JP6915576B2 - 車両後部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両後部において車幅方向に延びるクロスメンバを有する車両後部構造に関するものである。
車両には、フレームを構成する部材として、同車両の前後方向に延びるとともに車幅方向に間隔を置いて並ぶ一対のサイドメンバが設けられている。こうした車両では、それらサイドメンバの後端同士を繋ぐように車幅方向に延びるクロスメンバが設けられている。
特許文献1には、車両の後端に配置されたクロスメンバを、車幅方向に延びる外壁が環状をなす構造(いわゆる閉断面構造)にすることが提案されている。こうした閉断面構造のクロスメンバを採用することにより、フレームのロール剛性を高くして車両の旋回性能を高めたり、車両の後方衝突時における衝撃エネルギーの吸収量を多くして衝撃吸収機能を高めたりすることが可能になる。
実開昭59−81648号公報
ここで、上記車両では後方衝突に伴って車体に作用する荷重によってクロスメンバが前後方向に潰れるように変形して、衝突エネルギーが吸収されるようになる。そのため同車両では、クロスメンバにある程度の剛性を付与することによって、衝突エネルギーを吸収することが可能になり、衝撃吸収機能が得られるようになる。
ただし、クロスメンバの剛性を高くするためとはいえ、単にクロスメンバを閉断面構造にすると、車両後部のロール剛性が高くなりすぎてしまい、車両旋回時においてオーバーステア現象が発生し易くなるおそれがある。
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クロスメンバによる衝撃吸収機能を維持しながらも、所望の車両旋回性が得られるだけのフレーム剛性を得ることのできる車両後部構造を提供することにある。
上記課題を解決するための車両後部構造は、車両前後方向に延びるとともに車幅方向に間隔を置いて並ぶ一対のサイドメンバと、車幅方向に延びるとともに前記一対のサイドメンバの後端同士を繋ぐように前記サイドメンバに固定されたクロスメンバと、を有する車両後部構造であって、前記クロスメンバは、車両上下方向に延びる前壁および後壁と、車両前後方向に延びる上壁および下壁と、を有する四角筒状をなしており、前記前壁または前記後壁には、その上端および下端の少なくとも一方において開口する切り欠きが、前記クロスメンバにおける前記一対のサイドメンバに固定された各固定部分の間にあたる中間部分に設けられている。
上記構成によれば、クロスメンバにおける各サイドメンバに固定された固定部分やその周辺部分を閉断面構造(筒状)にして、それら固定部分や周辺部分に適度の剛性を付与することができる。そのため、車両の後方衝突(後突)に伴う荷重がクロスメンバに作用した場合には、クロスメンバにおける閉断面構造の部分を前後方向に潰れるように変形させつつ、同荷重を各サイドメンバに伝達させることができる。これにより、後突に伴う衝突エネルギーを吸収することが可能になり、衝突吸収機能が得られるようになる。
しかも、クロスメンバにおける各固定部分の間にあたる中間部分は、切り欠きが設けられて開断面構造になっている。こうした切り欠きを設けることによって、クロスメンバのねじり剛性を適度に低くすることが可能になり、ひいては車両後部のロール剛性を適度に低くすることが可能になる。したがって上記構成によれば、所望の車両旋回性が得られるだけのフレーム剛性を得ることができる。
上記車両後部構造において、前記クロスメンバは、前記前壁および前記後壁の一方をなす第1分割体と、前記前壁および前記後壁の他方と前記上壁と前記下壁とが一体形成された断面コの字状の部分を有する第2分割体と、からなり、前記切り欠きは前記第1分割体に設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、第1分割体を断面コの字状の部分を有する第2分割体に固定するといった平易な手順で、切り欠きを有するクロスメンバを形成することができる。
上記車両後部構造において、前記第1分割体は前記前壁をなすものであり、前記第2分割体は前記上壁および前記後壁および前記下壁が一体形成されたものであることが好ましい。
上記構成では、第2分割体が、クロスメンバにおける車両後方側の位置において車両後方に向けて突出する断面コの字状をなす態様で、車幅方向の全体にわたって延びている。これにより、クロスメンバの車両後方側の部分(第2分割体)における車幅方向の全体が後突に伴う衝撃荷重を直接受ける部分として機能するようになるため、クロスメンバの変形による衝撃エネルギーの吸収がなされやすい構造にすることができる。
