれ、軸体3の外面のうちの3個の領域に対応して配置される。3個の圧力検出部Gは、互いに離間して配置される。3個の圧力検出部Gのうち、親指に対応する圧力検出部Gを圧力検出部G1と記載し、人差し指に対応する圧力検出部Gを圧力検出部G2と記載し、中指に対応する圧力検出部Gを圧力検出部G3と記載する場合がある。
軸体3に作用する把持力は、圧力検出部G1〜圧力検出部G3がそれぞれ検出する圧力によって表される。
具体的には、圧力検出部G1には親指(具体的には、親指の腹)が接触する。従って、圧力検出部G1は、親指が加える圧力を検出し、圧力を表す圧力信号R1を出力する。圧力検出部G2には人差し指(具体的には、人差し指の腹)が接触する。従って、圧力検出部G2は、人差し指が加える圧力を検出し、圧力を表す圧力信号R2を出力する。圧力検出部G3には中指(具体的には、中指の第1関節)が接触する。従って、圧力検出部G3は、中指が加える圧力を検出し、圧力を表す圧力信号R3を出力する。圧力信号R1〜圧力信号R3は把持力信号SGを構成する。
図1(b)に示すように、軸体3のうち圧力検出部G1〜圧力検出部G3が配置される部分の断面は、略三角形状である。従って、軸体3の外面のうち、圧力検出部G1〜圧力検出部G3がそれぞれ配置される領域は、略平坦面である。つまり、軸体3の外面のうち、親指、人差し指、及び中指にそれぞれ対応する領域は、略平坦面である。従って、使用者の親指、人差し指、及び中指が、それぞれ、圧力検出部G1、圧力検出部G2、及び圧力検出部G3に接触するように、使用者を案内できる。
図1(a)に示すように、コントローラー11は、把持力信号SGを所定周波数でサンプリングし、把持力時系列データDT1(時系列データ)を生成する。把持力時系列データDT1は、把持力の時間変化を示す。そして、コントローラー11は、把持力時系列データDT1を情報処理装置21に無線送信する。
すなわち、コントローラー11は、圧力信号R1を所定周波数でサンプリングし、圧力時系列データD1を生成する。圧力時系列データD1は、親指が加える圧力の時間変化を示す。コントローラー11は、圧力信号R2を所定周波数でサンプリングし、圧力時系列データD2を生成する。圧力時系列データD2は、人差し指が加える圧力の時間変化を示す。コントローラー11は、圧力信号R3を所定周波数でサンプリングし、圧力時系列データD3を生成する。圧力時系列データD3は、中指が加える圧力の時間変化を示す。そして、コントローラー11は、圧力時系列データD1〜圧力時系列データD3を把持力時系列データDT1として情報処理装置21に無線送信する。
具体的には、コントローラー11は、プロセッサー11aと、記憶装置11bと、通信装置11cとを含む。プロセッサー11aは、記憶装置11b及び通信装置11cを制御する。記憶装置11bは、例えば、半導体メモリーを含む。通信装置11cは、例えば、近距離無線通信機を含む。近距離無線通信機は、例えば、Bluetooth(登録商標)に準じた近距離無線通信を実行する。
プロセッサー11aは、圧力時系列データD1〜圧力時系列データD3を生成する。記憶装置11bは、プロセッサー11aの制御を受けて、圧力時系列データD1〜圧力時系列データD3を記憶する。通信装置11cは、プロセッサー11aの制御を受けて、圧力時系列データD1〜圧力時系列データD3を把持力時系列データDT1として情報処理装置21に無線送信する。
情報処理装置21は、プロセッサー21aと、記憶装置21bと、通信装置21cとを備える。プロセッサー21aは、記憶装置21b及び通信装置21cを制御する。記憶装置21bは、例えば、半導体メモリーを含み、ハードディスクドライブ及び/又はリムーバブル記憶媒体を含んでいてもよい。通信装置21cは、例えば、近距離無線通信機である。近距離無線通信機は、例えば、Bluetooth(登録商標)に準じた近距離無線通信を実行する。情報処理装置21は、例えば、パーソナルコンピューターである。
情報処理装置21は、把持力時系列データDT1を受信及び処理する。具体的には、通信装置21cは、プロセッサー21aの制御を受けて、把持力時系列データDT1を受信する。記憶装置21bは、プロセッサー21aの制御を受けて、把持力時系列データDT1を記憶する。プロセッサー21aは、把持力時系列データDT1に基づいて筆記情報を算出する。筆記情報は、筆記量(第1筆記量、第2筆記量、及び第3筆記量)と、筆記速度と、筆記図形の種類とを含む。
以上、図1(a)及び図1(b)を参照して説明したように、本実施形態によれば、検出部10は、筆記部5の先端部9の変位に応じた筆記部5の歪ではなく、軸体3に作用する把持力を、筆記に応じた物理量として検出する。つまり、筆記部5に歪ゲージのようなセンサーを装着することなしに、筆記に応じた物理量を検出できる。従って、鉛筆のように筆記部(芯に相当)と軸体(外装部材に相当)とが一体不可分に形成されている筆記具を利用する場合であっても、筆記に応じた物理量を検出できる。つまり、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、筆記に応じた物理量を検出できる。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、筆記に応じた物理量に基づいて筆記情報を算出できる。
具体的には、把持力は、検出部10を軸体3の外面に対向するように軸体3の外面に配置することによって検出可能である。従って、鉛筆のように筆記部と軸体とが一体不可分に形成されている場合であっても、軸体の外面に検出部10を配置できる。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、把持力に基づいて筆記情報を算出できる。
本実施形態では、筆記具1として、シャープペンシルだけでなく、例えば、ボールペン及びフェルトペンのような様々な種類のペン、万年筆、鉛筆、及びスタイラスを採用できる。スタイラスは、例えば、タッチパネルに接触して筆記を行うための筆記具である。このように、様々な種類の筆記具を筆記具1として採用できるため、幅広い使用者が違和感なく筆記具1を使用できる。従って、使用者に快適な使用環境を提供しつつ、筆記情報を算出できる。なお、軸体3の形状も特に限定されず、例えば、略柱状であってもよい。
また、本実施形態によれば、複数の圧力検出部Gは、それぞれ、軸体3の外面のうちの複数の領域に対応して配置される。従って、軸体3を把持する複数の指にそれぞれ起因する複数の圧力を検出できる。その結果、単数の圧力検出部Gを配置する場合と比較して、把持力を表す情報量が増加し、筆記情報の算出の精度を向上できる。
特に、圧力検出部G1が親指からの圧力を検出し、圧力検出部G2が人差し指からの圧力を検出し、圧力検出部G3が中指からの圧力を検出する。従って、筆記具1の一般的な持ち方に対応した把持力を検出できる。その結果、筆記情報の算出の精度を更に向上できる。なお、筆記具1の一般的な持ち方では、使用者は、親指の腹と、人差し指の腹と、中指の第1関節とで、軸体3を挟むことによって、軸体3を把持する。
また、本実施形態によれば、圧力検出部Gの各々は略平面状である。従って、圧力検出部Gを軸体3に装着した場合であっても、軸体3の太さ及びの重量の変化を抑制できる。その結果、使用者は、使い慣れた一般的な筆記具を使用する場合と同様に筆記具1を取り扱うことができ、筆記具1を使い易い。
次に、図1及び図2を参照して、情報処理装置21について説明する。図2は、情報処理装置21を示す機能ブロック図である。図2に示すように、情報処理装置21は、前処理部41と、第1筆記量算出部43と、筆記速度算出部45と、第2筆記量算出部47と、筆記図形特定部49とを含む。前処理部41はローパスフィルター41aを含む。なお、単回帰式導出部51については後述する。
具体的には、図1(a)及び図2に示すように、プロセッサー21aが、記憶装置21bに記憶されたコンピュータープログラムを実行することによって、前処理部41、第1筆記量算出部43、筆記速度算出部45、第2筆記量算出部47、及び筆記図形特定部49として機能する。
前処理部41は、通信装置21cを介して、筆記具1が送信した把持力時系列データDT1を取得する。そして、前処理部41は、把持力時系列データDT1に対してローパスフィルター処理を実行し、把持力時系列データDT2(時系列データ)を出力する。把持力時系列データDT2は、把持力の時間変化を示す。
すなわち、ローパスフィルター41aが、把持力時系列データDT1から所定周波数以上の高周波成分を除去して、低周波成分の把持力時系列データDT2を出力する。具体的には、ローパスフィルター41aは、圧力時系列データD1から所定周波数以上の高周波成分を除去して、低周波成分の圧力時系列データDT12を出力する。同様に、ローパスフィルター41aは、圧力時系列データD2を処理して、低周波成分の圧力時系列データDT22を出力し、圧力時系列データD3を処理して、低周波成分の圧力時系列データDT32を出力する。圧力時系列データDT12〜圧力時系列データDT32は把持力時系列データDT2を構成する。
本実施形態では、ローパスフィルター41aは、把持力時系列データDT1に対して移動平均処理を実行して、把持力時系列データDT2を出力する。なお、移動平均処理はローパスフィルター処理の一例である。
例えば、ローパスフィルター41aは、圧力時系列データD1〜圧力時系列データD3の各々に対して、式(1)に示す移動平均処理を実行して、圧力時系列データDT12〜圧力時系列データDT32を出力する。式(1)は指数移動平均を示す。
OUT[t]=0.9×OUT[t−1]+0.1×S[t] …(1)
OUT[t]は、ローパスフィルター41aが出力する時間tでの圧力値を示し、OUT[t−1]は、ローパスフィルター41aが出力する時間(t−1)での圧力値を示す。S[t]は、ローパスフィルター41aに入力される時間tでの圧力値を示す。なお、時間tはサンプリング順番によって表される。
さらに、前処理部41は、親指に基づく圧力時系列データDT12及び人差し指に基づく圧力時系列データDT22に対して算術平均処理を実行して、把持力時系列データDA(時系列データ)を出力する。把持力時系列データDAは、親指と人差し指とに基づく把持力の時間変化を示す。
例えば、前処理部41は、圧力時系列データDT12及び圧力時系列データDT22に対して、式(2)に示す算術平均処理を実行して、把持力時系列データDAを出力する。
AV[t]=(OUT1[t]+OUT2[t])/2 …(2)
