JP6911487B2 - 移動体用調光システム、移動体、調光フィルムの制御方法、調光フィルムの制御プログラム - Google Patents

移動体用調光システム、移動体、調光フィルムの制御方法、調光フィルムの制御プログラム Download PDF

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Description

本発明は、移動体用調光システム、移動体、調光フィルムの制御方法、調光フィルムの制御プログラムに関する。
従来、例えば窓に貼り付けて外来光の透過を制御する調光フィルムに関する工夫が種々提案されている(特許文献1、2)。このような調光フィルムの1つに、液晶を利用したものがある。このような液晶を利用した調光フィルムは、透明電極を備えた透明フィルム材により液晶材料を挟持して液晶セルを製造し、その液晶セルを直線偏光板により挟持する。
この調光フィルムでは、液晶に印加する電界を変更して液晶の配向を変更することにより外来光の透過を制御する。
特許文献3には、このような調光フィルムの車両などの移動体での使用に関して、車内への入射光量に応じて透過率を可変する構成が開示されている。
またこのような調光フィルムの使用が予定される窓に関して、特許文献4には、時間情報により遮蔽版を可動して人が存在する箇所に影を形成する構成が開示されている。
特開平03−47392号公報 特開平08−184273号公報 特開2008−222045号公報 特開平7−11854号公報
例えば特許文献3に開示の構成を適用して、このような調光フィルムを車両のルーフウインドウに配置し、車内に導く外光の光量を種々に可変することが考えられる。しかしながらこのように構成して十分に外光を取り入れる場合、搭乗者が直射日光に晒され、眩しさや暑さを感じる問題がある。この問題を解決する方法として、調光フィルムの透過率を低減して入射光量を低減することも考えられるものの、この場合は十分に外光を取り入れることが困難になり、車内が暗く感じられたり、ドライブの楽しさが損なわれたりする。
本発明は、移動体内に十分に外光を取り入れつつ、搭乗者が直射日光に晒されないようにすることを目的とする。
具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 外光が入射する部位に調光フィルムが配置された移動体に設けられる移動体用調光システムであって、
前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得部と、
前記外光情報取得部により取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算部と、
前記入射方向演算部で演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御部と、
を備える移動体用調光システム。
(2)(1)において、
前記移動体内における搭乗者の位置の情報である搭乗者位置情報を取得する搭乗者位置情報取得部を備え、
前記駆動制御部は、
前記搭乗者位置情報に基づいて、前記搭乗者が搭乗している箇所に対応する部分の前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる
移動体用調光システム。
(3)(1)又は(2)において、
前記外光情報取得部は、
前記移動体の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
現在の日付及び時刻の日時情報を取得する日時情報取得部と、
前記移動体の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報を取得する姿勢情報取得部とを有し、
前記入射方向演算部は、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算すること、
を特徴とする移動体用調光システム。
(4)(3)において、
前記姿勢情報は、
前記移動体の傾斜の情報を備え、
前記駆動制御部は、
前記傾斜の情報に基づいて、前記移動体の傾斜によって変化する外光の入射方向の変化に応じて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる
移動体用調光システム。
(5) (1)から(4)までのいずれかにおいて、
前記調光フィルムは、複数のセグメントに分割されており、
前記駆動制御部は、複数の前記セグメントの透過率を個別に制御する
移動体用調光システム。
(6) (1)から(5)までのいずれかの移動体用調光システムを備える移動体。
(7) 移動体の外光が入射する部位に配置された調光フィルムの制御方法であって、
前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得ステップと、
前記外光情報取得ステップにより取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算ステップと、
前記入射方向演算ステップで演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御ステップとを備える
調光フィルムの制御方法。
(8) 情報処理装置による実行により、前記情報処理装置に所定の処理手順を実行させて、移動体の外光が入射する部位に配置された調光フィルムを制御する調光フィルムの制御プログラムであって、
前記処理手順が、
前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得ステップと、
前記外光情報取得ステップにより取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算ステップと、
前記入射方向演算ステップで演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御ステップとを備える
調光フィルムの制御プログラム。
本発明によれば、移動体内に十分に外光を取り入れつつ、搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
第1実施形態の調光システムに用いられる調光フィルムの構成を説明する断面図である。 第1実施形態の調光システムを有する車両を説明する図である。 調光フィルムの透明電極の形態を説明する図である。 第1実施形態の調光システムの処理手順を示すフローチャートである。 第2実施形態の調光システムを有する車両を説明する図である。 車両20に設けられる光センサ29を説明する図である。
〔第1実施形態〕
〔調光フィルム〕
図1は、第1実施形態の調光システムに用いられる調光フィルムの構成を説明する断面図である。
調光フィルム1は、液晶を利用して透過光を制御するフィルム状の部材であり、直線偏光板2、3により調光フィルム用の液晶セル4を挟持して構成される。
〔直線偏光板〕
直線偏光板2、3は、偏光子を含むものであれば特に限定されるものではなく、偏光子の片側又は両側に偏光板保護フィルムを有するものであってもよい。
偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)のような親水性ポリマーからなるフィルムを二色性色素であるヨウ素を含有する水溶液に浸漬させて延伸することによりポリビニルアルコールとヨウ素との錯体を形成させた偏光子や、ポリ塩化ビニルのようなプラスチックフィルムを処理してポリエンを配向させたものからなる偏光子等を挙げることができる。
