JP6916473B2 - モールド用離型剤 - Google Patents

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Description

本発明は、インプリント時にモールド上に塗布して使用する離型剤に関する。前記離型剤が適用されるモールドとしては、樹脂製モールドのみならず、例えば金属製モールド、シリコン(Si)製モールド、アルミナ(Al)製モールド及び石英製モールドにも採用される。
1995年、現プリンストン大学のチョウ教授らがナノインプリントリソグラフィという新たな技術を提唱した(特許文献1)。ナノインプリントリソグラフィは、任意のパターンを有するモールドを樹脂膜が形成された基材と接触させ、該樹脂膜を加圧すると共に、熱又は光を外部刺激として用い、目的のパターンを、硬化した該樹脂膜に形成する技術である。このナノインプリントリソグラフィは、従来の半導体デバイス製造における光リソグラフィ等に比べて簡便・安価にナノスケールの加工が可能であるという利点を有する。したがって、ナノインプリントリソグラフィは、光リソグラフィ技術に代わり、半導体デバイス、オプトデバイス、ディスプレイ、記憶媒体、バイオチップ等の製造への適用が期待されている技術であることから、ナノインプリントリソグラフィに用いる光ナノインプリントリソグラフィ用硬化性組成物について様々な報告がなされている(特許文献2、特許文献3)。
ナノインプリントリソグラフィ(以下、本明細書では「インプリント」と略称する。)では、インプリント後、モールドから硬化樹脂膜を離型する際の離型性を向上させるため、あらかじめモールド上へ離型剤を塗布し離型処理する手法が一般的に用いられており、シリコン製等のモールドに使用する離型剤について様々な報告がなされている。(特許文献4、特許文献5)
米国特許第5772905号明細書 特開2008−105414号公報 特開2008−202022号公報 特許第5274839号明細書 特開2011−148117号公報
離型処理された同一のモールドを用いて繰り返しインプリントを行うと、次第に該モールドから離型剤の塗布膜(離型剤から形成された被膜)が剥がれ、離型性の悪化が起こる。そのため、従来モールドに使用する離型剤はモールド材料と化学的に反応する基を保持させ、これを該モールド表面に存在する官能基と結合させて使用することが多い。そして、離型剤が塗布されたモールドの表面形状は、インプリントされる光硬化樹脂の形状に大きな影響を与えるため、離型剤から形成された被膜表面の粗さはできるだけ小さくなることが望まれる。上述したように、モールド表面に塗布して使用するインプリント離型剤の報告はこれまでにも種々なされているが、シリコン製モールドや金属製モールドの他、樹脂製モールドにも使用可能な離型剤について具体的な検討や報告は殆どなされていない。特に、樹脂製モールドを用いて繰り返しインプリントを行う際に使用する離型剤や、該離型剤から形成された被膜表面の粗さについての検討や報告も殆どなされていない。
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、モールドの離型処理された表面の二乗平均粗さが1nm未満であり、かつ、該モールドを用いて繰り返しインプリントを行うことを可能にする、モールド用離型剤の提供を目的とする。また、本明細書では、形成されるパターンサイズがナノメートルオーダーである場合に限らず、例えば、マイクロメートルオーダー及びミリメートルオーダーである場合を含む光ナノインプリント技術を、光インプリントと称する。
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、離型剤の構成成分として特定の多官能(メタ)アクリレート化合物、光重合開始剤及び溶媒を採用することにより、次の知見を得、本発明を完成した。すなわち、本発明のモールド用離型剤は、これをモールドの表面に適用することにより、離型処理された表面を該モールドに形成することができる。これにより該モールドを用いて繰り返しインプリントを行うことが可能となり、さらに該離型処理された表面の二乗平均粗さが1nm未満となる。
すなわち本発明は、第1観点として、
下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するモールド用離型剤。
(A):下記式(1)で表される基及び下記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、下記式(3)で表される基を含む重合性基を有する、多官能(メタ)アクリレート化合物
(B):前記(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの光重合開始剤
(C):溶媒
Figure 0006916473
(式中、Rは炭素原子数1又は2のパーフルオロアルキレン基を表し、R2aは炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、R2bは炭素原子数2又は3の3価の炭化水素基を表し、*はそれぞれ前記ウレタン結合の−O−基と結合する結合手を表し、p及びqはそれぞれ前記式(1)で表される基の数及び前記式(2a)で表される基の数を表すと共に独立して2以上の整数を表し、Rはメチル基又は水素原子を表す。)
第2観点として、前記qが、5乃至12の整数である、第1観点に記載のモールド用離型剤。
第3観点として、前記式(2a)で表される基がポリ(オキシエチレン)基である、第1観点又は第2観点に記載のモールド用離型剤。
第4観点として、前記重合性基が前記式(3)で表される基を少なくとも2つ含む、第1観点乃至第3観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第5観点として、前記式(1)で表される基が、オキシパーフルオロメチレン基及びオキシパーフルオロエチレン基の双方を有する基である、第1観点乃至第4観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第6観点として、前記モールド用離型剤の総質量100質量%に対し、前記(A)成分の割合が0.05質量%乃至10質量%である、第1観点乃至第5観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第7観点として、(D)成分としてさらに光増感剤を含有する、第1観点乃至第6観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤から形成された被膜を備えた、離型処理された表面を有するモールド。
第9観点として、前記モールドは金属製モールド、シリコン製モールド、アルミナ製モールド、石英製モールド及び樹脂製モールドからなる群から選択される、第8観点に記載の離型処理された表面を有するモールド。
第10観点として、第1観点乃至第7観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤を樹脂製モールド上に塗布する工程、及び前記樹脂製モールド上に塗布されたモールド用離型剤をベークし、露光して前記樹脂製モールドの表面に被膜を形成する工程を有する、離型処理された樹脂製モールドの作製方法。
第11観点として、第8観点又は第9観点に記載の離型処理された表面を有するモールドを光硬化性樹脂に圧着する工程、前記光硬化性樹脂を該モールドに圧着させたまま光硬化する工程、及び前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を前記離型処理された表面を有するモールドから離型する工程を有する、パターンが転写された最大膜厚が1.5mmの硬化膜の作製方法。
第12観点として、前記離型処理された表面の二乗平均粗さが1nm未満である、第8観点又は第9観点に記載の離型処理された表面を有するモールド。
本発明のモールド用離型剤を採用することにより、モールドの離型処理された表面の二乗平均粗さを1nm未満とすることができ、かつ、該モールド用離型剤から形成される被膜がモールド表面から剥がれ難いものとなり、該モールド用離型剤を適用した樹脂製モールド、石英製モールド、アルミナ(Al)製モールド、シリコン(Si)製モールド及び金属製モールドを用いて繰り返しインプリントを行うことが可能になる。