AV[t]は、前処理部41が出力する時間tでの平均圧力値を示す。つまり、AV1[t]は、把持力時系列データDAを構成する時系列の複数の圧力値のうち、時間tでの圧力値を示す。OUT1[t]は、圧力時系列データDT12を構成する時系列の複数の圧力値のうち、時間tでの圧力値を示す。OUT2[t]は、圧力時系列データDT22を構成する時系列の複数の圧力値のうち、時間tでの圧力値を示す。
第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDAに基づいて第1筆記量を算出する。第1筆記量は、筆記面33a上での記号の出現回数を示す。記号は、筆記具1の先端部9の筆記面33a上での移動軌跡に対応する。記号は、例えば、文字、数字、マーク、又はシンボルである。文字は、例えば、平仮名、片仮名、漢字、又はアルファベットである。
本実施形態によれば、把持力時系列データDAは、使用者が軸体3を把持するときの把持力の時間変化を示す。そして、把持力は、筆記面33aに形成される記号の出現回数に対応して変化する。従って、第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDAに基づいて第1筆記量を的確に算出することができる。また、把持力は、検出部10を軸体3の外面に対向するように軸体3の外面に配置することによって検出可能である。従って、鉛筆のように筆記部と軸体とが一体不可分に形成されている場合であっても、軸体の外面に検出部10を配置して、把持力時系列データDAを生成できる。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、第1筆記量を算出できる。
具体的には、第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDAに基づいて、把持力を示す時系列の複数の圧力値から複数の極値を検出する。そして、第1筆記量算出部43は、複数の極値に基づいて複数の極値間時間を算出する。極値間時間は、複数の極値のうち、隣り合う極値と極値との間の時間を示す。さらに、第1筆記量算出部43は、複数の極値間時間に基づいて第1筆記量を算出する。
本実施形態によれば、ある記号の形成動作から次の記号の形成動作に移行する際の極値間時間は、1つの記号の形成中の極値間時間と異なる。そして、ある記号の形成動作から次の記号の形成動作に移行する際の極値間時間が検出されたことは、1つの記号が出現したことを示す。従って、第1筆記量算出部43は、複数の極値間時間に基づいて第1筆記量を更に的確に算出できる。
また、図2を参照して説明したように、本実施形態によれば、把持力時系列データDAは、圧力時系列データDT12及び圧力時系列データDT22に基づいて生成される。そして、圧力時系列データDT12及び圧力時系列データDT22の高周波成分は、ローパスフィルター41aによってノイズとして除去されている。従って、第1筆記量算出部43が第1筆記量を誤って算出することを抑制できる。特に、極値を精度良く検出できるため、第1筆記量が誤って算出されることを更に抑制できる。
次に、図3を参照して、筆記具1が筆記面33aに形成する記号CRと関連付けて、第1筆記量算出部43について説明する。図3(a)は、記号CRを示す図である。図3(a)に示すように、記号CRの各々は、始点A1及び終点A2を有している。2つの記号CRのうちの一方の記号61は、平仮名の「さ」を示し、他方の記号62は、平仮名の「し」を示している。
記号61は、複数のセグメントsgを含む。記号61の複数のセグメントsgは、所定の順番に従って形成される。記号62は、単数のセグメントsgを含む。セグメントsgの各々は、筆記具1の先端部9が筆記面33aに接触しつつ移動するときの先端部9の1ストロークに対応し、1ストロークに対応する先端部9の移動軌跡を示す。セグメントsgの各々は、始点SP及び終点EPを含む。
セグメントsgに関連して、セグメント時間を定義する。セグメント時間は、セグメントsgの始点SPから終点EPまでの筆記具1の先端部9の移動時間を示す。なお、先端部9は、セグメントsgの始点SPから終点EPまで、筆記面33aに接触しつつ移動する。
記号61のように、複数のセグメントsgを含む記号CRに関連して、セグメント間時間Jを定義する。セグメント間時間Jは、1つの記号CRの複数のセグメントsgのうち、セグメントsgの終点EPから、セグメントsgの次のセグメントsgの始点SPまでの筆記具1の先端部9の移動時間を示す。具体的には、セグメント間時間Jは、1つの記号CRの複数のセグメントsgのうち、第N番目のセグメントsgの終点EPから、第(N+1)番目のセグメントsgの始点SPまでの先端部9の移動時間を示す。「N」は1以上の整数を示す。なお、先端部9は、第N番目のセグメントsgの終点EPから第(N+1)番目のセグメントsgの始点SPまで、筆記面33aから離間して移動する。
複数の記号CRに関連して、記号間時間Kを定義する。記号間時間Kは、複数の記号CRのうち、隣り合う記号CRのうちの一方の記号CRの終点A2から他方の記号CRの始点SPまでの筆記具1の先端部9の移動時間を示す。複数の記号CRは、所定の順番で形成される。具体的には、記号間時間Kは、複数の記号CRのうち、第Q番目の記号CRの終点A2から、第(Q+1)番目の記号CRの始点A1までの先端部9の移動時間を示す。1つの記号間時間Kは、1つのセグメント間時間Jよりも長い。なお、先端部9は、第Q番目の記号CRの終点A2から第(Q+1)番目の記号CRの始点A1まで、筆記面33aから離間して移動する。
なお、記号61の複数のセグメントsgのうち、第1番目のセグメントsgをセグメント61aと記載し、第2番目のセグメントsgをセグメント61bと記載し、第3番目のセグメントsgをセグメント61cと記載する場合がある。記号62のセグメントsgをセグメント62aと記載する場合がある。また、記号61の複数のセグメント間時間Jのうち、セグメント61aの終点EPからセグメント61bの始点SPまでのセグメント間時間Jをセグメント間時間J1と記載する場合がある。セグメント61bの終点EPからセグメント61cの始点SPまでのセグメント間時間Jをセグメント間時間J2と記載する場合がある。さらに、記号間時間Kは、記号61の終点A2から記号62の始点SPまでの筆記具1の先端部9の移動時間を示す。
図3(b)は、図3(a)の記号CRに対応する把持力時系列データDAを示す図である。図3(b)では、横軸は時間(ms)を示し、縦軸は圧力(g)を示す。
図3(b)に示すように、把持力時系列データDAは、把持力の時間変化、つまり、圧力の時間変化を示している。把持力時系列データDAは、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22との平均値を示す。圧力時系列データDT12は親指から加えられた圧力を示し、圧力時系列データDT22は人差し指から加えられた圧力を示す。
把持力時系列データDAは圧力曲線Pを形成している。圧力曲線Pは、時系列の複数の圧力値から構成される。圧力曲線Pには、複数の極値Bが含まれる。極値Bの各々は、圧力曲線Pの局所的な範囲での圧力値の極値を示す。本実施形態では、極値Bの各々は、圧力曲線Pの局所的な範囲での圧力値の最大値を示す。
また、極値Bの各々は、圧力曲線Pに含まれる複数の圧力値のうち、筆記具1の先端部9が離間位置から移動して筆記面33aに当接した時の圧力値に対応する。離間位置は、筆記具1の先端部9が筆記面33aから離間しているときの先端部9の位置を示す。
第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDAから、複数の極値Bを検出する。そして、第1筆記量算出部43は、複数の極値Bに基づいて複数の極値間時間Tを算出する。極値間時間Tは、複数の極値Bのうち隣り合う極値Bと極値Bとの間の時間を示す。
また、極値間時間Tは、1つのセグメント時間と1つのセグメント間時間Jとの和であるか、又は1つのセグメント時間と1つの記号間時間Kとの和である。そして、記号間時間Kはセグメント間時間Jよりも長いため、記号間時間Kを含む極値間時間Tは、セグメント間時間Jを含む極値間時間Tよりも長い。
そこで、第1筆記量算出部43は、閾値に基づいて、複数の極値間時間Tを、セグメント間時間Jを含む極値間時間Tと記号間時間Kを含む極値間時間Tとのうちのいずれかに弁別する。つまり、極値間時間Tが閾値より大きいときは、第1筆記量算出部43は、極値間時間Tが記号間時間Kを含んでいると判定する。一方、極値間時間Tが閾値以下であるときは、第1筆記量算出部43は、極値間時間Tがセグメント間時間Jを含んでいると判定する。
そして、第1筆記量算出部43は、極値間時間Tが記号間時間Kを含んでいると判定した回数、つまり、記号間時間Kを含む極値間時間Tの検出回数を計数する。記号間時間Kを含む極値間時間Tの検出回数は、第1筆記量としての記号CRの出現回数と一致する。なぜなら、記号間時間Kを含む1つの極値間時間Tが検出されたことは、1つの記号CRの形成が終了したこと、つまり、1つの記号CRが出現したことを示すからである。
例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、セグメント61aの始点SPは極値B1に対応し、セグメント61bの始点SPは極値B2に対応し、セグメント61cの始点SPは極値B3に対応する。セグメント62aの始点SPは極値B4に対応する。従って、極値間時間T1はセグメント間時間J1を含み、極値間時間T2はセグメント間時間J2を含み、極値間時間T3は記号間時間Kを含む。その結果、極値間時間T3が検出されたことは、記号61が出現したことを示す。
なお、極値Bの数は、セグメントsgの数に一致する。すなわち、極値B1〜極値B3は記号61に対応し、極値B4は記号62に対応する。そして、極値B1〜極値B3の数「3」は、記号61のセグメント61a〜セグメント61cの数「3」と一致する。また、極値B4の数「1」は、記号62のセグメント62aの数「1」と一致する。
以上、図3(a)及び図3(b)を参照して説明したように、本実施形態によれば、第1筆記量算出部43は、複数の極値間時間Tを、セグメント間時間Jを含む極値間時間Tと記号間時間Kを含む極値間時間Tとのうちのいずれかに弁別することによって、第1筆記量を容易に算出できる。
