JP6915339B2 - 車両用調光システム、調光部材の制御方法、調光部材の制御プログラム、車両 - Google Patents

車両用調光システム、調光部材の制御方法、調光部材の制御プログラム、車両 Download PDF

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Description

本発明は、車両用調光システム、調光部材の制御方法、調光部材の制御プログラム、車両に関する。
従来、例えば、窓に貼り付けて外来光の透過を制御する調光部材(調光フィルム)に関する工夫が種々提案されている(特許文献1、2)。このような調光部材の1つに、液晶を利用したものがある。このような液晶を利用した調光部材は、透明電極を備えた透明フィルム材により液晶材料を挟持して液晶セルを製造し、その液晶セルを直線偏光板により挟持する。
この調光部材では、液晶に印加する電界を変更して液晶の配向を変更することにより外来光の透過を制御する。
特許文献3には、このような調光部材の車両での使用に関して、車内への入射光量に応じて透過率を変化させる構成が開示されている。
また、特許文献4には、車庫等の特定箇所の駐車により調光部材の透過率を低減する構成が開示されている。
特開平03−47392号公報 特開平08−184273号公報 特開2008−222045号公報 特開2007−326526号公報
ここで、一般に乗用車等の車両では、車内の覗き見等を抑制する観点から、ウインドウに着色フィルム等を貼付して、車内を見え難くする場合がある。
しかしながら、着色フィルム等をウインドウに貼付した場合、不必要に外光の車内への入射を制限してしまう問題がある。
本発明は、車内の覗き見を抑制するとともに、不必要に車内への外光の入射を制限してしまうのを抑制することを目的とする。
具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 外光が入射する部位に調光部材が配置された車両に設けられる車両用調光システムであって、
前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得部と、
前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動制御部と、
を備える車両用調光システム。
(2) (1)において、
前記外光が入射する部位は、前記車両のリアウインドウであり、
前記距離情報取得部は、前記車両の後続車両との距離情報を取得すること、
を特徴とする車両用調光システム。
(3) (1)又は(2)において、
前記外光が入射する部位は、前記車両のサイドウインドウであり、
前記距離情報取得部は、前記車両の並走車両との距離情報を取得すること、
を特徴とする車両用調光システム。
(4) (1)から(3)までのいずれかにおいて、
前記距離情報の判定基準値を記憶する記憶部と、
前記判定基準値と前記距離情報取得部で取得した距離情報とを比較する比較部とを備え、
前記駆動制御部は、
前記比較部の比較結果に基づいて、
前記距離情報取得部で取得した距離情報が、前記判定基準値以下の場合、前記調光部材の透過率を低減すること、
を特徴とする車両用調光システム。
(5) (1)〜(4)のいずれかにおいて、
前記他の車両の高さを計測する高さ計測部を備え、
前記駆動制御部は、
前記高さ計測部の計測結果に基づいて、前記調光部材の透過率を局所的に変化させること、
を特徴とする車両用調光システム。
(6) (1)〜(5)のいずれかにおいて、
前記調光部材は、複数のセグメントに分割されており、
前記駆動制御部は、複数の前記セグメントの透過率を個別に制御すること、
を特徴とする車両用調光システム。
(7) 車両の外光が入射する部位に配置された調光部材の透過率を制御する調光部材の制御方法であって、
前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動ステップと、
を備える調光部材の制御方法。
(8) 情報処理装置による実行により、前記情報処理装置に所定の処理手順を実行させて、車両の外光が入射する部位に配置された調光部材の透過率を制御する調光部材の制御プログラムであって、
前記処理手順が、
前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動ステップと、
を備える調光部材の制御プログラム。
(9) 請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の移動体用調光システムを備えることを特徴とする車両。
本発明によれば、車内の覗き見を抑制するとともに、不必要に車内への外光の入射を制限してしまうのを抑制することができる。
実施形態の車両用調光システムに用いられる調光フィルムの構成を説明する断面図である。 実施形態の車両用調光システムを有する車両を説明する図である。 調光フィルムの透明電極の形態を説明する図である。 距離情報の判定基準値の選択画面を示す図である。 実施形態の車両用調光システムの処理手順を示すフローチャートである。
〔実施形態〕
〔調光フィルム〕
図1は、実施形態の車両用調光システムに用いられる調光フィルムの構成を説明する断面図である。
調光フィルム1は、液晶を利用して透過光を制御するフィルム状の部材であり、直線偏光板2、3により調光フィルム用の液晶セル4を挟持して構成される。
〔直線偏光板〕
直線偏光板2、3は、偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、偏光子の片側又は両側に偏光板保護フィルムを有するものであってもよい。
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)のような親水性ポリマーからなるフィルムを二色性色素であるヨウ素を含有する水溶液に浸漬させて延伸することによりポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させた偏光子や、ポリ塩化ビニルのようなプラスチックフィルムを処理してポリエンを配向させたものからなる偏光子等を挙げることができる。
また、ヨウ素の代わり二色性色素として二色性染料を用いる場合は、二色性染料として、アゾ系染料、スチルベン系染料、メチン系染料、シアニン系染料、ピラゾロン系染料、トリフェニルメタン系染料、キノリン系染料、オキサジン系染料、チアジン系染料、アントラキノン系染料等が用いられる。