特に樹脂製モールドに本発明のモールド用離型剤を適用する場合、該樹脂製モールドの表面と前記モールド用離型剤から形成される被膜とがインターミキシング(一体化)するか、又は該樹脂製モールドの表面に存在する重合性基と該被膜とが反応することができるため、該被膜が該樹脂製モールドから剥がれにくいものとなる。また、石英製モールド、アルミナ(Al)製モールド、シリコン(Si)製モールド及び金属製モールドに本発明のモールド用離型剤を適用する場合、好ましくはこれらのモールドの表面をシランカップリング剤で処理した後、その表面に本発明のモールド用離型剤を適用することで、前記被膜がこれらのモールドから剥がれにくいものとなる。
さらに、本発明のモールド用離型剤は、上記(B)成分及び(C)成分の種類及び含有割合を変更することで、硬化速度、動的粘度、膜厚、塗布性をコントロールすることができる。したがって、本発明のモールド用離型剤は、モールド、製造するデバイス種、製造工程及びベーク工程の種類に対応した離型剤の設計が可能である。
[(A)成分]
(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物は、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を有する。なお、本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方を意味する。また例えば(メタ)アクロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基の双方を意味する。
ここで、上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物を除く、2官能以上のアクリレート化合物又はメタクリレート化合物である。そして、上記ウレタン結合とは、−NH−C(=O)−O−で表される構造をいう。上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に、ウレタン結合を少なくとも2つ、及び(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を少なくとも2つ有する。
なお前記式(1)で表される基はポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と称することがあり、前記式(2a)で表される基はポリ(オキシアルキレン)基と称することがある。上記(メタ)アクリロイルオキシ基は、前記式(3)で表される基である。
上記式(1)で表される基におけるオキシパーフルオロアルキレン基:−(O−R)−のRの炭素原子数は1又は2である。すなわち、上記式(1)で表される基は、炭素原子数1又は2の2価のフッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有し、オキシパーフルオロアルキレン基は炭素原子数1又は2の2価のフッ化炭素基と酸素原子が連結した構造を有する。該オキシパーフルオロアルキレン基として具体的には、−(OCF)−(すなわち、オキシパーフルオロメチレン基)及び−(OCFCF)−(すなわち、オキシパーフルオロエチレン基)が挙げられる。上記オキシパーフルオロアルキレン基は、−(OCF)−及び−(OCFCF)−のうちいずれか1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。2種を組み合わせて使用する場合、−(OCF)−及び−(OCFCF)−の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
モールドの離型性を高める観点から、前記式(1)で表される基として、−(OCF)−(すなわち、オキシパーフルオロメチレン基)と−(OCFCF)−(すなわち、オキシパーフルオロエチレン基)の双方を有する基を用いることが好ましい。前記式(1)で表される基として、−(OCF)−と−(OCFCF)−とが、モル比率で[−(OCF)−]:[−(OCFCF)−]=2:1〜1:2となる割合で含む基であることが好ましく、およそ1:1となる割合で含む基であることがより好ましい。これらの結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。前記式(1)で表される基の数〈p〉は、2以上の整数であり、5乃至30の範囲であることが好ましく、7乃至21の範囲であることがより好ましい。
また、前記式(1)で表される基のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000乃至5,000、好ましくは1,500乃至3,000である。
前記式(2a)で表される基におけるオキシアルキレン基:−(O−R2a)−のR2aの炭素原子数は2又は3である。すなわち、前記式(2a)で表される基は、炭素原子数2又は3のアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有し、オキシアルキレン基は炭素原子数2又は3のアルキレン基と酸素原子が連結した構造を有する。上記オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシトリメチレン基が挙げられる。上記オキシアルキレン基は、1種を単独で使用してもよく、或いは2種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、2種以上のオキシアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
前記式(2a)で表される基は、ポリ(オキシエチレン)基であることが好ましい。前記式(2a)で表される基の数〈q〉は2以上の整数であり、例えば2乃至15の範囲であり、好ましくは2乃至12の範囲、又は5乃至12の範囲、或いは7乃至12の範囲である。
前記式(2b)で表される基における3価の炭化水素基:R2bの炭素原子数は2又は3である。すなわち、前記式(2b)で表される基は、炭素原子数2又は3のアルカントリレン基(炭素原子数2又は3のアルキレン基の任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した3価の基)に1つの酸素原子が連結した構造を有する。
前記式(2b)で表される基の中でも、1,2,3−プロパントリイル基の1位(又は3位)に1つの酸素原子が連結した基であることが好ましい。
上記線状又は鎖状の分子鎖は、前述の式(1)で表される基及び前述の式(2a)又は式(2b)で表される基を含む分子鎖であれば限定されない。
上記線状又は鎖状の分子鎖において、式(1)で表される基と式(2a)又は式(2b)で表される基の結合順序は特に限定されず、また各基の数は特に限定されない。
また、上記線状又は鎖状の分子鎖において、式(1)で表される基と式(2a)又は式(2b)で表される基は単結合で結合(直接結合)されていてもよいし、炭素原子数1乃至3のアルキレン基、炭素原子数1乃至3のパーフルオロアルキレン基、或いはそれらの組み合わせ等の構造(連結基)を介して結合されていてもよい。
上記重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有するものに限らず、2つ以上有するものであってもよい。上記重合性基として、例えば、以下に示す式[X1]乃至式[X5]で表される構造(末端基)、及びこれらの構造(末端基)におけるアクリロイルオキシ基をメタクリロイルオキシ基に置換した構造が挙げられる。
Figure 0006916473
(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物は、工業的製造が容易であるという点から、以下に示す構造式(A−1)で表される化合物、(A−2)で表される化合物及び(A−3)で表される化合物、及びこれらの化合物中のアクリロイルオキシ基をメタクリロイルオキシ基に置換した化合物を好ましい例として挙げることができる。なお、下記構造式中、末端のXはそれぞれ前記式[X1]乃至式[X5]で表される構造(末端基)のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し、q及びqはそれぞれ独立してオキシエチレン基の数、例えば2乃至15の整数を表し、好ましくは2乃至12の整数を表し、又は5乃至12の整数を表し、或いは7乃至12の整数を表す。