また、本実施形態によれば、把持力時系列データDAは把持力の時間変化を示す。そして、把持力の時間変化は、筆記時と非筆記時とで異なる。従って、筆記時の把持力時系列データDAと非筆記時の把持力時系列データDAとを区別できる。その結果、第1筆記量算出部43は、非筆記時の把持力時系列データDAを除外して、筆記時の把持力時系列データDAに基づいて第1筆記量を精度良く算出できる。換言すれば、非筆記状態を筆記状態であると誤って認識することを抑制でき、第1筆記量を精度良く算出できる。例えば、非筆記時は、筆記具1の先端部9を筆記面33aに接触させることなく、使用者が指を使用して筆記具1を回転させている時を示す。
特に、非筆記時の把持力時系列データDAは複数の極値Bを含まない可能性が高い。そこで、複数の極値Bを検出することで、非筆記時の把持力時系列データDAと非筆記時の把持力時系列データDAとを容易に区別できる。なお、セグメント間時間J及び記号間時間Kは、非筆記時に含まれない。また、例えば、第1筆記量算出部43は、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22と圧力時系列データDT32とが、略同一の圧力値を示しているときに、非筆記時であると認識することもできる。一方、例えば、第1筆記量算出部43は、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22と圧力時系列データDT32とのうち少なくとも2つが、異なる圧力値を示しているときに、筆記時であると認識することもできる。
また、本実施形態によれば、第1筆記量算出部43は、極値として最大値を検出する。そして、記号61の形成動作から次の記号62の形成動作に移行する際には、最大値は極小値よりもシャープに現れる。従って、極値として極小値を検出する場合と比較して、極値としての最大値を精度良く検出できる。その結果、第1筆記量算出部43は、極値として極小値を検出する場合よりも、第1筆記量を精度良く算出できる。
さらに、本実施形態によれば、把持力時系列データDAは、親指から加えられた圧力と人差し指から加えられた圧力との平均値を示す。従って、第1筆記量算出部43は、極値としての最大値を更に精度良く検出できる。なぜなら、筆記具1の先端部9が筆記面33aに当接する時に、親指から加えられた圧力と人差し指から加えられた圧力とは、互いに同様の挙動を示し、最大値に対応するからである。
次に、下記に示す式(3)〜式(5)に基づく第1筆記量の算出について説明する。第1筆記量算出部43は、式(3)に基づいて閾値Y(m)を算出する。閾値Y(m)は、複数の閾値のうちのm番目の閾値を示す。「m」は1以上の整数を示す。
式(3)において、X(M)は、複数の極値間時間のうちのM番目の極値間時間を示す。「M」は「m」より小さい整数を示す。本実施形態では、M=m−1である。また、「α」は、第1定数を示す。第1定数αは、本実施形態では、約「2」、つまり、1.5以上2.5未満の実数である。例えば、α=2.23、である。「β」は、第2定数を示す。第2定数βは、式(4)により表される。式(4)において、「z1」は、第3定数を示し、「z2」は、第4定数を示す。第3定数z1は、0と異なる実数であり、第4定数z2は、実数であり、0であってもよい。例えば、z1=−47.7、z2=−47.8、である。
Y(m)=α×X(M)+β …(3)
β=z1+z2 …(4)
第1筆記量算出部43は、閾値Y(m)と極値間時間X(m)とに基づいて第1筆記量を算出する。極値間時間X(m)は、複数の極値間時間のうちのm番目の極値間時間を示す。
すなわち、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいか否かを判定し、判定結果に基づいて第1筆記量を算出する。具体的には、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が式(5)に示す条件を満たすか否かを判定し、判定結果に基づいて第1筆記量を算出する。
X(m)>Y(m) …(5)
本実施形態では、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が式(5)に示す条件を満たしていると判定したときに、第1計数値CT1を1つインクリメントする(CT1←CT1+1)。第1計数値CT1は、記号の出現回数、つまり、第1筆記量を示す。
すなわち、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいときは、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が記号間時間Kを含んでいると判定する。そして、第1筆記量算出部43は、第1計数値CT1を1つインクリメントする。つまり、第1筆記量算出部43は、1つの記号CRが出現したと判定する。一方、極値間時間X(m)が閾値Y(m)以下であるときは、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)がセグメント間時間Jを含んでいると判定する。つまり、第1筆記量算出部43は、1つの記号CRが未形成であると判定する。
なお、「M」が「m」より小さい整数を示すことは、極値間時間X(M)が極値間時間X(m)よりも時間軸上で前に位置することを示す。
引き続き、図3を参照して、上述した式(3)〜式(5)基づく第1筆記量の算出について具体例を挙げて説明する。
例えば、式(3)に従って、第1筆記量算出部43は、M=1、m=2であるときの閾値Y(m)を算出する。具体的には、図3(b)に示すように、第1筆記量算出部43は、極値間時間T1をX(1)に設定して、閾値Y(2)を算出する。また、第1筆記量算出部43は、極値間時間T2をX(2)に設定する。そして、図3(a)及び図3(b)に示すように、X(2)(=極値間時間T2)が閾値Y(2)以下であるため、第1筆記量算出部43は、記号61が未形成であると判定し、第1計数値CT1を更新しない。つまり、第1筆記量を更新しない。
例えば、式(3)に従って、第1筆記量算出部43は、M=2、m=3であるときの閾値Y(m)を算出する。具体的には、図3(b)に示すように、第1筆記量算出部43は、極値間時間T2をX(2)に設定して、閾値Y(3)を算出する。また、第1筆記量算出部43は、極値間時間T3をX(3)に設定する。そして、図3(a)及び図3(b)に示すように、X(3)(=極値間時間T3)が閾値Y(3)より大きいため、第1筆記量算出部43は、記号61が出現したと判定し、第1計数値CT1を1つインクリメントする。つまり、第1筆記量を更新する。
以上、図3(a)、及び図3(b)を参照して説明したように、本実施形態によれば、第1筆記量算出部43は、式(3)に従って閾値Y(m)を算出し、閾値Y(m)及び式(5)に従って第1筆記量を算出する。換言すれば、第1筆記量算出部43は、式(3)及び式(5)に従った簡易な処理により、第1筆記量を算出できる。例えば、使用者が筆記具1により1つの記号CRを筆記面33aに形成するだけで、閾値Y(m)を算出できる。
また、本実施形態によれば、閾値Y(m)が逐次更新されるため、更に精度良く第1筆記量を算出できる。
なお、図2に示すように、第1筆記量算出部43は、記号用フィルター43aを含むことが好ましい。記号用フィルター43aは、把持力時系列データDAに対して第1フィルタリング処理を実行する。第1フィルタリング処理とは、把持力時系列データDAからノイズを除去して、第1筆記量の算出のために把持力時系列データDAを最適化する処理のことである。第1筆記量算出部43は、第1フィルタリング処理後の把持力時系列データDAに基づいて第1筆記量を算出する。その結果、第1筆記量の算出の精度を更に向上できる。第1フィルタリング処理は、例えば、把持力時系列データDA中の極値(例えば、最大値)を含む局所的な範囲のノイズを除去して、極値(例えば、最大値)をシャープにする処理を含む。
次に、図1及び図2を参照して、上述した式(3)の第1定数α及び第2定数βを決定するための単回帰式について説明する。
図1に示すように、筆記装置100は、単回帰式導出用検出部31(以下、「導出用検出部31」と記載する。)とケーブル34とを備えることが好ましい。導出用検出部31は略平面状である。導出用検出部31は、シート33の裏面に接触するように、シート33の下に配置される。シート33の裏面は筆記面33aに対向する。導出用検出部31は、筆記面33aに作用する筆圧を検出し、筆圧を表す筆圧信号WSを出力する。筆圧は、筆記具1の先端部9から筆記面33aに加えられる圧力(つまり、押圧力)を示す。使用者が筆記を行うと、筆圧が変化するため、筆圧は、筆記に応じた物理量の一例である。導出用検出部31は、例えば、圧力センサーである。圧力センサーは、例えば、高分子圧膜フィルム型圧力センサー、静電容量型圧力センサー、又は導電性ゴム型圧力センサーである。ケーブル34は、導出用検出部31と情報処理装置21とを接続する。従って、導出用検出部31は、ケーブル34を介して、筆圧信号WSを情報処理装置21に送信する。なお、単回帰式を導出するときの筆記具1を導出用筆記具1と記載する場合がある。
また、図2に示すように、情報処理装置21は、単回帰式導出部51を含むことが好ましい。具体的には、プロセッサー21aが、記憶装置21bに記憶されたコンピュータープログラムを実行することにより、単回帰式導出部51として機能する。
単回帰式導出部51には、筆圧時系列データWD1に基づく筆圧時系列データWD2が入力される。そして、単回帰式導出部51は、筆圧時系列データWD2に基づいて単回帰式を導出する。
具体的には、前処理部41は、筆圧信号WSを所定の周波数でサンプリングし、筆圧時系列データWD1を生成する。筆圧時系列データWD1は、筆圧の時間変化を示す。そして、前処理部41は、筆圧時系列データWD1に対してローパスフィルター処理を実行し、筆圧時系列データWD2を出力する。具体的には、ローパスフィルター41aが、筆圧時系列データWD1から所定周波数以上の高周波成分を除去して、低周波成分の筆圧時系列データWD2を出力する。
筆圧時系列データWD2は、把持力時系列データDAと同様に、圧力曲線(以下、「導出用圧力曲線」と記載する。)を形成している。導出用圧力曲線は、時系列の複数の圧力値から構成される。導出用圧力曲線には、複数の極値(以下、「導出用極値」と記載する。)が含まれる。導出用極値の各々は、導出用圧力曲線の局所的な範囲での圧力値の極値を示す。