また、ヨウ素の代わり二色性色素として二色性染料を用いる場合は、二色性染料として、アゾ系染料、スチルベン系染料、メチン系染料、シアニン系染料、ピラゾロン系染料、トリフェニルメタン系染料、キノリン系染料、オキサジン系染料、チアジン系染料、アントラキノン系染料等が用いられる。
上述の偏光板保護フィルムは、上述の偏光子を保護することができ、且つ、所望の透明性を有するものであれば特に限定されるものではない。偏光板保護フィルムの材料としては、例えば、アセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等あるいは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型、又は紫外線硬化型の樹脂等を挙げることができる。中でも、上述の樹脂材料としてアセチルセルロース系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、又はアクリル系樹脂を用いることが好ましい。その中でも特に、アセチルセルロース系樹脂であるトリアセチルセルロース(TAC)が好適である。
直線偏光板2、3は、クロスニコル配置により、アクリル系透明粘着樹脂等による接着剤層により液晶セル4に配置される。なお、直線偏光板2、3には、それぞれ液晶セル4側に光学補償のための位相差フィルム2A、3Aが設けられるが、位相差フィルム2A、3Aは、必要に応じて省略してもよい。またクロスニコル配置に代えてパラレルニコル配置により配置してもよい。
なお、直線偏光板2、3には、垂直方向に光学異方性を発現する二色性有機色素から構成される塗工膜により形成されるE型の直線偏光板を適用してもよい。これにより、調光フィルム1の総厚みをより薄くすることができる。
この場合、各直線偏光板は、後述の液晶セル4を構成する上側積層体5Uの基材15の液晶層8側と、下側積層体5Dの基材6の液晶層8側とに液晶層8を挟持するようにして配置されるのが望ましい。後述するように、基材6、15は、光学異方性が小さいことが望まれるが、E型の直線偏光板を上述のように配置することによって、基材において透過光が種々に偏光したとしても、液晶層の透過光には何ら影響を与えないようにすることができるため、基材6、15に汎用性の高い透明樹脂フィルム、例えば、PETフィルム等を使用することが可能となる。
〔液晶セル〕
液晶セル4は、フィルム状の下側積層体5D及び上側積層体5Uにより液晶層8を挟持して構成される。
〔下側積層体、上側積層体〕
下側積層体5Dは、基材6に、透明電極11、配向層13及びスペーサ12を積層して形成される。
上側積層体5Uは、基材15に、透明電極16、配向層17及びスペーサ12を積層して形成される。
〔基材〕
基材6、15は、種々の透明樹脂フィルムを適用することができるが、光学異方性が小さく、また、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である透明樹脂フィルムを適用することが望ましい。
透明樹脂フィルムの材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセチルセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリメチルペンテン、EVA等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリサルホン(PEF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテル(PE)、ポリエーテルケトン(PEK)、(メタ)アクロニトリル、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー等の樹脂を挙げることができる。
特に、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂が好ましい。
本実施形態において、基材6、15は、厚み100μmのポリカーボネートフィルムが適用されるが、種々の厚みの透明樹脂フィルムを適用することができる。
〔透明電極〕
透明電極11、16は、上記透明樹脂フィルムと透明樹脂フィルムに積層される透明導電膜から構成されている。
透明導電膜としては、この種の透明樹脂フィルムに適用される各種の透明電極材料を適用することができ、酸化物系の全光透過率が50%以上の透明な金属薄膜を挙げることができる。例えば、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系が挙げられる。
酸化錫(SnO2)系としてはネサ(酸化錫SnO2)、ATO(Antimony Tin Oxide:アンチモンドープ酸化錫)、フッ素ドープ酸化錫が挙げられる。
酸化インジウム(In2O3)系としては、酸化インジウム、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)、IZO(Indium Zinc Oxide)が挙げられる。
酸化亜鉛(ZnO)系としては、酸化亜鉛、AZO(アルミドープ酸化亜鉛)、ガリウムドープ酸化亜鉛が挙げられる。
本実施形態では、ITO(Indium Tin Oxide)により透明導電膜が形成される。
なお、本実施形態の透明電極11、16の具体的構成については後に詳述する。
〔スペーサ〕
スペーサ12は、液晶層8の厚みを規定するために設けられ、各種の樹脂材料を広く適用することができる。ここで、スペーサ12には、主に球状スペーサ(以下、「ビーズスペーサ」と呼ぶ)と柱状スペーサ(以下、「フォトスペーサ」と呼ぶ)の2種類が存在する。
ここで、調光フィルム1は、基材上に配向層を形成後に、感光性樹脂を塗布して、露光、現像するというフォトリソグラフィー法を用いてフォトスペーサを形成することが考えられるが、この場合、露光や現像工程によって配向層へダメージを与え、配向不良が生じる原因となるため好ましくない。また、基材上にフォトスペーサを先に作製した後に、配向層を塗布することも考えられるが、この場合、フォトスペーサの周囲の配向層には十分な配向規制力を与えることができず、配向不良が生じる原因となるため好ましくない。よって、フォトスペーサにより製造した調光フィルムは、配向不良により所望の透過率に精度よく制御できなくなる場合がある。
これに対して、ビーズスペーサは、配向層を形成した後に、その配向層上に散布され、また、配向層との接触面積が狭いため、上述のような配向層がダメージを受けたり、配向不良が生じたりするような問題が生じるのを低減することができる。
よって、スペーサ12としてビーズスペーサを適用することにより、作製した調光フィルム1の透過率を、フォトスペーサを用いた場合に比して、より精密に細かく透過率を変化させることができる。
ここで、本実施形態の調光フィルム1は、車両20に配置されるため、必要に応じて透過率に精度よく制御する必要がある。そのため、本実施形態では、スペーサ12にビーズスペーサを適用する。
ここで、スペーサ12に用いられるビーズスペーサは、液晶表示装置やカラーフィルタ等に用いられる公知のビーズを適用することができる。具体的には、無機系成分ではガラス、シリカ、金属酸化物(MgO、Al2O3)等、有機系成分としてはアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリルエステル共重合体、ジアクリルフタレート共重合体、アリルイソシアヌレート共重合体等の材料系の懸濁重合や乳化重合、乳化重合で得られたコア粒子を用いるシード重合法等の重合法によって得られた球状、円柱体、円筒状等の粒状体や、多孔質体、中空体等を使用することができる。