Figure 0006916473
前記(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物において、1つの重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する、例えば上記式[X3]乃至式[X5]で表される構造(末端基)であることが好ましい。
本発明において(A)成分は、前記モールド用離型剤の総質量、すなわち、該(A)成分と後述する、(B)成分、(C)成分、並びに任意成分である(D)成分及びその他添加剤との総質量100質量%に対し、好ましくは0.05質量%乃至10質量%、より好ましくは0.5質量%乃至8質量%の割合で使用することが望ましい。
本発明のモールド用離型剤の(A)成分は、例えば、前記式(1)で表される基の両末端に、直接結合するか或いは前記連結基を介して結合する、前記式(2a)又は式(2b)で表される基を介して少なくとも2つのヒドロキシ基を有する化合物において、その少なくとも2つのヒドロキシ基に対して、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法により得られる。(A)成分のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,500乃至7,000、好ましくは2,000乃至6,000である。
なお本発明のモールド用離型剤は、(A)成分に加えて、上記式(1)で表される基及び上記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の一部の末端にのみウレタン結合を介して、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を有し、且つ該線状又は鎖状の分子鎖の他の末端にヒドロキシ基を有する化合物(すなわち該他の末端においては重合性基を有していない化合物)が含まれていてもよい。本発明のモールド用離型剤はさらに、上記式(1)で表される基及び上記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端にヒドロキシ基を有する化合物、すなわち上記重合性基を有していない化合物が含まれていてもよい。
[(B)成分]
(B)成分である光重合開始剤は、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものであれば、特に限定されるものではない。該光重合開始剤として、例えば、tert−ブチルペルオキシ−iso−ブチレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルジオキシ)ヘキサン、1,4−ビス[α−(tert−ブチルジオキシ)−iso−プロポキシ]ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルジオキシ)ヘキセンヒドロペルオキシド、α−(iso−プロピルフェニル)−iso−プロピルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルジオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルジオキシ)バレレート、シクロヘキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)−4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルジペルオキシイソフタレート等の有機過酸化物;9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等のアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
上記光重合開始剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、IRGACURE(登録商標)651、同184、同500、同2959、同127、同754、同907、同369、同379、同379EG、同819、同819DW、同1800、同1870、同784、同OXE01、同OXE02、同250、同1173、同MBF、同4265、同TPO(以上、BASFジャパン(株)製)、KAYACURE(登録商標)DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬(株)製)、VICURE−10、同55(以上、STAUFFER Co.LTD製)、ESACURE(登録商標)KIP150、同TZT、同1001、同KTO46、同KB1、同KL200、同KS300、同EB3、トリアジン−PMS、トリアジンA、トリアジンB(以上、日本シイベルヘグナー(株)製)、アデカオプトマーN−1717、同N−1414、同N−1606(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のモールド用離型剤における(B)成分の含有割合は、上記(A)成分の質量に基づいて、例えば0.05phr乃至15phrであり、好ましくは0.1phr乃至15phrであり、或いは0.1phr乃至10phrであり、より好ましくは0.5phr乃至8phrである。(B)成分の含有割合が0.05phr未満の場合には、十分な硬化性が得られず、繰り返しインプリントを行う間に、離型性が悪化しやすくなる。一方、(B)成分の含有割合が15phrを超える場合、紫外線領域における透明性が低下する。本明細書において“phr”とは、(A)成分の質量100gに対する、例えば(B)成分である光重合開始剤の質量を表す。
[(C)成分]
(C)成分である溶媒は、前記(A)成分及び(B)成分の粘度調節の役割を果たし、該(A)成分及び(B)成分の粘度を調節することができるものであれば、特に限定されるものではない。また、前述の(A)成分の製造時において反応系に使用した溶媒をそのまま(C)成分の溶媒として用いることもできる。
該溶媒としては、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコ−ルジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、n−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジン、メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフロオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)−ペンタン、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−2,2,2−トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、ペンタフルオロノナン、ヘキサフルオロベンゼン、ヘプタデカフルオロ−n−オクチルブロミド、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メトキシプロパン、オクタデカフルオロオクタン、オクタフルオロシクロペンテン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロヘプタン、オクタフルオロトルエン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロ(1,3−ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロイソヘキサンが挙げられる。
上記溶媒は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、Novec(登録商標)7000、同7100、同7200、同7300(以上、スリーエムジャパン(株)製)、アサヒクリン(登録商標)AE−3000、同AE−3100E(以上、旭硝子(株)製)、バートレル(登録商標)XF、同XF−UP、同XE−XP、同X−E10、同X−P10、同X−D、同X−GY、同MCA、同SDG、同SMT、同SFR、同DC、同シネラ、同スープリオン、同サイオン(以上、三井・デュポン フロロケミカル(株)製)が挙げられる。