上述の偏光板保護フィルムは、上述の偏光子を保護することができ、且つ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。偏光板保護フィルムの材料としては、例えば、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等あるいは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、又は紫外線硬化型の樹脂等を挙げることができる。中でも、上述の樹脂材料としてアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、又はアクリル系樹脂を用いることが好ましい。その中でも特に、アセチルセルロース系樹脂であるトリアセチルセルロース(TAC)が好適である。
直線偏光板2、3は、クロスニコル配置により、アクリル系透明粘着樹脂等による接着剤層により液晶セル4に配置される。なお、直線偏光板2、3には、それぞれ液晶セル4側に光学補償のための位相差フィルム2A、3Aが設けられるが、位相差フィルム2A、3Aは、必要に応じて省略してもよい。またクロスニコル配置に代えてパラレルニコル配置により配置してもよい。
なお、直線偏光板2、3には、垂直方向に光学異方性を発現する二色性有機色素から構成される塗工膜により形成されるE型の直線偏光板を適用してもよい。これにより、調光フィルム1の総厚みをより薄くすることができる。
この場合、各直線偏光板は、後述の液晶セル4を構成する上側積層体5Uの基材15の液晶層8側と、下側積層体5Dの基材6の液晶層8側とに液晶層8を挟持するようにして配置されるのが望ましい。後述するように、基材6、15は、光学異方性が小さいことが望まれるが、E型の直線偏光板を上述のように配置することによって、基材において透過光が種々に偏光したとしても、液晶層の透過光には何ら影響を与えないようにすることができるため、基材6、15に汎用性の高い透明樹脂フィルム、例えば、PETフィルム等を使用することが可能となる。
〔液晶セル〕
液晶セル4は、フィルム状の下側積層体5D及び上側積層体5Uにより液晶層8を挟持して構成される。
〔下側積層体、上側積層体〕
下側積層体5Dは、基材6に、透明電極11、配向層13及びスペーサ12を積層して形成される。
上側積層体5Uは、基材15に、透明電極16、配向層17及びスペーサ12を積層して形成される。
〔基材〕
基材6、15は、種々の透明樹脂フィルムを適用することができるが、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
特に、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。
本実施形態において、基材6、15は、厚み100μmのポリカーボネートフィルムが適用されるが、種々の厚みの透明樹脂フィルムを適用することができる。
〔透明電極〕
透明電極11、16は、上記透明樹脂フィルムと透明樹脂フィルムに積層される透明導電膜から構成されている。
透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
酸化錫(SnO2)系としてはネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。
酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。
酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide)により透明導電膜が形成される。
なお、本実施形態の透明電極11、16の具体的構成については後に詳述する。
〔スペーサ〕
スペーサ12は、液晶層8の厚みを規定するために設けられ、各種の樹脂材料を広く適用することができる。ここで、スペーサ12には、主に球状スペーサ(以下、「ビーズスペーサ」と呼ぶ)と柱状スペーサ(以下、「フォトスペーサ」と呼ぶ)の2種類が存在する。
ここで、調光フィルム1は、基材上に配向層を形成後に、感光性樹脂を塗布して、露光、現像するというフォトリソグラフィー法を用いてフォトスペーサを形成することが考えられるが、この場合、露光や現像工程によって配向層へダメージを与え、配向不良が生じる原因となるため好ましくない。また、基材上にフォトスペーサを先に作製した後に、配向層を塗布することも考えられるが、この場合、フォトスペーサの周囲の配向層には十分な配向規制力を与えることができず、配向不良が生じる原因となるため好ましくない。よって、フォトスペーサにより製造した調光フィルムは、配向不良により所望の透過率に精度よく制御できなくなる場合がある。
これに対して、ビーズスペーサは、配向層を形成した後に、その配向層上に散布され、また、配向層との接触面積が狭いため、上述のような配向層がダメージを受けたり、配向不良が生じたりするような問題が生じるのを低減することができる。
よって、スペーサ12としてビーズスペーサを適用することにより、作製した調光フィルム1の透過率を、フォトスペーサを用いた場合に比して、より精密に細かく透過率を変化させることができる。
ここで、本実施形態の調光フィルム1は、車両20に配置されるため、必要に応じて透過率に精度よく制御する必要がある。そのため、本実施形態では、スペーサ12にビーズスペーサを適用する。
ここで、スペーサ12に用いられるビーズスペーサは、液晶表示装置やカラーフィルタ等に用いられる公知のビーズを適用することができる。具体的には、無機系成分ではガラス、シリカ、金属酸化物(MgO、Al2O3)等、有機系成分としてはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリルエステル共重合体、ジアクリルフタレート共重合体、アリルイソシアヌレート共重合体等の材料系の懸濁重合や乳化重合、乳化重合で得られたコア粒子を用いるシード重合法等の重合法によって得られた球状、円柱体、円筒状等の粒状体や、多孔質体、中空体等を使用することができる。
また、配向層上におけるビーズスペーサ12の分散性や、密着性を向上させる観点から、ビーズスペーサの表面に表面処理を行うようにしてもよい。表面の被覆材料としては、ビーズ表面への固定化や、液晶材料中への化学物質の流出が問題とならなければ、とくに限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリメチル(メタ)アクリレート重合体、SBS型スチレン/ブタジエンブロック共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。
なお、上述の説明では、スペーサ12は、上側積層体5U及び下側積層体5Dの両方に設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、上側積層体5U及び下側積層体5Dのいずれか一方に設けられるようにしてもよい。
〔配向層〕
配向層13、17は、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができ、例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等を挙げることができる。