また、配向層上におけるビーズスペーサ12の分散性や、密着性を向上させる観点から、ビーズスペーサの表面に表面処理を行うようにしてもよい。表面の被覆材料としては、ビーズ表面への固定化や、液晶材料中への化学物質の流出が問題とならなければ、とくに限定されるものではないが、例えば、ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、ポリメチル(メタ)アクリレート重合体、SBS型スチレン/ブタジエンブロック共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などを用いることができる。
なお、上述の説明では、スペーサ12は、上側積層体5U及び下側積層体5Dの両方に設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、上側積層体5U及び下側積層体5Dのいずれか一方に設けられるようにしてもよい。
〔配向層〕
配向層13、17は、光配向層により形成される。光配向層に適用可能な光配向材料は、光配向の手法を適用可能な各種の材料を広く適用することができ、例えば、光分解型、光二量化型、光異性化型等を挙げることができる。
本実施形態では、光二量化型の材料を使用する。光二量化型の材料としては、例えば、シンナメート、クマリン、ベンジリデンフタルイミジン、ベンジリデンアセトフェノン、ジフェニルアセチレン、スチルバゾール、ウラシル、キノリノン、マレインイミド、又は、シンナミリデン酢酸誘導体を有するポリマー等を挙げることができる。中でも、配向規制力が良好である点で、シンナメート、クマリンの一方又は両方を有するポリマーが好ましく用いられる。このような光二量化型の材料の具体例としては、例えば特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報及びWO2010/150748号公報に記載された化合物を挙げることができる。
なお、光配向層に代えてラビング処理により配向層を作製してもよく、微細なライン状凹凸形状を賦型処理して配向層を作製してもよい。
〔液晶層〕
液晶層8は、この種の調光フィルム1に適用可能な各種の液晶材料を広く適用することができる。具体的に、液晶層8には、重合性官能基を有していない液晶化合物として、ネマチック液晶化合物、スメクチック液晶化合物及びコレステリック液晶化合物を適用することができる。
ネマチック液晶化合物としては、例えば、ビフェニル系化合物、ターフェニル系化合物、フェニルシクロヘキシル系化合物、ビフェニルシクロヘキシル系化合物、フェニルビシクロヘキシル系化合物、トリフルオロ系化合物、安息香酸フェニル系化合物、シクロヘキシル安息香酸フェニル系化合物、フェニル安息香酸フェニル系化合物、ビシクロヘキシルカルボン酸フェニル系化合物、アゾメチン系化合物、アゾ系化合物、およびアゾオキシ系化合物、スチルベン系化合物、トラン系化合物、エステル系化合物、ビシクロヘキシル系化合物、フェニルピリミジン系化合物、ビフェニルピリミジン系化合物、ピリミジン系化合物、およびビフェニルエチン系化合物等を挙げることができる。
スメクチック液晶化合物としては、例えば、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリクロロアクリレート系、ポリオキシラン系、ポリシロキサン系、ポリエステル系等の強誘電性高分子液晶化合物を挙げることができる。
コレステリック液晶化合物としては、例えば、コレステリルリノレート、コレステリルオレエート、セルロース、セルロース誘導体、ポリペプチド等を挙げることができる。
液晶セル4は、液晶層8を囲むように、シール材19が配置されている。シール材19により上側積層体5U、下側積層体5Dが一体に保持され、液晶材料の漏出が防止される。シール材19は、例えばエポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等を適用することができる。
調光フィルム1は、透明電極11、16に、所定周期で極性が切り替わる交流電圧が印加され、この交流電圧により液晶層8に電界が形成される。また、この電界により液晶層8に設けられた液晶分子の配向が制御され、透過光が制御される。
実施形態の調光フィルム1における液晶層8の配向制御には、VA方式(Virtical Alignment、垂直配向型)が適用される。VA方式は、基板上に形成した透明電極の上に垂直方向に配向規制力を有する配向膜を設け、上下基板で液晶層8を挟む構成である。
VA方式は、無電界時、液晶層8の液晶分子は垂直配向し、これにより調光フィルム1は、入射光を遮光して遮光状態となり、また、この電界の印加により、液晶層8の液晶が水平配向し、調光フィルム1は、入射光を透過して透過状態となる。
このVA方式のように、無電界時に遮光状態となり、電界印加時に透過状態となるような光の制御モードをノーマリーブラックモードという。
しかし、VA方式に代えて、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In Plane Switching)方式、GH(Guest Host)方式等、種々の駆動方式を適用してよい。
ここで、TN方式は、基板上に形成した透明電極の上に、配向方向が90°異なるようなラビング処理等を行った配向膜を付け、上下基板で液晶層8を挟む構成である。配向膜の配向規制力により液晶分子は配向膜の配向方向に沿って並び、その液晶分子に沿って他の液晶分子が配向するため、液晶分子の方向が90°捩じれる形で配向する。そして上下基板の外側に、配向膜の配向方向と平行に偏光板を配置する。
TN方式は、無電界時、偏光板を通過した光は直線偏光となり液晶に入る。液晶分子は90°捩じれて配向されているので、入射した光も90°捩じれて通過するため、下の偏光板を通過できる。これにより調光フィルム1は、入射光を透過して透過状態となる。
また、この電界の印加により液晶分子が直立して捩じれがとれるが、配向膜表面では配向規制力の方が強いため、液晶分子の配向方向は配向膜に沿ったままである。このような状態では、液晶分子は通過する光に対しては等方的であるため、液晶層8に入射された直線偏光の偏光方向の回転は生じない。従って、上の偏光板を通過した直線偏光は下の偏光板を通過できず、調光フィルム1は、入射光を遮光して遮光状態となる。
このTN方式のように、無電界時に透過状態となり、電界印加時に遮光状態となるような光の制御モードをノーマリーホワイトモードという。
また、IPS方式は、一方の基材に電極をまとめて作成し、この電極による電界により配向させた液晶分子を基板に対して横(水平)方向に回転させることにより透過光量を制御する方式である。
更に、GH方式は、ホストであるネマチック液晶中にゲストとして二色性色素を溶解させた液晶組成物を用いる方式である。二色性色素は、1軸の光吸収軸を有し、光吸収軸方向に振動する光のみを吸収することから、電場による液晶の動きに合わせて、二色性色素の配向を変化させ、光吸収軸の向きを制御することにより、液晶セルの透過状態を変化させることができる。
GH方式に使用される液晶組成物は、電界印加時における液晶分子の長軸方向の相違により、ポジ型とネガ型とに大別される。