本実施形態では、導出用極値の各々は、圧力曲線の局所的な範囲での圧力値の最大値を示す。また、導出用極値の各々は、導出用圧力曲線に含まれる複数の圧力値のうち、導出用筆記具1の先端部9が離間位置から移動して筆記面33aに当接した時の圧力値に対応する。離間位置は、導出用筆記具1の先端部9が筆記面33aから離間しているときの先端部9の位置を示す。
単回帰式導出部51は、第1筆記量算出部43と同様にして、筆圧時系列データWD2に基づいて、筆圧を示す時系列の複数の圧力値から、複数の導出用極値を検出する。そして、単回帰式導出部51は、複数の導出用極値に基づいて、複数の導出用極値間時間を算出する。導出用極値間時間は、複数の導出用極値のうち、隣り合う導出用極値と導出用極値との間の時間を示す。
管理者は、被験者が導出用筆記具1によって筆記面33aに形成した記号(以下、「導出用記号」と記載する。)と導出用圧力曲線とを比較して、複数の導出用極値間時間を、セグメント間時間を含む導出用極値間時間と記号間時間を含む導出用極値間時間とのうちのいずれかに弁別する。セグメント間時間及び記号間時間は、それぞれ、図3(a)を参照して説明したセグメント間時間J及び記号間時間Kを示す。なお、単回帰式の導出に関しては、図3(a)のセグメント間時間J及び記号間時間Kの説明において、「記号」を「導出用記号」に置き換え、「筆記具1」を「導出用筆記具1」に置き換えてもよい。
記憶装置21bは、セグメント間時間を含む導出用極値間時間を示すデータDSと記号間時間を含む導出用極値間時間を示すデータDCとを1組の導出用データ(DS,DC)して記憶する。記憶装置21bは、複数の被験者の各々に対して、複数の導出用データ(DS,DC)を記憶する。
単回帰式導出部51は、記憶装置21bから複数の導出用データ(DS,DC)を取得する。そして、単回帰式導出部51は、複数の導出用データ(DS,DC)に対して最小二乗法を実行し、式(6)に示す単回帰式を導出する。換言すれば、単回帰式導出部51は、セグメント間時間と文字間時間とに基づいて式(6)に示す単回帰式を導出する。
「Γ」は、記号間時間を含む導出用極値間時間を示し、「Λ」は、セグメント間時間を含む導出用極値間時間を示す。「ζ」は回帰係数を示し、「ξ」は、定数項を示す。回帰係数ζは、1より大きい実数を示す。本実施形態では、回帰係数ζは、約「2」、つまり、1.5以上2.5未満の実数である。
Γ=ζ×Λ+ξ …(6)
上述した式(3)の第1定数αには、回帰係数ζが設定される(α=ζ)。式(4)の第3定数z1には、定数項ξが設定される。そして、式(4)の第4定数z2に「0」が設定される。
ただし、式(7)に示すように、式(6)で表される直線を、シフト量Fだけシフトさせることもできる。この場合、式(4)の第4定数z2には、シフト量Fが設定される。シフト量Fは負数である。従って、式(6)で表される直線は負方向にシフトされる。
Γ=ζ×Λ+ξ+F …(7)
本実施形態では、シフト量Fとして、第1シフト量F1と第2シフト量F2と第3シフト量F3とが算出される。
単回帰式導出部51は、複数の導出用データ(DS,DC)の残差のうち、負の残差の平均値を算出する。そして、単回帰式導出部51は、負の残差の平均値を第1シフト量F1に設定する。なお、残差は、DC−Γ、である。残差を算出する際のΓは式(6)のΓである。単回帰式導出部51は、複数の導出用データ(DS,DC)の残差のうち、負の残差の標準偏差を算出する。さらに、単回帰式導出部51は、−1を、負の残差の標準偏差に乗じる。そして、単回帰式導出部51は、−1が乗じられた負の残差の標準偏差を第2シフト量F2に設定する。単回帰式導出部51は、複数の導出用データ(DS,DC)の残差のうち、負の残差の最小値を第3シフト量F3に設定する。
なお、式(7)のシフト量Fが第1シフト量F1であるとき、式(7)を第1シフト単回帰式と記載する場合がある。式(7)のシフト量Fが第2シフト量F2であるとき、式(7)を第2シフト単回帰式と記載する場合がある。式(7)のシフト量Fが第3シフト量F3であるとき、式(7)を第3シフト単回帰式と記載する場合がある。
以上、図1及び図2を参照して説明したように、本実施形態によれば、式(6)に示す単回帰式は、セグメント間時間と記号間時間とに基づいて導出されている。そして、式(6)は、記号間時間を含む導出用極値間時間Γがセグメント間時間を含む導出用極値間時間Λのζ倍であることを示している。従って、回帰係数ζを式(3)の第1定数αに設定して、閾値Y(m)を算出することによって、複数の極値間時間を、記号間時間を含む極値間時間とセグメント間時間を含む極値間時間とに弁別できる。つまり、第1筆記量算出部43は、閾値Y(m)を使用して、第1筆記量を更に的確に算出できる。
特に、回帰係数ζは、約「2」であり、後述の実施例2に示されるように、記号間時間を含む導出用極値間時間Γとセグメント間時間を含む導出用極値間時間Λとの関係を的確に表している。従って、約「2」の回帰係数ζを式(3)の第1定数αに設定することによって、第1筆記量算出部43は、閾値Y(m)を使用して、第1筆記量を更に的確に算出できる。
また、本実施形態によれば、回帰係数ζは、筆記速度に依存せず、一定である。従って、筆記速度に依存することなく、第1筆記量を算出できる。つまり、筆記速度が変化した場合であっても、第1筆記量算出部43は、第1筆記量を精度良く算出できる。
さらに、本実施形態によれば、式(7)のシフト量Fは負数である。そして、式(4)の第4定数z2にはシフト量Fを設定できる。従って、式(3)に示す閾値Y(m)が、第4定数z2=0のときよりも小さくなる。その結果、式(5)において、極値間時間X(m)が閾値Y(m)よりも大きいと判定され易くなる。つまり、極値間時間X(m)が記号間時間を含んでいると判定され易くなる。従って、極値間時間X(m)が、記号間時間を含んでいるにも拘らず、誤ってセグメント間時間を含むと判定されることを抑制できる。その結果、第1筆記量を更に精度良く算出できる。
次に、図2を参照して、筆記速度算出部45について説明する。筆記速度算出部45は、第1筆記量に基づいて筆記速度Vを算出する。筆記速度Vは、単位時間当たりの記号の出現回数を示す。例えば、筆記速度算出部45は、筆記時間WTを計測する。筆記時間WTは、筆記開始時から筆記終了時までの時間を示す。そして、筆記速度算出部45は、筆記時間WT中の記号の出現回数Ncを筆記時間WTで除して、筆記速度Vを算出する(V=Nc/WT)。筆記時間WT中の第1計数値CT1、つまり、筆記時間WT中の第1筆記量が、筆記時間WT中の記号の出現回数Ncを示す。
本実施形態によれば、筆記速度Vは第1筆記量に基づいて算出される。そして、第1筆記量は、把持力時系列データDAに基づいて算出される。従って、換言すれば、筆記速度Vは把持力に基づいて算出される。そして、把持力は、検出部10を軸体3の外面に対向するように軸体3の外面に配置することによって検出可能である。従って、鉛筆のように筆記部と軸体とが一体不可分に形成されている場合であっても、軸体の外面に検出部10を配置して、把持力時系列データDAを生成できる。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、筆記速度Vを算出できる。
引き続き、図2を参照して、第2筆記量算出部47について説明する。第2筆記量算出部47は、把持力時系列データDAに基づいて第2筆記量を算出する。第2筆記量は、筆記具1の先端部9の筆記面33a上での移動距離に対応する量を示す。例えば、第2筆記量算出部47は、把持力時系列データDAを構成する時系列の複数の圧力値のうち、規定閾値より大きい圧力値が出現する期間Lを算出する。そして、第2筆記量算出部47は、複数の期間Lの和を算出する。和は、第2筆記量を示す。
本実施形態によれば、第2筆記量は把持力時系列データDAに基づいて算出される。従って、換言すれば、第2筆記量は把持力に基づいて算出される。その結果、筆記速度Vを算出する場合と同様に、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、第2筆記量を算出できる。
次に、図2を参照して、筆記図形特定部49について説明する。図2に示すように、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2に基づいてパターンマッチングを実行して、筆記図形の種類を特定する。筆記図形は、筆記具1の先端部9の筆記面33a上での移動軌跡に対応する。筆記図形は、例えば、方略図形である。方略図形は、例えば、下線、矢印、枠(囲み)、又はグラフである。グラフは、例えば、関数を表す直線又は曲線である。
本実施形態によれば、筆記図形の種類は把持力時系列データDT2に基づいて特定される。従って、換言すれば、筆記図形の種類は把持力に基づいて特定される。その結果、筆記速度Vを算出する場合と同様に、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、筆記図形の種類を特定できる。
具体的には、記憶装置21bは、複数の異なるパターン情報を記憶している。複数の異なるパターン情報は、それぞれ、複数の異なる図形の特徴を表している。筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2をパターン情報と比較する。そして、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2がパターン情報に対応しているときに、筆記図形の種類をパターン情報が表す図形であると特定する。
パターン情報は、把持力時系列データDT2の特徴情報によって図形の特徴を表している。特徴情報は、筆記具1の先端部9の筆記面33a上での移動方向を示す情報を含む。
特徴情報は、例えば、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22と圧力時系列データDT32とのうちの少なくとも1つの時間変化を示す情報である。特徴情報は、例えば、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22と圧力時系列データDT32とのうちの少なくとも2つの大小関係を示す情報である。特徴情報は、例えば、圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22と圧力時系列データDT32とのうちの少なくとも2つの大小関係の時間変化を示す情報である。