しかも上記構成では、クロスメンバにおける車両前方側の部分(第1分割体)、すなわち後突に伴う衝撃荷重を直接受けることのない部分に切り欠きを設けることにより、衝撃吸収機能の低下を抑えつつ、車両後部のロール剛性を適度に低くすることができる。
上記車両後部構造において、前記第1分割体は前記中間部分において車両右側の部材と車両左側の部材とに分割された構造であり、前記車両右側の部材および前記車両左側の部材は、同一形状であり、車両上下方向に延びる線を対称軸として線対称になるように配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、第1分割体を構成する車両右側の部材と車両左側の部材とを共通の装置(例えば金型)を用いて安価に製造することができる。
上記車両後部構造において、前記切り欠きは、前記クロスメンバにおける前記中間部分のみに設けられている。
上記構成によれば、クロスメンバにおける各固定部分やその周辺部分には切り欠きが設けられないため、各固定部分やその周辺部分の剛性を高くすることができ、高い衝突吸収機能を容易に得ることができる。
上記車両後部構造において、前記切り欠きは前記上端から前記下端まで延びている。
上記構成によれば、クロスメンバのねじり剛性を容易に低くすることができる。
上記車両後部構造において、前記切り欠きの端面は斜め上方に向けて延びていることが好ましい。
仮に切り欠きの端面が車両上下方向において延びる構造を採用すると、切り欠きの端面を境にその左側と右側とで衝突荷重に対するクロスメンバの耐力が大きく異なる構造になってしまう。
上記構成によれば、切り欠きの端面が斜め上方に向けて延びているため、同端面が配置される部分およびその周辺部分を、車幅方向の一方側に向かうに連れて、切り欠きの開口が占める割合が徐々に変化する構造にすることができ、上記衝突荷重に対するクロスメンバの耐力が徐々に変化する構造にすることができる。
上記車両後部構造において、前記切り欠きは、前記上端における車幅方向の開口長が前記下端における車幅方向の開口長よりも短くなっている。
クロスメンバには、車両走行に際して作用する曲げ荷重に耐えうるだけの剛性が求められる。車両が段差を乗り越えるときや、車両が一旦浮き上がった後(例えばジャンプ後)に沈み込むときには、車両走行に起因してフレームに作用する荷重と車両重量に起因してフレームに作用する荷重とが同一方向(フレームを路面側に押圧する方向)に作用するため、クロスメンバに作用する曲げ荷重が大きくなり易いと云える。このとき上記曲げ荷重はクロスメンバを車両下方に突出する凸状に曲げるように作用するため、クロスメンバの上部には耐力を確保するうえで重要な圧縮荷重が作用するようになる一方、同クロスメンバの下部には引っ張り荷重が作用するようになる。
上記構成によれば、車両走行時におけるクロスメンバの耐力を確保する上で重要な同クロスメンバの上端の剛性がクロスメンバの下端の剛性よりも高くなるように、切り欠きを設けることができる。したがって、車両走行時におけるクロスメンバの耐力を確保しつつ、車両後部のロール剛性を適度に低くすることが可能になる。
本発明の車両後部構造によれば、クロスメンバによる衝撃吸収機能を維持しながらも、所望の車両旋回性が得られるだけのフレーム剛性を得ることができる。
一実施形態の車両後部構造が適用される車両のフレームの平面図。 同フレームの側面図。 同フレームの後方部分の斜視図。 同フレームの後方部分の分解斜視図。 リヤクロスメンバを車両後方から見た側面図。 リヤクロスメンバにおける車幅方向位置と後突に対する耐力とねじり変位量との関係を示すグラフ。 変形例のリヤクロスメンバを車両後方から見た側面図。 変形例のリヤクロスメンバを車両後方から見た側面図。 変形例のフレームの後方部分の分解斜視図。 変形例のリヤクロスメンバの斜視図。
以下、車両後部構造の一実施形態について説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態の車両のフレーム10としては、梯子型のフレーム(いわゆるラダーフレーム)が採用されている。フレーム10は、車幅方向に間隔を置いて配置されて車両の前後方向に四角管状で延びる一対のサイドメンバ(右側サイドメンバ11、左側サイドメンバ12)と、前後方向に間隔を置いて配置されて車幅方向に延びる複数本(本実施形態では、6本)のクロスメンバ13,14とを有している。