ポジ型のネマチック液晶は、誘電率が長軸方向に大きく長軸に垂直な方向に小さい誘電率異方性が正の液晶であり、無電界時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となり、電界印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となるものである。
一方、ネガ型のネマチック液晶は、誘電率が長軸方向に小さく長軸に垂直な方向に大きい誘電率異方性が負の液晶であり、無電界時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して平行となり、電界印加時には液晶分子の長軸方向が光軸に対して垂直となるものである。
ここで、二色性色素分子は液晶分子と同じ方向に配向するため、ポジ型のネマチック液晶をホストとして用いた場合には、無電界時には遮光状態となり、電界印加時には透過状態となる(ノーマリーブラックモード)。
一方、ネガ型のネマチック液晶をホストとして用いた場合には、逆に、無電界時には透過状態となり、電界印加時には遮光状態となる(ノーマリーホワイトモード)。
GH方式に用いられる二色性色素としては、液晶に対して溶解性があり、二色性の高い色素、好ましくはオーダーパラメーター(S値)が0.7以上の色素が挙げられ、例えば、アゾ系、アントラキノン系、キノフタロン系、ペリレン系、インジゴ系、チオインジゴ系、メロシアニン系、スチリル系、アゾメチン系、テトラジン系等の二色性色素が挙げられる。
なお、調光フィルム1がGH方式により製造される場合は、直線偏光板は省略することができる。
また、液晶セル4は、光配向層のパターンニング等によりいわゆるマルチドメイン方式により液晶材料を駆動してもよく、さらにはシングルドメインにより駆動してもよい。
更に、調光フィルム1は、上述の液晶による調光フィルムの他、透過光量を調整可能な各種調光フィルムを使用する場合に広く適用することができる。
〔マルチセグメント〕
図2は、第1実施形態の調光システム22を有する車両20を説明する図である。図2の車両20は、鉛直上方から見た概略図である。
本実施形態の調光フィルム1は、移動体として車両(乗用車)20の天井(ルーフウインドウ21)のほぼ全面に配置されている。この調光フィルム1は、透明電極11及び又は透明電極16が、それぞれ個別に駆動電源を供給可能な絶縁された複数の部分電極(領域)に分割して作製される。これにより調光フィルム1は、図2に示すように、独立して個別に透過率を変更することができる複数の領域(以下、適宜、各領域をセグメントと呼ぶ)SG1〜SG10を備えたマルチセグメントにより形成される。
なお、車両20のルーフウインドウ21の面内に複数の調光フィルムを敷き詰めて、各調光フィルムを上述のセグメントに対応させることも可能であるが、この場合、隣り合う調光フィルム間の繋ぎ目(境界)が目立ってしまう場合があり、外観を損ねてしまう可能性がある。
これに対して、本実施形態の調光フィルム1は、1枚のフィルム状から構成されており、調光フィルム1を構成する透明電極のみが上述のように複数の領域(部分電極)に分割されている。そのため、調光フィルム1の各セグメント間の境界が目立ってしまうのを極力抑制することができるとともに、ルーフウインドウ21に調光フィルム1を配置する作業効率も向上させることができる。
ここで、複数のセグメントを有する本実施形態の調光フィルム1の電極の形態について説明する。
図3は、調光フィルムの透明電極の形態を説明する図である。なお、図3においては、説明を明確にするために、調光フィルム1を構成する透明電極以外の構成の図示を省略している。
調光フィルム1の透明電極11、16は、例えば、以下のように分割される。
図3(a)に示すように、調光フィルム1に設けられる透明電極16を、長辺に沿った方向(車両20の進行方向)に5分割すると共に、短辺に沿った方向(車両20の進行方向に直交する幅方向)に2分割することにより、透明電極16は、複数の部分電極16A〜16Jに10分割された状態で基材15上に形成される。また、透明電極16に対向する透明電極11は、分割されることなく基材6上の全面に形成される。これにより、セグメントSG1〜SG10を有するマルチセグメントの調光フィルム1が形成される。
なお、上記説明では透明電極16が10分割される例を示したが、これに限定されるものでなく、透明電極11が10分割され、透明電極16が基材15上の全面に形成されるようにしてもよい。
また、図3(b)に示すように、透明電極11及び透明電極16を、図3(a)の透明電極16と同様に分割するようにしてもよい。具体的には、透明電極16を複数の部分電極16A〜16Jにより形成し、透明電極16に対応するようにして透明電極11を分割、すなわち、透明電極11を複数の部分電極11A〜11Jにより形成することによって、セグメントSG1〜SG10を有するマルチセグメントの調光フィルム1が形成される。
このような透明電極11、16の分割は、透明電極のパターニングにより作製することができる。
なお、透明電極11、16のパターニングによる分割は、対向する透明電極11、16において、それぞれの分割数を異ならせてもよい。
また、上述の図3(a)及び図3(b)に示す例において、透明電極11、16のパターニングは、矩形状に分割される例を示したが、これに限定されるものでなく、例えば、六角形形状、台形形状、平行四辺形形状、三角形形状等、種々の形状により分割されるようにしてもよい。
例えば、図3(c)は、透明電極16を複数の三角形形状の部分電極によりパターニングされる。このように三角形形状の部分電極によりパターニングしてセグメントを形成する場合、例えば、図3(c)中にハッチングにより示すように、遮光状態に設定する領域を、菱形形状に近い形状とすることができる。これにより、より効率よく、後述する搭乗者の頭部への太陽光等の外光の入射を抑制することができる。
〔車両〕
本実施形態の車両20は、6人乗りの乗用車であり、車内には、図2に示すように、座席S1〜S6が設けられている。なお、座席S1は運転席であり、座席S1の搭乗者M1が、車両20の運転手となる。
車両20では、太陽光Lが主に車内に入射する部位となるルーフウインドウ21に上述の調光フィルム1が貼り付けられており、この調光フィルム1によって必要に応じて太陽光Lを車内に取り入れるとともに、車内に入射する太陽光Lの光量を調整することができる。
車両20は、上述のルーフウインドウ21に貼付された調光フィルム1と、位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26、入射方向演算部27、調光フィルム1の駆動制御部28を有する調光システム(移動体用調光システム)22とが備えられている。
調光システム22は、ルーフウインドウ21から入射する太陽光の車内への入射光量を調節するシステムであり、ルーフウインドウ21に貼付された調光フィルム1の各セグメントを制御して、車内に入射する太陽光の光量を座席毎に調整することができる。
これら位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26、入射方向演算部27、駆動制御部28を有する調光システム22は、本実施形態では、調光フィルム1の制御プログラムを実行する情報処理装置(例えば、車両20に設けられる電子制御ユニット(ECU50))により構成される。また、本実施形態では、これら位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26が、外光(太陽光)の情報を取得する外光情報取得部として機能する。