また、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2に基づいて第3筆記量を算出する。第3筆記量は、筆記図形の出現回数を示す。具体的には、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を特定するたびに、つまり、1つの筆記図形が形成されるたびに、第2計数値CT2を1つインクリメントする(CT2←CT2+1)。第2計数値CT2は、筆記図形の出現回数、つまり、第3筆記量を示す。
本実施形態によれば、第3筆記量は把持力時系列データDT2に基づいて算出される。従って、換言すれば、第3筆記量は把持力に基づいて算出される。その結果、筆記速度Vを算出する場合と同様に、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、第3筆記量を算出できる。
次に、図2及び図4〜図7を参照して、筆記図形特定部49について具体例を挙げて説明する。図4(a)〜図7(b)は、把持力時系列データDT2を示す図である。図4(a)〜図7(b)において、「pm」は、把持力時系列データDT2が取り得る圧力値の最大値を示す。図4(a)、図5(a)、図6(a)、及び図7(a)では、横軸は時間tを示し、縦軸は圧力値pを示す。図4(b)、図5(b)、図6(b)、及び図7(b)は、時間txでの把持力時系列データDT2を示す。
図4(a)及び図4(b)に示すように、把持力時系列データDT2は、圧力時系列データDT12、圧力時系列データDT22、及び圧力時系列データDT32を含む。圧力時系列データDT12〜DT32が、パターン情報としての上方向条件と第1時間条件とを満たすとき、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を上方向に延びる直線であると特定する。上方向条件は、圧力時系列データDT22が圧力時系列データDT32よりも大きく、圧力時系列データDT32が圧力時系列データDT12よりも大きいことである(DT22>DT32>DT12)。第1時間条件は、上方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を一定時間以上継続して検出したことである。
図5(a)及び図5(b)に示すように、圧力時系列データDT12〜DT32が、パターン情報としての下方向条件と第2時間条件とを満たすとき、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を下方向に延びる直線であると特定する。下方向条件は、DT22>DT12>DT32、である。第2時間条件は、下方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を一定時間以上継続して検出したことである。
図6(a)及び図6(b)に示すように、圧力時系列データDT12〜DT32が、パターン情報としての右方向条件と第3時間条件とを満たすとき、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を右方向に延びる直線であると特定する。右方向条件は、DT12>DT22>DT32、である。第3時間条件は、右方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を一定時間以上継続して検出したことである。
図7(a)及び図7(b)に示すように、圧力時系列データDT12〜DT32が、パターン情報としての左方向条件と第4時間条件とを満たすとき、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を左方向に延びる直線であると特定する。左方向条件は、DT32>DT22>DT12、である。第4時間条件は、左方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を一定時間以上継続して検出したことである。
なお、本実施形態において、上下左右を次にように定義する。すなわち、「上」は、筆記具1の使用者から見て、使用者の手元から遠い側を示す。「下」は、筆記具1の使用者から見て、使用者の手元に近い側を示す。「左」は、筆記具1の使用者から見て、使用者の左側を示す。「右」は、筆記具1の使用者から見て、使用者の右側を示す。
次に、図2及び図8を参照して、筆記図形特定部49について更に具体例を挙げて説明する。図8(a)は、筆記具1によって筆記面33aに形成される円CLを示す図である。円CLは筆記図形の一例である。図8(b)は、円CLに対応する圧力時系列データDT12〜DT32を示す図である。図8(b)において、「pm」は、圧力時系列データDT12〜DT32が取り得る圧力値の最大値を示す。図8(b)では、横軸は時間tを示し、縦軸は圧力値pを示す。
図8(a)に示すように、筆記面33aに円CLを形成するときに、筆記具1の先端部9は、位置PDで筆記面33aに当接し、位置PL、位置PU、及び位置PRを順番に経由して、位置PDに到達する。従って、位置PDでの先端部9の移動方向DLは左方向を示し、位置PLでの先端部9の移動方向DUは上方向を示す。また、位置PUでの先端部9の移動方向DRは右方向を示し、位置PRでの先端部9の移動方向DDは下方向を示す。
そこで、図8(b)に示すように、圧力時系列データDT12〜DT32が、パターン情報としての円条件を満たすとき、筆記図形特定部49は、筆記図形の種類を、最下部を始点とした時計回りの円CLであると特定する。
円条件は、左方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を検出し、次に上方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を検出し、次に右方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を検出し、次に下方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を検出し、次に左方向条件を満たす圧力時系列データDT12〜DT32を検出することである。上方向条件、下方向条件、右方向条件、及び左方向条件は、それぞれ、図4〜図7を参照して説明した上方向条件、下方向条件、右方向条件、及び左方向条件と同じである。
以上、図4〜図8を参照して説明したように、本実施形態によれば、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2をパターン情報と比較し、パターンマッチングを実行する。その結果、筆記図形の種類を的確に特定できる。
また、プロセッサー21aに機械学習を実行させることによって、パターン情報の精度を向上できる。その結果、筆記図形の種類を更に的確に特定できる。機械学習は、プロセッサー21aによる処理を繰り返し、図形の規則性及び/又は判断基準を導き出すことを示す。なお、パターン情報は一例であり、特に限定されない。従って、種々のパターン情報を定めることにより、様々な種類の筆記図形を特定できる。
また、図2に示すように、筆記図形特定部49は、図形用フィルター49aを含むことが好ましい。図形用フィルター49aは、把持力時系列データDT2に対して第2フィルタリング処理を実行する。第2フィルタリング処理とは、把持力時系列データDT2からノイズを除去して、筆記図形の種類の特定のために把持力時系列データDT2を最適化する処理のことである。筆記図形特定部49は、第2フィルタリング処理後の把持力時系列データDT2に基づいて筆記図形の種類を特定する。その結果、筆記図形の種類の特定の精度を更に向上できる。第2フィルタリング処理は、例えば、把持力時系列データDT2のノイズを除去して、把持力時系列データDT2の特徴情報を鮮明にする処理を含む。
次に、図1、図2、及び図9〜図12を参照して、情報処理装置21が実行する筆記情報算出方法について説明する。具体的には、図1及び図2に示すように、記憶装置21bにコンピュータープログラムが記憶されている。コンピュータープログラムは、コンピューターとしてのプロセッサー21aに筆記情報算出方法を実行させる。その結果、プロセッサー21aは、前処理部41、第1筆記量算出部43、筆記速度算出部45、第2筆記量算出部47、及び筆記図形特定部49として機能する。
図9〜図12は、筆記情報算出方法を示すフローチャートである。図9〜図12に示すように、筆記情報算出方法は、ステップS1〜ステップS9と、ステップS21〜ステップS39と、ステップS51〜ステップS55と、ステップS61〜ステップS69とを含む。
図2及び図9に示すように、ステップS1において、前処理部41は、タイマーを起動する。例えば、前処理部41は、授業の開始時にタイマーを起動する。
ステップS3において、前処理部41は、把持力時系列データDT1を取得する。
ステップS5において、前処理部41は、把持力時系列データDT1に対してローパスフィルター処理を実行し、把持力時系列データDT2を生成する。
ステップS7において、前処理部41は、把持力時系列データDT2に含まれる圧力時系列データDT12と圧力時系列データDT22とに対して算術平均処理を実行し、把持力時系列データDAを生成する。
ステップS9において、前処理部41は、把持力時系列データDA又は把持力時系列データDT2に基づいて、筆記面33aに対して記号の形成動作が実行されているか、又は筆記面33aに対して図形の形成動作が実行されているかを判定する。
記号の形成動作が実行されていると判定されたときは、処理は図10のステップS21に進む。
図2及び図10に示すように、ステップS21において、第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDAに対して第1フィルタリング処理を実行する。具体的には、記号用フィルター43aが第1フィルタリング処理を実行する。
ステップS23において、第1筆記量算出部43は、第1フィルタリング処理後の把持力時系列データDAから2つの極値(本実施形態では、2つの最大値)を検出する。
ステップS25において、第1筆記量算出部43は、2つの極値に基づいて、極値間時間X(m)を算出する。
ステップS27において、第1筆記量算出部43は、式(3)及び式(4)に従って閾値Y(m)を算出する。
ステップS29において、第1筆記量算出部43は、式(5)に従って、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいか否かを判定する。