フレーム10における車両前方側の部分(前部10F)の両側方には、サスペンション(図示略)を介して前輪15が支持されている。フレーム10の前部10Fでは、サイドメンバ11,12の前方側の部分が水平方向(路面と平行な方向)に平行に延びるとともに、同サイドメンバ11,12の後方側の部分が前方から後方にかけて斜め下方および斜め外方に延びている。またフレーム10の前部10Fには、一対のサイドメンバ11,12を連結するように複数本(本実施形態では3本)のクロスメンバ13が固定されている。
フレーム10の前後方向における中央部分(中央部10C)は、車両のキャビン(図示略)の下方に配置される。フレーム10の中央部10Cでは、各サイドメンバ11,12が水平方向に延びており、他の部分(前部10Fおよび後部10R)と比較してサイドメンバ11,12の車幅方向における間隔が広くなっている。
フレーム10の後方側の部分(後部10R)の側方には、サスペンション(図示略)を介して後輪16が支持されている。フレーム10の後部10Rでは、サイドメンバ11,12の後方側の部分が水平方向に延びるとともに、同サイドメンバ11,12の前方側の部分が後方から前方にかけて斜め下方および斜め外方に延びている。サイドメンバ11,12の後端には、サイドメンバ11,12同士を連結するリヤクロスメンバ14が固定されている。フレーム10の後部10Rには、リヤクロスメンバ14よりも前方側の位置に、サイドメンバ11,12同士を連結するクロスメンバ13が固定されている。
以下、リヤクロスメンバ14の構造について説明する。
図3〜図5に示すように、リヤクロスメンバ14は、基本的には、前方側において上下方向に延びる前壁14Fと、後方側において上下方向に延びる後壁14Rと、上方側において前後方向に延びる上壁14Uと、下方側において前後方向に延びる下壁14Bとを有する四角筒状で車幅方向に延びている。
リヤクロスメンバ14は、前方側に配置される第1分割体20(右部材21および左部材22)と後方側に配置される第2分割体30とによって構成されている。第1分割体20は平板状で車幅方向に延びており、リヤクロスメンバ14の前壁14Fをなしている。第2分割体30は、上壁14Uと、後壁14Rと、下壁14Bと、上壁14Uの前端から上方に向けて延びる上側フランジ31と、下壁14Bの前端から下方に向けて延びる下側フランジ32とが一体に形成された構造になっている。第2分割体30の上下方向における中間部分(詳しくは、上壁14Uと後壁14Rと下壁14Bとからなる部分)は、後方に向けて突出する断面コの字状で車幅方向に延びている。
そして、このリヤクロスメンバ14では、第1分割体20の上部の後面が第2分割体30の上側フランジ31の前面に固定(溶接)されるとともに、第1分割体20の下部の後面が第2分割体30の下側フランジ32の前面に固定(溶接)されている。これにより、第1分割体20によって第2分割体30の前部開口を塞ぐように、同第1分割体20が第2分割体30に固定されている。
リヤクロスメンバ14の前壁14F(第1分割体20)には、車幅方向における中央部分において延びる切り欠き23が設けられている。以下、この切り欠き23について詳しく説明する。
第1分割体20は、車幅方向における中間部分において車両右側の部材(右部材21)と車両左側の部材(左部材22)とに分割された構造になっている。それら右部材21および左部材22の端面は、上端および下端においては車幅方向に略直線状に延びており、車幅方向の外端(右部材21の右側や左部材22の左側)においては上下方向に略直線状に延びている。また、右部材21の車幅方向内側(左側)の端面は、車両後方から見て略S字状で延びるとともに、上方側の部位ほど車幅方向内側(左側)の位置になる形状で延びている。さらに、左部材22の車幅方向内側(右側)の端面は、車両後方から見て略逆S字状で延びるとともに、上方側の部位ほど車幅方向内側(右側)の位置になる形状で延びている。
本実施形態では、第1分割体20を構成する右部材21および左部材22が同一形状になっている。これにより、それら右部材21および左部材22を、異なる形状のものを異なる装置を用いて製造する場合と比較して、共通の装置(例えば金型)を用いて安価に製造することが可能になっている。
そして本実施形態では、図5に示すように、これら右部材21および左部材22が、上下方向に延びる直線L0を対称軸として線対称になるように、第2分割体30における車幅方向に間隔を置いた位置にそれぞれ固定されている。このようにして右部材21と左部材22とを第2分割体30に固定することにより、それら右部材21と左部材22との間隙が切り欠き23になっている。