ここで、ECU50は、車両に設けられる各種センサ出力や、車両20の位置情報等の各種信号や、操作パネルから出力される操作信号等を入力する入力回路部、演算処理部(以下「CPU」という)、CPUで実行される各種演算プログラムや上述の調光フィルム1の制御プログラム、演算結果等を記憶する記憶回路部、車両20の駆動源(エンジン)等の各部を制御する制御信号や、調光フィルム1を制御する制御信号等を出力する出力回路部等を備えている。
なお、調光システム22は、上記制御プログラムによる構成に限定されるものでなく、調光システム22を構成する各部24〜28を、それぞれ専用の処理回路により構成してもよい。
位置情報取得部24は、全地球測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)、局所測位システム(LPS:Local Positioning System)、地理位置情報システム(Geographical Location Information System)等により車両20の現在位置(経度、緯度)を検出し、現在位置情報を繰り返し取得して駆動制御部28に出力する。
例えば、位置情報取得部24は、GPS(Global Positioning System)衛星の出す電波を受信するGPS受信装置から位置情報を取得し、加速度センサ、車速センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサ等で位置変化情報を取得し、位置情報を補正することにより正確な位置情報を取得することができる。
ここで、GPS受信装置は、GPS衛星からの信号を受信して、車両とGPS衛星間の距離と、距離の変化率を3個以上の衛星に対して測定することで、車両の現在地、進行速度および進行方位を測定し、加速度センサは、センサ自体の加速度(1秒当たりの速度の変化)の情報を出力し、車速センサは、車両20において車速の計測に使用するための、車輪の回転数に応じたパルス信号(いわゆる車速パルスであり、JIS D5601−1992に規定の電気信号である)に基づき車両の移動距離を出力し、ジャイロセンサは車両の角速度から車両の操舵量を出力し、地磁気センサは地磁気からの進行方位の情報を出力する。
なお、車両20に搭載されるGPS受信装置は、上述のように各センサの情報に基づいて、車両の位置情報を正確に取得しているので、携帯端末等のGPS受信装置に比して情報の精度が格段に高い。
日時情報取得部25は、車両に搭載されたタイマーやGPS衛星の出す電波を受信するGPS受信装置からの情報により現在の日付(年、月、日)及び時刻(時、分、秒)の情報を含む日時情報D2を取得する部分である。なお、日時情報D2には、現在の日付及び時刻の情報だけではなく、季節等の特定の日時と関係付けられる種々の情報も含まれる。
姿勢情報取得部26は、コンパス、方位センサ、地磁気センサ、上述のGPS受信装置等から検出される車両20の進行方向の情報と、道路地図や地形等の情報を記憶する地図情報記憶部23a(後述する)から送信される道路の傾斜情報に基づいた地表水平面に対する車両20の傾斜の情報とを含む姿勢情報D3を取得する部分である。
なお、実用上十分に搭乗者を直射日光に晒さないようにすることができる場合、車両20の進行方向の情報のみにより姿勢情報D3を構成するようにしても良い。
本実施形態では、上述の位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26は、車両20の位置を地図上に表示する等して運転手が操縦する車両20の目的地への移動等を支援する装置、いわゆるカーナビゲーション装置23内に設けられている。
また、カーナビゲーション装置23は、上記構成に加え、地図情報記憶部23aを備えている。
地図情報記憶部23aは、道路地図や地形等の情報を記憶した半導体メモリ素子等の記憶装置であり、記憶された道路地図や地形等の情報に基づいた道路の傾斜情報を上述の姿勢情報取得部26に送信する。
なお、カーナビゲーション装置23に代えて、上述の位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26、地図情報記憶部23aを別途、車両20内に設けてもよい。
入射方向演算部27は、上述の位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26から、それぞれ位置情報D1、日時情報D2、姿勢情報D3を入力し、各情報に基づいて車両20に対する太陽光Lの入射方向を演算する演算処理装置である。
より具体的に、入射方向演算部27は、位置情報D1、日時情報D2により内蔵のメモリに記録された太陽Sの日時による位置情報を検索し、これにより所定の基準方位(例えば極北)を基準にした現在の太陽Sの方位角θ1、仰角θ2を検出する。
この検出した太陽Sの方位角θ1、仰角θ2を、姿勢情報D3により補正し、これにより車両20を基準にした方位角φ1、仰角φ2を検出する。なお、この車両20の基準は、例えば、車両20の前方方向(進行方向)及び車両20の床面である。
これにより、入射方向演算部27は、車両20に対する太陽Sの方向を検出し、車両20に対する太陽光Lの入射方向を演算する。
駆動制御部28は、調光フィルム1の各セグメントSG1〜SG10に駆動用電源を出力する電源部と、この電源部を制御する演算処理部とにより構成される。駆動制御部28は、入射方向演算部27で演算した太陽光Lの入射方向に基づいて、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させ、搭乗者の頭部に入射する太陽光Lを局所的に遮光する。
より具体的に、駆動制御部28は、事前に設定されている各座席の搭乗者(図2では座席S1の搭乗者M1)の頭部の位置を基準位置とした基準位置情報と、入射方向演算部27から入力した太陽光Lの入射方向とに基づいて、太陽光Lが入射する位置に対応するセグメント(図2では、セグメントSG1)を検出する。ここで、この基準位置は、人間の標準体型を基準にして、座面からの頭部の位置に基づいて設定される。
なお、座席の前後位置、背もたれの傾斜角度を検出し、この検出結果により標準体型を基準にした基準位置の座標を変化させるようにしてもよい。ここで、この座席の基準位置、背もたれの傾斜角度は、種々の検出方法を適用することができ、例えば、既に一部の車両に適用されている公知の手段を適用することができる。
また、基準位置は、ユーザー操作により任意に変更できるようにしたり、予め搭乗者の身長(座高)の情報を不図示の記憶部に登録しておき、その情報に基づいて設定されるようにしたりしてもよい。
駆動制御部28は、この検出した太陽光Lの入射方向に対応するセグメント(図2では、セグメントSG1)のみ透過率が最小値となる状態(以下、適宜、遮光状態と呼ぶ)に設定し、他のセグメントについては、透過率が最大値の状態(以下、適宜、透光状態と呼ぶ)に設定する。
これにより、この車両20では、車内に十分な外光を取り入れつつ、搭乗者M1が直射日光に晒されないようにすることができ、快適な車内空間を得ることができる。
車両20では、一定の時間間隔で、位置情報D1、日時情報D2、姿勢情報D3を取得し直すと共に、この取得し直した各情報D1〜D3により太陽光Lの入射方向を演算し直して遮光状態に設定するセグメントを変更し、例えば、曲がりくねった道を走行して車両20に対して太陽Sの方向が種々に変化する場合でも、さらには、上り坂や下り坂を繰り返す場合でも、この方向の変化、車両の傾斜の変化に対応して遮光状態のセグメントを変更して搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