極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいと判定されたときは(ステップS29でYes)、処理はステップS31に進む。
ステップS31において、第1筆記量算出部43は、第1筆記量を示す第1計数値CT1を1つインクリメントする。その後、処理は図12のステップS61に進む。
一方、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きくないと判定されたときは(ステップS29でNo)、処理はステップS33に進む。
ステップS33において、第1筆記量算出部43は、記憶装置21bから第1補助数値tsを取得し、第1補助閾値Y1を算出する。第1補助閾値Y1は、式(8)によって表される。
Y1=α×ts+β …(8)
式(8)のαは、式(3)の第1定数αと同じである。式(8)のβは、式(3)の第2定数βと同じである。式(8)の第1補助数値tsは、「セグメント間時間を含む極値間時間」の学習値を示す。「セグメント間時間を含む極値間時間」の学習値とは、記憶装置21bに蓄積された複数の「セグメント間時間を含む極値間時間」に対して機械学習を実行して導出された「セグメント間時間を含む極値間時間」の予測値のことである。機械学習は、記憶装置21bに蓄積された複数の「セグメント間時間を含む極値間時間」をプロセッサー21aによって処理し、「セグメント間時間を含む極値間時間」の規則性及び/又は判断基準を導き出すことを示す。
ステップS35において、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が第1補助閾値Y1より大きいか否かを判定する。
極値間時間X(m)が第1補助閾値Y1より大きいと判定されたときは(ステップS35でYes)、処理はステップS31に進む。
ステップS33及びステップS35の処理を実行する理由は次の通りである。すなわち、例えば、「お」の1番目から3番目のセグメントのうち2番目のセグメントの終点から3番目のセグメントの始点までの距離は比較的長い。また、例えば、「ぎ」の1番目から6番目のセグメントのうち4番目のセグメントの終点から5番目のセグメントの始点までの距離は比較的長い。距離が長いと、式(3)の極値間時間X(M)が長くなる。その結果、式(3)〜式(5)に基づく判定では、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいと判定されず、記号が計数されないことが発生し得る。そこで、ステップS33及びステップS35の処理を実行して、あるセグメントの終点から次のセグメントの始点までの距離が比較的長い場合であっても、精度良く記号を計数する。
一方、極値間時間X(m)が第1補助閾値Y1より大きくないと判定されたときは(ステップS35でNo)、処理はステップS37に進む。
ステップS37において、第1筆記量算出部43は、第2補助閾値Y2及び第2補助数値tcを記憶装置21bから取得する。第2補助閾値Y2は定数である。例えば、第2補助閾値Y2は、「1.3」である。第2補助閾値Y2は、実験的及び/又は経験的に定められる。第2補助数値tcは、「記号間時間を含む極値間時間」の学習値を示す。「記号間時間を含む極値間時間」の学習値とは、記憶装置21bに蓄積された複数の「記号間時間を含む極値間時間」に対して機械学習を実行して導出された「記号間時間を含む極値間時間」の予測値のことである。機械学習は、記憶装置21bに蓄積された複数の「記号間時間を含む極値間時間」をプロセッサー21aによって処理し、「記号間時間を含む極値間時間」の規則性及び/又は判断基準を導き出すことを示す。
ステップS39において、第1筆記量算出部43は、極値間時間X(m)が式(9)に示す条件を満たすか否かを判定する。つまり、第1筆記量算出部43は、「X(m)/tc」が第2補助閾値Y2より小さく、かつ、「tc/X(m)」が第2補助閾値Y2より小さいか否かを判定する。
X(m)/tc<Y2 かつ tc/X(m)<Y2 …(9)
「X(m)/tc」が第2補助閾値Y2より小さく、かつ、「tc/X(m)」が第2補助閾値Y2より小さと判定されたときは(ステップS39でYes)、処理はステップS31に進む。
一方、「X(m)/tc」と「tc/X(m)」とのうち、少なくとも一方が第2補助閾値Y2より小さくないと判定されたときは(ステップS39でNo)、処理は図9のステップS3に進む。
ステップS37及びステップS39の処理を実行する理由は次の通りである。すなわち、例えば、「の」、「つ」、及び「ひ」の各々は、1つのセグメントから構成される。1つのセグメントから構成される記号の前後の極値間時間は、いずれも記号間時間を含む。従って、記号間時間を含む極値間時間が連続する。その結果、式(3)〜式(5)に基づく判定では、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいと判定されず、記号が計数されないことが発生し得る。また、少ないセグメント数から構成される記号が連続している場合、第1補助数値tsに対する機械学習が十分ではなく、式(8)に基づく判定でも、極値間時間X(m)が閾値Y(m)より大きいと判定されず、記号が計数されないことが発生し得る。そこで、ステップS37及びステップS39の処理を実行して、記号間時間を含む極値間時間が連続する場合であっても、少ないセグメント数から構成される記号が連続している場合であっても、精度良く記号を計数する。
一方、図9のステップS9において、図形の形成動作が実行されていると判定されたときは、処理は図11のステップS51に進む。
図2及び図11に示すように、ステップS51において、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT2に対して第2フィルタリング処理を実行する。具体的には、図形用フィルター49aが第2フィルタリング処理を実行する。
ステップS53において、筆記図形特定部49は、第2フィルタリング処理後の把持力時系列データDT2に基づいてパターンマッチングを実行して、筆記図形の種類を特定する。
ステップS55において、筆記図形特定部49は、第3筆記量を示す第2計数値CT2を1つインクリメントする。その後、処理は図12のステップS61に進む。
図2及び図12に示すように、ステップS61において、前処理部41は、タイマーの時間を参照して、所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間は、例えば、授業時間である。
所定時間が経過していないと判定されたときは(ステップS61でNo)は、処理は図9のステップS3に進む。
一方、所定時間が経過したと判定されたときは(ステップS61でYes)は、処理はステップS63に進む。
ステップS63において、前処理部41は、タイマーを停止する。
ステップS65において、筆記速度算出部45は、筆記時間WTと、筆記時間WT中の第1筆記量とに基づいて、筆記速度Vを算出する。
ステップS67において、第2筆記量算出部47は、把持力時系列データDAに基づいて第2筆記量を算出する。
ステップS69において、第1筆記量算出部43は、第1筆記量を示す第1計数値CT1と第3筆記量を示す第2計数値CT2との合計値を算出する。そして、処理は終了する。
以上、図9〜図12を参照して説明したように、本実施形態によれば、筆記情報算出方法はステップS21〜ステップS31を含む。そして、ステップS21〜ステップS31では、把持力時系列データDT1(具体的には、把持力時系列データDA)に基づいて、第1筆記量を算出する処理が実行される。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、第1筆記量を算出できる。
また、本実施形態によれば、筆記情報算出方法はステップS51及びステップS53を含む。そして、ステップS51及びステップS53では、把持力時系列データDT1(具体的には、把持力時系列データDT2)に基づいて、筆記図形の種類を特定する処理が実行される。その結果、利用可能な筆記具の種類の制限を緩和しつつ、筆記図形の種類を特定できる。
(変形例)
図13を参照して、本実施形態の変形例に係る筆記装置100について説明する。図13に示すように、本変形例に係る筆記装置100は、グリップ部材71を備えている点で、図1を参照して説明した本実施形態に係る筆記装置100と異なる。以下、本変形例が本実施形態と異なる点を主に説明する。
図13は、本変形例に係る筆記装置100のグリップ部材71を示す斜視図である。なお、図13では、図面の簡略化のため、筆記具1を二点鎖線で示している。
図13に示すように、筆記装置100は、グリップ部材71をさらに備える。グリップ部材71は、略円筒状であり、貫通孔72を有する。そして、貫通孔72に軸体3が挿通される。その結果、グリップ部材71が軸体3に装着される。また、グリップ部材71は、弾性を有する。グリップ部材71は、例えば、ゴムにより形成されている。
グリップ部材71は、複数の凹部73(本変形例では、3個の凹部73)をさらに有する。3個の凹部73は、グリップ部材71の周面に配置される。3個の凹部73のうち凹部73aは使用者の親指に対応し、凹部73aには親指が接触する。3個の凹部73のうち凹部73bは使用者の人差し指に対応し、凹部73bには人差し指が接触する。3個の凹部73のうち凹部73cは使用者の中指に対応し、凹部73cには中指が接触する。
検出部10は、軸体3とグリップ部材71との間に配置される。具体的には、圧力検出部G1は、凹部73aに対向するように、軸体3の外面とグリップ部材71の内面との間に配置される。圧力検出部G2は、凹部73bに対向するように、軸体3の外面とグリップ部材71の内面との間に配置される。圧力検出部G3は、凹部73cに対向するように、軸体3の外面とグリップ部材71の内面との間に配置される。
以上、図13を参照して説明したように、本変形例によれば、検出部10は、グリップ部材71を介して押圧されるため、指に直接接触しない。従って、指からの圧力がグリップ部材71により緩和され、把持力時系列データDAに含まれる極値を更にシャープにすることができる。その結果、第1筆記量を更に精度良く算出できる。また、複数の使用者間での検出圧力のばらつきが抑制され、複数の使用者にわたって、第1筆記量を安定して検出できる。例えば、検出圧力のばらつきは、使用者の癖に起因する。
[学習者の理解度の推定]