本実施形態では、切り欠き23が前壁14F(第1分割体20)の上端から下端まで延びており、同切り欠き23の端面が斜め上方に向けて波線状(右部材21では略S字状、左部材22では略逆S字状)で延びている。これにより、切り欠き23は、前壁14Fの上端における車幅方向の開口長W1が同前壁14Fの下端における車幅方向の開口長W2よりも短くなっている。また、切り欠き23の車幅方向の開口長は、前壁14Fの下端から上端に向けて徐々に長くなっている。
また本実施形態では、図3〜図5に示すように、第1分割体20における右部材21の前面に右側サイドメンバ11の後端が固定されており、同第1分割体20における左部材22の前面に左側サイドメンバ12の後端が固定されている。これにより、各サイドメンバ11,12は、リヤクロスメンバ14のうちの四角筒状をなす部分にそれぞれ固定されている。
さらに本実施形態では、切り欠き23が、リヤクロスメンバ14における各サイドメンバ11,12に固定された部分(固定部分F1,F2)の間にあたる中間部分Cに設けられており、リヤクロスメンバ14の両端部分(各固定部分F1,F2およびその周辺部分を含む)には設けられていない。
以下、こうしたリヤクロスメンバ14を設けることによる作用効果について説明する。
本実施形態では、切り欠き23がリヤクロスメンバ14の前壁14Fにおける中間部分Cのみに設けられており、同前壁14Fの車幅方向における両端部分(サイドメンバ11,12が固定された固定部分F1,F2およびその周辺部分を含む)には設けられていない。これにより、リヤクロスメンバ14における上記固定部分F1,F2やその周辺部分が閉断面構造(四角筒状)になっているため、それら固定部分F1,F2やその周辺部分の剛性を容易に高くすることができる。したがって本実施形態によれば、リヤクロスメンバ14における固定部分F1,F2やその周辺部分に適度の剛性を付与することができるようになる。
そのため、車両の後方衝突(後突)に際して衝突荷重がリヤクロスメンバ14に作用した場合には、リヤクロスメンバ14における閉断面構造の部分が前後方向に潰れるように変形しつつ、同荷重が各サイドメンバ11,12に伝達されるようになる。本実施形態によれば、このようにして後突に伴う衝突エネルギーをリヤクロスメンバ14やサイドメンバ11,12の変形によって吸収することができるようになり、これによる衝突吸収機能が得られるようになる。
また本実施形態では、リヤクロスメンバ14の前壁14Fの中間部分Cに上端から下端まで延びる切り欠き23が設けられており、同中間部分Cが開断面構造(具体的には、前方が開口した構造)になっている。こうした切り欠き23を設けることにより、切り欠き23が設けられていないものと比較して、リヤクロスメンバ14のねじり剛性を容易に低くすることができる。そして、こうした切り欠き23の配設を通じてリヤクロスメンバ14のねじり剛性を適度に低くすることにより、車両後部のロール剛性を適度に低くすることが可能になる。
なお本実施形態では、上記切り欠き23の形状が、リヤクロスメンバ14のねじり剛性が所望の車両旋回性を得るうえで適切な値になるように、各種の実験やシミュレーションの結果をもとに定められている。本実施形態によれば、こうした切り欠き23がリヤクロスメンバ14に設けられているため、同リヤクロスメンバ14のねじり剛性を適度に低くして、所望の車両旋回性が得られるだけのフレーム剛性を得ることができる。
またリヤクロスメンバ14は、前壁14Fをなす第1分割体20(右部材21および左部材22)と、後壁14R、上壁14Uおよび下壁14Bが一体形成された断面コの字状の部分を有する第2分割体30とによって構成されている。そして、上記切り欠き23は、前壁14Fをなす第1分割体20に設けられている。
そのため、断面コの字状の部分を有する第2分割体30に平板状の第1分割体20(右部材21および左部材22)を固定するといった平易な手順で、切り欠き23を有する四角筒状のリヤクロスメンバ14を形成することができる。
本実施形態では、第2分割体30が、リヤクロスメンバ14における後方側の位置において後方に向けて突出する断面コの字状をなす態様で、車幅方向の全体にわたって延びている。そのため、リヤクロスメンバ14の後方側の部分(第2分割体30)における車幅方向の全体が後突に伴う衝撃荷重を直接受ける部分として機能するようになる。これにより、リヤクロスメンバ14の後方側の部分の一部のみが上記衝撃荷重を直接受ける部分として機能する構造と比較して、リヤクロスメンバ14の変形による衝撃エネルギーの吸収がなされやすい構造にすることができる。