本実施形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。このような光二量化型の材料の具体例としては、例えば特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報及びWO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。
なお、光配向層に代えてラビング処理により配向層を作製してもよく、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。
〔液晶層〕
液晶層8は、この種の調光フィルム1に適用可能な各種の液晶材料を広く適用することができる。具体的に、液晶層8には、重合性官能基を有していない液晶化合物として、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物及びコレステリック液晶化合物を適用することができる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、トリフルオロ系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、およびアゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、エステル系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、およびビフェニルエチン系化合物等を挙げることができる。
スメクチック液晶化合物としては、例えば、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリクロロアクリレート系、ポリオキシラン系、ポリシロキサン系、ポリエステル系等の強誘電性高分子液晶化合物を挙げることができる。
コレステリック液晶化合物としては、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチド等を挙げることができる。
液晶セル4は、液晶層8を囲むように、シール材19が配置されている。シール材19により上側積層体5U、下側積層体5Dが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材19は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
調光フィルム1は、透明電極11、16に、所定周期で極性が切り替わる交流電圧が印加され、この交流電圧により液晶層8に電界が形成される。また、この電界により液晶層8に設けられた液晶分子の配向が制御され、透過光が制御される。
実施形態の調光フィルム1における液晶層8の配向制御には、VA方式(Virtical Alignment、垂直配向型)が適用される。VA方式は、基板上に形成した透明電極の上に垂直方向に配向規制力を有する配向膜を設け、上下基板で液晶層8を挟む構成である。
VA方式は、無電界時、液晶層8の液晶分子は垂直配向し、これにより調光フィルム1は、入射光を遮光して遮光状態となり、また、この電界の印加により、液晶層8の液晶が水平配向し、調光フィルム1は、入射光を透過して透過状態となる。
このVA方式のように、無電界時に遮光状態となり、電界印加時に透過状態となるような光の制御モードをノーマリーブラックモードという。
しかし、VA方式に代えて、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、GH(Guest Host)方式等、種々の駆動方式を適用してよい。
ここで、TN方式は、基板上に形成した透明電極の上に、配向方向が90°異なるようなラビング処理等を行った配向膜を付け、上下基板で液晶層8を挟む構成である。配向膜の配向規制力により液晶分子は配向膜の配向方向に沿って並び、その液晶分子に沿って他の液晶分子が配向するため、液晶分子の方向が90°捩じれる形で配向する。そして上下基板の外側に、配向膜の配向方向と平行に偏光板を配置する。
TN方式は、無電界時、偏光板を通過した光は直線偏光となり液晶に入る。液晶分子は90°捩じれて配向されているので、入射した光も90°捩じれて通過するため、下の偏光板を通過できる。これにより調光フィルム1は、入射光を透過して透過状態となる。
また、この電界の印加により液晶分子が直立して捩じれがとれるが、配向膜表面では配向規制力の方が強いため、液晶分子の配向方向は配向膜に沿ったままである。このような状態では、液晶分子は通過する光に対しては等方的であるため、液晶層8に入射された直線偏光の偏光方向の回転は生じない。従って、上の偏光板を通過した直線偏光は下の偏光板を通過できず、調光フィルム1は、入射光を遮光して遮光状態となる。
このTN方式のように、無電界時に透過状態となり、電界印加時に遮光状態となるような光の制御モードをノーマリーホワイトモードという。
また、IPS方式は、一方の基材に電極をまとめて作成し、この電極による電界により配向させた液晶分子を基板に対して横(水平)方向に回転させることにより透過光量を制御する方式である。
更に、GH方式は、ホストであるネマチック液晶中にゲストとして二色性色素を溶解させた液晶組成物を用いる方式である。二色性色素は、1軸の光吸収軸を有し、光吸収軸方向に振動する光のみを吸収することから、電場による液晶の動きに合わせて、二色性色素の配向を変化させ、光吸収軸の向きを制御することにより、液晶セルの透過状態を変化させることができる。
GH方式に使用される液晶組成物は、電界印加時における液晶分子の長軸方向の相違により、ポジ型とネガ型とに大別される。
ポジ型のネマチック液晶は、誘電率が長軸方向に大きく長軸に垂直な方向に小さい誘電率異方性が正の液晶であり、無電界時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となり、電界印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となるものである。
一方、ネガ型のネマチック液晶は、誘電率が長軸方向に小さく長軸に垂直な方向に大きい誘電率異方性が負の液晶であり、無電界時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となり、電界印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となるものである。
ここで、二色性色素分子は液晶分子と同じ方向に配向するため、ポジ型のネマチック液晶をホストとして用いた場合には、無電界時には遮光状態となり、電界印加時には透過状態となる(ノーマリーブラックモード)。
一方、ネガ型のネマチック液晶をホストとして用いた場合には、逆に、無電界時には透過状態となり、電界印加時には遮光状態となる(ノーマリーホワイトモード)。