[(D)成分]
本発明のモールド用離型剤は、必要に応じて光増感剤を(D)成分として含有することができる。該光増感剤としては、例えば、チオキサンテン系、チオキサントン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3−置換クマリン系、3,4−置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、ケトクマリン系、クマリン系、ボレート系が挙げられる。上記光増感剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アントラキュアー(登録商標)UVS−581、同UVS−1331(以上、川崎化成工業(株)製)、KAYACURE(登録商標)DETX−S(日本化薬(株)製)が挙げられる。この光増感剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。上記光増感剤を用いることによって、UV領域の吸収波長を調整することもできる。本発明のモールド用離型剤が(D)成分を含有する場合、その含有割合は、上記(A)成分の質量に基づいて、例えば0.01phr乃至10phrであり、好ましくは0.05phr乃至5phrである。
[その他添加剤]
本発明のモールド用離型剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて界面活性剤、連鎖移動剤を含有することができる。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF352(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F−171、同F−173、同F−477、同F−486、同F−554、同F−556、同R−08、同R−30、同R−30N、同R−40、同R−40−LM、同RS−56、同RS−75、同RS−72−K、同RS−76−E、同RS−76−NS、同RS−78、同RS−90(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK−302、BYK−307、BYK−322、BYK−323、BYK−330、BYK−333、BYK−370、BYK−375、BYK−378、BYK−UV 3500、BYK−UV 3570(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。上記界面活性剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオール化合物として、メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸3−メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4−ビス(3−メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2−(3−メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン等のメルカプトカルボン酸エステル類;エタンチオール、2−メチルプロパン−2−チオール、n−ドデカンチオール、2,3,3,4,4,5−ヘキサメチルヘキサン−2−チオール(tert−ドデカンチオール)、エタン−1,2−ジチオール、プロパン−1,3−ジチオール、ベンジルチオール等のアルキルチオール類;ベンゼンチオール、3−メチルベンゼンチオール、4−メチルベンゼンチオール、ナフタレン−2−チオール、ピリジン−2−チオール、ベンゾイミダゾール−2−チオール、ベンゾチアゾール−2−チオール等の芳香族チオール類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;3−(トリメトキシシリル)プロパン−1−チオール、3−(トリエトキシシリル)プロパン−1−チオール等のシラン含有チオール類;ビス(2−メルカプトエチル)エーテルが挙げられ、ジスルフィド化合物として、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジペンチルジスルフィド、ジイソペンチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ビス(2,3,3,4,4,5−ヘキサメチルヘキサン−2−イル)ジスルフィド(ジ−tert−ドデシルジスルフィド)、ビス(2,2−ジエトキシエチル)ジスルフィド、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等のアルキルジスルフィド類;ジフェニルジスルフィド、ジ−p−トリルジスルフィド、ジ(ピリジン−2−イル)ピリジルジスルフィド、ジ(ベンゾイミダゾール−2−イル)ジスルフィド、ジ(ベンゾチアゾール−2−イル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ビス(ペンタメチレン)チウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。この連鎖移動剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
[モールド用離型剤の調製]
本発明のモールド用離型剤の調製方法は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分、並びに任意で(D)成分及び上記その他添加剤を混合し、均一な状態となっていればよい。また、(A)成分乃至(C)成分、並びに所望により(D)成分及び上記その他添加剤を混合する際の順序は、均一なモールド用離型剤が得られるなら、特に限定されない。例えば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を所定の割合で混合し、均一なモールド用離型剤を調製する方法が挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、(D)成分及び上記その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
なお本発明のモールド用離型剤において、その粘度は、モールドに適用(塗布)するのに適する粘度であれば特に限定されない。例えば、0.5mPa・sから100mPa・sの範囲の粘度に調整し用いることができる。
[離型処理された表面を有するモールド]
本発明のモールド用離型剤は、これをモールドの表面へ塗布し、露光により光硬化させることで、該モールドの表面に被膜を作製することができる。該被膜が作製されたモールドは、離型処理された表面を有する。そして本発明は、前記モールド用離型剤から形成された被膜を備えた、離型処理された表面を有するモールドも対象とする。
[モールド用離型剤の塗布方法]
前記塗布方法としては、公知又は周知の方法、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法を挙げることができる。
本発明のモールド用離型剤が塗布されるモールドとしては、樹脂製モールド、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物を光硬化させて得られる樹脂製モールド、石英製モールド、アルミナ(Al)製モールド、シリコン(Si)製モールド、及びニッケル、アルミニウム等の金属製モールドが挙げられる。
上述の各種のモールドに、特に石英製モールド、アルミナ(Al)製モールド、シリコン(Si)製モールド及び金属製モールドに、本発明のモールド用離型剤を適用する場合、好ましくはこれらのモールドの表面をシランカップリング剤(接着補助剤)で処理した後、その処理表面に本発明のモールド用離型剤を適用することが望ましい。シランカップリング剤を用いた前処理を行うことにより、該モールド用離型剤より作製された被膜とモールドとの密着性が向上し、該被膜がモールドから一層剥がれにくいものとすることができる。
上記シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、オクテニルトリエトキシシランを挙げることができる。