しかも本実施形態では、リヤクロスメンバ14における前方側の部分(第1分割体20)、すなわち後突に伴う衝撃荷重を直接受けることのない部分に切り欠き23が設けられている。そのため、リヤクロスメンバ14の各部位の中でも衝撃吸収機能の低下が抑えられる位置に切り欠き23を設けることができるとともに、この切り欠き23によって車両後部のロール剛性を適度に低くすることができる。
ここで、仮にリヤクロスメンバ14の切り欠き23の端面が上下方向において直線状で延びる構造を採用すると、同切り欠き23の端面を境にその左側と右側とで後突に伴う衝撃荷重に対するリヤクロスメンバ14の耐力が大きく異なる構造になってしまう。
本実施形態では、リヤクロスメンバ14に設けられた切り欠き23の端面(詳しくは、右部材21の左側の端面や左部材22の右側の端面)が、上端側の部位ほど車幅方向における内側の位置になるように、斜め上方に向けて波線状で延びている。
これにより、リヤクロスメンバ14において切り欠き23の端面が配置される部分およびその周辺部分を、車幅方向の一方側に向かうに連れて、切り欠き23の開口が占める割合が徐々に変化する構造にすることができる。具体的には、右部材21の左側の端面が配置される部分では左側に向かうに連れて切り欠き23の開口が占める割合が徐々に大きくなっており、左部材22の右側の端面が配置される部分では右側に向かうに連れて切り欠き23の開口が占める割合が徐々に大きくなっている。これにより、リヤクロスメンバ14の車幅方向における各部位の耐力が車幅方向の中央に向かうに連れて低くなるといったように、同耐力が徐々に変化する構造にすることができる。
図6は、リヤクロスメンバ14における車幅方向の位置と、後突に伴う衝突荷重に対するリヤクロスメンバ14の耐力(線L1)と、車両旋回時におけるリヤクロスメンバ14のねじり変位量(線L2)との関係を示す。
本実施形態では、図6中に線L1で示すように、後突に伴う衝撃荷重に対するリヤクロスメンバ14の各部位の耐力は、車幅方向における中央に向かうに連れて徐々に小さくなっている。また本実施形態では、上述した形状の切り欠き23が設けられているため、図6中に線L2で示すように、車両の旋回時におけるリヤクロスメンバ14のねじり変位量が、車幅方向における中央に向かうに連れて徐々に大きくなっている。
また、リヤクロスメンバ14には、車両走行に際して作用する曲げ荷重に耐えうるだけの剛性が求められる。車両が段差を乗り越えるときや、車両が一旦浮き上がった後(例えばジャンプ後)に沈み込むときには、車両走行に起因してフレーム10に作用する荷重と車両重量に起因して同フレーム10に作用する荷重とが同一方向(フレーム10を路面側に挿圧する方向)に作用するため、リヤクロスメンバ14に作用する曲げ荷重が大きくなり易いと云える。このとき上記曲げ荷重は、リヤクロスメンバ14を下方に突出する凸状に曲げるように作用する。そのため、リヤクロスメンバ14の上部には耐力を確保するうえで重要な圧縮荷重が作用するようになる一方で、同クロスメンバの下部には引っ張り荷重が作用するようになる。
この点をふまえて本実施形態では、リヤクロスメンバ14の前壁14Fの上端における切り欠き23の車幅方向の開口長W1(図5参照)が同前壁14Fの下端における切り欠き23の車幅方向の開口長W2よりも短くなっている。これにより、端面が斜め上方に向けて延びる切り欠き23が、リヤクロスメンバ14の上端の剛性が下端の剛性よりも高くなる態様で設けられるようになる。したがって本実施形態によれば、車両走行時におけるリヤクロスメンバ14の耐力を確保する上で重要な同リヤクロスメンバ14の上端の剛性が下端の剛性よりも高くなるように、切り欠き23を設けることができる。これにより、車両走行時におけるリヤクロスメンバ14の耐力を確保しつつ、車両後部のロール剛性を適度に低くすることが可能になっている。
以上説明したように、本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)サイドメンバ11,12の後端に前壁14F、後壁14R、上壁14Uおよび下壁14Bを有する四角筒状のリヤクロスメンバ14を固定した。リヤクロスメンバ14の前壁14Fにおける一対のサイドメンバ11,12に固定された各固定部分F1,F2の間にあたる中間部分Cに、同前壁14Fにおける上端および下端において開口する切り欠き23を設けた。これにより、リヤクロスメンバ14における各固定部分F1,F2やその周辺部分を閉断面構造にすることができるため、後突に伴う衝突エネルギーをリヤクロスメンバ14やサイドメンバ11,12の変形によって吸収することができるようになり、これによる衝突吸収機能が得られるようになる。しかも、リヤクロスメンバ14の中間部分Cに切り欠き23が設けられているため、同リヤクロスメンバ14のねじり剛性を適度に低くして、所望の車両旋回性が得られるだけのフレーム剛性を得ることができる。