なお、一定の時間間隔に代えて、姿勢情報D3に基づいて、車両20の方向の変化、車両20の傾斜の変化が一定値以上の場合に、これらの各情報D1〜D3を取得し直して遮光状態のセグメントを変更するようにしても良い。
このように、各情報D1〜D3を取得し直して遮光状態のセグメントを変更する場合、隣接するセグメントの間で遮光状態を切り換える場合がある。この場合、一のセグメントから隣接する他のセグメントへ遮光状態を切り換えるときに、隣接するセグメントとの間で相補的に透過率を変化させることにより一定の遷移時間を設定して、セグメントの遮光状態を切り換えるようにしてもよい。
このようにすれば、搭乗者に違和感を与えることなく、遮光状態及び透光状態間の変化を円滑にすることができる。なお、このように遷移時間を設ける場合、姿勢情報D3に基づいて、車両20の進行方向、傾斜の変化が激しい場合に、遷移時間を短く設定して、より違和感なく太陽光Lを遮光するようにしてもよい。
また、遮光状態のセグメントに隣接するセグメントに、透光状態と遮光状態との中間値となる透過率を設定するようにして、透光状態のセグメントから遮光状態のセグメントに向かって透過光量が徐々に変化、すなわち透過率の変化にグラデーションを設けるようにしてもよい。このようにすれば、更に違和感なく太陽光Lを遮光することができる。
ここで、調光システム22は、上述の説明では、座席(運転席)S1に搭乗した搭乗者(運転手)M1の頭部を基準位置に設定し、入射方向演算部27により演算した太陽光Lの入射方向に基づいて、駆動制御部28により搭乗者M1の基準位置に対応するセグメントを選択的に遮光する例を示したが、これに限定されるものでない。
本実施形態の調光システム22は、ユーザーの操作により、他の座席S2〜S5においても、各座席の搭乗者の標準体型による頭部の位置を基準位置として、車内に入射する太陽光Lの入射方向に基づいて、調光フィルム1の各セグメントを遮光状態に変化することができる。例えば、座席S2や、座席S4にも搭乗者が着席している場合、調光システム22は、ユーザーの操作により、座席S2、S4に着席した搭乗者の基準位置に対応するセグメントを遮光状態に制御することができる。
これにより、搭乗者(運転手)だけでなく、その他の搭乗者(同乗者)が直射日光に晒されてしまうのも防ぐことができる。
また、調光フィルム1を面積の小さな多数のセグメントに細分割し、搭乗者の基準位置を基準にして複数のセグメントを遮光状態に設定するようにして、ユーザー操作によりこの遮光状態に設定するセグメント数を変更するようにしてもよい。
このようにすれば、例えば、直射日光が強い場合(太陽が天頂付近に位置する場合)と直射日光が弱い場合(太陽が傾いている場合)とで遮光状態のセグメント数を変更して一段と快適に太陽光Lを遮光することができる。
なお、このようなユーザー操作による遮光状態に設定するセグメント数の変更に代えて、または、加えて、車内温度情報や、車内の冷暖房の設定情報、車内に入射する光量の情報等に基づいて、遮光状態にするセグメント数を変更するようにしてもよい。
また、車両20では、ユーザー操作により動作モードを切り換えて、調光フィルム1の全面を一様にユーザーの操作に応じた透過率に設定し、これによりマルチセグメント化していない調光フィルムと同様に外光の入射を一様に制限できるように構成してもよい。
調光システム22は、車両20に搭載されたオルタネータ及びバッテリーから電力が供給されることで作動する。
ここで、オルタネータは、車両20の車軸、又は、エンジンに接続されている発電機であり、発電された交流電圧を整流して直流の出力電圧に変換するレクチファイヤと呼ばれる整流装置と、集積回路により形成されて出力電圧を制御する電圧レギュレータと呼ばれる電圧制御装置等を一体的に備えている。
オルタネータから出力される電圧は、車両20の車軸の回転数、又は、エンジンの回転数に対応して変化するため、電圧レギュレータは、出力電圧を監視し、オルタネータの界磁電流を制御することにより出力電圧を調整している。電圧レギュレータにより、刻々と変化する運転状況下においても車両20の電装部品が正常に作動する電圧で電力が供給される。
バッテリーは、例えば、鉛バッテリー、ニッケル水素バッテリー、リチウムイオンバッテリー等の二次電池であり、オルタネータからの出力電圧を蓄電すると共に、蓄電した出力電圧を放電して調光システム22に電力を供給する。
なお、調光システム22への電力の供給方法は、車両20に搭載されたオルタネータ及びバッテリーから電力が供給される例を示したが、これに限定されるものでなく、例えば、車両20に搭載されたオルタネータ及びバッテリーのうちいずれか一方から電力が供給されるようにしたり、調光システム22用のバッテリーを別途設け、そのバッテリーから電力が供給されるようにしたり、その他の公知の電力供給方法を適用したりしてもよい。
なお、調光システム22の駆動制御部28は、調光フィルム1を交流電圧により駆動してもよく、また、直流電圧により駆動してもよい。この場合、調光フィルム1への電力供給部に変換器を設け、調光フィルム1が使用する電圧の種類に応じて、バッテリーやオルタネータから供給される電源を変換すればよい。
本実施形態の調光フィルム1は、通常、交流電圧の印加により透過率の変動を制御している。しかし、信号機等の外部の発光体から照射される光が、交流電圧の周波数が起因して、見え難くなってしまう場合があるため、そのような場合には、本実施形態の駆動制御部28は、変換器から供給される電圧を交流電圧から直流電圧に切り替え、発光体から照射される光が見え難くなってしまうのを極力抑制することができる。
図4は、第1実施形態の調光システムの処理手順を示すフローチャートである。
上述した各部24〜28の構成により、調光システム22は、図4に示す処理手順(SP1〜SP5)を繰り返して太陽光Lを遮光する。
すなわち、車両20に設けられた調光システム22は、カーナビゲーション装置23に設けられた位置情報取得部24により位置情報D1を取得し(SP1)、日時情報取得部25により日時情報D2を取得し(SP2)、姿勢情報取得部26により姿勢情報D3を取得する(SP3)。これにより、太陽光等の外光の情報が取得される(外光情報取得ステップ)。
続いて、これらの各情報D1〜D3により太陽光Lの入射方向を演算し(SP5)、この演算結果により調光フィルム1を駆動制御して、各セグメントの透過光を制御する(SP5)。
以上より、本実施形態の調光システム22は、以下のような効果を奏する。
(1)調光システム22は、車両20の現在位置の位置情報D1を取得する位置情報取得部24と、現在日付及び時刻の日時情報D2を取得する日時情報取得部25と、車両20の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報D3を取得する姿勢情報取得部26と、位置情報D1、日時情報D2、姿勢情報D3に基づいて、車両20に対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算部27と、演算した入射方向に基づいて、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させる駆動制御部28とを備える。これにより、調光システム22は、車両20内に十分に外光を取り入れつつ、搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