本発明のモールド用離型剤を硬化させる光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、KrFエキシマーレーザー、ArFエキシマーレーザー、Fエキシマーレーザー、電子線(EB)、極端紫外線(EUV)、紫外線LED(UV−LED)を挙げることができる。また、波長は、一般的には、436nmのG線、405nmのH線、365nmのI線、又はGHI混合線を用いることができる。さらに露光量は、好ましくは、30mJ/cm乃至10000mJ/cm、より好ましくは100mJ/cm乃至8000mJ/cmである。
本発明のモールド用離型剤の(C)成分である溶媒を蒸発させる目的で、該モールド用離型剤を塗布後、光硬化前にベーク工程を加えてもよい。ベーク工程に使用する機器としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレート、オーブン、又はファーネスを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、又は真空中でベークすることができるものであればよい。ベーク温度は、溶媒を蒸発させることが可能な、例えば、40℃乃至200℃で行うことができる。
こうして得られた被膜の厚さは特に限定されないが、例えば0.01μm乃至1μmの範囲とすることができる。
また本発明において、前記モールド用離型剤から形成された被膜(離型処理された表面)は、その表面粗さが1nm未満であることが好ましい。
本発明において“表面粗さ”とは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定された二乗平均粗さ:RMS(Root Mean Square:平均線から測定曲線までの偏差の二乗を平均した値の平方根)を表す。
好ましくは、表面粗さ(二乗平均粗さ:RMS)は0.8nm以下、例えば0.6nm以下とすることができる。表面粗さ(二乗平均粗さ:RMS)は小さいほどよいが、その下限値を設定するのであればRMS>0nmである。
また本発明は、前記モールド用離型剤を樹脂製モールド上に塗布する工程、及び前記樹脂製モールド上に塗布されたモールド用離型剤をベークし、露光して前記樹脂製モールドの表面に被膜を形成する工程を有する、離型処理された樹脂製モールドの作製方法も対象とするものである。
[光インプリント及びパターンが転写された膜の作製方法]
本発明は、前記離型処理された表面を有するモールドを用いる光インプリントによるパターン転写膜の作製法も対象とする。
すなわち、前記離型処理された表面を有するモールドを光硬化性樹脂に圧着する工程、前記光硬化性樹脂を該モールドに圧着させたまま光硬化する工程、及び前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を前記離型処理された表面を有するモールドから離型する工程を有する、パターンが転写された最大膜厚が1.5mmの硬化膜の作製方法も、本発明の対象である。
上記の光硬化性樹脂や光硬化に用いる光源、光インプリントを行う装置は特に限定されず、従来の光インプリント法において使用されている樹脂や光源、装置を使用することができる。
上記方法において得られるパターンが転写された膜において、その最大膜厚は1.5mmであることが好ましく、またパターンサイズはナノメートルオーダー、マイクロメートルオーダー、及びミリメートルオーダーのいずれであってもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。なお、下記合成例、及び離型剤から形成された被膜の表面粗さ評価において、物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:(株)島津製作所 製 GPCシステム
GPCカラム:Shodex(登録商標)GPC KF−804L及びGPC KF−803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
標準試料:ポリスチレン
(2)原子間力顕微鏡(AFM)
装置:デジタルインスツルメンツ社製 ナノスコープIV型 ディメンション3100
また、略記号は以下の意味を表す。
PFPE1:ポリ(オキシエチレン)基(該基の数8乃至9)を介して両末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fluorolink(登録商標)5147X]
PFPE2:両末端それぞれに、前記式(2b)で表される基を介してヒドロキシ基を2つずつ有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 Fomblin(登録商標)T4]
BEI:1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 カレンズ(登録商標)BEI]
DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫[東京化成工業(株)製]
DOTDD:ジオクチル錫ジネオデカノエート[日東化成(株)製 ネオスタン(登録商標)U−830]
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<合成例1>
ナスフラスコに、PFPE1 10.5g(5mmol)、BEI 2.39g(10.0mmol)、DBTDL 0.129g及びMEK 12.9gを仕込んだ。上記ナスフラスコ内の混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で24時間撹拌し、反応物を得た。この反応物へPGMEAを30.37g加え、エバポレーターにてMEKを留去し、(A)成分である多官能アクリレート化合物SM1を含むPGMEA溶液を固形分30質量%で得た。得られたSM1のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,400、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.1であった。
<合成例2>
ナスフラスコに、PFPE1 10.5g(5mmol)、BEI 2.39g(10.0mmol)、DOTDD 0.0644g及びPGMEA12.9gを仕込んだ。上記ナスフラスコ内の混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で48時間撹拌し、反応物を得た。この反応物へPGMEAを38.9g加え、(A)成分である多官能アクリレート化合物SM2を含むPGMEA溶液を固形分20質量%で得た。得られたSM2のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは3,410、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.1であった。
<合成例3>
PGMEA61.2gを三つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて100℃に加熱した。そこへメタクリル酸2−(パーフルオロへキシル)エチル30.00g、シクロへキシルマレイミド16.59g、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル9.03g及びAIBN5.56gをPGMEA183.6gに溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、100℃で24時間撹拌し、反応溶液を得た。この反応溶液を室温まで冷却した後、DBTDL0.44g、ヒドロキノン0.01g及び2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート9.79gを加えて60℃に加熱し、24時間撹拌した。その後、反応溶液を室温まで冷却し、(A)成分に該当しない下記式(4)で表される共重合体CHM−Aを含むPGMEA溶液を固形分22.6質量%で得た。得られたCHM−AのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは21,000、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は2.1であった。
Figure 0006916473
<合成例4>