GH方式に用いられる二色性色素としては、液晶に対して溶解性があり、二色性の高い色素、好ましくはオーダーパラメーター(S値)が0.7以上の色素が挙げられ、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、テトラジン系等の二色性色素が挙げられる。
なお、調光フィルム1がGH方式により製造される場合は、直線偏光板は省略することができる。
また、液晶セル4は、光配向層のパターンニング等によりいわゆるマルチドメイン方式により液晶材料を駆動してもよく、さらにはシングルドメインにより駆動してもよい。
更に、調光フィルム1は、上述の液晶による調光フィルムの他、透過光量を調整可能な各種調光フィルムを使用する場合に広く適用することができる。
〔マルチセグメント〕
図2は、第1実施形態の車両用調光システム41を有する車両20を説明する図である。図2の車両20は、鉛直上方より見た概略図である。
本実施形態の調光フィルム1は、車両(乗用車)20の運転席側の後部サイドウインドウ23A、助手席側の後部サイドウインドウ23B、リアウインドウ24のほぼ全面にそれぞれ配置されている。この調光フィルム1は、各ウインドウ23A、23B、24でそれぞれ個別に駆動電源を供給可能に構成され、これにより各ウインドウ23A、23B、24で個別に透過率を調整することができる。
また、各ウインドウ23A、23B、24に設けられる調光フィルム1は、透明電極11及び又は透明電極16が、それぞれ個別に駆動電源を供給可能な絶縁された複数の部分電極(領域)に分割して作製される。これにより調光フィルム1は、図2に示すように、独立して個別に透過率を変更することができる複数の領域(以下、適宜、各領域をセグメントと呼ぶ)SG1〜SG4を備えたマルチセグメントにより形成される。
なお、車両20のウインドウ23A、23B、24の面内に複数の調光フィルムを敷き詰めて、各調光フィルムを上述のセグメントに対応させることも可能であるが、この場合、隣り合う調光フィルム間の繋ぎ目(境界)が目立ってしまう場合があり、外観を損ねてしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態の調光フィルム1は、1枚のフィルムから構成されており、調光フィルム1を構成する透明電極のみが上述のように複数の領域(部分電極)に分割されている。そのため、調光フィルム1の各セグメント間の境界が目立ってしまうのを極力抑制することができるとともに、ウインドウ23A、23B、24に調光フィルム1を配置する作業効率も向上させることができる。
ここで、複数のセグメントを有する本実施形態の調光フィルム1の電極の形態について説明する。
図3は、調光フィルムの透明電極の形態を説明する図である。図3では、リアウインドウ24に設けられる調光フィルム1の透明電極11、16を例にして説明するが、各サイドウインドウ23A、23Bについても同様である。なお、図3においては、説明を明確にするために、調光フィルム1を構成する透明電極以外の構成の図示を省略している。
調光フィルム1の透明電極11、16は、例えば、以下のように分割される。
図3(a)に示すように、調光フィルム1に設けられる透明電極16を、水平方向に延長する帯状領域により鉛直方向(高さ方向)に4分割することにより、透明電極16は、複数の部分電極16A〜16Dに4分割された状態で基材15上に形成される。また、透明電極16に対向する透明電極11は、分割されることなく基材6上の全面に形成される。これにより、セグメントSG1〜SG4を有するマルチセグメントの調光フィルム1が形成される。
なお、上記説明では透明電極16が4分割される例を示したが、これに限定されるものでなく、透明電極11が4分割され、透明電極16が基材15上の全面に形成されるようにしてもよい。
また、図3(b)に示すように、透明電極11及び透明電極16を、図3(a)の透明電極16と同様に分割するようにしてもよい。具体的には、透明電極16を複数の部分電極16A〜16Dにより形成し、透明電極16に対応するようにして透明電極11を分割、すなわち、透明電極11を複数の部分電極11A〜11Dにより形成することによって、セグメントSG1〜SG4を有するマルチセグメントの調光フィルム1が形成される。
このような透明電極11、16の分割は、透明電極のパターニングにより作製することができる。
なお、透明電極11、16のパターニングによる分割は、対向する透明電極11、16において、それぞれの分割数を異ならせてもよい。
また、上述の図3(a)及び図3(b)に示す例において、透明電極11、16のパターニングは、水平方向に延長する帯形状に分割される例を示したが、これに限定されるものでなく、例えば、縦方向、斜め方向に延長する帯形状により分割してもよく、さらには六角形形状、台形形状、平行四辺形形状、三角形形状等、種々の形状により分割されるようにしてもよい。
このようにマルチセグメント化して、各セグメントSG1〜SG4を個別に駆動できることから、調光フィルム1は、例えば、図3(c)に示すように、下側から上側に向かって順次段階的に透過率が減少するように設定し、リアウインドウ24の上部に目立たないように目隠しを設けたりすることができる。
また、調光フィルム1のセグメント数を増やし、例えば、各セグメントを、リアウインドウの上端から下端へ向けて段階的に透過率を変化させて、図3(d)に示すように、グラデーションを形成するようにしてもよい。なお、図3(d)では、各セグメント間の境界線の図示を省略している。
ここで、上述したように、本実施形態の調光フィルム1は、スペーサ12にビーズスペーサを適用しているので、フォトスペーサを適用した場合に比して、各セグメントの透過率をより精度よく変化させることができ、リアウインドウの上端から下端へ向けて外光の入射光量を滑らかに変化させることができる。
本実施形態のサイドウインドウ23A、23Bの調光フィルム1は、リアウインドウ24の調光フィルム1と同様にして水平方向に延長する帯状領域によりセグメントSG1〜SG4が設けられ、これによりリアウインドウ24と同様に種々に透過率を調整することができる。
〔車両〕
本実施形態の車両20は、4人乗りの乗用車である。車両20では、外光が車内に入射する部位となる後席のサイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24のほぼ全面にそれぞれ上述の調光フィルム1が配置されており、この調光フィルム1の透過率を調整することにより、車外から車内が覗かれてしまうのを防ぐ。
なお、実用上十分な場合には、調光フィルム1は、車両20の後席のサイドウインドウ、リアウインドウだけでなく、前席のサイドウインドウや、ルーフウインドウ等に設けられるようにしてもよい。また、サイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24のうち一つ又は二つのウインドウに、調光フィルム1を設けてもよい。