(2)調光システム22は、姿勢情報D3が車両20の傾斜の情報を備え、この傾斜の情報により車両20の傾斜により変化する太陽光の入射方向の変化に応じて、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させる。これにより、調光システム22は、上り坂や下り坂等により変化する太陽光の入射方向に追従するように遮光位置を変化させて、より確実に搭乗者が太陽光に晒されないようにすることができる。
(3)調光システム22は、調光フィルム1が複数のセグメントSG1〜SG10に分割されており、駆動制御部28が、複数のセグメントの透過率を個別に制御するので、より具体的に、調光フィルムの透過率を局所的に変化させることができ、車両20内に十分に外光を取り入れつつ、搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
(4)調光フィルム1の制御方法は、車両20の現在位置の位置情報D1を取得する位置情報取得ステップSP1と、現在日付及び時刻の日時情報D2を取得する日時情報取得ステップSP2と、車両20の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報D3を取得する姿勢情報取得ステップSP3と、位置情報D1、日時情報D2、姿勢情報D3に基づいて、車両20に対する太陽光の入射方向を演算する入射方向演算ステップSP4と、入射方向演算ステップで演算した入射方向に基づいて、調光フィルム1の透過率を局所的に変化させる駆動制御ステップSP5とを備える。これにより、調光フィルム1の制御方法は、車両20内に十分に外光を取り入れつつ、搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の調光システム30について説明する。
図5は、第2実施形態の調光システム30を有する車両を説明する図である。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
本実施形態の調光システム30は、搭乗者位置情報取得部31が更に設けられている点と、駆動制御部28に代えて駆動制御部32が設けられている点で、第1実施形態の調光システム22と相違する。
搭乗者位置情報取得部31は、車両20の座席S1〜S6に着席した搭乗者の搭乗者位置情報D4を検出して駆動制御部32に出力する。ここで、車両20は、各座席S1〜S6に圧力センサを備え、搭乗者位置情報取得部31は、この圧力センサへの加重によって、対応する座席への搭乗者の着席を検出し、この検出結果を搭乗者位置情報D4として出力する。
図5に示す例では、搭乗者M1が座席S1に着席し、搭乗者M5が座席S5に着席しているので、搭乗者位置情報取得部31は、座席S1及び座席S5の圧力センサから搭乗者の着席を検出し、その検出結果に基づいた搭乗者位置情報D4を駆動制御部32へ出力する。
なお、搭乗者位置情報取得部31は、上述の圧力センサによる搭乗者の検出に代えて、可視光、赤外線による車内の撮像結果を画像処理して搭乗者を検出する等、搭乗者の検出手法には、種々の検出手法を適用することができる。
駆動制御部32は、この搭乗者位置情報D4により搭乗者(M1、M5)が着席した座席(S1、S5)に、それぞれ基準位置を設定し、上述の第1実施形態の駆動制御部28と同様に、この基準位置に入射する太陽光Lをそれぞれ遮光するように調光フィルム1の各セグメント(例えば、図5の例では、SG1、SG7、SG8)の透過率を局所的に変化させる。
ここで、駆動制御部32は、標準体型の搭乗者が着席したとして各乗車位置に基準位置を設定する。これに代えて、搭乗者位置情報取得部31から、圧力センサによる加重検出結果を取得して搭乗者の体重を検出すると共に、この体重より各乗車位置に着席した搭乗者の体型(座高)を推定し、この推定の体型により基準位置をそれぞれ設定してもよい。
これにより、例えば、身長の小さな子供が乗車した場合に、この乗車した子供が直射日光に晒されないようにして外光を十分に取り入れることができる。
また、画像処理により搭乗者を検出する場合には、併せて顔認識の手法を適用して各搭乗者の頭部の位置座標を検出し、この位置座標により各基準位置を設定するようにしてもよい。
以上より、本実施形態の調光システム30は、上述の第1実施形態の調光システム22と同様の効果を奏する。
また、本実施形態の調光システム30は、搭乗者の搭乗者位置情報D4を取得する搭乗者位置情報取得部31を備え、搭乗者位置情報D4に基づいて、搭乗者が搭乗している箇所に対応する部分の調光フィルムの透過率を局所的に変化させているので、車内に外光を十分に取り込むとともに、ユーザーに操作させることなく、自動的に乗車した搭乗者が直射日光に晒されないようにすることができる。
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
上述の実施形態では、車両20に入射する太陽光等の外光の情報を取得する外光情報取得部として、位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26を備え、各部24〜26で取得した情報に基づいて、入射方向演算部27が太陽光の入射方向を演算する例を示したが、これに限定されるものでない。例えば、位置情報取得部24、日時情報取得部25、姿勢情報取得部26の代わりに車内に入射する太陽光等の外光を検出する光センサ29を外光情報取得部として設け、光センサ29の検出結果に基づいて入射方向演算部27が外光の入射方向を演算するようにしてもよい。この場合、太陽光だけでなく、街灯や、照明光などの外光についての入射方向も演算することができるので、調光システム22は、これらの外光についても制御対象にすることができる。なお、光センサ29は、例えば、ルーフウインドウ21の近傍に配置される。
図6は、車両20に設けられる光センサ29を説明する図である。
例えば、光センサ29は、図6に示すように、フォトダイオード、フォトトランジスタ等による受光素子を2次元的に複数配置したフォトセンサアレイ29aの受光面側に、開口部29bを備えた遮光板29cを配置して構成される。光センサ29は、フォトセンサアレイ29aの各受光素子の受光光量を検出して入射方向演算部27に出力する。入射方向演算部27は、入力したフォトセンサアレイ29aの各受光素子による受光光量に基づいて、開口部29bからのずれ量δを演算することにより、車両20に対する太陽光Lの入射方向を演算することができる。
上述の実施形態では、調光システムは、搭乗者の頭部が直射日光に晒されないように、調光フィルムを局所的に遮光状態に設定する例について説明したが、これに限定されるものでない。例えば、調光システムは、遮光状態への設定に代えて局所的に調光フィルムの透過率を低減し、直射日光に晒される程度を低減するようにしてもよい。なお、この透過率を低減する程度は、ユーザー操作により設定しても良く、車内温度、エアコンの設定、室内暖房の設定、車内の明るさ等に基づいて設定しても良い。
また、上述の実施形態では、調光システムは、移動体として車両(乗用車)に設けられる例を示したが、これに限定されるものでなく、乗用車以外の各種車両(バス、トラック等)や、船舶(客船)等に設けられるようにしてもよい。