ナスフラスコに、PFPE2 11.45g(5mmol)、BEI 4.79g(20.0mmol)、DOTDD 0.162g及びMEK 16.24gを仕込んだ。上記ナスフラスコ内の混合物を、窒素雰囲気下にてスターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌し、反応物を得た。この反応物へPGMEAを64.96g加え、エバポレーターにてMEKを留去し、(A)成分である多官能アクリレート化合物SM3を含むPGMEA溶液を固形分20質量%で得た。得られたSM3のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,750、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.1であった。
<合成例5>
ナスフラスコに、PFPE2 11.45g(5mmol)、BEI 4.79g(20.0mmol)、DOTDD 0.162g及びPGMEA 16.24gを仕込んだ。上記ナスフラスコ内の混合物を、窒素雰囲気下にてスターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で72時間撹拌し、反応物を得た。この反応物へPGMEAを48.72g加え、(A)成分である多官能アクリレート化合物SM4を含むPGMEA溶液を固形分20質量%で得た。得られたSM4のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,760、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.1であった。
<実施例1>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE(登録商標)127(BASFジャパン(株)製、2−ヒドロキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン)(以下、本明細書では「IRGACURE127」と略称する。)を0.0060g、及び(C)成分としてPGMEAを7.67g混合し、モールド用離型剤IP−Aを調製した。
<実施例2>
(A)成分として合成例2で得られたSM2を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE127を0.0040g、及び(C)成分としてPGMEAを4.80g混合し、モールド用離型剤IP−Bを調製した。
<実施例3>
(A)成分として合成例2で得られたSM2を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE(登録商標)819(BASFジャパン(株)製、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)(以下、本明細書では「IRGACURE819」と略称する。)を0.0040g、(C)成分としてPGMEAを4.81g、及び(D)成分としてアントラキュアー(登録商標)UVS−581(川崎化成工業(株)製)(以下、本明細書では「UVS−581」と略称する。)を0.0002g混合し、モールド用離型剤IP−Cを調製した。
<実施例4>
(A)成分として合成例2で得られたSM2を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE819を0.0040g、(C)成分としてPGMEAを4.810g、及び(D)成分としてKAYACURE(登録商標)DETX−S(日本化薬(株)製)(以下、本明細書では「DETX−S」と略称する。)を0.0002g混合し、モールド用離型剤IP−Dを調製した。
<実施例5>
(A)成分として合成例2で得られたSM2を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE(登録商標)OXE−01(BASFジャパン(株)製、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン)を0.0040g、(C)成分としてPGMEAを4.81g、及び(D)成分としてUVS−581を0.0002g混合し、モールド用離型剤IP−Eを調製した。
<実施例6>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE 127を0.00030g、及び(C)成分としてPGMEAを7.58g混合し、モールド用離型剤IP−Fを調製した。
<実施例7>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE 127を0.030g、及び(C)成分としてPGMEAを8.40g混合し、モールド用離型剤IP−Gを調製した。
<実施例8>
(A)成分として合成例4で得られたSM3を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE 127を0.0040g、及び(C)成分としてPGMEAを4.82g混合し、モールド用離型剤IP−Hを調製した。
<実施例9>
(A)成分として合成例5で得られたSM4を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE 127を0.0040g、及び(C)成分としてPGMEAを4.82g混合し、モールド用離型剤IP−Iを調製した。
<実施例10>
(A)成分として合成例4で得られたSM3を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE819を0.0040g、(C)成分としてPGMEAを4.83g、及び(D)成分としてDETX−Sを0.0002g混合し、モールド用離型剤IP−Jを調製した。
<実施例11>
(A)成分として合成例5で得られたSM4を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE819を0.0040g、(C)成分としてPGMEAを4.83g、及び(D)成分としてDETX−Sを0.0002g混合し、モールド用離型剤IP−Kを調製した。
<比較例1>
Fluorolink(登録商標)MD700(ソルベイスペシャルティポリマーズ社製)(以下、本明細書では「MD700」と略称する。)を0.40g、(B)成分としてIRGACURE127を0.0042g、及び(C)成分としてPGMEAを5.66g混合し、モールド用離型剤IP−aを調製した。
本比較例及び後述する比較例2で使用するMD700は、両末端ウレタンメタクリレート変性したパーフルオロポリエーテル(2官能メタクリレート化合物)であるが、前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含まないため(A)成分に該当しない。したがって、本比較例のモールド用離型剤は、(A)成分を含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例2>
MD700を0.40g、(B)成分としてIRGACURE819を0.0042g、(D)成分としてUVS−581を0.0002g、及び(C)成分としてPGMEAを5.66g混合し、モールド用離型剤IP−bを調製した。
本比較例のモールド用離型剤は、上述の通り、(A)成分を含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例3>
1,6−ビス(アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン(東京化成工業(株)製)を0.21g、(B)成分としてIRGACURE127を0.0042g、及び(C)成分としてPGMEAを5.91g混合し、モールド用離型剤IP−cを調製した。
本比較例で使用する上記1,6−ビス(アクリロイルオキシ)−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサンは、フルオロアルキル基を有する2官能のメタアクリレート化合物であるが、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含まず、またウレタン結合も含んでおらず、(A)成分に該当しない。