(2)リヤクロスメンバ14を、前壁14Fをなす第1分割体20と、後壁14R、上壁14Uおよび下壁14Bが一体形成された断面コの字状の部分を有する第2分割体30とによって構成した。そして、第1分割体20に切り欠き23を設けた。そのため、断面コの字状の部分を有する第2分割体30に第1分割体20を固定するといった平易な手順で、切り欠き23を有するリヤクロスメンバ14を形成することができる。
(3)第2分割体30が、リヤクロスメンバ14における後方側の位置において後方に向けて突出する断面コの字状をなす態様で、車幅方向の全体にわたって延びている。そのため、リヤクロスメンバ14の後方側の部分の一部のみが後突に伴う衝撃荷重を直接受ける部分として機能する構造と比較して、リヤクロスメンバ14の変形による衝撃エネルギーの吸収がなされやすい構造にすることができる。しかも、リヤクロスメンバ14における前方側の部分(第1分割体20)に切り欠き23が設けられている。そのため、リヤクロスメンバ14の各部位の中でも衝撃吸収機能の低下が抑えられる位置に切り欠き23を設けることができるとともに、この切り欠き23によって車両後部のロール剛性を適度に低くすることができる。
(4)第1分割体20は車幅方向における中間部分において右部材21と左部材22とに分割された構造になっており、それら右部材21および左部材22は同一形状になっている。そのため、第1分割体20を構成する右部材21と左部材22とを、異なる形状のものを異なる装置を用いて製造する場合と比較して、共通の装置(例えば金型)を用いて安価に製造することができる。そして、右部材21および左部材22を、上下方向に延びる直線L0を対称軸として線対称になるように、第2分割体30における車幅方向に間隔を置いた位置にそれぞれ固定した。そのため、それら右部材21と左部材22との間隙を前壁14Fの上端から下端まで延びる切り欠き23にすることができる。
(5)切り欠き23をリヤクロスメンバ14の前壁14Fにおける中間部分Cのみに設けた。そのため、リヤクロスメンバ14における各固定部分F1,F2やその周辺部分の剛性を高くすることができ、高い衝突吸収機能を容易に得ることができる。
(6)リヤクロスメンバ14の前壁14Fに上端から下端まで延びる切り欠き23を設けたため、同リヤクロスメンバ14のねじり剛性を容易に低くすることができる。
(7)第1分割体20の切り欠き23の端面(右部材21の左側の端面や左部材22の右側の端面)を、上端側の部位ほど車幅方向における内側の位置になるように、斜め上方に向けて延びる形状にした。そのため、リヤクロスメンバ14の車幅方向における各部位の耐力が車幅方向の中央に向かうに連れて低くなるといったように、同耐力が徐々に変化する構造にすることができる。
(8)端面が斜め上方に向けて延びる切り欠き23を、リヤクロスメンバ14の前壁14Fの上端における切り欠き23の車幅方向の開口長W1が同前壁14Fの下端における切り欠き23の車幅方向の開口長W2よりも短くなる態様で設けた。そのため、車両走行時におけるリヤクロスメンバ14の耐力を確保しつつ、車両後部のロール剛性を適度に低くすることができる。
<変形例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・図7に示すように、リヤクロスメンバ44の前壁44Fに設けられる切り欠き43を、上端の車幅方向における開口長W3よりも下端の車幅方向における開口長W4が短くなる形状にしてもよい。
・切り欠き23を、後方側から見た端面が略S字状や略逆S字状をなす形状にすることに限らず、同端面が円弧状をなす形状にしたり、上記端面が斜め上方に延びる直線状をなす形状にしたりすることができる。その他、切り欠きを、後方側から見た端面が上下方向(鉛直方向)に延びる直線状をなす形状にすること等も可能である。
・第1分割体20を構成する右部材21と左部材22とを異なる形状のものにしてもよい。