車両20は、上述の各ウインドウ23A、23B、24に配置された調光フィルム1と、距離情報取得部31、記憶部32、比較部33、車速計測部34、高さ計測部35、調光フィルム1の駆動制御部36を有する車両用調光システム41が備えられている。
これら距離情報取得部31、記憶部32、比較部33、車速計測部34、高さ計測部35、調光フィルム1の駆動制御部36を有する車両用調光システム41は、本実施形態では、調光フィルムの制御プログラムとして情報処理装置(例えば、車両20に設けられる電子制御ユニット(ECU37))に実行されるように構成される。
ここで、ECU37は、車両に設けられる各種センサから出力される車速パルスや、距離情報や、高さ情報等の車両の各種信号や、操作パネルから出力される操作信号等を入力する入力回路部、演算処理部(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラムや上述の調光フィルムの制御プログラム、演算結果等を記憶する記憶回路部、車両20の駆動源(エンジン)等の各部を制御する制御信号や、調光フィルム1を制御する制御信号等を出力する出力回路部等を備えている。
なお、車両用調光システム41は、上記制御プログラムによる構成に限定されるものでなく、車両用調光システム41を構成する各部を、それぞれ処理回路により構成するようにしてもよい。
本実施形態の車両用調光システム41は、車両20と、その周囲に存在する他の車両との距離情報を距離情報取得部により取得し、その距離情報と、記憶部32に記憶された判定基準値とを比較部33により比較し、その比較結果に基づいて、車両20の各ウインドウ23A、23B、24の調光フィルム1の透過率を駆動制御部36により制御する。これにより、車両用調光システム41は、例えば、車両20の周囲の所定の距離範囲(判定基準値)内に他の車両が存在する場合に、調光フィルムの透過率を低減させて、他の車両から車内が覗かれてしまうのを防ぐことができる。
距離情報取得部31は、車両20の周囲に存在する他の車両と車両20との相対距離を検出し、検出した距離情報を比較部33に出力する。
ここで、車両20の周囲に存在する他の車両とは、具体的には、後続車両、並走車両をいう。後続車両は、車両20の後方を走行する車両であり、並走車両は、車両20と並んで同一方向に走行する車両であり、例えば、隣接する斜線の追い越し車両等である。
距離情報取得部31は、距離計測用の距離検出装置を複数備え、車両20と、その周囲に存在する他の車両(後続車両、並走車両)との相対距離を検出し、距離情報として比較部33に出力する。
ここで、本実施形態の距離情報取得部31に設けられた距離検出装置は、レーザ光による検出装置であり、レーザ光を照射して、後続車両等の他の車両からの反射光を受光することにより、車両20と他の車両との相対距離を検出する。なお、距離検出装置は、レーザ光による検出装置に限定されるものでなく、その他、公知の距離検出装置を適用してもよく、例えば、ミリ波による距離検出装置を適用することができる。
本実施形態の距離情報取得部31は、3台の距離検出装置が設けられており、後続車両との距離、車両20の運転席側の並走車両との距離、車両20の助手席側の並走車両との距離をそれぞれ検出している。
記憶部32は、判定基準値(詳細は後述する)を記憶した部分である。記憶部32は、例えば、半導体メモリ素子等の半導体記憶装置や、ハードディスク等の磁気記憶装置等を適用することができる。
記憶部32には、後続車両、並走車両のそれぞれに対して、複数の判定基準値が選択可能に記憶されている。
比較部33は、記憶部32に記憶された判定基準値と、距離情報取得部31で取得された距離情報とを比較し、比較結果を駆動制御部36に出力する部分である。
ここで、判定基準値とは、距離情報取得部31で取得した距離情報に基づいて、調光フィルム1の透過率を低下させて遮光状態にするか否かを判定するために用いられる基準値である。具体的には、比較部33は、距離情報取得部31で取得した距離情報が判定基準値以下である場合に、その結果を駆動制御部36に出力し、駆動制御部36が調光フィルム1を遮光状態に制御する。これにより、車両20の周囲に存在する他の車両が、判定基準値以下の距離に存在する場合に、車内が他の車両の搭乗者から覗かれてしまうのを防ぐことができる。
本実施形態では、上述のように、後続車両、並走車両のそれぞれについて、複数の判定基準値が記憶部32に保存されているので、車両20の搭乗者の要望に応じて、調光フィルム1が遮光状態に変化させる距離を、複数の判定基準値から選択することができる。
車両20には、例えば、インストルメントパネルにタッチパネルを備えた画像表示装置が設けられ、車両用調光システム41は、この画像表示装置にメニュー画面を表示してタッチパネルの操作により、それぞれ後続車両、並走車両について、事前に搭乗者により判定基準値の選択を受け付ける。
図4は、この判定基準値の選択を受け付ける選択画面を示す図である。図4(a)は、判定基準値の選択画面の一例であり、図4(b)は、判定基準値の選択画面の他の例である。
以下の説明では、メニュー画面において後続車両に対する判定基準値が選択された場合について説明するが、並走車両についても同様である。
選択画面には、図4(a)に示すように、最上段に搭乗者への操作を促すメッセージ「後続車両に対する判定基準値を設定します。メニューを選択して下さい」が表示される。また、中段には、記憶部32に記憶した対応する複数の判定基準値を選択する選択肢「遠」、「中」、「近」が表示され、最下段に、前画面(メニュー画面)に表示を戻す「戻る」のボタン、選択の完了を示す「完了」のボタンが表示される。ここで選択肢「遠」、「中」、「近」に対応する判定基準値は、例えば、50m、30m、10mである。
車両用調光システム41では、選択肢の選択により対応する選択肢の表示を切り換え(図4(a)の例では「中」の選択肢が選択された状態を示す)、「完了」のボタンの操作により対応する判定基準値の選択を受け付ける。
なお、この判定基準値の選択は、図4(b)に示すように、直接、選択可能な判定基準値(10m、20m、30m、40m、50m、60m)を表示して選択を受け付けるようにしてもよい。
また、判定基準値は、車両20の走行速度に応じて変化する値(例えば、安全車間距離)としてもよい。例えば、判定基準値は、(走行速度−15)mに設定することができる。この場合、車両20の走行速度が60km/hのとき、判定基準値は、45mとなり、走行速度が40km/hのとき、判定基準値は、25mとなる。
また、搭乗者により直接、数値入力を受け付けて決定されるようにしてもよい。