したがって、本比較例のモールド用離型剤は、(A)成分を含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例4>
合成例3で得られたCHM−Aを含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE127を0.0045g、及び(C)成分としてPGMEAを5.55g混合し、モールド用離型剤IP−dを調製した。
本比較例で使用する上記CHM−Aは、前述の通り式(4)で表される共重合体であり(A)成分に該当せず、本比較例のモールド用離型剤は、(A)成分を含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例5>
PFPE1を0.21g及び(C)成分としてPGMEAを5.79g混合し、モールド用離型剤IP−eを調製した。
本比較例で使用するPFPE1は、前述の通りポリ(オキシエチレン)基を介して両末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテルであり、該化合物の両末端においてウレタン結合を介して結合した重合性基を有しておらず、(A)成分に該当しない。
すなわち本比較例のモールド用離型剤は、(A)成分に加え、(B)成分をも含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例6>
Novec(登録商標)1720(スリーエムジャパン(株)製)を用意し、これをモールド用離型剤IP−fとした。
本比較例で使用するNovec 1720は、光インプリントに使用するモールド用離型剤などにも使用される従来既知のフッ素系化合物であり、パーフロオロエーテル基含有シラン化合物である。
すなわち本比較例のモールド用離型剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含まない点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例7>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてIRGACURE127を0.06g、及び(C)成分としてPGMEAを9.15g混合し、モールド用離型剤IP−gを調製した。
すなわち本比較例のモールド用離型剤は、(B)成分の含有割合が、(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの上限値を超えている点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<比較例8>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液10.00g、(B)成分としてIRGACURE127を0.00030g、及び(C)成分としてPGMEAを75.12g混合し、モールド用離型剤IP−hを調製した。
すなわち本比較例のモールド用離型剤は、(B)成分の含有割合が、(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの下限値未満である点で、本発明の実施例のモールド用離型剤と異なる。
<光硬化性樹脂(インプリント材料)の作製>
NKエステル A−DOG(以下、本明細書では「A−DOG」と略称する。)(新中村化学工業(株)製)を5g及びUM−90(1/3)DA(宇部興産(株)製)を5g混合し、その混合物にIRGACURE(登録商標)184(BASFジャパン(株)製)を0.2g(A−DOG及びUM−90(1/3)DAの総質量に対して2phr)、チオカルコール(登録商標)20(花王(株)製)を0.05g(A−DOG及びUM−90(1/3)DAの総質量に対して0.5phr)加え、インプリント材料PNI−Aを調製した。
[離型処理された樹脂製モールドの作製1]
直径9.5mm、最大高さ0.25mmの凸レンズ形状を有する樹脂製モールド上へ、実施例1乃至実施例11、並びに比較例1乃至比較例4、比較例7及び比較例8で得られたモールド用離型剤IP−A、IP−B、IP−C、IP−D、IP−E、IP−F、IP−G、IP−H、IP−I、IP−J、IP−K、IP−a、IP−b、IP−c、IP−d、IP−g、IP−hをそれぞれスピンコーターで製膜し、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークした。その後、窒素雰囲気下にてバッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)(アイグラフィックス(株)製)を用いて40mW/cmで125秒間UV露光し、離型処理された樹脂製モールドを作製した。
なお本例並びに以降の例において、樹脂製モールドとして、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物を光硬化させて得られる樹脂製モールドを用いた。
[離型処理された樹脂製モールドの作製2]
直径9.5mm、最大高さ0.25mmの凸レンズ形状を有する樹脂製モールド上へ、実施例3乃至実施例5、実施例10及び実施例11で得られたモールド用離型剤IP−C、IP−D、IP−E、IP−J、IP−Kをそれぞれスピンコーターで製膜し、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークした。その後、窒素雰囲気下にてバッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)(アイグラフィックス(株)製)を用いて、i線透過フィルターを通し、40mW/cmで125秒間UV露光し、離型処理された樹脂製モールドを作製した。
[離型処理された樹脂製モールドの作製3]
直径9.5mm、最大高さ0.25mmの凸レンズ形状を有する樹脂製モールド上へ、比較例5及び比較例6で得られたモールド用離型剤IP−e、IP−fをそれぞれスピンコーターで製膜し、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークし、離型処理された樹脂製モールドを作製した。
[離型処理された樹脂製モールドを使用した光インプリント]
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを石英ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて150℃で5分間ベークし、石英ガラス基板にシランカップリング処理を行った。その後、該石英ガラス基板のシランカップリング処理面へ、インプリント材料PNI−Aをポッティングし、前述の作製1、作製2及び作製3にしたがって離型処理された樹脂製モールドで挟み込み、ナノインプリント装置NM−0801HB(明昌機工(株)製)で光インプリントを行った。光インプリントは、常時23℃の条件で、a)10秒間かけて500Nまで加圧、b)高圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの露光、c)10秒間かけて除圧、d)離型処理された樹脂製モールドと石英ガラス基板とを分離して離型、というシーケンスで行い、石英ガラス基板上に直径9.5mm、最大深さ0.25mmの凹レンズ形状パターンを作製した。
[繰り返しインプリント可能回数の測定]
前述の光インプリントにて使用した、作製1、作製2及び作製3にしたがって離型処理された樹脂製モールドをそのまま用いて、前述と同様の光インプリントを繰り返し行い、石英ガラス基板上に直径9.5mm、最大深さ0.25mmの凹レンズ形状パターンが形成されなくなるまでの、光インプリントの回数を測定した。得られた結果を表1に示す。
[モールド用離型剤から形成された被膜の表面粗さ評価]
4インチのシリコンウエハ上へ、実施例1乃至実施例11、比較例1乃至比較例8で得られたモールド用離型剤IP−A、IP−B、IP−C、IP−D、IP−E、IP−F、IP−G、IP−H、IP−I、IP−J、IP−K、IP−a、IP−b、IP−c、IP−d、IP−e、IP−f、IP−g、IP−hをそれぞれスピンコートし、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークした。その後、窒素雰囲気下にてバッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)(アイグラフィックス(株)製)を用いて40mW/cmで125秒間UV露光し、モールド用離型剤の被膜を作製した。その後、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて該被膜の二乗平均粗さ(RMS)を測定した。得られた結果を表2に示す。