・リヤクロスメンバの前方側の部分をなす第1分割体として、その右側部分と左側部分とが車幅方向における中間部分において一部繋がった構造のものを採用してもよい。こうした第1分割体としては、例えば図8に示すように、下端において開口する切り欠き53が下部に設けられるとともに、上部には切り欠きが設けられていない第1分割体50を採用することができる。また、下端において開口する下部切り欠きが下部に形成されるとともに、上端において開口する上部切り欠きが上部に形成された第1分割体を採用することができる。その他、上端において開口する切り欠きが上部に設けられるとともに、下部には切り欠きが設けられていない第1分割体を採用すること等も可能である。リヤクロスメンバ14の前壁14Fに設ける切り欠き23の形状は、前壁14Fの上端および下端の少なくとも一方において開口する形状であれば、任意に変更することができる。
・図9に示すように、後壁64Rをなす第1分割体60と、前壁64F、上壁64Uおよび下壁64Bが一体形成された断面コの字状の部分を有する第2分割体61とからなるリヤクロスメンバ64を採用することができる。図9に示す例では、第1分割体60に、その上端から下端まで延びる切り欠き63が設けられている。
・図10に示すように、曲げ加工などを通じて前壁74F、後壁74R、上壁74Uおよび下壁74Bが一体形成された四角管状のリヤクロスメンバ74を採用することができる。図10に示す例では、リヤクロスメンバ74の前壁74Fに、その上端(前壁74Fと上壁74Uとが角をなす部分)から下端(前壁74Fと下壁74Bとが角をなす部分)まで延びる切り欠き73が設けられている。
・適度のねじり剛性や車両走行に際して作用する曲げ荷重に耐えうるだけの剛性が得られるのであれば、リヤクロスメンバの車幅方向における両側方部分に切り欠きを設けてもよい。
10…フレーム、10F…前部、10C…中央部、10R…後部、11…右側サイドメンバ、12…左側サイドメンバ、13…クロスメンバ、14,44,64,74…リヤクロスメンバ、14F,44F,64F,74F…前壁、14R,64R,74R…後壁、14U,64U,74U…上壁、14B,64B,74B…下壁、15…前輪、16…後輪、20,50,60…第1分割体、21…右部材、22…左部材、23,43,53,63,73…切り欠き、30,61…第2分割体、31…上側フランジ、32…下側フランジ、F1,F2…固定部分、C…中間部分。

Claims (6)

  1. 車両前後方向に延びるとともに車幅方向に間隔を置いて並ぶ一対のサイドメンバと、車幅方向に延びるとともに前記一対のサイドメンバの後端同士を繋ぐように前記サイドメンバに固定されたクロスメンバと、を有する車両後部構造であって、
    前記クロスメンバは、車両上下方向に延びる前壁および後壁と、車両前後方向に延びる上壁および下壁と、を有する四角筒状をなしており、
    前記前壁または前記後壁には、その上端および下端において開口する切り欠きが、前記クロスメンバにおける前記一対のサイドメンバに固定された各固定部分の間にあたる中間部分に設けられているものであり、
    前記切り欠きは前記上端から前記下端まで延びており、
    前記切り欠きの端面は斜め上方に向けて延びている、車両後部構造。
  2. 前記クロスメンバは、前記前壁および前記後壁の一方をなす第1分割体と、前記前壁および前記後壁の他方と前記上壁と前記下壁とが一体形成された断面コの字状の部分を有する第2分割体と、からなり、
    前記切り欠きは前記第1分割体に設けられている
    請求項1に記載の車両後部構造。
  3. 前記第1分割体は前記前壁をなすものであり、
    前記第2分割体は前記上壁および前記後壁および前記下壁が一体形成されたものである
    請求項2に記載の車両後部構造。
  4. 前記第1分割体は前記中間部分において車両右側の部材と車両左側の部材とに分割された構造であり、
    前記車両右側の部材および前記車両左側の部材は、同一形状であり、車両上下方向に延びる線を対称軸として線対称になるように配置されている
    請求項2または3に記載の車両後部構造。
  5. 前記切り欠きは、前記クロスメンバにおける前記中間部分のみに設けられている
    請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両後部構造。
  6. 前記切り欠きは、前記上端における車幅方向の開口長が前記下端における車幅方向の開口長よりも短くなっている
    請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両後部構造。
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