車速計測部34は、車輪の回転数に応じたパルス信号(いわゆる車速パルスであり、JIS D5601−1992に規定の電気信号である)のパルス数を時間計測することにより、車両20の走行速度を測定し、車速の情報として駆動制御部36に出力する。なお、車速の情報は、例えば、運転席のスピードメーターの機構より取得してもよく、また、カーナビゲーション装置から得られる現在位置の変化等により取得してもよく、種々の計測方法を広く適用することができる。
高さ計測部35は、距離情報取得部31で距離情報を取得する他の車両(後続車両、並走車両)のウインドウの高さを計測する部分である。
具体的には、高さ計測部35は、車両20に設けられた撮像装置により他の車両を撮影し、その撮影結果を画像処理することにより他の車両のウインドウの高さ(路面とウインドウの重心との距離)情報を計測し、高さ情報として駆動制御部36に出力する。
本実施形態の高さ計測部35には、3台の撮像装置が設けられており、1台が後続車両を撮影し、他の1台がサイドウインドウ23A側(運転席側)に並走する並走車両を撮影し、残りの1台がサイドウインドウ23B側(助手席側)に並走する並走車両を撮影する。高さ計測部35は、後続車両を撮影した場合、後続車両のフロントウインドウの高さ情報を計測し、並走車両を撮影した場合、並走車両のサイドウインドウの高さ情報を計測する。
なお、高さ情報は、ウインドウの重心位置に代えて、ウインドウの輪郭の上端縁又は下端縁から路面までの距離としてもよく、また、他の車両の全高としてもよい。ここで、全高とは、地面(車両20のタイヤが地面に接する位置)から、車両20の車体の最も高い部分(アンテナは除く)までの鉛直方向における距離をいう。
駆動制御部36は、サイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24に配置された調光フィルム1の各セグメントSG1〜SG4に個別に駆動用電源を出力する電源部を備え、この電源部を制御する演算処理部により構成される。
車両用調光システム41では、これらの調光フィルム1の透過率の制御に、複数の制御モードが選択可能に用意されており、駆動制御部36は、搭乗者の制御モードの選択により対応する制御モードにより各ウインドウの調光フィルム1の透過率を変化させる。
本実施形態の車両用調光システム41は、4種類の制御モード、すなわち、透光モード、遮光モード、透過率調整モード、プライバシーモードを有する。
(透光モード)
透光モードは、調光フィルム1の透過率を最も高い透光状態にするモードである。
駆動制御部36は、搭乗者によりサイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24のうち少なくとも一箇所が選択されて透光モードが選択されると、選択箇所に配置された調光フィルム1の全てのセグメントSG1〜SG4の透過率を最大値に変化させ、外光を最大限、車内に入射させることができる。
(遮光モード)
遮光モードは、調光フィルム1の透過率を最も低い遮光状態にするモードである。
駆動制御部36は、搭乗者によりサイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24のうち少なくとも一箇所が選択されて遮光モードが選択されると、選択箇所に配置された調光フィルム1の全てのセグメントSG1〜SG4の透過率を最小値に変化させ、これにより車内に入射する外光を遮光することができる。
(透過率調整モード)
透過率調整モードは、調光フィルム1の透過率を搭乗者の所望の透過率に変化させるモードである。
駆動制御部36は、搭乗者によりサイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24の少なくとも一箇所が選択されて透過率調整モードが選択されると、続いて搭乗者により透過率の指定を受け付け、選択箇所に配置された調光フィルム1の透過率を搭乗者により指定された透過率に変化させる。このとき、駆動制御部36は、搭乗者の設定に応じて、調光フィルム1の各セグメントSG1〜SG4の透過率を個別に変化させることもできる。
(プライバシー保護モード)
プライバシー保護モードは、車両20の周囲に存在する他の車両と車両20との距離に応じて、調光フィルム1を遮光状態に変化させるモードである。
駆動制御部36は、搭乗者によりサイドウインドウ23A、23B、リアウインドウ24のうち少なくとも一箇所が選択されてプライバシー保護モードが選択されると、選択箇所に配置された調光フィルム1の透過率を他の車両との距離情報に基づいて、対応する調光フィルム1の透過率を変化させる。
より具体的には、駆動制御部36は、距離情報取得部31から距離情報を入力した比較部33の比較結果に基づいて、距離情報が判定基準値以下である場合、調光フィルム1の透過率を低減して遮光状態にする。一方、距離情報が判定基準値よりも大きい場合、駆動制御部36は、調光フィルム1の透過率を現状の状態に維持する。
これにより、車両用調光システム41は、例えば、リアウインドウ24が選択されている場合に、後続車両が、判定基準値よりも接近したときに、リアウインドウ24の調光フィルム1を制御して遮光状態に変化させ、後続車両の搭乗者により車内が覗かれてしまうのを抑制することができる。
また、同様に、サイドウインドウ23A及び又は23Bが選択されている場合は、並走車両が、判定基準値よりも接近したときに、サイドウインドウ23A及び又は23Bの調光フィルム1を制御して遮光状態に変化させ、並走車両の搭乗者により車内が覗かれてしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態の車両用調光システム41は、上述したように高さ計測部35を有しており、プライバシー保護モードにおいて他の車両が判定基準値以下に存在する場合に、この高さ計測部35により他の車両のウインドウの高さ情報を取得し、その高さ情報に応じて調光フィルム1の透過率を局所的に変化させることができる。
具体的には、駆動制御部36は、高さ計測部35に取得された高さ情報と、距離情報取得部31により取得された距離情報と、車両20のウインドウの高さ情報とに基づいて、調光フィルム1の透過率を変化させるセグメントSG1〜SG4を選択し、選択したセグメントについてのみ透過率を変化させる。
なお、車両20の各ウインドウの高さ情報(例えば、ウインドウの重心)は、記憶部32に予め記憶されている。
例えば、リアウインドウ24の調光フィルム1にプライバシー保護モードが設定されており、後続車両がトラックのような車高の高い車両の場合、駆動制御部36は、高さ計測部35によりトラックの高さ情報を取得し、トラックとの距離情報と、車両20のリアウインドウ24の高さ情報とに基づいて、リアウインドウ24に対するトラックの搭乗者の視線の入射角度を演算し、その入射角度に基づいて、遮光状態に変化させる調光フィルムのセグメントを選択する。