調光システムは、例えば、インターネット上や、ユーザーの入力などによって車両(移動体)の所在位置における天候の情報を取得する天候情報取得部を更に設け、取得した天候情報に基づいて、調光フィルムの透過率を変化させるようにしてもよい。例えば、天候情報が、曇りや雨である場合、調光システムは、透過の状態を透光状態に維持したり、遮光状態よりも光の透過率が若干高い状態にしたりして、曇天や雨天時において、車内に取り込まれる光量が少なくなりすぎてしまうのを防ぐことができる。
上述の実施形態では、車両のルーフウインドウに調光フィルムを設ける例で説明したが、これに限定されるものでなく、サイドウインドウ、リアウインドウ等の太陽光が車内に入射する部位に対して調光フィルムを設けるようにしてもよい。
1 調光フィルム
2、3 直線偏光板
2A、3A 位相差フィルム
4 液晶セル
5U 上側積層体
5D 下側積層体
6、15 基材
8 液晶層
11、16 透明電極
12 スペーサ
13、17 配向層
19 シール材
20、30 車両
21 ルーフウインドウ
22、30 調光システム
23 カーナビゲーション装置
24 位置情報取得部
25 日時情報取得部
26 姿勢情報取得部
27 入射方向演算部
28、32 駆動制御部
31 搭乗者位置情報取得部
M、M1、M5 搭乗者
S1〜S6 座席
SG1〜SG10 セグメント

Claims (7)

  1. 外光が入射する部位に調光フィルムが配置された移動体に設けられる移動体用調光システムであって、
    前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得部と、
    前記外光情報取得部により取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算部と、
    前記入射方向演算部で演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御部とを備え、
    前記外光情報取得部は、
    前記移動体の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
    現在の日付及び時刻の日時情報を取得する日時情報取得部と、
    前記移動体の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報を取得する姿勢情報取得部とを有し、
    前記入射方向演算部は、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算し、
    前記入射方向演算部は、前記姿勢情報に含まれる前記移動体の進行方向の変化が一定値以上の場合に、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報を取得し直して前記移動体に対する外光の入射方向を演算すること、
    を特徴とする移動体用調光システム。
  2. 前記移動体内における搭乗者の位置の情報である搭乗者位置情報を取得する搭乗者位置情報取得部を備え、
    前記駆動制御部は、
    前記搭乗者位置情報に基づいて、前記搭乗者が搭乗している箇所に対応する部分の前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる
    請求項1に記載の移動体用調光システム。
  3. 前記姿勢情報は、
    前記移動体の傾斜の情報を備え、
    前記駆動制御部は、
    前記傾斜の情報に基づいて、前記移動体の傾斜によって変化する外光の入射方向の変化に応じて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる
    請求項1又は請求項2に記載の移動体用調光システム。
  4. 前記調光フィルムは、複数のセグメントに分割されており、
    前記駆動制御部は、複数の前記セグメントの透過率を個別に制御する
    請求項1から請求項までのいずれかに記載の移動体用調光システム。
  5. 請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の移動体用調光システムを備える移動体。
  6. 移動体の外光が入射する部位に配置された調光フィルムの制御方法であって、
    前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得ステップと、
    前記外光情報取得ステップにより取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算ステップと、
    前記入射方向演算ステップで演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御ステップとを備え
    前記外光情報取得ステップは、
    前記移動体の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
    現在の日付及び時刻の日時情報を取得する日時情報取得ステップと、
    前記移動体の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報を取得する姿勢情報取得ステップとを有し、
    前記入射方向演算ステップは、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算し、
    前記入射方向演算ステップは、前記姿勢情報に含まれる前記移動体の進行方向の変化が一定値以上の場合に、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報を取得し直して前記移動体に対する外光の入射方向を演算すること、
    を特徴とする調光フィルムの制御方法。
  7. 情報処理装置による実行により、前記情報処理装置に所定の処理手順を実行させて、移動体の外光が入射する部位に配置された調光フィルムを制御する調光フィルムの制御プログラムであって、
    前記処理手順が、
    前記移動体に入射する外光の情報を取得する外光情報取得ステップと、
    前記外光情報取得ステップにより取得された外光の情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算する入射方向演算ステップと、
    前記入射方向演算ステップで演算した入射方向に基づいて、前記調光フィルムの透過率を局所的に変化させる駆動制御ステップとを備え
    前記外光情報取得ステップは、
    前記移動体の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
    現在の日付及び時刻の日時情報を取得する日時情報取得ステップと、
    前記移動体の進行方向の情報を少なくとも備えた姿勢情報を取得する姿勢情報取得ステップとを有し、
    前記入射方向演算ステップは、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報に基づいて、前記移動体に対する外光の入射方向を演算し、
    前記入射方向演算ステップは、前記姿勢情報に含まれる前記移動体の進行方向の変化が一定値以上の場合に、前記位置情報、前記日時情報、前記姿勢情報を取得し直して前記移動体に対する外光の入射方向を演算すること、
    を特徴とする調光フィルムの制御プログラム。
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