図1〜図13を参照して説明した本実施形態(変形例を含む。)では、第1筆記量〜第3筆記量及び筆記速度を算出するとともに、筆記図形の種類を特定している。従って、学習者に筆記具1を使用させ、第1筆記量、第2筆記量、第3筆記量、筆記速度、及び筆記図形の種類のうちの1つ又は2以上に基づいて、定量的に学習者の理解度を推定できる。
すなわち、筆記量と理解度とには相関があることが分かっている。例えば、ノートテイキング行動と事後テストの得点とについて検討が行われた(岸俊行、塚田裕恵、野嶋栄一郎、「ノートテイキングの有無と事後テストの得点との関連分析」、日本教育工学会誌、Vol.28、pp.265−268、2004)。この検討の結果、ノートテイキング量とテストの得点との間に強い相関が認められた。また、例えば、下線及び矢印のような方略図形の使用数とテストの得点との関係について検討が行われた(齋藤ひとみ、源田雅裕、「ノートテイキングにおける方略使用の効果に関する検討」、日本教育工学会論文誌、vol.31、pp.197−200、2007)。この検討の結果、理解度の高い学習者は低い学習者に比べ、重要キーワードを多く抽出できており、方略図形を多く使用していることが確認された。
本実施形態では、第1筆記量〜第3筆記量及び筆記速度の各々が、ノートテイキング量を表す。また、筆記図形の種類を特定することが方略図形を特定することに相当し、第3筆記量が方略図形の出現数を表している。従って、第1筆記量〜第3筆記量、筆記速度、及び筆記図形の種類のうちの1つ又は2以上に基づいて、定量的に学習者の理解度を推定できる。
具体的には、第1筆記量が少ない程、学習者の理解度が低いことが示され、第2筆記量が少ない程、学習者の理解度が低いことが示され、筆記速度が遅い程、学習者の理解度が低いことが示される。また、第3筆記量が少ない程、学習者の理解度が低いことが示される。換言すれば、筆記図形の種類が特定される回数が少ない程、学習者の理解度が低いことが示される。
第1筆記量〜第3筆記量、筆記速度、及び筆記図形の種類の各々を単独で使用するよりも、第1筆記量〜第3筆記量、筆記速度、及び筆記図形の種類のうち2以上の組み合わせを使用する方が、学習者の理解度を更に的確に推定できる。
次に、定量的に学習者の理解度を推定できることの有用性を説明する。例えば、教育現場において、生徒の理解度を把握する方法として、質問又は机間巡視の実施が挙げられる。一般的な一斉授業では、1人の教師が複数の生徒を相手にする必要があるため、すべての生徒の理解度を一度に把握することは難しい。また、宿題などの家庭学習は、そもそも教師の目が届かない範囲での学習であるため、生徒の学習内容及び学習過程を把握することはできない。その結果、生徒の学習内容に対する「つまずき」に教師が気づかず、生徒の学習の遅れにつながってしまう可能性がある。
本実施形態では、第1筆記量〜第3筆記量、筆記速度、及び筆記図形の種類のうちの1つ又は2以上に基づいて、定量的に学習者の理解度を推定して、例えば、学習者に「つまずき」箇所を自覚させたり、教師の指導方法を支援したりすることができる。
また、本実施形態では、筆記具1を利用して、第1筆記量〜第3筆記量及び筆記速度を算出するとともに、筆記図形の種類を特定している。筆記具1による筆記動作は学習者にとって慣れ親しんだ動作であるため、学習者への身体的及び精神的な負担と学習環境への影響とを抑制しつつ、定量的に学習者の理解度を推定できる。
次に、本発明が実施例に基づき具体的に説明されるが、本発明は以下の実施例によって限定されない。
図1、図2、及び図14〜図17を参照して、本発明の実施例について説明する。実施例では、図1及び図2に示す本実施形態に係る筆記装置100が使用された。ただし、筆記具1にコントローラー11を設けず、筆記具1と情報処理装置21とがケーブルによって接続された。そして、把持力信号SGは、ケーブルを介して、筆記具1から情報処理装置21に送信された。さらに、プロセッサー21aが、把持力信号SGを所定周波数でサンプリングし、把持力時系列データDT1を生成した。所定周波数は100Hzであった。なお、本実施例の説明において、図1〜図12を参照して説明した式(1)〜式(9)を適宜引用する。
筆記具1として、LAMY社製の「LAMY(登録商標) safari L119WT」を使用した。圧力検出部Gとして、InterlinkElectronics社製の「FSR400」を使用した。導出用検出部31として、InterlinkElectronics社製の帯状の「FSR408」を複数個並べて使用した。
筆記装置100を評価するため、文「あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。」(宮沢賢治、「ポラーノの広場」)を使用した。この文は、平仮名、片仮名、漢字、長音、及び句読点のような様々な種類の記号を含むため、評価に用いる文として適切であると判断した。
「あのイーハトーヴォのすきとおった風、夏でも底に冷たさをもつ青いそら、」を文Aと記載し、「うつくしい森で飾られたモリーオ市、郊外のぎらぎらひかる草の波。」を文Bと記載する。また、「あのイーハトーヴォのすきとおった風、」を文A1と記載し、「夏でも底に冷たさをもつ青いそら、」を文A2と記載し、「うつくしい森で飾られたモリーオ市、」を文A3と記載し、「郊外のぎらぎらひかる草の波。」を文A4と記載する。
(実施例1)
図1、図2、及び図14を参照して、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、被験者が、図1及び図2に示す筆記具1を使用して、「あ」、「い」、「う」、「え」、「お」を筆記面33aに筆記した。
図14は、実施例1に係る把持力時系列データDT1を示す図である。図14において、横軸は時間(ms)を示し、縦軸は圧力(g)を示す。図14に示すように、把持力時系列データDT1は、圧力時系列データD1と、圧力時系列データD2と、圧力時系列データD3とを含んだ。圧力時系列データD1は、圧力信号R1に対応し、親指からの圧力を示した。圧力時系列データD2は、圧力信号R2に対応し、人差し指からの圧力を示した。圧力時系列データD3は、圧力信号R3に対応し、中指からの圧力を示した。
筆記具1の先端部9が筆記面33aに接触するタイミングでは、圧力時系列データD1の示す圧力値と圧力時系列データD2の示す圧力値とが急峻に上昇した。一方、筆記具1の先端部9が筆記面33aから離間するタイミングでは、圧力時系列データD1の示す圧力値と圧力時系列データD2の示す圧力値とが急峻に下降した。
すなわち、圧力時系列データD1の示す圧力値と圧力時系列データD2の示す圧力値とは、振幅を異にするが、同様の波形を示した。従って、圧力時系列データD1の示す圧力値と圧力時系列データD2の示す圧力値との平均値を算出することで、筆記具1の先端部9と筆記面33aとの接触状況を認識できることが確認された。換言すれば、圧力時系列データDT12の示す圧力値と圧力時系列データDT12の示す圧力値との平均値を算出することで、筆記具1の先端部9と筆記面33aとの接触状況を認識できることが確認された。
(実施例2〜実施例4)
図2、図15、及び図16を参照して、本発明の実施例2〜実施例4について説明する。実施例2〜実施例4では、図2に示すように、筆圧信号WSに基づいて、前処理部41が筆圧時系列データWD2を生成した。そして、単回帰式導出部51は、文A1〜文A4ごとに、筆圧時系列データWD2に基づいて複数の導出用極値間時間を算出した。一方、管理者は、筆記面33aに筆記された文字(導出用記号に対応)を導出用極値間時間と対比させた。そして、管理者は、複数の導出用極値間時間を、セグメント間時間を含む導出用極値間時間と記号間時間を含む導出用極値間時間とのうちのいずれかに弁別した。
単回帰式導出部51は、文A1〜文A4ごとに、セグメント間時間を含む導出用極値間時間の平均値DSと、記号間時間を含む導出用極値間時間の平均値DCとを算出し、導出用データ(DS,DC)として設定した。7人の被験者を用意したため、合計28個の導出用データ(DS,DC)が得られた。
単回帰式導出部51は、28個の導出用データ(DS,DC)に対して最小二乗法を実行し、式(10)に示す実施例2に係る単回帰式を導出した。
Γ=2.23×Λ−47.7 …(10)
式(10)の「2.23」が式(6)のζに対応し、式(10)の「−47.7」が式(6)のξに対応した。
式(10)において、記号間時間を含む導出用極値間時間Γとセグメント間時間を含む導出用極値間時間Λとの相関係数は、「0.73」であり、強い相関が確認された。更に、式(10)に示す単回帰式の決定係数は、「0.53」であった。従って、式(10)に示す回帰係数ζ(=2.23)を利用して式(3)に示す閾値Y(m)を定め、閾値Y(m)によって、複数の極値間時間を、記号間時間を含む極値間時間とセグメント間時間を含む極値間時間とに的確に弁別できることが示唆された。
また、単回帰式導出部51は、28個の導出用データ(DS,DC)の残差のうち、負の残差の平均値を算出した。そして、単回帰式導出部51は、負の残差の平均値を第1シフト量F1に設定し、式(11)に示す実施例3に係る第1シフト単回帰式を導出した。第1シフト量F1は、−47.8であった。
Γ=2.23×Λ−47.7−47.8 …(11)
式(11)の「2.23」が式(7)のζに対応し、式(11)の「−47.7」が式(7)のξに対応し、式(11)の「−47.8」が式(7)のFに対応した。
さらに、単回帰式導出部51は、28個の導出用データ(DS,DC)の残差のうち、負の残差の標準偏差を算出した。そして、単回帰式導出部51は、−1が乗じられた負の残差の標準偏差を第2シフト量F2に設定し、式(12)に示す実施例4に係る第2シフト単回帰式を導出した。第2シフト量F2は、−56.2であった。
Γ=2.23×Λ−47.7−56.2 …(12)
式(12)の「2.23」が式(7)のζに対応し、式(12)の「−47.7」が式(7)のξに対応し、式(12)の「−56.2」が式(7)のFに対応した。
図15は、単回帰式に基づく直線81、第1シフト単回帰式に基づく直線82、及び第2シフト単回帰式に基づく直線83を示すグラフである。図15において、グラフの横軸は、セグメント間時間を含む導出用極値間時間(ms)を示し、グラフの縦軸は、記号間時間を含む導出用極値間時間(ms)を示す。
図15に示すように、導出用データ(DS,DC)がプロットされた。式(10)に示す単回帰式は、直線81を表した。式(11)に示す第1シフト単回帰式は、直線82を表した。式(12)に示す第2シフト単回帰式は、直線83を表した。