後続車両であるトラックは、車両20よりも車高の高い車両であるので、フロントウインドウの位置も車両20よりも高い位置となる。そのため、トラックの搭乗者の視線は、車両20のリアウインドウを見下ろすような形態となるので、駆動制御部36は、例えば、その視線を遮るためにリアウインドウ24の上端側に位置するセグメントSG1、SG2を遮光状態にし、他のセグメントSG3、SG4は現状の透過率を維持する。
また、例えば、後続車両が車高の低いスポーツカーの場合、フロントウインドウの位置は、車両20よりも低い位置となる。そのため、スポーツカーの搭乗者の視線は、車両20のリアウインドウを見上げるような形態となるので、駆動制御部36は、例えば、その視線を遮るためにはリアウインドウ24の下端側に位置するセグメントSG3、SG4を遮光状態にし、他のセグメントSG1、SG2は現状の透過率を維持する。
このように、調光フィルム1を局所的に遮光状態にすることによって、後続車両から車内が覗かれてしまうのを防ぐとともに、遮光状態にしていないセグメントから外光を車内に取り入れることができる。
なお、車両20と後続車両との車間距離の変化に応じて、後続車両の搭乗者の視線の角度が変化するので、駆動制御部36は、その変化に応じて、遮光状態にするセグメントを変化させるようにしてもよい。
上述の説明では、後続車両に対するリアウインドウ24の調光フィルム1の透過率の制御について説明したが、並走車両に対する各サイドウインドウ23A、23Bの調光フィルム1の透過率の制御についても同様である。
また、駆動制御部36は、車速計測部34から出力される車速情報がゼロである場合に、プライバシー保護モードが選択された調光フィルム1の全てのセグメントSG1〜SG4の透過率を最小値に変化、すなわち遮光状態にするようにしてもよい。
これにより、車両用調光システム41は、信号による一時停止等において、歩行者等により車内が覗かれてしまうのを防ぐことできる。
なお、この場合も、歩行者の有無を検出して調光フィルムを遮光状態に変化させるようにしてもよい。ここで、歩行者の有無は、高さ計測部35に設けられた撮像装置の撮像結果を画像処理して検出する等、種々の公知の手法を広く適用することができる。
図5は、実施形態の車両用調光システムのプライバシー保護モードにおける処理手順を示すフローチャートである。
上述した各部31〜36の構成により車両用調光システム41は、図5に示す処理手順(SP1〜SP5)を繰り返してプライバシー保護モードにより調光フィルム1を制御する。
車両20に設けられた車両用調光システム41は、距離情報取得部31により距離情報を取得して(SP1)、比較部33により距離情報が判定基準値以下であるか否かを判定する(SP2)。
比較部33により距離情報が判定基準値よりも大きいと判定された場合(SP2、No)、車両用調光システム41は、再び距離情報の取得を行う(SP1)。
比較部33により距離情報が判定基準値以下であると判定された場合(SP2、Yes)、車両用調光システム41は、高さ計測部35により高さ情報を取得する(SP3)。
続いて、車両用調光システム41は、高さ計測部35による高さ情報と、距離情報と、車両20の高さ情報とに基づいて、遮光状態に変更する調光フィルムのセグメントを選択する(SP4)。そして、駆動制御部36により選択したセグメントの駆動電圧を制御して、遮光状態に変化させる(SP5)。
以上より、本実施形態の車両用調光システム41は、以下のような効果を奏する。
(1)本実施形態の車両20及び車両用調光システム41は、車両20の周囲に存在する他の車両と車両20との距離情報を取得する距離情報取得部31と、距離情報に基づいて、調光フィルム1の透過率を変化させる駆動制御部36とを備える。これにより、後続車両や、並走車両等の他の車両の接近に応じて、調光フィルムの透過率を低減して、他の車両から車内が覗かれてしまうのを抑制することができるとともに、他の車両が周囲に存在しない場合等において、不必要に外光の車内への入射が制限されてしまうのを抑制することができる。
(2)本実施形態の車両20及び車両用調光システム41は、距離情報の判定基準値を記憶する記憶部32と、判定基準値と距離情報取得部31で取得した距離情報とを比較する比較部33とを備え、駆動制御部36が、比較部33の比較結果に基づいて、距離情報取得部31で取得した距離情報が、判定基準値以下の場合、調光フィルム1の透過率を低減する。これにより、他の車両が車両20に対して判定基準値以下に近づいた場合に、他の車両から車内が覗かれてしまうのを防ぐことができる。
(3)本実施形態の車両20及び車両用調光システム41は、他の車両の高さを計測する高さ計測部35を備え、駆動制御部36が、高さ計測部35の計測結果に基づいて、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させる。これにより、他の車両の高さに応じて変化する他の車両の搭乗者の視線に応じて、車内が覗かれてしまう部位の調光フィルムの透過率を、局所的に低減させることができ、不必要に外光の入射を制限することなく、他の車両からの覗き見を防ぐことができる。
(4)本実施形態の車両20及び車両用調光システム41は、調光フィルム1が、複数のセグメントに分割されており、駆動制御部36が、複数のセグメントの透過率を個別に制御するので、より具体的に、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させることができる。
(5)本実施形態の調光フィルム1の制御方法は、車両20の周囲に存在する他の車両と車両20との距離情報を取得する距離情報取得ステップ(SP1)と、距離情報に基づいて、調光フィルム1の透過率を変化させる駆動ステップ(SP5)とを備える。これにより、後続車両や、並走車両等の他の車両の接近に応じて、調光フィルムの透過率を低減して、他の車両から車内が覗かれてしまうのを抑制することができるとともに、他の車両が周囲に存在しない場合等において、不必要に外光の車内への入射が制限されてしまうのを抑制することができる。
(6)本実施形態の調光フィルム1の制御プログラムは、情報処理装置37によって実行される処理手順が、車両20の周囲に存在する他の車両と車両20との距離情報を取得する距離情報取得ステップ(SP1)と、距離情報に基づいて、調光フィルム1の透過率を変化させる駆動ステップ(SP5)とを備える。これにより、後続車両や、並走車両等の他の車両の接近に応じて、調光フィルムの透過率を低減して、他の車両から車内が覗かれてしまうのを抑制することができるとともに、他の車両が周囲に存在しない場合等において、不必要に外光の車内への入射が制限されてしまうのを抑制することができる。
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