[透明性評価]
直径9.5mm、最大深さ0.25mmの凹レンズ形状を有する樹脂製モールド上へ実施例1及び比較例7で得られたモールド用離型剤IP−A、IP−gをそれぞれスピンコーターで製膜し、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークした。その後、窒素雰囲気下にてバッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)(アイグラフィックス(株)製)を用いて40mW/cmで125秒間UV露光し、離型処理された樹脂製モールドを作製した。そして離型処理された樹脂製モールドの365nmにおける透過率を、分光光度計UV2600((株)島津製作所製)を用い、リファレンスを空気にした状態で測定した。得られた結果を表2に示す。
Figure 0006916473
Figure 0006916473
表1に示す結果より、実施例1乃至実施例11で調製されたモールド用離型剤で離型処理された樹脂製モールドを使用することで、繰り返しのインプリントが可能となった。一方、比較例1乃至比較例6及び比較例8で調製されたモールド用離型剤で離型処理された樹脂製モールドを使用する場合、繰り返しのインプリントは不可能である、又は実施例1乃至実施例11と比較して繰り返しインプリントの回数は少ない結果となった。また、表2に示す結果より、実施例1乃至実施例11で調製されたモールド用離型剤から得られた被膜のRMSは1nm未満となった。また、比較例7で調製されたモールド用離型剤で離型処理された樹脂製モールドは、透明性が実施例1と比較して低い結果となった。以上、本発明のモールド用離型剤を使用して樹脂製モールドを離型処理することで、該樹脂製モールドを用いて繰り返しのインプリントを可能にし、かつ得られるモールド用離型剤の被膜のRMSは非常に小さいものとなる。
[離型処理された金属製モールドの作製]
ニッケル製のピッチ250nm、高さ250nmのモスアイパターンモールド((株)イノックス製)上へ3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランをスピンコートし、ホットプレートを用いて150℃で5分間ベークし、シランカップリング処理を行った。そして、該モールドのシランカップリング処理面へ、実施例1で得られたモールド用離型剤IP−Aをスピンコーターで製膜し、ホットプレートを用いて80℃で5分間ベークした。その後、窒素雰囲気下にてバッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)(アイグラフィックス(株)製)を用いて40mW/cmで125秒間UV露光し、離型処理されたニッケル製モールドを作製した。
[離型処理された金属製モールドを使用した光インプリント]
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを石英ガラス基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて150℃で5分間ベークし、石英ガラス基板にシランカップリング処理を行った。その後、該石英ガラス基板のシランカップリング処理面へ、インプリント材料PNI−Aをポッティングし、前述の離型処理された金属製モールドで挟み込み、ナノインプリント装置NM−0801HB(明昌機工(株)製)で光インプリントを行った。光インプリントは、常時23℃の条件で、a)10秒間かけて500Nまで加圧、b)高圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの露光、c)10秒間かけて除圧、d)離型処理された金属製モールドと石英ガラス基板とを分離して離型、というシーケンスで行い、石英ガラス基板上にピッチ250nm、高さ250nmのモスアイ形状パターンを作製した。得られた形状を走査型電子顕微鏡S−4800((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて確認したところ、いずれも割れ・剥がれ等の無い良好なパターン形状であった。

Claims (12)

  1. 下記(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有するモールド用離型剤。
    (A):下記式(1)で表される基及び下記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、下記式(3)で表される基を含む重合性基を有する、多官能(メタ)アクリレート化合物
    (B):前記(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの光重合開始剤(C):溶媒
    Figure 0006916473
    (式中、式(1)で表される基における−(O−R )−はオキシパーフルオロメチレン基及びオキシパーフルオロエチレン基のうちいずれか1種、又は2種の組み合わせを表し、2aは炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、R2bは炭素原子数2又は3の3価の炭化水素基を表し、*はそれぞれ前記ウレタン結合の−O−基と結合する結合手を表し、p及びqはそれぞれ前記式(1)で表される基の数及び前記式(2a)で表される基の数を表すと共に独立して2以上の整数を表し、Rはメチル基又は水素原子を表す。)
  2. 前記qが、5乃至12の整数である、請求項1に記載のモールド用離型剤。
  3. 前記式(2a)で表される基がポリ(オキシエチレン)基である、請求項1又は請求項2に記載のモールド用離型剤。
  4. 前記重合性基が前記式(3)で表される基を少なくとも2つ含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
  5. 前記式(1)で表される基における−(O−R )−が、オキシパーフルオロメチレン基及びオキシパーフルオロエチレン基の2種の組み合わせを表す、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
  6. 前記モールド用離型剤の総質量100質量%に対し、前記(A)成分の割合が0.05質量%乃至10質量%である、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
  7. (D)成分としてさらに光増感剤を含有する、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のモールド用離型剤から形成された被膜を備えた、離型処理された表面を有するモールド。
  9. 前記モールドは金属製モールド、シリコン製モールド、アルミナ製モールド、石英製モールド及び樹脂製モールドからなる群から選択される、請求項8に記載の離型処理された表面を有するモールド。
  10. 請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のモールド用離型剤を樹脂製モールド上に塗布する工程、及び前記樹脂製モールド上に塗布されたモールド用離型剤をベークし、露光して前記樹脂製モールドの表面に被膜を形成する工程を有する、離型処理された樹脂製モールドの作製方法。
  11. 請求項8又は請求項9に記載の離型処理された表面を有するモールドを光硬化性樹脂に圧着する工程、前記光硬化性樹脂を該モールドに圧着させたまま光硬化する工程、及び前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を前記離型処理された表面を有するモールドから離型する工程を有する、パターンが転写された最大膜厚が1.5mmの硬化膜の作製方法。
  12. 前記離型処理された表面の二乗平均粗さが1nm未満である、請求項8又は請求項9に記載の離型処理された表面を有するモールド。
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