次に、式(10)〜式(12)を評価した。式(10)〜式(12)の各評価において、式(3)の第1定数αに式(10)〜式(12)の「2.23」を設定し、式(4)の第3定数z1に式(10)〜式(12)の「−47.7」を設定した。
図16は、式(10)〜式(12)の評価結果を示す図である。図16に示すように、式(10)の単回帰式の評価では、式(10)に合わせて、式(4)の第4定数z2に「0」を設定した。式(11)の第1シフト単回帰式の評価では、式(11)に合わせて、式(4)の第4定数z2に「−47.8」を設定した。式(12)の第2単回帰式の評価では、式(12)に合わせて、式(4)の第4定数z2に「−56.2」を設定した。
そして、第1筆記量算出部43が、筆圧時系列データWD2に基づいて、文A及び文Bごとに、式(3)〜式(5)に従って第1筆記量としての文字数を算出した。図16に、式(10)〜式(12)に対応して、第1筆記量としての文字数を記載している。また、()内には、計算値と理論値との差が示される。計算値は、式(3)〜式(5)に従って算出された文字数を示し、理論値は、筆記面33aに筆記された文字の数を目視で数えたときの文字数を示す。
また、平均誤差率を算出した。誤差率は、(│計算値−理論値│/理論値)×100、である。平均誤差率は、誤差率の総和/サンプル数、である。式(10)に示す単回帰式に基づく文字数の平均誤差率は、19.3%であった。式(11)に示す第1シフト単回帰式に基づく文字数の平均誤差率は、12.7%であった。式(12)に示す第2シフト単回帰式に基づく文字数の平均誤差率は、15.0%であった。つまり、第1シフト単回帰式が最も良好であった。第2シフト回帰式は、第1シフト単回帰式の次に良好であった。単回帰式は、第2シフト回帰式の次に良好だった。
(実施例5)
図2及び図17(a)を参照して、本発明の実施例5について説明する。実施例5では、図2に示すように、検出部10が出力した把持力信号SGに基づいて、前処理部41が把持力時系列データDAを生成した。そして、第1筆記量算出部43が、把持力時系列データDAに基づいて、文A及び文Bごとに、式(3)〜式(5)に従って第1筆記量としての文字数を算出した。
式(3)及び式(4)では、第1定数α、第3定数z1、及び第4定数z2には、それぞれ、式(11)に示す最も評価の高かった第1シフト単回帰式の回帰係数ζ、定数項ξ、及びシフト量F(第1シフト量F1)を設定した。具体的には、第1定数αに「2.23」を設定し、第3定数z1に「−47.7」を設定し、第4定数z2に「−47.8」を設定した。
さらに、図10に示すステップS29に加えて、ステップS33〜ステップS39を実行した。ステップS33及びステップS35で使用する式(8)のαは、式(3)の第1定数α(=2.23)と同じであり、式(8)のβは、式(3)の第2定数β(=−47.7−47.8)と同じであった。また、ステップS37及びステップS39で使用する式(9)の第2補助閾値Y2は、「1.3」であった。
図17(a)は、実施例5に係る第1筆記量としての文字数及び平均誤差率を示す図である。図17(a)に示すように、文字数が算出された。()内には、計算値と理論値との差が示された。計算値は、式(3)〜式(5)、式(8)、及び式(9)に従って算出された文字数を示し、理論値は、筆記面33aに筆記された文字の数を目視で数えたときの文字数を示した。第1筆記量としての文字数の平均誤差率は、24.9%であった。
(実施例6)
図2及び図17(b)を参照して、本発明の実施例6について説明する。実施例6では、図2に示すように、導出用検出部31が出力した筆圧信号WSに基づいて、前処理部41が筆圧時系列データWD2を生成した。そして、第1筆記量算出部43が、筆圧時系列データWD2に基づいて、文A及び文Bごとに、実施例5と同じ式(3)〜式(5)、式(8)、及び式(9)に従って第1筆記量としての文字数を算出した。そして、第1筆記量としての文字数の平均誤差率を算出した。
図17(b)は、実施例6に係る第1筆記量としての文字数の平均誤差率を示す図である。図17(b)に示すように、平均誤差率は、13.6%であった。
図17(a)及び図17(b)を参照して、実施例5と実施例6とを比較した。実施例5の把持力時系列データDAに基づく第1筆記量の平均誤差率と実施例6の筆圧時系列データWD2に基づく第1筆記量の平均誤差率との差は、11.3%であった。従って、把持力を用いた場合、筆圧を用いた場合と同様に、第1筆記量を算出できた。
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態及び実施例について説明した。但し、本発明は、上記の実施形態及び実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(8))。
(1)図1に示す筆記具1と情報処理装置21とを有線接続してもよい。この場合、筆記具1はコントローラー11を備えていなくてもよい。また、1個の圧力検出部Gを設けてもよいし、2個又は4個以上の圧力検出部Gを設けてもよい。また、2個の圧力検出部Gを設ける場合は、親指と人差し指とに対応して設けることが好ましい。
(2)図2に示す情報処理装置21は、第1筆記量算出部43、筆記速度算出部45、第2筆記量算出部47、筆記図形特定部49、及び単回帰式導出部51のうちの1つ又は2以上の組合せを備えることもできる。特に、第1筆記量〜第3筆記量及び筆記速度の算出と筆記図形の種類の特定との一部又は全部を実行する場合、情報処理装置21は単回帰式導出部51を備えていなくてもよく、筆記装置100は導出用検出部31を備えていなくてよい。また、情報処理装置21は、ローパスフィルター41aを備えていなくてもよい。
また、第1筆記量算出部43、筆記速度算出部45、第2筆記量算出部47、筆記図形特定部49、及び単回帰式導出部51のうちの1つ又は2以上の組合せが、筆記具1に備えられていてもよい。この場合は、プロセッサー11aが、記憶装置11bに記憶されたコンピュータープログラムを実行することによって、第1筆記量算出部43、筆記速度算出部45、第2筆記量算出部47、筆記図形特定部49、及び単回帰式導出部51のうちの1つ又は2以上の組合せとして機能する。例えば、前処理部41及び第1筆記量算出部43が筆記具1に備えられ、筆記図形特定部49が情報処理装置21に備えられる。この例では、筆記速度算出部45及び第2筆記量算出部47は、筆記具1に備えられていてもよいし、情報処理装置21に備えられていてもよい。
(3)図2に示す第1筆記量算出部43は、把持力時系列データDT1又は把持力時系列データDT2に基づいて第1筆記量を算出してもよい。また、第1筆記量算出部43は、圧力時系列データD1又は圧力時系列データD2に基づいて第1筆記量を算出してもよい。さらに、第1筆記量算出部43は、圧力時系列データDT12又は圧力時系列データDT22に基づいて第1筆記量を算出してもよい。
また、筆記速度算出部45は、記号間時間を含む極値間時間及び/又はセグメント間時間を含む極値間時間に基づいて筆記速度を算出してもよい。
さらに、第2筆記量算出部47は、把持力時系列データDT1又は把持力時系列データDT2に基づいて第2筆記量を算出してもよい。また、第2筆記量算出部47は、圧力時系列データD1又は圧力時系列データD2に基づいて第2筆記量を算出してもよい。さらに、第2筆記量算出部47は、圧力時系列データDT12又は圧力時系列データDT22に基づいて第2筆記量を算出してもよい。
さらに、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDT1又は把持力時系列データDT2に基づいて筆記図形の種類を特定してもよい。また、筆記図形特定部49は、圧力時系列データD1〜D3の一部又は全部に基づいて筆記図形の種類を特定してもよい。さらに、筆記図形特定部49は、圧力時系列データDT12〜DT32の一部又は全部に基づいて筆記図形の種類を特定してもよい。さらに、筆記図形特定部49は、把持力時系列データDAに基づいて筆記図形の種類を特定してもよいし、把持力時系列データDA及び圧力時系列データD3に基づいて筆記図形の種類を特定してもよいし、把持力時系列データDA及び圧力時系列データDT32に基づいて筆記図形の種類を特定してもよい。
(4)図2に示すローパスフィルター41a、記号用フィルター43a、及び図形用フィルター49aは、個々の使用者の特性(例えば、癖)を反映させるため、使用者ごとに用意することが好ましい。また、筆記図形特定部49が使用するパターン情報は、個々の使用者の特性を反映させるため、使用者ごとに用意することが好ましい。
(5)図3を参照して説明した本実施形態では、極値Bは最大値であった。ただし、第1筆記量算出部43が検出及び処理する極値は、最小値であってもよい。つまり、極値は、圧力曲線Pの局所的な範囲での圧力値の最小値であってもよい。極値が最小値の場合、導出用極値も最小値である。
(6)図12に示す筆記情報算出方法において、ステップS63〜ステップS69の順番は、適宜変更し得る。
(7)図13に示す本変形例では、検出部10は、軸体3とグリップ部材71との間に配置された。ただし、検出部10は、グリップ部材71の内部に配置されてもよい。具体的には、圧力検出部G1は、凹部73aに対向するように、グリップ部材71の内部に配置される。圧力検出部G2は、凹部73bに対向するように、グリップ部材71の内部に配置される。圧力検出部G3は、凹部73cに対向するように、グリップ部材71の内部に配置される。
検出部10がグリップ部材71の内部に配置されるため、使用者は、グリップ部材71を任意の筆記具に装着して、筆記装置100を比較的容易に構成できる。また、コントローラー11を、グリップ部材71の内部に配置したり、筆記具1に対してグリップ部材71とともに脱着可能に設けたりすることが好ましい。
(8)図1〜図13に示す筆記装置100をゲームに応用することができる。例えば、使用者の筆記動作を示す筆記情報に応じたシューティングゲームを構成できる。例えば、シューティングゲームでは、圧力時系列データDT12、圧力時系列データDT22、及び圧力時系列データDT32に基づいて、ターゲットを撃つための弾丸又はレーザーの方向を設定する。例えば、使用者の筆記動作を示す筆記情報に応じたロールプレイングゲームを構成できる。例えば、ロールプレイングゲームでは、第1筆記量を経験値に設定する。