上述の実施形態では、車両用調光システム41は、車両20の周囲に存在する他の車両として後続車両及び並走車両を、プライバシー保護モードの調光フィルム1の制御対象にした例を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、車両20の周囲に存在する他の車両として、後続車両及び並走車両に加え、対向車両についても制御対象に含めるようにしてもよい。ここで、対向車両とは、車両20の進行方向から向って来る車両であり、例えば、対向車線を走行している車両をいう。
また、上述の実施形態では、車両用調光システム41は、他の車両の高さ情報に応じて、遮光状態にする調光フィルム1のセグメントを選択する例を示したが、これに限定されるものでなく、他の車両の高さ情報に関係なく、調光フィルム1の全面(全てのセグメント)を遮光状態に変化させるようにしてもよい。
上述の実施形態では、車両用調光システム41は、判定基準値内に他の車両が存在する場合に調光フィルムの透過率を下限値となる遮光状態に制御する例で説明したが、これに限定されるものでなく、調光フィルム1の透過率を、他の車両から覗かれない程度の透過率に制御するようにしてもよい。また、調光フィルム1のセグメント毎に異なる透過率に制御するようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、調光フィルム1は、マルチセグメントにより構成される例を示したが、調光フィルム1の透明電極11及び16を共に基材の全面に作成して調光フィルム1の全面の透過率を均一に変化させる、いわゆるシングルセグメントにより構成されるようにしてもよい。
上述の実施形態では、車両用調光システム41は、車両として乗用車に設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、乗用車以外の各種車両(バス、トラック等)等に設けられるようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、調光部材として可撓性を有する調光フィルム1が適用される例で説明したが、これに限定されるものでない。例えば、上述の調光フィルム1の基材を板状のガラスにして可撓性を有さない調光部材を適用するようにしてもよい。
1 調光フィルム
2、3 直線偏光板
2A、3A 位相差フィルム
4 液晶セル
5U 上側積層体
5D 下側積層体
6、15 基材
8 液晶層
11、16 透明電極
12 スペーサ
13、17 配向層
19 シール材
20 車両
23A、23B サイドウインドウ
24 リアウインドウ
31 距離情報取得部
32 記憶部
33 比較部
34 車速計測部
35 高さ計測部
36 駆動制御部
37 ECU
41 車両用調光システム
SG1〜SG4 セグメント

Claims (8)

  1. 外光が入射する部位に調光部材が配置された車両に設けられる車両用調光システムであって、
    前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得部と、
    前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動制御部と、
    前記距離情報の判定基準値を記憶する記憶部と、
    前記判定基準値と前記距離情報取得部で取得した距離情報とを比較する比較部とを備え、
    前記駆動制御部は、
    前記比較部の比較結果に基づいて、
    前記距離情報取得部で取得した距離情報が、前記判定基準値以下の場合、前記調光部材の透過率を低減して遮光状態にすること、
    を特徴とする車両用調光システム。
  2. 前記他の車両の高さを計測する高さ計測部を備え、
    前記駆動制御部は、
    前記高さ計測部の計測結果に基づいて、前記調光部材の透過率を局所的に変化させること、
    を特徴とする請求項1に記載の車両用調光システム。
  3. 前記外光が入射する部位は、前記車両のリアウインドウであり、
    前記距離情報取得部は、前記車両の後続車両との距離情報を取得すること、
    を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用調光システム。
  4. 前記外光が入射する部位は、前記車両のサイドウインドウであり、
    前記距離情報取得部は、前記車両の並走車両との距離情報を取得すること、
    を特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の車両用調光システム。
  5. 前記調光部材は、複数のセグメントに分割されており、
    前記駆動制御部は、複数の前記セグメントの透過率を個別に制御すること、
    を特徴とする請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の車両用調光システム。
  6. 車両の外光が入射する部位に配置された調光部材の透過率を制御する調光部材の制御方法であって、
    前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
    前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動ステップと、
    記憶部に記憶された前記距離情報の判定基準値と前記距離情報取得ステップで取得した距離情報とを比較する比較ステップとを備え、
    前記駆動制御ステップは、
    前記比較ステップの比較結果に基づいて、
    前記距離情報取得ステップで取得した距離情報が、前記判定基準値以下の場合、前記調光部材の透過率を低減して遮光状態にすること、
    を特徴とする調光部材の制御方法。
  7. 情報処理装置による実行により、前記情報処理装置に所定の処理手順を実行させて、車両の外光が入射する部位に配置された調光部材の透過率を制御する調光部材の制御プログラムであって、
    前記処理手順が、
    前記車両の周囲に存在する他の車両と前記車両との距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
    前記距離情報に基づいて、前記調光部材の透過率を変化させる駆動ステップと、
    記憶部に記憶された前記距離情報の判定基準値と前記距離情報取得ステップで取得した距離情報とを比較する比較ステップとを備え、
    前記駆動制御ステップは、
    前記比較ステップの比較結果に基づいて、
    前記距離情報取得ステップで取得した距離情報が、前記判定基準値以下の場合、前記調光部材の透過率を低減して遮光状態にすること、
    を特徴とする調光部材の制御プログラム。
  8. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体用調光システムを備える
    ことを特徴とする車両。
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